「今日のアメリカは、明日の日本である」『IB』2018新春特別号

アメリカ理解(2018/02/01) チョムスキー「富と権力を集中させる10の原理」、ブッシュ「落ちこぼれゼロ法案」、オバマ「トップを目指して競争せよ法案」

 昨2017年10月に、私にインタビューしたいということで、思いもかけず下記のようなメールが届きました。そこで早速、11月に拙宅で2時間近く楽しい歓談のひとときを過ごさせていただきました。

寺島隆吉 先生
 初めてご連絡を申し上げます。
 私は九州の経済情報誌、データ・マックス社(http://www.data-max.co.jp/)の東京記者(首都圏在住の政治家、経済人、学者、文化人担当)をしております金木と申します。
 先生の訳書『アメリカンドリームの終わり』を拝読、ぜひ本著を弊誌読者に紹介、そのエッセンスをご理解頂きたいと思いご連絡申し上げました。11月15日頃までの間のどこかで、1時間少々お話をお聞かせ頂けませんでしょうか。
 弊社の経済情報誌『IB (Information Bank)』2018年新春特別号では、「有為転変!」を大きなテーマに据え、政治や経済に関する様々な見識者の意見をお伺いしていく予定です。先生のお話は4頁程度の構成をイメージしております。
 私は同誌の巻頭部分を担当します。先生には訳者として、本著、著者にについて語って頂きながら、訳者の立場を離れて、先生も書かれておりますように、「アメリカの今日は日本の明日」、という立場で、先生が大学で学生に警鐘を鳴らし続けてこられたように、弊誌読者(日本国民)にも警鐘を鳴らして頂きたいと思っています。
 雑誌で締切があるため、勝手な限られた期間のお願いになっておりますが、何卒、主旨をご理解の上、お時間を賜れれば幸いです。当方は東京在住です。お伺いできる場所等に関してもご教示いただければ幸いです。ご返信、そしてお会いできますこと楽しみにしております。


 インタビュー記事の校正原稿は12月に私のところに届き、雑誌掲載は1月下旬だということで、楽しみに待っていたところ、1月24日に、『IB (Information Bank)』新春特別号が拙宅に届きました。「A4変型、4色約200頁」の豪華な大型カラー版で、巻頭インタビューの次に私へのインタビューが載っていて驚愕驚喜しました。
 しかし、「先生が大学で学生に警鐘を鳴らし続けてこられたように、弊誌読者(日本国民)にも警鐘を鳴らして頂きたい」というのがインタビューの趣旨だったので、この雑誌を私がいただくだけでは余りにも勿体ないと思うようになりました。私がこのブログで改めて紹介したくなった所以です。御理解いただければ幸いです。


IBチョムスキー『アメリカンドリーム』小077(縦)
IBチョムスキー『アメリカンドリーム』小079(縦)
IBチョムスキー『アメリカンドリーム』小080(縦)
IBチョムスキー『アメリカンドリーム』小081(縦)


<註> 最近になって金木亮憲記者から、「季刊誌IBのインタビュー記事が『Net IB News』というデーターマックス社のサイトにも3回に分けて転載されている」、との知らせが届きました。そこで上記のJpeg版では非常に読みにくいという方は、下記を御覧いただければ幸いです。
*「チョムスキーに学ぶ~今日のアメリカは明日の日本」1~3
http://www.data-max.co.jp/300202_ibknk_c01/
http://www.data-max.co.jp/300205_ibknk_c02/
http://www.data-max.co.jp/300206_ibknk_c03/

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アメリカの読み方、世界の読み方

アメリカ理解(2018/01/31) NAFTA「北米自由貿易協定」、Deep State「闇の政府」、国防情報局長官マイケル・フリン中将、スメドレィ・バトラー将軍『戦争はペテンだ』


 昨年、長周新聞から「新年号に何か書いてほしい」と何度も依頼があったのですが、「今は疲れていて書けない」と断ってきました。
 しかし度重なる依頼があり、しかたなく「ブログに載せたものを手直ししたものでよければ」と言うと、「是非それをお願いします」ということでした。
 そこで早速、ブログの小論をかなり手直しをして送ったところ、2回にわたって1面トップに連載され、こちらのほうが驚いてしまいました。
 しかも編集部の方から次のような嬉しい便りも届きました。この新聞をjpeg版で、以下で紹介したくなった所以です。
 <寺島先生。読者の反響として、さっそく次のような感想が共通して寄せられています。今後ともよろしくお願いいたします。
 「読みやすく、いっきに読んだ」「引用されている本を読みたくなった」「アマゾン・ブックレビューに乗せられている書評を切り口にしながら、アメリカと世界の見方について全面的に論理を展開している。わかりやすく、さすが寺島先生だと思った」…>
 この小論を既にブログで読まれた方には新しい内容ではないので申し訳ない気もしますが、それでも、どこがどう加筆修正されたのかを検証しながら未読していただければ退屈しないのではないかと勝手に考えました。読者の皆さんのお許しを願うのみです。

s-長周新聞20180115 「アメリカの読み方、世界の読み方」 1-1

s-長周新聞20180115 「アメリカの読み方、世界の読み方」 1-2


s-長周新聞20180117 「アメリカの読み方、世界の読み方」 2-1

s-長周新聞20180117 「アメリカの読み方、世界の読み方」 2-2


<註> 最近になって、2回にわたって連載された拙論が、長周新聞のホームページでは、1回にまとめられたネット版として掲載されているとの連絡を受けました。こちらは写真・書籍がカラーとなって更に迫力が増し、全く別の味わいになっていて驚きました。
https://www.chosyu-journal.jp/kokusai/6612

シリコンバレーの "ワーキングホームレス" は大学教師

アメリカ理解(2018/01/23) ワーキングホームレス working homeless、闇の政府Deep State、シリコン・バレー(ケイ素siliconの谷間)、サドリー・バレー(悲しくsadly生きる谷間)

自家用車で寝る「ホームレスの大学教師」
ワーキングホームレス
© Adam Holesch / Global Look Press


 前回のブログから早くも2週間が経とうとしています。この間、アメリカは相変わらず混沌としています。共和党と民主党がいがみあっているだけでなくトランプと議会も争っていて、トランプ政権はまともに機能していません。議会が予算を通さないので政府機能も一部、麻痺しています。
 しかし、それとは関わりなくDeep Stateは着実に海外で戦争準備を整えています。その口実として「人権」や「民主主義」が使われるのですが、イスラエルの首都をエルサレムに移し、それと並行してアメリカ大使館もエルサレムに移すという案は何の問題もなく議会を通過します。
 つまりアメリカの特権階級、好戦勢力であるDeep Stateにとっては、パレスチナの「人権」や「民主主義」は、実はどうでもよいのだということが、このエルサレム問題を見ているだけで歴然としてきます。このことは国内の民衆にたいしても同じです。
 たとえば西海岸や東海岸でホームレスが溢れていても、彼らには全く気になりません。それどころか野宿者に食べ物などを与えると犯罪になります。これが『アメリカンドリームの終わり』を通じてチョムスキーが訴えたかったことでした。

*‘An unjust law’: 9 charged with feeding homeless in California
「不正な法律」、カリフォルニアで、野宿者に食べ物をやろうとした9人が逮捕

https://www.rt.com/usa/416041-advocates-arrested-feeding-homeless-california/
*California city is 'criminalizing homelessness' with food-sharing ban
「カリフォルニアの街では野宿者を犯罪として扱い、彼らに食べ物をやることが禁じられている」

https://www.rt.com/usa/416326-homeless-charged-feeding-criminalise/

 そこで今回のブログでは、IT産業のメッカであるシリコンバレーで専任の大学教師でさえ自家用車の中で寝泊まりをしなければならないという実態があることを、翻訳し紹介したいと思います。日本をこんな国にしてはならないと思うからです。



シリコンバレーの‘ワーキングホームレス’は車で眠る
ハイテクの大物(テク・タイタン)たちが王者のごとく暮らしているとき

Silicon Valley 'working homeless' sleep in cars as tech titans live like kings
Published time: 8 Nov, 2017 14:39

https://www.rt.com/usa/409230-silicon-valley-working-homeless/

カリフォルニア州の太平洋岸に位置する、この目映いばかりの先端技術の聖地(メツカ)、そこは世界最富裕の資産家や大企業のいくつかの発祥の地なのだが、その周辺にますます増える‘ワーキングホームレス’の数は、アメリカンドリームの悲しき脚注(裏面の説明)として役立っている。

これは、なんらかの理由で経済から転落して、現在、路上で生活しているアメリカ人たちの話ではない。これは働き者のアメリカ人たちの話である。彼らは職に就いていて、しかも時には同時に2つも3つも職を掛け持ちをしているが、それでもまだ必要最小限の家賃を払う余裕がないのだ。これらの人々がアメリカ人のまったく新しい下位文化(サブカルチャー)を浮かび上がらせる存在となってきている。ほんの数十年前には聞いたことがないもので、‘ワーキングホームレス’というものだ。  

サッドリーバレー(悲しみの盆地)?

ここ数年続いているホームレス問題は、シリコンバレー(半導体の盆地)からまず第一に連想されるものではない。シリコンバレーは先進的研究・開発の中心地のひとつとして世界的な地位を享受しているからだ。

アップル、アルファベット(グーグル)、ヒューレットパッカード、オラクルのような、『フォーブス100』誌の企業のうち数十社を抱えているシリコンバレーは、米国全体の投機的資本投資の3分の1を占めている。

またカリフォルニア州の、よく知られたリベラル(あるいは左派的)な傾向を考えると、少し奇異な感じがするかも知れないが、シリコンバレーのテクノロジー関連株は、共和党のドナルド・トランプがホワイトハウスに入って以来ずっと記録を破り続けている。

だとすれば、小売業で働く人、教師、保守作業員、配管工などの多くの類似のサービス産業労働者たちの、この悲惨な現象をどのように説明すればよいのか。つまり、彼らは家賃を払う給料が充分にないため、駐車場で車やRV車から出て、戸外で寝泊まりしているのだ。とりわけ、アメリカの中でも現金の海で泳いでいるような地域において。

“サンノゼの地下鉄エリアの家賃の中央値は、月3500ドルだ。しかし賃金の中央値は、飲食サービス部門で時給12ドル、医療支援業務では時給19ドルだ。それは住宅費をまかなうことすらできない額だ。”とAP通信は、その問題をとりあげた最近の暴露記事で報じた。 
 
その記事はエレン・タラ・ジェイムズペニー(54歳)の胸の痛むような話を詳しく報じた。彼女はサンノゼ州立大学で教えており、4クラスの英語授業をもち、年収は28000ドルだ。しかし2つ学位を取得した後、現在143000ドルの学生ローン負債を抱えている。

“彼女は試験を採点し、授業の準備をする。愛車ボルボの中で。夜になると、彼女は運転席を後ろに反らし、眠る準備をする。そばに2匹の犬のうちの一匹ハンクをおいて。夫のジムは、車で寝るには背が高すぎるので、野外のテントつきの簡易ベッドで眠る。もう一匹の犬バディと共に。

人口8万人の都市マウンテンビューには、300以上の車が都市の至る所に散在し、個人や家族のための狭苦しい住居地としての役割を果たしている。しかし、ますます増えるホームレスの流入に対処するために、市当局者がますます圧力を受けるようになるにつれ、援助資源は限界点にまで達しつつある。

市の公式ウェブサイトによれば、“マウントビューのホームレスは倍近くになった。2013年の139人から、2015年には276人に”。これらの数は2017年には郡全体でさらに上昇した。マウントビューでは、416人のホームレスがおり、2015年から見ると 51パーセント増である。”

その間、すぐ近くのパロアルトの当局者たちは、市の道路沿いに停められたRV車に72時間制限を課すよう強要された。住民からの苦情が多いからだ。

貧乏人のせいか?

彼らの現在の苦境は、こうした悪戦苦闘している個々人のせいにしたいという誘惑にも駆られる。そもそも、車に荷物を積んで、大金持ち連中の荒い金使いが急激なインフレを起こさせていない所へ、移動しさえすればよいではないか。そういった物言いにもいくらかの真実があるようにも思われる。だが問題はそれほど簡単ではない。問題はシリコンバレーの境界を越えているからだ。

ホームレスは今やアメリカでは珍しくないのだが、とくにカリフォルニア州では顕著だ。米国住宅都市開発省によって最近発表されたばかりの研究では、ホームレス率のトップ10都市のうち4つはカリフォルニア州だった(ロサンゼルス、サンディエゴ、サンフランシスコ、サンノゼ)。ただし首位はニューヨーク市だ。

急上昇している株式市場と息を飲むほど高額の役員報酬という楽天的なニュースの影に隠れているのは、ホームレスの急上昇だ。そしてそれは西海岸沿いの多くの州政府に非常事態を宣言させるまでになっている。そういう宣言は、通常は自然災害のために取っておかれるものなのだが。

“空前のホームレス危機が西海岸を揺るがしつづけている。そして、その犠牲者たちはその地域を特徴づけている成功そのものによって置き去りにされているのだ。急上昇する住宅費、どん底の空室率、そして誰一人待ってはくれない怒濤の経済だ”と、ワシントンポスト紙は報じた。

太平洋岸の北から南に至るまで、すべての州政府は解決策を求め苦闘している。

“わが市は経済的には失業率はゼロ。なおかつ数千人のホームレスの人々がいます。彼らは実際に働いています。ただ住宅費を支払う余裕がないだけです。”シアトル市の市会議員マイク・オブライアンはそうワシントンポスト紙に語った。“これらの人々は行く場所がないのです。我々が新しい駐車場を開いても、すぐいっぱいになります。”

その物語をますます悲劇的にしているのは、裕福な人々がそれなしでは生活できない骨の折れる仕事、つまり配管工事・教育・配膳・掃除をこなしている人々の多くが、富へ突進する背後で取り残されつつある人々だ、という事実なのだ。
“これは失業の危機ではないのです。ふつうは失業が貧困につながるのですが、このシリコンバレーは違うのです。”と、コミュニティ・サービス・エイジェンシー(マウンテンビューに本拠地を置く非営利団体)の執行責任者、トム・マイアースはAP通信に語った。“だって、人々は働いているんですからね。”


<註> 上記で翻訳・紹介した実態を別のかたちで紹介しているAP通信の記事があることを知りました。それが次の記事です。
*「シリコンバレーの影:家賃高騰、仕事のあるホームレスが急増 月11万の車上生活」
https://newsphere.jp/technology/20171123-1/
 この記事を読んでいたら、次のような興味深い一節が眼に飛び込んできました。
「15ドルのアボカドの炭火焼を食べて、1,000ドルのiPhone Xをポンと買える若い資産家がいる一方で、家に住めない家庭は数千世帯にのぼる。ホームレス支援団体や市の職員も、ハイテクブームの影で起こっているこの現象に対して、まったくひどい話だと口をそろえる。ホームレスの多くには定職があり、こうした資産家の下で働く人もいる。その資産家こそが、多くの人が家に住めなくなっている元凶なのだ。」
 これを読むと、「アボカドの炭火焼」を食べるのに15ドルもかけるのですから、アメリカの金持ちは菜食主義に傾いていることが分かります。他方、貧乏な黒人を中心として貧困者は肉食です。アメリカでは本当の金持ちしか和食は食べることができません。和食レストランは貧困者には高嶺の花です。トム・クルーズやマドンナといったセレブと言われるひとたちは概して和食であり菜食主義者が多いのです。
 似たような傾向は日本にも現れ始めています。貧乏なサラリーマンは肉丼といった安い肉料理に走り、どんどん癌になり早死にしますが、本当の金持ちは肉食を減らし、通販で取り寄せた高価な「有機栽培の野菜」を食べます。だから金持ちほど長生きすることになります。こうして、かつて長寿県日本一だった沖縄で、若者がゴーヤを食べずに肉食に変わり、今や親が息子や娘の葬式を出すという「逆さ仏」現象が顕著になってきています。



チョムスキーは「反米」「反アメリカ的」なのか

アメリカ理解(2018/01/07) アメリカンドリーム、ワーキングホームレス、Deep State(裏国家、闇の政府)、ムジャヒディーン→アルカイダ→ISISへ

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 前回のブログを書いてから、もう3週間も経ってしまいました。
 チョムスキー『アメリカンドリームの終わり』を出版したあと、12月26~27日および27~28日に予定されていた国際教育総合文化研究所の「第2回『寺島メソッド 英語アクティブラーニング』ワークショップ」および「研究所2017冬期宿泊セミナー」の準備に追われていました。年賀状も29日に上の賀状を書き、30日に丸1日をかけて宛名書きをして、慌てて中央郵便局まで車を走らせるという「師走」ぶりでした。
 日頃は比較的ゆとりのある教師・僧侶ですら走り回るほど忙しくなるのが「しはす」「しわす」だそうですから、まさに語源どおりの12月でした(もっとも、文科省の政策=正規教員の大幅減少により、最近の教師は年じゅう「師走」状態ですから、これでは教育が良くなるはずがありません)。
 やっと正月を迎え、ゆっくりできるかと思っていたら、今度は金沢に出かけなければならないことが勃発し、雪空をついて岐阜と石川県を往復しなければならなくなって、今ようやくパソコンに向かう時間が生まれました。
 このような状態では、さすがに73歳になった老体には、「10日に1回」のブログも難しく、新年からは「1か月に1~2回」にせざるを得ないと思い始めています。書きたいことは山積しているのに体が動きません。どうかお許しいただければ幸いです。

 それはともかく、『アメリカンドリームの終わり』のアマゾン・ブックレビューを読んだ知人が、「偏向している感が否めません」と題する書評(投稿者アレックス2017年12月13日)がブックレビューに載っていることを、年末に知らせてくれました。。
 調べてみると、他の書評はすべて星5つで、この書評者だけが星3つでしたから、無視しても全く問題ないと思ってもみたのですが、この書評者が考えているようなことはかなり多くの日本人が共有している感情・考え方ではないかと思ったので、以下で詳しく検討するのも無駄ではないと考えるようになりました。
 そこで、まずその書評の全文を以下に紹介することにします(この投稿者アレックス氏を引用する場合、A氏と略記させてもらいます)。

 確かにアメリカが大格差社会になっているのは事実ですが、今の世界はアメリカだけではありません。中国などもっと酷いでしょう、言論の自由や人権問題など、中国以上に酷い国はありません。
 チョムスキー氏はアメリカについてはとてもよく解説されていますが他国を見ていない気がします。まさかチャイナロビーに騙されているとは思えませんが、アメリカの今の問題は、中国の経済の対等(ママ、台頭?)、軍事拡大など無視はできません。アメリカは今だ経済も世界一であり、軍事でも世界一ですが、今のトランプ政権は、中国、世界から搾取された富を取り返すと言っているだけです。確かにアメリカ第一主義ですが、でも今の世界どこも自国第一主義になっています。日本は既にアメリカと状況は同じであり、韓国などアメリカ以上に大格差社会で悲惨です。
 チョムスキー氏のような世界に影響力を与える素晴らしい学者の意見ですが、おこがましいのですが、この種の問題はアメリカだけでなく世界中でおきていると思えます。
 アメリカに限定しないでこの本を読めば世界がどういう方向に向かっているかわかると思えます。確かにアメリカの状況は危機的なのかもしれませんが、アメリカが駄目なら、他の国々はもっと悲惨だと思います。


 A氏は冒頭で次のように書いています。
 「確かにアメリカが大格差社会になっているのは事実ですが、今の世界はアメリカだけではありません。中国などもっと酷いでしょう、言論の自由や人権問題など、中国以上に酷い国はありません」「チョムスキー氏はアメリカについてはとてもよく解説されていますが他国を見ていない気がします」
 これを読んで真っ先に浮かんできたのは、「A氏は本当にこの本を読んだのだろうか」という疑問でした。というのは、チョムスキーは本書第2章で、中国について次のように述べているからです。

 製造業を国内から国外へ移し、国の生産力をえぐりとってしまうというのは、意識的な決断の結果でした。というのは、国外には安い労働力が待っていて、そこには健康や安全にかんする厳しい基準もないし、環境基準もなかったからです。
 たとえばメキシコ北部、中国、ベトナムなどは、そのような好条件に恵まれていました。製造業には今でもたくさんの利益を得ている人たちもいますが、かれらが生産しているのはアメリカではなく国外なのです。
 これは多国籍企業にとっては全く利益にかなったことでした。とくに多国籍企業の経営者、その幹部や株主にとっては、非常においしい話でした。しかしもちろん、一般民衆にとっては非常に有害なものでした。
 たとえば世界最大の企業のひとつであるアップル社は、台湾人が所有し、中国国内にある工場で、いそいそと生産に励(はげ)むことでしょう。しかしその工場は拷問部屋と呼ばれるものになっているのです。
 こうして中国は世界の組み立て工場になっています。中国南西部にあるフォックスコンという会社は、そこに送り込まれるさまざまな部品を組み立てているのですが、それらの部品は近隣の工業諸国、たとえば日本、シンガポール、台湾、韓国そして合州国から送り込まれたものです。
 このように、アメリカ企業の得た利益の大半は、この組み立て工場から生まれているのです。もちろん、中国でも百万長者や億万長者の階級は生まれてきていますが、それは伝統的な第三世界で一般的な現象です。(80-81頁)


 ご覧のとおり、チョムスキーは中国についてもきちんと言及しています。この『アメリカンドリームの終わり』という本は、私が「あとがき」でも書いたように、従来のチョムスキーには珍しく、アメリカの国内問題に絞って言及した本ですが、それでも随所に海外の事情についてもふれているのです。
 しかも、ここで注意していただきたいのは、中国の工場をチョムスキーは「拷問部屋」と呼んでいることです。さらに注目すべきなのは、「台湾人が所有する中国本土の工場、拷問部屋と呼ばれている工場で、いそいそと生産に励んでいる」のは、他ならぬ「世界最大の企業のひとつであるアップル社」だという事実です。
 A氏は、「まさかチャイナロビーに騙されているとは思えませんが」「言論の自由や人権問題など、中国以上に酷い国はありません」と書いているのですが、一歩譲って「中国が酷い国だということを認めたとしても、そのひどい状況だからこそ、アメリカは製造業の移転先としてメキシコ北部、中国、ベトナムなどを選んだのです。
 なぜなら、「そこには安い労働力が待っていて」「健康や安全にかんする厳しい基準もないし」「環境基準もなかった」からです。つまり中国を酷い国のままにしておくこと、言論の自由を押さえつけ労働者を低賃金で奴隷状態のままにしておくことは、アメリカの要求にかなうことでもあったのです。つまり人権侵害を助長しているのがアメリカだとも言えるわけです。
 また既に紹介したように、格差社会についてもA氏は冒頭で、「確かにアメリカが大格差社会になっているのは事実ですが、今の世界はアメリカだけではありません。中国などもっと酷いでしょう」と書いています。しかし中国の格差社会についても、チョムスキーは本書で次のように書いているのです。

 ところで国際的な「自由貿易協定」と呼ばれているものの実態は、「自由」貿易どころではありません。そのような経済体制は、明らかな意図をもって作り上げられたものだったからです。
 というのは、世界中の労働者がお互いに競争をして、賃金を値下げしなければならないよう追い込むことに、そのねらいがあったからです。その結果、働く人たちの収入は大きく落ち込むことになりました。
 それはとくにアメリカにおいて顕著でしたが、いまや世界中に広まりつつある現象です。そのことは、アメリカの労働者が、搾取され尽くしている中国の労働者と、競争状態にあることを意味しています。
 ちなみに中国では、貧富の格差はかつてないほど大きくなってきています。中国と合州国はこの点で、超格差社会の双璧をなすものとなっているのです。中国でも、この格差を克服するために多くの労働運動があります。
 しかし厳しい国家体制の下では、それはなかなか楽なことではありません。とはいえ、いまや何かが起こりつつあります。それは確かに世界的普遍的な現象でもあります。(82-83頁)


 上で引用した最期の段落でチョムスキーは「しかし厳しい国家体制の下では、それはなかなか楽なことではありません。とはいえ、いまや何かが起こりつつあります。それは確かに世界的普遍的な現象でもあります」と述べています。つまりA氏が指摘する「酷い中国」でも、労働運動は着実に前進し始めているのです。
 しかし中国人労働者が「拷問部屋」から解放され、低賃金の奴隷状態を抜け出したとき、アメリカは次の「低賃金国家」「人権侵害国家」に企業を移転させていくでしょう。ときには、そのためにクーデターを起こすことも厭いません。しかもそれは今もホンジュラスやベネズエラなど中南米その他で実際に起きたこと、今も起きていることです。
 このことをチョムスキーは上記の引用段落に続けて次のように述べています。つまり「言論の自由を侵し人権侵害を助長している」のは、当のアメリカなのです。

 アメリカが国外に輸出しているのは、人間を操作するさまざまな価値観です。たとえば、富を一部の集団に集中させること、働く人びとに税金を課すこと、働く人びとの権利を奪うこと、働く人びとを搾取すること等々です。それこそ、アメリカが現実の世界で輸出しているものなのです。それは、富裕層と特権階級を守るための貿易制度をつくりあげようとした結果、自動的に生まれたものだとも言えます。(83頁)



 このように書いていくと切りがないのですが、A氏はさらに次のように書いているので、これについても最低限の言及は必要だと思うので、あえて取りあげることにします。

まさかチャイナロビーに騙されているとは思えませんが、アメリカの今の問題は、中国の経済の対等(ママ、台頭?)、軍事拡大など無視はできません。アメリカは今だ経済も世界一であり、軍事でも世界一ですが、今のトランプ政権は、中国、世界から搾取された富を取り返すと言っているだけです。


 これを読むと、またもやA氏が本書を読まずに、日本の大手メディアや政府から垂れ流されてくる情報を鵜呑みにして書評を書いていることが露呈されています。トランプ氏がヒラリー女史を相手に選挙戦を闘ったときの公約で、大きな柱は次の諸点でした。
1)NAFTAは企業を海外に移転してアメリカ国内の労働者から仕事を奪ったから、これを見直す。TPPもNAFTAの延長にすぎないから、これには反対する。
2)今までのアメリカは海外で戦争を拡大し、CIAやNATOを使って外国でクーデターを起こすことにいそしんできた。その典型例がシリアで進行している戦争だ。
3)しかし、いまアメリカに必要なのは海外の戦争や政権転覆に精力を集中することではなく、国内の経済を建て直すことだ。
4)したがって今後はCIAの活動を再点検し、必要なら廃止または改組する。NATOも冷戦の産物であり、ソ連が崩壊した現在、NATOは今や時代遅れであり、これに莫大な予算を注ぎ込むのではなく、国内経済の立て直しに財力を注ぐべきだ。
5)だから、いま最も必要なのは、莫大な死者と難民を生み出し、EU諸国にテロが頻発する根本原因を絶つことである。そのために、ロシアと協力しながら、イスラム原理主義を奉じるテロ集団ISISを根絶することが急務である。

 このような政策が民衆に支持されたからこそ、大手メディアに袋だたきにされながらも、トランプ氏はヒラリー女史を打ち破り、地滑り的勝利をおさめたのでした。トランプ氏がどのような層から支持を得たのかも、本書でチョムスキーは詳細に論じているのですが、A氏はそれも読んでいないのか何の言及もありません。
 それはともかく、このようにトランプ氏が掲げた政策は、金融界や軍産複合体の利益を大きく損なうものでした。ですからトランプ当選が奉じられた途端、世界中の株価が大きく下落するという騒ぎにもなりました。また、だからこそ、大手メディアを中心としてトランプ氏に対する攻撃は選挙時よりも激しくなりました。
 他方、ヒラリー女史を先頭とする民主党幹部からのトランプ攻撃も、選挙が終わってからも衰えることはなく、むしろ激しくなったと言えます。ヒラリー女史は「自分が負けたのは、ロシアがハッカー攻撃をして民主党本部からヒラリー叩(たた)きに有利な情報を盗み出したからだ」「トランプはロシアの操り人形だ」という攻撃を始めたからです。
 このようにトランプ氏に対する攻撃が激しくなった結果、氏の政策は徐々に変化を見せ始め、今ではトランプ氏がおこなっている政策は、当初に掲げた政策とは全く違ってしまいました。それどころか金融街・軍産複合体を中心とする「裏国家」「闇の政府」、いわゆるDeep Stateの言うとおりに行動していると言ってよいでしょう。
 何がトランプ氏の姿勢を変えたのでしょう。
 大手メディアからの攻撃、リベラル知識人をも巻き込んだ民主党陣営からの攻撃で、自分が任期を待たずに罷免されるかも知れないという恐れが、氏の政策を変える大きな要因になったことは疑いありません。またケネディ兄弟の暗殺をみれば分かるように、下手をすると自分も暗殺されるかも知れないという恐怖感も、これに加わっていた可能性もあります。
 (その証拠に、公約ではあれほどCIAの海外における政権転覆活動を攻撃していたのに、ホワイトハウス入りをした最初の訪問先がCIAでした。)
 こうした氏の姿勢の変化で、NATO軍は解体されるどころかロシアの国境沿いに兵力を増強し、ロシアといつ戦闘が始まっても不思議はない緊迫した情勢になっています。またアジアでも、北朝鮮の行動を口実にした「アメリカによる韓国と日本の大型軍備の増強」により、中国との緊張関係も高まる一方です。
 アメリカにしてみればヨーロッパやアジアで緊張関係が高まれば、それを口実に目の玉が飛び出るほど高額の軍事兵器を東欧や韓国・日本に売りつけることができるわけですから、こんなに美味しい話はないでしょう。
 また安倍政権にとっても北朝鮮を口実に憲法を改悪し、自衛隊の兵力を一気に強化することができるわけですから、これほど好都合なことはありません。北朝鮮の行動は、うまくいけば日本も核兵器をもつ口実にも使えます。日本が原発をやめるとは言わない真の理由がここにあります
 しかし一般民衆にとっては、軍事費が激増する分だけ福祉や医療や教育への予算が削られ、消費税や所得税が増える一方なのですから、これほど悲惨なことはありません。これはアメリカ国民にとっても同じで、トランプ氏の政策が「国内経済ファースト」から「軍事力増強ファースト」へと大きく逆転することになったのですから、国民の生活が改善することは、ほぼ望み薄になりました。
 このように考えてくると、A氏が次のように書いていたことの荒唐無稽さが、いっそうよく理解できるのではないでしょうか。

まさかチャイナロビーに騙されているとは思えませんが、アメリカの今の問題は、中国の経済の対等(ママ、台頭?)、軍事拡大など無視はできません。アメリカは今だ経済も世界一であり、軍事でも世界一ですが、今のトランプ政権は、中国、世界から搾取された富を取り返すと言っているだけです。


 そもそも、アメリカで巨大な力を振るっている「イスラエルロビー」についてはよく知られていますが、「チャイナロビー」については、ほとんど聞いたことがありません。ですからチョムスキーが「チャイナロビーに騙されている」かも知れないと考えることそのものが荒唐無稽な発想でしょう。
 また中国経済が世界第2位(購買力平価では第1位)になっていること、軍事力も強化されていること、これらは疑いのない事実ですが、これも、「アメリカが中国近海で、日本も巻き込んだ大軍事演習を繰りかえしていることの対抗策ではないか」と考えてみるゆとりが、A氏にはまったくないように見えます。
 これは、中国の海軍や空軍がロシアと一緒に、アメリカ近海で軍事演習を繰りかえしたら、アメリカがどのような行動をとるかと考えてみれば、すぐわかることではないでしょうか。このように考えられないのは、安倍政権や大手メディアの流す中国脅威論に、A氏がそのまま載せられているからではないでしょうか。

 最期に、A氏が「今のトランプ政権は、中国、世界から搾取された富を取り返すと言っているだけです」と言っているのも、実に奇妙なものです。というのは、この文脈からすると、「中国を初めとして世界中がアメリカを搾取している」ということになるからです。
 これほど現実離れした世界認識を読むと一瞬、唖然としてしまいます。なぜなら、かつてのローマ帝国と同じように、世界中に軍隊を派遣して軍事基地をもち、世界中から搾取し続けてきたのが、アメリカの歴史であることは、よく知られた事実だからです。
 国内で先住民(アメリカインディアン)を殲滅したあと、搾取すべき対象を求めて最初に支配したのは中南米でした。が、徐々に太平洋を越えてアジアにも進出し、まずスペインの支配下にあったフィリピンを植民地にしました。その後、ベトナム戦争に乗りだし挫折しましたが、旧ソ連に同じ苦しみを味あわせようと画策されたのが、アフガニスタンにおける戦争でした。
 ソ連軍をアフガニスタンにおびき出し、10年近くもアフガニスタンに縛り付けて、ソ連を疲弊させ解体させる戦略を立て、それをカーター政権におこなわせたのが、大統領顧問のズビグネフ・ブレジンスキーでした。そのとき傭兵として使われたのがイスラム教の戦士で、当時「ムジャヒディーン」(アメリカでは「自由の戦士Freedom Fighters」)と呼ばれていました。
 サウジアラビアを初めとする中東各地から集められた、このイスラム教原理主義のテロリストをかり集める中心人物だったのが、オサマ・ビンラディンだったこともよく知られた事実です。この「ムジャヒディーン」が、後の「アルカイダ」の母体となり、それがアサド政権を転覆させるための傭兵集団「ISIS」となっていったこと、それを裏で支えたのもオバマ政権だったこと、これも今では広く知られるようになった事実です。
 トランプ政権発足当初の顧問だったマイケル・フリンが、すぐにDeep Stateから猛攻撃をうけて辞職せざるを得なくなったのも、フリンがこのような裏の事実を暴露し、ISISと戦うためにロシアと手をつなぐべきだと主張したことが原因だろうと言われています。フリンは、国防情報局長官だった頃、このような事実を調査し報告書としてオバマ大統領に提出していたのですが、オバマ氏はこれを却下してフリンを解任・辞職に追い込んでいます。
 あの有名な911事件のあと、アメリカは「ビンラディンを匿っている」を口実に、再びアフガンに乗りだし、その後すぐに「大量破壊兵器」という嘘でイラク戦争を始めて、今ではアメリカが広げた戦火はリビア→シリア→イエメンと、とどまるところがありません。そのなかで多くの国が瓦礫と化し、何十万という人が殺され、何百万という人が難民となりました。
このような破壊と殺戮が、「人道のため」とか「自由と民主主義を守るため」とかいう口実でおこなわれましたが、その裏に潜む本当の理由は、石油であったり、ガスのパイプラインを引くためであったり、ドルを世界通貨として維持するためでした。その根拠となる事実はここでは詳しく説明するゆとりがないので割愛させていただきますが、つまりアメリカが世界中に武器を売り、世界中から利益を搾取するためでした。
 (スメドレー・バトラーという、当時アメリカで最も尊敬されていた将軍が、退職後、『戦争はペテンだ』という本を著し、「俺はアメリカ大企業の用心棒にすぎなかった」と言ったことは、あまりに有名な話です。『肉声でつづる民衆のアメリカ史』明石書店、上巻442-448頁に、その詳細が転載されていますから、ぜひ読んでいただきたいと思います。)
 そして今また、シリアでISISが決定的に敗北したのを取り戻すため、アメリカは「イランは国民を弾圧している」という口実で、新たな戦争を計画しているように見えます。リビアやシリアで失敗した戦略を、壊れたレコードのように繰りかえすのを、いつまで世界は座視し続けるかと思うと、気が重くなります。
*流血の弾圧を演出、軍事介入へつなげようとするのは米国の常套手段だが、イランでも使われている
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201801050000/

 A氏が「アメリカは今だ経済も世界一であり、軍事でも世界一ですが、今のトランプ政権は、中国、世界から搾取された富を取り返すと言っているだけです」と言っていることの検証を、これで終わりにしたいと思います。
 まだまだ述べたりないことは多いのですが、それを全て述べていると1冊の本になってしまいますから、やむなく断念せざるを得ません。
 それでもこれだけの時間と分量をかけてA氏の主張を検証したのは、このような意見がA氏個人のものではなく、リベラルを自称する知識人も含めて、かなり多くの日本人が共有している感情ではないかと思うからです。
 そのような感情がA氏の書評タイトル「偏向している感が否めません」に見事に表現されているように思いました。この表題を文字通り読むと、「チョムスキーは偏向している」、つまり「チョムスキーは反米的・反アメリカ的だ」とA氏が主張していることなりそうです。
 この「反米的」「反アメリカ的」という用語について、チョムスキー自身が本書で興味深い意見を展開していますので、それを以下に紹介して、やや長くなりすぎた今回のブログを閉じたいと思います。

 このアメリカ社会で使われている「反アメリカ的」という考え方は、きわめて興味あるものです。それはじっさい、全体主義的な考え方で、自由主義社会ではふつうは用いられないものです。というのは、イタリアで誰かがベルルスコーニ大統領やイタリアの政治家の批判をしても、かれらは決して「反イタリア的」とは呼ばれないでしょう。反イタリア的などと言おうものなら、ローマやミラノの路上でそれを聞いた人たちは、腹を抱えて笑いだし卒倒するでしょう。全体主義国家ではそのような言い方が使われてきました。
 たとえば旧ソ連では、反体制的な人びとや政権を批判する人たちは、しばしば「反ソビエト的」と言われてきました。かれらを糾弾することばとしては、それはもっとも厳しいものでした。かつてのブラジルの軍事独裁政権下でも、同じような人たちが「反ブラジル的」と名指しされました。
 つまり、このような考え方は、国家と社会、国家と文化、国家と個人などを、同一視する文化のなかでしか生まれてこないものです。だから、そのような文化では、あなたが国家権力を批判したり、国家権力の集中を批判すると、社会や民衆を批判していることになるわけです。ただしここでわたしの言う国家とは、たんに政府のことだけではなく、企業による国家権力をも意味します。
 このような「反アメリカ的」という用語が、このアメリカで使われていることはきわめて衝撃的な事実です。わたしの知る限り、民主主義国家において、そんな言い方が嘲(あざけ)りの対象になるのは、おそらくアメリカだけでしょう。それは、アメリカのエリート文化のひとつの象徴であり、きわめて醜悪なものです。
 どの社会でも、権力を批判する人たちは中傷されたり虐待されたりすることは事実ですが、さまざまな社会のあり方に応じて、そのあり方はさまざまです。たとえば、一九八〇年代の旧ソ連では、かれらはおそらく投獄されたことでしょう。エルサルバドルでは、それだけではなくて、アメリカが裏で操るテロリスト特殊部隊によって頭が吹き飛ばされたものでした。他の社会では、たんに批判されたり中傷されたりするだけで終わるかもしれませんが。(57-59頁)


 これを読んでいただければ、A氏が本書をほとんど読まないで論評していることが、改めて明らかになるはずです。
 とはいえ、前述したように、私はこのブログをA氏個人を貶(おとし)めるために書いたのではありません。繰り返しになりますが、A氏のような感情・意見は、少なからぬ知識人までもが共有しているものだからです。
 ですから安倍政権のみならず、NHKや大手マスコミは、トランプ大統領が誕生した当時、「株が大暴落する」「TPPが廃止になると日本経済は大変なことになる」と大騒ぎしたのでした。ところが一旦トランプ政権が誕生してしまうと、安倍政権は今までのヒラリー支持の姿勢をかなぐり捨てて、トランプ氏に迎合するようになりました。
 A氏は上記書評で「確かにアメリカ第一主義ですが、でも今の世界どこも自国第一主義になっています」と書いています。しかし今の安倍政権は、とても「自国第一主義」とは思えません。日本の利益をアメリカのために差し出しているのが今の安倍政権であり歴代の政権ではなかったでしょうか。
(唯一の例外は鳩山・小沢政権でしたが、おそらく裏でアメリカの手が伸びていたのでしょう、見事に政権転覆させられて退陣することになってしまいました。)
 これは、米軍が沖縄でどれだけ事故を起こそうが、どれだけ女性をレイプしたり人を殺そうが、事態に改善の兆しが一向に見られないことに、典型的に表れています。それどころか何億円何兆円もする巨額な兵器を買わされているのが実態です。米軍の施設・滞在費を負担しているというのも、世界中にでは日本だけです。
 イラク戦争が終わった後、米軍は日本と同じように半永久的にイラクに駐留したかったのですが、それがかなわなかったのは、アメリカの傀儡政権・あやつり人形だと思われていたイラク政府が、「米軍がイラクの地で犯した犯罪は、イラク政府が犯人を逮捕し、イラク政権が裁判にかける」と主張して譲らなかったからでした。
 ところがなかば占領下にあったイラク政府が主張したことすら、日本政府は主張してこなかったのです。このような姿勢のどこに「自国第一主義」があるのでしょうか。アメリカの指示による郵政民営化も、過疎に喘ぐ農民・住民の唯一の頼りであった郵便局や郵貯を奪い、一層の過疎化を促進することになっています。
 農村を荒廃するに任せ、「種子法」を廃止することは、「食料の自給率」を低め、国家の安全保障という観点からも由々しき事態ですが、安倍政権はアメリカ企業が日本農業に参入する条件づくりをすることに余念がありませんから、ここにも「自国第一主義」を見ることはできません。
 ですから、A氏は「アメリカに限定しないでこの本を読めば世界がどういう方向に向かっているかわかると思えます」と述べ、書評の末尾を次のように結んでいるのですが、だとすれば、なおさら日本の現実をもっと直視してほしいというのが私の切なる願いです。

 チョムスキー氏のような世界に影響力を与える素晴らしい学者の意見ですが、おこがましいのですが、この種の問題はアメリカだけでなく世界中でおきていると思えます。
 アメリカに限定しないでこの本を読めば世界がどういう方向に向かっているかわかると思えます。確かにアメリカの状況は危機的なのかもしれませんが、アメリカが駄目なら、他の国々はもっと悲惨だと思います。



 もうひとつだけ蛇足として付け加えさせていただくならば、A氏は上記末尾を「確かにアメリカの状況は危機的なのかもしれませんが、アメリカが駄目なら、他の国々はもっと悲惨だと思います」と結んでいます。
 これも日本の知識人の一般的思考パターンをよく示しています。日本の裁判制度を批判して有名になった『絶望の裁判所』をあらわした瀬木比呂志氏も、東大法学部を卒業した元裁判官ですが、本書「あとがき」でもふれたように、やはり「日本の裁判所は駄目だがアメリカの司法は素晴らしい」と述べているのです。
 しかし『肉声でつづる民衆のアメリカ史』を読んでいただければ分かっていただけると思うのですが、アメリカの司法制度は特権階級を守るためにあり、民衆はむしろこの司法制度のために苦しめられ、牢獄はそのような人たちであふれていることがよく分かっていただけるはずです。
 「アメリカが駄目なら、他の国々はもっと悲惨だ」という認識は全く間違いです。アメリカの医療を告発した映画『シッコ』が明らかにしたように、ヨーロッパの医療はアメリカとは比べものにならないくらいに良いものでしたが、アメリカが引き起こした中東の紛争で、EU諸国に難民があふれ、このような医療制度も危機に瀕しています。
 日本の医療も教育も、世界中の心ある人が羨むほどの高水準にあります。拙著『英語で大学が亡びるとき』で詳述したように、OECDの成人力調査で日本はトップレベルでしたが、アメリカは最下位あるいは下から2番目です(同書261頁)。264頁にグラフを載せてありますから、ぜひ御覧ください。
 つまり「アメリカが駄目なら、他の国々はもっと悲惨だ」という認識自身が日本を間違った方向へと導いているのです。何度も言うように、このような思考は知識人すらも共有している考え方ですから、A氏が上記のような発想に立つのもやむを得ないのですが、このささやかな論考が、そのような認識を正すのに少しでもお役に立てば、こんなに嬉しいことはありません。

<註> トランプ氏の大統領就任演説は元財務次官だったPCR氏(ポール・グレイグ・ロバーツ)から激賞をうけたほどでした。
*Trump’s Declaration of War「トランプの宣戦布告」
https://www.paulcraigroberts.org/2017/01/20/trumps-declaration-war/(原文2017/01/20)
http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2017/01/post-96d8.html(邦訳2017/01/23)
 この公約があっという間に大変身を遂げたことは本当に残念なことでした。しかし、今までのトランプ氏の言動を見ていると、そのようなことをトランプ氏に期待することが、そもそもの間違いだったのだかも知れません。

クリス・ヘッジズとPCR(ポール・グレイグ・ロバーツ)が語る、アメリカの教育と大学

アメリカ理解(2017/12/14) エルサレム、イスラエルロビー、大学教師「終身在職権tenure」、ノーマン・フィンケルスタイン、ホロコースト産業

フィンケルスタイン1 フィンケルスタイン2

 トランプ大統領が「エルサレムをイスラエルの首都だ」とし、アメリカ大使館をエルサレムに移すと宣言したことで、世界中が騒然としています。
 今までアメリカと一緒になってISISを裏で支援しシリア政府転覆に力を注いできたサウジアラビア政府も、これには流石に賛成するわけにはいかず反対意見を表明せざるを得なくなりました。
 さもないと、パレスチナどころか、湾岸諸国=イスラム王制独裁国家の「一般民衆の怒り」を抑えることができなくなり、自分の政権すら維持できなくなる恐れがあるからです。
 こうしてトランプ氏は自分の首をつなぎ止めるためにDeep State「裏国家、闇の政府」の言いなりになって、「エルサレムをイスラエルの首都だ」と宣言したのですが、そのことがアメリカをますます世界から孤立させることになったようです。
 EUはもちろん、アメリカの「プードル犬」と言われるイギリスでさえ、トランプ氏に異を唱えざるを得なくなっているからです。
 しかし実は、「1999年5月31日までにそこへ大使館を建設するべきだ」とする法律を、今から22年前の1995年に、アメリカ議会がつくりあげていたのですから、トランプ氏の宣言は、単にそれを追認したにすぎませんでした。
*トランプ米大統領の演説はイスラム世界で封印されていた米国のイスラエル政策に対する怒りを噴出
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/20171211/(櫻井ジャーナル20171211)
 しかも、上院は今年(2017年)6月5日、その法律を再確認する決議を賛成90、棄権10で採択しているのですから、この宣言を口実として、ヒラリー女史を先頭とする民主党が、大手メディアと一緒になってトランプ叩きのために奔走することになれば、アメリカ政治は、まさに末期的症状になっていると言わざるを得ません。
 とはいえ、この「トランプ宣言」の功績は、アメリカの政治がいかにイスラエルロビーによって動かされてきたかを、闇の世界から昼の世界へと、公然化したことにあるとも言えます。これまでもトランプ氏は、「大統領はDeep Stateの単なる御飾り・御神輿にすぎない」ということを、みごとに体現して見せてくれていますから、氏の言動は大いに褒めてあげるべきではないでしょうか。


 それはともかく、今回のブログは、いろいろ読んで新しく発見したことをもとに、すでに書いたブログ「日本人の真の学力を知らない文科省、アメリカンドリームが終わったことを知らない研究者」(2017/11/15)の続編を書くことにあります。
 というのは、私自身がアメリカの大学で教えた経験や、世界的に著名な平和学者ガルトゥングおよび苅谷剛彦氏(元東大教授、現オックスフォード大学教授)の言説をもとに、「アメリカの大学は留学するに値するか」を詳説したのですが(拙著『英語で大学が亡びるとき』第3章第2節)、その後いろいろ読んでみて、ますます拙著で書いたことに確信をもつようになったからです。
 その一端を、先のブログの<註2>で、私は次のように紹介しました。ここで取りあげたPCR(ポール・グレイグ・ロバーツ)は、スタンフォード大学やジョージタウン大学などで教鞭を執ったこともある、研究者でもありました。

アメリカの元経済政策担当財務次官補で、ウオールストリート・ジャーナルの元共同編集者だったPaul Craig Robertsが、ブログ(2017/11/08)で、自分の国アメリカを次のように描いているのを見つけました。
*From Superpower to Incompetence(超大国から無能へ)
https://www.paulcraigroberts.org/2017/11/08/from-superpower-to-incompetence/
 ・・・ 大学は無能だ。大学は、学生を教えるための(十分な)教授を雇う代わりに、教授たちを管理する管理者を雇っている。こうして、今や教授の代わりに、学長、副学長、総長、副総長、学部長、副学部長等々ばかりが居並んでいる。教科教育の代わりに、言論統制と感受性訓練がある。大学は予算の75%も管理者に使い、彼らの多くが途方もない収入を得ている。
 公立学校は標準全国テストによって無能化されている。現在の教育の目標は試験に受からせることだ。学校の評価と教師の給与は、能力ある生徒たちの創造性や自立思考を発達させることではなく、標準化されたテストのため生徒を丸暗記においやることにかかっている。こういう話はきりなく続けられる。・・・

(和訳は「マスコミに載らない海外記事」(2017/11/12)に載っていたものに、私が一部、加筆修正を加えました。全文を読みたい方は下記を参照ください。)
http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/paul_craig_roberts/index.html)


 日本の英語教育は、指導要領の改悪で「英語で授業」が基本的な柱となり、文科省が先頭になって英検受験やTOEIC・TOEFL受験の旗を振ることによって、ますます会話中心暗記中心になっていますから、学力の劣化は避けられません。
 それに輪をかけて文科省は大学入試までも民営化すなわち民間企業に「外注」することを前面に打ち出すようになっているのですから、早晩、日本の英語教育はテストのための教育となり、無能化していくことは目に見えています。私が『英語教育が亡びるとき』(明石書店)を書かざるを得なくなった所以です。
 また日本の大学の劣化ぶりも歴然としています。私が勤務していた国立大学の経験からしても、研究する時間よりも文科省や大学本部への報告書づくりに追われているのが現状です。しかも上で決まられたことを追認するだけの会議に時間を奪われ、ますます研究に費やす時間がなくなります。
 もっと悲劇的なのは、教授会を含めて、このような意味のない会議への出席点検が最近とみに厳しくなってきていて、その出席率が昇進昇格や給料にまで影響を及ぼしかねない勢いになってきている実状です。
 これは単に地方の国立大学や弱小私立大学だけのことかと思っていたら、京都大学や九州大学などの旧制帝国大学もあまり変わらないことを知って愕然としました。しかも、これを告発しているのがイギリス人やアメリカ人の准教授だったことは、二重の驚きでした。これでは優秀な研究者が国外流出したくなるのも当然ではないでしょうか。(拙著『英語で大学が亡びるとき』281-282頁)。

 もうひとり、ここで紹介したいのは元ニューヨークタイムズの記者だったクリス・ヘッジズのアメリカ大学論です。氏はプリンストン大学やコロンビア大学のような超一流大学で客員教授をしていたこともあります。
 その彼が、自分の勤めていたニューヨークタイムズ、そして客員教授として教鞭をとったことのあるアメリカの大学について、次のように語っていることは、私にとって極めて興味深いものでした。

 ・・・ニューヨークタイムズは常にエリート向け刊行物ですが、エイブ・ローゼンタールが編集長だった財政難時代、ネオコンと新自由主義イデオロギーを全面的に奉じていました。エリートに応える特別欄を設けたのは彼です。
 彼は、ノーム・チョムスキーやハワード・ジンのように、規制のない資本主義と帝国主義を批判する人々を締め出す事実上の検閲を課し、彼は、ニューヨークの不動産開発業者に挑戦したシドニー・シャンバーグや、エル・モゾテの虐殺(エル・サルバドル)を報じたレイモンド・ボナーのような記者を、追い出しました。(中略)
 大企業が支配する国家で、そのれにたいする根源的批判に固執すれば、生活は極めて困難になります。終身在職権は決して得られません。役職にはつけません。賞は取れません。補助金は得られません。ニューヨークタイムズは、著書を書評する場合でも、ジョージ・パッカーのような従順な保守人間に任せ、私の最新著作でそうしたように、中傷させるのです。
 私は、プリンストンやコロンビアのような幾つかの大学で客員教授として教えたことがありますが、エリート大学は、大企業の構造と目標の複製です。博士学位審査委員会や、まして「終身在職権」を得るための審査委員会を切り抜けたいと思ったなら、徹底的に安全第一で行かねばなりません。
 大学組織の中に浸透し、大企業からの寄付や同窓会富裕層の命令を通じて押しつけられている、大企業寄りの姿勢に異議申し立てをしてはならないのです。実を言うと、こうした理事会メンバーの大半は監獄に入るべき経歴の持ち主だからです。
 17世紀のイギリスでは、投機は犯罪でした。投機家は絞首刑にされました。ところが現在、そのような連中が経済と国家を運営しているのです。連中は、略奪した富を、アメリカの知的・文化的・芸術的生活を破壊し、アメリカ民主主義を消滅させるのに使っているのです。連中のためのピッタリの言葉があります。国賊です。

(和訳は「マスコミに載らない海外記事」(2017/10/14)に載っていたものに、私が一部、加筆修正を加えました。全文を読みたい方は下記を参照ください。
*The elites “have no credibility left:”An interview with journalist Chris Hedges
「エリートには何の『信頼性』も残されていない」、クリス・ヘッジズへのインタビュー

http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/paul_craig_roberts/index.html)


 
 クリス・ヘッジズは、「自由と民主主義」すなわち「言論の自由」「教育研究の自由」を高々と掲げているアメリカの実態を、このインタビューで赤裸々に暴露しています。
 上記のインタビューでは、体制に逆らうテーマで博士論文を書こうとすれば、先ず学位を得られる見込みはないとクリス・ヘッジズは述べています(チョムスキーも同じことを、『チョムスキーの教育論』明石書店2006で述べています)。
 また万一、学位を得られたとしても、今度は大学教授としての昇進昇格も危うくなります。ましてや「終身在職権」を得る見通しは、ほぼゼロになります。その典型例がノーマン・フィンケルスタインでしょう。
 フィンケルスタインの父親はアウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所収監の、母親はマイダネク強制収容所収監のユダヤ人生存者でしたが、イスラエルの姿勢に批判的だったにもかかわらず、幸運にも1988年にプリンストン大学より博士号を取得していますが、大学で職を見つけようとすると、ことごとく妨害されました。
 というのは、フィンケルスタインは著書『ホロコースト産業――同胞の苦しみを「売り物」にするユダヤ人エリートたち』(三交社, 2004年)で見られるとおり、アメリカのユダヤ人エリートが自らの政治的・経済的利益にそぐわないものに対して反ユダヤ主義のレッテルを貼りつけ、ユダヤ人=ホロコースト被害者の立場を濫用し金儲けをしていると強く批判していたからです。
 そして苦労して手に入れ准教授を務めていたシカゴのデポール大学では、間近に迫っていた終身在職権(テニュア)の取得も、大学上層部によって否決されてしまいました。こうして結局フィンケルスタインはデポール大学を退職する結果となりましたが、この裏で外部から執拗に妨害工作をしていたのがアラン・ダーショウィッツ教授(ハーバード大学)だったことも分かっています。
 ユダヤ人以外がイスラエルの政策を批判すると「反ユダヤ主義」のレッテルを貼られることは珍しくありませんが、ホロコーストの生き残りを両親とするフィンケルスタインが、ユダヤ人エリートやイスラエルロビーから攻撃され、生活の糧を失うというのは、何ともやりきれません。しかし何度も言いますが、これがアメリカの実態なのです。

 ちなみに、ジャーナリストとして真実を述べる姿勢を貫くためにニューヨークタイムズに居られなくなったクリス・ヘッジズは、いまRT(RsussiaToday)で氏独自の番組『ON CONTACT』を持つことができるようになっています。
 チョムスキーの新著『アメリカンドリームの終わり』の原著を片手に、ヘッジズがチョムスキーに2回連続のインタビューをする姿を見たときは、正直言って驚きました。RTは広がりは、これほどの厚みも増しているのです。
* Noam Chomsky interview - Part I (On Contact, Chris Hedges)
https://www.rt.com/shows/on-contact/394964-noam-chomsky-neoliberalism-interview/
 しかしクリス・ヘッジズだけでなく、ラリー・キングやエド・シュルツといった著名ジャーナリストが、アメリカの大手メディアに居場所が得られず、RTで番組を持つようになったことは、RTの評判がますます高くなっていくわけですから、RTにとっては喜ばしいことかも知れませんが、アメリカの言論界にとっては実に不幸なことです。アメリカが全体主義国家になっていく兆しにならないことを願うのみです。

<註> 
 いま大手メディアで話題になっていることのひとつに「ロシアが国家ぐるみでドーピングをしている」という話があります。しかし、これも「ロシアによるアメリカ大統領選挙への干渉」という話題と同じく、1年近くも調査を続けているのに、何一つ確たる証拠が出てきません。
 これは、「ウクライナ上空を飛んでいたマレーシア民間機をロシアが撃ち落とした」とする宣伝についても同じでした。調査団を現地に派遣して残骸を調べるようにロシアが要請しても、調査団が来ないうちに「報告書」が作成されて、ロシアによる疑いが極めて強いとする結論のみが、大手メディアを通じて大々的に流されたのでした。
 このような状況を考えると、かつてソ連とアメリカが対峙していた「冷戦」の頃よりも事態は深刻で、それがいつ「熱戦」に転化するか分からない情勢です。
 戦争をしたい勢力は、イラクの「大量破壊兵器」のときと同じく、次から次へと「偽旗事件」を引き起こしたり、FakeNews「偽旗報道」を流したりするのですから、今ほど「真実を見抜く眼」が求められているときはないと思います。


「言論の自由」の崩壊――アメリカ民主党・リベラル派の腐敗・堕落

アメリカ理解(2017/12/02) ロシアゲイト、RT(Russa Today)、外国エージェント登録法(FARA)、「裏国家、闇の政府」(Deep State)


書評チョムスキー『アメリカンドリームの終わり』東京新聞2017/11/19
東京新聞チョムスキー書評20171119071

 現在(2017年2月)のアメリカは機能不全に陥っています。
 というのは、アメリカ議会が、「ロシアが裏でアメリカ大統領選挙に干渉し、そのおかげでトランプは選挙に勝利した」とする、いわゆる「ロシアゲート」を一貫して取りあげ、その他のことはまともに議論されていない観があるからです。
 しかも、この「ロシアゲート」を大々的に取りあげ、トランプ大統領の公約「アメリカファースト」すなわち「軍隊を海外に送って他国の政治に干渉したり政権転覆したりすることをやめる」という政策の実行を一貫して妨害してきたのは、ヒラリー・クリントンを先頭とする民主党幹部でした。
 こうしてトランプ氏は今では「裏国家」「闇の政府」(いわゆるDeep State)の言いなりになって「CIAの解体」「NATO解体」という公約を取り下げるどころか、今ではロシア国境近くにNATO軍を終結させ、一触即発の近況が続いています。いつ核戦争になってもおかしくない状況です。
*「戦争が差し迫っているのが見えないのだろうか」
Paul Craig Roberts (元アメリカ財務次官) 20171127
http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2017/11/post-412f.html

 これはアジアについても同様で、トランプ氏はアフガニスタンからの撤兵を取りやめ、さらに北朝鮮との対話を始めるどころか「北朝鮮を破壊してやる」とわめき出す始末です。他国を侵略し破壊することは、ナチスドイツを裁いたニュルンベルク裁判で「人道に対する罪」として指導者は絞首刑にされたはずなのに、今はそれをアメリカ大統領が堂々と公言するまでになっているのです。
 トランプ氏が「Deep State」の言いなりになって、このような言動を繰りかえしていても、その先頭に立っている民主党幹部の姿勢は変わることはありませんでした。
 それどころか、「ロシアが裏で民主党本部にハッカー攻撃をした」という口実が通用しなくなったので、「ロシア国営放送RTが番組を通じてヒラリー女史に不利なニュースを流したからだ」として、アメリカ議会は「報道機関としてRTが自由な取材活動をする自由を制限する法案」を通過させ、司法省もこれを許可しました。
 この根拠になった法律「外国エージェント登録法(FARA)」は1938年に制定されたもので、当時のナチスドイツを対象にしたものでした。それをよりにもよって巨大な犠牲を払ってナチスドイツを敗退させたロシア(旧ソ連)にたいして適用するというのですから、アメリカの知性(進歩派リベラルと言われている人たち)の荒廃ぶりは目を覆わんばかりです。
 その動きは大手メディアどころか、グーグル、ツイッター、フェイスブックなどに及んできています。つい先日もグーグルは「グーグルで検索してもRTの流す記事が読者の目になるべく触れないように、記事のランキングを低くする」ことを考えると発表しました。今まで大手メディアでは得られない情報をインターネットその他で手にれていた一般民衆は、今度は何を頼りにすればよいのでしょうか。
*Google’s de-ranking of RT in search results is a form of censorship and blatant propaganda
「グーグルによるRT情報の格下げは検閲であり、あからさまなプロパガンダ」

https://www.rt.com/op-edge/410981-google-rt-censorship-propaganda/

 そもそもアメリカ国内で活動する国営放送は、イギリスのBBCを先頭として、ドイツ、フランス、カナダなど、数多くあります。それでもRTだけが狙い撃ちにされたのは、それだけRTの報道が、権力層の都合が悪いことを報道し続けたからでしょう。
 それを象徴的に示すのが、真実を報道したがためにニューヨークタイムズを初めとする大手メディアから放逐された人物(たとえばクリス・ヘッジズなど)を、RTは数多く採用しているという事実でしょう。
 そもそもRTの報道が間違っているというのであれば、自分たちが手にしている多くのメディア、とりわけ大手メディアを通じて反論すればよいのであって、それを権力を使って押さえつけるというのは、アメリカが標榜する「自由の国」「民主主義」を自ら踏みにじる行為ではないでしょうか。
*「アメリカの基本的価値観を踏みにじるRTへの弾圧」
http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2017/10/rt-3947.html
 RTは世界各国に特派員を派遣し、RTが放映するドキュメンタリーは数々の国際賞を受賞するまでになっています。こうしてRTの視聴者は増えるばかりです。今ではBBCを越える存在になろうとしています。ですから、戦争をしたい勢力にとっては、これほど都合の悪い存在はないでしょう。
 ところが先述したように、今ではグーグルまでもが権力に荷担するようになってきています。もっとも、グーグルのCEO=エド・シュルツは大統領選挙のときにヒラリー候補を裏で強力に支援した人物でしたから、当然と言えば当然のことかも知れません。これが何度も言うように、アメリカの民主党=左派・リベラルと言われているひとたちの実態なのです。
 チョムスキーは『アメリカンドリームの終わり』で民主党について次のように述べています。

 同じことは二〇一六年の予備選の、民主党バーニー・サンダースの選挙運動でアメリカ全土で見られたことでした。かれの見解や姿勢は非常に具体的なもので、圧倒的な多数とは言い難いにしても、多くの民衆からの支持を得ていました。しかし大手メディアがそれを取り上げるようになったのは、予備選の終盤になってからにすぎませんでした。サンダース氏が呼びかけた「政治革命」は正しいものでしたが、じつを言うと、それほど驚くべきものではありませんでした。というのは、共和党のドワイト・アイゼンハワー大統領ですら、同じ内容のことをすでに言っていたからです。
 そのことは同時に、現在のアメリカの政治地図が、全体として、いかに右寄りのものになっているかを示すものです。つまり民衆の求めているもの、そしてそれがかつては政治の中心だったものが、いまでは非常に過激で、非常に急進的で、過激派だ、と見えるくらいに変わってしまっているのです。
 だから、このように大きく右旋回してしまっている政治の流れを、元の流れに押し戻すのは、まさにわたしたち自身の肩に掛かっているわけです。現在の民主党は、かつては共和の党穏健派と呼ばれていた人たちがとっていた政治姿勢とそっくりなのです。それがいまの民主党の基本姿勢なのです。
 では共和党はどうかというと、あまりにも右に行きすぎてしまって、政治地図から、はみ出てしまっています。かれらはもはや政党とは言えない存在になってしまっているのです。


 このチョムスキーの言を読んでいると、私の眼には現在の日本とあまりに似ていることに驚きと恐怖を感じざるを得ません。日本の民主党(→民進党→?)の姿はあまりにもアメリカ民主党の軌跡に似ているからです。私が『アメリカンドリームの終わり』の「あとがき」で、次のように書いた所以(ゆえん)です。

先述のとおり、私は一〇年以上もアメリカに通い続けているうちに(そのうちの一年はカリフォルニア州立大学で教えたこともあります)、アメリカの暗部をますます深く知るようになりました。そして、「現在のアメリカは一〇年後の日本だ」と学生に言い続けてきましたが、今の日本を見ていると「今日のアメリカは明日の日本だ」と思うようになりました。本書が明日の日本に対する警告の書になることを願ってやみません。


 そういうわけで、チョムスキーの拙訳を多くの方にぜひ読んでいただけたらと思っていたところ、その書評が東京新聞だけでなく中日新聞(2017/11/19)でも掲載されたことを知人が教えてくれました。その喜びを読者の皆さんにもお裾分けしたくなり、改めて下記に掲載させていただく次第です。(東京新聞ではカラーでしたが、中日新聞では白黒でした。)

中日新聞20171119『終わり』書評 サイズ小063

<註> 
 戦争をしたいと思っている政府は、いつでも報道を統制し、国民を監視したいと願望するものです。今のアメリカは、本書でチョムスキーが述べているとおり、国内は崩壊状態ですから、戦争でも起こさないかぎり立て直しは不可能だと思っている可能性があります。財界・金融街・軍産複合体が次の大統領候補として民主党の好戦派ヒラリー女史を選んだは、それが理由でしょう。
 ましてロシア・中国を中心としたBRICS諸国がドル離れを急速に強めている現在、ロシアや中国を相手とする戦争への願望は、もっと強くなっているに違いありません。まさに彼らにとっては、「戦争は国家の健康法」なのです。しかも、このような流れにピッタリと寄り添っているのが安倍政権ですから、いつ何時、アメリカの先兵として戦争に引き込まれるか分からないのが日本の現状です。
*「戦争は国家の健康法である」その3
*「戦争は国家の健康法である」その2
*「戦争は国家の健康法である」その1

 日本の株価は喧噪を極めていても国民の心と財布は冷え切っていますから、景気が回復するはずはありません。だからこそ安倍政権にとっても、まさに「戦争は国家の健康法」ではないでしょうか。しかし今度は核戦争になる可能性がありますから、日本が生き残れる可能性は大きくありません。

日本人の真の学力を知らない文科省、アメリカンドリームが終わったことを知らない研究者

アメリカ理解(20171115) OECDの成人力調査、「英語読みのアメリカ知らず」、『アメリカンドリームの終わり』、「富と権力を集中させる10の原理」

OECDの成人力調査
OECD成人力検査(16~24歳(亡びるとき 12047

知人が主宰するメーリングリスト「EH研究会」を通じて下記のようなメールが先日(といっても、もう半月ほど前になりますが)、私のところに舞い込んで来ました。送付人をみると、愛知教育大学の**教授からでした。

皆様へ
このMLリストを使用することをお許し下さい。愛知教育大学からのお知らせです。「第29回アメリカ教育学会」が下記のように開催されます。ご興味のおありの先生方は奮ってご参加下さいますよう宜しくお願いいたします。
なお、ご質問などは、学会の実行委員長であられ、大学院研究科長の倉本哲男教授(kuramoto@auecc.aichi-edu.ac.jp)にお願いいたします。
日時:
10月28日(土)14:00~16:40(@愛知教育大学・未来館3F)愛教大・県教育委・名古屋市教育委/後援。事前申し込み不要・無料です。
内容:
教師教育の先進国アメリカの動向を3人が発表し(EdDを含む)、それを文科省の教員養成室(大学改組の中枢)が総括をするシンポジウムです。
登壇者:
1)アメリカにおける校長のリーダーシップ論からの示唆:露口健司(愛媛大学)
2)アメリカにおける博士課程(Ed.D.)カリキュラム・指導方法論からの示唆:倉本哲男(愛知教育大学)
3)校長・教育長免許養成政策の新たな展開―日本への示唆:八尾坂修(九州大学名誉教授)
4)学び続ける教員像(総括・コメンテーター):福島哉史(文部科学省・教員養成企画室室長補佐)


 以上の企画内容を見るかぎり、「教師教育の先進国アメリカの動向を3人が発表し、それを文科省の教員養成室が総括をする」とありますから、アメリカの教育は世界の先端を走っていて、愛知教育大も文科省も、そこから大いに学ぶべきだと考えていることが分かります。
 しかし新著『アメリカンドリームの終わり』で「チョムスキーは、「富と権力を集中させる10の原理」をあげ、その「原理2、若者を教化洗脳する」で、自国アメリカの教育を次のように述べているのです。

 最近の公教育は、教育を技術訓練におとしめることに力を注いでいます。こうして、子どもたちの創造性や独立心を奪うわけです。これはたんに生徒・学生だけではなく、教師の創造性や独立心さえも奪います。それが「テストのための教育」です。
 具体的には、ブッシュ大統領の「落ちこぼれゼロ法案」、オバマ大統領の「トップを目指して競争せよ法案」です。わたしの考えでは、これらの政策はすべて教化・洗脳と支配・統制のための手段と見なされるべきでしょう。
 ・・・チャータースクールという最近流行(はや)りの制度も、表向きの看板とは裏腹に、じつは公教育を破壊しようとする全く見え透いた政策であることは、ちょっと調べればすぐわかることです。
 チャータースクールは、国民の税金を民間企業に流し込もうとするひとつの政策であり、それは従来の公立学校制度という体制を土台から破壊するものです。かれらはチャータースクールの利点をさまざまに並べ立てていますが、そのことを証拠立てるものは何ひとつありません。ところが、今やアメリカ全土でチャータースクールが広がっているのです。これは公的教育機関の破壊に他なりません。
(55-56頁)


 チョムスキーは上で「チャータースクール」がアメリカ全土で広がり公教育を破壊していると述べていますが、日本でもさまざまな手段で同じことをしようとする動きが出始めています。
 たとえば、「英語教育を改善するため」と称して大学入試の英語をの民間企業(英検やTOEFLなど)に売り渡そうとする動きが急速に進んでいます。こんなことをすれば学校現場は、ますます受験対策のための予備校・専門学校と化していくことでしょう。
 チョムスキーは上で「テストのための教育」は「たんに生徒・学生だけではなく教師の創造性や独立心さえも奪います」「最近の公教育は、教育を技術訓練におとしめることに力を注いでいます。こうして、子どもたちの創造性や独立心を奪うわけです」と述べていますが、まさに同じことが日本で進行しつつあるわけです。
 ところが冒頭で紹介した愛知教育大学「第29回アメリカ教育学会」は、このようなアメリカの実態を全く知らないのか、「教師教育の先進国アメリカから学ぶ」という触れ込みで、3人のアメリカ研究者が発表しそれを文科省の教員養成室が総括をするシンポジウムを開くというのですから、恐れ入ります。
 私の言う「英語読みのアメリカ知らず」の典型例ではないでしょうか。その証拠に、チョムスキーは前掲書の「原理5、連帯と団結への攻撃」で、アメリカの教育荒廃について次のようにも述べています。

 たとえば、ヨーロッパ、日本、中国に旅行してご覧なさい。そしてアメリカ合州国に戻ってきたとき、わたしたちの目に真っ先に飛び込んでくるのは、この国が崩壊してバラバラになりつつあるということです。
 まるで発展途上国に戻ってきたかのような感じに襲われます。
 道路や橋や港などの社会的基盤は崩壊しています。完全に破産状態です。教育制度も裁断機によって切り刻まれた紙くずのようになっています。何も機能していないのです。これは信じがたいほどの人的資源の無駄遣(むだづか)いです。
 しかし経営者の観点から見れば、このような恐ろしい現実を座視させることは、「財政赤字」を宣伝するという意味で、非常に効果をもっているわけです。それがいまアメリカに起きていることなのです。(139-140頁、下線は寺島)


 私は拙著『英語で大学が亡びるとき』(明石書店2015)第3章第2節「アメリカの大学は留学に値するのか」で、アメリカ教育の荒廃ぶりを詳説しました。このことを誰の目にも端的かつ歴然と示したものが「OECDの成人力調査」でした。

OECD成人力検査(16~65歳)亡びるとき 1046

 ブログの冒頭では、この「16~24歳までの成人力(読解力、数学力)調査」のみを示しましたが、実はOECDの調査は「成人力」なのですから、16~65歳の調査も発表しているのです。これを見ればアメリカ成人の学力荒廃ぶりがいっそう際だって目に映るでしょう。
OECD成人力検査(16~24歳(亡びるとき 12047

 ご覧のとおり、「アメリカの学生の学力は最底辺、日本は最上位」なのです(第2節「アメリカの大学は留学に値するのか」の第1項。上記のグラフは、261頁、254頁にあります)。
 つまり、ノーベル賞受賞者の続出を誇るアメリカですが、「小中高はもちろんのこと大学ですら高校レベルのことしか教えていない」と、世界的に著名な平和学者ガルトゥングが述べているとおりなのです。
 詳しくは『亡びるとき』を読んでいただきたいのですが、ガルトゥングは「見るべきものがあるとすれば大学院博士課程のみ」と述べているのです。
 しかし、苅谷剛彦氏に依れば、その博士課程すら本当に機能しているのはトップエリート校(いわゆるアイビーリーグ)のみで、あとは劣化しつつあるというのが実態です。
 このことも『亡びるとき』第3章第2節第7項「アメリカを蝕む大学ランキング競争―なぜアメリカの大学教育は劣化しつつあるのか」で詳説しました。
 しかも、18~65歳の成人力調査は、日本では高年齢者の方が今の若者よりも学力が高いこと、それが日本をトップの地位に押し上げていることをも示しています。
 そのことの詳しい分析も、第5項「なぜ世界一の学力をもつ教育制度を破壊しなければならないのか」で展開してあります。時間と興味のある方はぜひ参照していただければ幸いです。
 要するに、非常に哀しいことですが、日本の最近50年間は、文科省による「教育改革」という名の、「教育破壊」の歴史だったようです。


<註> ここまで書いてきて、とつぜん思い出したことがあります。それは私がまだ岐阜大学に在職していたころ毎年のようにアメリカから教育視察団が岐阜大学教育学部を訪れていたという事実です。彼らが口をそろえて言うのは、「なぜ日本は、かくも教育レベルが高く、かつ高校中退率も極めて低いのか」という質問でした。これはアメリカの教育がいかに深刻かを示す、もうひとつの事例ではないでしょうか

<註2> アメリカの元経済政策担当財務次官補で、ウオール・ストリート・ジャーナルの元共同編集者だったPaul Craig Robertsが、ブログ(2017/11/08)で、自分の国を次のように描いているのを見つけました。
From Superpower to Incompetence(超大国から無能へ)
 ・・・ 大学は無能だ。大学は、学生を教えるための(十分な)教授を雇う代わりに、教授たちを管理する管理者を雇っている。こうして、今や教授の代わりに、学長、副学長、総長、副総長、学部長、副学部長等々ばかりが居並んでいる。教科教育の代わりに、言論統制と感受性訓練がある。大学は予算の75%も管理者に使い、彼らの多くが途方もない収入を得ている。
 公立学校は標準全国テストによって無能化されている。現在の教育の目標は試験に受からせることだ。学校の評価と教師の給与は、能力ある生徒たちの創造性や自立思考を発達させることではなく、標準化されたテストのため生徒を丸暗記においやることにかかっている。こういう話はきりなく続けられる。・・・
*和訳は「マスコミに載らない海外記事」(2017/11/12)に載っていたものに、私が一部、加筆修正を加えました。全文を読みたい方は下記を参照ください。
http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/paul_craig_roberts/index.html



  

チョムスキー「富と権力を集中させる10の原理」

アメリカ理解(2017/11/03) 回転ドア、合意の捏造、アメリカンドリーム、企業のための社会主義国家、今日の米国=明日の日本

チョムスキー『アメリカンドリームの終わり――富と権力を集中させる10の原理』の帯カバー
チョムスキー「アメリカンドリーム」10の原理

アメリカは相変わらず、「ロシアが大統領選挙に介入した」とするRussiagate「ロシアゲイト」問題で揺れ動き、議会は、英国BBCと同じ性格の放送局RT(RussiaToday)を放送禁止に追い込む方策を執拗に追求・継続しています。
 そのため重要な国外・国外政策は、なかば停止状態と言ってよいような状況になっています。予備選でサンダース候補がなぜ選挙の終盤でヒラリー女史を窮地に追い込むほどの支持を集めたのかをいまだに理解できず、民主党の幹部は共和党と手を組んで、新しい「赤狩り」「マッカーシズム」の嵐にアメリカ政界を巻き込んでいるわけです。
 民主党の大統領候補者ヒラリー・クリントン女史の敗北が、自らの行動と政策ミスによるものであることを認められず、敗北の理由がロシアとトランプの共謀によるものだという荒唐無稽な理論に執着して、アメリカの政治を機能停止に追い込んでいるのですから、まさにアメリカ政界は末期的症状というべきでしょう。
 チョムスキーは新著『アメリカンドリームの終わり』で、「現在の民主党は、大衆の利益よりも富裕層の利益を優先する政党になり、すでに共和党と言ってもよい存在になりさがってしまっている」と言っていますが、日本の民主党も全く同じ流れをたどって、結局は安倍政権に安定多数を取らせる結果となりました。
 私は『アメリカンドリームの終わり』(Discover21)の「あとがき」末尾で、次のように書きました。

先述のとおり、私は一〇年以上もアメリカに通い続けているうちに(そのうちの一年はカリフォルニア州立大学で教えたこともあります)、アメリカの暗部をますます深く知るようになりました。そして、「現在のアメリカは一〇年後の日本だ」と学生に言い続けてきましたが、今の日本を見ていると「今日のアメリカは明日の日本だ」と思うようになりました。本書が明日の日本に対する警告の書になることを願ってやみません。

 現在の選挙結果を見ていると、「今日のアメリカは明日の日本だ」という私の予言が、そのまま実現してしまった!という思いを禁じ得ません。痛恨の極みです。

 そう思っていたら、長周新聞が文化欄で、チョムスキーの新著『アメリカンドリームの終わり』の書評を、大きな紙面を割いて載せてくれました。そこで、謝意の意味を込めて、それを以下に紹介したいと思います。

長周新聞チョムスキー書評056 (size less)

<註1> 上記の新聞版(2017.10.28)では文章が読みにくいという方は下記のインターネット掲載版を御覧ください。(ただし新聞版でもコントロールキーを押しながらプラスキーを何度か押せば、文字はそのつど大きくなっていきます。)
https://www.chosyu-journal.jp/review/5469

<註2> 安倍政権が大勝した裏には小選挙区制という最悪の制度がありますが、それと同時に前原誠司という人物の果たした犯罪的役割も無視できません。彼は民主党→民進党→解党=分裂という路線を先導し、安倍政権勝利への土台作りをしたからです。また民主党菅政権の外務大臣として、中国漁船の領海侵犯を口実に(「棚上げ」になっていた)尖閣列島問題の火付け役を演じ、中国敵視政策を一気に強める役割を果たしたのも前原氏でした。

<註3> チョムスキーの言う「富と権力を一極に集中させる」「10の原理」は、冒頭に掲げた書籍「帯カバー」のとおりですが、それに対応するアンヌ・モレリ『戦争プロパガンダ10の法則』の「10の法則」は下記のとおりです。
(1)「我々は戦争をしたくはない」
(2)「しかし敵側が一方的に戦争を望んだ」
(3)「敵の指導者は悪魔のような人間だ」
(4)「我々は領土や覇権のためではなく、偉大な使命のために戦う」
(5)「我々も誤って犠牲を出すことがある。だが敵はわざと残虐行為におよんでいる」
(6)「敵は卑劣な兵器や戦略を用いている」
(7)「我々の受けた被害は小さく、敵に与えた被害は甚大」
(8)「芸術家や知識人も正義の戦いを支持している」
(9)「我々の大義は神聖なものである」
(10)「この正義に疑問を投げかける者は裏切り者である」


チョムスキーの新著『アメリカンドリームの終わり』

アメリカ理解(2017/10/19) 富と権力を集中させる10の原理、戦争プロパガンダ 10の法則

チョムスキー『アメリカンドリーム』


 前回のブログを書き終えてから、早くも2週間が過ぎてしまいました。世界は今も目まぐるしく展開しています。
 北朝鮮情勢は、いつ核戦争になってもおかしくない情勢ですし、シリアではアメリカが裏で動かしてきたイスラム原理主義集団ISISの配色が濃厚になり、それを取り繕うために新しくクルド民族の武装集団を支援することにしたようです。
 このシリアにおける複雑な動きについては下記を御覧ください。

* ロジャバ革命の命運(2)
http://blog.goo.ne.jp/goo1818sigeru/e/b1c16221b3a0bcac2280d278963f0e00
* 米国を後ろ盾とするクルド系武装集団が、米国を後ろ盾とするダーイッシュからラッカを奪還した
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201710180000/>

 ただし物理化学者=藤永茂さんの論考は「ロシャバ革命」とは何かが分からないとよく理解できないかも知れませんが、それでもアメリカがISIS(またはIS)という集団を「ロシャバ革命」をめざすクルド人の両方をみごとに操っていることだけは分かっていただけるものと思います。

 本当はアメリカ国内の複雑な動きについても触れたいのですが、その前段として、出版されたばかりのチョムスキーの新著『アメリカンドリームの終わり、あるいは富と権力を集中させる10の原理』について、まず紹介させていただくことにしました。
 というのは、この新著は、チョムスキーにしては珍しく、アメリカの外交政策ではなく国内問題に焦点を当てて語っているからです。
 この新著を読んでいただければ、トランプ大統領どころか、民主党そのものがいかに腐敗堕落してしまったかがよく分かっていただけると思うからです(私には、日本の民主党→民進党も全く同じ軌跡をたどっているように見えます)。
 しかし、その内容に踏み込む前に、今回のブログでは、私が何故この翻訳に取り組むようになったのか―本書の「あとがき」を通じて―その経過を述べておきたいと思うようになりました。
 というのは、前回のブログではノーベル賞受賞者=大隅良典氏(教養学部基礎科学科を卒業)について説明したとき、私が教養学部教養学科で科学史科学哲学を専攻したことについてもふれました。そのことが今回の翻訳と微妙にからまってくるからです。
 つくづく人生とは、不思議で奇妙な巡り合わせの、連続と重なりだと思うゆえんです。


『アメリカンドリームの終わり、
あるいは、富と権力を集中させる10の原理』


あとがき

 本書は、ノーム・チョムスキーの新著 Requiem for the American Dream: The 10 Principles of Concentration of Wealth & Power(Seven Stories Press、2017)を翻訳したものです。
 チョムスキーと言えば、言語学に革命を起こした「変形生成文法」の創始者として、英語学の世界では誰ひとりとして知らないひとはいないほど有名な人物ですが、かれの政治関係の本を読んだことが多くないことから「チョムスキーというひとは二人いるのですか」という質問を受けることがよくあります。
 実を言うと私は、大学時代は東大教養学部教養学科「科学史科学哲学」で物理学史を専攻したため、学生時代はチョムスキーの政治関係本どころか「変形生成文法」すら読んだことがなく、食うために故郷の高校英語教師になって初めてチョムスキーと変形生成文法を知ったのでした。
 ですから、岐阜大学教養部に英語教師として採用され、その後、文科省の方針で教養部が廃止されたため教育学部に配置転換となり、「国際理解」も担当せざるを得なくなるまでは、チョムスキーの国際関係論、アメリカ外交政策批判も、もちろん読んだことがなかったのです。

 教養部にいたころは毎年夏休みや春休みにアメリカの英語教育学会TESOLに出かけ、そのついでにレンタカーを借りてアメリカ国内を一か月近く走り回り・歩き回る生活を一〇年以上も続けてきました。そしてアメリカを知れば知るほど、「理想の国」の暗部が見えてきてはいたのですが、教育学部に異動して本格的にアメリカの政治を研究し始めたときに大いに役立ったのがチョムスキーの論文でした。
 それ以来ずっとチョムスキーに関心を寄せ、興味深い論文がZネット(チョムスキーの教え子が主宰するサイト)に載るたびに翻訳して自分のホームページに載せてきました。それが幸いなことに明石書店から『チョムスキー二一世紀のアメリカを語る』というかたちで出版されました。当時はチョムスキーの文献で翻訳されているものと言えば、そのほとんどが英語学・言語学のものでしたから、それが幸いしたのでしょう。
 これが縁でその後、『チョムスキーの教育論』やハワード・ジン『肉声でつづる民衆のアメリカ史』などの訳書を世に出してきましたが、今回はからずも本書を翻訳・出版する機会を得たことは、本当に嬉しいことでした。というのは、本書最終章の末尾がジンのことば「歴史は名もなき民衆の地道な活動・闘いが革命的変革の土台になっている」ということばで締めくくられていたからです。

 本音を言うと、社長の干場さんからメールで翻訳依頼が届いたとき、私は自分が監修する『寺島メソッド 英語アクティブラーニング』を出版したばかりで疲れ切っていたので、少し休みたいという気持ちも強かったのですが、いただいたメールには、次のように書かれていて、それが私を大きく突き動かしました。
 「・・・実は、このほど、チョムスキーの語り下ろし、Requiem for the American Dreamの版権を買いまして、その原稿を入手したところです。内容的に、少しでも早く出版したいと希望しておりますが、チョムスキーと言えば、やはり寺島先生をおいてほかにはないと、恐縮しつつも、お願いする次第でございます」
 “豚も褒められれば木に登る”ということばがありますが、私も人並みの人間ですから、干場さんのことばにほだされて、ついに木に登ったというわけです。

 私を大きく突き動かしたもうひとつ要因がありました。それは、干場さんのメールの末尾に付け足されていた次のような資料でした。
 「五〇年前からアメリカ社会の富の偏重に警告を発していたチョムスキーが、その予想通り極端な格差社会と成り果てた現在のアメリカを前に、なぜそのようになったのか、背後にある政治的な変化とは何か、率直かつ詳細に自身の分析を語っています。
 “『現代を代表する知性』と新世代の思想家の出会い“ というコンセプトで作られているため、大変とっつきやすく、また本書を読むことで、これまでのチョムスキーの思想を振り返ることができます。
 アメリカンドリームを否定された貧困層の怒りが今回の大統領選挙の混乱にも繋がっているわけで、大きな話題になるかと思われます。チョムスキーはこの長さのドキュメンタリー形式のインタビューに応じるのはこれが最後だと語っています」
 私が干場さんから、「下記は、原稿ができあがる前の企画の段階で、エージェントより来ました資料です。ご検討のほど、なにとぞ宜しくお願い申し上げます」と末尾に書かれたメールをいただいたのは、二月一五日でした。ところが原書の出版日を調べてみたら、何と「二〇一七年三月二八日」になっていました。
 しかし本書の土台となったチョムスキーへのインタビューについては、四年がかりのインタビューを七三分に凝縮させた映画が二〇一五年に封切られていて、数々の国際ドキュメンタリー映画祭で公式招待されています。しかも、この映画が封切られた二〇一五年の時点で、チョムスキーはすでに八六歳の高齢を迎えていました。
 ですから、先の資料で「チョムスキーはこの長さのドキュメンタリー形式のインタビューに応じるのはこれが最後だと語っています」とあったのも、考えてみれば当然のことでした。(しかし、この年齢で、明晰かつ淡々と語り尽くしていくチョムスキーの姿には、何か感動すら憶えます。)
 
 それはともかく、こういうわけで、映画を原書と比べてみたのですが、映画の素晴らしい雰囲気が書籍化されたとき死なないよう映画封切後も一年以上かけて編集された成果を、原書の随所に見ることができました。翻訳された本書でも、干場さんのおかげで、その原書の雰囲気がみごとに再現されていることは本当に嬉しいことでした。
 日本の読者が理解し難いと思われる点については、訳注(*印)を下段に付け加えましたが、これがその雰囲気を壊していないことを願うのみです。

 アメリカが現在いかに悲惨な状況にあるかは、本書を読むだけでも充分に分かっていただけると思いますが、日本の知識人のなかでは「日本はだめだけれどアメリカは素晴らしい」という言説が相変わらずはびこっています。その例の一つが『絶望の裁判所』(講談社新書)でしょう。しかしアメリカの司法制度がいかに腐敗堕落しているかは、本書でマルコムXが演説しているとおりです。イラクにおける戦争犯罪を告発したチェルシー・マニングが辿った悲惨で過酷な軌跡も、その例証になるでしょう。
 アメリカの教育制度についても同じです。安倍政権は日本の若者を大量にアメリカへと送り込む留学計画を大々的に打ち出しましたが、アメリカの教育制度がいかに壊滅状態であることは、本書でチョムスキーも言及しています。これでは例証として不十分だと思われる方は、拙著『英語で大学が亡びるとき』を参照していただければ幸いです。そこにはアメリカ大学の実像、たとえば女子学生が授業料を払うために娼婦を兼業している実態も述べておきました。
 先述のとおり、私は一〇年以上もアメリカに通い続けているうちに(そのうちの一年はカリフォルニア州立大学で教えたこともあります)、アメリカの暗部をますます深く知るようになりました。そして、「現在のアメリカは一〇年後の日本だ」と学生に言い続けてきましたが、今の日本を見ていると「今日のアメリカは明日の日本だ」と思うようになりました。
 本書が明日の日本に対する警告の書になることを願ってやみません。

二〇一七年九月一一日  寺島隆吉


<註> 本書の副題「富と権力を集中させる10の原理」を見て、すぐ思い出されるのは、アンヌ・モレリ『戦争プロパガンダ 10の法則』(草思社、2002)という本であろう。アメリカがイラク戦争に乗りだすときも、リビア→シリアを破壊するときも、この法則どおりに行動した。


私の「休筆宣言」―今こそRTを視聴しよう

アメリカ理解(2017/04/07)、アメリカンドリームの死(Death of American Dream)、「言論の自由」の死(Death of "Freedom of Speech")、レクイエム(Requiem、鎮魂曲・死者のための鎮魂ミサ曲)

数々の賞を受けたチョムスキーのインタビュー映画、    それをもとにしたチョムスキーの新刊
requiem film requiem book


  前回のブログ(2017/03/29)では私は次のように書きました。

 前回のブログ(2017年3月10日)を書いてから既に20日ちかくも経っています。実は、この間、3月17~19日には『寺島メソッド 英語アクティブラーニング』(明石書店)の出版祝賀会を兼ねた宿泊研究会がおこなわれ、その準備に追われていただけでなく、「Discover21」という出版社からチョムスキーの新著『アメリカン・ドリームの死を悼む』(Requiem for the American Dream)の翻訳依頼が舞い込み、「できるだけ一刻も早く」という要請でしたので、その対応にも時間が取られ、ついに現在に至ってしまいました。私のブログを心待ちにしている方もみえるので本当に心苦しく思っていますが、上記のような事情で少し過労がたたって3日ほど寝込んでしまったことに免じて、どうかお許しいただければ幸いです。


 ところが翻訳作業を始めた矢先に、通風に襲われ、1週間寝込むという事態になってしまいました。いまも寝たままの状態で、この原稿も妻に代筆=口述筆記してもらっ
 さて、「豚も褒めれば木に登る」といいますが、「チョムスキーと言えば、やはり寺島先生をおいてほかにはない」という社長さんからのメールにほだされて、1年以上にもわたった『寺島メソッド英語アクティブ・ラーニング』の疲れから身体が充分に回復していないにもかかわらず引き受けてしまった結果が、通風でした。
 翻訳作業を進めはじめたとたんに通風がとつぜん私に襲いかかり、太い丸木のようにふくれあがった左腕に激痛が走り全く動かなくなっただけでなく、両足の親指もはれあがって痛みで歩くこともできません。そういうわけで、体の具合がなかなか良くならずに思うように仕事は進んでいませんが、出版社からの要請にある7月出版予定に何とか間に合わせたいと思い、通風と闘っています。

 それはともかく、今のアメリカ情勢を見ていると、トランプ支持者を熱狂させた大統領就任演説の「鋭い財界・金融街の特権階級にたいする攻撃」、(これを元政府高官PCR氏は、既成特権階級にたいする「宣戦布告」と絶賛していました)の調子は既に消えてしまって、「トランプよ、おまえもか」という雰囲気がアメリカに漂いはじめています。
 というのは、トランプ氏は、今までの姿勢を180度否定して、イスラムのテロリストと戦う戦略よりも、シリアのアサド政権の転覆、アサド政権を支持しているロシアとの対決を鮮明に打ち出すようになってきているからです。
 オバマ氏も政権についたとたん、選挙スローガン「Hope & Change」をかなぐり捨てて、戦争政策に邁進するようになったのと同じ方向に、トランプ氏も進んでいるようです。たぶん「闇の政府」(Deep State)の指示に屈服したのでしょう。
 にもかかわらず、オバマ氏やヒラリー女史を先頭として、民主党の左翼リベラルと言われる人たちは、「ネオコン」と言われるひとたちと一緒になって、トランプ追及の手をいっこうに緩めようとはしていません。「裏でロシアとつながっていた」という理由でトランプ氏を辞任に追い込むことで、自分たちと路線を同じくする副大統領ペンス氏を大統領にすげ替えようと狙っているのかもしれません。
 このような動きと軌を一にするかのように、アメリカではインターネットのニュースメディアRTにたいする攻撃が激烈さを極めています。
 そもそもトランプ氏がロシアの傀儡だと言われようになったきっかけは、トランプ氏がRTのインタビューに応じたことが出発点になっているのですが、今ではそれだけではなく、RTが流すニューがすべて「フェイク・ニュースだ」と言わんばかりの猛攻撃が、アメリカの大手メディアでは、ますます強くなってきています。
 それどころか、今や上院議員の中から、RTの活動を監視・禁止する法案すら提案されようとしています。「言論に対しては言論で戦う」というのが、民主主義の基本原則のはずでが、今のアメリカは「言論の自由」を権力で押しつぶすという道を選ぼうとしているのです。
 だからこそ、なおさら「FakeNewsとは何か」「なぜ今、RTなのか」を書きたいと言ってきたのですが、先述のような事情で、今の私には、それをする時間的ゆとりも、気力・体力もありません。
 ですがこのブログをお読みの皆さんで余裕のある方は、ぜひRTを視聴していただきたいと思います。
 RTを見れば、日々刻々と変化して逼迫していく世界情勢が手に取るように伝わってきます。これは月刊誌『アジア記者クラブ通信』やインターネット論説誌GlobalReserchでは決してつかむことができない情報です。RTは24時間休むことなく活動しながら世界の最新ニュースを発信し続けているからです。
 またRTのニュースとCNNやABCあるいはNYTimesを比べ読みしてみれば、アメリカの大手メデイアが、そしてそれに追随す日本の大手メディアが、いかにFakeNews(偽情報)を流しているかが、よくわかってもらえると思うからです。
 中国の国営放送と同じくRTの流す放送番組を最初はまったく信頼していなかったのですが、その私がなぜこのように考えを変えたかについては、7月以降のこのブログで詳しく説明したいと考えています。
 それまでは、何度も言いますが、余裕のある方はRTトップページのヘッドラインだけも読んでいただけたら、と思います。必ずや多くの発見があるはずだと信じています。

 いずれにしても、この紙面を通じて読者の皆様と一刻も早く再会できる日を待ち望んでいます。それまでどうか皆様も御自愛ください。(ただし、それまで「地球の最期」Armageddonが到来しないことを祈るのみです。)

なお、RTのurlはつぎのとおりです。 https://www.rt.com/
24時間放送  https://www.rt.com/on-air/
ユーチューブ  https://www.youtube.com/user/RussiaToday/videos


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狐狸庵居士(田舎の国立大学を2010年に定年退職)

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