迎春2017―- 激動・激変する世界、混乱・混迷を深めるアメリカ

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 昨年は、正月早々から義母が救急車で緊急入院することから始まり、それ以来、入退院を繰りかえしながら、ついに6月11日に他界しました。
 入院するたびに悪くなっていくので、安保徹氏の言う「医療が病いをつくる」を実感する日々でもありました。ディサービスに復帰できるまでに回復していた時期もありましたから、なおさら、その思いが募りました。
 他方、これと並行して『寺島メソッド 英語アクティブラーニング』の出版をすすめていたので、編集会議、原稿集め、加筆修正の要請、初校・再校・三交・念校などが切れ目なく続き、その合間に入院している義母への見舞いを兼ねた毎日の看護も重なって、本当に疲労困憊した1年でもありました。
 最終的に『寺島メソッド 英語アクティブラーニング』が出版されたのが11月20日で、その直前まで「再念校」をせざるを得ず、それが終わった後は、12月2日に予定されていた和歌山講演(「高英研」和歌山市支部)への準備に追われました。
 実はその前に思いもかけず「しんぶん赤旗」から『英語の帝国』(平田雅博、講談社)の書評依頼があり、11月30日の締切を講演後の12月5日まで延ばしてもらえるようお願いせざるを得ないという突発的な出来事もありました。
 もうひとつの突発的な出来事は、長周新聞から「先生の『ヒラリー・クリントンとは誰か』上・下(11月2日・4日)の反響が大きかったので、2017年新年号の記事もぜひお願いしたい、締切は12月13日ではどうでしょうか」という依頼があったことでした。
 もうすでに疲労が極致に達していたので断ろうかと思ったのですが、編集部からの強い要請に屈して、「締切を12月末日にしてもらえるなら」という条件で引き受けることになってしまいました。「NOといえない日本人」の典型です。
 こうして昨年は、最後の最後まで仕事に追われることになり、ついに喪中の葉書すら書く余裕がなくなってしまいました。
 そういうわけで、「謹賀新年2017」ではなく「迎春2017」という題名のハガキをつくり、せめて元旦当日に届いた年賀ハガキに応えることにしました。これが本日のブログで紹介する新年の挨拶状ということになります。
 前回のブログを載せた日付を確かめると、2016年12月15日になっていましたから、もう1か月近くにもなっています。私のブログを待っておられた方には本当に申し訳なく思っています。
 しかし、元旦当日は届いた年賀状の返礼をつくるのに追われ、翌日はその宛名書きに追われ、さらに昨日は長周新聞新年号の原稿校正に追われていましたので、私の窮状に免じて、何とかお許しをいただければ有り難いと思います。
 いずれにしても良いお年をお迎えください。



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プーチンとは誰か―― 『戦争プロパガンダ10の法則』

国際教育(2016/12/15)): アンヌ・モレリ『戦争プロパガンダ10の法則』、ナオミ・クライン『ショック・ドクトリン』、シャロン・テニソン「素顔のウラジミール・プーチン」


すでにウクライナ東部ルガンスク市だけで250人もの一般市民が殺されているルガンスク市
250 civilians killed in Ukraine's Lugansk during last two months – OSCE


 日本では、ロシアのプーチン大統領が来日するというのでいろいろな意味で大きな話題になっています。アメリカでも、トランプ氏が次期アメリカ大統領に選ばれたにもかかわらず、相変わらず大手メディアもオバマ政権も、「トランプはロシアの操り人形だ」「トランプ氏はロシアからのハッカー攻撃で大統領になることができた」という主張をくずしていません。
 アメリカ金融街・アメリカ特権階級(いわゆる「ネオコン」の勢力)は、あらゆる口実を使って選挙を無効化して、何としてもトランプ氏を大統領の座から引きずり下ろそうとしているのでしょう。
 ロシアとプーチン大統領を悪魔化して、ロシアを戦争に引きずり込みたい勢力にとっては、「ロシアと手をつないでテロリスト=イスラム原理主義勢力を打ちのめすべきだ」と主張するトランプ氏が大統領になってもらったら困るわけです。シリアの大都市アレッポに平和が訪れてもらった困るわけです。
 *Peace in Syria - it's the last thing the US wants
  「シリアにおける平和――アメリカが絶対に望まないこと」
そこで今回のブログは、プーチンの来日を機会に、「プーチンとは誰か」を書こうと考えたのですが、すでに書いた記事を読み直していたら、いま読んでもまったく古くなっていないように思いましたので、以下に再録させていただくことにしました。ご了解いただければ幸いです。

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平和研究(2014/07/21)

 イスラエルによるガザ攻撃が激化する中で、今度は内戦地帯のウクライナ東部上空でマレーシアの民間航空機がミサイルで撃墜され乗客全員が死亡するという事件が起きました。
 イスラエル政府による「民族浄化」は世界中で良識ある人々の反発と抗議の声を呼び起こしましたが、ウクライナ政府による「民族浄化」は今のところ世界の良識ある人々の関心から遠く離れたところにあるようです。
 それどころか、事件直後にオバマ政権は、これはロシアに支援されたウクライナ分離主義者たちの仕業と断定する声明を発表しました。しかもそれを証拠づける盗聴記録まで提出するという手際の良さです。
 しかし、この盗聴記録は幾つかの録音音声をつなぎ合わせただけのずさんなもので、何の証拠にもならないことがすぐに分かりました。その他にもウクライナ政府が答えるべき多くの疑問が出されています。
Unverified tape released by Kiev presented as ‘proof’ E. Ukraine militia downed MH17
Malaysia MH17 crash: 10 questions Russia wants Ukraine to answer(ウクライナ政府が答えるべき10の疑問)

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 そもそもロシアや反キエフ勢力にとって、マレーシアの民間航空機を撃墜して何の利益になるでしょうか。ロシアをウクライナの内戦に引きずり込みたいとねらっているアメリカやNATO軍に、ロシア攻撃への攻撃の口実を与えるだけです。
 他方でアメリカはベトナム戦争のときのトンキン湾事件を見れば分かるように、自分で自分の軍艦を攻撃しておきながらそれを相手のせいにして戦争を始める国であることは、これまでに幾つも実証済みのことです。
 ですから、嘘をついて始めたイラク戦争のとき結局はブッシュ氏が大恥をかいたように、今度もオバマ氏が大恥をかくことになるだろうと私は予測しています(その根拠となる資料は英文のものが多いので、ここでは割愛します)。
 イラクに大量破壊があるという理由で戦争を始めたアメリカ、アサド政権が化学兵器を使ったという口実でシリア爆撃を開始しようとしたアメリカのことですから、今度のことも、オバマ氏の言い分を本気にしたひとはアメリカ人以外にはあまりいなかったかも知れません。
 それでもアメリカの忠実なプードル犬として行動する政府をかかえる国では、大手メディアも政府見解と大同小異のことが多いので、日本人も一般のアメリカ人と同じ感覚で現在の事態を見ているのではないでしょうか。そこで参考のために今のところ日本語で読める記事として「マスコミに載らない海外記事」の下記翻訳をあげておきます。
Paul Craig Roberts「経済制裁と旅客機と」
Tony Cartalucci「“ロシアのウクライナ侵略”を待ち望むNATO」(2014年7月15日)

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戦争プロパガンダ10の法則

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 アンヌ・モレリ『戦争プロパガンダ10の法則』(草思社、2002)という本の中で、戦争したいひとたちは「敵の指導者は悪魔のような人間だ」と相手を悪魔化することが常道だと述べています。
 確かにそのとおりで、イラク戦争のときはフセイン大統領を、リビア爆撃のときはカダフィ大佐を、シリア攻撃ではアサド大統領を悪魔化して、アメリカは戦争を始めたり反乱軍を支援したりしました。
 そして今のウクライナ危機では、すべての原因をプーチン大統領に負わせることがアメリカ政府の戦略であり、大手メディアもこれに同調してきました。
 確かにプーチン氏はオバマ氏に憎まれても仕方のない理由が幾つもあります。
 その第一がエドワード・スノーデンの亡命を一時的であれ認めたことでしょう。アメリカの恥部を暴露し続けるスノーデン氏をかくまい続けているのですから、オバマ氏にとっては腸(はらわた)が煮えくりかえる思いだったに違いありません。
 またロシアがシリアのアサド政権を説得して「化学兵器の引き渡しと廃棄」を約束させたことも、アメリカによるシリア爆撃の口実を完全に失わせることになり、これもオバマ氏のとっては実に屈辱的なことでした。
 さらにオバマ氏を怒らせた最大のものは、最近ブラジルでおこなわれたばかりのBRICSサミットだったかも知れません。ロシアや中国が中心になって、IMFやWB(World Bank)とは別の金融機関を独自に設立すると発表したからです。 
 オバマ氏は、これまでにもロシアにたいする経済制裁を何度も発動してきたのですが、プーチン氏はこのような攻撃にもひたすら耐え続けて、国内では支持率が高まっているのに反して、オバマ氏の国内での支持率は減る一方だからです。
 しかも上記のような世界銀行ができれば、これまでのような経済制裁もあまり効果がなくなります。だからこそ、プーチン氏を悪魔化することはオバマ氏にとっては、緊急かつ必要欠くべからざる作業だったとも言えるでしょう。

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 実を言うと、私は今までプーチン氏をあまり好きではありませんでした。元大統領ブッシュ・シニアはCIA長官だったので、同じようにKGB出身のプーチン氏に好感が持てなかったのです。
 またプーチン氏がチェチェンの独立運動を弾圧するやりかたも、当時、BSドキュメンタリーを見ているかぎりでは、かなり残酷なもので、これも私の印象をかなり悪くしていました。
 しかし、アメリカとNATOがリビアにたいして残酷な攻撃を加えるころになってから私のロシアにたいする見方が少し変わってきました。プーチン氏が、アメリカにたいしてものを言うべきときにはきちんとものを言える人物だと分かったからです。
 私がプーチン氏にたいして決定的に見方を変えるようになったのは、シリアの化学兵器にたいする氏の対応と、アメリカからの反発を覚悟しながらもスノーデン氏を亡命者として受け入れるようになってからです。
 ウクライナ危機についても、オバマ氏がロシアを軍事力や経済制裁で脅迫してもそれを外交力で切り抜けていくプーチン氏の対応は、私の目から見るとなかなか見事だと思えました。ロシア議会が「武力を行使することも選択肢に入れろ」とプーチン氏に要求しても、その議決をとりさげるよう要請したことに、それはよく現れています。シリアの化学兵器にたいするオバマ氏の対応と正反対です。
 またナオミ・クライン『ショック・ドクトリン』(岩波書店、2011)を読んで、さらに気づいたことがあります。それは、旧ソ連が崩壊して、そこにアメリから乗り込んできた新自由主義(弱肉強食資本主義)がロシア経済をズタズタに引き裂き多くの失業者や自殺者を出したあと、その経済を立て直して現在のレベルまで引き上げたのがプーチンだったということです。

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Sharon Tennison sm
Sharon Tennison 女史
http://www.globalresearch.ca/who-is-vladimir-putin-why-does-the-us-government-hate-him/5381205

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 もう一つ紹介して置きたいのが『アジア記者クラブ通信』2014年6月号です。ここに載っていた次の記事で私は今まで知らなかったプーチン像を発見しました。
「プーチン登場の意義と背景―戦争を仕掛ける米国の闇の権力への果たし状」
(『通信』16-20頁)
 この記事の英語原文は下記にあります。
The Real Vladimir Putin(05/05/2014)
 ただし、調べてみると、このなかで紹介されているシャロン・テニソン女史の小論「素顔のウラジミール・プーチン」は下記からの引用でした。
RUSSIA REPORT: PUTIN
by Sharon Tennison、April 21, 2014
 アメリカ人であるテニソン女史は 、1980年代の初期、冷戦の最中に、米露の緊張関係を少しでも和らげようと起ち上げた市民団体Center for Citizen Initiativesの創立者です。 この記事は30年以上ロシアに在住して活動してきた彼女が、自分の知り得たかぎりでのプーチン像を語ったもので、私には初めて知る事実も少なくありませんでした。
 彼女はソ連が崩壊してから2年後の1992年に、サンクトペテルブルグで市役所の職員だった若きプーチンと初めて出会っています。それから、どのように彼と交流し、どのように彼への見方が変わってきたのかを詳細に述べています。
 「ソ連崩壊後、汚職の臭いのしない初めての大統領」という彼女の記事は、私のプーチン像を大きく変えてくれました。
 さらに調べてみたら、ほぼ上記とほぼ同じものが、「プーチンとは誰か」「なぜアメリカ政府は彼を憎むのか」と題名を変えて下記にも転載されていることが分かりました。
Who is Vladimir Putin? Why Does the US Government Hate Him?
Global Research, May 08, 2014
 この記事を読むと、欧米(そして日本)の大手メディアがいまだに「ロシア=ソ連」「プーチン=スターリン」という既成イメージを土台にして記事を書いていることがよく分かります。アメリカ政府の広報官と何も変わらないのです。

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 しかし私はいまだに、プーチンという人物を「十分に知っている」と言えるほど、知っているわけでもありません。
 とはいえ、映画監督オリバー・ストーンが「羊の皮をかぶった狼」と呼び、消費者運動の旗手ラルフ・ネーダーが「稀代の詐欺師(conman)」と呼んでいるオバマ大統領よりは、プーチン氏のほうがはるかに信頼できる人物であることだけは確かでしょう。
 また前回のブログで紹介したとおり、チョムスキーが「戦争犯罪・超国際犯罪の世界的指導者だ」と呼ぶアメリカよりも、ロシアの方が危険な国家ではないことも、確かだろうと思っています。
America Is the World Leader at Committing ‘Supreme International Crimes’(2014/07/09)
 ですから、チョムスキーが「世界を脱アメリカ化せよ」「世界を "アメリカという脅威" から救え」と呼びかけているのを読むと、「言われれば本当にそのとおりだ」と思うのです。そのほうが、はるかに世界は安全な場所になるからです。
翻訳チョムスキー「世界の脱アメリカ化」(2013/11/05)
翻訳チョムスキー「世界を "アメリカという脅威" から救う」(2014/02/07)

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 ノーベル経済学賞を受けたジョセフ・E・スティグリッツ氏も、最近ブラジルでおこなわれたばかりのBRICSサミットでIMFや世界銀行に代わる新しい金融機関が提案されたことを歓迎すると述べました。これも「世界の脱アメリカ化」のあり方のひとつでしょう。
Nobel Economist Joseph Stiglitz Hails New BRICS Bank Challenging U.S.-Dominated World Bank & IMF
 世界銀行の上級副総裁およびチーフエコノミストでもあった氏が、自分の体験をとおしてドルが支配する世界の悪を知ったからでしょうか。氏の著書『世界を不幸にしたグローバリズムの正体』(徳間書店、2002)の題名がそれをよく示しています。
 ところが安倍政権は相変わらずアメリカの指し示す方向のみに付き従い、「脱アメリカ化」どころか、「グローバル人材を育成せよ」と叫びながら、大学から英語以外の外国語を駆逐し、共通教育や専門科目まで「英語でおこなう」という「英語一極化」の教育政策を推進しています。
 これでどうして「多極化」「脱アメリカ化」しつつある世界を乗り切っていけるのでしょうか。これでは日本の未来はありません。アメリカが世界中で拡大する紛争・戦争に、Cannon Fodder「砲弾よけの兵士」として使われるだけでしょう。

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<註> 『戦争プロパガンダ10の法則』
(1)我々は戦争をしたくない。
(2)しかし、敵側が一方的に戦争を望んだ。
(3)敵の指導者は悪魔のような人間だ。
(4)我々は領土や覇権のためではなく、偉大な使命のために戦う。
(5)我々も誤って犠牲を出すことがある。だが、敵はわざと残虐行為におよんでいる。
(6)敵は卑劣な戦略や兵器を用いている
(7)我々の受けた被害は小さく、敵に与えた被害は甚大。
(8)芸術家や知識人もこの戦いを支持している。
(9)我々の大義は神聖なものである。
(10)この戦いに疑問を投げかける者は裏切り者である。


ジョン・ピルジャー「タリバンを育てたアメリカ」その3

国際教育2016/09/30、ジョン・ピルジャー、タリバン(神学生)、ムジャヒディン(聖戦士)、アフガン人民革命1978、ズビグニェフ・ブレジンスキー、「サイクロン作戦」

カーター「人権」大統領とブレジンスキー(写真中央)
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http://www.bibliotecapleyades.net/sociopolitica/sociopol_brzezinski06.htm


前回と前々回のブログで、ジョン・ピルジャーの論考を紹介しながら、英語教育の現場で、ノーベル平和賞受賞者マララの受賞演説を使うことの意味を考えてきました。
 前回のピルジャーの論考を読むと、次のような驚くべき事実が「ムジャヒディンとタリバンの誕生」の裏に隠されていたことが分かります。

(1)王制独裁国家を革命によって放逐して生まれた新生世俗国家アフガンの問題点は、この革命に旧ソ連が関与した事実はなかったにもかわらず、それをソ連のしわざだとして、アメリカは政権転覆をはかった。
(2)旧ソ連はいわゆる「共産主義国家」だから、改めて「悪魔化」する必要はなかった。アメリカでは共産主義を「悪の権化」とする宣伝が行きわたっていたからである。だから喜劇俳優として有名だったチャプリンすら共産主義者としてアメリカから放逐された。
(3)今ではノーベル平和賞の受賞者として「人権大統領」と呼ばれているジミー・カーターが、実は、アフガニスタンで最初の世俗的非宗教的な進歩政権(つまりイスラム原理主義に基づかない政府)を打倒する秘密工作にゴーサインを出した。
(4)この秘密工作の立案者ズビグニェフ・ブレジンスキー国家安全保障問題担当補佐官の本音は、アフガンの進歩政権が打ち出す政策が成功したならば、それが近隣諸国の「前例となる可能性」があり、アメリカにとって脅威になると考えられたからだった。
(5)ブレジンスキーの計画は、中央アジア全体にイスラム原理主義を広げることでソ連を「不安定化させ」、彼が回想録に書いている言葉でいえば、「ムスリムの反乱」を創りだすことだった。
(6)カーター大統領が秘密転覆工作を許可したのは、一九七九年七月三日であり、ソ連がアフガンの進歩的政権から要請を受けてアフガニスタン侵攻したのは、それから六か月後のことだった。こうしてソ連はブレジンスキーの罠にはまり、崩壊の一因となった。
(7)つまり、ソ連がアフガンを侵略したから、アメリカが原理主義勢力(ムジャヒディン諸派)を支援したのではなかった。大量の資金援助・武器援助と軍事訓練を受けた原理主義勢力に耐えかねてアフガン政府がソ連に援助を要請したのだった。
(8)一九八六年にCIA長官ウィリアム・ケーシーは、パキスタン情報機関ISIが世界中から若者を募集してアフガニスタンの「聖戦」に参加させるという計画の実施を支援した。一九八二年から一九九二年までの間に十万人の若者がパキスタンで訓練された。
(9)パキスタンでは、CIAと英国のMI6によって「イスラム聖戦士」の訓練キャンプが運営され、英国のSAS(陸軍特殊空挺部隊)が未来のアルカイダやタリバンの戦士たちに爆弾製造技術を初めとして、さまざまなテロ技術を訓練した。
(10)ニューヨークのブルックリンにあるイスラム大学でリクルートされた学生は、ヴァージニア州のCIAキャンプで準軍事的な訓練を受けた。これは「サイクロン作戦」と名づけられていた。

 以上のような事実は日本の大手メディアで全く報じられることはありませんでしたから、多くの日本人はその事実を知りません。恥ずかしながら、この私もピルジャーの本『世界の新しい支配者たち』を読むまでは、知らなかった事実が多くありました。
 たとえば、アフガンの政権転覆のため、イスラム聖戦士の勧誘と訓練がパキスタンの情報機関ISIによっておこなわれ、それにCIAだけでなく英国の情報機関MI6とSAS(陸軍特殊空挺部隊)が関わっていたことです。
 これは、英国がアメリカの番犬(プードル犬)と化していることを彷彿とさせるものでした。かつての大英帝国が今はアメリカの手下として働いているわけで、かつての大日本帝国が今はアメリカの番犬になっている実態とイメージが重なってきます。
 もっと驚いたことは、「サイクロン作戦」と名付けられた軍事訓練で、ニューヨークのブルックリンにあるイスラム大学で勧誘された学生が、ヴァージニア州のCIAキャンプで準軍事的な訓練を受けたという事実でした。アメリカは国内で仕入れたテロリストをアフガンに輸出していたのです!
 今もシリアでは、外国(サウジアラビアを初めとする湾岸の独裁王制国家およびアメリカとNATO諸国)から次々と原理主義集団や特殊部隊が送り込まれていて、それにアサド政権が耐えかねてロシアに支援を要請して新しい展開が始まっているわけですが、これもロシアをシリア内戦に引きずり込んで崩壊させる作戦の一環かも知れない、との疑いも出てきます。
 当時のアフガニスタンでは、原理主義集団一派の頭目、たとえばグルブディン・ヘクマティヤルのような男たちは、CIAから数百万ドルを受け取り、「大麻の取引」と「ベール着用を拒んだ女性の顔に酸をかけること」を特技としていたにもかかわらず、彼は、一九八六年、ロンドンに招かれて、サッチャー首相から「自由の戦士」として賞賛されていたのです。
 これもアメリカやNATO諸国のいう「人道主義的介入」「人道的軍事主義」の実態がいかなるものであったか、それを如実に示す例のひとつですが、同じことはシリアでも展開されました。化学兵器でシリア国民を残酷に殺傷しておきながら、その責任をアサド政権になすりつけるという離れ業を演じています。(イラクの大量破壊兵器と同じように、この嘘もすぐに暴露されてしまいました。)
 それはともかく、一九九二年、人民民主党政権が最終的に崩壊したとき、西欧のお気に入りの軍閥の首領グルプディン・ヘクマティヤルは、アメリカが供給したミサイルの雨をカブールに降らせ、二千人を殺戯し、他の派閥も最終的に彼が首相となることを承認しました。
 こうして、人民民主党政権が続いた一九七八年から一九九二年の間に、ワシントンは四〇億ドルをムジャヒディン(イスラム聖戦士)の各派に注ぎ込んだのでした。
 ちなみに、一九八九年にソ連軍がアフガニスタンを撤退した後になっても、アメリカはパキスタンを拠点にして、原理主義集団にさまざまなテロ技術の訓練を続け、ソ連が崩壊したのは一九九一年のことでした。
 そして、ソ連からの援助を失った人民民主党政権が最終的に崩壊したのは、ソ連崩壊の翌年、すなわち一九九二年で、政権最後の大統領モハメッド・ナジブラーの末路は、ピルジャーによれば、次のような、ひとをゾッとさせるようなものでした。公開処刑による惨殺です。
 「人民民主党の最後の大統領、モハメッド・ナジブラーは、国連総会に対して必死に助けを求め、カブールの国連施設の敷地内に避難した。ナジブラーは、一九九六年にタリバーンが政権を樹立するまで、その国連施設にとどまっていた。タリバーンは、このナジブラーを街灯に縛り首にした。」

<註> 私がアフガンを訪れたのは、二〇〇三年の八月二〇~三〇日のことでした。ちょうどアメリカによる空爆が終わってアフガンに一時的な平和がもどってきた時でした。元UNESCO職員だった千葉氏(学会理事、国際基督教大学ICU教授)が企画・引率した日本国際理解教育学会のスタディツアーに参加したのです。
 そのとき、千葉氏の教え子が、国連総合開発計画(UNDP:United Nations Development Programme)の職員として、アフガンの首都カブールの事務所に勤めているというので表敬訪問しました。話が偶然タリバン政権が出来る前のことに移ったとき、「ここで当時の大統領ナジブラーが縛り首にされたんですよ」という説明がありました。
 その頃の私は、アフガンがたどってきた歴史に疎くて、何のことかよく分からなかったのですが、いまピルジャー記者の上記説明を読んで、そのときのことがありありと記憶によみがえってきたのでした。私のアフガン訪問記は下記にありますので。興味がある方は参照ください。

アフガニスタン訪問記(1) 8月20-21日
http://takalab.web.fc2.com/afgan20030820.pdf
アフガニスタン訪問記(2) 8月23-25日
http://takalab.web.fc2.com/afghan2international3education031025.pdf
アフガニスタン訪問記(3) 8月26-29日
http://takalab.web.fc2.com/afghan3.pdf


 もうひとつ私がここで特筆しておきたいのは、ムジャヒディンと呼ばれるイスラム原理主義集団をつくりあげたブレジンスキーが、その結果として、アフガンだけでなく中東一帯(ひいては現在のNATO諸国)の、現在の混乱状態をつくりあげた責任をまったく自覚していないことです。
 たとえば、ブレジンスキーは、「アフガンのイスラムはワシントンが作り上げた」ことを認めつつ、フランスの「ラ・ヌーヴェル・オブゼルヴァチュール紙」(一九九八年一月十五~二十一日)のイタビューに答えて次のように語っているのです。

 Q: ソ連が、軍事介入はアメリカのアフガニスタンへの秘密工作と戦うために正当であると名言した時、だれもその言い分を信じなかった。しかし、それは基本的に真実を含んでいたのですね。今、何か後悔するところはないのですか?
  ブ: 何を後悔しろと? 秘密作戦はすばらしいアイディアだった。結果として、ソ連をアフガンの罠へと引き寄せたのだ。それを後悔しろと? ソ連が公式に国境線を越えた日に、私はカーター大統領へ、こう手紙を書いた。「今、ソ連に彼らのベトナム戦争を始めさせるチャンスを得ました。」事実、それからほぼ10年に渡って、モスクワは自国の政府の手に負えない戦争を遂行しなければならなくなった。対立はソ連帝国を混乱におとしいれ、最終的に崩壊をもたらした。
 Q: イスラム原理主義を支持したことも、未来のテロリストに武器と助言を与えたことも後悔していないのですね。
 ブ: 世界史にとって、一番大事なのは何か。タリバンと、ソ連帝国の崩壊のどちらが大事だ? 訳のわからんイスラム教徒と、中央ヨーロッパの解放・冷戦の終結のどちらだ?
 http://www.ne.jp/asahi/home/enviro/news/peace/blum-J


 アメリカとNATO軍がユーゴ爆撃を開始し(一九九九年二月二十四日)たくさんの死傷者を出して、ユーゴは解体に追い込まれたのですが、ユーゴスラビアを「悪魔化」する宣伝が一九九二年から始まっていたことは、以前の下記ブログで紹介しました。
「戦争が先、口実は後 ―― 元ユーゴスラビア大統領ミロシェヴィッチへの無罪判決は何を語っているか(続)」 http://tacktaka.blog.fc2.com/blog-entry-270.html (2018/09/14)
 このユーゴの場合と同じように、アフガンの場合もソ連が軍事侵攻したから、アフガン民衆の抵抗運動を支援するために、イスラム原理主義集団を傭兵として組織し、戦闘に従事させたわけですが、「秘密工作は成功した。そのどこが悪い?」とブレジンスキーは強弁しています。
 何度も言いますが、「戦争がさき、口実はあと」なのです。戦争を起こしアメリカの世界制覇を実現するのが目的であり、戦争の口実はあとでつくられるのです。というよりも、戦争をおこすための口実づくりは、その五年も一〇年も前から始まっているのです。先にも述べたとおり、ユーゴスラビアを「悪魔化」する宣伝は七年前の一九九二年から始まっていました。
 ブレジンスキーは、彼のいう「訳のわからんイスラム教徒」が、その後、タリバンとなり、女性でも大学に行ける国を作り始めていたのに、それを真っ向から破壊したこと、彼がサウジアラビアなど中東の王制独裁国家だけでなく東アジアなど世界各地から若者を勧誘した原理主義集団のなかに、有名なビン・ラディンも入っていたことはまったく眼中に入っていないようです。
 「一九八六年にCIA長官ウィリアム・ケーシーは、パキスタン情報機関ISIが世界中から若者を募集してアフガニスタンの「聖戦」に参加させるという計画の実施を支援した。一九八二年から一九九二年までの間に十万人の若者がパキスタンで訓練された。」(ピルジャー)
 もっとも、ビン・ラディンは、CIAの要員であったらしいこと、ブレジンスキーが計画し組織したイスラム原理主義集団は、のちに「アル・カイダ」と呼ばれるものになるわけですが、これも実は、イギリスのロビン・クック元外相によれば、「CIAから訓練を受けた「ムジャヒディン」のコンピュータ・ファイルであり、戦闘集団ではない」ということは、今では少しずつ世間に知られるようになってきています。
 たとえば櫻井ジャーナル(2016.06.20)は次のように書いています。

 現在、アメリカが「穏健派」扱いしているアル・カイダ系武装集団だが、2001年9月11日にニューヨークの世界貿易センターとワシントンDCの国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃された(9/11)直後、ジョージ・W・ブッシュ政権は「アル・カイダ」なるものが実行したと断定、「テロリスト」の象徴にした。
 しかし、イギリスのロビン・クック元外相が指摘したように、「アル・カイダ」とはCIAから訓練を受けた「ムジャヒディン」のコンピュータ・ファイル(*1)であり、戦闘集団ではない。アル・カイダはアラビア語で「ベース」を意味、「データベース」の訳としても使われている。つまり、傭兵の登録リストだ。そうした意味で、ダーイッシュも実態は同じ。
 リビアで地上軍の主力だったのはアル・カイダ系武装集団のLIFG(*2)だったが、シリアの場合はアル・ヌスラが中心。ただ、リビアのムアンマル・アル・カダフィ体制が2011年10月に倒された直後から戦闘員と一緒に武器/兵器をシリアへ運んでいるので、実態は同じ。つけられたタグが違うだけだ。アメリカ軍の情報機関DIA(国防情報局)で2012年8月に作成された報告書(*3)によると、アル・ヌスラはAQIがシリアで活動するときに使う名称にすぎない。

(*1)http://www.theguardian.com/uk/2005/jul/08/july7.development
(*2)http://www.telegraph.co.uk/news/worldnews/africaandindianocean/libya/8407047/Libyan-rebel-commander-admits-his-fighters-have-al-Qaeda-links.html
(*3)https://www.judicialwatch.org/wp-content/uploads/2015/05/Pg.-291-Pgs.-287-293-JW-v-DOD-and-State-14-812-DOD-Release-2015-04-10-final-version11.pdf


 つまり私がここで言いたかったのは、以上のような事実を見れば分かるように、アフガンやパキスタンで、タリバンが跋扈(ばっこ)して女子教育を脅かしているのは、実はタリバンのせいではなく、アメリカが元凶だということです。
 そのことを抜きに授業でマララの国連演説やノーベル賞受賞演説をとりあげることは、二重の意味で危険性を伴うということです。
 第一は、アフガニスタンではアメリカが育てたムジャヒディン(それ軍撤退のあと内乱となり、彼らの一派がタリバンになる)が、アフガンでは人民民主党政権のもとで女性でも大学に行けるようになっていた事実を覆い隠す役割を果たす危険性があるということです。
 第二は、アメリカが育てたイスラム原理主義勢力が人民民主党政権を崩壊させ、そのあとに、グルブディン・ヘクマティヤルのような男が首相になることを認めてアフガンを引き払ったのです。
 ピルジャーは先の翻訳でも紹介したように、次のように書いていました。
 「ワシントンは地球上でもっとも残虐な狂信者の一部とのファウスト的な取引を始めたのだった。グルブディン・ヘクマティヤルのような男たちがCIAから数百万ドルを受け取ったのである。ヘクマティヤルの特技は、大麻の取引と、ベール着用を拒んだ女性の顔に酸をかけることだった。」
 ところがマララ演説を教材にすることは、このような事実を逆に描き出すことになりかねません。このような残虐な勢力と戦うためにアメリカとNATO軍はアフガンに駐留し、無人爆撃でテロリストを攻撃しているのだという筋書きが、無意識のうちに生徒の脳裏にすり込まれていく恐れがあるからです。
 もちろん優れた英語教師ならば、このマララ演説を逆に利用することによって、いま世界が置かれている現実を鋭く見抜く生徒を育てる最高の機会にするかも知れません。しかし現場教師が置かれている労働環境は極めて厳しく、以上で述べてきたような事実を調べたり、そのような資料をつくって配布する時間的ゆとりがほとんどありません。
 この私の紹介した翻訳、そしてこの私の拙い(つたない)解説が、そのためのささやかな資料として役立つことを願ってやみません。
 
<註1> 国際教育総合文化研究所「寺島研究室HP」には次の資料も載せてあります。時間と興味がある方は、ぜひ覗いてみてください。
Peaceful Tomorrows(編)、岩間龍男・寺島隆吉(訳)『アフガニスタン 悲しみの肖像画:米国の爆撃による罪のない民間人犠牲者たち』の出版解説、

<註2> フランスの「ラ・ヌーヴェル・オブゼルヴァチュール紙」による、カーター元大統領の国家安全保障問題特別担当補佐官だったジノビエフ・ブレジンスキーへのインタビュー(1998年1月15~21日)の翻訳全文は下記に載っています。
ブレジンスキー氏 「アフガンのイスラムはワシントンが作り上げた」



ジョン・ピルジャー「タリバンを育てたアメリカ」その2

国際教育2016/09/30、タリバン(神学生)、ムジャヒディン(聖戦士)、アフガン人民革命1978、大統領補佐官ズビグニェフ・ブレジンスキー、「サイクロン作戦」

 ズビグニェフ・ブレジンスキー
ブレジンスキーブレジンスキー&ビン・ラディン
(右側写真) 銃を持つビン・ラディンと並んで立つ、ブレジンスキー
http://www.bibliotecapleyades.net/sociopolitica/sociopol_brzezinski06.htm


 前回のブログでは、1978年にアフガンで王制独裁国家を倒す革命が起きたことを紹介しました。それは、ピルジャーによれば、「あらゆる意味で幅広い人民の革命」でした。そして新しい政権のもとでは次のような明るい光景が広がっていました。
 「女子でも皆、高校にも大学にも行けた。どこにでも行きたいところに行き、着たいものを着ることができた……。喫茶店にでも行けたし、金曜日には最新のインド映画を見に映画館に行くことも、最新のヒンドゥー語の音楽を聴くこともできた。」
 「新政権は貧困地域には無料医療を導入した。強制労働は廃止され、大規模な識字運動が開始された。女性たちとっては、これまでに聞いたことのないような前進だった。一九八○年代後半には、大学生の半数が女性となった。アフガニスタンの医師の四〇パーセント、教員の七〇パーセント、公務員の三○パーセントは女性になった。」
 これを革命以前の次のような状態と比べてみてください。
 「部族主義と封建制のもとで、平均寿命は三五歳、幼児の三人に一人は死亡した。識字人口は、人口の九パーセントだった。」
 しかし、できたばかりの新政権は、「男女平等、宗教の自由、少数民族への権利、農村における封建制の廃止など、これまでは認められていなかった諸権利の承認を含む新しい改革計画」を発表したのでした。
 その結果として現出したのが冒頭で紹介したような明るい光景でした。ところが、アメリカが育てあげたムジャヒディン(聖戦士)と呼ばれるイスラム原理主義集団が、新政権と戦って勝利し始めると、一転して次のような暗い光景が広がり始めたのでした。
 「ムジャヒディーンが勝利し始めると、こうしたことすべてが悪いことになった……。教師を殺し、学校を燃やした……。私たちは怯えた。こうした人たちのことを西欧が支援していたのは滑稽だし、悲しいことだった。」
 では、アメリカは何故どのようにしてムジャヒディンを育て上げ、彼らにどのように資金援助や武器援助をしたのでしょうか。以下のピルジャー記者の説明をよく読んでいただきたいと思います。



「イスラム原理主義集団を育てたアメリカ」(下)
(ジョン・ピルジャー『世界の新しい支配者たち』岩波書店、2004:194-200頁)

人民民主党政権の問題は、ソ連の支援を受けていた、ということだった。その中央委員会はスターリニスト的ではあったが、西欧で言われていたような「傀儡政権」ではなかったし、当時の西側のプロパガンダが主張したようにソ連に支援されたクーデタでもなかった。カーター大統領時代のサイラス・バンス国務長官が回想録のなかで、「クーデタにソ連が関与したという証拠は何もなかった」と認めている。
 カーター政権のもう一人の実力者だったズビグニェフ・ブレジンスキー国家安全保障問題担当補佐官は、アメリカのベトナムにおける屈辱を挽回する必要があったと考えており、ポスト・コロニアルの解放運動の前進は、世界中どこでもアメリカに対する挑戦となったと考えた。そのうえ、アングロ・アメリカは、中東と湾岸における最良の取引相手だった王制独裁国家イランを、「防衛する」必要があった。アフガニスタンが人民民主党のもとで成功したならば、それが「前例となる可能性」があり、脅威になると考えられた。
 一九七九年七月三日、アメリカの世論にも議会にも知られないまま、カーター大統領はムジャヒディーン(聖戦士)として知られる部族グループを支援するために五億ドルの秘密工作計画を許可した。その目的はアフガニスタンで最初の非宗教的な進歩政権を打倒することだった。冷戦時代の神話とは逆に、ソ連のアフガニスタン侵攻とは何の関係もなかった。ソ連がアフガニスタン侵攻したのは、それから六か月後のことだった。
 実際、ソ連がアフガニスタンに対して決定的な行動に出るのは、部族主義義的、宗教主義的な「テロリズム」に対応するためだったということをすべての証拠が示している。ちょうどアメリカが二〇〇一年一一月の侵攻を正当化するときに使った「テロリズム」と同じ類いのものだった。[したがってソ連のアフガニスタン侵攻が悪であれば、同じようにアメリカによるイラク侵攻は非難されねばならなかった。]
 ところが、一九九八年のインタビューのなかで、ブレジンスキーはアメリカの役割についてワシントンが嘘をついていたことを認めている。
 「歴史の公式解釈では、ソ連軍がアフガニスタンに侵攻した後の一九八○年にCIAがムジャヒディーンを支援したことになっている……。しかし実際には、今日まで秘密にされてきたが、まったく逆だった。」
 一九七九年八月に、カブールの米大使館は次のように報告している。
 「アメリカによるムジャヒディーンの支援によって、アフガニスタンの将来の経済的、社会的改革がどのように遅れようとも、(人民民主党政権の)消滅によって、アメリカに大きな利益がもたらされるだろう」

 こうして、ワシントンは地球上でもっとも残虐な狂信者の一部とのファウスト的な取引を始めたのだった。グルブディン・ヘクマティヤルのような男たちがCIAから数百万ドルを受け取ったのである。
 ヘクマティヤルの特技は、大麻の取引と、ベール着用を拒んだ女性の顔に酸をかけることだった。彼は、一九八六年、ロンドンに招かれて、サッチャー首相から「自由の戦士」として賞賛された。人民民主党政権が続いた一九七八年から一九九二年の間に、ワシントンは四〇億ドルをムジャヒディーンの各派に注ぎ込んだ。

 ブレジンスキーの計画は、中央アジア全体にイスラム原理主義を広げることで、ソ連を「不安定化させ」、彼が回想録に書いている言葉で言えば、「ムスリムの反乱」を創りだすことだった。ブレジンスキーの壮大な計画は、パキスタンの独裁者、ジヤ・ウル・ハック将軍の、この地域を支配したいという野望とも合致した。
 一九八六年にCIA長官ウィリアム・ケーシーは、パキスタンの情報機関ISIが世界中から人をリクルートしてアフガニスタンのジハードに参加させるという計画の実施を支援した。一九八二年から一九九二年までの間に十万人のイスラム兵士がパキスタンで訓練された。
 作戦要員は、最終的にはタリバーンやオサマ・ビン・ラディンのアルカイーダに加わることになる(タリバーンとは「神学生」「神学校の生徒・学生」を意味している)。
 ニューヨークのブルックリンにあるイスラム大学でリクルートされた学生は、ヴァージニア州のCIAキャンプで準軍事的な訓練を受けた。これは「サイクロン作戦」と名づけられていた。
 他方、パキスタンでは、ムジャヒディーンの訓練キャンプが、CIAと英国のMI6によって運営され、英国のSAS(陸軍特殊空挺部隊)が未来のアルカイーダやタリバーンの戦士たちに爆弾製造技術を初めとして、さまざまなテロ技術を訓練していた。これは、一九八九年にソ連軍がアフガニスタンを撤退した後になってもずっと続いていた。

 一九九二年、人民民主党政権が最終的に崩壊したとき、西欧のお気に入りの軍閥の首領、グルプディン・ヘクマティヤルは、アメリカが供給したミサイルの雨をカブールに降らせ、二千人を殺戯し、他の派閥も最終的に彼が首相となることを承認した。
 人民民主党の最後の大統領、モハメッド・ナジブラーは、国連総会に対して必死に助けを求め、カブールの国連施設の敷地内に避難した。ナジブラーは、一九九六年にタリバーンが政権を樹立するまで、その国連施設にとどまっていた。タリバーンは、このナジブラーを街灯に縛り首にした。


 翻訳の紹介はここまでです。ただし上記の翻訳は、読みやすくするため、私による改訳改行を加えてあります。
 次回のブログでは、以上のピルジャー論考を元にして、マララ演説を英語教育の教材として使うことの意味を、もういちど考えてみたいと思います。


ジョン・ピルジャー「タリバンを育てたアメリカ」 その1

国際教育2016/09/29、ジョン・ピルジャー、タリバン(神学生)、ムジャヒディン(聖戦士)、王制独裁国家アフガン、アフガン人民革命1978、アフガン人民民主党(PDPA)

ジョン・ピルジャー
ピルジャーとウィキリークスの創始者アサンジ

Pilger.jpg PilgerAssange.jpg
*ジョン・ピルジャーとジュリアン・アサンジは、二人ともオーストラリア国籍で英国在住
(アサンジは、ロンドンのエクアドル大使館に亡命したが英国政府によって幽閉状態に追い込まれている)



 いま英語教育の現場では、タリバンによって頭を撃ちぬかれたマララ・ユスフザイさんのノーベル平和賞受賞演説(&国連演説)が検定教科書にも採録され、教材として使われています。
 つい先日も知り合いの英語教師から「マララ演説を授業で使いたいのだが何かアドバイスを」というメールをいただきました。
 しかし、彼女の演説が教材として使われることは、ひとつの危険性を伴います。
 というのは、彼女の演説が広まれば広まるほど、アメリカに主導されたNATO軍がアフガニスタンに居座ること、アメリカが無人爆撃機Droneで民間人を殺戮していることが、あたかも正当であるかのように若者の頭脳に定着しかねないからです。
 事実、アメリカがイラクを侵略したときも、リビアを爆撃し破壊したときも、そして今はシリアに介入する口実としても、チョムスキーの言う「人道的軍事主義」が使われているからです。ユーゴスラビアにたいする爆撃・解体のときも全く同じだったことは、先のブログで紹介したとおりです。
 その一方で、肝心のアメリカがムジャヒディン(聖戦士)というの名のイスラム原理主義者集団を育て上げ、それが後のタリバンとなり、今は「イスラム国」と名乗りながら、シリアで破壊行為・残虐行為を繰りかえしていることは、大手のメディアでは、ほとんど紹介されていません。
 そこで以下では、世界的に著名な調査報道記者ジョン・ピルジャーの論考を紹介して、皆さんの参考に供したいと思います。
 これを読んでいただければ、アメリカが「911事件」を口実にして攻撃する以前のアフガニスタンがいったいどのような国だったのか、それを破壊するテロリスト集団をどのようにしてつくりあげたのかが、よく分かってもらえるのではないかと、考えるからです。
 そして、このような視点を教師がもっていないかぎり、あるいは教師が参考資料としてこのような事実をも提示しないかぎり、、いつのまにかマララ演説はアメリカ賛美の教材として生徒の頭脳に定着していくでしょう。

<註> ジョン・ピルジャーについては、以前のブログ「ユーゴの空爆と解体、元ユーゴスラビア大統領ミロシェヴィッチへの無罪判決は何を語っているか」も参照ください。
http://tacktaka.blog.fc2.com/blog-entry-269.html



「イスラム原理主義集団を育てたアメリカ」(上)
(ジョン・ピルジャー『世界の新しい支配者たち』岩波書店、2004:194-200頁)


 イラクが九・一一に関わりがあったという、もっとも重要な「証拠」は、ツインタワーへの自爆ハイジャッカーのリーダーとされているモハメッド・アタがチェコ共和国でイラクの情報部員と会ったというものである。
 英国の新聞によれば、その情報部員は、「下級情報部員」(『ガーディアン』紙)から、「中級」(『インディペンデント』紙)、「上級」(『フィナンシャル・タイムズ』紙)、さらには「バグダッドの情報機関のトップ」(『タイムズ』紙)にまで昇進している。このうち『フィナンシャル・タイムズ』紙だけが「会合は実際にあったのかどうか」、あったとしても、「それがツインタワーの破壊と何らかの意味で関係があったのかどうか」について疑問を提起している。BBCの『ニュースナイト』では、外務省詰めのマーク・アーバンが、「サダム・フセインが発射を計画しているミサイル」に関しての「秘密情報」があったと伝えている。
 これとは逆に「イラク・コネクション」の疑わしさがトップニュースになることはなかった。『デイリー・テレグラフ』紙だけが、二〇〇一年一二月一八日に、モハメッド・アタはチェコ共和国に入国したことはなかったと、チェコ警察が否定していることを報道した。二〇〇二年二月五日の『ニューヨーク・タイムズ』紙が、「およそ十年間にイラクがアメリカに対する何らかのテロ行為に関わったという証拠をCIAは入手していないし、サダム・フセイン大統領がアルカイーダに化学兵器あるいは生物兵器を提供したことはないとCIAは確信している」と報道したときにも、あるのは沈黙だけだった。
 無視というのはもっとも悪質な検閲である。アフガニスタンに関する多くの報道のなかで、この世界でもっとも貧しい国のひとつをアメリカが攻撃することを正当化したのは、邪悪なタリバーンを想起させる強力なイメージだった。基本的な人権を否定され、テントのようなブルカをまとった女性たちの写真は、世界に女性への迫害を訴えた。タリバーンの誕生と狂信的なジハード(聖戦)をつくりだすにあたってアングロ・アメリカンが果たした役割について、大手メディアが言及することはめったになかった。この忘れ去られていた社会が、この数年間、異常な時代を経験したことへの言及もなかった。このことを理解していれば、ブレアの言う「人権と文明の価値のための戦争」を本当の文脈のなかに置くこともできただろう。

 一九六〇年代に、アフガニスタンでは解放運動が起こった。その中心になったのはアフガニスタン人民民主党(PDPA)で、ザヒール・シャー国王の独裁支配に反対し、一九七八年、ついに国王の従兄弟、マハメッド・ダウドの政権が打倒された。それは、あらゆる意味で幅広い人民の革命だった。
 『ニューヨーク・タイムズ』紙は、カブールにいた多くの外国人ジャーナリストがインタビューしたアフガニスタン人の誰もが、このクーデタを喜んでいると言っていると報じた。『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙は、「新しい国旗に敬意を表するために一五万人が行進した・・・。参加者は心の底から感激しているようだった」と報じた。『ワシントン・ポスト』紙は、「アフガニスタン国民の新政権への忠誠は疑いの余地がない」と書いている。
 新政権は、男女平等、宗教の自由、少数民族への権利、農村における封建制の廃止など、これまでは認められていなかった諸権利の承認を含む新しい改革計画を発表した。一万三千人以上が獄中から釈放され、警察のファイルが公式に焼却された。
 部族主義と封建制のもとで、平均寿命は三五歳、幼児の三人に一人は死亡した。識字人口は、人口の九パーセントだった。新政権は貧困地域には無料医療を導入した。強制労働は廃止され、大規模な識字運動が開始された。女性たちとっては、これまでに聞いたことのないような前進だった。一九八○年代後半には、大学生の半数が女性となった。アフガニスタンの医師の四〇パーセント、教員の七〇パーセント、公務員の三○パーセントは女性になった。
 実際、この変化は極めて急激だったので、その恩恵を受けた者は今でもありありと、それを記憶している。二〇〇一年九月にタリバーンから逃れた女性の外科医、サイーラ・ヌーラニはこう語っている
 「女子でも皆、高校にも大学にも行けた。どこにでも行きたいところに行き、着たいものを着ることができた……。喫茶店にでも行けたし、金曜日には最新のインド映画を見に映画館に行くことも、最新のヒンドゥー語の音楽を聴くこともできた……。ムジャヒディーンが勝利し始めると、こうしたことすべてが悪いことになった……。教師を殺し、学校を燃やした……。私たちは怯えた。こうした人たちのことを西欧が支援していたのは滑稽だし、悲しいことだった。」

(次回「その2」に続く)

<註> 上記の翻訳は、読みやすくするため、寺島が改訳改行を加えてあります。


戦争がさき、口実はあと――元ユーゴスラビア大統領ミロシェヴィッチへの無罪判決は何を語っているか(下)

国際教育(2016/08/28)、ノースウッズ作戦、ユーゴスラビアの爆撃・解体、コソボ解放軍(KLA)、イスラム原理主義集団、トルコとブラジルにおけるクーデター

サンパウロ、ブラジル
クーデターで辞職に追い込まれた元大統領の復帰を要求する子ども連れの母親たち

ブラジルのクーデターに抗議 元大統領ルセフ
https://www.rt.com/in-motion/358991-brazil-anti-temer-protest/  元ブラジル大統領ルセフ


 前回のブログでは、NATO軍によるユーゴ爆撃・解体、その歴史的経過、それにかかわってアメリカが裏でどのような役割を果たしたかを充分に紹介できませんでした。
 それが少し心残りだったので、櫻井ジャーナルその他から仕入れた知識を以下に紹介して、今後の国際情勢を読み解くための資料を提供したいと考えました。
 というのは、いまヨーロッパでは中東の戦乱から逃れてくるイスラム教徒をどう受け入れるかで大騒ぎになっているからです。フランスでは肌を露出しない水着を着て海水浴をする女性を遊泳禁止にする自治体まで現れました。
 かつては「肌を露出する絵画」でさえ描くことが困難だったヨーロッパで、今は「肌を露出しない」という理由で、イスラム教の女性が遊泳を禁止されるという漫画のような光景がヨーロッパで展開されつつあるのです。
 しかしイスラム教徒の移民問題は、アメリカが主導するNATO軍がアフガニスタン、イラク、リビア、シリアなどの政権転覆をはかり、それが何十万という死者を出し、何百万もの難民をうみだしたことが、根本原因になっています。
 そのさい常に政権転覆の口実になってきたのが「民衆を独裁者から救う」という人道主義的介入でした。そのような嘘と欺瞞に満ちた口実で中東諸国を廃墟と瓦礫に変え、混乱の局地に陥れたのが、アメリカNATO軍に先導・扇動されたEU諸国でした。
 ですからヨーロッパ諸国がイスラム教徒の移民を望んでいないのであれば、アメリカに荷担して中東の政権転覆工作をやめさえすればよいのです。ところがシリア情勢を見れば分かるように、いまだにドイツ、イギリス、フランスなどのNATO諸国は特殊部隊を派遣して裏でISISを支援する政策をやめようとしていません。
 そして、このような政権転覆工作の先導的モデルとなったのが、前回のブログでも紹介したように、コソボ紛争すなわちアメリカNATO軍によるユーゴスラビアの爆撃と解体でした。ですから、この経過をきちんとおさえておくことは、民衆が政府の嘘を信じるという同じ過ちを繰りかえさないために必要不可欠な作業ではないかと思うのです。
 前置きが長くなりましたが、櫻井ジャーナル(2014.08.30)はコソボ紛争について次のように述べていました。ユーゴスラビアに関する部分を四角い枠で囲んでおきました。



米英は世界を制覇するためにNATOを使っているが、その首脳会議を前に「ロシア軍の侵略」を宣伝
http://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201408300000/(櫻井ジャーナル2014/08/30)

 ウクライナ制圧はズビグネフ・ブレジンスキーの戦略に基づいているわけだが、現在、その戦略を実現するための暴力装置として機能しているのがNATOだ。そのNATOが9月4日から5日にかけてウェールズで首脳会議を開く。米英としては、ロシアと対決するということでNATOの意思を統一したいだろう。そうした中、「ロシア軍のウクライナ侵攻」なる話が叫ばれ始めた。

ブレジンスキーの戦略はソ連消滅後の1990年代に入ってまとめられ、1997年に『グランド・チェスボード』(日本語版は『ブレジンスキーの世界はこう動く』、後に『地政学で世界を読む』へ改題)というタイトルの本を出している。
 この本(原書)が出版された2年後、NATOはユーゴスラビアに対して全面攻撃を加えた。コソボのアルバニア系住民をユーゴスラビアから分離し、アルバニアと合体させようという西側のプランを実現するためだった。

 この攻撃ではスロボダン・ミロシェヴィッチ大統領の自宅が破壊されただけでなく、中国大使館も爆撃されている。この方法をロシアが採用したなら、ウクライナの東部や南部を分離、キエフを空爆してアメリカ大使館を破壊しても構わないということになる。
 中国大使館を爆撃したのはB2ステルス爆撃機で、目標を設定したのはCIA。ミサイルが3方向から大使館の主要部分に命中していることから、「誤爆」とは考えにくく、計画的な攻撃だった可能性が高い。
 当時、ドイツ外務省はミロシェビッチ政権がアルバニア人を追い出そうとしていると主張、秘密裏に「蹄鉄作戦」を計画しているとしていたが、証拠は示されていない。
 後にドイツ軍のハインツ・ロクアイ准将が語ったところによると、ブルガリアの情報機関が作成した報告を元にでっち上げた計画だったという。ブルガリアの情報機関はセルビアがKLAを撃破しようとしているという話だった。(David N. Gibbs, “First Do No Harm”, Vanderbilt University Press, 2009)
 ユーゴスラビアを攻撃する前、ウィリアム・ウォーカー元エル・サルバドル駐在大使はコソボの警察署で45名が虐殺されたという話を流している。ミロシェビッチ政権の残虐さを印象づけようとしたのだが、これは嘘だった。死者が出たのは警察側と西側を後ろ盾とするKLA(コソボ解放軍、UCKとも表記)との戦闘の結果で、その様子はAPの取材班が撮影していた。

 ユーゴスラビアを「悪魔化」する宣伝は1992年から始まっている。ボスニアで16歳の女性が3名のセルビア兵にレイプされたと報道されたのだ。
 記事を書いたのはニューズデーのロイ・ガットマンだが、本人はボン支局長で、バルカンの状況に詳しいわけではなく、クロアチアの与党、HDZ(クロアチア民主団)の副党首、ヤドランカ・シゲリを情報源にしていた。
 この人物はクロアチアの亡命者が創設したプロパガンダ組織CIC(クロアチア情報センター)のザグレブ事務所の責任者でもあった。
 シゲリは人権問題のヒロインとなり、1996年には人権擁護団体HRWが彼女を主役にしたドキュメント映画を発表。
 他方、レイプ報道で脚光を浴びたガットマンは1993年にセルビア人による残虐行為を報道してピューリッツァー賞を贈られている。ちなみにICRC(赤十字国際委員会)はセルビア人による組織的なレイプが行われた証拠はないとしている。


 その後、アメリカは偽情報を掲げながら他国を侵略していく。
 大きな節目になったのが2001年9月11日のニューヨークの世界貿易センターやワシントンDCの国防総省本部庁舎(ペンタゴン)への攻撃だった。当時のジョージ・W・ブッシュ政権は即座にアル・カイダの反抗だと断定、オサマ・ビン・ラディンがいたとされるアフガニスタンを相手の交渉姿勢を無視して攻撃した。
 さらに、アル・カイダを弾圧していたイラク(存在しない大量破壊兵器)を先制攻撃、リビア(民主化運動弾圧という嘘)とシリア(民主化運動弾圧という嘘)を破壊するためにアル・カイダを使っている。そして、ウクライナはネオ・ナチを使ってクーデターを実行、東部や南部で民族浄化中だ。(以下、略)


 上記の櫻井ジャーナルの記事で二つのことに注目してほしいと思います。ひとつは何の関係もないはずの中国大使館を爆撃していることです。もう一つは、ユーゴスラビアを解体・再編するという計画がすでに1992年から始まっていることです。
 私の下記ブログで紹介したのは、アメリカがキューバのカストロ政権を転覆させるために立てた計画「ノースウッズ作戦」で「民間機の撃墜」「米国を目指す亡命キューバ人を乗せた船の沈没」など、民間人も平気で殺す作戦がたてられていた、ということでした。
http://tacktaka.blog.fc2.com/blog-entry-268.html
 ですから、アメリカNOTO軍が中国大使館を爆撃しても何の痛みも感じていないだろうと想像されます。アメリカにとって最大の仮想敵国は中国とロシアなのですから、このさい思い切りたたいておきたかったのでしょう。
 民間人の殺傷については、前回のブログで紹介したピルジャー記者の報告では次のような記述もありました。

 アメリカが自慢する「正確に誘導された」ミサイルは、ほんの幾つかを除けば、あとはすべて兵士や軍事施設ではなく市民や民間施設が、その攻撃対象になっていた。その中にはセルビアの首都ベルグラードにあるラジオ・テレビ放送局の新しいスタジオ群まで含まれていた。16人が殺され、その中にはカメラマン、プロデューサー、メーキャップ・アーチストなども含まれていた。イギリスのブレア首相は、その施設をセルビアの「司令部」だからと言って、死者を冒涜した。
https://www.rt.com/op-edge/356846-provoking-nuclear-war-media/


 アメリカのブッシュ大統領と一緒になって大嘘をつきながらイラクに侵略し、大量の死者を出し膨大な数の難民を生み出しても全く平気なブレア首相のことですから、ユーゴスラビア連邦共和国のひとつを構成していたセルビア共和国や国民など、眼中になかったのかも知れません。
 アメリカNATO軍による「人道的介入」と言っても、その「人道」のなかみは、この程度のものだったことを、私たちは肝に銘じておかねばならないでしょう。

 櫻井ジャーナルの上の記述で、もうひとつ注目していただきたかったのは、「ユーゴスラビアを解体・再編するという計画がすでに1992年から始まっていた」という事実です。それを櫻井ジャーナルは次のように書いていました。

ユーゴスラビアを「悪魔化」する宣伝は1992年から始まっている。ボスニアで16歳の女性が3名のセルビア兵にレイプされたと報道されたのだ。記事を書いたのはニューズデーのロイ・ガットマンだが(中略)クロアチアの与党、HDZ(クロアチア民主団)の副党首、ヤドランカ・シゲリを情報源にしていた。この人物はクロアチアの亡命者が創設したプロパガンダ組織CIC(クロアチア情報センター)のザグレブ事務所の責任者でもあった。ちなみにICRC(赤十字国際委員会)はセルビア人による組織的なレイプが行われた証拠はないとしている。


 つまりユーゴ連邦共和国のひとつボスニアで、セルビア人による組織的なレイプが行われた証拠はなかったにもかかわらず、もうひとつの共和国クロアチアのプロパガンダ組織の責任者でもあったシゲリ女史が嘘をばらまいたのでした。
 アメリカはバルカン半島に「新自由主義体制」をつくりあげるため、以前からユーゴスラビアの解体を望んでいました。あとは、どんな口実をつくりあげるかだけだったのです。1992年のレイプ報道は、その序の口に過ぎませんでした。
 本格的な爆撃は、イスラム原理主義集団=コソボ解放軍(KLA)なるものをつくりあげる時間が必要でしたから、「アルバニア人の虐殺」を口実にした1999年の爆撃まで待たなければならなかったのです。
 これは、2001年の「911事件」のあと、ブッシュ大統領はすぐにでもイラクを攻撃したかったのですが口実が見つからず、結局2003年まで待たざるを得なかったのに似ています。それでも最初の口実「サダム・フセインはビン・ラディンとつながっている」という嘘がすぐにバレてしまったので、次の口実「サダム・フセインは大量破壊兵器をもっている」という口実をつくりあげました。
 しかし、この嘘もバレてしまったので、最後は「フセイン大統領は独裁者だから、政権を転覆させてイラク民衆に民主主義をプレゼントする」というのが、最後の口実になりました。その結果は、どうだったのでしょうか。今やイラクどころか中東全体が内乱状態になり、死者と難民はうなぎ登りです(それが、いま欧州では「イスラム女性の水着を認めるかどうか」という喜劇につながっていることは冒頭で述べたとおりです)。
 つまり最初に「イラク政権の転覆」という目標があり、あとは「いかにそれを正当化するか」という口実探しが残っているだけなのです。言い換えれば民衆が信じ込みやすい「偽旗作戦」をいかにつくりあげることができるかに全力が注がれています。ユーゴスラビアの爆撃は、この偽旗作戦がまんまと成功した典型例でした。だからこそアメリカは、ピルジャー記者が言うように、これをモデルにして、次々と新たな侵略戦争に乗りだしていったのでした。

 しかし、いま極めて興味ある現象が生まれています。というのは2001年の「911事件」が「内部工作」だった可能性をヨーロッパの科学者が、このたび初めて論文にしているからです。
「形勢は変わりつつある: 公式説明こそ、今や陰謀論」
http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2016/09/post-8d57.html
 また、この事件にサウジアラビアも関わっていたことや、ヒラリー女史が「クリントン財団」を受け皿として巨額の選挙資金をサウジアラビアから得ていることも、ウィキリークスで暴露されているからです。
 もうひとつ興味深いことは、アメリカの傀儡国家としてシリア転覆工作に荷担してきたトルコが、7月15日のクーデター未遂事件をきっかけとして、「これはアメリカが仕組んだものだ」として、オバマ政権がおこなってきた政権転覆工作のやりくちを暴露し始めたからです。
「グラハム・E・フラーよ、7月15日の晩、あなたはどこにいた?」
http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2016/09/e715-5af2.html
 ブラジルでも、「清廉潔白な現職大統領が、汚職まみれの副大統領や議員によって辞職に追い込まれる」、という前代未聞のクーデターが起き、ブラジル全土が混乱状態です。しかし、これもアメリカが裏で仕組んだ工作だったことは、暗黙の了解事項でしたが、アメリカの操り人形だと思われていたトルコのエルドアン大統領が、「アメリカによるクーデター」を大声で叫び始めたのですから、実に興味ある展開と言うべきでしょう。

 それはともかく、アメリカは戦争を起こすためには手段を選びません。ですから中国との戦争についても、「どのような口実を用意するか」「どのような偽旗事件を捏造するか」を、私たちは注意深く見守らねばならないでしょう。それが「元ユーゴスラビア大統領ミロシェヴィッチへの無罪判決」から私たちが学ばなければならないことだと思うのです。


<註> トルコのクーデター未遂事件は、エルドアン大統領がアメリカの言いつけもあってロシアの戦闘機を撃墜したりしながら、イスラム原理主義集団ISISを裏で支援してきたのですが、それが行き詰まってきてロシアに急接近し始めたことが背景になっていると言われています。いま安倍政権も、アメリカの言いつけにしたがって中国との戦争準備にいそしむ一方で、最近はロシアにも急接近し始めています。トルコの例を見ると、安倍首相もエルドアン大統領と同じ軌跡をたどらないとは、誰も保証できないでしょう。


核戦争を煽り立てる大手メディア――元ユーゴスラビア大統領ミロシェヴィッチへの無罪判決は何を語っているか(上)

国際教育(2016/08/28)、ジョン・ピルジャー、国際司法裁判所、スロボダン・ミロシェヴィッチ、欧州最後の社会主義国家、アメリカNATO軍によるユーゴ爆撃・解体

元ユーゴスラビア大統領スロボダン・ミロシェヴィッチ(1996年)
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3月24日は悲劇の日。十字架に磔にされたユーゴスラビア
http://jp.sputniknews.com/europe/20160324/1839131.html
磔にされたユーゴ

磔にされたユーゴ2

 前回のブログを書いてから既に2週間が経ってしまいました。しかし今の私は、帯状疱疹の後遺症に耐えながら、11月末刊行予定の『英語アクティブラーニング「寺島メソッド」』(仮題)の監修に追われていて、ブログに手を出すゆとりが全くありませんでした。先日やっと最終校を明石書店に送ることができ、その初校が届くまでの隙間を使って、ようやく今このブログを書くことができそうです。


 旧ユーゴスラビアのスロボダン・ミロシェヴィッチ元大統領に対し、ハーグの国際司法裁判所は無罪判決を下しました。先に元大統領は、スレブニッツァでの大量虐殺に責任があるとされていました。判決が出たのは、今年2016年3月24日のことでした。
 日本の大手メディアはもちろんのこと、欧米の新聞雑誌はどれ一つとっても、このことについて触れませんでした。恥ずかしながら私が、この事実を知ったのは、「Sputnik日本」による下記の記事(2016年08月18日)を読んだときでした。

*空爆されたユーゴの元大統領に無罪判決、欧米の指導者達は裁かれるべきではないのか?
http://jp.sputniknews.com/politics/20160818/2656715.html

 この記事を読んだときは、いつかこの問題をブログで紹介したとは思っていましたが、忙しさに紛れて現在に至っていました。
 しかし今回どうしてもこの判決を取りあげたいと思ったのは、イギリス在住の世界的に有名な独立記者ジョン・ピルジャー氏の下記論考(RT、23 Aug, 2016)を読んだからでした。

Provoking nuclear war by media – John Pilger
「核戦争を煽(あお)る大手メディア」

https://www.rt.com/op-edge/356846-provoking-nuclear-war-media/

 ハーグの国際司法裁判所は、「ミロシェヴィッチ元大統領が有罪であるとの証拠は不十分だ」としたのですが、世界中のどの政府からも、どの大手メディア(たとえばBBCやCNN)からも、いかなる公式声明も出されませんでした。
 大手マスコミが、ここまで沈黙していることは、きわめて奇妙です。なぜならそれは、爆弾が爆発したような効果を作り出すニュースのはずだったからです。しかし逆にそれが分かっているからこそ沈黙した――これがピルジャー氏の意見でした。ピルジャー氏はさらに次のように述べています。
 「これまで西側のマスコミは、すべて例外なく、満場一致で彼を侮辱してきた。『バルカンの屠刹人』と呼んだり、ひどいものは元イギリス首相トニー・ブレアのようにヒトラーと比べたりした。」
 「そして彼は、無罪判決を待たずに刑務所の中で、心臓発作で亡くなった。アメリカがでっち上げた国際裁判で、ミロシェヴィッチ氏は、証拠不十分のまま刑務所で5年間過ごした。しかも心臓の手術を拒否され、病状は悪くなる一方だった」
 「あとでウィキリークスによって暴露されたところによると、アメリカ政府はミロシェビッチ氏の病状を監視し、秘密にし続けた。心臓手術をしていれば、彼は生き延びて無罪判決を迎えることができただろう」
 「無罪判決のあと西側のリーダー達はみな、少なくとも謝罪すべきだったし、そうでなければ国際戦争犯罪人法廷の被告人席に座るべきだった。ナチスを裁いたニュルンベルク裁判では、侵略の罪・人道に対する罪こそ最悪の戦争犯罪とされているからだ」

 調べてみると、ミロシェヴィッチ元大統領にたいする無罪判決は、恥ずべきことに、他の被告であるラドヴァン・カラジチ氏にたいする判決文の末尾近くに埋め込まれていただけなのでした。
*元セルビア人指導者カラジチに禁固40年の判決
http://jp.sputniknews.com/life/20160325/1839958.html
 上記の記事は調べてみると、「Sputnik日本」によって既に2016年3月25日に報道されていたのですが、ここではミロシェヴィッチ元大統領にたいする無罪判決についてふれていません。
 先述のとおり、「Sputnik日本」がミロシェビチ無罪判決を報じたのは下記の記事(8月18日)でしたから、3月25日の時点では、スプートニク自身が「カラジチ氏にたいする判決文の末尾近くに埋め込まれていた無罪判決」に気づかなかったのかもしれません。

*空爆されたユーゴの元大統領に無罪判決、欧米の指導者達は裁かれるべきではないのか?
http://jp.sputniknews.com/politics/20160818/2656715.html

 このような判決文の書き方自体が、この国際司法裁判所なるものがいかにアメリカの傀儡であったかを象徴的に示すものでした。ピルジャー氏は前記の論考で、これについて次のように述べています。
 

ミロシェヴィッチは、有罪判決を受けたボスニア-セルビアの指導者ラドヴァン・カラジチと共謀していたどころか、全く逆だった。
 ミロシェヴィッチは、実際は「民族浄化を糾弾し」、カラジチに反対してユーゴスラビア解体を阻止しようと努力していた。このような事実は、昨年の2月に出された2590頁にも及ぶ判決文の末尾近くに埋め込まれていたのだが、これはNATOによるこれまでの宣伝扇動の嘘つきぶりをさらに暴露するものとなった。彼らは世界に嘘をばらまきながら、1999年にセルビアでおこなわれたNATOによる不法な虐殺を正当化してきた。
 民族浄化・世界最悪の犯罪を犯したとして告発されたミロシェヴィッチの無罪判決は、報道の大見出しを飾ることはなかった。BBCもCNNもこれを報道せず無視を決め込んだ。ガーディアン紙はしぶしぶと短い記事を載せた。権力に迎合するメディアが、無罪判決を公的に認めることは全くまれで、普通は抑圧し闇にほうむるのが常だ。それはよく理解できることだが、いずれにしてもこのことは、世界の支配者がいかに世界を支配しているかを語って余りある。



 こうして2016年3月24日はユーゴスラビアにとっては悲劇の日となりました。では十字架に磔(はりつけ)にされたユーゴスラビアは、アメリカが主導するNATO軍によって、どのような攻撃にさらされたのでしょうか。先述の「Sputnik日本」(2016年03月24日)は、その概略を次のように説明しています。
 

今から17年前、コソボでの人道的大惨事の防止という名目の下、ユーゴスラビアでNATO軍による空爆が始まった。作戦は、国連安全保障理事会のしかるべき承認を受けずに行われ、前例となった。
 複数の情報によると、空爆から約3か月間でおよそ4000人が死亡した。その中には約90人の子供も含まれていた。軍人も一般市民もNATOの空爆を逃れることはできなかった。例えばNATOの航空機は難民の車列を誤爆した。
 このような「ミス」は、あまりにもたくさんあった。まずは戦略的施設の破壊を使命としたミサイルが、よく「そこではない場所」に命中した。
 爆撃は、国に数百億ドルと推定される被害をもたらした。数多くの産業施設に加え、およそ40の病院や幼稚園、約70の学校が破壊されたり損傷を受けた。
 ユーゴスラビアには少なくとも3万1000発の劣化ウラン弾が発射され、それにより現在一部の地域では放射能レベルが基準値より30倍高くなっており、人間の健康にネガティブな影響を与えている。
「3月24日は悲劇の日。十字架に磔にされたユーゴスラビア」
http://jp.sputniknews.com/europe/20160324/1839131.html


 このNATO軍によるユーゴスラビア爆撃を先導したのは、当時のアメリカ大統領クリントンとイギリス首相ブレアでした。このとき躊躇していたクリントンを爆撃に踏み切らせたのはヒラリー夫人だったと言われています。
 さて1991年2月にフランスのランブイエで、セルビア側とアルバニア側との和平交渉がおこなわれましたが、そのとき登場したのがオルブライト女史でした。クリントンが今まで「軟弱」だった国務長官をタカ派のオルブライトにすげ替えたのも、ヒラリー夫人の助言によるものだとされています。
 さてピルジャー氏の前記論考によれば、オルブライトの提案は「まともな国家指導者ならとても受け入れることのできないもの」でした。それはピルジャー氏によれば次のようなものでした。
 

ユーゴスラビアにNATO軍(つまりアメリカ軍)を駐留させること、その占領軍は「治外法権」で犯罪を犯しても「ユーゴスラビアの法律では裁かれない」とすること、ユーゴスラビアに新自由主義的な「自由市場」を強制導入すること、そして、これらの「提案」を飲まなければ爆撃が開始される。


 これらの要求をみればアメリカ=NATO軍がユーゴスラビアで何を狙っていたかは一目瞭然ではないでしょうか。駐留軍が「治外法権」で犯罪を犯しても「ユーゴスラビアの法律では裁かれない」という要求は今の日本、とりわけ沖縄の事態・状況を彷彿とさせるものです。
 ピルジャー氏によれば、これらの要求は和平交渉の「付属文書B」に書かれていたものですが、「メディアが意図的の読み落としたものか、それとも検閲削除によるものか、いずれにしても報道されなかった」そうです。
 それはともかく、このような要求・提案では交渉が決裂するのも当然で、こうして1999年2月24日、NATOによる爆撃が始まります。
 ピルジャー氏によれば、「その目的は、ヨーロッパで最後まで残っていた『社会主義』国家ユーゴを押しつぶすこと」でした。
 爆撃が終わったあと、大虐殺・民族浄化がおこなわれたとするコソボに、世界各国から警察チームが入り調査を始めました。その結果をピルジャー氏は次のように述べています。
 

FBIは大量の死体が埋められているとされる墓場を何一つ発見することなく帰国した。スペインの法医学団が調査しても同じ結果だった。法医学団の団長は怒り狂って叫んだ。「これは戦争挑発マシーンによる一人芝居だ」と。
 こうしてコソボにおける調査結果は死者2788人とされたが、この中には双方の戦闘員だけではなく、NATOが支援しているコソボ解放戦線(KLF)によって殺されたセルビア人や遊牧民ロマ人も含まれていた。もちろんジェノサイド(集団虐殺)などはなかった。
 要するにNATOによる攻撃は詐欺であり戦争犯罪であった。(中略)国際司法裁判所の検察官カーラ・デル・ポンテは、2008年に、NATOの犯罪を調査しようとしたが圧力がかかり、中止のやむなきに至ったことを吐露した。



<註> ここで注目しておきたいのは、ユーゴスラビアのコソボ紛争はセルビア人とアルバニア人との内紛であるかのように大手メディアでは語られていますが、実はこの内紛・内戦で残虐な暴力をふるったのは主としてKLFコソボ解放戦線(「KLAコソボ解放軍」とも呼ばれる)だったということです。これは、CIAによって養成されアフガニスタンでソ連軍と戦ったと同じ、イスラム原理主義の集団でした。これは、チョムスキー『アメリカの「人道的」軍事主義――コソボの教訓』(現代企画室、2002)を読んで初めて知ったことでした。



 こうしてピルジャー氏によれば、ユーゴスラビアの爆撃と解体は、その後に続くワシントン政府の侵略作戦モデルとなりました。それを氏は次のように述べています。

これは、その後に続いたワシントン政府による各国侵略のモデルとなった。アフガニスタン、イラク、リビア、そして(ISISを使った裏工作による)シリアへの侵略である。これらはすべてナチスを裁いたニュルンベルグ裁判の基準で言えば「最悪の犯罪」だ。しかもこれらはすべてメディアによる大々的な宣伝扇動に依拠していた。俗悪な大衆紙がそのような扇動をするのはまだしも、ここで効果的だったのは信頼すべき高級紙、しばしばレベラルだと評される報道機関が果たした役割だった。


 ピルジャー氏は、このような状況が続けば、いつか必ず核戦争になると警告しています。アメリカは国内で人種問題だけでなく経済危機や深刻な貧富の格差問題をかかえていますから、世界各国に内戦を広げ、武器を売りまくる以外に生きる道を失いつつあります。
 だからこそ、大手メディアを駆り立てながら、次々と新しい敵をつくりだして世界各地に戦争を広げていくわけです。
 アフガニスタンではビン・ラディンを、イラクではサダム・フセインを、リビアではカダフィ大佐を、そしてシリアではアサド大統領を悪魔化して、戦争を遂行しました。そして今まさに悪魔化されつつあるのが、ロシアのプーチンであり、中国・北朝鮮です。
 しかしシリアの体制転覆は、プーチン大統領の働きでなかなか前進しません。ですから、今後ますますプーチン大統領の悪魔化はそのトーンを高めていくでしょう。とりわけヒラリー女史が大統領選挙でトランプ氏に苦戦を強いられているだけに、プーチン大統領の悪魔化は度を過ぎたものになりつつあります。
 その象徴が「ロシアが国家ぐるみでドーピングをおこなっている」「共和党のトランプ候補はプーチンの回し者だ」という攻撃になって表れているわけですが、民主党の幹部が組織ぐるみでサンダース氏を追い落とす戦略を立てていたことがウィキリークスによって暴露されてからは、「この民主党本部に対するハッカー攻撃はロシアによる国家ぐるみの犯罪行為だ」という攻撃すら始めています。
 こうしてヒラリー女史を次の大統領にするために、オバマ大統領を初めとする民主党幹部はなりふりかまわぬ攻撃を始めていますから、どうしてもトランプ氏に対する勝算がつかない場合には、謀略・偽旗事件を起こして戦争をおこすということも充分に考えられます。前回のブログで紹介した「キューバに対するノースウッズ作戦」やベトナム戦争時におこなわれた「トンキン湾事件」はまさに、そのような偽旗作戦の典型例でした。
 アメリカは、西ではロシアに対する包囲網を縮め、東では中国にたいする包囲網を強化して、隙あれば戦争に持ち込みたいと、虎視眈々と狙っているわけですが、ロシアも中国も、そのような脅迫に怯(ひる)むようすは見えません。しかもアメリカは通常兵器ではロシアに勝てないことがシリアにおけるロシア空軍の働きで見せつけられていますから、残る手段は核兵器しかありません。
 ピルジャー氏が恐れているのも、まさにこのことでした。そして、このときも大きな働きをするのが大手メディアです。それは「ロシアが国家ぐるみでドーピングをおこなっている」という宣伝に、民主的陣営に属すると思っているはずの教師や知識人すらも、容易にのせられている現実が、ピルジャー氏の恐れを裏書きしています。
 私たちが大手メディアの宣伝扇動(プロパガンダ)を見抜く目をもたないかぎり、戦争は簡単に起こすことが可能なのです。コソボ紛争と元ユーゴスラビア大統領ミロシェヴィッチへの無罪判決は、まさにこのことを私たちに教えてくれているのではないでしょうか。


<註1> ここで紹介したピルジャー論文は、ユーゴスラビアに関する前半部分だけで、いま差し迫っている核戦争(ロシア←→アメリカ&NATO、あるいは中国←→アメリカ&日本自衛隊)についてではありません。しかしピルジャー論文の本旨はミロシェビッチの獄死を教訓として、目前に迫っている核戦争をいかにくい止めるかにありました。とはいえ残念ながら今の私には下記論文のすべてを翻訳・紹介しているゆとりがありません。
*Provoking nuclear war by media – John Pilger

<註2> 民主党のヒラリー女史にも共和党のトランプ氏にも飽き足りない民衆の票が、いま緑の党から立候補している女医ジル・スタイン氏へと大きく流れつつあります。とりわけ財界・金融界だけでなくイスラエルやサウジアラビアから巨額の選挙資金がヒラリー女史に流れ込んでいることが明らかになり、しかもサンダース氏がヒラリー女史との闘いを諦めて「ヒラリー候補こそ最良の大統領候補」と言い始めてからは、この流れはいっそう加速しました。ジル・スタイン女史の次の主張は、まさに私が言いたかったことをズバリ突いてくれています。
* 「アメリカ外交政策は、兵器販売用マーケティング戦略」―ジル・スタイン

<註3> ピルジャー氏が言うように、西で核戦争への緊張を高めているのが「ロシア←→アメリカ&NATO」の関係だとすれば、東で核戦争への緊張を高めているのが「中国・北朝鮮←→アメリカ&日本自衛隊」の関係でしょう。この東におけるNATO軍の役割を果たすべく、アメリカにたいして精勤を励んでいるのが安倍政権です。戦争ができる国家を目指して機密保護法をつくり、解釈改憲(=壊憲)で集団的自衛権を認めてしまった安倍政権は、いまアメリカの指示に従い、中国との戦争をめざして「共謀罪」「さらなる壊憲=緊急事態条項」へとまっしぐらです。いつ自爆するとも知れない原発「核爆弾」を全身に巻き付けている日本が、中国・北朝鮮を仮想敵国として戦争準備をしている姿は、狂気としか言いようがありません。



ロシアが国家ぐるみで「ドーピング」をしている!?――世界で進行していることの真相を突きとめるための武器を!

国際教育(2016/08/14)、ロシアのドーピング疑惑、「ノースウッズ作戦」、カストロ政権への転覆工作、ヒラリー女史のEメール問題、「英語読みのアメリカ知らず」


卒寿を迎えたカストロ
カストロ90歳
藤永茂「2016年8月13日、フィデル・カストロが卒寿(90歳)を迎えた」
http://blog.goo.ne.jp/goo1818sigeru/e/6f2af08e8d0530dc6d15807fd71a9ffa


 先日、やっと私の主宰する国際教育総合文化研究所の夏期セミナー(8月10-11日)が終わりました。
 あとで家人から聞いた話では、泊まっていたホテルのロビーで朝ご飯を食べる前にテレビを見ていたら、ブラジルで開かれていたオリンピックの体操競技のようすが放映されていたそうです。
 テレビ画面では鉄棒競技でロシア人の男性があまりにも素晴らしい演技をしていたので、家人は思わず「すてき!まるで体重がないみたい!!」と声を上げたら、そばにいた宿泊客から「どうせドーピングだろ。国家ぐるみでやっているんだから」という声が飛んできたそうです。
 家人はその声の勢いに思わず押されてしまって、その場では口をつぐんでしまいましたが、部屋に帰ってからセミナーの参加者にその話をしたところ、部屋にいたひとも少なからず同じ認識だったので、二度びっくりしたとのことでした。
 しかし、NHKを初めとして日本の大手メディアは「ロシアによる国家ぐるみのドーピング」を大々的に宣伝しているのですから、これも無理からぬことでしょう。とはいえ、このセミナーの参加者は平均的日本人ではなく現職または退職した英語教師でしたから、考えようによっては、これは深刻な事態とも言えるわけです。
 というのは、英語教師は日頃から生徒に「英語は国際語だから英語さえ知っていれば世界のことが分かる」と言っているのですが、実際には「英語読みのアメリカ知らず」であることが珍しくないからです。
 今度の「ロシアによる国家ぐるみのドーピング」についても次のような事実をふまえて考えれば、これもまたロシア包囲網を厳しくするためのアメリカによる宣伝工作に過ぎないのではないかと疑ってみることもできるはずなのですが、現場教師は授業指導と生活指導で毎日を追いまくられているので、下記のような事実を知る余裕を与えられていません。

*ウクライナの政変(2014年2月)は、今では多くの東欧における「色(カラー)革命」と同じく、アメリカが裏で資金や戦術指導をしたクーデターだった。
*クリミヤのロシア編入も、ロシア軍が軍事侵攻して強制的におこなわれたという宣伝が一方的になされ、クリミヤ人による国民投票についての報道は皆無に近い。
*アサド大統領は自国民を化学兵器で殺傷しているとされ、今にもアメリカ軍によるシリア攻撃が開始されそうだったが、ロシアによって逆の事実が暴露された。
*化学兵器を使ったのは湾岸の王制独裁国家に支援されたイスラム原理主義者集団(これを裏で支援したのがEUとアメリカ)だったことも今では多くの事実で明らかにされている。
*アメリカは「シリアにおける原理主義者集団と戦っている」と宣伝してきたが勢力は拡大する一方だった。しかしロシアがシリア政府の要請で軍事行動を取り始めると一気に戦局は逆転し原理主義集団はリビアなどに逃げ出し始めた。
*このようなロシアの動きにたいしてアメリカは東欧諸国にミサイル基地を次々と建設しただけでなく、今や東欧諸国とロシアとの国境沿いにはNATO軍が終結し一触即発の緊張した状況にある。

 これらについては本ブログで何度も指摘してきたので、それを裏付ける事実については割愛させていただきます。それはともかく、現場教師は授業指導と生活指導で毎日を追いまくられているので、上記のような事実を知る余裕を与えられていません。
 しかし、もうひとつの問題は、現在の英語教育が「会話一辺倒」に流れているため、英語教師の読解力がどんどん落ちていることです。
 一般の日本人ならいざ知らず、英語教師であればインターネットを使って検索し、大手メディアでは決して報道されないことを自力で知ることができるからです。たとえばGlobal Researchという私の愛用しているサイトで「オリンピックのドーピング問題」を調べてみると、すぐに次のような記事が見つかりました。

*Washington Is Politicizing The Olympics: Ongoing Attempts to Ban Russia. Geopolitical Implications
By Dr. Paul Craig Roberts(Global Research, July 19, 2016、Paul Craig Roberts 17 July 2016)
http://www.globalresearch.ca/washington-is-politicizing-the-olympics-ongoing-attempts-to-ban-russia-geopolitical-implications/5536309

*Washington Fraud and Geopolitics: Excluding Russia from the Olympics:Appeal to All Freethinking Sovereign Non-aligned Nations: Boycott the Olympics in Solidarity with Russian Athletes
By Peter Koenig(Global Research, July 23, 2016)

http://www.globalresearch.ca/washington-fraud-and-geopolitics-excluding-russia-from-the-olympics/5537439

 しかし残念なことに、今の英語教師は前述のように「英語で授業」という文科省の方針で、読解力よりも会話力を要求され、英語の教科書も会話一辺倒になりつつありますから、一般人はもとより英語教師でさえ、上記のようなサイトを検索し、自分の力で事実を検証するちからを失い始めているのです。
 事実を知られては困る権力者にとってこれほど好都合なことはないでしょう。
 とはいえ幸いなことに、「ロシアによる国家ぐるみのドーピング」については、調べてみると、「マスコミに載らない海外記事」というサイトに、私が見つけたふたつの記事が、そのまま翻訳されて載っていることが分かりました。

*またしても、オリンピックを政治問題化するアメリカ
Paul Craig Roberts(2016年7月17日)
http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2016/07/post-5722.html
*アメリカ政府の欺瞞と地政学: オリンピックからのロシア排除―全ての自由な考え方の主権ある非同盟諸国に対する、ロシア人運動選手と連帯してオリンピック・ボイコットの呼びかけ
Peter Koenig(Global Research、2016年7月23日)
http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2016/07/post-1666.html

 さらに調べてみると、さいきん私の手元に届いた『アジア記者クラブ通信』8月号28頁にも下記のような翻訳記事が載っていました。
*欧米の反露ヒステリック頂点に:オリンピックの存立を揺るがすロシアのドーピング「疑惑」
『アジア記者クラブ通信』8月号28頁

 しかし、よく調べてみると題名が「欧米の反露ヒステリック頂点に:オリンピックの存立を揺るがすロシアのドーピング疑惑」となっていますが、内容は上記のPeter Koening論文「アメリカ政府の欺瞞と地政学: オリンピックからのロシア排除」と全く同じものであることが分かりました。
 このように調べてみれば、日本の大手メディアでは決して報道しないことも、読解力さえあれば、私たちは知ることができるわけです。憶えてもすぐ忘れるような会話のフレーズを膨大に暗記させられる教育がいかにエネルギーの無駄遣いであり有害無益か、それをもういちど明確に示すのが、「ロシアのドーピング疑惑」の報道ではなかったのかと思うのです。
 いまアメリカでは民主党の大統領候補であるヒラリー・クリントンが、共和党の大統領候補であるドナルド・トランプにたいして非常な苦戦を強いられています。というのはヒラリー女史が国務長官室で私的に使っていたメールがウィキリークスによって暴露され、民主党がいかに選挙で不正を働き、党内の対抗馬であったサンダース氏の運動を抑える動きをしてきたかが暴露され始めたからです。
 またヒラリー女史の国務長官時代に嘘の口実でリビアの政権転覆が企てられ、その結果カダフィ大佐が惨殺される至ったこと、またリビアのアメリカ大使館もイスラム原理主義集団の基地として使われていた可能性があり、その結果そこに勤務していた大使までも殺されることになったことも、ウィキリークスによって暴露されています。
 ところが、いまヒラリー女史は、この私的メールの暴露はロシアによる国家ぐるみのハッキングによるものだという新しいロシア攻撃すら始めています。そして「トランプはプーチンの回し者だ」というトランプ叩きに熱中する始末です。これは大統領選でいかにヒラリー女史が追い詰められているかを示すもうひとつの事例ではないでしょうか。
 ですから「ロシアのドーピング疑惑」という問題は、このような文脈においてみて初めて、ことの真相が見えてきます。
 逆に言えば、私が述べてきたような中東情勢やウクライナ情勢を知らないかぎり、NHKを初めとする大手メディアの報道に翻弄されるだけになってしまいます。英語学習にとって読解力がいかに重要かを示す好例ではないでしょうか。

 ここまで書いてきたとき、かつて読んだ藤永茂さんのブログ「私の闇の奥」を思い出しましたので、以下に紹介します。
 私の敬愛する物理化学者はいま90歳を超えようとしていますが、その藤永さんは、2016年5月23日のブログで、英語の読解力について次のように書いていたのです。

最近、私の筆が滞りがちなので、それを助けてやろうというお気持ちからでしょう、桜井元さんという方から、中身のつまったコメントをいくつか続けて頂きました。たいへん読みがいのある内容なので、その一つをここに転載します。お読みください。
 ■「ノースウッズ作戦」 (桜井元) 藤永先生がご紹介くださった諸々のネット情報をじっくり読んでみました。
 まず、ウクライナ上空での民間機撃墜に関するもののなかに、1962年に米国軍部がキューバに対して極秘裏に計画した「ノースウッズ作戦(Operation Northwoods)」のことが触れられていました。情報公開された同作戦の計画メモを National Security Archiveのサイト上で読むことができました。
http://nsarchive.gwu.edu/news/20010430/northwoods.pdf
 キューバへの軍事侵攻を正当化するための偽旗作戦で、そこには様々な謀略が記されていました。
 「グアンタナモ基地への攻撃」、「船舶の沈没」、「航空機のハイジャック」、「民間機の撃墜」、「米軍機の撃墜」、「米国を目指す亡命キューバ人を乗せた船の沈没」、「米国内のキューバ人を狙ったテロ」、「フロリダ州のほか首都ワシントンにおけるテロ」、「カリブ諸国での地下活動」などなど。
 これらを自作自演し、すべてをキューバのカストロ政権の仕業として非難し、国内世論や国際世論を味方につけ、軍事攻撃の正当化根拠にしていくというものでした。
 F86戦闘機をミグ戦闘機のように偽装する方法や、撃墜されたと見せかけるための民間機のすりかえの方法をはじめ、パイロットがニセの遭難信号を発信したり、当該海域に機体の残骸をまいたり、ニセの葬式を行うこと等々まで、細かい謀略の手法が念入りに書かれていて、これらが米国統合参謀本部の幹部の間で合議され認可されたということに戦慄を覚えます。
 国際法をここまで無視する米国こそ「ごろつき国家」「ならず者国家」の称号にふさわしく、さらに、ここまで統治機構が腐敗している米国こそ「失敗国家」の称号にふさわしいと言えるのではないでしょうか。■(桜井さんのコメント終わり)
 私は5年ほど前に、『気楽に英文記事を読む習慣』と題するブログ記事の冒頭で次のように書いています。
 「前回の終りに掲げた英文記事の翻訳紹介を怠りましたら、桜井元さんが、前回のブログへのコメントの形で、その内容をまことに的確適切にまとめて紹介して下さいました。桜井さんはその中で「英和辞書を引きながら、わからない単語や表現は読み飛ばしつつ、なんとか大意はつかめたと思います」と申しておられますが、これは謙遜のお言葉でしょう。
 しかし、ここには私たちが英文記事を気楽に読むためのコツが述べられています。あとは慣れの問題です。とにかく、うるさがらず、好奇心を持って、ネット上に溢れる英文記事に目を通してみる習慣を身につけようではありませんか。すこし努力しながら続けているうちに、頭の中の英語の語彙は殆ど増大していないのに、いつの間にか、英文記事の内容が以前より随分と楽に読み取れるようになります。言葉というものに備わっている不思議さです。」
 私の勝手な、そして、おそらく失礼な想像ですが、桜井さんは、今は、5年前とは比べものにならないような気軽さで、あれこれインターネット上の情報源を読み漁りしておられるのでしょう。世界のマスメディアがほとんど完全にプロパガンダの道具と化してしまった今、我々一般大衆が世界で進行していることの真相を嗅ぎつけるためには、英文記事を忌避せずに読みこなすことが大変必要になっていると思います。


 というのは、日本のような環境では会話のフレーズをいくら憶えても使う機会がほとんどありませんから憶えてもすぐ忘れてしまいます。私の言う「ザルみず効果」です。ザルにいくら水を入れても溜まらないからです。
 他方、読解力は鍛えれば着実に向上し、直読直解できるようなれば、いざ必要になったとき即座に会話力に転換できます。直読直解は直聴直解に直結しているからです。
 と同時に読解力は、上記の藤永茂さんが説明されているように、「私たち一般大衆が世界で進行していることの真相を嗅ぎつけるため」の強力な武器になっているのです。
 だからこそ政府・文科省は、「国際人」にするためと称して、日本人を「ザルみず効果」に終わる会話づけにしようとしているのではないか――これが最近、私が抱いている強い疑いです。
 何度も言いますが、一般大衆が自力で英語を読めるようになり、アメリカが展開している「ノースウッズ作戦」のような恐ろしい計画を知るようになってもらったら困るからです。

<註1>
 もっと詳しく「ノースウッズ作戦」について知りたい方は「櫻井ジャーナル」の下記記事を御覧ください。
http://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201302080000/(2013.02.09)
http://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201511190000/(2015.11.19)

<註2>
 ロシアのドーピング疑惑に関する翻訳記事は、先述のとおり、『アジア記者クラブ通信』8月号28頁、および「マスコミに載らない海外記事」(2016年7月25日)の二つに載っています。
 しかし和訳の仕方は微妙に違っていて、しかも双方とも必ずしも分かりやすいとは言えません。一方の良いところが他方では悪訳になっています。
 時間とゆとりがある方は、この双方を読み比べて、自分なりの完成版をつくってみられたらいかがでしょうか。自分の英語力・読解力を高める絶好の教材になるのではないかと思うからです。
*アメリカ政府の欺瞞と地政学: オリンピックからのロシア排除
http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2016/07/post-1666.html
*欧米の反露ヒステリック頂点に:オリンピックの存立を揺るがすロシアのドーピング「疑惑」
『アジア記者クラブ通信』8月号28頁 (連絡先:apc@cup.com、ホームページ:http://apc.cup.com/


オバマ大統領の広島訪問、物理化学者・藤永茂氏いわく「稀代のコン・マン=詐欺師」

国際教育(2016/06/30)、Brexit(イギリスのEU離脱)、死の商人Merchant of Death、コン・マン(Confidence Man=詐欺師)、オバマとは誰かWho is Obama?

 
 前回のブログ(2018/06/18)を書いてから既に10日以上も経っているのですが、親戚縁者がすべて金沢とその近隣に住んでいるので、義母の「49日」の法要のため金曜日に金沢に出かけ、26日に岐阜へ戻ってきました。
 義母の葬儀のあと、これまでの疲れが出たのか家内も私も1週間ほど寝込んでしまいました。そのあと何とか起き出して金沢でおこなう「49日」の法要の準備に追われ、やっと岐阜に戻ってきたものの、また疲れが出て仕事ができず、今に至ってしまいました。
 そういうわけで、「日本の医療や病院も『死の商人』の一角を占めているのではないか」という点について書きたいことは山積しているのですが、そうこうしているうちに、イギリスがEUから離脱して、世界中が騒然とし始めました。
 大手メディアはイギリスのEU離脱のマイナス面だけを取りあげ、EUが各国から通貨発行権を奪い緊縮財政(=貧困・貧富の格差拡大)のみを各国に押しつけてきたことにたいする怒り不満が現在の事態をつくりだしたことに全くふれていません。
 大量の移民がEUになだれ込んできたのもEUがアメリカやNATO軍と一体になって中東の政権転覆を重ねてきたことの結果ですから、この点にたいする怒り不満も、今回のEU離脱の底流に流れています。
 ですから、「死の商人」の一角を占めているのは日本の医療や病院どころか、EUやNATO軍こそが巨大な「死の商人」とも言えるわけで、その先頭に立っているのがオバマ大統領でした。
 ところが、オバマ大統領がアメリカ史上で初めて広島を訪れた現職大統領だということで、あたかも「核廃絶を決意する平和の使者」であるかのような論調が、ふたたび日本の大手メディアを席巻しました。
 このような論調にたいして私は、5月21日づけのブログで「オバマとは誰か―『アメリカ大統領による史上初の広島訪問』を考える 」と題して批判的視点を提起しておきました
 しかし最近、大手メデイアだけでなく、池上彰氏(東京工業大学特命教授)のような識者までもが、オバマ氏を絶賛する記事を、「大岡山通信」というブログで書いていることを知りました。
「原爆の記憶世界に刻む オバマ演説を考える」
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO03057690R00C16A6000000/(2016/6/6)
 他方、安倍総理の地元で孤軍奮闘している地方紙『長周新聞』が、私のブログを取りあげて掲載してくれ、しかもその反響まで送ってくれました。そこで池上氏にたいする反論も兼ねて、その反響および掲載紙を改めて以下で紹介させていただきます。

寺島隆吉先生

「オバマとは誰か」に鋭い反応がかえっています。

オバマ訪問で厳戒態勢がとられた広島では、マスコミを動員し市民を排除した茶番劇に、怒りが渦巻くなか、「Who is Obama?」が感動的に受け止められました。 それは、「オバマが、良いことをしていないとわかっていても、このように事実 を論理的にあげられると、やっぱりそうだったと確信になる」(被爆者)との意見に代表されます。

「オバマは、資料館に入っただけで中を見ていない。広島市民のことをなにも考 えていない。抽象的な演説で煙に巻いたが、実際は核兵器の削減を一番やらず、使用するための新型核兵器の開発を一番熱心にやった大統領だ」と、怒りを ぶつける被爆者(長周読者)もいます。

このように「オバマは誰か」が、市民から浮き上がった被爆者団体を抱き込んでオバマを美化することに苦々しい思いでいる大多数の広島市民の心情にピタッと合い励ましたと実感します。

下関でも読者から、「(文章の)題名がいい」「オバマは調子のいいことをいうが、悪いことばかりしてきたではないか」という意見が普遍的に出されています。集金の際、「Who is Obama?」と茶化しながら、お金を出す人もいました。ある種の流行語になりそうです。


  長周新聞20160525+「オバマとは誰か」上_convert_20160630165425
長周新聞20160525+「オバマとは誰か」下_convert_20160630170627



<註1> 長周新聞のJPEG版は非常に読みにくいので、本文をもういちど読んでみたい方は下記のブログ版または新聞HP版を参照していただければ幸いです。
http://tacktaka.blog.fc2.com/blog-entry-261.html
http://www.h5.dion.ne.jp/~chosyu/obamatohadareka.html

<註2> 死の商人オバマ大統領、犯罪大国アメリカについては、物理化学者・藤永茂氏のブログ「私の闇の奥」に次のような、短いけれど実に鋭い分析があります。
「いよいよエリトリアの番か?」
http://blog.goo.ne.jp/goo1818sigeru/e/6ae0b2383b522ac49a82832c607d43ee

<註3> 池上彰氏については、氏がNHKテレビ『週刊こどもニュース』で、ニュースに詳しい「お父さん」役として編集長兼キャスターを担当していた頃(1994年から退職する2005年まで)から注目していたのですが、その子ども番組で「拉致・拷問・暗殺を繰りかえしてきたイスラエルの諜報機関モサド」を擁護する発言をしているのを見てから、私の氏への信頼は崩壊しました。ウィキペディアによれば、このような人物が下記のような肩書きで、日本の「識者」の一翼を担っているのです。
*東京工業大学教授
名城大学教授
信州大学特任教授
京都造形芸術大学客員教授
愛知学院大学特任教授
特定非営利活動法人日本ニュース時事能力検定協会理事




オバマとは誰か―「アメリカ大統領による史上初の広島訪問」を考える

国際教育(2016/05/20)、ジョージ・オーウェル、小説『1984』 「戦争は平和、自由は隷属、無知はちから」 War is Peace, Freedom is Slavery, Ignorance is Strength」


小説『1984年』    小説『1984』


 オバマ大統領が、広島を現役のアメリカ大統領として初めて訪問する予定だということで大手メディアの話題を呼んでいます。
 しかし、そこで論議されているのは「原爆投下を謝罪するか」だけで、今までオバマ氏が大統領として何をしてきたかではありません。大統領としてやってきたことを調べてみれば、彼が謝罪するはずがないことは明白なのに、あたかも広島訪問が画期的であるかのように議論されているのです。
 彼の経歴を調べてみれば、ずっと以前に「ノーベル平和賞」を返上すべき人物であり、このような「戦争犯罪人として国際刑事裁判所で裁かれてしかるべき人物」を広島訪問に招待することそのものが、原爆犠牲者にたいする侮辱であるはずなのに、そのことを指摘する大手メディアはほとんどありません。
 以下そのことを、もう少し詳しく検証してみることにします。その手始めにカウンターパンチというサイトに載っていた次の論文引用から始めたいと思います。

Thank You Barack Obama for Showing Us That Peace is War
by George Katsiaficas(CounterPunch、May 11, 2016)
http://www.counterpunch.org/2016/05/11/thank-you-barack-obama-for-showing-us-that-peace-is-war/

 この論文の著者ジョージ・カシアフィカスは、「平和は戦争であることを教えてくれてありがとう、オバマ」という皮肉たっぷりの題名をつけて、オバマ大統領の経歴を次のように見事な簡潔さでまとめています。
 

彼は世界の多くの場所で称賛されている。特にアフリカ諸国民の間では神のごとく崇拝されるまでになっている。
 ところが、イラクでの戦争を拡大しアフガニスタンでの戦争を引き延ばした事実にもかかわらず、彼は大統領就任初年にノーベル平和賞を受賞した。
 彼はウクライナでクーデターを起こしてネオナチ政権を支援し(2014)、東欧諸国のロシア国境近辺にNATO軍と攻撃的兵器を配備して緊張を高めた。
 またリビア政府を転覆して破綻国家を生み出すのに手を貸しただけでなく(2011)、シリアに全面戦争と大量難民をもたらし(2011~)、少なくとも25万人の国民が死亡した。
 さらに、ケニヤとエチオピアに金をやってソマリアを攻撃させ(2011)、サウジアラビアに爆弾を供給してイエメン国民を爆撃させた(2015~)。こうして、ここからも大量の難民と死者をうみだした。
 彼は、多くの中南米の困窮した人々に惜しみない支援を提供した国ベネズエラの転覆を画策した(2002、2015)。そのうえ、ホンジュラスでの右翼クーデターを指揮・監督し(2009)、ブラジルでは新自由主義政策をおしすすめる政治家連中にルセフ大統領を追放するようけしかけた(2016)。
 さらに、米軍の“基軸”をアジア重点とする政策転換により、第二次世界大戦中におこなった行為(特に10万人以上の女性を拉致し日本軍の慰安婦にしたこと)を決して謝罪しようとしない日本の、軍事的重要性をよみがえらせた。
 彼は、この「中国封じ込め政策」を推進するため韓国に日本政府と妥協するよう圧力をかけ、それと同時に中国近海を航空母艦で航海しながら挑発的な上空飛行をくりかえして中国を恫喝している。


 この著者は、ジョージ・オーウェルの小説『1984年』から、「戦争は平和だ、自由は隷属だ、無知はちからだ」という有名な標語を引用して、この論文を次のように書き始めていました。

何十年も前、ジョージ・オーウェルは、小説『1984年』で、「戦争は平和だ、自由は隷属だ、無知はちからだ」と警告した。オーウェルが考えていたことを、長年私はかいま見てきた。だが彼の予測が完全に正しかったと私が思えたのは、ようやく2016年になってからのことだ。そうしてくれてありがとう、バラク・オバマ。


 そして著者は、この論文を次のように結んでいます。

だから、バラク・オバマよ、平和が戦争であると我々全員に教えてくれてありがとう。戦犯行為の隠蔽に、マーチン・ルーサー・キングのマントを利用できたのは、あなただけだ。ジョージ・オーウェルの予言を実行・完成してくれて、本当にありがとう。


 まさにオバマ大統領にとって「戦争は平和、自由は隷属、無知はちから」だったのです。しかし世界中のひとは、ノーベル平和賞の受賞者であり黒人解放運動の指導者であったキング牧師とオバマ大統領を重ね合わせて、その幻影を彼に追い求めたのでした。
 そして大手メディアも、いまだにその幻影から脱却できないからこそ、オマバ氏が広島を訪問すると言っただけで画期的なことだという評価をくだしたのでしょう。また、だからこそ安倍政権も、参議院選挙を有利に導くための戦略として利用すべく、オバマ氏を強力に広島訪問へと招待したのではないでしょうか。

戦争は平和だ4bcae9db

 したがって「原爆投下への謝罪」など政府は初めから要求するはずもなかったのです。それどころか物理化学者・藤永茂氏(カナダのアルバータ大学理学部名誉教授)は、「私の闇の奥」という、知る人ぞ知る有名なブログで、次のように、「広島も長崎もオバマ大統領を進んで招致すべきではない」とすら述べています。

私見ですが、広島も長崎も、オバマ大統領を進んで招致すべきではありません。たとえ彼が何らかのギミック(gimmick=策略)で広島、長崎で原爆犠牲者慰霊のポーズをとったにしても、彼の脳裏に政治的な計算以外のものがあるはずがありません。彼には慰霊の資格がありません。「米国大統領の来訪そのものが、世界の反核運動の促進に、ひいては核廃絶に役立つ」という考えがあるとすれば、私はそれにも反対します。核廃絶を政治の場の問題として考えていては、核廃絶は達成できないでしょう。
http://blog.goo.ne.jp/goo1818sigeru/e/2b5a235ccfe0381efff9c46b06941419(2016-04-19)


 藤永氏が、上記のように述べたのには深い理由があります。
 第二次大戦中に原発開発計画で中心的な役割を果たした研究所にロス・アラモス国立研究所がありますが、アメリカの産軍共同体はブッシュ政権に対して、このロス・アラモス国立研究所および新しいプルトニウム“ピット”製造工場コンプレックスの増強を強く求めていました。
 しかし反対意見も根強く、足踏み状態が2007年、2008年と続いていました。それが、オバマ大統領の出現で、一挙に前に進んだからです。広島・長崎の原爆を製造したロス・アラモス研究所のあるニューメキシコ州の現地新聞によれば、オバマ大統領は2011年度の核兵器関係予算として70億ドルの増加を計上しています。
 こうして、オバマ氏の大盤振る舞いによって、ロス・アラモス国立研究所は、1944年以来最大の、22%の予算増加を見ることになりました。とりわけ、新しいプルトニウム“ピット”製造工場コンプレックスに対する出費は2倍以上にのぼり、今後10年間、新しい核兵器の生産に打ち込むことを明確に示しているのです。
 先に紹介した藤永氏の上記ブログでは、現地新聞『ナショナル・キャソリック・リポーター』という新聞(2010年2月9日)に、ジョン・ディア神父が次のように書いていることも紹介されています。  

ニューメキシコはこのニュースで沸き立っている。間もなく、このあたりのきびしい風景の中に、ピカピカに新しい、最高技術水準を誇るプルトニウム爆弾製造工場が立ち上げられるだろう。
 予算書類に署名し、このプロジェクトに祝福を与えたオバマ大統領は、一年前プラハで、核兵器なしの世界を目指す声明をしたその人だが、実のところ、彼の新しい予算をもってすれば、ロナルド・レーガン以来のどの大統領よりも核兵器の生産を増強することになるだろう。
 ここに、ジョージ・W・ブッシュさえも上回る偽善の一編がある。新しい核兵器施設のプランを立てる一方で、軍縮をうたい上げる。希望のヴィジョンを高く掲げるその舞台裏で、希望の死を確実のものとする。これぞ、ジョージ・オーウェル風の悪夢だ。


 藤永氏は上記の引用に続けて、「ノーベル平和賞を受賞することになったプラハ講演で、核廃絶を悲願としてきた日本人の心をメロメロにしてしまったバラク・オバマという人物が、政治家として「稀代の大嘘つき」「稀代のコン・マン」(コンフィデンス・マン=詐欺師)であることを、これほど冷徹な筆致で断定した文章は、ざらには見当たらないでしょう」と述べています。
 あの温厚な藤永氏が、オバマ氏のことを「稀代の大嘘つき」「稀代のコン・マン」と述べていて驚かされましたが、それほど藤永氏の怒りが大きかったことを、この言葉遣いが示しているように思います。
 ところが、日本の大手メディアは、このような怒りをオバマ氏にたいして示すことは、ほとんどありませんでした。むしろ、その逆だったのです。「広島を訪問するアメリカ史上初の大統領」というわけです。
 しかし、DemocracyNow!(May 17, 2016)によれば、いつもは体制順応的な報道しかしないニューヨーク・タイムズ紙が、オバマ大統領がほとんど知られていない重要な節目を超えたと報じました。
 つまり「広島を訪問するアメリカ史上初の大統領」ではなく、ジョージ・W・ブッシュ、フランクリン・D・ルーズベルト、エイブラハム・リンカーンを上回る「米国史上最も長く戦争を行っている大統領」と報じたのです。
 オバマ大統領はこれまで、少なくとも7カ国で軍事行動を行ってきました。イラク、アフガニスタン、リビア、シリア、パキスタン、イエメン、ソマリアです。4月には、特殊作戦部隊250人のシリア派兵を宣言し、米国のシリアでの正式な派兵規模を2倍近くに伸ばしました。
 こうして、オバマ大統領によって世界中に戦争が広まるなか、昨年は、6000万人という記録的な数の人々が家を追われました。
 しかも、オバマ氏によって無人爆撃機によって多くの民間人が殺戮されるという新しい戦争形態が誕生し拡大しただけでなく、オバマ氏は小型核兵器の開発にも乗りだしています。小型だから核兵器が使いやすくなり、今後どこで使われるようになるか分かりません。かくして新しい核軍拡がひっそりと始まっていることを、チョムスキーはおおいに危惧しています。

Chomsky on Obama's Visit to Hiroshima & Presidential Legacy: "Nothing to Rave About"
チョムスキーが語るオバマの広島訪問と大統領の残したもの:「ほめることは何もない」
http://www.democracynow.org/2016/5/17/chomsky_on_obamas_visit_to_hiroshima(May 17, 2016)

 こうしてオバマ大統領は、新たな軍拡競争に世界を引きずり込むことさえ始めました。アメリカで新大統領を選ぼうとしている年にこのような複合的危機が世界で起きているのです。
 G7を迎えるに当たって「オバマとは誰か」を考えたとき、「広島を訪問する史上初のアメリカ大統領」ではなく、ジョージ・W・ブッシュ、フランクリン・D・ルーズベルト、エイブラハム・リンカーンを上回る「最も長い戦争をおこなっている史上初のアメリカ大統領」を抱えているのが、アメリカの現実なのです。
 私たちは、このようなアメリカの現実を見据えながら、オバマ氏の広島訪問を考え、来るべき参議院選挙に立ち向かう必要があるでしょう。
 さもなければ、憲法9条をもつにもかかわらずアメリカの属国として行動する度合いがますます強くなっている日本は、かつての豊かさを今後ますます削り取られていくことは目に見えているからです。


<註1> 上記で紹介した「平和は戦争であることを教えてくれてありがとう、オバマ」という題名の論文は、「マスコミに載らない海外記事」というサイト(2016.05.17)で読んで初めて知ったものですが、今回の拙論に載せた和訳は、すべて私の責任によるものです。
<註2> 最近ブラジルで起きた政変(=武器を使わないクーデター)で暫定大統領になったミシェル・テメル氏は、元CIAの要員であったことがウィキリークスで暴露されています。詳しくは下記の櫻井ジャーナル(2016.05.14)を御覧ください。
http://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201605130000/
<註3> この南米ブラジルでのクーデターをみれば分かるように、オバマ大統領は中東だけでなく中米・南米でも政権転覆をいくつも企ててきました。あの悪名高い元大統領ブッシュ氏でさえ攻撃したのはアフガニスタンとイラクだけだったのに、オバマ大統領の魔手は世界的な規模に達していることが、これを見ても分かります。
 藤永氏がオバマ大統領を、「言っていること」と「していること」がまったく違う、「稀代の大嘘つき」「稀代のコン・マン」と評した理由が、よく分かる事例でもありました。その意味でも「ありがとう、オバマ」と言うべきかも知れません。



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