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 「東京五輪の即刻中止」「今すぐ全原発の停止」は、「行き過ぎ」「非現実的」か

国際教育(2019/09/15) 元スイス大使・村田光平、原発専門家アーニー・ガンダーセン、東海村JCO臨界事故、東海村「東海再処理工場」、東海第二原発(茨城県、日本原電)は別名「東京原発」

「東京湾の放射能汚染は今」
東京湾の放射能汚染『東京新聞』
出典 https://genpatsu.tokyo-np.co.jp/page/detail/824

1 はじめに
 私が前回のブログを載せると翌日に私の主宰する研究所の研究員から次のようなメールが届きました。
「先生が上げてくださったブログをFacebookでシェアしたところ、ドイツ在住の私の教え子から以下のような興味深いコメントが来ました。なお、本人に了解をとっていないので、転載等はご遠慮いただければありがたいです。」
 そこで早速、ドイツからの便りを非常に興味深く読ませてもらいました(仮にDさんとさせていただきます)。
 研究員から届いたメールには「なお、本人に了解をとっていないので、転載等はご遠慮いただければありがたいです」と書いてあったので詳細は割愛させていただきますが、Dさんの鋭い日本評に感心しました。
 また、欧州から見ると日本がどのように見えているのかがよく分かる便りで、私がブログで書いたことが誤りでなかったことを再確認できて非常に有難いものでした(これも上記の事情で詳細は割愛)。
 しかし、いくつか気になるところも散見されました。たとえば次の箇所(下線部)です。
さすがにオリンピック中止とかは行き過ぎだと思うんですが、放射線とか福島原発については欧州全体でもまあ割とこんな感じで解釈されています。
 「今すぐ原発全停止!みたいな非現実的なことは言いませんが、事故後の処理といい、煽り運転と反韓と天気予報ばっかり報道して福島のこと全然取り上げないメディアといい、ほんと日本国民として情けなくなっちゃいます。」

2 オリンピック中止は「行き過ぎ」か
 Dさんは上記で、「さすがにオリンピック中止とかは行き過ぎだと思うんですが」と述べています。
 しかし、東京オリンピックは「二次被曝」という殺人行為を参加者に強いるという意味で、ニュルンベルク裁判で言う「人道に対する罪」にあたります、
 福島や東京がどれくらい深刻な事態であるかは、大手メディアが報じませんから、知らないのは日本人ばかりなりです。
 具体的には近刊の『東京五輪がもたらす危険』を読んでもらうのが一番ですが、私のブログを丁寧に読んでもらえば、かなりの程度は分かってもらえるはずです。
 特に「追記3」を読んでもらうだけでも、東京の現実をかなりの程度は分かってもらえるはずです。リンクの東京新聞は地方紙ですが、その取材力に感心します。
 さらに私がブログでリンクを貼った動画を丁寧に時間をかけて試聴してもらえば、もっと具体的な事実が明らかになり、それらはDさんの胸を打つはずだと確信しています。
 それでも足りなければ元スイス大使だった村田光平氏の次の訴えを読んでみてください。つまり、オリンピック中止は決して「行き過ぎ」ではないのです。
 (ただし、これを読むのは私のブログのリンク記事を試聴してからにしてください。)

*オリンピック中止を求めて国際オリンピッ ク委員会のBach会長宛にメッセージ&カーター米元大統領宛のメッセージも。
http://drrimatruthreports.com/murata-san-international-action-for-tokyo-2020-olympics-rad-risk/
*村田光平氏へのインタビュー
https://www.data-max.co.jp/article/28745
https://www.data-max.co.jp/article/28747/
*村田光平氏の公式サイト
http://kurionet.web.fc2.com/murata.html#anchor54

元スイス大使、村田光平
村田光平 (2)

3 原発全停止は「非現実的」か
 Dさんは更に上記で「今すぐ原発全停止!みたいな非現実的なことは言いませんが」と述べています。
 ドイツでは「2022年には原発が全て停止する予定」であり、そこに住むDさんから、まさかこんな言葉が出てくるとは思いませんでした。
 しかし、すでに日本の原発は東日本で稼働中のものはありませんし、西日本で稼働しているのは5原発だけです。ですから決断すれば原発全停止は容易にできます。
 しかも、これらの原発も安全対策の費用がかさみ、経済的には採算が取れないので、できればやめたいのですが、政府(実は裏のアメリカ)がやめさせないのです。実は本音のところ原発会社もやめたいのです。
 それはともかく、村田光平氏が語る次の事実を見てください。
* 「東海第二原発」(日本原電)は別名「東京原発」とも言われています。その理由は東京からわずか110kmしか離れていないので、一度事故が起これば、最悪の場合は首都機能が麻痺し、首都圏壊滅≒国家壊滅です。
* 東海第二原発から東京駅まではたった116kmしかありません。爆発後322分(風速毎秒6mで約5時間)で東京に放射能が到達します。30km圏内に約100万人、150km圏内には3,000万人、250km圏内には少なくとも5,000万人がいます。
* さらに、東海第二原発の近くには原子力施設がたくさんあり、連鎖重大事故で放射能を大量放出する危険性が指摘されています。わずか2.8kmに「東海再処理工場」があり、大量の高レベル廃液、プルトニウム溶液が貯蔵されています。ほかにも、東海村には、JCO、原研、核燃サイクル研究所、三菱原燃などが集中しています。
https://www.data-max.co.jp/article/28747
 つまり地震大国である日本では、いつどこで大地震が起きても不思議ではないのです。しかも、その地震が原発を大揺れさせれば、停止している原発であっても、「再臨界」が始まる可能性があり、それは首都圏あるいは日本を壊滅させます。
 ですから「今すぐ原発全停止」は非現実的どころか、すぐにでも「停止」ではなく「廃炉」を現実化させないと日本が崩壊する危険性が大きいのです。しかも地震学者は、首都直下型や東南海大地震は「いつ起きても不思議ではない」と警告を発しています。
 さらに言えば、福島の事故はチェルノブイリ事故よりも大きかったのですが、日本が壊滅しなかったのは、その時の風向きが太平洋だったからにすぎない――これが専門家(たとえばアーニー・ガンダーセン)の一般的見解です。
 だとすれば、何度も言うように、「今すぐ原発全停止は非現実的」どころか、今すぐにでも現実化させないといけないのです。さもないと福島の悲劇がまたもや繰りかえされることになります。日本が壊滅するかも知れません。
 福島のひとたちは今でも裁判闘争を闘っていますが、政府の意向をくんだ裁判官たちは、被災者たちの訴えに耳を貸すつもりはないようです。そして政府は「福島は安全だ」という宣伝をオリンピックに向けてふりまくために、避難者に半ば帰郷を強制しています。
 また、福島に住む子どもたちに甲状腺癌が確実に増えているのですから、このような状況のなかで「今すぐ原発全停止は非現実的」などと言われた被災者たちは、どんな思いで、そのことばを受け止めるでしょうか。
 ノーベル文学賞の対象となった『チェルノブイリの祈り』は、ベラルーシの作家スベトラーナ・アレクシエービッチによる著作ですが、この作品で描写されている世界は、ベラルーシの被災者だけのものではなく、福島のひとたちのものでもあるのではないでしょうか。
800px-東海第二発電所所周辺の過去1年間の地震の震源分布と地殻変動-1
出典:ウィキペディア「東海第二発電所」


<追記> 時間がある方は次のリンクも視聴してみてください。福島原発の事故が起きた当初の記憶や恐怖感が、まざまざと甦ってくるのではないでしょうか。

*オリンピック開催の罪深さを指摘し村田光平氏を評価するBRIAN博士(オックスフォード大学付属仏教研究所研究員、前国際日本文化研究センター客員研究員)の論評
http://kurionet.web.fc2.com/Brian20151106.html (Japan Times掲載)

*東京オリンピックを中止せよ「元スイス大使 村田光平氏は反原発だけでなく東京オリンピック中止を求めるメッセージを世界中に送っている。IOCにも送った、、、当然反応はない(懐に入れてしまった札束は手放すに忍びないのだろう。哀れな金の亡者たち )」
https://cocomerita.exblog.jp/28171971/

*動画「フクシマ――最悪事故の陰に潜む真実」(1~4)
ドイツで製作されたもので日本では絶対に見られない事実を伝えています。

https://youtu.be/VjY_55gd9wU
https://youtu.be/HPPJJyuZ844
https://youtu.be/GjwQHW78Afs
http://youtu.be/ammCzi7lcoQ
(2012/04/08 に公開、21万951回の視聴)

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外国では「放射能五輪」と呼ばれている東京オリンピック――安倍政権は「二次被曝=人道に対する罪」を犯しつつある、即刻中止を!

国際教育(2019/09/08) 放射能五輪、被曝オリンピック、「人道に対する罪」、東京も安全ではない、日本海すら汚染される、被災者「棄民」と確率的「大量殺人」、グリーンピース・ドイツ事務所のショーン・バニー首席原子力専門家

福島全土に広がる汚染土の袋
福島を埋め尽くす汚染土
https://blog.goo.ne.jp/mayumilehr/e/51c11a6af97c6e4214a2f75006d82c6d
「そんなに安全なら、汚染土の再生利用は、まず東京オリンピックのための工事に東京都で使えばよい」


 私がいつも「地震と原発事故情報」をメールで送ってもらっている「たんぽぽ舎」から、2019年8月19日(月)の日付けで、次のような情報【TMM:No3723】が送られてきました。

福島第一原発汚染水の放流時、放射性物質の一部が1年内に東海(=日本海)に流入、「中央日報日本語版」8/14(水)17:03配信
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190814-00000046-cnippou-kr 


 しかし上記のURLをクリックしても次のような表示が出てきて、肝心の情報が読めませんでした。

指定されたページを表示できませんでした。記事がありません。すでに削除された可能性があります。Yahoo!ニュースのトップページへ5秒後に移動します。


 最近アメリカでも頻発しているのですが、反政府的言動がサイトから削除されていたり、それどころか、GoogleやFacebookでは、トランプ支持の言動が削除されるという事件すら起きています。
 GoogleやFacebookは「リベラル」を標榜し、前回の大統領選挙では大手メディアと一緒になってヒラリー女史を応援することをやってきましたが、今やトランプ支持の言動すら自分のサイトから削除するようになってきています。
 国家が検閲し削除するというのは明らかなファシズム的行為ですが、民間サイトの経営者がこういうことをやり出すと、「言論の自由」を声高に叫んできたアメリカはどこへ行ったのかと言いたくなります。
 それはともかく、上記のような事情で仕方なく、「たんぽぽ舎」のML編集部に次のようなメールを送りました。

いつも参考になる記事をありがとうございます。下記の記事【TMM:No3723】が削除されたのか見つかりません。誰か保存されている方があれば再掲を御願いできないでしょうか。


 すると2~3日後に下記のような返事が届きました。

たんぽぽ舎、**です。以下の頁で見つけました。お役に立てば…
https://japanese.joins.com/article/582/256582.html?servcode=A00§code=A00

 
 さっそく上記URLをクリックしてみたらグリーンピース・ドイツ事務所のショーン・バニー首席原子力専門家による詳しい「福島汚染水危機」の報告が紹介されていました。
 読んでみると非常に深刻な事態が、太平洋岸どころか日本海にまで押し寄せてきてることが分かり、ぜひ皆さんに知っていただきたいと思い、このブログに再録することにしました。
 詳細は以下を御覧ください。

福島汚染水の放流で、放射性物質の一部が1年内に東海に流入
[ⓒ 中央日報/中央日報日本語版]2019年08月14日15時47分

福島に積まれている放射性汚染水を海に放流する場合、放射性物質の一部は1年内に東海(トンへ、日本名・日本海)に流入する可能性があることが確認された。

グリーンピース・ソウル事務所と「脱核エネルギー転換 国会議員の会」は14日午前、ソウル汝矣島(ヨイド)国会議員会館で「福島汚染水危機」報告書の著者であるグリーンピース・ドイツ事務所のショーン・バニー首席原子力専門家を招いて記者懇談会を開いた。

バニー氏は最近、寄稿文を通じて福島汚染水問題提起を提起した。

バニー氏はこの席で、昨年8月に金沢大学の猪股弥生教授らが国際学術誌『オーシャンサイエンス(Ocean science)』に掲載した論文を紹介した。

この論文で猪股教授らは「福島事故当時に放流した放射性物質が表層水を通じて南シナ海を経て日本海に入るのに約1年ほどかかる」と明らかにした。

研究チームはまた、日本列島南側の「亜熱帯モード水」(Subtropic Mode Water、STMW)に入り込んだ福島放射性物質も数年かけて東海に入ることが確認されたと付け加えた。

モード水は水温など物理的特性が似た水の塊り(水塊)のことを指す。

亜熱帯モード水として放流されたセシウム(Cs)-137の量は4200兆ベクレル(Bq、放射能測定単位)であり、このうち5%に該当する200兆Bqが2016年以前に東海に流入したと推算されている。

また、東海に入ってきたもののうち43%(亜熱帯モード水として流出したものの2.1%に該当)の90兆Bqは再び津軽海峡を通じて北太平洋に抜け、30兆Bqは沿海州を通じてサハリン側に流れ出たということだ。残りの90兆Bqは東海に残ったといえる。

一方、バニー氏は「福島第1原発には毎週1497立方メートルずつ放射性汚染水が増えていて、今月1日基準では合計104万9767立方メートルの汚染水が保存されている」とし「日本・安倍政権はこの汚染水を太平洋に放流する計画を推進している」と指摘した。

バニー氏は「汚染水100万立方メートルを海に流すには17年間かけて水7億7000万トンで薄めなければならないが、現実的に海洋汚染なく放流することはできない」と明らかにした。

バニー氏は「汚染水が海流を乗って海を循環し、太平洋沿岸の国々も放射性物質にさらされるおそれがあり、韓国は危険から抜け出すことは難しい」と話した。

バニー氏は「安倍内閣は費用を減らす目的で最適合の技術よりも値段が安い技術にこだわって除染(放射性物質除去)に失敗した」とし「放射性物質である三重水素(トリチウム)を除去できる技術は価格が高いとして断念して汚染水を処理できなかったが、今後は海に汚染水を捨てようとしている」と批判した。

バニー氏は「危険から国民を守るために韓国政府は日本政府に福島汚染水に対する説明と情報を要求する権利があり、問題を提起しなければならない」と付け加えた。

「脱核エネルギー転換 国会議員の会」の禹元植(ウ・ウォンシク)代表は「日本政府が汚染水の処理に失敗した事実を数年間にわたり隠蔽してきた状況で福島が安全だという日本政府の主張は信頼できない」とし「日本が汚染水を放流する場合、人類に対する犯罪行為になるだろう」と指摘した。


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 最近の私は自宅でも太平洋岸の魚介類は食べないようにしていますし、どこかホテルで泊まるときには肉類はもちろんのこと、魚介類も日本海のもの以外は断ることにしていたのですが、このままでは日本海の魚介類も食べれないことになりそうです。
 しかし事態は食べ物どころか、息をするときの空気ですら危険な状態にあります。最近の日本では、全国のスポーツ大会や全国の合唱コンクールなど、何かの全国大会があるたびに、福島が会場として選ばれることが珍しくなくなってきています。

 福島から汚染水が垂れ流されているだけでなく、汚染土を詰め込んだ黒い袋が福島全土に広がっています。しかも、そこからは風に乗って放射能が絶えず福島全土に広がっているのです。
 そんなところでスポーツをする選手は、大きな呼吸をしながら走り回るのですから、どれだけの汚染された空気を吸い込むことになったのか。合唱コンクールで大声をだして唄う生徒たちも、どれだけの汚染空気を吸い込んで福島を後にしたのでしょうか。
 考えただけでも恐ろしくなります。

 旧ソ連のチェルノブイリ原発事故では、政府はバスを何百台、何千台も仕立てて住民を迅速に強制移住させました。そしてソ連政府は、その移住した住民のために、チェルノブイリから北東約50キロの、汚染が少ない地区で、スラブチチという町を建設しました。
 ところが我が政府は、福島県民を強制移住させるどころか、汚染土を詰め込んだ黒い袋から放射能汚染された空気が飛び散り、それが全県に広がりつつある福島に帰還させようとしているのです。

 安倍首相が「福島は完全にコントロールされている」と嘘をついてオリンピックを日本に誘致した手前、それを証明するために福島県民を人身御供として差し出しているのです。そして、その犠牲になるのは福島県民だけではありません。
 なぜなら、福島で開かれる球技に参加するオリンピック選手や、それにボランティアという名で無償奉仕させられる学生たちも内部被曝する大きな危険性があるからです。その証拠に欧米のメディアからも、東京五輪にたいする強い疑問・批判が続出しはじめした。

*世界から「放射能五輪」と呼ばれる、日本のヤバさ!
福島の汚染水の太平洋放出にも外国人ブチギレ… 被曝のウソも!

https://www.excite.co.jp/news/article/Tocana_201811_post_18649/

 ですから日本の実態を知らないのは、むしろ日本人なのです、主会場になる東京ですら危険地域は少なくありませんし、汚染水が流れ込む東京湾(特に [「お台場」付近)も安全ではありません。
 こう思っていた矢先に、『東京五輪がもたらす危険』という本が緑風社から9月11日に発売されることを知りました。またもや「たんぽぽ舎」からの知らせでした。詳しい内容は下記を御覧ください。

*東京五輪の危険を訴える市民の会『東京五輪がもたらす危険――いまそこにある放射能と健康被害』
http://blog.torikaesu.net/?eid=83
http://www.ryokufu.com/isbn978-4-8461-1914-0n.html

 私がもうひとつ心配しているのは、ちょうどオリンピックが開かれているときに強度の地震が起きて、停止している各地の原発が自動的に再稼働したどうなるか、ということです。まして、それが首都直下型地震と重なった場合、どんな惨状になるか。考えただけでも恐ろしくなりませんか。

 こんなことを私が考えるようになったのは、チョムスキー『アメリカンドリームの終わり――富と権力を集中させる10の原則』(Discover21、2017)の出版祝いを兼ねたクリスマスパーティーに招かれて、タクシーに乗ったとき、その運転手が「いつ首都直下型地震が起きてもおかしくないから自宅ではそのための備品を欠かしたことがない」と言ったときからでした。
 今の安倍政権には、このような事態に対する想像力が全く欠けているように思えてなりません。


<追記1> この記事を書くために検索していたら次のようなサイトにぶつかりました。非常に印象深いものでしたから時間があるときに覗いてみてください。
*フレコンバック(汚染土袋)に埋もれた「我が村」~福島県飯舘村・葛尾村を訪ねて
http://www.labornetjp.org/news/2015/1020sasaki
*報道特集「汚染土と復興~東日本大震災から8年」20190309
そんなに安全なら、汚染土の再生利用は、まず東京オリンピックのための工事に東京都で使えばよい。汚染土再生利用の脅しと欺瞞!

https://blog.goo.ne.jp/mayumilehr/e/51c11a6af97c6e4214a2f75006d82c6d

<追記2> 『東京五輪がもたらす危険』の編集主幹者である渡辺悦司氏は、本書の序文と解題を試みた後、最後に次のように述べています。

 本文と上記の追加の根拠を全て総合すると以下の結論が出てくる。
 ドイツの医師団体(IPPNWドイツ支部)が警告するように、東京2020は「放射能オリンピック」「被曝オリンピック」となることは避けられない。全世界の最高のアスリートと全世界からの観客・訪問者が被曝リスクに曝される重大な危険が迫っている。
 東京オリンピックは、日本政府が行っている原発事故被害者・避難者切り捨て政策、帰還者への「棄民」政策=「大量殺人」政策の一環であり、知らずに参加したり無批判にその観客となることは、日本政府のそのような試みを黙認し容認する共犯につながりかねない。
 東京で開催されようとしているオリンピックは「人間の尊厳」を損なうものである。オリンピック憲章の規定する「オリンピズムの目的」すなわち「人間の尊厳の保持に重きを置く平和な社会の推進を目指すために、人類の調和のとれた発展にスポーツを役立てること」に真っ向から反している。
 日本政府は東京オリンピックを返上すべきであり、各国のオリンピック委員会は東京オリンピックをボイコットし、国際オリンピック委員会は本書に述べた全根拠により東京オリンピックを中止するべきなのである。


<追記3> たんぽぽ舎【TMM:No3728】2019年8月24日(土)によれば、『東京五輪がもたらす危険』編集主幹の渡辺悦司氏は、「本書を取りまとめた後で、さらに深刻な事実が次々明らかになってきています」として、次のように述べています。

◎ 例えば、テスト大会が行われているスイミング会場の東京「お台場」の底土は、放射性セシウムにより、91Bq/kgのレベルで汚染されています(大腸菌レベルや水質の不備は言うまでもなく)。
東京新聞2018年10月17日の記事「東京湾の放射能汚染は今」
https://genpatsu.tokyo-np.co.jp/page/detail/824

 「お台場」の近くには、底土汚染が168Bq/kgや189Bq/Kgの箇所もあります。しかも、このようなセシウムは「不溶性」の放射性微粒子形態をとっている可能性が高く、海水に浮遊しているでしょうから、肺内に吸着すると長期にわたって排出されないでしょう。
 本書で分析しております通り、不溶性微粒子は、NHK番組でさえ70~180倍、欧州放射線リスク委員会ECRRのデータに基づくわれわれの計算では、外部被曝およびカリウム40の内部被曝の数千倍も危険なものです。
NHK番組は:https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/3986/
ECRRは:http://www.jca.apc.org/mihama/ecrr/ecrr2010_chap6_9.pdf

 これを1個でも体内に取り込めば、選手たちは生涯にわたり被曝リスクを負うことになります。このようなところで、世界の選手たちを泳がせて何とも思わないという日本政府や日本スポーツ界上層部の神経は、何と形容したらよいのでしょうか?決して許してはなりません。

◎ 東京葛飾区の水道水も、日本政府の測定でも0.00481Bq/kgのセシウム汚染が見つかっています(2018年6月の蛇口水の測定)。
原子力規制庁のサイトは
https://radioactivity.nsr.go.jp/ja/list/194/list-1.html
 これは一般家庭(年間の水道使用量を30万リットルとすると)では、年間に1500Bq程度の汚染を受けるレベルです。



香港デモとベネズエラ――アメリカの「不安定化工作」と闘う民衆

国際教育(2019/08/03) 香港の「逃亡条例」、不安定化工作、ベネズエラの全土に及ぶ停電、メキシコ=チアパス州の先住民組織「サパティスタ」
「サパティスタ」の実質的な指導者だったマルコス副司令官
サパティスタ

 前回のブログで、香港の「逃亡条例」反対デモについて、下記のような題名で若干のコメントを書きました。
*香港「逃亡犯条例」反対デモにおけるアメリカの役割、中国への「不安定化工作」
http://tacktaka.blog.fc2.com/blog-entry-347.html (07/11)

 すると、長周新聞(2019年7月17日)が私のブログ「百々峰だより」を取りあげて、他の研究者の考えも紹介しつつ、更なる解説を付けてくれました。
 そこで、本ブログの末尾にそれを紹介することにしたいと思いますが、私は香港デモの光景をみていて、すぐに浮かんだのはベネズエラの反政府デモでした。

 あのマドゥーロ政権に対する反対デモで乱暴狼藉の限りを尽くしているのは、ベネズエラの富裕層に属する若者たちです。貧困に苦しむ民衆は、ほとんどがマドゥーロ政権を支持しています。
 ところが欧米のメディアも日本のメディアも、マドゥーロ独裁政権が民衆を苦しめているという報道で満ちあふれています。政権転覆を目指すアメリカの不安定化工作に言及している大手メディアは皆無です。

 最近では、ベネズエラの発電設備に対する攻撃で、全土のあちこちが停電に追い込まれるという事態になりました。このような人権侵害・過酷な攻撃にたいしてもベネズエラ民衆は、揺らぐことなく、アメリカの攻撃に耐える姿勢を堅持しています。
 このベネズエラの現状について、私の敬愛する物理化学者・藤永茂氏は、93歳にもなる老軀を押して、氏のブログ「私の闇の奥」で、大手メディアの報道ぶりを怒りを込めて
告発しています。ぜひご一読いただければ幸いです。
*「ベネズエラについての報道」
https://blog.goo.ne.jp/goo1818sigeru/e/8aaeaab21d468e844d21bd99830af85d

 また、ベネズエラ民衆の地を這うような闘いについて藤永氏は、同時に、次のような連載記事も書いています。氏はベネズエラ民衆の闘いを、メキシコの先住民「サパティスタ」の闘いと重ね合わせて解説していて、実に啓発させられました。
* サパティスタは強くなり大きくなりつつある(1)~(5)
https//blog.goo.ne.jp/goo1818sigeru/e/9184425477be7c02923c475c9c7000e4
https://blog.goo.ne.jp/goo1818sigeru/e/7cf523f9ed9d99be087d863de6b0915c

 他方、中国包囲網の一環として、安倍政権は、アメリカの指示に従って韓国に対する経済制裁=輸出規制を強化しました。しかし、このような輸出規制はブーメラン効果となり、弱り切っている日本経済をさらに弱化させるでしょう。
 最近の参議院選挙で、山本太郎の率いる「れいわ新撰組」が、大手メディアの無視にもかかわらず、大量の得票を獲得し政党として認められる存在になったことは、安倍政権による上記のような外交経済政策=「民衆いじめの政策」にたいする反感を如実に示すものとなりました。
 日本の未来にひとすじの光を見る思いがしました。


長周新聞『香港』20190717354


<註> 関連記事として下記のものがあることに、あとで気づきました。
*「CIAと香港」
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201907300000/(櫻井ジャーナル2019.07.30)

香港「逃亡犯条例」反対デモにおけるアメリカの役割、中国への「不安定化工作」

国際教育(2019/07/11) 香港「逃亡犯条例」、ジュリアン・アサンジ(Julian Assange)、ロンドンのエクアドル大使館、元司法長官ラムゼー・クラーク(Ramsey Clark)、国際行動センター(IAC: International Action Center)、

いまイギリスの牢獄で拷問状態にあるジュリアン・アサンジ
220px-Julian_Assange_August_2014.jpg assange-e1554979292892-640x400.png
         ロンドン警察によってエクアドル大使館から強制的に逮捕・連行されるアサンジ


 香港では、6月以来、「逃亡犯条例」改定に反対する大規模なデモが続いていますが、これについて大手メディアは、韓国民衆の声を反映するものとして、賛成したり後押しをしたりする論調で、ほぼ一致しています。
 これはかつて(2014年)香港で「オキュパイ・セントラル」、別名「雨傘革命」と呼ばれる運動が広がったときとよく似ています。このときも私は、この運動の広がり方に胡散(うさん)臭さを感じて、その疑問とその理由を下記のブログで詳しく展開しました。

*香港「オキュパイ・セントラル」、別名「雨傘革命」を考える、上
http://tacktaka.blog.fc2.com/blog-entry-200.html(平和研究2014/10/16) 
*香港「オキュパイ・セントラル」、別名「雨傘革命」を考える、下
http://tacktaka.blog.fc2.com/blog-entry-201.html(平和研究2014/11/17)

 この「雨傘革命」のとき、「レイバーネット日本」という独立メディアが、わざわざ香港から「雨傘革命」の活動家を香港から招き寄せ、「レイバーネット日本」がつくっている「レイバーネットTV」に登場させたことがあります。
 私は、このとき「レイバーネットTV」に電話をかけ、「雨傘革命」は中国包囲網を強化し中国を不安定化する工作として、CIAが裏で支援している可能性が強いから再考すべではないかと訴えました。
 しかし「レイバーネットTV」は、福島原発事故に抗議する「経産省前テントひろば」を支援し、日本のメディア界では最左派に位置する独立組織であったはずにもかかわらず、私の主張に全く耳を貸す気がないように思われました。
 日本の国内では、辺野古をめぐる攻防がますます激しさをましているときでしたから、次のように私は訴えたのですが、残念ながら彼らには通じなかったようです。
 「大金を費やして活動家を呼ぶのであれば、香港からではなく辺野古からにすべきではないか」「辺野古の生々しい声を本土のひとたちに紹介することこそ、『レイバーネットTV』のなすべき仕事ではないか」
 今回再び同じような動きが香港で広がっていますが、同じような胡散臭さを感じました。というのは、私の頭にすぐ浮かんできた疑問は次のようなものだったからです。

 本当に香港の民衆が、あれだけの大きなデモをして「香港で身柄を拘束された容疑者の人権」「容疑者の中国本土への移送」を心配するほどの気高い心の持ち主であれば、なぜ彼らは「ウィキリークス」の創始者=ジュリアン・アサンジの状況にたいしても抗議しないのであろうか。
 というのは、アサンジはエクアドル大使館に亡命していたにもかかわらず、国際法を踏みにじったイギリス警察によって強制的に大使館から引きずり出され、今や牢獄のなかで拷問状態にあり、アメリカからの強い要請で、いつアメリカに引き渡されるか分からない状況にあるからである。


 もっと偽善的なのはアメリカとイギリス政府の対応です。なぜならアメリカもイギリスも自分たちが世界中でおこなってきた今までの行為に頬被りしながら、他者に対して「人権を尊重せよ」と迫っているからです。
 これはまさに「天に唾する行為」と言うべきでしょう。というのは、イギリス政府はアサンジ氏を、国際法を踏みにじってエクアドル大使館から引きずり出し、アメリカ政府へ引き渡そうとしているにもかかわらず、香港政庁と北京政府にたいして抗議したり、お説教をたれたりしているからです。
 香港政庁は中国の領土内にあり、これは一種の内政問題でしょう。
 ところがアメリカ政府は、アメリカ人でもないアサンジ氏を(実はオーストラリア国籍、今はエクアドル市民権も付与されている)イギリスで強制逮捕させ(ロンドンはアメリカ領土でもない)、無実の罪を着せる裁判をイギリス政府におこなわせてアメリカに移送させる工作を、執拗に継続しているのです。

 こういうことを考えながら香港に関する報道を見聞きしていたら、長周新聞(2019年7月3日号)に、アメリカの反戦団体「国際行動センター」が「香港の抗議行動におけるアメリカの役割」という声明を発表しているとして、その要旨を紹介する記事を載せていることに気づきました。
 しかし、この紹介記事では、それがいつの声明であり、原文はどのようなものであったのかの記述が全くなかったので、電網(インターネット)であちこち検索した結果、やっと英語原文と声明の日付および「国際行動センター」の正式英語名を見つけることができました。
 そこで、長周新聞の翻訳を紹介すると同時に、声明の原文・日付および「国際行動センター」の正式英語名も以下に載せておきます。(調べているうちに、この International Action Centerという団体は、ラムゼー・クラーク元司法長官が1992年に創立した団体であることが分かりました。)


香港の抗議行動におけるアメリカの役割
国際行動センター(IAC)が声明 20190620
U.S. Role in Hong Kong Protests  
International Action Center Statement:  
https://iacenter.org/2019/06/20/international-action-center-statement-u-s-role-in-hong-kong-protests/


 「アメリカ帝国主義は、尊厳、主権、人権のためにたたかっている世界の人民の最大の敵である。ウォール街と金融資本は、世界中の三〇カ国以上にある八〇〇をこえる軍事基地、空母、絶えまないクーデター、暗殺、ドローン攻撃および飢餓制裁によって、その支配を維持している。またウォール街は、アメリカ民主主義基金を使い、世界中の何千もの非政府組織、反動的な政党へおよび腐敗した独裁者との同盟に資金を供給している。

 アメリカの援助と介入は人権や民主主義を保護したことがない。

 逃亡犯条例の改定案への最近の大規模な抗議行動は香港を揺がした。集団デモの側に集まる支持は自然な反応だ。だが、より深く見て、どの勢力が運動の背後にいるのか、そしてだれが恩恵を受けるのかを考えることは革命家の義務だ。

背景

 イギリスは一八四二年の最初のアヘン戦争でへ中国から香港を盗んだ。アヘン戦争をとおして、イギリスとアメリカはアヘン皿易、不平等条約と占領を押しつけた。一〇〇年にわたる帝国主義者の略奪は、発展途上の中国に貧困をもたらした。
 一九四九年の中国革命の勝利は中国を根本的に変え、社会主義を築くための努力を始めた。しかし、一九四九年から一九七九年までの三〇年間、中国はアメリカと西欧の帝国主義国によって完全に封鎖されてきた。
 一九七九年、鄧小平のもとで始められた「改革・解放」から、中国は資本主義的な市場改革への譲歩をおこなった。これは先進国からのいくらかの技術ど資本の導入を中国にもたらしたが、それは悪魔との取引であり、中国のブルジョア階級を強化した。
 一九九七年、イギリスの植民地時代の法的・司法制度の大部分を維持した「一国二制度」の原則のもと、香港は中国に返還された。
 香港は世界金融資本のセンターである。中国本土の何億もの人民を極度の貧困から解放し、高水準の医原へ教育、そして現代的なインフラを提供してきた社会的基準と、非常に敵対的だ。
 金融資本は中国への強い浸透をもたらした。香港は西側の活動拠点であり、社会主義の基盤を脅かす中国のブルジョア階級の成長を促進している。今日の中国は、復活したブルジョア階級と計画された経済を維持し拡大するための中国人労働者や農民の願望とのたたかいを特徴とする、非常に矛盾する社会である。
 現在の香港での抗議で理解しなければならないのは、この闘争、そして拡大する米軍の包囲と中国への貿易戦争の文脈のなかで起きていることである。香港の金融資本の力と、アメリカとヨーロッパの彼らの同盟国は、香港を中国から引き離そうとしている。そうすれば、それはこの地域の経済的「政治的前進基地として機能させることができる。これは、中国との法的および政治的統合を可能な限り制限することを意味する。この目的のために、アメリカは抗議行動のために広範な政治的、財政的およびメディア的支援を提供してきた。

香港の抗議行動についての事実

 最近の抗議活動を指揮している民間人権戦線の複数の加盟組織は、NEDから資金を受けとっている。何万人ものスタッフを擁するNGOが香港では登録されており、その多くはアメリカとヨーロッパから資金を受けとっている。
 民間人権戦線の創設者であるマーティン・リーは、抗議のあいだに米国務長官のマイク・ポンピオと会談した。ポンピオは、会議で抗議行動への支持を表明した。実際に抗議行動が進歩的な役割を果たしているのなら、それはアメリカ帝国主義の反動的な力に支持されることはないだろう。香港の独立した司法・法制度はイギリスの植民地主義の遺物である。
 何十億ドルもの西側からの資金援助にもかかわらず、香港の貧困率は二〇%(子どもは二三・一%)である。中国本土では一%未満である。過去二〇年間で香港の貧困はいぜんとして高いままである。また、最近の抗議行動は、二〇一四年に香港でおこなわれた「オキュパィ・セントラル」抗議行動(雨傘運動)とよく似ており、この問題を提起していない。抗議行動は、中国本土と結びついた指導体制に向けられており、アメリカに関連する銀行や香港に拠点を持つ超裕福な資本家、そして貧困やその他の深刻な問題などを無視)ている。
 アメリカは、言論の自由に関心を持っていると主張する一方で、アメリカ帝国主義の犯罪を暴露したジュリアン・アサンジの引き渡しを強く要求
している。
 ガザ(パレスチナ自治区)、ホンジュラス、スーダン、イエメン、フランス、または最近のブラジルでの大規模な抗議行動についての報道は少ない。それとは対照的に、欧米の企業メディアは香港の抗議について熱心に報道し続けている。報道の違いは、抗議行動の背後にある力の違い、だれが抗議の恩恵を受けるかの違いをあらわしている。
 アメリカ帝国主義には進歩的な装いでアメリカの目的をかくす「カラー革命」の長い歴史がある。香港の世界金融資本の部隊はアメリカの帝国主義と同盟しており、社会主義的所有と中国共産党による中国の指導に反対している。

アメリカは中国から手を引け! 香港は中国の一部だ!


<註> 
 冒頭で述べたように、ラムゼー・クラークは湾岸戦争が終わったあとの1992年に国際行動センター(IAC:International Action Center)という団体を創立ししました。それは、自分の祖国であるアメリカが嘘をついてワンが戦争を始めたことを知って、2度とこのような戦争を起こさせないための団体をつくる必要を痛切したからでした。
 そして民主党ジョンソン大統領の下で司法長官を務めた経験を生かして、湾岸戦争を裁くための「国際戦争犯罪法廷」を開廷し、祖国アメリカの戦争犯罪に有罪判決をくだしたのでした。これは、イギリスの哲学者バートランド・ラッセルがおこなった「ベトナム戦争国際市民法廷」に倣(なら)ったものでした。
 この「湾岸戦争を裁くための国際戦争犯罪法廷」を記録し出版したものが『ラムゼー・クラークの湾岸戦争―いま戦争はこうして作られる』(地湧社1994/)です。しかし残念ながら、ブッシュⅠ世が湾岸戦争を起こした後、息子のブッシュⅡ世がまたもや嘘をついてイラク戦争=第2次湾岸戦争を起こしたのでした。
 アメリカ人、とりわけアメリカの大手メディアは、歴史からほとんど学んでいないことが、これでよく分かります。

ラムゼー・クラーク (2) ラムゼー・クラーク





チョムスキー「なぜアメリカはイスラエルの属国となるか―アメリカの「キリスト教原理主義」とイスラエルの「ユダヤ教原理主義」の奇妙な野合

国際教育(2018/08/23) 国際原子力機関(IAEA:International Atomic Energy Agency)、バルフォア宣言、キリスト教シオニズム、ユダヤ教シオニズム、神意主義者(プロヴィデンシャリスト)、キリスト教福音派、終末キリスト教福音派


これまでのブログ原稿では、「神によって選ばれた国」と自称するアメリカと「神によって選ばれた民」と自称するユダヤ人の建国したイスラエルが、下記のような行為を繰りかえし、ますます世界から孤立しつつあることを説明してきました。

ユネスコからの脱退
国連人権理事会からの離脱
イスラエルの首都をエルサレムだと認める
アメリカの大使館をテルアビブからエルサレムに移動する

  これを見れば分かるように、アメリカの行為はほとんどすべてイスラエルの意向に沿っています。ユネスコからの脱退も、パレスチナが国家としてUNESCO加盟を認められたことに対する、イスラエルからの強い抗議を受けたものでしたから。
 しかし上記の孤立に、更なる拍車をかける行為が、アメリカによる「イラン核合意」からの離脱でした。
 米中露英仏独の6カ国が10年近くもかけて、やっと2015年7月にイランと最終合意に至った行動計画から、一方的に離脱を宣言したのですから、今までアメリカの同盟国だった「英仏独」も、さすがにこれは容認しがたいものでした。
 しかもアメリカ寄りと言われてきた国際原子力機関(IAEA:International Atomic Energy Agency)でさえ、「イランは合意計画を遵守している」と言っていたにもかかわらず、一方的に離脱を宣言したのですから、世界中から大きな反発や抗議の声が聞こえてきました。
 では、世界中からこのような抗議や反発を受けながらも、なぜアメリカは「イラン核合意」から離脱したのでしょうか。この間の事情をBBC(2018年05月9日)は次のように伝えています。
 「大方のイスラエルの情報機関や軍の元高官に加えて、一部の現職高官でさえ、イラン合意は不完全ながら維持するだけの価値はあると考えている。それにもかかわらず、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、トランプ大統領に核合意の破棄を最も声高に訴えてきた。」(https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-44049878
 御覧のとおり、この「イラン核合意」からの離脱も、イスラエルからの外的圧力とアメリカ国内のイスラエルロビーによるものだったことは、ほぼ間違いないでしょう。
 トランプ大統領の娘婿がユダヤ人であり、その影響で娘もユダヤ教に改宗したことも影響しているかも知れませんが、それは主要な要因ではなく、今やアメリカ全体が大きくイスラエル寄りに傾斜していることが問題なのです。
 その事情は、このブログ(「神によって選ばれた国」「神によって選ばれた民」)でも、チョムスキーの言として、何度か紹介してきたのですが、それがバラバラなままで印象に薄いものになっているように思いました。
 そこで今回は、Chomsky:WHO RULES THE WORLD(『誰が世界を支配しているのか』双葉社 2018)から該当部分を一挙に引用して、私の連載(「神によって選ばれた国」「神によって選ばれた民」)の項に、一区切りをつけたいと思います。

チョムスキー「誰が世界を支配しているのか」

「神によって選ばれた国」と「神によって選ばれた民」
(この題名は寺島による。原書の節タイトルは「イスラエルと共和党」となっています。)

1 軍事的経済的関係
 米国の政策や会話に、パレスチナ人の権利があまり出てこないのは理解できる。パレスチナ人には富も力もないからだ。彼らが米国の政策に役立つことは何もない。むしろマイナスの価値を持つ。アメリカやイスラエルの観点からすれば、アラブ諸国の暴動を扇動する厄介者だからだ。
 対照的にイスラエルは豊かな国で、洗練された軍事中心のハイテク産業を持つ。過去数十年間、米国の貴重な軍事的・戦略的同盟国でもある。特に一九六七年には、エジプトの大統領であり中東の盟主だったナセル、「ナセル主義という病原体」を破壊して、米国とその同盤国サウジアラビアに大サービスをしている。
 それ以降、米政府との「特別な関係」が続いているが、スタイルは今も同じだ。イスラエルは米国のハイテク投資の中心地でもある。実際、両国のハイテク産業と軍事産業は緊密な関係にある。

2 文化的宗教的関係
2・1 キリスト教シオニズムとユダヤ教シオニズム

 このように基本的な大国の権力を巡る政治的な動き以外にも、文化的な要素があることも無視できない。英国や米国のキリスト教シオニズム(神がアブラハムと結んだ契約に基づき、エルサレムがアブラハムの子孫に永久に与えられたとする教理)は、ユダヤ教シオニズム(一九世紀末以来のユダヤ人国家を建設しようとする運動)よりも古い歴史を持つ。
 キリスト教シオニズムはエリート層では重大な意義があり、明確な政策も持っていた。ユダヤ民族のパレスチナ帰還を支持するバルフォア宣言もその一つだ。
 第一次世界大戦中に英国のエドモンド・アレンビー将軍がエルサレムを征服した。このとき、アレンビー将軍は米国の報道機関から「獅子心王リチャード」の再来だと大喝采を受けた。
 なぜなら、十字軍を率いて聖なる地から異教徒たちを追い出したのは、リチャード獅子心王(the Lion-hearted、リチャード一世。12世紀のイングランド王)が最後なのだ。

2・2 神意主義―「神に選ばれた民」と「神に選ばれた国」
 次のステップは「神に選ばれた民」たちを、「神によって約束された土地」に返すことだった。
 当時のエリートたちの典型的な見方は、フランクリン・ルーズベルト大統領の内務長官ハロルド・イッキーズの言葉によく示されている。
 彼はユダヤ人によるパレスチナ植民地化を讃え、「人類の歴史においてこれほどの業績はほかにない」と述べた。
 このような態度は、神がすべてを計画済みであると信じる「神意主義者」(プロヴィデンシャリスト)の教義を信じる人々の間では、ごく普通のことだ。
 この教義は米国が建国されたときから大衆とエリートの文化の中で強い力を持つ。この教義は、「神が世界に計画を持っており、米国は聖なる指示に従って前進している」というものだから、この教義に従った米国の指導者たちの発言を挙げれば、長いリストができる。

2・3 キリスト教福音派と終末キリスト教福音派

 キリスト教福音派は米国では主流派だ。さらに極端な教義を持つ終末キリスト教福音派も米国では大人気で国民に浸透している。
 彼らは一九四八年のイスラエル建国で元気づけられ、一九六七年にパレスチナを征服すると、さらに活気づいた。これらすべては終末の時とキリストの再臨が近づいている予徴だと、彼らは見ている。
 これらの宗派の勢力はレーガン時代から強くなり始めた。この頃から共和党は、伝統的な意味での政治政党であることをやめている。超金持ちや大企業の幹部という少数の人々への献身に専念するようになったのだ。
 だが、新装された共和党には投票してくれる人が少ない。そこで別の票田を探さなくてはならなくなった。選択肢は一つしがなかった。これまで社会に常に存在していたが、組織的な政治勢力とはなっていなかったグループだ。
 彼らは大きな恐れと憎しみを抱える外人嫌いの国粋主義者で、宗教面でも国際的基準からみると過激だが、米国内では普通の範曙に入る。その結果、強くなったのは聖書の予言に対する敬意だ。
 この新しい政治勢力はイスラエルを支持するだけでなく、征服と拡大を喜び、情熱的にイスラエルを愛している。イスラエル支持は共和党候補が必ず唱えなければならない教義になっている。ただし民主党も似たようなものだが。

2・4 先住民殲滅の上に建設された国=「神に選ばれた国」と「神に選ばれた民」
 これらの要素は別として、忘れてはならないことがある。「英語圏」である英国とその末裔が入植した植民地社会は、先住民たちの遺灰の上に建設されたという事実だ。
 先住民たちは圧迫されほぼ絶滅させられた。このような過去の行動は米国の場合、基本的に正しかったのだろう。なにしろ「聖なる神の命令」なのだから。
 そのため“イスラエルの子”たちにも親愛感を感じている。彼らも、パレスチナの先住者たちを虐殺・追放しながら、似たようなコースをたどっているからだ。
 だが、米国は地政学的狙いと経済権益を優先するので、この先、この政策が変わらないという保証はない。
(『誰が世界を支配しているのか』双葉社 2018: 136-138頁、少し理解しにくいところがありましたので寺島が改訳を施し、小見出しも付け加えました。)


<註> イランとの核合意について『知恵蔵』は次のように説明しています。

イランの核兵器開発を大幅に制限する合意。イランと6カ国(米・英・仏・独・ロ・中)が2015年7月に結び、国連の安全保障理事会でも決議された。正式名称は「包括的共同行動計画(JCPOA)」。合意内容は、イランが濃縮ウランや遠心分離機を大幅に削減し、これを国際原子力機関(IAEA)が確認した後、見返りとしてイランへの経済制裁を段階的に解除するというもの。その後、IAEAの定期的な査察によって、イランが合意事項を順守していることが確認された。しかし、18年5月に米トランプ大統領が核合意からの離脱を発表したことで、状況は一変。トランプ政権は、核合意に弾道ミサイルの開発規制が盛り込まれていないこと、核開発制限に期限が設定されていることなどを離脱の理由に挙げている。他の当事国は合意継続を表明しているが、米国抜きでの実効性をどう確保していくかが今後の課題になっている(出典:朝日新聞出版「知恵蔵」2018年6月末時点)。


世界はいま「大転換」のとき2 ― 「神によって選ばれた国」「神によって選ばれた民」その3:アメリカの「国連人権理事会」離脱宣言

国際教育(2018/07/23) 国連人権理事会(UNHRC:United Nations Human Rights Council)
ノーマン・フィンケルシュタイン、『ホロコースト産業』、ウィリアム・ブルム、『アメリカの国家犯罪全書』、ホワイトヘルメット、イスラエル「国家自決」法

 次回は、アメリカの国連人権理事会(UNHRC)脱退を取りあげると予告してあったのに、前回のブログから早くも1ヶ月が経ってしまいました。
 『魔法の英会話 不思議なくらいに英語が話せる練習帖』および『英語教師のための作文技術① レポートおよび研究論文の書き方考え方』の出版準備のため思わぬ時間を取られ、またもや1ヶ月後になってしまいました。
 以下は、「『神によって選ばれた国』『神によって選ばれた民』その3」と題して、私がこれから述べたいと思っていることの目次です。

1 アメリカの、国連人権理事会からの離脱
2 「民族浄化作戦」-人権侵害国として突出するイスラエル
3 自らを暴露するイスラエルの、「国家自決」法と「白ヘル部隊」救出作戦
4 ブルム『アメリカの国家犯罪全書』
5 フィンケルスタイン『ホロコースト産業』
おわりに-「明けない夜はない」

アメリカ国連大使ヘイリー女史
国連大使ヘイリー ブルム『アメリカの国家犯罪全書』

1 アメリカの、国連人権理事会からの離脱
 それはともかく、アメリカ国連大使ヘイリー女史は去る2018年6月19日、国連人権理事会からアメリカは離脱すると表明しました。
 トランプ政権は、すでに2017年6月1日、地球温暖化防止の国際枠組み「パリ協定」からの離脱を決め、NATO同盟国のフランスからも強い批判を浴びました。
 またトランプ政権は、2017年10月、反イスラエルの姿勢が目立つとして、国連教育科学文化機関(ユネスコ)からの脱退も表明しました。
 アメリカが「反イスラエルの姿勢が目立つ」とした理由は、ユネスコが2011年10月31日に総会を開き、賛成107、反対14、棄権52で、最も新しい加盟国として、パレスチナ国の正式加盟を承認したことでした。
 この決議案採択にたいして、アメリカ、イスラエルなどは反対し(日本は棄権でした)、アメリカ国務省は、この採択への対抗措置として、ユネスコ分担金の停止を実行し、さらに2017年10月にはユネスコを再脱退すると表明したのでした。
 パレスチナ国は元々、国連に加盟したかったのですが、常任理事国として拒否権を持つアメリカが、イスラエルも意向をくんで反対し、いまだに国連加盟を果たしていません。しかし国連の下部団体であるユネスコが、パレスチナ国の加盟を認めたことが、アメリカとイスラエルの怒りを買ったのです。
 しかし2016年3月の時点で、国際連合加盟国(193ヶ国)中、136ヶ国がパレスチナを国家承認しています。常任理事国ではロシアと中国が承認している他、南米ではコロンビア以外、アフリカではカメルーンとエリトリア以外のすべての国が承認しています。
 またアジアでは、日本、韓国、中華民国、シンガポール、ミャンマー以外の全ての国がパレスチナ国を承認しています。つまりアメリカの息のかかったNATO諸国およびアジアにおけるアメリカの属国・同盟国以外はすべて、パレスチナという国を承認しているのです。
 そういう意味では、アメリカのユネスコ脱退は、ユネスコ(教育科学文化機関)が世界の知性を代表する国際機関と認められているだけに、「神によって選ばれた国」イスラエル、「神によって選ばれた民」アメリカの、孤立化を象徴する事件でもありました。
 この孤立化をさらに後押しをしたのが、2018年6月19日に表明された国連人権理事会からの離脱でした。地球温暖化防止の国際枠組み「パリ協定」からの離脱、アメリカ大使館の「エルサレムへの移転」と併せて、アメリカの世界的威信を、これほど低下させた事件はなかったでしょう。
 言い換えれば、これらの国際機関からの離脱・脱退は、アメリカやイスラエルの強さの現れではなく、むしろ弱さの現れだとみるべきでしょう。
 以下、この点について、項を改めて検証してみたいと思います。ユネスコについても人権理事会についても、「反イスラエルの姿勢が目立つ」ことが脱退理由としてあげられているからです。

フィンケルスタイン ホロコースト産業

2 「民族浄化作戦」-人権侵害国として突出するイスラエル

 さて、アメリカ国連大使ヘイリー女史が、6月19日に「国連人権理事会からアメリカは離脱すると表明」したとき、その理由として挙げたのが、「人権理事会の最近の決議数はイスラエルを非難するものが突出して多い」「人権理事会が人権ではなく政治的な偏見によって動いている明確な証拠だ」という点でした。
 しかしイスラエルのパレスチナにたいする蛮行、とりわけガザ地区に対する蛮行は目を覆わんばかりの残虐行為に満ちていて、それにたいする非難決議が何度も国連安保理事会で提出されましたが、いつもアメリカによる拒否権の発動で実効あるものになりませんでした。
 イスラエルの残虐ぶりは、最近の下記ブログ (2018/05/22)でも、毎日新聞(2018年5月15日)の記事を引用しつつ、私は次のように書きました。

 アメリカが大使館をテルアビブからエルサレムに移転させた2018年5月14日は、イスラエルの建国記念日だった一方、15日はパレスチナ人にとっての「ナクバ(大惨事)の日」でした。
 「ナクバ」とはアラビア語で「大惨事」を意味することばです。ユダヤ人が1948年5月14日、パレスチナにイスラエルを建国した際、70万人ものパレスチナ人が故郷を追われ難民となりました。
 トランプ大統領は、よりによって、このような日を大使館移転の日に選んだのですから、火に油を注ぐようなものです。
 予想どおりパレスチナ人の怒りは頂点に達し、6週間に及ぶ抗議行動の間、イスラエルによる銃撃で100人以上の抗議参加者が死亡し、数千人の負傷者が出ています。
 5月14日と15日の二日間だけでも「衝突の死者は62人に達した。催涙ガスの吸引により死亡した生後8カ月の女児も含まれる」そうです。
http://tacktaka.blog.fc2.com/blog-entry-318.html

 
 しかし、このような蛮行は、もうすでに何十年も続いているものです。チョムスキーはすでに『チョムスキーの教育論』(明石書店、2006)の補章第1節「『歴史捏造』の技術を検証する」で、わざわざ「2 沈黙の義務」という項をもうけ、そこでイスラエルの残虐行為を詳しく論じているのです。
 この補章そのものは、中米ニカラグアでアメリカがいかに政権転覆活動をおこなったか、その過程でアメリカが特殊部隊を使いながらどのようにしてニカラグアやエルサルバドルで、どんな残虐行為を展開したかを詳細に説明したものですから、本来イスラエルとは関係ないはずです。
 にもかかわらず、チョムスキーは、この節この項で、次のように更なる小項目をたてて、過剰とも思われるほどの頁数をついやして、イスラエルの蛮行を、怒りを込めて糾弾しているのです。

2 沈黙の義務
*米国ではタブーとされるイスラエル問題
*イスラエルでは何が起きていたのか
*無罪になった兵士達の蛮行
*米国で当然視されてきた民族浄化


 ユダヤ人であるチョムスキーの、ユダヤ人国家とされるイスラエルにたいする怒りが、いかに激しかったか、これだけでも分かっていただけるのではないでしょうか。この原書ペーパーバック版が出版されたのは2000年ですから、それから既に18年間も、イスラエルによる似たような蛮行が続いてきたことになります。
 しかしこの原書Chomsky on Miseducationに収録された、この補章第1節「『歴史捏造』の技術を検証する」は、実を言うと、元々はNecessary Illusions(1989)という書籍に入っていたものを、編集者のDonaldo Macedo氏が、チョムスキーの許可を得て、この原書に再録したものでした。
 この原書の出版年は1989年でしたから、チョムスキーの怒りは18年前どころか、29年前から続いてきていることになります。というのは、最近のチョムスキーはガザの惨状を「青天井の牢獄」"open-air prison" と名付けて、その怒りを表現しているからです。
 ガザの惨状は地区そのものが牢獄であり、そのような牢獄のなかで地区住民が毎日を生きていると、チョムスキーは言いたかったのです。詳しくは下記ブログ(2012/11/21)を御覧ください。
*血に染まった「青天井の牢獄」ガザ、「民族浄化」としてのパレスチナ
http://tacktaka.blog.fc2.com/blog-entry-105.html
 私がこのブログを書いたのは2012年ですが、それから2年も経たないうちに、次の大惨事が起きました。それをAFP通信(2014年7月24日)は、「パレスチナ側の死者、700人超に イスラエルがガザ攻撃続行」という見出しで次のように伝えています。

「パレスチナ側の死者、700人超に イスラエルがガザ攻撃続行」
 パレスチナ自治区ガザ地区(Gaza Strip)でイスラエル軍が続ける軍事作戦は24日、17日目に突入し、医療関係者によるとパレスチナ側の死者数は718人に上った。同地区で活動する人権団体は、死者の8割以上が一般市民だと指摘している。ガザ地区では同日だけでも、イスラエル軍の空爆で21人が死亡。犠牲者の中には、5歳の女児と3歳の男児を含む6人家族もいた。


 これを受けて、国連人権理事会は、2014年7月23日、パレスチナ自治政府とアラブ諸国などが共同で提出した「イスラエルのガザ侵攻を非難する決議」を、29ヶ国の賛成多数で可決し、理事会議長が派遣する調査委員会が国際人道法・国際人権法違反を調べることになりましたが、これにたいして、いつものとおり、理事国ではアメリカ合衆国だけが反対でした。そしてEU諸国と日本など、アメリカの属国である17ヶ国が棄権しました。イスラエルは「衡平を欠く」と猛反発し、調査に協力することを拒否しました。
 これが、アメリカの国連大使ヘイリー女史の「人権理事会は、人権ではなく政治的な偏見によって動いている明確な証拠だ」という実態なのです。
 ヘイリー女史は、その場でさらに、中国、ベネズエラ、コンゴ民主共和国を名指しして「最も基本的な権利を明らかに軽視している」と指摘し、こうした国が理事会の参加国になっていることも批判したそうですが、これもまさに天に唾する行為でした。
 というのは、アメリカ自らが、「最も基本的な権利を明らかに軽視している」国々、たとえばイスラム教原理主義国家サウジアラビアなどの王制独裁国家を支援し、選挙で選ばれた政権の転覆を謀ってきたことは、今では誰の眼にも明らかになってきていることだからです。
 その典型例が、イラクのサダム・フセインやリビアのカダフィ大佐にたいする政権転覆と彼らの死刑または惨殺でした。初めは、「独裁者が民衆を弾圧している」「大量破壊兵器をもっている」という口実で、この政権転覆を国連が支持したかのように思われましたが、これらが全て嘘であったことは今では誰でも知っている事実となりました。
 アメリカやNATO諸国は、イラクやリビアの成功に味をしめて、今度はシリアのアサド政権転覆に乗りだしたのですが、イラクやリビアの件で騙されたことに気づいたロシアと中国は、今度は国連決議によるシリア侵略にGOサインを出しませんでした。
 「アサド政権が化学兵器を使っている」という嘘も繰り返し出されましたが、そのたびにロシアや現地を自分の眼で確かめたジャーナリストによって、その嘘が暴露されています。アメリカが「オオカミ少年」であることがこれほど明らかになったことは、いまだかつてなかったことです。
 たとえば、ノーベル平和賞の候補になり映画化までされた「ホワイトヘルメットと言われる集団」も、アメリカやNATO諸国によってつくりあげられ、支援されたプロパンガンダ部隊であったことも、調査報道記者として有名なセイモア・ハーシュによって暴き出されています。
*'Propaganda organization': White Helmets 'engage in anti-Assad activities' – author Sy Hersh to RT
セイモア・ハーシュは語る「プロパンガンダ組織:ホワイトヘルメットがアサド政権転覆に従事」

https://www.rt.com/news/431379-white-helmets-propaganda-syria/


3 自らを暴露するイスラエルの、「国家自決」法と「白ヘル部隊」救出作戦
 こうして、イスラム原理主義勢力を裏で支えながらシリア侵略をすすめてきたのが、アメリカとNATO諸国、イスラエルとサウジアラビア(そして途中まではトルコも)であったことも、時間が経つにつれた、ますます明らかになってきました。
 とりわけ自らの立場を、自らの行為で暴露してしまったのがイスラエルの「ホワイトヘルメット救出作戦」でした。シリア侵略勢力は、ロシア軍とアサド軍の目覚ましい働きによってますます追い詰められ、今やどうやってシリアから脱出したらよいかを深刻に考えなければならない状況でした。そこへ登場したのがイスラエルだったというわけです。

*Israel evacuates White Helmets from Syria to Jordan
「イスラエルが『白ヘル部隊』をシリアからヨルダンへ避難させる」

https://www.rt.com/news/433924-white-helmets-evacuation-israel/
*White Helmets rescue op clearly showed who pay-rolled them – Russian Foreign Ministry
「『白ヘル部隊』の救出作戦は、誰が彼らを雇っていたのかを明確に示すことになった」

https://www.rt.com/news/434052-white-helmets-rescue-hypocrisy/ 

 このように世界平和にとって誰が脅威かをイスラエルは自らの行動によって示したわけですが、このイスラエルを強力に擁護しているのがアメリカです。それを劇的なかたちで世界に見せつけたのが、「反イスラエルの姿勢が目立つ」という理由による、国連人権委員会からの脱退宣言でした。、
 ヘイリー氏は、その場でさらに、中国、ベネズエラ、コンゴ民主共和国を名指しして「最も基本的な権利を明らかに軽視している」と指摘し、こうした国が理事会の参加国になっていることも批判したそうですが、彼女が強力に擁護するイスラエルが、つい最近(2018年6月18日)、ユダヤ人だけの『国家自決』法を、議会で可決しました。

*Israel passes Jewish-only 'national self-determination' law despite outcry
「イスラエルが、ユダヤ人だけの『国家自決』法を、議会で可決」

https://www.rt.com/news/433655-israel-nation-state-law-passsed/

 イスラエルには、約180万人のアラブ系イスラエル人がいて、今までは公用語として認められてきたアラビア語を話してきました。しかし今後は、正式な公用語はユダヤ人が話すヘブライ語だけとなります。
 イスラエルには約180万人のアラブ人がいて、イスラエルの人口の約4分の1を占めていますが、彼らを「2級市民」として扱うことを、法律で正式に宣言したことになります。
 これでは、かつて人種差別国家として有名であった南アメリカ共和国の「アパルトヘイト」とどこが違うのでしょうか。ヘイリー女史は、このようなイスラエルを、どのように擁護するのでしょうか。
 これでは、「神によって選ばれた国」イスラエルと「神によって選ばれた民」アメリカの、世界からの孤立は、ますます深刻になることはあっても緩和することはないでしょうか。(しかし残念なことに、このようなアメリカとイスラエルの行動に、ほとんどいつも歩調を合わせてきたのが我が国の政府です。)


4 ブルム『アメリカの国家犯罪全書』
 ちなみに、「最も基本的な権利を明らかに軽視している」とヘイリー女史によって名指しで非難された中国、ベネズエラ、コンゴ民主共和国についても、ここで言及しておきたいと思います。
 まず中国ですが、アメリカと違って現在の中国は、他国に軍隊を出して侵略したり特殊部隊を密かに派遣して住民を虐殺してきたという過去を持っていません。それに比して、アメリカ人自身による著作『アメリカの国家犯罪全書』(ウィリアム・ブルム、作品社、2003)を見れば分かるように、その過去は実におぞましいものです。
 ベネズエラについてもアメリカはチャベス大統領を「独裁者」だとして口汚く非難してきましたが、チャベスが大統領になってからはベネズエラの貧困層は激減し、教育水準も驚くほどの高まりを見せました。
 ところが、2002年4月11日にはCIAの支援を受けて軍部によるクーデターが発生し、チャベスは軍に監禁され、代わりに元ベネズエラ商工会議所連合会(Fedecámaras)議長のペドロ・カルモナが暫定大統領に就任した。
 最初クーデターは成功したかに思われましたが、暫定政権が強権的な支配を強めたため、大統領の支持基盤である貧困層のデモが激化。情勢を見た軍や国家警備隊が寝返り、カルモナは逃亡。クーデターはわずか2日間で失敗に終わりました。
 これを見れば分かるように、チャベスの政策はベネズエラの富裕層・特権階級にとっては非常に不愉快なものでした。これはベネズエラの石油資源などに以前から目をつけているアメリカにとっても許せない政策でした。
 だからこそCIAはベネズエラにおけるアメリカ大使館を拠点に、何度も不安定化工作を実施しましたが、それが成功しなかったので、ベネズエラの軍部を利用したクーデターを企てたのです。ウィキペディアですら、このクーデターについて次のように記述しています。

このクーデター時、RCTVを含む民間テレビ4局は、チャベス派の狙撃兵による反チャベス派への銃撃事件を捏造し、繰り返し報道した。RCTVのグラニエル最高責任者はクーデター派のこの陰謀に直接、加担していたことが判明している。この報道機関として著しく中立性を欠いた行為が、のちのRCTV放送免許の更新問題を引き起こす原因となった。

 
 まるで最近のアメリカによるウクライナ政変劇を思わせるような狙撃事件です。
 ベネズエラでは、チャベス大統領が癌で死去したあと(毒物による暗殺だとの説もある)を引き継いだニコラス・マドゥロ大統領も、相変わらず「独裁者」だと罵られ、今でもアメリカによる不安定化工作が続けられています。
 最後は、ヘイリー女史が名指ししたコンゴについてです。これについては、ずいぶん長くなってきたので、櫻井ジャーナル(2017.10.15)の次のような説明を引用するにとどめておきます。

資源の宝庫、コンゴは1960年2月に独立し、6月の選挙でパトリス・ルムンバが初代首相に選ばれる。それを受け、コンゴ駐在アメリカ大使のクレアー・ティムバーレークはクーデターでルムンバを排除するように進言するが、同大使の下には後に国防長官となるフランク・カールッチがいた。ドワイト・アイゼンハワー大統領は同年8月にルムンバ排除の許可を出している。(David Talbot, “The Devil’s Chessboard,” HarperCollins, 2015)
 アメリカ支配層に選ばれたモブツ・セセ・セコが9月にクーデターを成功させ、12月にルムンバは拘束された。1961年1月17日、ジョン・F・ケネディが大統領に就任する3日前に、ルムンバは刑務所から引き出されてベルギーのチャーター機に乗せられ、ルムンバの敵が支配する地域へ運ばれた。そして、そこで死刑を言い渡され、アメリカやベルギーの情報機関とつながっている集団によって殴り殺された。
 1961年1月26日にアレン・ダレスCIA長官はコンゴ情勢についてケネディ新大統領に説明しているが、ルムンバ殺害について触れていない。(前掲書)


 つまり、ケネディ大統領は、民主的に選ばれたルムンバがCIAの暗躍によって殺されたことを知らなかったわけですが、アメリカが犯した国家犯罪であったことは間違いありません。
 そして今度はケネディ自身が、1963年11月22日に暗殺され、その2年後にキューバ革命の英雄ゲバラは独裁者モブツが支配するコンゴへ入って活動を始めます。しかし、そのゲバラも、CIAの手引きで、1967年10月9日にボリビアで殺されました。

 このように、調べれば調べるほど、アメリカやイスラエルの言う「人権」「民主主義」がいかに偽善に満ちたものであるかが見えてきます。
 その意味で、何度も言いますが、アメリカによる国連人権理事会の脱退は、アメリカとイスラエルの世界的孤立を示す記念碑的事件になるかも知れません。


ノーマン・フィンケルスタイン
フィンケルスタイン2 ホロコースト産業

5 フィンケルスタイン『ホロコースト産業-民族の苦しみを売り物にするユダヤ人エリート』
 それにしても、なぜアメリカは、これほどにまでイスラエルに肩入れしなければならないのでしょうか。
 先述のとおり、チョムスキーは『チョムスキーの教育論』の補章で「米国ではタブーとされるイスラエル問題」と述べていましたが、言論の自由を最も声高に叫び、「人権」や「民主主義」を口実に他国に干渉し、クーデターまで企ててきたアメリカが、なぜイスラエルの政策を非難できないのでしょうか。
 その理由のひとつとして考えられるのは、「イスラエル批判=ユダヤ人差別」と受けとられるのではないかという恐れでしょう。
 もちろんアメリカには通称「エイパック」と呼ばれるロビー団体(AIPAC:The American Israel Public Affairs Committee「アメリカ・イスラエル公共問題委員会」)があり、全米ライフル協会をも上回ると言われる強力な組織です。
 この団体は全米50州に10万人の会員を数えており、また英経済誌『エコノミスト』によれば、その年間予算は5000万ドルに上るそうです。そこからの莫大な政治献金を考えれば、この団体の影響力も無視できないことは間違いないでしょう。彼らの意向に逆らうと絶対に議員や大統領になれないと言われているほどですから。
 しかし私がここでも問題にしたいのは、そのような政界の話ではなく、「言論の自由」を誇っているはずの学会・言論界の世界でさえ、その例外ではないという事実です。
 確かに、ユダヤ人以外のひとがイスラエルの政策や行動を批判すれば、「それはユダヤ人に対する差別・偏見だ」と言われかねないので、なかなかイスラエル批判に踏み切れないのも分からないでもありません。
 しかし、いまアメリカで深刻なのは、ユダヤ人でさえイスラエル批判ができないという現実です。チョムスキーはユダヤ人ですが、彼のように堂々とイスラエル批判ができるのは、彼が全く例外的存在だからです。
 とはいえ、そのように著名な例外的人物でさえ、大手メディアで発言したり執筆したりすることは、ほとんど許されていません。彼が『Play Boy』という通俗雑誌で発言しているのを見ると異様な感じがしますが、そのような場しかアメリカの一般市民に語りかける場が、彼に許されていないからです。
 ですから、博士課程にいる学生がイスラエル問題を取りあげて論文を書くことは不可能に近いと言えます。その不可能に挑戦したのがノーマン・フィンケルスタインでした。
 彼の父親はアウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所収監の、母親はマイダネク強制収容所収監のユダヤ人生存者でした。
 このようにアフシュビッツの生き残り、ホロコーストを身をもって体験した人物を両親にもつフィンケルスタインでさえ、イスラエル批判をやりとげることは容易なことではありませんでした。
 彼が、プリンストン大学の博士課程で、パレスチナ人はもともと存在しなかったとするジョーン・ピーターズの著書『From Time Immemorial(邦題:ユダヤ人は有史以来)』を取りあげて、それを批判する博士論文を書こうとしたとき、助言を求められたチョムスキーが再考するよう求めたという話は、あまりにも有名です。
 チョムスキーが再考を求めた理由は、「そのような課題に挑戦すると研究者としての人生を送れなくなる恐れがある」「そもそもその論文を審査員として引きうける教授がいるかどうか」というものでした。
 しかしフィンケルスタインは、その助言を重く受け止めつつも、敢然と自分の目標に挑戦したのでした。そしてチョムスキーの援助も得ながら、名門プリンストン大学から博士号を取得し、なんとかシカゴのデポール大学に職を得ることが出来ました。
 この研究のなかで誕生したのが、世界的話題となった『ホロコースト産業――同胞の苦しみを「売り物」にするユダヤ人エリートたち』(三交社、2004)、『ホロコースト産業――同胞の苦しみを「売り物」にするユダヤ人エリートたち』(三交社、2004)という2冊の本でした。
 彼は前著『ホロコースト産業』では、AIPACなどを中心するアメリカのユダヤ人エリートが、自らの政治的・経済的利益にそぐわないものに対して反ユダヤ主義のレッテルを貼りつけることで、ホロコースト被害者としての立場を濫用し暴利をむさぼっていると強く批判しました。
 また後著『イスラエル擁護論批判』では、ハーバード大学ロー・スクール教授として著名であったアラン・ダーショウィッツの『ケース・フォー・イスラエル―中東紛争の誤解と真実』に対して、虚偽に満ちているとして徹底した批判を展開しています。
 しかし、このイスラエルの擁護書を批判したことで、彼自身もユダヤ人であるダーショウィッツから、フィンケルスタインは「ユダヤ人の裏切り者」と目されるようになり、その後の人生は、まさにチョムスキーの予言したとおりのものになりました。
 というのは、この本が出版された後に、准教授を務めていたデポール大学で間近に迫っていた終身在職権の取得が、大学上層部によって急遽否決されるという事件がおきたからです。こうして彼はデポール大学で教授になる道を閉ざされただけでなく、大学そのものから去るよう追い込まれたからです。
 この間、ダーショウィッツは、『イスラエル擁護論批判』の出版差し止めをカリフォルニア州知事(当時)のアーノルド・シュワルツェネッガーに依頼したり、出版元のカリフォルニア大学出版局に高額訴訟をほのめかす等の行動をとっていました。
 ですから、デポール大学で間近に迫っていた終身在職権を、大学上層部によって急に否決されることになったのも、ダーショウィッツによる裏工作の結果ではなかったのかと、強く疑われている所以です。


おわりに-「明けない夜はない」
 いずれにしても、このフィンケルスタインをめぐる事件は、アメリカの誇る「知的自由」なるものがどの程度のものか、それを示す好事例ではなかったでしょうか。
 と同時にそれは、巨視的に見れば、「神に選ばれた民」と「神に選ばれた国」の共謀事件だったとも言えそうです。
 だとすれば、ユダヤ人であるチョムスキー、そしてユダヤ人であるフィンケルスタインの、正義を求める苦難に満ちた闘いは、まだまだ続きそうですが、「明けない夜はない」の諺どおり、それが永遠に続くとは思えません。
 というのは、トランプ氏の言動が、アメリの真の姿を、ますます世界中のひとたちに露呈させることになっているからです。「神に選ばれた民」と「神に選ばれた国」の孤立化は進む一方ですから、むしろ「夜明けは近い」とさえ思えてきます。トランプ大統領に感謝です。


<註> コンゴとパトリス・ルムンバの暗殺については、櫻井ジャーナルおよび藤永茂市の下記ブロウが参考になります。
*アメリカ、イギリス、ベルギーは利益のためならクーデターを起こし、国連事務総長も殺した過去
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201404060000/(櫻井ジャーナル2014.04.06 )
*50年前10月9日にボリビアでゲバラを殺したCIAはゲバラが66年までいたコンゴでもクーデター
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201710150000/(櫻井ジャーナル2017.10.15)

*藤永茂「パトリス・ルムンバの暗殺」(1~7、2011-11-16~  )
https://blog.goo.ne.jp/goo1818sigeru/e/eb3c1e1a71c5ad23166e2751c2aa852c(1)
https://blog.goo.ne.jp/goo1818sigeru/e/32c51dca3b87cdf23920e6dbaf23f8fb(2)
https://blog.goo.ne.jp/goo1818sigeru/e/3331cb3f12846cccdccaa2d78cf37ffc(3)
https://blog.goo.ne.jp/goo1818sigeru/e/c955f3e3b99590520a566f65e6ac482b(4)
https://blog.goo.ne.jp/goo1818sigeru/e/4cc8de01674d87a002bf0f614616094a(5)
https://blog.goo.ne.jp/goo1818sigeru/e/9653330068a638e1b82bd048ee75c88a(6)
https://blog.goo.ne.jp/goo1818sigeru/e/12790a127ffcc1a7cc5e800b2a4e5033(7)

世界はいま「大転換」のとき 2 ― 「神によって選ばれた国」「神によって選ばれた民」その2、

国際教育(2018/06/24) 金正恩(キム・ジョンウン)、文在寅(ムン・ジェイン)、習近平(シー・ジンピン)、文鮮明(ムン・ソンミョン)、富豪イゴール・コロモイスキー、国務次官補ビクトリア・ヌーランド女史、高高度防衛ミサイル(THAAD)、地上配備型弾道ミサイル迎撃システム「イージス・アショア」、統一教会、国際勝共連合、EEF(東方経済フォーラム)、一帯一路(海のシルクロードと陸のシルクロード)、イラン「アメリカ大使館」人質事件、朝鮮←イスラエル→アメリカ


北朝鮮「外国特派員を招待して核実験場の爆破を公開」
北朝鮮「核実験場の爆破」
Punggye-ri Nuclear Test Site being blown up during the dismantlement process on May 24, 2018 / Reuters
https://www.rt.com/news/429565-trump-nuclear-north-korea/

 前回のブログを書いてから、次の出版物『魔法の英会話――不思議なくらいに英語が話せる練習帖』『寺島メソッド「日本語教室」――英語教師のための作文技術』の編集に追われているうちに、あっという間に1か月が経ってしまいました。
 このブログは、1か月の空白をおくと宣伝のページが入り込んできて、不愉快で、かつ非常に読みにくい画面になってしまいます。そこで恥ずかしながら、慌ててこのブログを書いる始末です。読者の皆さんには本当に申し訳なく思っています。

 それはともかく前回のブログでは、連載「世界はいま『大転換』のとき②」として、「世界で孤立する『神によって選ばれた国』『神によって選ばれた民』」という題名で、イスラエルとアメリカを取りあげました。そしてブログの最後を次のように結びました。

 トランプ氏は大統領選挙戦で、「国内の立て直しに専念する。そのため海外に手を出すことはやめ、ロシアと協力しながらイスラム原理主義勢力を一掃し、海外の米軍を撤退させ、軍事費を国家再建にまわす」ことを公約したのですが、今はオバマ前大統領も顔負けするほどの軍拡に走り出してしまいました。
 その後の言動は先述のとおり、アメリカの威信を回復させるどころかますます世界から孤立させるものでした。
 しかし考えようによっては、トランプ氏はいまアメリカ大統領として世界に巨大な貢献をなしつつあるとも言えます。
 というのは、アメリカが振りかざしている「アメリカ例外主義」「神から与えられた明白な使命(マニフェスト・デスティニー)」が、このようにはっきりと目に見えるかたちで世界に提示されたことは、かつてなかったからです。
 これはトランプ氏の登場なしにはあり得なかったでしょう。オバマ氏の偽善的な姿勢が、アメリカの真の姿を覆い隠してきたからです。
 まだまだ核戦争の危機が完全に消えたとはとは言えませんが、絶対的帝国として世界に君臨していたアメリカが、これを機会に、その流れを多極主義へと転換することになるとすれば、世界の平和にとってこんなよいことはありません。
 トランプ大統領が登場して、「マニフェスト・デスティニー」を露骨なかたちで世界に顕示し、自らを孤立化に追い込んだこと――これを第2の「大転換」として私があげるゆえんです。


 私がこのように、世界における「神にのよって選ばれた国」アメリカの孤立化を紹介して間もなく、さらに「神によって選ばれた民」「神によって選ばれた国」の孤立化を歴然と示す二つの出来事がありました。
 ひとつは、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長とトランプ大統領との直接対話が、2018年6月12日に、シンガポールで実現したことであり、もうひとつは、国連人権理事会からの脱退を、6月19日に、アメリカが表明したことです。
 キム委員長とトランプ大統領の直接対話が実現したことは世界の平和にとって非常に好ましいことでした。これは、核戦争を回避しようと努力してきたひとたちに大きな希望を与えるものでした。しかし、同時にこれは軍事帝国アメリカの一層の衰退と孤立化を象徴するできごとでした。
 というのは、これまでトランプ氏は、個人的にはキム氏との直接対話を望むと言いながらも、他方では、DeepStateの意向に沿って「朝鮮が完全な非核化を約束し実行しないかぎりキム委員長とは会わないし韓国との共同軍事演習もやめない」と言明し続けていたからです。
 にもかかわらずトランプ氏が一転して前言を翻し、直接対話に乗りだしたのは、韓国のムン・ジェイン(文在寅)大統領が先導して北朝鮮との直接対話の気運を作りだし、北朝鮮も、それに応えて、2018年5月25日に、米英韓中露5カ国の外国記者団まで招いて、核実験場の爆破を公開したからです。
 このような北朝鮮による核廃絶の意思表明は、韓国はもちろんのこと平和を望む多くの人々の支持を得ましたから、この高まる大きな世論を無視して、経済制裁や武力による恫喝のみを繰りかえしていては、ますますアメリカの傍若無人さが際立って、孤立が進行してしまいます。
 というよりも、世界中の世論によるアメリカの孤立化が、シンガポールでの直接対話となって実現したと言うべきでしょう。
 ではキム委員長に核実験場の廃棄・爆破を決断させた要因は何だったのでしょうか。これについて櫻井ジャーナル(2016/06/17)は次のような興味ある説明をしています。

 (ソ連崩壊後)ミハイル・ゴルバチョフに見捨てられてから生き残りに必死だったであろう朝鮮は、統一教会やイスラエルと手を組み、東アジアの軍事的な緊張を高めたいアメリカにとって好都合なこと、例えば核兵器の開発やミサイルの発射事件を行ってきた。
 こうしたことは中国やロシアから止めるよう説得されていたが、無視してきた。
 ロシアの前身であるソ連に裏切られたという思い、アメリカ軍の強さに対する恐れが朝鮮を動かしてきたのだろうが、昨年4月の攻撃でロシアや中国への信頼が戻った可能性がある。(下線は寺島)
 しかも、韓国がロシアや中国と連携している。ロシアの防空システムがあれば、アメリカ軍をそれまでのように恐れる必要はないと考えても不思議ではない。
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201806160001/

 
 北朝鮮がミサイル実験をするたびに、それを口実に韓国や日本に巨額の武器を買わせ、THAAD(高高度防衛ミサイル)や地上配備型弾道ミサイル迎撃システム「イージス・アショア」を韓国や日本に配備して中国包囲網を強化してきました。
 と同時に、モリカケ問題などで安倍政権が国会で追い詰められているときに、具合のよいことに、いつも北朝鮮がミサイル騒ぎを起こしてくれて、NHKを初めとする大手メディアは、世論の批判が安倍政権に向かわず北朝鮮非難へと集中する役割を果たしてきました。
 私はいつもこのことを不思議に思ってきました。そもそも貧困に喘いでいるはずの北朝鮮が、核実験やミサイル開発に向ける技術やお金はどこから手に入れたのだろうか。中国とロシアの関係は悪化していたのだから、どこが裏で支援していたのだろうか。これが私にとって最大の謎でした。
 この疑問を解いてくれたように思われたのが、上記の櫻井ジャーナルで指摘されている二つの事実、すなわち「生き残りに必死だったであろう朝鮮は、統一教会やイスラエルと手を組み・・・」、および「昨年4月の攻撃でロシアや中国への信頼が戻った可能性がある」という説明でした。
 まず後者の「昨年4月の攻撃」ですが、これについて櫻井ジャーナルは、「昨年4月の攻撃が中国や朝鮮の考え方に変化を与えた可能性はあるが、それはトランプ大統領の主張とは逆だろう」として、次のように説明しています。

 ドナルド・トランプ米大統領は、シンガポールで朝鮮の金正恩労働党委員長との会談を行った6月12日、​FOXニュースのシーン・ハニティのインタビューを受けたが、その最後の部分で、昨年(2017年)4月6日にシリアで実行した攻撃について語っている。
 その攻撃とは、地中海にいたアメリカ海軍の2駆逐艦(ポーターとロス)が巡航ミサイル(トマホーク)59機をシリアのシャイラット空軍基地に向けて発射したもの。
 シリア政府軍が自国民に対して化学兵器を使ったという口実だったが、証拠はなく、それが事実でなかった可能性は極めて高い。
(中略)
 トランプ大統領は昨年4月6日のシリア攻撃で発射されたミサイル全てが目標にヒットしたと主張しているのだが、被害が事実上、なかったことが判明している。
 しかも、ロシア国防省によると、目標に到達したのは23機だけ。いくつかは地上に落下しているが、残りは不明。海中に落下した可能性が高い。
 トランプ大統領の主張とは違い、アメリカのミサイルはロシアの防空システムを突破できていないと言える。


 つまり、アメリカは59機ものミサイルを発射したのですが、目標に到達したのは23機だけで、その6割は打ち落とされているのです。しかも目標に到達した23機も、事実上は何も被害を与えていないのです。
 もうひとつ北朝鮮の姿勢を変えさせる事件がありました。それを櫻井ジャーナルは先の解説(2018.06.17)に続けて、次のように伝えています。

 そして今年(2018)4月、アメリカ軍は再び偽情報を宣伝しながらシリアをミサイル攻撃した。アメリカ国防総省の発表によると、攻撃のターゲットはバルザー化学兵器研究開発センター(76機)、ヒム・シンシャー化学兵器貯蔵施設(22機)、ヒム・シンシャー化学兵器(7機)で、全て命中したとしている。
 が、「攻撃目標」と「使用されたミサイルの数」が不自然で、現地の様子とも符合しない。
 それに対し、ロシア国防省の説明によると、この攻撃で米英仏の3カ国は103機の巡航ミサイルを発射、そのうち71機をシリア軍が撃墜したという。
 今年は短距離用の防空システム、パーンツィリ-S1が配備されていたが、これが効果的だったようだ。アメリカはリベンジを狙って返り討ちに遭った。
 ロシア国防省は攻撃された場所として、ダマスカス国際空港(4機。全て撃墜)、アル・ドゥマイル軍用空港(12機。全て撃墜)、バリー軍用空港(18機。全て撃墜)、サヤラト軍用空港(12機。全て撃墜)、メゼー軍用空港(9機。うち5機を撃墜)、ホムス軍用空港(16機。うち13機を撃墜)、バザーやジャラマニの地域(30機。うち7機を撃墜)を挙げている。


 つまり、発射されたミサイルのうち7割は撃墜されているのです。前回の撃墜率は6割でしたから、大きな前進と言うべきでしょう。しかも狙ったのは化学兵器施設だったとするアメリカの出張が全く嘘だったということも暴露されてしまいました。
 そもそもシリアの化学兵器は国際団体監視の下で全て廃棄されているのですから、このような嘘は初めから意味のないことでした。
 だとすれば、北朝鮮が「ロシアの防空システムがあれば、アメリカ軍をそれまでのように恐れる必要はない」と考えて自分もロシアや中国に接近したいと思ったとしても不思議ではないわけです。まして韓国のムン・ジェイン(文在寅)大統領がロシアや中国に接近し両国と連携し始めているのですから、なおさらのことです。
 こうしてキム委員長は急速に中国に接近し、習近平(シー・ジンピン)国家主席との会談に至ったのでした。

別れを惜しむ、ムン・ジェイン(文在寅)大統領と金正恩(キム・ジョンウン)委員長
Moon Kim
South Korean President Moon Jae-in bids farewell to North Korean leader Kim Jong Un. / Reuters
https://www.rt.com/news/427852-north-korea-moon-jae/

 では第2の事実「生き残りに必死だったであろう朝鮮は、統一教会やイスラエルと手を組み・・・」については、どうでしょうか。
 反共団体として名高い「統一教会」が、共産主義国家として悪罵を受けている北朝鮮と手を組んでいるという事実を、私は、初めは信じられなかったのですが、Yahoo!ニュースが次のような事実を報道している(2015/8/30)ことを知り、やっと納得することが出来ました。

北朝鮮の国営メディアである朝鮮中央通信は8月30日、金正恩第一書記が、韓国発祥の宗教団体・世界基督教(きりすときょう)統一心霊協会(統一教会)の教祖である文鮮明(ムン・ソンミョン)氏の3周忌に際し、遺族らに弔電を送ったことを伝えた。
 日本では霊感商法や有名芸能人の「合同結婚式」などで社会問題化した統一教会だが、教祖の文氏は、もともと北朝鮮・平安北道(ピョンアンブクト)出身だ。
 社会主義体制の北朝鮮とは、反共団体である国際勝共連合の活動などを通じて長年対立していたが、1991年に電撃的に訪朝。当時の金日成主席と和解して以降、密接な関係を築いてきた。
 金正恩氏は文鮮明氏の死亡時と1周忌に際しても弔電を送っている。


 この記事は、もうひとつ衝撃的事実を報じていました。何と安倍晋三氏や自民党タカ派勢力は、これまで統一教会(および北朝鮮?)と親密な関係を築いてきていたのです。Yahoo!ニュースは上記の報道に続けて、次のような解説を載せていました。

それだけではない、文氏は安倍晋三ファミリーとも親密な関係を築いていた。
 統一教会は観光や自動車生産で北朝鮮を支援してきたほか、北朝鮮が旧ソ連製の弾道ミサイル潜水艦を「スクラップ」として輸入する際にも、同教団系の企業が関与していた。
 また、統一教会は、日本の弁護士グループから「信者らが違法な物品販売等で再三刑事摘発されている反社会的団体」と指弾されている一方、自民党政治家と親密な関係を築いてきたことで知られる。
 中でも、安倍晋三首相の祖父である岸信介元首相は文氏ととくに親密で、最近では、山谷えり子国家公安委員長と国際勝共連合の関係がメディアで取り沙汰された。
 石原慎太郎元都知事も同組織から選挙支援を受け、熱烈な感謝のメッセージを送っている。


 要するに、表では「力で屈服させろ」と北朝鮮を声高に非難しつつ、裏では統一教会を通じて北朝鮮を支援し、アジアの緊張関係を高め、それを口実に日本の軍拡と改憲(=壊憲)を一気に進めるという、高度な戦術を安倍政権は取ってきたわけです。
 (ちなみに、山谷えり子国家公安委員長が関係していたとされる「国際勝共連合」は、統一教会の外郭団体です。)
 これはアメリカも全く同じで、「冷酷な独裁政権」と北朝鮮を声高に非難しつつ、「金正恩の斬首作戦」などの軍事演習を繰りかえしてアジアの緊張関係を高め、それを口実に韓国や日本に巨額の兵器を買わせてきました。
 と同時にアメリカは、北朝鮮との緊張関係を口実に、THAADやイージスアショアなどの超巨額かつ超攻撃的な武器を韓国や日本に配備して中国包囲網を強化する、という高等戦術を駆使してきたのです。そして安倍政権は「東のプードル犬」として、このようなアメリカの戦略に積極的に協力してきました。
 ですから、このような高等戦術のなかで、北朝鮮は踊らせられてきたとも言えるわけです。もっとうがった見方をすれば、キム委員長とトランプ大統領は、「お互いに悪罵を投げつけ合いながら中国包囲網を強化するという猿芝居を演じてきたのではないか」という疑いすら浮かんで来ます。
 北朝鮮にしてみれば、このようなかたちで敵対しつつあった中国に恨みを晴らすつもりだったのかも知れませんが、シリアにおけるロシア軍とロシア兵器の目を見張るような働きが、キム委員長の姿勢を大逆転させたのではないか――これが櫻井ジャーナルの意見であるように私は思われました。
 こうしてアメリカの孤立(そして安倍政権の孤立)は、世界が注視する中でいっそう歴然としてきたのでした。

 では櫻井ジャーナルが「生き残りに必死だったであろう朝鮮は、統一教会やイスラエルと手を組み・・・」と指摘している「イスラエルとの関係」については、どうでしょうか。これについても櫻井ジャーナル(2017/11/15)は次のように述べています。
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/20171115/

 中国には一帯一路(海のシルクロードと陸のシルクロード)というプロジェクトがある。かつて、輸送は海路の方が早く、運搬能力も高かったのだが、技術の進歩によって高速鉄道が発達、パイプラインによるエネルギー源の輸送も可能になった。海の優位さが失われている。
 しかも中国は南シナ海からインド洋、ケニアのナイロビを経由して紅海に入り、そこからヨーロッパへ向かう海路も計画している。この海路を潰すため、東の出発点である南シナ海をアメリカは支配しようと考え、日本はアメリカに従ったということだ。
 ところが、2016年6月に大統領となったロドリゴ・ドゥテルテはアメリカに従属する道を選ばない。ベトナムなどもアメリカの好戦的なプランから離れていく。ロシアと中国は東アジアでの経済的な交流を活発化させて軍事的な緊張を緩和しようとする。
 例えば、今年(2017年)9月4日から5日に中国の厦門でBRICS諸国(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)の会議が開催され、9月6日から7日にかけてロシアのウラジオストックで同国主催のEEF(東方経済フォーラム)が開かれた。
 このイベントに朝鮮も韓国や日本と同様、代表団を送り込んでいる。韓国がロシアや中国との関係を強化しようとしていることは明白だ。
 こうした中、核兵器の爆発実験や弾道ミサイル(ロケット)の発射実験を繰り返し、アメリカの軍事的な緊張を高める口実を提供してきたのが朝鮮にほかならない。BRICSの会議やEEF(東方経済フォーラム)が開かれた直後、9月15日にもIRBM(中距離弾道ミサイル)を発射している。


 上記の説明にあるように、今までアメリカによる中国包囲網に加わっていたベトナムやフィリピンも、アメリカ離れを始めているのです。ここでもアメリカの孤立化が進行していることは明らかです。これに唯ひとり従っているのが日本政府・安倍政権です。
 北朝鮮も、この路線を裏から支えてきたことは上記の説明でも明らかでしょう。それが中国の北朝鮮にたいする姿勢を一層硬化させてきたことも疑いのないところですが、これについて櫻井ジャーナルは、さらに詳しく、次のように重要な事実を暴露しています。

このところ朝鮮の爆発実験やミサイルの発射は成功しているようだが、少し前までは四苦八苦していた。
 ところが、短期間の間にICBMを開発し、水爆の爆破実験を成功させた可能性があるという。そこで、外国から技術、あるいは部品が持ち込まれたと推測する人もいる。
 ミサイルのエンジンについて、イギリスを拠点にするシンクタンク、IISS(国際戦略研究所)のマイケル・エルマンは、朝鮮がICBMに使ったエンジンはソ連で開発されたRD-250がベースになっていると分析、朝鮮が使用したものと同じバージョンのエンジンを西側の専門家がウクライナの工場で見たとする目撃談を紹介している。
 また、ジャーナリストのロバート・パリーによると、​エンジンの出所だと疑われている工場の所在地は、イゴール・コロモイスキーという富豪(オリガルヒ)が知事をしていたドニプロペトロウシク市(ウクライナのドニプロペトロウシク州、現在はドニプロ市と呼ばれている)にある。


 北朝鮮が核実験やミサイル発射をするたびに、私は、「そのような技術やお金はどこから出ているのだろうか」という疑問をもち続けてきたことは最初に述べたとおりですが、この叙述で、私の疑問はかなり解消された気がしました。
 しかし、ウクライナとイスラエルの関係はどうなっているのでしょうか。北朝鮮とイスラエルは、どのような関わりでつながっているのでしょうか。この疑問について櫻井ジャーナルは、さらに次のような説明を加えています。

 富豪コロモイスキーは、ウクライナ、キプロス、イスラエルの国籍を持つ人物で、2014年2月のクーデターを成功させたネオ・ナチのスポンサーとしても知られている。2014年7月17日にマレーシア航空17便を撃墜した黒幕だとも噂されている人物だ。
 国籍を見てもわかるようにコロモイスキーはイスラエルに近い人物だが、朝鮮はイスラエルと武器の取り引きをした過去がある。
 1980年のアメリカ大統領選挙で共和党はイランの革命政権に人質解放を遅らせるように要求、その代償としてロナルド・レーガン政権はイランへ武器を密輸したのだが、その際、イランは大量のカチューシャロケット弾をアメリカ側へ発注。
 アメリカはイスラエルに調達を依頼し、イスラエルは朝鮮から購入してイランへ売っているのだ。この関係は切れていないと考えるのが自然だろう。
 その後も朝鮮とイスラエルとの関係は続き、イスラエルには朝鮮のエージェントがいるようだ。そのエージェントがエンジンの件でも重要な役割を果たしたという情報も流れている。


 アメリカもEU諸国も、ウクライナの政変をアメリカが裏で支援したネオナチによるクーデターだったということを、いまだに認めていません。
 しかし、これが長年にわたって大金を注ぎ込んでアメリカの仕組んだクーデターだったことは、オバマ政権時の国務次官補ビクトリア・ヌーランド女史が公開の場で堂々と述べたとおりです。
 ウィキペディアによれば、彼女は、2013年12月13日にワシントンで開かれた「ウクライナを巡る会議」において、「米国は、ソ連崩壊時からウクライナの民主主義支援のため50億ドルを投資した」と語っています。
 またヌーランド女史は、2014年4月、テレビ局CNNのインタビューでも、米国は「より強い民主主義的な政府を目指すウクライナ国民の欲求をサポートするために」50億ドルを拠出した、と述べているのです。
https://jp.sputniknews.com/us/201701263276021/
 (ただし、ヌーランド女史は、「ウクライナの政変は民衆革命だ」と主張しネオナチの暗躍についても認めていませんが、ネオナチの存在は今では公然化しています。いまだに日本の大手メディアは、このことを報じていません。)
 しかし、いずれにしても、北朝鮮がウクライナを経由してイスラエルとつながってきたことだけは確かなようです。
 もし、これが事実だとすれば、アメリカが統一教会やイスラエルと協力しつつ裏で仕組んだ猿芝居に、金正恩委員長はまんまとのせられ、中国封じ込め政策に利用されてきたのではないか、という疑いすら出てきます。そして私たち日本人も、この猿芝居に騙され、日本中に鳴り響いた「Jアラート」に翻弄されたことになります。
 とはいえ、いま北朝鮮はアメリカと正面から対峙し、中国やロシアとの関係改善へと、新しい方向に歩み出そうとしていることだけは確かなようですから、その意味でも、アジアにおけるアメリカの孤立化は、ますます鮮明になってきたように見えます。そこで慌てふためいているのが安倍政権です。

 以上で、私が今回のブログで論じようとしてきた、「アメリカとイスラエルの孤立化を示す、さらなる二つの出来事」のうちの前者についての説明を終えたいと思います。まだ論じ残したもうひとつの出来事、すなわち「国連人権理事会からの脱退」が残されているのですが、もう長くなりすぎていますので、今回はこれで打ち止めにして、次回に譲りたいと思います。


<註1> このブログを書くに当たって、いろいろ調べているうちに、次のような衝撃的記述を見つけたので、ここに紹介させていただきます。

イラク戦争に失敗してネオコンは退潮した。それでもネオコンは生きていてオバマ政権にも入り込んだ。ネオコンとして今も生き残っているのがビクトリア・ヌーランド国務省国務次官補(ヨーロッパ・ユーラシア担当)である。彼女の夫のロバート・ケーガンがネオコン第 3世代の代表だ。・・・ビクトリア・ヌーランド女史は、明らかにムーニー(統一教会員)である。そしてヒラリー派だ。(『トランプ大統領とアメリカの真実 』178頁)


 統一教会の旧名称は「世界基督教統一神霊協会」(今は「世界平和統一家庭連合」と名乗を変更)で、アメリカにも支部があることは知っていたのですが、まさかヌーランド女史までが統一教会の一員であったことに驚愕させられました。
 これが事実だとすれば、統一教会とイスラエルは、北朝鮮だけでなくウクライナでも暗躍してきたことになります。
 ちなみに、ウィキペディアによれば、統一教会は「開祖・文鮮明の姓ムンから、俗にMoonies(ムーニーズ)の名で知られていて」、アメリカでの活動は次のように説明されています。

1954年5月に韓国ソウルで世界基督教統一神霊協会が創設され、1965年に文鮮明一家と幹部たちは宗教・政治的情宣活動の拠点をアメリカに移し、世界宣教・経済活動を拡大し、巨大な統一運動傘下組織を作った。韓国の多くの少数派宗教団体と異なり、朝鮮半島を超えて世界中に普及したという特異性を持つ。世界193か国に支部がある。・・・文鮮明は戦闘的な反共産主義者であり、共産主義は神の摂理に基づく民主主義に対抗する悪魔によるものとされた。


<註2> 私は、櫻井ジャーナル(2017/11/15)から下記のような引用をしつつ、北朝鮮がイスラエルから援助を受けながら核実験やミサイル開発をしてきたのではないかと、述べました。
 「1980年のアメリカ大統領選挙で共和党はイランの革命政権に人質解放を遅らせるように要求、その代償としてロナルド・レーガン政権はイランへ武器を密輸したのだが、その際、イランは大量のカチューシャロケット弾をアメリカ側へ発注。アメリカはイスラエルに調達を依頼し、イスラエルは朝鮮から購入してイランへ売っているのだ。この関係は切れていないと考えるのが自然だろう。」
 しかし、上記の引用で「1980年のアメリカ大統領選挙で共和党はイランの革命政権に人質解放を遅らせるように要求、その代償としてロナルド・レーガン政権はイランへ武器を密輸した」という件(くだり)については、もう少し説明を付け加えないと理解しにくいのではないかと思うようになり、慌ててこの註を書き始めています。
 この「共和党とイラン革命政権との裏取引」について時系列に沿って略述すると次のようになります。

 1980年の大統領選挙では、現職ジミー・カーター大統領(民主党)とロナルド・レーガン候補(共和党)の間で接戦が繰り広げられていた。
 その当時、カーター政権は、イラン革命(1979)でテヘランのアメリカ大使館が占拠され、大使館員52人が人質にとられるという試練を抱えていた。
 1980年4月、特殊部隊デルタ・フォースによる人質救出作戦に失敗し、2期続投を目指すカーター政権への大きな打撃となった。
 このため、カーター政権の外交姿勢を「弱腰」と批判する共和党を勢いづかせる結果となった。
 1980年10月18、19日、共和党の大統領指名を争う予備選に出馬し、レーガン政権の副大統領へ転身を企むジョージ・H・W・ブッシュ(元CIA長官)とレーガンの選挙チーム責任者ウイリアム・ケイシー(後のCIA長官)は、パリで密かにイラン政府関係者と会談した。
 共和党は、イランの最高責任者ホメイニ師ほかイラン政府関係者に賄賂と武器供給を約束し、人質解放時期をレーガン大統領就任時まで延長するように交渉した。
 これは、「レーガンが大統領に当選した暁にはお望みの武器を供給するから、それまでは人質解放をしてくれるな」という交渉だった。
 カーターの在任中に人質事件を解決させないことで彼の人気を落とし、接戦を繰り広げていた大統領選挙で、レーガンを当選させるという隠密作戦だった。
 その結果、この選挙でカーターは敗北し、1981年1月20日、レーガンが第40代大統領に就任した。
 同日、人質となっていたテヘランのアメリカ大使館員らも無事解放され、生還した。人質解放がレーガン大統領の誕生で実現し、共和党は「強いレーガン大統領」を演出することに成功した。


 まさに「事実は小説よりも奇なり」です。イラン革命は「アメリカを後ろ盾とする王制独裁国家に対する革命」でしたから、本来ならイラン政府とは敵対関係のはずです。
 にもかかわらず共和党は、自分たちの利益を最優先にして、イランと取引したのです。しかも何と!敵に武器(大量のカチューシャロケット弾)を売るというのですから、信じがたい光景です。
 そしてレーガン政権は「イスラエルに調達を依頼し、イスラエルは朝鮮から購入してイランへ売っている」のですから、何度も言いますが、まさに「事実は小説よりも奇なり」です。
 ですから、今度の核実験やミサイル開発でも、北朝鮮とアメリカとの間でどのような裏取引があったか、凡人にはとても推し量ることは出来ません。レーガン大統領は、この後も有名な「イラン・コントラ事件」で全く同じ手口を使っています。ここでも仲介役としてイスラエルが暗躍していました。
 だとすれば、私には櫻井ジャーナルの説明は信じるに値する分析ではないかと考えています。それにしても私たちは何と恐ろしい世界に生きているのでしょう。よほど腹を据えてかからなければ、まんまと権力者がばらまく嘘に騙されてしまいます。
 北朝鮮もトランプ大統領を無邪気に信じて行動すれば、まさにリビアの二の舞になるでしょう。これまでの言動を見れば分かるように、アメリカ政府の政策は猫の目のように変わるのですから、いつ前言を翻して攻撃に移るか予想だにできません。
 ましてトランプ大統領は今や DeepState の傀儡と化しているのですから尚更のことです。しばしば「今日の約束」は「明日の反故」となるのです。



世界はいま「大転換」のとき、2 ― 「神によって選ばれた国」「神によって選ばれた民」

国際教育(2018/05/20) 国際管理地区エルサレム、アルアクサ・モスクと「岩のドーム」、ナクバ(大惨事)70周年、アメリカ軍事学校(School of the Americas)、エコノミック・ヒットマン、キリスト教シオニズム、ユダヤ教シオニズム、終末キリスト教福音派、神意主義者(プロヴィデンシャリスト)

エルサレムにあるイスラム教最大の聖地、ムハンマドがこの「岩のドーム」の地から昇天したとされる  temple_mount_aerial_view_2007_01.jpg

この「岩のドーム」を消した偽造写真を贈られて喜ぶ在イスラエルのアメリカ大使 Dd0oJ9AV0AAZ6dq.jpg
https://on.rt.com/95ux


 前回のブログでは、データ・マックス社の経済情報誌『IB: Information Bank』から再び取材依頼があったこと、しかも今度は九州本部の社長から直々のリクエストで、そのテーマが「大転換」だったことを紹介しました。
 そこで早速その意向にしたがって「大転換」を考えてみたのですが、『I.B新春特別号』のインタビューで私は次のように結んでいます。

私のメッセージは3つあります。1つ目は「アメリカの現実を知ろう」、2つ目は「世界の流れを知ろう」、3つ目は「日本の良さを知ろう」です。

  
 そいうわけで、前回のブログでは「大転換」の一つ目として、トランプ大統領が誕生したおかげでアメリカ国内におけるDeepState(裏国家、闇の政府)の存在が今や誰の眼にも明らかになったことを紹介しました。
 アメリカの大統領選挙なるものは、「DeepStateの選んだ人物を国民に認知させる壮大なお祭り騒ぎにすぎなかったこと」を、トランプ大統領の誕生が世界に見せつけてくれたというわけです。
 さて、そこで二つ目の「大転換」です。大国アメリカの「例外主義」とその孤立がこれほど明らかになったことはかつてなかったのではないか、これもトランプ氏の大きな「功績」ではないか――と私は思うようになりました。

 アメリカが世界の超大国・覇権国家となったのは、第2次世界大戦が終わって、イギリスが大英帝国の地位から転落したときからでした。こうして大戦後、アメリカは経済的にも軍事的にも世界の帝国となりました。
 しかしチョムスキー『アメリカンドリームの終わり』によれば、これは同時に、大戦直後に世界の頂点に立ったアメリカの衰退の始まりでもありました。
 とりわけアメリカの経済的衰退ぶりが顕著になったのは、アメリカが金本位制を止めた1970年代からでした。これはアメリカの通貨である「ドルの弱体化」を示すものでもありました。
 この「ドルの弱体化」は、アメリカが投資銀行と商業銀行の垣根を取り払い、国内産業の構造が製造業から金融業へと大きく変化していくのと同時進行でした。製造業の多くは安い労働力を求めて海外移転し、国内産業は大きく疲弊したからです。代わって登場したのが金融資本が乱舞する世界でした。
 では衰退する経済力をくい止める手段としてアメリカが選んだのはどんな方法だったのでしょうか。それは産業の動力源である石油を支配することを通じて、世界を支配すること、アメリカの覇権を脅かす国が現れればそれを軍事力で叩き潰すことでした。
 世界の産業は石油で動いているのですから、これをストップしさえすれば、刃向かう国を屈服させることができます。アメリカが、「民主主義の理念」に反して、イスラム王制独裁国家のサウジアラビを軍事力で支えているのも、OPECの盟主であるサウジを通じて世界の石油の流れをコントロールできるからです。
 サウジ王室を軍事力で支えることは同時にアメリカ通貨のドルが弱体化するのを食い止める手段でもありました。というのは、サウジ王室を目下(めした)の家来として使い、石油貿易の決済をドルを使っておこなわせることにより、ドルの弱体化を防ぐことができるからです。
 その代わりアメリカは、独裁王制の下で抑圧されているサウジ民衆が王室転覆に決起したとき、それを鎮圧する仕事を引きうけました。警察力・軍事力を強化する武器を王室に購入させ、王室が鎮圧に失敗したときアメリカ軍が出動して王室を支えるという約束をしたわけです。これは同時に高額の武器をサウジに輸出する絶好の口実ともなりました。

 アメリカの覇権を脅かす国が現れればアメリカがそれを軍事力で叩き潰してきたことは歴史が数多くの事実を提供してくれます。
 その実例として前回のブログではブルム『アメリカの国家犯罪全書』(作品社)を紹介しましたが、それを読めばアメリカが犯してきた戦争犯罪、「拉致」「テロ」「暗殺」「拷問」「毒ガス」「クーデター」などの数々を知ることができます。
 もちろんアメリカの覇権を脅かす国が現れても、その為政者を賄賂・買収その他で籠絡できれば、わざわざ「拉致」「テロ」「暗殺」などの手段を使う必要はありませし、ましてや軍隊を派遣して侵略する必要などありません。
 その具体的な手口は、ジョン・パーキンス『エコノミック・ヒットマン、途上国を食い物にするアメリカ』(東洋経済新報社 2007)に詳しく述べられています。

 この著者パーキンスは、表の顔は一流コンサルティング会社のチーフエコノミストですが、裏の顔・本当の姿は対象国を経済的に収奪するアメリカの工作員でした。
 この本は良心の痛みに耐えかねたエコノミック・ヒットマンの内部告発書です。彼は「買収工作が成功しないときは本当のヒットマン(暗殺者)の出番になる」と述べています。飛行機事故に見せかけて国家元首を殺すこともあったと言います、
 この本を読むと、アメリカ政府が多国籍企業と一体になっおこなってきた「買収」→「恫喝」→「暗殺」→「戦争」という流れがよくわかります。常に脅しをかけて言うことを聞かせたり、莫大な利益を約束して懐柔したりします。そして言うことを聞けば国家元首としての地位を与えるというわけです。
 第2次大戦後の日本政府の場合、戦犯で刑務所に入れられていた人物を為政者に仕立て上げ、国際法廷で戦犯として裁かれる人物を新たな「象徴」として全国巡幸させることによって、みごとな従属国をつくりあげました。

『肉声でつづる民衆のアメリカ史』 エコノミック・ヒットマン

 この日本をモデルにしてイラクに乗り込んでいったのがブッシュ氏でした。「大量破壊兵器」を口実に侵略し、「イラクを第2の日本にする」と豪語していました。
 しかし、イラクには岸信介や昭和天皇に当たる人物を見つけることができず、この作戦は見事に失敗しました。残されたのは破壊された国土と大量の死者と難民でした。
 中南米では、アメリカ軍が経営する軍事学校「School of the Americas」で訓練された軍人が準軍事組織をつくり、クーデターで政権を取った後、腐敗する為政者に抵抗する民衆や活動家を虐殺していきました(チョムスキー『アメリカが本当に望んでいること』現代企画室)。
 しかし軍事独政権による民衆の抑圧ぶりがあまりにも残虐・凄惨で、評判が悪かったので、オバマ氏は、ウクライナでも、リビアでも、シリアでも、「民衆蜂起」というかたちで政権転覆をはかることにしました。
 ウクライナの政権転覆(2014年2月)は、極右勢力や旧ナチスの残党勢力を傭兵として使ったクーデターであったことは、今となっては歴然としてきています。この間の裏事情を櫻井ジャーナル(2017.01.19 )は次のように述べています。

ソ連が崩壊しロシアを自分の属国だと認識していた時期にもアメリカの好戦派は支配システムを築く努力はしていた。ビクトリア・ヌランド国務次官補は、2013年12月に、米国ウクライナ基金の大会で、「ウクライナの政権転覆を支援するために1991年から50億ドルを投資した」と、発言している。システムの構築にはNGOを利用した。http://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201508110000/


 リビアの政権転覆(2011年10月)の場合も、アメリカは、カダフィ大佐が「民衆蜂起」を弾圧しているという口実で、フランスを初めとするNATO軍を使って国土を破壊しカダフィ大佐を惨殺しました。
 このときはイスラム原理主義勢力を傭兵として使いましたが、その詳細は、物理化学者である藤永茂氏が下記のブログで生々しく描写しています。 
*リビア挽歌(1)- 私の闇の奥(2011/08/24)
https://blog.goo.ne.jp/goo1818sigeru/e/af790e16376731460b2a7f5f493b758c
リビア挽歌(2)- 私の闇の奥(2011/08/31)
https://blog.goo.ne.jp/goo1818sigeru/e/9cd61d906c0c02b82a34d5b70da709f5

 シリアの場合も基本的には同じでした。「民衆蜂起」という体裁をとらせながら、サウジなどの王制独裁国家から送り込まれたイスラム原理主義勢力を傭兵として使いました。
 アル・カイダ系武装集団やダーイッシュをアメリカやその同盟国が支援してきたことも、次々と明らかになっています。
 例えば、2014年9月に米軍のトーマス・マッキナニー中将はアメリカがダーイッシュを作る手助けをしたとテレビで発言し、マーティン・デンプシー統合参謀本部議長(当時)もアラブの主要同盟国がダーイッシュに資金を提供していると議会で発言しています。
 また同年10月にはジョー・バイデン米副大統領がハーバーバード大学で中東におけるアメリカの主要な同盟国がダーイッシュの背後にいると語り、2015年にはウェズリー・クラーク元欧州連合軍最高司令官もアメリカの友好国と同盟国がダーイッシュを作り上げたと述べています。http://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201701190000/ 櫻井ジャーナル2017.01.19 )
 
 このようにアメリカがウクライナで政変を企て、リビアを破壊し、またもやシリアで政変転覆を企ててきたことは、今では世界中の心あるひとにとっては自明のことになっているのですが、大手メディアはそれを報道しませんから、アメリカ国民のほとんどは(そして日本国民も)このような事実を知りません。
 それをよいことに「シリアのアサド政権は化学兵器を使って自国民を殺害している」という宣伝を、壊れたレコード盤のように繰りかえしてきたのがオバマ政権でした。
 この「アサド政権の化学兵器」という嘘は、そのつどロシア政府や独立ジャーナリストなどによって、嘘であることが暴露されてきています。最近でも「ホワイトヘルメット」を使った同じたぐいの宣伝がなされ、すぐにその嘘がばれてしまいました。
*ピンクフロイドのメンバー、コンサートで「ホワイト・ヘルメット」を批判
http://tmmethod.blog.fc2.com/blog-entry-41.html
 有名なイソップ寓話に、「オオカミが来る」と何度も村人をだましてきた少年が、最後には村人から相手にされなくなるという話が出てきますが、この寓話は、そのままアメリカ政府に当てはまりそうです。
 今では、アメリカの言動をまともに信じる国は、EU諸国を除けば、世界でも圧倒的少数になりつつあるからです。これは世界の流れを大きく変える「大転換」です。

 ところがアメリカを支持するEU諸国でさえ、いまアメリから離れようとする動きをし始めています。というのは、イランとの間に交わした核兵器協定から一方的に離脱しイランと経済交流する国には経済制裁を課すとトランプ氏が宣言をしたからです。
 この協定を10年近くもかけてまとめたドイツ、フランスからは強い抗議の声が起き、イギリスもこれに同調せざるを得なくなってきています。
 こうして「化学兵器」「大量破壊兵器」などという口実で中東に内紛をつくりだし、「オオカミ少年」として世界から孤立しつつあったアメリカは、このイランをめぐる問題で、さらにEU諸国の信頼さえも失いかねない危機に立たされています。


 このアメリカの孤立を、もう一歩さらに強めることになったのが、「エルサレムにアメリカ大使館を移す」というトランプ氏のもうひとつの宣言でした。
 これにたいしてもEU諸国は強い抗議の声を上げました。というのは、「エルサレムは国際管理とする」というのが1980年の国連決議だったからです。アメリカの同盟国であるEU諸国でさえ、受け入れることができなかったわけです。
 こうしてトランプ氏を大統領にいただくアメリカは、イスラエルと共にますます世界から孤立する道を選んでいるように見えます。

 アメリカが大使館をテルアビブからエルサレムに移転させた2018年5月14日は、イスラエルの建国記念日だった一方、15日はパレスチナ人にとっての「ナクバ(大惨事)の日」でした。
 「ナクバ」とはアラビア語で「大惨事」を意味することばです。ユダヤ人が1948年5月14日、パレスチナにイスラエルを建国した際、70万人ものパレスチナ人が故郷を追われ難民となりました。
 トランプ大統領は、よりによって、このような日を大使館移転の日に選んだのですから、火に油を注ぐようなものです。
 予想どおりパレスチナ人の怒りは頂点に達し、6週間に及ぶ抗議行動の間、イスラエルによる銃撃で100人以上の抗議参加者が死亡し、数千人の負傷者が出ています。14日と15日の二日間だけでも「衝突の死者は62人に達した。催涙ガスの吸引により死亡した生後8カ月の女児も含まれる」そうです(毎日新聞2018年5月15日)。
 これでは、シリアのアサド政権を転覆することに協力していたサウジなどの王制独裁国家も、同じアラブ人イスラム教徒として、さすがに、このようなアメリカやイスラエルの蛮行に目をつむるわけにはいかないでしょうから、アメリカとイスラエル)の孤立ぶりは一層、際立つことになるでしょう。

 考えてみれば、アメリカは「先住民を大虐殺し、その土地を奪いながら建国された国」ですから、パレスチナ人を追放・戮殺し、その土地を奪いながら建国されたイスラエルと波長が合うのも当然かも知れません。
 もうひとつアメリカとイスラエルの波長が合う理由があります。
 アメリカは先住民を虐殺しながら西海岸まで領土を拡大し、それを「明白なる運命」「神から与えられた明白な使命」と考えてきました(ハワード・ジン『肉声でつづる民衆のアメリカ史』256頁)。
 これが、「アメリカは特別な国であり何をしてもかまわない。国際法を踏みにじろうが、それは神から許された行為だから」という、「アメリカ例外主義」の根底を流れる考え方です。
 このような考えを土台にして、その後も太平洋を越えてハワイを併合しフィリピンまでも領有するようになりました。
 他方、イスラエルも「ユダヤ人は神によって選ばれた民族であり、エルサレムどころか聖書に書かれているとおりの領土を所有する権利がある」と考えているのですから、アメリカと波長が合うのも当然だったわけです。
 この間の事情をチョムスキーは次のように書いています。今後の資料としても重要だと思いますので、長くなりますが敢えて引用させていただきます。
 

英国や米国の「キリスト教シオニズム」は、「ユダヤ教シオニズム」よりも古い歴史を持つ。
 ちなみに、「キリスト教シオニズム」は神がアブラハムと結んだ契約に基づき、エルサレムがアブラハムの子孫に永久に与えられたとする教理であり、「ユダヤ教シオニズム」はユダヤ人国家を建設しようとする一九世紀末以来の運動だ。
 「キリスト教シオニズム」は英米のエリート層では重大な意義があり、明確な政策も持っていた。ユダヤ民族のパレスチナ帰還を支持するバルフォア宣言もその一つだ。
 第一次世界大戦中に英国のエドモンド・アレンビー将軍がエルサレムを征服した。このとき、アレンビー将軍は米国の報道機関からリチャード獅子心王の再来だと大喝采を受けた。なぜなら、十字軍を率いて聖なる地から異教徒たちを追い出したのは、リチャード獅子心王だったからだ。
 そこで次なるステップは、選ばれた民たちを、神によって約束された土地に返すことになる。
 当時のエリートたちの典型的な見方は、フランクリン・ルーズベルト大統領の内務長官ハロルド・イッキーズの言葉によく示されている。彼はユダヤ人によるパレスチナ植民地化を讃え、「人類の歴史においてこれほどの業績はほかにない」と述べた。
 このような態度は、神意主義者(プロヴィデンシャリスト)の教義を信じる人々の間では、ごく普通のことだ。
 その教義は「神が世界に計画を持っており、神がすべてを計画済みである」とするもので、米国は聖なる指示に従って前進していると信じている。この教義は米国が建国されたときから大衆とエリートの文化の中で強い力を持っている。
(『誰が世界を支配しているのか』137-138頁、寺島が改訳)


 チョムスキーは上記でアメリカにおける「キリスト教シオニズム」「ユダヤ教シオニズム」および「神意主義者(プロヴィデンシャリスト)」について説明しているのですが、アメリカとイスラエルの関係について、ここでもうひとつ重要な指摘をしています。それは「キリスト教福音派」および「終末キリスト教福音派」についてです。

 「キリスト教福音派」は米国では主流派だ。さらに極端な教義を持つ「終末キリスト教福音派」も米国では大人気で国民に浸透している。
 彼らは一九四八年のイスラエル建国で元気づけられ、一九六七年にパレスチナを征服すると、さらに活気づいた。これらすべては終末の時とキリストの再臨が近づいている予徴だと、彼らは見ているからだ。
 これらの宗派の勢力はレーガン時代から強くなりはじめた。(中略)彼らは大きな恐れと憎しみを抱える外人嫌いの国粋主義者で、宗教面でも国際的な基準からみると過激だが、米国内では普通の範曙に入る。
 その結果、アメリカで強くなったのは聖書の予言に対する敬意だ。この新しい政治勢力はイスラエルを支持するだけでなく、征服と拡大を喜び、情熱的にイスラエルを愛している。
 (『誰が世界を支配しているのか』138頁、寺島が改訳)


この叙述を読むと、なぜ蛮行を重ねるイスラエルを共和党はもちろんのこと民主党すら、支持して止まないのかがよく分かります。これではイスラエルと共にアメリカも世界から孤立していくのは時間の問題とすら思えてきます。
 今まで述べてきたように、アメリカの「孤立」「停滞」「凋落」を加速させているのがトランプ大統領の最近の言動でした。
 チョムスキーは、冒頭でも紹介したように、『アメリカンドリームの終わり』で大略、次のように述べています。
 「アメリカは第2次大戦で世界の頂点に立ったが、その衰退は終戦直後から始まっている。しかし急激な経済的停滞と凋落は1970年代から顕著となった。それでも軍事的優位は揺るがず、それが覇者としてのアメリカを支えてきたし世界的通貨としてのドルを支えてきた。」(下線は寺島)
 アメリカのこのような「停滞と凋落」を回復すると称してトランプ氏は大統領選に立候補し、当選しました。しかし彼の主張する「アメリカ・ファースト」は、大統領に就任した早々から DeepState の巻き返しに会い、政策は180度、逆転することになってしまいました。
 トランプ氏は選挙戦で、「国内の立て直しに専念する。そのため海外に手を出すことはやめ、ロシアと協力しながらイスラム原理主義勢力を一掃し、海外の米軍を撤退させ、軍事費を国家再建にまわす」ことを公約したのですが、今はオバマ前大統領も顔負けするほどの軍拡に走り出してしまいました。
 その後の言動は先述のとおり、アメリカの威信を回復させるどころかますます世界から孤立させるものでした。
 しかし考えようによっては、トランプ氏はいまアメリカ大統領として世界に巨大な貢献をなしつつあるとも言えます。
 というのは、アメリカが振りかざしている「アメリカ例外主義」「神から与えられた明白な使命(マニフェスト・デスティニー)」が、このようにはっきりと目に見えるかたちで世界に提示されたことは、かつてなかったからです。
 これはトランプ氏の登場なしにはあり得なかったでしょう。オバマ氏の偽善的な姿勢が、アメリカの真の姿を覆い隠してきたからです。
 まだまだ核戦争の危機が完全に消えたとはとは言えませんが、絶対的帝国として世界に君臨していたアメリカが、これを機会に、その流れを多極主義へと転換することになるとすれば、世界の平和にとってこんなよいことはありません。
 トランプ大統領が登場して、「マニフェスト・デスティニー」を露骨なかたちで世界に顕示し、自らを孤立化に追い込んだこと――これを第2の「大転換」として私があげるゆえんです。


<註1> 
 そもそも、1947年11月29日の国連総会で、エルサレムは国際管理地区ということになっていました。しかし1967年6月の第三次中東戦争でイスラエルがエルサレム全域を押さえた以降は、イスラエルが実効支配し、そのうえ1980年には、イスラエル議会がエルサレムはイスラエルの首都と決議しました。これにたいして、143対1でその決定の無効を決議したのが、1980年の国連総会でした。これをアメリカもイスラエルも踏みにじったのが、今回のアメリカ大使館エルサレム移転です。
<註2> 
 シリアを初めとする現在の中東問題が理解しにくい理由のひとつは、アメリカが裏でイスラム原理主義勢力を育てながら表向きはそれを叩き攻撃するという高等戦術をとっているからです。
 ソ連軍がアフガニスタンに侵攻してきたときは、同じイスラム原理主義勢力を「自由の戦士」と称して裏で軍事訓練をし、武器を供給しながら彼らを支援しました。共産党・共産主義=悪という通年が、アメリカのみならず西側の世界では一般的でしたから、これは非常にわかりやすい構図でした。
 ましてソ連軍がアフガニスタンに「侵略」したとなれば、それをたたく絶好の口実になります。しかし、この戦略を考案したブレジンスキーは、後に「実はイスラム勢力を使ってソ連軍をアフガニスタンにおびき出したのは私だ」とインタビューで自慢しているのです。ビンラディンも、このような中で育てられた人物でした。
*ジョン・ピルジャー「タリバンを育てたアメリカ」その1~3
http://tacktaka.blog.fc2.com/blog-entry-271.html
http://tacktaka.blog.fc2.com/blog-entry-272.html
http://tacktaka.blog.fc2.com/blog-entry-273.html
 しかしソ連が崩壊した現在、アメリカの軍産複合体を維持するためには新しい敵が必要になります。それで先ず標的なったのがイラクのサダム・フセインでありリビアのカダフィ大佐でした。いずれも「自国民を殺害する残虐な独裁者」というふれこみで、人道主義をふりかざしてイラクやリビアに乗りだし、独裁者を倒すという構図です。
 ところが、これらは全て嘘だったことが後で明らかになってきました。イラクやリビアはサウジなどのイスラム原理主義の王制独裁国家と世俗主義の国家であり、選挙もありましたし女性でも大学に行けました。現在、攻撃されているシリアも同じです。シリアが化学兵器を使っているというのも、すぐ嘘だということが暴露されてしまいます。
 だとするとシリアを攻撃する口実がなくなります。そこで考え出されたのが、シリアで残虐な行為を繰りかえしているイスラム原理主義勢力を「テロリスト」だとして、これを成敗するという口実でシリア侵略に乗りだすという方法です。昨日の「自由の戦士」が現在は「残虐なテロリスト」として宣伝され、そのためのビデオも施策されました。
 このようにアメリカは、自分の侵略を正当化するために新しい高等戦術を次々と編み出してきますから、大手メディアだけを見ていると余りにも理解し難いことが多く、頭が混乱してきます。今では人権NGOという一見すると中立的な団体までつくって敵を悪魔化しますから、ますます混乱させられます。
 いま私たちは容易ならざる時代に突入しているのだと言えるでしょう。よほど腹をすえてかからないかぎり真実は見えてこないからです。


世界はいま「大転換」のとき、1 ― 裏国家(DeepState)の存在が今や誰の眼にも明らかに!

国際教育(2018/05/10) DeepState(裏国家、闇の政府)、マイケル・フリン。デニス・クシニッチ、ハワード・ジン『肉声でつづる民衆のアメリカ史』

元DIA長官マイケル・フリン     元下院議員デニス・クシニッチ
マイケル・フリン Michael_T_Flynn デニス・クシニッチDenniskucinich1 『アメリカの国家犯罪国書』

 昨年末に、九州を本拠地にして活動しているデータ・マックス社の経済情報誌『IB: Information Bank』から、「先生の訳書『アメリカンドリームの終わり』を拝読し、ぜひ本著を弊誌読者に紹介したい」と思うようになったとの取材依頼があり、そのインタビューの記録を、このブログ (2018/02/01)で紹介しました。
*「今日のアメリカは、明日の日本である」2018新春特別号
http://tacktaka.blog.fc2.com/blog-entry-312.html

 ところが先日、再び上記の経済情報誌『IB』の記者から次のようなメールが飛び込んできて驚喜させられました。というのは、下記の文面をご覧いただければお分かりのように、今度は「九州本部の社長から、新春号に続いて『I.B夏季特集号』でも、ぜひ先生のお話をというリクエスト」だというのですから、私にとっては驚愕の極みでした。

寺島隆吉 先生
 ご無沙汰致しております。先生、嬉しいお知らせです。あまり例がないことなのですが、九州本部の社長から、新春号に続いて『I.B夏季特集号』でも、ぜひ先生のお話をというリクエストを頂きました。
 夏季特集号の大きなテーマは「大転換」です。政治・経済・社会・文化の分野での大転換を探ります。取材は5月に完了したいと考えております。これは、第一報ですが、今現在の先生の5月のご都合をお教え頂ければ幸いです。
 詳細は任されています。今回は先生のご専門に戻って、『国際理解の歩き方』(あすなろ社、2000)の大転換など面白いのではないかと思っております。この本が書かれたのは約20年前なので大きく変わったと思うからです。前回拾い切れなった『アメリカンドリームの終わり』で大転換に関する部分にも触れたいと思います。
 さらに、最新のチョムスキーのお話で大転換に関するものがあれば言及して頂きたいと思います。また「大転換」のキーワードに相応しければ、先生がご興味があって、資料等も十分にあるものであれば、歓迎致します。
 当方も、また先生にお会いして、色々とお話をお聞きできますこと、とても楽しみにしております。



 そこで早速、データーマックス社の社長さんの意向にしたがって「大転換」を考えてみたのですが、私の頭にすぐ浮かんでくるのは次の三つでした。それを私は『I.B新春特別号』のインタビューで次のように結んでいます。

 私のメッセージは3つあります。1つ目は「アメリカの現実を知ろう」、2つ目は「世界の流れを知ろう」、3つ目は「日本の良さを知ろう」です。
 日本の知識人は、ともすると「日本はだめだけどアメリカはすごい」と言ったりしますが、アメリカ国内の崩壊ぶりは、チョムスキーが本書で述べているとおりです。他方、国外でもシリア情勢を見れば分かるとおり、アメリカの失敗と孤立化は世界的に露呈しつつあります。
 その一方、日本は劣化しつつあるとはいえ、今でも世界で稀に見る長寿国であり高学力の国なのです。その証拠に、拙著『英語で大学が亡びるとき』(明石書店)でも詳述しましたが、OECD学力調査では、日本はトップクラスで、アメリカは最底辺です。
 いたずらにアメリカの後を追うのではなく、日本の現実をふまえ、しっかり地に足をついた考えを持って欲しいと思います。かろうじて残っている日本の「平等社会」、世界でもうらやましがられている清潔で安全な社会を、維持・発展させなければならないからです。



 では、私が「アメリカの現実を知ろう」としてあげた1つ目の「大転換」とは何でしょうか。それは、「大統領という存在は、アメリカ国民の意志に従って選挙され、その国民の意向に沿って政治をおこなうものであり、その理想像がアメリカである」という神話が、今や完全に崩壊しつつあるということです。
 このことを最もよく示してくれたのがトランプ大統領の誕生でした。選挙の下馬評ではヒラリー・クリントン女史が「アメリカ初の女性大統領」として当選が確実視されていました。
 ところがヒラリー女史と同じ民主党から自称「社会主義者」のバーニー・サンダース氏が「ヒラリー候補はウォール街と結びついている」と批判し、彼女を裏で支援しているのが共和党と同じ在韓・特権階級であることを暴露してから、流れは大きく変わり、彼女に代わってサンダース氏が民主党の大統領候補になる可能性が出てきました。
 この頃から大手メディアの攻撃はサンダース氏に集中し、終盤のカリフォルニアの予備選挙では投票が始まる前から「ヒラリー女史が圧倒的優勢、当選確定」という報道が流されるまでになりました。
 このような風圧の中で、サンダース氏はついに膝を屈し、共和党候補として勢いを増しつつあったトランプ氏を勝たせないという理由で「ヒラリー女史こそアメリカで最良の候補者だ」という声明すら出すまでに変質してしまいました。
 一握りの富裕層・特権階級に富と権力が集中している現状に不満を感じて、サンダース氏の選挙運動に精力を注ぎ始めていた没落中産階級の人々や若者は、このようなサンダース氏の裏切りに失望し、その多くの票がトランプ氏に流れたと言われています。サンダース氏が民主党の候補者になっていたら、富豪として有名だったトランプ氏と互角に闘うことができ、大統領に当選していたかも知れないと言われているのも、このためです。
 ところが民主党の幹部はヒラリー女史を「アメリカ初の女性大統領」として売り出し、彼女を共和党の候補者と対決させることを、予備選が始める以前から、裏で密かに決めてしまっていました。サンダース氏が各州で予備選を確実に勝ち抜いていくのを何とか阻止しようと、民主党の幹部が様々な工作をしたことも、今ではウィキリークスなどで暴露されています。

 しかし何と驚いたことに、ヒラリー女史は「ウィキリークスはプーチンの手先だ。トランプもプーチンの傀儡だ」と言って、いまだに大統領として公約を果たそうとするトランプ氏の手足を縛ることに全力を注いでいます。
 トランプ氏が共和党の予備選に勝利した背景には、1%(チョムスキーによれば実際は0.1%)の富裕層特権階級を基盤にしている共和党のなかで、富豪であるにもかかわらず氏が主として白人の没落中産階級に「昔の豊かなアメリカを取り戻そう」と呼びかけたことにありました。
 裏切られたと感じたサンダース支持者の少なからぬ人たちが、トランプ支持者に変わった要因も、「アメリカは外国に余計な手出しをして、戦争や政権転覆などにお金を使いすぎている。だからロシアと手をつないでシリアの戦争を一刻も早く終わらせるべきだ。軍隊をシリアから撤退させ、戦争に無駄遣いしている巨額なお金を国内産業の復興に回そう」というトランプ氏の呼びかけにありました。
 不思議なことに、自称「社会主義者」を名乗り、アメリカ国内の富裕層・特権階級を攻撃していたサンダース氏でさえ、このような呼びかけを予備選でおこなっていないのです。外交政策では「シリアのアサド大統領は早く去るべきだ」という軍産安保複合体の要求、政権転覆の政策をそのまま掲げていたのでした。
 ですから、トランプ氏が大統領になったときにおこなわれたことは、「トランプはプーチンの傀儡だ。ロシアが裏で密かに選挙介入したからこそトランプは大統領になれたのだ」という、トランプ氏への強力な攻撃でした。さらに。それに大手メディアも大々的に悪乗りすることになりました。
 アメリカが外国の選挙に介入したりクーデターや要人暗殺を企ててきた長い歴史をもっていることは、ウィリアム・ブルム『アメリカの国家犯罪国書』(作品社2003)に詳しいのですが、それを全く棚に上げて、ヒラリー女史の選挙敗北をロシアのせいにするというのは、まったく「天に唾する行為」と言うべきでしょう。「亀は自分の甲羅に似せて穴を掘る」と言い換えてもよいかもしれません。
 ところがトランプ氏は大統領になった途端に選挙時の公約をくつがえし、国家安全保障問題担当大統領補佐官として自らが任命したマイケル・フリン(元陸軍中将、元国防情報局DIA長官)を解任して、タカ派の人物と入れ替えてしまいました。フリン氏は、「ロシアと協調し、アサド政権と闘っているイスラム原理主義を一層すべきだ」と主張してきた人物ですから、このような人物を解任することは、トランプ大統領が裏からの圧力に屈したことを示す典型的事件でした。
 こうしてフリン解任を皮切りに、トランプ大統領は次々と自分の任命した補佐官や閣僚を解任し、シリア紛争を終結させるどころか、シリア政府の援助要請を受けてシリア内部で闘っているロシア軍やシリア政府軍をミサイル攻撃するまでに、姿勢を逆転させてしまいました。
 トランプ氏の公約だった「アメリカ第一主義」を逆転させて、元大統領オバマ氏がとっていたのと同じ政策=「外国への干渉・侵略」に乗りださせた裏の勢力は、「裏国家」「闇の政府」と呼ばれていますが、このような「裏の勢力」が存在すること、それがDeep Stateという名称で、公の場で論議されるようになったことは、アメリカの歴史上かつてないことでした。
 今までも大統領の候補者が「裏の勢力」によって秘密裏に決定され、それがお祭り騒ぎの大選挙戦で、「アメリカ史上初の黒人大統領」などといったかたちで「売り出されてきた」ことは、公然の秘密だったわけですが、それが最も露骨なかたちで暴露されたのは、クリントン女史が「アメリカ史上初の女性大統領」というかたちで売り出され、大手メディアが、こぞってヒラリー支持の報道を繰り広げたときでした。
 というのは、選挙戦が始まる以前から民主党幹部が大統領はヒラリー女史だと決めていたこと、予備選でもサンダースにたいする露骨な選挙妨害を裏で工作していたことが、ウィキリークスその他で暴露されたからです。しかも、トランプ氏が民主党だけでなく大手メディアからも総攻撃を受けたにもかかわらず大統領に当選したあとも、トランプ氏を大統領の座から引きずり下ろそうとする動きは止むことがありませんでした。
 もちろんトランプ氏の言動に問題がなかったわけではありません。それどころか大言壮語で、かつ矛盾する言動、間違った意見も少なくありませんでした。しかし「アメリカはこれまで外国に干渉しすぎてきた。これからは政権転覆などに手を出すのではなく国内再建に精力を集中する」という、氏の「アメリカ第一主義」という主張は、大筋では正しいものでした。ところが、それを許せない勢力がアメリカ国内に存在するのです。それがいわゆるDeerpState「裏国家」「闇の政府」です。
 しかし、このようなDeerpState「裏国家」「闇の政府」という名称と存在は、すでに述べたように、公の場で明らかにされ議論されることはありませんでした。ところは今では民主党の元下院議員であり元大統領候補として20004年の予備選でも善戦したデニス・クシニッチでさえ、DeepStateという言葉を使って今のアメリカの政治を鋭く批判するようになっています。
* 'Deep state' elements pushing for Syrian conflict – Dennis Kucinich tells Larry King
「闇の政府 'Deep state' がシリアの紛争を求めて、これを推進している」
https://on.rt.com/94a9
 クシニッチはラリー・キングのインタビューに応えて「イラク紛争をわざと長引かせているのは、ペンタゴン、CIA、国務省の連中だ。彼らは自分たちの考え方にしたがってトランプ大統領を動かしている。しかし彼らは国民によって選挙で選ばれたのではない。これは実に憂慮すべき事態ではないか」と語っています。
 クシニッチ氏は、ここで「DeepState」を「CIA、ペンタゴン、国務省の連中」として、彼らを名指しで非難しているのですが、「CIA、ペンタゴン、国務省の連中」を裏で動かしている真の勢力は「軍産複合体」「0.01%の超富裕層」ですから、もっと鋭く「DeepState」のなかみを分析し追求すべきでした。
 しかし、いずれにしても、この大統領選挙の過程とその後の進展で明らかになったことは、アメリカの大統領は民衆が選挙で選ぶものではなく裏で密かに誰を次期大統領にするかが決められていること、裏の勢力の意向に沿わない人物が選ばれた場合、その人物はDeep Stateの言いなりになるか、さもなければ「消される」運命にあるということです。消されるか。
 このことがアメリカ国民だけではなく世界中の心あるひとたちの目に、はっきりと見える形になったことは、アメリカ史上かつてなかったことでした。これは、トランプ氏が大統領選に立候補したことによってもたらされたもので、氏が勝利しなければ、アメリカの裏舞台がこれほど劇的に暴露されることは、たぶんなかったでしょう。これは実にトランプ氏の「大きな功績」であり、世界の「大転換」として私がこれを第一に挙げたいと思う所以です。


<註1> 元国防情報局長官マイケル・フリンについて櫻井ジャーナルは,2016年11月19日の時点で次のように書いていました。
「ドナルド・トランプはマイケル・フリン元DIA局長に対し、安全保障担当補佐官への就任を要請したとAPが伝えている。
 トランプはロシアとの関係修復を訴え、シリアではバシャール・アル・アサド体制の打倒ではなくアル・カイダ系武装集団やそこから派生したダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)と戦うべきだと主張しているが、そうした判断はフリンのアドバイスに基づいている可能性が高い。
 そのフリンを重用できるなら、軍事的な緊張は緩和される可能性が高い。
 マイケル・フリン中将は退役後にアル・ジャジーラ[中東カタールの放送局]の番組へ出演、自分たちの任務は提出される情報の正確さをできるだけ高めることにあり、そうした情報に基づく政策の決定はバラク・オバマ大統領の役割だとしている。
 何度も書いていることだが、DIAは2012年8月に作成した文書の中でシリアにおける反乱の主力はサラフ主義者、ムスリム同胞団、そしてAQI(アル・カイダ系武装集団)だと指摘、バラク・オバマ政権が支援している「穏健派」は存在していないとしていた。
 つまり、「穏健派」の支援とはサラフ主義者、ムスリム同胞団、そしてAQI(アル・カイダ系武装集団)にほかならないということだ。
アル・カイダ系武装集団の主力はサラフ主義者(ワッハーブ派)やムスリム同胞団であり、アメリカ政府はアル・カイダ系武装集団を支援しているということになる。
DIAの報告書ではシリア東部にサラフ主義者の国ができる可能性も警告していたが、これはダーイッシュという形で現実になった。
 [フリン中将は、この報告をオバマ大統領に提出後しばらくして退役した。自分の警告が受け入れられなかったから自ら辞職したのか、余計な報告書をつくるなという理由で解任されたのかは不明]
トランプ政権へ入るとも噂されているルドルフ・ジュリアーニ元ニューヨーク市長は選挙期間中、「ヒラリー・クリントンはISISを創設したメンバーだと考えることができる」と口にしていた。オバマ同様、確かにクリントンもダーイッシュを操る勢力に属していると言えるだろう。」

<註2> オバマ氏は「アメリカ史上初の黒人大統領」という宣伝文句で売り出されたのですが、この選挙戦についてチョムスキーは『アメリカンドリームの終わり』で次のように述べています。
「大統領選挙の直後に、オバマ大統領は広告産業からひとつの賞を獲得しました。二〇〇八年の市場広告最優秀賞というものでした。つまり、二〇〇八年の大統領選挙でもっとも良い宣伝活動を展開したというのです。
 そのことはこのアメリカでは報道されませんでしたが、国際的な商業紙では、経営幹部は幸福感に満ちて次のように言っていました。「われわれはこれまでずっと大統領候補者を売り出してきた。レーガン政権からずっと(練り歯磨きを売り出すのと同じように)大統領選挙という市場で、候補者を売り出してきた。オバマはそのなかでも最高の成果だった」
 普通わたしは、共和党の大統領候補であったサラ・ペイリンの意見に同調はしないのだけれど、彼女がオバマを、「ホープ(希望)とチェンジ(変化)という謳(うた)い文句だけを振りまく男」と呼んで揶揄(やゆ)したとき、彼女は正しかったのです。そもそもオバマは選挙で具体的なものをなにひとつ約束しませんでした。かれが振りまいたのは、ほとんどすべてが幻想で、具体的な提案に欠けるものだったからです。
 オバマが選挙運動の際に振りまいた言い回しをよく見てみれば、そのことがよくわかるはずです。かれの選挙演説のなかには、具体的な政策をめぐる論争はほとんど何もありませんでした。それには十分な理由がありました。政策にかんする一般民衆の世論は、二大政党の指導者や金融界の指導者の望んでいるものとは鋭く対立し、大きな溝があったからです。選挙運動が進めば進むほど、オバマの政策は選挙運動に資金を提供してくれる民間企業の利益に焦点を当てるものになっていました。そして民衆の要求はますます周辺部に追いやられてしまいました。」
 つまりオバマという人物は、最初からDeepStateによって選ばれ、「アメリカ史上初の黒人大統領」として選挙市場に売り出された人物だったのです。それにしてもオバマ氏の母親は白人なのですから、彼を「黒人」呼ぶのはいかにも変な話です。オバマ氏の血の半分は白人のものなのですから、氏をなぜ「白人」と呼んではいけないのでしょうか。ナチスがユダヤ人を扱ったときと同じように、黒人の血が一滴でも混じっていれば「黒人」であるというのは、偏見の極みです。この一般化されている偏見を逆用して選挙市場に売り出そうと工作した「裏国家」の手腕は実に見事よいうしかありません。

<註3> 今からちょうど50年前に(1968年4月4日)キング牧師が公権力によって暗殺されたこと、それがキング師の遺族によって民事裁判で明確に結論づけられたことを前回のブログ(2018/04/14) で紹介しました。
 キング師は、「黒人解放運動の指導者」という地位にとどまっていればおそらく殺されることはなかったでしょう。彼がDeep Stateの怒りにふれたのは、アメリカの外交政策に公然と反旗をひるがえし始めたからでした。その立場を明確に宣言したのが、暗殺のきっかり1年前、1967年4月4日にニューヨークのリバーサイド教会でおこなった演説「ベトナムを超えて」でした。
 この演説は、ハワード・ジン『肉声でつづる民衆のアメリカ史』下巻156-164頁に載っています。ふつうキング師の演説と言えば誰でも思い浮かべるのが、1963年8月28日にワシントンDCで25万人近くの集会参加者を前におこなった有名な演説「I HAVE A DREAM」ですが、内容的にはるかに重要なのは、この「ベトナムを超えて」という演説でした。
 キング師がアメリカの内政批判「公民権運動」にとどまっているかぎりは、DeepStateにとっては、まだ我慢が出来る存在でした。というのは「戦争は国家の健康法である」と信じ、戦争で国家を維持し財力を貯えてきたDeepState人たちにとっては、「アメリカの外交=戦争政策に口出しをする人物は許すべからざる人物であり生かしておけない」のです。このことは上記のキング一家がおこした裁判でも明確に確認されたことでした。
 トランプ氏も「アメリカ第一主義」を掲げ、「国家の再興」という内政問題に関わっているかぎりでは、あれほどひどい攻撃を受けることはなかったでしょう。しかしトランプ氏が踏み外したのは、アメリカの外交・戦争政策と痛烈に批判し、それを内政=国家の再興と結びつけたことでした。
 トランプ氏が選挙戦で、オバマ政権やヒラリー女史の戦争政策「シリアの政権転覆」を痛烈に批判し、ロシアとの協力・協調を訴えたことは、DeepStateの逆鱗に触れるものでした。これは、中国とロシアを包囲するという方針に真っ向から対立するものだからです。これは時の政府が窮地に陥ったときの恒例かつ最後の手段、すなわち「戦争は国家の健康法である」という方針に鎖をかけるような政策だからです。
 ちなみに、夭折の天才ランドルフ・ボーンによる「戦争は国家の健康法である」という論文も、『肉声でつづる民衆のアメリカ史』上巻、532-539頁に訳出されています。また本ブログでも過去3回にわたって、この論文をとりあげました。

*2017/05/30:国際教育:「戦争は国家の健康法である」その1
http://tacktaka.blog.fc2.com/blog-entry-294.html
*2017/06/06:国際教育:「戦争は国家の健康法である」その2
http://tacktaka.blog.fc2.com/blog-entry-295.html
*2017/06/14:国際教育:「戦争は国家の健康法である」その3
http://tacktaka.blog.fc2.com/blog-entry-296.html



二重スパイだったスクリパリ大佐の毒殺事件によせて ― 安倍首相と文(ムン)大統領の知性を比較する

国際教育(2018/03/01 CIA長官ジーナ・ハスペル、元ロシア軍大佐セルゲイ・スクリパリ、BBC記者アンドリュー・ギリガン、イギリス国防省生物化学兵器担当官デイビッド・ケリー博士、ニュルンベルク裁判「侵略の罪」「人道の罪」、戦争犯罪人(ブレアとブッシュ)


初の女性CIA長官 ジーナ・ハスペル                英国科学者ケリー博士(59歳)
Gina Haspel k-1058539477.jpg
https://www.rt.com/usa/421168-haspel-cia-director-profile/
http://oriharu.net/gabana_n/Sizen/Zizi/hibi0307/hibi-niisi0307-19.htm



 前回のブログからまたもや1か月が経とうとしています。相変わらず書きたいことが山積しているのですが体が動きません。書きたいことがありすぎて、どれから手をつけようかと思っているうちに時間が過ぎていきます。
 他方、森下敬一博士が運営する「お茶の水クリニック」を訪れ、薬を処方してもらったにもかかわらず、やっと40キロを越えていた体重が、どういうわけか減り続けて、今は37.5キロまで落ちてしまいました(いわゆる「好転反応」?)。
 そのためか気力体力がいまいち充実せず、ついついブログが遅れ、ついには「百々峰だよりを楽しみにしています」というメールが届くまでになりました。本当に申し訳なく思っています。


 それはともかく、欧米の動きを見ると、ますます核戦争への動きが強くなっているように感じられてなりません。
 ロシアとイギリスの二重スパイだった人物が、毒ガスによって殺されそうになったことを理由に、イギリス政府はロシア外交官60人を追放し、他方でトランプ大統領の側近が次々と好戦派の人物にすげ替えられているからです。
 ロシアの大統領選挙が間近に迫っているなかで、元GRU(ロシア軍参謀本部情報総局)大佐セルゲイ・スクリパリと娘のユリアをロシアが毒物で殺すことは、再選を目指しているプーチン大統領にとって有害無益であることは歴然としています。
 にもかかわらず、何の証拠も示さず、イギリスのメイ首相は外交官追放に乗りだし、ロシアとの緊張関係を一挙に強めました。
 イギリスにおけるテレサ・メイ政権の人気は落下する一方で、このまま放置すると次の選挙で労働党のコルビー政権が誕生する可能性が極めて強くなってきていますから、それをどうしても阻止しなければなりません。そこで裏でCIAと手を組んで偽旗事件をつくりあげたのではないかと疑われています。
 あるいはCIAが仕組んだ芝居をメイ政権が最大限に利用したのかも知れませんが、いずれにしても、ロシア政府が証拠の提出を求めても英国政府はこれを拒否していますし、ロシア政府による共同調査の提案も拒否しています。よほどロシアとの緊張関係を高めたいのだとしか感じられません。
 「疑わしきは罰せず」というのは、刑法の常識だったはずですが、なんと驚いたことに、メイ女史は逆に、プーチン大統領にたいして「この暗殺事件にたいして無実である証拠を提出せよ」と要求したのですから、開いた口がふさがりません。
 イギリスの大手メディアも、これにたいして異を唱えませんでしたから、イギリスの知性とはこの程度のものだったのでしょうか。
 他方、トランプ政権も、「証拠はないがイギリス政府の言うことを信じている」と述べ、イギリスとそれに追随するNATO諸国の動きを支持しました。ロシアの脅威を口実に旧東欧諸国に高額の武器を売りつけたいアメリカにとっては、こんなに都合のよい事件はありません。
 このような動きと、トランプ大統領による「初の女性CIA長官」の任命とは、全く無縁であるとは考えられません。なにしろジーナ・ハスペル女史は、CIAがタイに有する秘密の収容所を管轄していた人物で、拷問を指揮監督していたことで有名になっていたのですから。
*「スノーデン氏:次期CIA長官はEUを訪問すると逮捕される危険性」
https://jp.sputniknews.com/world/201803144667785/
*Torture master? Who is Gina Haspel, 1st woman to head CIA
「拷問の達人?ジーナ・ハスペルとは誰か、初の女性CIA長官」

https://www.rt.com/usa/421168-haspel-cia-director-profile/

 こんな拷問支持者を新CIA長官に任命しただけでなく、トランプ大統領は、超タカ派として有名だったジョン・ボルトンを、新たな米大統領補佐官(国家安全保障担当)に指名しました。ですから、トランプ大統領は今や完全に Deep State 「裏国家・闇の政府」の軍門に下ったとしか考えられません。
 トランプ内閣の報道官は、記者会見でイギリス政府の行動を支持する根拠は何かと質問されて、「証拠はないがメイ政権がそう言っているのだから信じる以外にない」と返答しています。
 しかし、アメリカが「大量破壊兵器」を口実にイラク侵略へ踏み切るとき、当時のブレア政権による報告書(いわゆる「9月文書」2002年9月)が決め手になった、とパウエル国務長官は述べています。
 ところが、情報機関の反対を押し切って「破滅から45分のイギリス人」という嘘を無理矢理に報告書にねじ込んだのは、ブレア首相の首席補佐官だったアラステアー・キャンベルだということが今では分かっています。
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201607140001/
 つまりイギリス政府の言うことを信じて行動した結果がイラク戦争と中東の破壊・殺戮の始まりだったのに、またもや同じ失敗を、トランプ政権は繰りかえそうとしているわけです。
 米国トランプ政権の知性と英国メイ政権の知性、その双方が「知性の低さ」を競い合っているようにすら見えます。
 このイラク戦争はニュルンベルク裁判で言う「侵略の罪」「人道の罪」に当たりますから、当時のブッシュ大統領もブレア首相も、「戦争犯罪人」として、国外から一歩でも外へ出ると、市民によって逮捕される可能性があります。


 ところで、イラクへの先制攻撃を正当化するために嘘を発信したとされる「9月文書」について、BBCの記者だったアンドリュー・ギリガンが2003年5月に、この文書ではイラクの大量破壊兵器の話が誇張されていると番組で伝えました。
 「英政府は脅威を誇張するため、45分以内にイラクが大量破壊兵器を実戦配備できるという情報を、報告書に盛り込ませた」というのです。
 (サンデー・オン・メール紙はキャンベル首席補佐官が情報機関の反対を押し切って「45分話」を挿入したと伝えています。)
 しかも、ギリガン記者が「45分話」をBBCで語って間もなく、彼の情報源が国防省で生物兵器を担当しているデイビッド・ケリー博士(59歳)だということがリークされました。そしてケリー博士は7月15日に外務特別委員会へ呼び出され、17日に変死しています。
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201607140001/(櫻井ジャーナル20160714)
 これは当局によって「自殺」と片付けられましたが、外務特別委員会で真実を証言する前に、ケリーが詰め腹を切らされたか、あるいは暗殺されたかのどちらかだ、というのが大方の推測でした。
 ちなみに、情報源のデイビッド・ケリーが変死、ブレア首相はこの事件を調べるためにジェームズ・ハットン(ハットン卿)を委員長とする「独立」調査委員会(実は「お手盛り」の調査委員会)を設置しています。
 そして、2004年1月にハットン委員会はBBCを批判する内容の報告書を発表、グレッグ・ダイクBBC会長やギリガンBBC記者は放送局から追放されました。この後のBBCは、アメリカの侵略戦争を正当化するための単なる宣伝機関になり、偽情報を公然と伝えるようになりました(現在のNHKを見るような気がします)。


 いま日本でも同じような事件が起きています。毎日新聞(2018年3月9日)ではそれを次のように伝えています。
https://mainichi.jp/articles/20180310/k00/00m/040/100000c

 財務省近畿財務局の男性職員が神戸市内の自宅で自殺していたことが9日分かった。複数の関係者によると、男性は、近畿財務局で学校法人「森友学園」への国有地売却を担当する部署に所属していたという。遺書のような書き置きが見つかっている。
捜査関係者などによると、今月7日、神戸市灘区の自宅マンションの室内で自殺していたのが見つかった。兵庫県警は事実関係を明らかにしておらず、自殺した理由も分かっていない。
 森友学園へは2016年6月に鑑定評価額から約8億円を引いた1億3400万円で大阪府豊中市の国有地が売却された。男性の役職は16年当時、近畿財務局の上席国有財産管理官。学園側との交渉にあたっていた統括国有財産管理官の部下で同じ職場だった。関係者によると、昨年秋以降、病気を理由に休んでいたという。
 土地売却を巡っては大阪地検が背任容疑などの告発を受理して捜査を進めているほか、今月に入り、売却に関する近畿財務局の決裁文書が書き換えられたとする疑惑が浮上していた。

 つまり、普通に推測すると、イギリス国防省生物兵器担当官デイビッド・ケリーと同じ展開だったのではないかと疑われるのです。
 というのは、この自殺した男性は、近畿財務局の上席国有財産管理官で、学園側との交渉にあたっていた統括国有財産管理官の部下だったからです。
 ですから、売却に関する近畿財務局の決裁文書が書き換えられたとする疑惑が浮上した時点で、国会に呼び出されたり、検察からの捜査対象となって留置される可能性があったわけです。
 このように部下を死に追いやっても、その事件の当事者であり最高責任者である安倍首相は術策を尽くして、平然と逃げ切りを謀っています。
 この安倍政権の知性は、米国トランプ政権の知性と英国メイ政権の知性と比べると、どこに位置するのでしょうか。
 朝鮮半島の平和と統一を目指し、アメリカの反対を押し切って、北朝鮮と独自外交を展開している韓国の大統領ムン・ジェイン(文在寅)の知性と比べると、安倍首相の知性はどこに位置しているのでしょうか。
 そして前大統領パク・クネ(朴 槿恵)の不正疑惑を追及し、ついに彼女を牢獄に追いやった韓国人民衆の知性と比べると、韓国人を常に軽蔑の対象としてきた多くの日本人民衆の知性は、どこに位置するのでしょうか。


<註1> 
 偶然に次のような記事が目にとまりましたので紹介しておきます。
*「鳩山元首相、スクリパリ事件について見解示す」
https://jp.sputniknews.com/politics/201803314733321/
<註2> 
 プリンストン大学およびニューヨーク大学の名誉教授であるステファン・コーエンが、アメリカで孤立無援の闘いをしながら、下記のような論文を発表しています。
*Unproven allegations against Trump and Putin are risking nuclear war - Stephen Cohen
「トランプとプーチンにたいする根拠なき告発は核戦争への危険」
https://www.rt.com/op-ed/422673-russiagate-skripal-cold-war/
<註3> 
 ブレア首相の「9月文書」の嘘を暴露して死に追いやられたケリー博士について、もう少し詳しい説明を下記に見つけました。
*「情報源」の英科学者、遺体で発見 イラク脅威「誇張報告」疑惑
http://oriharu.net/gabana_n/Sizen/Zizi/hibi0307/hibi-niisi0307-19.htm
<註4> 
 以下の記事を読むと、官僚も政治家に翻弄される犠牲者であることが分かります。とくに棒グラフに注目ください。
*官僚のメンタル休職者は民間の3倍。国会対応、政治家の理不尽に翻弄される
https://www.businessinsider.jp/post-163990

 しかし自殺するくらいなら内部告発者になってほしかったと思います。公務員は「公僕」なのですから、「国民に奉仕する存在」ではなく「安倍氏だけに奉仕する存在」なら、存在する価値があるのか―そういう気持ちをもつ国民も少なくないのではないでしょうか



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