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ウクライナ問題の正体―アメリカとの情報戦に打ち克つために、最終回 「流れは変わった! 元国務長官キッシンジャーの重大な警告」

国際教育(2022/06/11)
 元アメリカ国務長官キッシンジャー
 ダボス会議、WEF(世界経済フォーラム)総会
 大砲の餌食(cannon fodder)としてのウクライナ
 中国とロシアの「天命」(自明の宿命:Manifest Destiny )
 BRI「一帯一路」(Belt and Road Initiative)、陸と海の「新しいシルクロード」
 暗殺リスト「ミーロトヴォレット」、SBU(ウクライナ保安庁)
 エバ・バートレット(「暗殺リスト」に載せられたカナダ人ジャーナリスト)
 

「キエフ政権はロシアの要求を認めて停戦しろ」
WEF(世界経済フォーラム)で衝撃的発言をしたヘンリー・キッシンジャー

キッシンジャー


 これまで「ウクライナ問題の正体」と題して、ずっと連載を書いてきました。
 が、ロシア軍が、ウクライナ南部の要衝マリウポリ市、とりわけアゾフ大隊が死守しようとしてきた拠点「アゾフスタル製鉄所」を完全解放したので、戦闘の行方はほぼ決まったと考え、この連載を一旦お休みしたいと考えました。
 というのは、77歳の老体に鞭うって書いてきたので少し体に疲れが溜まってきたからです。しばらく心と体に休息と栄養を与えたいと思いました。それにずっと書きたいと思っていた「研究所:野草・野菜・花だより」にも時間をとりたかったのです。

 ところが突然、WEF(世界経済フォーラム)でキッシンジャー元国務長官が衝撃的発言をしたというニュースが飛び込んで来たので、またまた迷いが生じてきました。この発言はウクライナ情勢を根本的に変えるもになるかも知れないという思いが頭をよぎったからです。
 というわけで、「休息して『野草・野菜・花だより』を書きたい」という思いと「今これを書いておかないとキッシンジャー発言の意味を解説する機会を失うかも知れない」という思いとの葛藤が始まりました。が結局、後者の方が勝ちを占めたので、今これを書き始めています。


 既に大手メディアも報じているように、キッシンジャー元国務長官は、2022年5月23日、スイスで開催中の「ダボス会議」(世界経済フォーラムWEF年次総会)にオンライン出席して、衝撃的発言をしました。
 その内容は概略、次のようなものでした。

 今後、数ヶ月のうちに、ウクライナはロシアと和平協定を結び、ウクライナでの紛争がNATOとロシア間の世界規模の戦闘に拡大しないようにしなければならない
 そのためにはウクライナは少なくとも「紛争前の状態」に戻すことを受け入れねばならない。すなわち クリミアは自国領であるという主張を取り下げ、ドネツクとルガンスク両人民共和国の自治を承認しなければならない。


 この発言は、ウクライナのゼレンスキー政権だけなく、アメリカのバイデン政権にとっても、大きな打撃になったであろうことは疑いありません。
 というのは、ゼレンスキーを裏で戦術指導し、「ロシアを戦争に引きずり込んで疲弊させ、あわよくば政権転覆まで持ち込もう」というのがバイデン大統領の戦略だったのに、それに頭から冷や水を浴びせたのがキッシンジャー発言だったからです。
 ゼレンスキー大統領にとっても、欧米や日本のメディアから「民主主義の旗手」としてもてはやされ、「ドンバス2カ国どころかクリミアも取りもどす」と豪語していただけに、このキッシンジャー発言は許しがたいものだったでしょう。
 しかしキッシンジャー元国務長官がこのように発言した意図や理由はどこにあったのでしょうか。それを元国務長官は次のように述べています。

 そもそもウクライナ危機の端緒は、8年前の2014年に起きたキエフでの軍事クーデターにあった。
 したがってウクライナは、NATOに加盟するのではなく中立国になり、ロシアと欧州の架け橋になるべきだ。
 なぜなら、ロシアは建国400年の歴史の中で、常に欧州において重要な役割を果たしてきた国だ。そのロシアを、中国と恒久的な同盟関係を結ばざるを得ない状況に追い込むことは避けるべきだ。


 ここで注目すべきことは、キッシンジャーが「そもそもウクライナ危機の端緒は、8年前の2014年に起きたキエフでの軍事クーデターにあった」と述べていることです。
 大手メディアは、「今回のウクライナ紛争は、ロシア軍が一方的にウクライナ侵略に乗り出し、あちこちを破壊して死傷者を増やしていることに、最大の原因がある」とする論調一色で、その論調に左翼・リベラルのひとたちも巻き込まれているという現状です。
 ところが上記のとおり、キッシンジャー元国務長官は、このような認識を初めから否定して、「ウクライナ危機の端緒は、8年前の2014年に起きたキエフでの軍事クーデターだった」と断言しているのです。
 さらによく調べてみると、元国務長官は2014年のクーデター時から、このようなクーデターは将来に禍根を残すと言っていることが分かりました。なぜキッシンジャーは、このような発言をしていたのでしょうか。


 キッシンジャーと言えば、ベトナム戦争時のカンボジア侵攻、チリ・クーデターの画策、インドネシアによる東ティモール占領への協力など、軍事介入や秘密工作も辞さなかった人物だっただけに、私にとってダボス会議での発言は驚きでした。
 しかし考えてみれば、キッシンジャーは、ニクソン政権「国家安全保障問題担当大統領補佐官」として、1971年に、中ソ対立でソ連と緊張状態にあった中華人民共和国を極秘に二度も訪問し、周恩来中国首相と直接の会談をおこない、米中和解への道筋をつけているのです。
 日本が台湾ではなく中国を訪問することはアメリカから強い牽制を受けていただけに、このキッシンジャーによる中国への「秘密訪問、中国の国連加盟(したがって台湾排除)を認める」という動きは「ニクソンショック」として世界を揺るがしました。これは日本に対する一種の「裏切り」でしょう。

 しかしキッシンジャーによるこの戦略は、「社会主義国の、中国とソ連の分断を図り、団結させない」という、権力者の常道「分断して支配する(divide and rule)」に従っていたわけですから、本当は驚くべきでも何でもなかったのです。
 が、今まで台湾(中華民国)を国連加盟国として扱っていたのに、それをあっという間に本土の中国へと乗り換えたのですから、「ニクソンショック」という世界への衝撃波となったわけです。
 そして、このキッシンジャーの戦略は功を奏し、その後の中国は、表向きは「社会主義国」ですが、実体は新自由主義の経済政策を導入し、アメリカ企業が多く進出する「資本主義国」になってしまいました。貧富の格差も激しくなりました。
 現在の中国は、このような状態を改善するために必死の努力をしているように見えます。いわゆる「新しいシルクロード」、BRI「一帯一路」という構想も、その一環だとも考えられるのです。
 この構想をマシュー・エレット(Matthew Ehret)は「中国の天命」と名付け、それをロシアの東部開発と結びつけて次のように説明しています。

欧亜大陸の新たな「天命」の誕生

 ロシアでは、このような未来志向が、21世紀の「ロシアの天命」のような形をとっていて、シベリア極東や北極圏、さらには中央アジア、モンゴル、日本、中国などへ文明を拡大しようとしている。
 多くの人はしばしば、世界の出来事を「下から上へ」と視眼的に分析しようとするが、次のことは明らかである。

2018年以降、ロシアの東部開発という大志は、中国のBRI「一帯一路」構想の北部拡張とますます合体している。それは「極地シルクロード」と名付けられ、鉄道、道路、通信基地、港湾、エネルギー計画、海の回廊の成長を拡大した。海の回廊は、人類の文明を寄せ付けないと長く考えられていた氷の地域を通るのである。

 中国は「一帯一路」構想のかたちをとった中国版「天命」の誕生を見たのである。これは2013年に発表され、変革、相互接続、相互勝利(ウィンウィン)の力を発揮し、8年前にそれの熱狂的支持者が想像したものさえこえてしまった。
 短期間のうちに、3兆ドル以上が140カ国が参加する大中小の社会基盤整備に費やされた(参加の度合いはさまざまである)。

Manifest Destiny Done Right. China and Russia Succeed Where the U.S. Failed
「マニフェスト・デスティニー(天命)の成就―中国とロシアは成功する、米国が失敗したところで 」

http://tmmethod.blog.fc2.com/blog-entry-924.html(『翻訳NEWS』2022-05-23)




 上記の論考には他にも非常に興味深い地図や統計が多く載せられているのですが、この小節「欧亜大陸の新たな『天命』の誕生」では、上記の説明に添えて次のような地図が載せられていて、その構想の壮大さに思わず息を呑んでしまいました。
 下の地図では、赤い帯が「北のシルクロード(Northern silk road)」、橙色が「南のシルクロード(Northern silk road)」、黒の帯が「連結路(Connections/shortcuts)」となっています。


新しいシルクロード
 このような構想はアメリカを唯一の覇権国家として維持しようとする勢力にとっっては、脅威以外の何ものでもないでしょう。
 このような文脈で考えてみて初めて、私は、キッシンジャーがなぜダボス会議であのような発言をしたのか、やっと分かったような気がしました。つまり元国務長官キッシンジャーは、バイデン大統領と違って、もっと遠くを見ていたのです。
 バイデン大統領はウクライナを「大砲の餌食(cannon fodder)」として使い、ロシアを弱体化させ、あわよくば政権転覆をねらっているのですが、元国務長官は「そのような政策はロシアをますます中国に接近させ、アメリカの覇権を脅かすことになる」と考えているのです。
 バイデン大統領が今のような戦略を続けていると後戻りができなくなり、ますます中露を団結させ、アメリカの覇権を維持できなくなるからです。それどころかアメリカが勝つためには核兵器を使う以外になくなる可能性もあります。
 バイデン政権は、ウクライナを「大砲の餌食(cannon fodder)」として使ってロシアを疲弊させる戦略でしょうが、通常兵器を使っているかぎりウクライナ軍はロシア軍と戦って勝てるはずがないからです。
 なにしろロシア軍はアサド政権の要請に従ってシリアに乗り出し、裏でアメリカが支援してきた「勇猛かつ残虐で知られるイスラム原理主義勢力」を短時間で駆逐してしまったのですから。


 今のところロシア軍は民間人の犠牲をできるだけ少なくするため、地上戦の戦いに限定した戦略で戦っています。「強力な武器を使えば3日で終わる戦争に40日もかけている」
と元財務次官ポール・グレイグ・ロバーツを嘆かせたほどです。

*Russia Has a First Rate Military But Is Incompetent On Every Other Front
「ロシアは一流の軍隊を持つが、他のあらゆる面で無能である」
http://tmmethod.blog.fc2.com/blog-entry-862.html(『翻訳NEWS』2022/04/01)

 このことは逆にロシア軍に多大な犠牲を強いています。アメリカ流に民間人の犠牲を厭わずミサイルや無人爆撃機(Drone)で攻撃すれば自国の兵士の犠牲を減らすことができますが、ロシアのように地上戦を主とした戦いでは自国軍から多くの死者や捕虜が出るからです。
 その証拠に、ニューズウィーク (Newsweek)でさえ「プーチンの爆撃機はウクライナを壊滅させることもできたのに彼はそれを控えている。その理由はここにある」と題する次のような記事を載せて、私を驚かせました。というのは、欧米や日本のメディアは、ロシアやプーチン大統領を悪魔化する報道を繰り返し、このような記事を載せてこなかったからです。

*Putin's Bombers Could Devastate Ukraine But He's Holding Back. Here's Why
「和平の可能性を残すプーチンの戦略---攻撃標的は民間人ではなく軍事施設、キエフはほとんど無傷」
http://tmmethod.blog.fc2.com/blog-entry-933.html(『翻訳NEWS』2022/06/05)

 これは、キッシンジャー元国務長官の発言を受けて、明らかに大手メディアの論調が変わり始めた証拠ではないでしょうか。最近、ニューヨークタイムズ紙すら、ウクライナにおける「決定的な軍事的勝利」はないとし、和平交渉を呼びかける記事を載せました。

*New York Times Repudiates Drive for “Decisive Military Victory” in Ukraine, Calls for Peace Negotiations.
「ニューヨークタイムズも、ネオコン主導の「ウクライナ発、核戦争」を危惧し始めている」
http://tmmethod.blog.fc2.com/blog-entry-935.html(『翻訳NEWS』2022/06/05)

 ジョン・V.ウォルシュ(John V.Walsh)による上記の記事によると、NYタイムズの社説(5月19日)は次のように述べています。

ウクライナがロシアに対して決定的な軍事的勝利(ロシアが2014年以来掌握した領土をウクライナがすべて取り戻すことを含む)を収めるというのは現実的な目標ではない。・・・ロシアの力は依然として強大だ・・・
 ・・・バイデン氏はまた、ヴォロディミル・ゼレンスキー大統領とウクライナ国民に対して、米国とNATOがロシアに立ち向かうには限界があり、武器、資金、政治的支援にも限度があることを明確に伝える必要がある。
 ウクライナ政府の決断が避けて通れないのは、その手段が現実を見据えたものであること、ウクライナが後どれだけの破壊があっても大丈夫なのか、の2点をきちんと踏まえること、だ。
 結局のところ、ロシアとの全面戦争に突入することは、アメリカにとって最善の利益にはならない。たとえ交渉による和平がウクライナにいくつかの難しい決断を要求することになるとしても。


 ところが相変わらず日本の大手メディアは今のところ(6月11日現在)論調を変える気配がなさそうです。


 それはともかく、キッシンジャー元国務長官の発言は、ウクライナのゼレンスキー大統領を激怒させました。「もう時効になった年寄りは政治の舞台から去れ」といった調子でキッシンジャーにかみつきました。
 それどころかキエフ政権は99歳になったキッシンジャーを「ロシアの共犯者だ」「ウクライナの敵だ」と宣告し、彼を「ブラックリスト」に載せることさえしたのです。次の記事は、そのことを報じたものです。

*Kissinger turns 99, declared ‘enemy’ by Ukraine
「和平協定締結を提言したキッシンジャー(99歳)をウクライナは罪人扱い」
http://tmmethod.blog.fc2.com/blog-entry-931.html(『翻訳NEWS』2022-06-06)

 この「ブラックリスト」について上記の記事は次のように説明しています(和訳は寺島による若干の修正)。

 ウクライナ政府が支援する活動家集団は、5月27日に99歳になったヘンリー・キッシンジャー元米国務長官を、その誕生日を機に「ミーロトヴォレット(Peacemaker)」というウェブサイトに名を載せた。
 「ロシア当局の共犯者」という汚名を着せられたキッシンジャーがブラックリスト入りになったのは、キッシンジャーがウクライナ政府に、ロシア政府と和平交渉をおこなうこと、ロシア軍が侵攻を開始した2月以前の体制に戻ることを要求したからだった。
 いわゆる2014年の「欧州広場」でのクーデター後に創設されたウェブサイト「ミーロトヴオレット」は、公的に以下のような人々の情報が調べられるサイトだ。
 すなわち、このサイトが指定した「親ロシア派テロリスト、分離主義者、金銭目当ての傭兵、戦争犯罪者、殺人者」たちの情報だ。
 このサイトには、ウクライナ国内の人物だけでなく、ロシア軍人からハンガリー首相のオルバーン・ヴィクトルまで幅広い層の人々が掲載されている。オルバーンは、ロシアの石油や天然ガスに対する制裁に反対している人物だ。
 このホームページ「ミーロトヴオレット」は、SBU(ウクライナ保安庁)の管理下にあると考えられている。(なお、サイトのトップ頁には死んだロシア兵たちの悲惨な姿がモザイクを付けられて載せられている)




 ここで第一に問題になるのは、「ミーロトヴォレット」という、ふざけた名のウェブサイトです。「ミーロトヴォレット」というのは「Peacemaker」という意味だそうですが、これは実はキエフの政敵を抹殺する「暗殺リスト」でした。
 自分たちの政敵を暗殺して「キエフ政権の平和と安定を保つ」という意味では、確かに彼らにとっては「平和をつくる」ためのウェブサイトでしょう。が、これを管理しているのはSBU(ウクライナ保安庁)なのですから、キエフ政権は自分たちが「テロリスト集団」であることを公言しているようなものです。
 というのは、このサイトには単に政敵とされる人物名や政治的経歴が載せられているだけでなく住所まで載せられていて、アゾフ大隊などのネオナチの武装集団が、自宅を襲ったり、帰宅途上の人物を路上で暗殺できるようになっているからです。
 たとえば、次の記事よれば、「ロシアがウクライナ国内で軍事作戦を開始して以来、ロシアからの人道的物資を受け入れることを決めたり、ロシア軍と交渉して民間人避難のための通路を手配したりした市長が次々と暗殺されたり(4人)、行方不明になったりしています(11人)。

*"One Less Traitor": Zelensky Oversees Campaign of Assassination, Kidnapping and Torture
「裏切り者を一人でも減らせ:ゼレンスキーは、政敵の暗殺・誘拐・拷問といった作戦を監督」
http://tmmethod.blog.fc2.com/blog-entry-893.html(『翻訳NEWS』2022/04/28 )

 この人数は、この記事によると4月18日現在の数字ですから、現在(6月11日)では、どれほどの人数になっているかは、想像もつきません。しかも市長や知事といった行政の長だけでなく、一般市民も次々と暗殺・誘拐・拷問の標的になっています。その凄惨な様子は、このサイトに映像付きで載っていますから、ぜひ自分の眼で確認していただきたいと思います。
キエフ政権の蛮行
https://thegrayzone.com/2022/04/17/traitor-zelensky-assassination-kidnapping-arrest-political-opposition/
上の写真。3月3日にドニプロで行われた左派活動家の拷問(アゾフ大隊の記録)。
下の写真。メディアに対してポーズをとるウォロデイミル・ゼレンスキー大統領。




 ここで、もうひとつの大きな問題は、この「ウクライナの敵」とされる「暗殺リスト」には、ドンバス2カ国を含むウクライナ人だけでなく外国の要人やジャーナリストも含まれているということです。
 元国務長官キッシンジャーが、このリストに加えられたことは既に述べたとおりですが、それ以前に、ドイツ大統領フランク・ヴァルター・シュタインマイヤーまでも、この一員に加えられていたようです。次の記事は、そのことをよく示しています。

*Team Zelensky Overplays Hand By Humiliating Germany - Islam Times
「チーム・ゼレンスキー、天狗になってドイツに喧嘩を売る」
http://tmmethod.blog.fc2.com/blog-entry-902.html(『翻訳NEWS』2022-05-04)

 この記事は、その事情を次のように説明しています。

 ユダヤ人の血を引くこの喜劇俳優は、ナチスの軍隊がはびこる政権の顔になるには打って付けの腹話術人形である。そしてこの操り人形はますます重要になっている。
 というのも、西側の「民主主義」国家が、ナチスのワッフェン-SSの記章を誇らしげにつけた兵士がいるこの政権を後援し武装することに夢中になっているからである。

 しかし、ゼレンスキーは、世界をガス燈のように照らす旅をするうちに図に乗りすぎて、自分の力が彼の黒幕アメリカCIA、イギリスMI6と同じだと思うようになったようだ。今週、チーム・ゼレンスキーは、調子に乗りすぎて欧州連合の要であるドイツまでこき下ろしたのだ。

 ドイツ大統領フランク・ヴァルター・シュタインマイヤーがゼレンスキーの側近に言われたことは、ポーランドとバルト三国の指導者を含む代表団の一員としては彼をキエフには招かないということだった。
 この4人の指導者(ポーランドとバルト三国)はキエフへの「連帯訪問」を決行したが、ドイツ大統領シュタインマイヤーはベルリンに取り残されることになった。この冷遇はドイツ国内で大きな困惑を引き起した。温厚と言われるオラフ・ショルツ首相でさえ、この国家元首への侮辱に「憤慨している」と発言したほどだ。


 しかし外国の要人が「国家の敵」「暗殺リスト」に載せられたからといって、その人たちは実際に命を脅かされるとは考えられません。イスラエル政府の情報機関「モサド」と違って、キエフ政権にそのような力があるとは考えられないからです。
 とはいえ、ジャーナリストとなると話は違います。ウクライナで取材する外国人ジャーナリストEva Bartlett(エバ・バートレット)は実際に暗殺の対象になっているからです。そのことを伝えているのがオンライン誌Global Research(June 08, 2022)に載った次の記事です。

*Video: Award-Winning Canadian Journalist Eva Bartlett on Ukraine “Kill List” as Canadian Government Does Nothing
(ビデオ:受賞歴のあるカナダ人ジャーナリストはウクライナの「暗殺リスト」に載せられたがカナダ政府は何もしない)
https://www.globalresearch.ca/award-winning-canadian-journalist-eva-bartlett-on-ukraine-kill-list-as-canadian-government-does-nothing/5782889


 上記の記事で、バートレットはビデオを通じてキエフ政権による「報道の自由」圧殺に対して抗議してくれるよう訴えているのですが、カナダ政府は動こうとしません。
 それもそのはずです。以前にも紹介したように、カナダのトルドー首相は、ゼレンスキー大統領と同じくWEF(世界経済フォーラム)「シュワブ学校」の一員ですから、キエフ政権を援助することはあっても、自国の女性ジャーナリストを救おうとする気はないでしょう。
 それにしても、たとえば、カナダ人独立ジャーナリストEva Bartlett(エバ・バートレット)は、なぜ「暗殺リスト」に載せられるようになったのでしょうか。それは、彼女が次のような記事を書いたからでした。

*Eva Bartlett Reports from Mariupol: “Ukraine Forces Used Scorched Earth Tactics”
「ウクライナ軍は焦土作戦を用いた:マリウポリからエヴァ・バートレットの報告」
http://tmmethod.blog.fc2.com/blog-entry-914.html(『翻訳NEWS』2022/05/17)

 これまで、エバ・バートレットは、アメリカがイスラム原理主義勢力を使ってシリア政府の転覆を図ってきたことを現地で取材して、「アサド大統領が住民を虐殺したり化学兵器を使っている」というアメリカ政府の流してきた嘘を暴露してきました。
 その彼女が、今度はドンバスに飛び込み、マリウポリ市を取材しました。それを次のように報告しています(和訳は寺島が一部修正)。

 4月21日と22日、私はジャーナリストのロマン・コサレフ氏と共にマリウポリに向かい、ひどく困っている人たちに人道支援物資を届けに行きました。
 彼は3週間前から支援をおこなっています。
 数日前にマリウポリ市で出会った女性ヴァレリーは、アゾフ大隊が住宅地を占拠して、そこから爆撃していることについて次のように語りました。
 「私たちの土地から狂った人たちが一掃されなければなりません。彼らをナチスと呼ぶ人もいます。確かに彼らはナチスという言葉がぴったり当てはまると思います。」


 また、マリウポリ市のアゾフスタル製鉄所を占拠して有名になったアゾフ大隊や市民の生活についても、現地で長く取材してきたジャーナリストのロマン・コサレフ氏にインタビューをしています。
 コサレフ氏は人道支援について話しながら、砲撃の大きな音がして、しばしば話を中断しています。そのようすは4月21日、マリウポリで録画された動画のURLを最後に載せておきますので、それをクリックして見てください。

「ご覧のとおり、キエフ軍の砲撃はまだ続いています。ネオナチとウクライナ軍の残党が立てこもるアゾフスタル製鉄工場で起こっているのです。」
 「プーチン大統領は、空爆して工場を爆撃するよりも、まずネオナチ武装集団・ウクライナ軍に武器を置いて降伏する時間を与えることを決定しました。」
 「周りの破壊されたアパートは、ロシアが悪意を持って攻撃したために荒廃したのではなく、ウクライナとナチスが占領していたためです。」
 「地元の人でもアゾフ大隊とウクライナ軍の区別がつかないそうです。アゾフ大隊は最近ウクライナ軍の一部になったからです。でも彼らの入れ墨や鉤十字を見ればアゾフ大隊だと分かるそうです。」
 「彼らは住民の建物に入り、そこに武器を設置し、向かってくるロシア軍とドネツク人民共和国軍に発砲し始めました。だから彼らも反撃を強いられました。
 しかし一般市民は低層階や地下室に押し込められ、ウクライナ軍に『人間の盾』として利用されました。そして、彼らは撤退する際にも、家屋を爆撃し続けました。」
 私は、テロリストがシリアで行ったように、ウクライナ軍はより多くの民間人を殺すために仕掛け爆弾や地雷を設置したのかと尋ねました。
 「そう、仕掛け爆弾も、地雷も、すべて。彼らは焦土作戦をとっているのです。」
https://youtu.be/otCd5Ool51M(動画約6分)



10
 アゾフ大隊やウクライナ軍は、なぜ「焦土作戦」をとるのでしょうか。
 キエフ政権はネオナチ勢力によって要職が占められているのですから、彼らの思想からすればウクライナからロシア語話者を一掃したいのです。ナチスドイツが欧州からユダヤ人を一掃したいと思ったのと同じです。
 そのために「リヴィウのポグロム」という有名なユダヤ人大虐殺もウクライナの地で起きました。ウクライナの都市リヴィウ(旧ポーランド領)ではウクライナ人のナチス信奉者が協力して、4000人のユダヤ人が殺されました。
 ですから、ウクライナからロシア語話者を一掃するために、彼らがこのドンバスで「焦土作戦」をとることは当然だとも考えられるのですが、欧米の大手メディアは、そのことをほとんど全く伝えてきませんでした。
 しかしエバ・バートレットが、このような流れに抗して、ウクライナの真実を伝えようとしたのですから、キエフ政権の怒りを買い、「暗殺リスト」に載せられたのも、当然といえば当然のことでした。
 実は彼女は、すでに2021年からドンバスに入り、すでに次のような記事も書いているのです。
*Seven years after Maidan divided country, Ukraine intensifies shelling of Donbass to sound of deafening silence from Western media
「マイダンから7年、ウクライナはドンバスへの砲撃を強化」
http://tmmethod.blog.fc2.com/blog-entry-922.html(『翻訳NEWS』2022-05-23 )

 この記事では、「マイダン(欧州広場)」でのクーデターで国が分裂してから7年間、ウクライナはドンバスに耳をつんざくような砲撃を強化」「それにたいする欧米メディアの全くの沈黙」について鋭く告発しています。
 ですから、彼女の「暗殺リスト」入りは、時間の問題だったとも言えます。なぜならドンバスの惨状について、彼女はすでに2021年の時点で上のような記事を書いていたのですから。
 恥ずかしながら私は、ドンバスについて調べるまでは、このような記事が1年も前に書かれていたこと(2021年3月2日)を知らなかったのです。
 この記事では、今まで知らされてこなかったことが実に詳細に記録されているのですが、ここではその一部しか紹介できないのが本当に残念です。
 ぜひ皆さんには全文を読んでほしいと思います。以下は、ほんのその一部です。


「なぜカナダ人ジャーナリストのエバ・バートレットはロシアに移ったか」
エバ・バートレット3
https://youtu.be/tVZXiDcqFuo

 世界の多くがコロナ関連の問題に注目している中、ウクライナのドンバス住民に対する7年にわたる戦争は続いている。
 ここ数週間、キエフによる市民への砲撃は激化しており、予想通りの西側メディアの沈黙が続いている。
 表向きは、ミンスク合意に基づく停戦があるとされているが、実際には、平和境界線の村に住むドンバス住民は、絶え間なくウクライナの砲撃にさらされている。
(中略)
 同じく最前線の村、ザイツェボでは、行政長のイリーナ・ディクンさんが、停戦合意は自分の村には届かなかったと、この6年間の地獄を話してくれた。
 「ここでは、生きているのではなく、生き延びているのです。出て行ける人は出て行った。残っているのはほとんど高齢者です」

 ウクライナが砲撃している最前線に近い家では救急車が来ないので、怪我をした住民を助けるために運転を習い、応急処置の訓練も受けたそうだ。
 彼女は、ウクライナの村の「通りごとの」破壊について詳しく説明するとともに、「ロシアが離脱した共和国に侵略している」という西側メディアの主張は誤りであると強調した。
 「ここにはロシアによる侵略などありません。普通の、平和な人々それぞれが、自分の望む生き方をしたいと思っただけです。
 当初、私たちは共和国を作りたかったわけではなく、自治権を持ちたかっただけなのです。しかし、私たちの声に耳を傾けてはもらえませんでした。ウクライナは国民に対して軍隊を動かし、私たちに対して砲撃をしたのです。」

 私は多くの民兵とも話し、なぜ武器を手にしたのか、さまざまなことを尋ねた。
 「オデッサで人が殺されたからだ。だから、自分たちの地域を守るために軍隊に入ったんだ」と、ある兵士は言った。
 別の男性は、最初はキエフのクーデターに反対するデモに参加し、「ナチス政権を支持しない」と言い、最終的には民主共和国を守るために武器を手にした、と言った。

 ウクライナ軍から500メートル離れたその最前線で、私は防弾チョッキとヘルメットを身につけた。
 ほぼ毎晩のように砲撃や重機関銃の攻撃にさらされる高齢者の話を聞きながら、この勇敢な人たちを守るものは何もなく、ウクライナが毎年、彼らを傷つけ、殺し、家を壊し、破壊するのを防ぐ国際機関もないことを思い知らされた。

 一方、ウクライナには、西側諸国が自分たちの犯罪をごまかして、武器を送っている。


 大手メディアでは、2022年2月24日のロシア軍による「特別作戦」でウクライナ危機が始まったかのように報道されてきました。
 が、この記事で全く違った現実があることを思い知らされます。
 「ここでは、生きているのではなく、生き延びているのです
 行政長のイリーナ・ディクンさんが、6年間の地獄を話しながら思わず漏らした上記の言葉ほど、重く響いた言葉はありませんでした。
 それにしても、ユダヤ人でありながら「民族浄化」に協力しているゼレンスキー大統領とは、なんという皮肉な存在なのでしょうか。


<追記>
 今回はマリウポリで発見された「集団墓地」についても述べるつもりでしたが、もう長くなりすぎたので、残念ながら今日はここで打ち止めにします。
 それに、知人から送られてきた「ブチャにおける虐殺事件がやはりキエフ軍によるものだった」という新しい情報についても紹介する予定でしたが、これも断念します。

 実を言うと今日のブログは「1日2回で1万歩の散歩」という日課を返上して昨日から書き続けているので疲れてきたからです。どうかお許しください。

 それはともかく、この「集団墓地」は、ロシア軍が戦争犯罪を隠すためにおこなった結果できたものであると欧米のメディアは報じていましたが、エバ・バートレットの現地取材は全く違った事実を突きつけています。彼女はこう主張しています。「西側メディアは同じ嘘を繰り返す」


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