米軍のヘリパッド建設強行、沖縄・高江の惨劇と緊迫した現状

平和研究(2016/08/08)、日米地位協定、沖縄・高江、米軍のヘリパッド(ヘリコプター着陸帯)、「第3次アーミテージ/ナイ報告」

米軍のヘリパッド建設強行に反対する住民・市民・全国からの支援者たち
沖縄・高江
ヘリパッド建設反対集会には島袋文子オバア(87歳・写真左)も駆けつけた。
沖縄戦で泥水をすすって生き延びたオバアは戦争に対する憎しみが深い。
(出典:田中龍作ジャーナル)

http://tanakaryusaku.jp/2016/08/00014205


 反原発の団体「たんぽぽ舎」が毎日のように発信している情報【TMM:No2852】の最新号(2016年8月6日)が届きました。それには「編集部から」として、次のような前書きが付けられていました。
 「沖縄(高江等)と原発(東電福島事故とその後)は、現代日本の2つの焦点だと思います。7月参院選でも、この2県(沖縄県と福島県)は自民党の現職大臣が野党に敗北した地域です。この2つについて、原稿が寄せられ(沖縄)、又声明文が発表されました(福島)より多くの方に知って欲しい内容ですので、特集号として発信します。転送歓迎」
 そこで情勢が緊迫している沖縄について、現地から戻ってみえたばかりの千葉和夫氏の報告を以下で紹介したいと思います。
 この報告を読んで、私もできることなら現地に駆けつけたいという思いに駆られましたが、7月12日(火)に72歳の誕生日を迎え、いまだに帯状疱疹の後遺症で苦しんでいる老体にできることはと言えば、この情報を一刻も早く多くの人に知ってもらうことだと考えたからです。

沖縄東村高江7.22「民意無視の国策強行 住民排除」の現場から

 安倍首相は「沖縄の方々に丁寧に説明する」といっているが、やっていることはまるで逆だ。機動隊は-まるで戒厳令を敷いている軍隊だ。この国に民主主義はあるのでしょうか?(千葉和夫(たんぽぽ舎会員、茨城県在住))

◎ 沖縄高江から戻ってきました。7月22日の攻防の概略を書いてみました。
 構造的には原発と同じものを感じます。
 それは当然で、現政権のなりふり構わず進めるやり方は、沖縄・原発・安保法制など“根”は同じと思います。
安倍首相は「沖縄の方々に丁寧に説明する」といっているが、やっていることはまるで逆だ。
 そういえば3.11福島の原発事故に対しても「福島に寄り添う」と言っていたし、安保法制を強行採決した時も「国民に丁寧に説明する」と言っていた。
 騙されてはいけない
 さらに8月5日以降3日以内(?)はこの原稿で起きた(のはN1表側)逆の裏側の攻防がより激しくおこりそうです。

◎ 島尻安伊子沖縄・北方大臣が参議院選挙で10万6000票の大差で敗北した。これはハッキリと沖縄の民意が基地NOを示したことになる。
 ちなみに現在沖縄出身の国会議員6名全員が基地建設反対で、政権与党の自民党、公明党の国会議員はゼロである。
 辺野古ブルーのEメール連絡網で「高江N1ゲート前テントは7月20日以降撤去される可能性が高い。都合のつく人は直ちに高江に集合して下さい」が入った。
 私は急遽沖縄に飛び高江に入った。7月21日は高江のヘリパッド反対抗議集会に参加した、直射日光を浴び33度Cの気温での集会は辛かったが集まった人数は1600人と発表があった。
集会後「明日の早朝が決戦になる情勢」という情報があり高江に泊まることにした。といってもこのゲート前テントには近くに宿泊する場所は無い。道にダンボールを敷いてごろ寝です。(~_~;)

◎ 7月22日早朝3時30分「機動隊が行動開始した」という合図で叩き起こされた。県道70号線は南北に通る片側一車線、歩道無し、道の両側にすぐガードレールがある細い道だ。
 私達はテントの北側150m、南側70mに道一杯に車167台をハの字形に並べた。北側に70人、南側に約60人が車の間に座り込んだ。
 夜が明け始めた5時ごろから北側に機動隊員300人以上、南側に約200人が現れた。まるで戒厳令を敷いている軍隊だ。6時前一斉に攻め寄せてきた。
 私たちは非暴力で必至の抵抗を試みるが多勢に無勢徐々に排除される。排除の方法はすさまじく、女性だろうと年寄りだろうと、あの革靴で踏みつけ、腕をねじり、手首を関節技で締め上げ、1人に数人がかりで担ぎ上げ容赦しない。排除されても、されてもまた道路に戻り座り込みを続けた。

◎ さらに、彼らは南北約4kmの道路を封鎖していた。(弁護士によれば法律違反だ!すなわち私たちには早朝から来るはずの援軍はこれない!)
 6、8回座り込みを繰り返し抵抗したが、1回毎に南方に追いやられ、結局、圧倒的な力の差で南側のテント近くの一角に押し込められた。
 この間、南側を守っていたグループの動きは全く分からない。我々のグループにも怪我人が出て道に横たわっている人が数人そんなことは一向に構わずやりたい放題。今回は3人も怪我をして救急車で搬送された。
 1人(女性)は2本のロープで首を絞められ一時意識朦朧、もう1人(女性)はろっ骨が折れ全治1.5ヶ月、もう1人(男性)は背骨をいためて動けない。救急車の世話にならなくてもほとんど全員が傷だらけ。
 そして、直射日光のテント前に集められて数時間、トイレに行きたいと訴える女性になかなか許可を出さず、私たちの抗議で機動隊員がついてトイレ行くことを許可、南側では道脇の藪でするように指示され、やむなく女性が(ハブがいる藪で)用を足した。
 近くにいる男性が「機動隊の諸君、向こうを向いていなさい」と大声で怒鳴った。←これはその男性の証言で沖縄出身の赤嶺国会議員との懇談会で明らかになった。
 しかし、機動隊員は1時間交代で涼しいかまぼこへ、トイレも立派なトイレ車をけん引して持ってきている。暑さと、けが人など多発で山城さんの判断で午前11時ごろやむなく撤退した。

◎ 私たちの斥候(途中の道の見張り番)によると
「機動隊の大型バス(かまぼこ)が確認しただけで28台、その派遣先は品川、福岡、千葉、横浜、なにわ、愛知など全国12拠点から隊員600名+指揮官数10名が沖縄に集結していた。」との情報です。
 沖縄は日本でしょうか?この国に民主主義はあるのでしょうか?この国に法律はあるのでしょうか?警察官(機動隊)は誰のためいるのでしょうか?


 なお調べてみると関連情報として下記のものがあることが分かりました。参考になれば幸いです。
*高江ってどこ?行き方&ガイドMAP
http://nohelipadtakae.org/files/takae-sit-in-guide2.pdf
*オスプレイ阻むテントは守られた、住民減る週明けに再び危機
【沖縄・高江発】(田中龍作ジャーナル2016年8月6日 13:37)
http://tanakaryusaku.jp/2016/08/00014205
*地元国会議員「すべての国民が知らなければならない安倍政権の実態がここにある」【沖縄・高江発】(田中龍作ジャーナル2016年8月4日 21:05)
http://tanakaryusaku.jp/2016/08/00014189


沖縄・高江(地図)027


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「死の商人にならないで!」武器輸出反対ネットワークの軍需企業めぐり

平和研究(2016/06/18)、武器輸出三原則、死の商人Merchant of Death、防衛装備移転三原則、反対ネットワークNAJAT(Network Against Japan Arms Trade)


さる6月11日(土)、義母が他界しました。93歳でした。脳梗塞で県立病院に緊急入院して一時は危篤状態に陥ったこともあったのですが、何とか持ち直して自宅近くの病院に転院したばかりでた。
 これについては日本の医療問題が抱える問題として書きたいことは色々あるのですが、今は義母の介護=老老介護の身で、私も妻も非常に疲れ切っていますので、いずれゆっくり機会を改めて書いてみたいと思います。
 そういうわけで、なかなかブログを書く精神的肉体的時間がとれず、今に至ってしまいました。ただ義母の看病と他界を通じて思ったことは、日本の医療や病院も「死の商人」の一角を占めているのではないかということでした。
 そこで今回は、NAJAT(Network Against Japan Arms Trade)=武器輸出反対ネットワークの【報告】「死の商人にならないで!軍需企業めぐり」を紹介して、今までのブログの空白の、穴埋めに代えたいと思います
 というのは、私はNAJATの末端会員の一員なのですが、NAJATメンバーによる「死の商人にならないで!軍需企業めぐり」という報告記事が送られてきて、[転送・転載歓迎]とありましたので、これを当ブログ読者の皆さんにもお知らせしたくなった次第です。
 先ほど、義母の死をきっかけにして、日本の医療や病院も「死の商人」の一角を占めているのではないかと書きましたが、その規模をさらに国家的規模で大きくしたのが、安倍政権による「武器輸出の解禁」ではないかと思い当たったからです。
 安倍政権になってから、日本は憲法9条を投げ捨てて堂々と「武器売買=死の商人」になることを宣言しました。武器輸出世界一のアメリカを見れば分かるように、今やアメリカは戦争なしに立ちゆかない国になっていますから、日本も戦争なしには経済が回っていかない国になっていくでしょう。
 私たちは、憲法9条があるのだから、日本は武器売買・武器輸出とは無縁の国だと思い込んできました。ところが、この報告を読むと、富士通や三菱電機など日本の大手企業が、すでに武器売買・武器輸出に乗りだしていることを知って愕然とさせられます。考えてみれば、安倍首相みずからが危険極まりない原発のセールスマンとして世界各国を歴訪しているのですから、当然といえば当然のことかも知れません。
 しかし、これを「当然といえば当然のこと」として見過ごすことは決してできません。他人の死を食いものして巨利を得ようとする企業・国家は、国民の生活に配慮することなど考えられないからです。
 その証拠に、日本の医療・福祉・教育にかける予算は、今や削られる一方で、私の生活は貧困化の一途をたどっているからです。ですから「武器輸出」をやめさせる闘いは、私たちの貧困化をくい止める闘いと直結していると思うのです。私が以下の報告を紹介したいと思ったゆえんです。



【6月3日 軍需企業めぐりレポート】今回の訪問先
(1)三菱電機・鎌倉製作所

〒247-8520 神奈川県鎌倉市 上町屋325、最寄り駅:湘南モノレール 湘南町屋駅
☆ 空対空ミサイル「ミーティア」改良型の日英共同研究を行うとともに、日本向けF35ステルス戦闘機のレーダーやセンサーの生産をしている。現行の4機から10機へと増強が決まった偵察衛星も独占受注し生産。

(2)富士通・本店
〒211-0053 神奈川県川崎市中原区上小田中4-1-1、最寄り駅:JR南武線 武蔵中原駅
☆ 無線機、レーダー、赤外線センサーなどを生産。イージス艦用表示装置の部品(ソフトは三菱重工)をアメリカに輸出することを決めている。昨年のパリでの武器見本市「ユーロサトリ」では次世代型野外訓練用システムや軍事応用可能な次世代型半導体などを展示。

(3)東芝・小向工場
〒212-0001 神奈川県川崎市幸区小向東芝町1、最寄り駅:東急バス 東芝前バス停/JR鹿島田駅・新川崎駅・川崎駅
☆ 東芝の中の武器部門が集中しているのが小向工場。PAC-2とPAC-3の誘導装置、短SAMミサイルの部品、レーダーアンテナ、ホークミサイル、中距離地対空ミサイルなどの部品の研究・生産を行う。「グローバル化の一環として武器輸出を模索中」。原発製造の拠点も川崎市内に。

(4)三菱重工・本社
〒108-8215 東京都港区港南2-16-5)、最寄り駅:品川駅
☆ 日本の軍需企業トップ。「ミサイル防衛」日米共同開発に参加。落選したもののオーストラリアの次期潜水艦の受注競争に参加。HPにも戦車・イージス艦・戦闘機など多数掲載→ https://goo.gl/0WyPEV

【6月3日 軍需企業めぐりレポート】
無事終了しました!トータル37名のご参加をいただきました。簡単にご報告します。

* 三菱電機鎌倉製作所
 当日は快晴。いまどきめずらしくスイカやパスモが使えない湘南モノレールで「湘南町屋」駅へ。モノレールの窓から工場全体が見渡せます。歩いて数分で三菱電機鎌倉製作所南門へ。「正門へまわると歩いて15分かかります」とのことで、工場の広さがうかがえます。
 この日は非常に珍しい工場全体の休業日だったので、事前の電話のとおり、守衛さんに要請書を手渡しました。事前の電話で「建物や看板は撮らないでください」と言われ、「え、撮っちゃいけない看板ってなんですか?人に見られるためにあるんですよね?」ということで、「ではそちらのご判断で」ということになりましたが、えーと、工場そのものも、道路からもモノレールからもバッチリ見えるんですが。

* 富士通本店
 武蔵中原で昼食後、富士通本店へ。こちらは街中にあり、社員さんの出入りも多く「武器輸出反対!」と大きく書かれた横断幕をみなさんかなり注目しながら通って行きました。事前のお約束通り、社員さんが3名、門まで出てこられ、要請書を読み上げて手渡そうとしました。
 が、しかしそこでなんと「受け取れません」とのお返事! いや、事前のお電話では受け取って下さるということでしたよね?っていうかわざわざ外まで出てきたのに受け取らないというちぐはぐさは一体?「約束したんですから受け取ってください」「上の方と検討し直してください」と、一旦は社内に戻られましたが、結局「受け取れません」の一点張り。
 参加者にも何人か家族が富士通社員という方がおられ、「パソコンも富士通を使っているし富士通に誇りを持っていたのに、こんな対応をされるなんて本当に失望した」とパソコンの買い替えを検討されていました。始めから受け取り拒否の東芝より、門まで出てきた分マシなはずなのに、印象としてはむしろ最悪でした。約束やぶっちゃいけませんね。

* 東芝小向工場
 そこからかなり歩いてバス停へ行き、東芝小向工場へ。
 バス停の名前もそのものずばり「東芝前」です。こちらは最初から受け取り拒否ということで、門の前で東芝の軍需部門についてレクチャー、そして要請書読み上げ。他の団体がこうした軍事反対の申し入れをするときも、東芝はガードが固く、会ってくれないそうです。アカウンタビリティ(説明責任)に問題があるから不祥事が起きるんですね。

* 三菱重工品川本社
 そしてバスで川崎駅へ、電車で品川へ。ラスボスの三菱重工品川本社です。駅からすぐ、一等地の大きなビル。
 事前の電話では、代表者数名なら本社ビルの中で落ち着いて話せるところがあるのでそこでお話をうかがいます、という余裕の対応でしたが、撮影不可とのことなので、敷地外の路上で要請書の読み上げ&提出ということになりました。
 軍需のシェアも群を抜いてトップ、悪の親玉という感じなのですが、大物の余裕をかまして対応は大人でした。慣れているんでしょうか。それでも受け取る社員さんの顔と名前出しはNGということで、取材陣は背中側から写真をとります。
 それから、歩いて御殿山にある「三菱開東閣」へ。門は閉まっていて入れませんが、ここは三菱グループの最高の接待の場、三菱重工などが防衛族に高級料理をふるまったりするところだそうで、かつて石破茂元大臣が来る時5時間張り込んだ、というジャーナリストの田中稔さん(『「憂国」と「腐敗」~日米防衛利権の構造』共著者)に解説をしてもらいました。

以上、記念すべき第一回軍需企業めぐりでした!長距離の移動にも辛抱強くついてきてくれた参加者のみなさま、本当におつかれさまでした!
※Facebookページの記事に写真を掲載していますのでこちらもご覧ください。
https://www.facebook.com/AntiArmsNAJAT/
※『世界』6月号・武器輸出特集の座談会をぜひご参照ください。

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【報告】武器見本市(ユーロサトリ)に出展しないで!軍需企業申し入れ
 6月7日にNAJATの呼びかけで行った「武器見本市(ユーロサトリ)に出展しないで!軍需企業申し入れ」のご報告です。今回はとりわけ「民生品の出展だから問題ない」との企業側の論理にいかに対抗するのかが問われました。「軍学共同」でも焦点となっている軍民両用(デュアルユース)技術をどうとらえるのかという問題です。
 ジャパンセル、藤倉航装あての要請書では、後半でその点を強調していますのでぜひご一読ください。今後も粘り強く働きかけを続けていきたいと思います。

<ジャパンセル、藤倉航装あて要請書>
https://najat2016.files.wordpress.com/2016/06/euro_f_jc.pdf
<NECあて要請書>
https://najat2016.files.wordpress.com/2016/06/euro_nec.pdf
 なお、NAJATのブログに当日の写真や要請書を掲載しています。こちらも
ご覧いただき、拡散などの際にご活用いただけるとありがたいです。
<ユーロサトリ出展企業に申し入れ!>
https://najat2016.wordpress.com/2016/06/09/action_euros/

____今回の訪問先____
(1)ジャパンセル
〒194-0215 町田市小山ヶ丘2-2-5-11、最寄り駅:京王相模原線 多摩境駅、(TEL)042-798-4621 (FAX)042-798-4679
☆ 代表取締役社長 深澤篤。1982年設立で精密光学ガラス部品を製造。社員
は約50人。前回に続いて災害救助用の携帯型特殊サーチライトを出展予定。
2014年の初出展の際、メディアの取材に対して深澤社長は「今の景気が悪
い中で仕事を作らないといけないということで、そっちの方を優先して考
えています」とコメント。

(2)NEC(日本電気)
〒108-8001 港区芝5-7-1)、最寄り駅:JR田町駅、都営三田線三田駅、(TEL代表)03-3454-1111、(NECへのご質問・ご意見) https://jpn.nec.com/cgi-bin/cs/opinion_form.cgi
☆ 代表取締役執行役員社長兼CEO 新野隆。1899年設立。2014年度の防衛省
との契約実績は287件、1013億円と第3位。野外通信システムや固定式警戒
管制レーダー装置などを納入。軍需関係は府中事業場(府中市日新町1-10)
が中心。前回は無線機や顔認証機などの情報通信システムを出展。

(3)藤倉航装
〒142-0063 品川区荏原2-4-46、最寄り駅:東急池上線戸越銀座駅、都営浅草線戸越駅、(TEL)03-3785-2111 (FAX)03-3784-0416
☆ 代表取締役社長 長井弘。1939年設立。「はやぶさ」カプセル回収用パ
ラシュートを開発したことをPR。前回は自衛隊が使用するパラシュート
や救命胴衣を展示。今回は独自に考案した民生用パラシュートの開発・設
計技術を出展。品川は本社機能のみで、製造工場は福島県田村市船引町船
引字卯田ヶ作115-25。

【報告】武器見本市(ユーロサトリ)に出展しないで!軍需企業申し入れ」

 6月7日午後、武器輸出反対ネットワーク(NAJAT)呼びかけの「武器見本市(ユーロサトリ)に出展しないで!軍需企業申し入れ」を行いました。3日に取り組んだ「死の商人にならないで!軍需企業めぐり」に続いての怒涛の連続アクションです。
 「ユーロサトリ」とは隔年の6月頃にフランス・パリで開かれる世界最大級の武器見本市です。武器輸出三原則が撤廃された直後の2年前には、日本の軍需大手8社と中小4社が初出展しました。ところが今回は、三菱重工をはじめとする大手6社が出展を断念。危機感を感じた防衛装備庁は、「下町ロケット」を合言葉に、「背水の陣で中小に賭ける」との姿勢で臨んでいます。
 今回、大手で2回目の出展を決めたのはNECのみで、初出展は三菱電機。他に、ジャパンセル、藤倉航装が2回目の出展です。防衛省との取引があるのはここまでで、他は取引のない中小企業が初出展するそうです。NAJATでは、それでも出展する企業に対して、しっかりと反対の意志を伝えようと、3社に絞って要請書を届けることにしました。

* ジャパンセル
 直前の案内に応えて駆けつけたのは総勢9人。最初は町田市にあるジャパンセル。2年前と同様に、東日本大震災後に防衛省からの要請を受けて開発した携帯型サーチライトの出展を予定しています。事前のアポイントの際には、「軍用ではなく災害用」「防衛装備庁にこうした申し入れがあることを伝えたい」などと言われていました。
 多摩境駅からてくてくと歩いて、まちだテクノパーク内にあるジャパンセルに到着。受付で連絡すると「会議室に上がってきてください」と想定外の応答。全員がスリッパに履き替え会議室に入り、待ち受けておられた出展担当の営業部長さんと面談しました。軍需企業めぐりで要請書の受け取りを拒否した富士通や東芝、今回のNECとは対照的です。
 出展中止を求める要請書とツイッターで集めた「軍需企業に言いたい」メッセージを提出したうえで、部長としばらくやり取り。部長からは「警察や消防の方もショーを見に来られる。人命救助や災害対策で世界の人々のお役に立ちたい」「トレーサビリティー(流通経路の追跡)はやっている。経産省と最終エンドユーザーとなる代理店を確認しているが、そこから先はわからない」「不適切な用途に使われ、契約が破られたときには契約不
履行となる」「モラルハザードにならないようにしたい」などとコメント。
 参加者からは、「たとえ民生品の出展といえども、軍事転用を完全に防ぐことはできない」「企業の責任として、軍事転用を許さないための措置をもっと強化すべき」「ホームページで軍事転用は認めない旨を明確に表明してはどうか」「今回中止できなかったとしても、次回のユーロサトリへの出展は断念してほしい」などの要望を伝えました。

 3日と7日に訪れた7つの企業の中で、会議室で対話できたのはジャパンセル1社のみ。市民と向き合う真摯な姿勢に、今後も継続的に対話していける可能性を感じました。

* NEC(日本電気)
 2社目は田町にあるNEC(日本電気)。大手が軒並み出展を見合わせる中、懲りずに無線通信システムなどを出展する予定です。事前のアポイントでは要請書の受け取りを理由も示さず拒否。こうした要請には「是々非々で対応している」とのことで、よろしくないと判断されたようです。
 そびえ立つ高層の本社ビルに出向くと、9人の参加者を上回る12人もの警備員が正面玄関の50メートル手前で私たちをブロック。NECのワッペンを付けた警備員が、問いただしても終始無言を貫く一方で、アルソックの警備員は「総務から社の方針として受け取れないと聞いている。理由は言えない」と高圧的な対応でした。
 強く抗議したうえで、横断幕を広げて、次々とマイクアピール。近くの
歩道で行ったチラシ配布の受け取りも良かったです。最後に、正面にある
立派な社名看板を撮影しようとすると、警備員が慌てて立ちはだかる始末
でした。それにしても、3日の富士通、東芝に続き、名だたる大手企業の
傲慢な姿勢は情けないものがあります。私たちは抗議ありきではなく、説
得しようと訪れたに過ぎません。NECの強硬な姿勢は、武器輸出が物言う
市民を蔑視しながら進められていることを浮き彫りにしました。

最後の3社目は戸越銀座の近くにある藤倉航装。前回は自衛隊向けパラ
シュートなどを展示したものの、輸出管理の制限により性能などをPRで
きなかったとして、今回は独自に考案した民生用のパラシュート技術を紹
介する予定とのこと。
事前にアポイントを取っていたものの、到着が遅れたため電話すると、
担当者は「会社を離れるので守衛に受け取らせる」との対応。戸越銀座商
店街を抜けて会社に出向くと、少し待たされた後で社員らしき人が登場。
ところが、開口一番「受け取れません」。驚き理由を尋ねると、「一人で
来ると思っていたのに、こうした抗議まがいのやり方ではダメ」「要請書
の内容が納得いかない」などと述べた後、今度は「理由は言えない」と言
ってみたり、思いつきでコロコロと変わる混乱ぶり。名前と役職を聞いて
も「答えない」の一点張り。「では、後日郵送します」と伝えると「郵送
されても読まない」とまで言ってのけました。
A4で1枚の紙を受け取ることがどうして出来ないのか、企業の傲慢さを
またしても見せつけられました。受け取りを拒否した企業には郵便で要請
書を送付する予定です。

3日の軍需企業めぐりに続くハードな日程ながら、武器輸出ヘの「NO!」
の意志を伝える確かなアクションになったと思います。企業の対応に見ら
れた「幅」は今後の取り組みにとってのヒントにもなるものでした。参加
された皆さん、ご注目いただいた皆さん、お疲れ様でした。(文責:杉原)

※ぜひ様々な個人、団体でも軍需企業に声を届けてほしいと思います。な
るべくていねいなメッセージで。直接訪問される場合には、窓口などをお
知らせできますのでご連絡ください。

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武器輸出反対ネットワーク(NAJAT)
メール anti.arms.export@gmail.com \ツイッター @AntiArmsNAJAT
Facebook ページ https://www.facebook.com/AntiArmsNAJAT/ \ブログ
https://najat2016.wordpress.com
〒162-0822 東京都新宿区下宮比町 3-12 明成ビル 302 3・11 市民プラザ気付
FAX 03-5225-7214 \電話 090-6185-4407(杉原)
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「軍事費世界地図」―世界人口の5%で世界の軍事費50%を占める国アメリカ

軍事費世界地図、世界の憲兵(Global Policeman)、悪の枢軸(Axis Of Evil)、人口5%で軍事費50%の国、平和研究(2015/09/14)

軍拡世界地図 Military-Expenditures-World-Wide
http://www.wtcphila.org/uploads/4/9/5/7/49572435/bofaml-transforming-world-atlas-2015-08.pdf


 いま国会は戦争法案をめぐって大揺れに揺れています。なぜ戦争法案が必要かと問われて政府がいつも答弁する内容は、「危急存亡のとき自衛隊が米軍を守らねばならない」というものです。
 しかし、これを聞いていると頭がおかしくなりそうです。というのは、今まで私たちが聞かされてきたのは、米軍が日本を守ってくれるから沖縄その他に米軍基地が必要だというものでした。
 ところが今はこれが全く逆転して「自衛隊が米軍を守ってやる」というのです。しかし米軍が自力で戦ったのでは負けるような敵を相手にして、どうして自衛隊が勝てるのでしょうか。
 冒頭に掲げた「世界の軍事費地図」を見てください。この地図はGlobal Researchから採ったものですが、ご覧のとおり、世界の軍事費の半分はアメリカが占め、中国の軍事費はその約3分の1にすぎません。
 ところで、この地図の出典を調べてみたら、アメリカの大銀行「バンカメ」Bank of Americaの "Transforming World" atlasに載っていることが分かりました。そして、この地図には次のような四つの注釈が付いていました。拙訳で紹介します。

1)アメリカの軍事費は、次位15カ国の軍事予算を全て足したよりも多い。
2)ペンタゴンは、アメリカ50州すべての医療費・教育費・社会保障費を合計した額よりも多い金額を軍事費に使っている。
3)実際、アメリカの人口は世界の人口の5%に過ぎないにもかかわらず、世界全体の軍事費の50%をアメリカが占めている。
4)突出した軍事費と科学技術の優位性がアメリカを世界の超大国にしている。アメリカが強大な地政学的影響力をもち世界の憲兵として果たすべき役割を期待されているのは、このためだ。


 私は最初なぜアメリカの大銀行「バンカメ」がこのような「世界の軍事費地図」を公表しているのか奇異な感じがしましたが、最後の4)を読んで納得しました。このような見解だからこそ、ではないかと思い当たったのです。
 それはともかく、アメリカの軍事費は御覧のとおり突出していて、しかも、その兵器は世界最先端を行くものですから、それと正面から戦って勝てる相手はいないのです。ですから、「自衛隊が米軍を守る」というのは笑止千万で、それを理由に戦争法案を通そうとしても誰も信用しないでしょう。
 ついでに付け加えておくと、上記の「軍事費世界地図」で北朝鮮を探すと、芥子粒(けしつぶ)ほどの大きさです。韓国の軍事費を示す円グラフの頂点にかすかな黒点として存在するにすぎません。ですから、このような国がアメリカや日本にとって脅威であるはずがないのです。しかし戦争するためには相手を悪魔化する必要があります。イラクと並んで北朝鮮が、Axis Of Evil「悪の枢軸」と名指さしされ、悪魔化されたゆえんです。

 だとすれば、天下無敵の米軍がなぜ自衛隊を必要とするのでしょうか。それは嘘をついて始めた戦争が世界に拡大していくことにたいしてアメリカ国民の多くが嫌気をさし、反戦意識が国内で強くなっているからです。また黒人を武装警官が射殺する事件が相次ぎ、国内でも一種の騒乱状態が生まれていることも、その要因になっているでしょう。
 最近はBRICS諸国の存在感が大きくなり、このまま放置しておくと超大国アメリカの地位が崩壊しかねません。ですからその牽引車となっているロシアと中国の勢力を何としても削(そ)がねばなりません。しかし国内では反戦意識が強くなっていますから、米兵を直接の戦闘に差し向けるわけにはいきませんから、代わりの傭兵が必要です。
 そこでロシアにたいしてはNATO軍を使い、中国に対しては自衛隊を使おうというのが、アメリカの戦略です。ただし戦争を仕掛けるためには口実が必要です。そこで最近よく使われるのが「人道的介入」「民主主義擁護」で、ウクライナ領クリミアをロシアが占領したというのが、そのひとつの口実になっています。
 しかし、そもそもウクライナに大金を注ぎ込んでクーデターを起こさせたのはアメリカでした。これは国務次官補ヌーランド女史自身が「米国ウクライナ基金」の大会講演で明らかにしています。それによると、アメリカは1991年からウクライナを支援するために50億ドルを投資したというのです。
http://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201508110000/
 また中国にたいしては尖閣列島の問題が口実として使われています。中国との間で棚上げになっていた問題を、自民党右派の言動を利用しながら、火を付けようというわけです。これについて詳述しているゆとりがありませんので、時間がある方は下記を参照していただければ有り難いと思います。

John V. Walsh(2013/02/08)「日本に中国との対決をけしかけるアメリカ」
資料: 国際戦略研究所(CSIS)「アーミテージ/ナイ報告」

 いずれにしても、自衛隊がアメリカの傭兵として使われて私たちに利益になることは何一つありません。日本の防衛費が激増し、その分だけ教育や福祉への予算が削られるだけです。それでも軍事費が足りないというので消費税を値上げしたばかりですが、他方で福島のひとたちは放射能汚染にさらされたまま置き去りにされています。
 安倍政権が、沖縄住民の圧倒的意思を無視して、米軍基地の辺野古移転に断固たる意思を示しているのは、上記のようなアメリカの戦略に根ざしていることは疑いようのない事実です。アメリカは他国に干渉するとき「民主主義擁護」を高々と掲げるのですが、ウクライナや沖縄の現状をみれば、それがいかに「大いなる偽善」かはよく分かるはずです。
 「民主主義」というのは「民衆の意思を尊重する」ということのはずです。しかし安倍政権もオバマ政権も、やっていることは「民衆蔑視」そのものです。


<註1> 憲法9条を無視して自衛隊が中国近海どころか中東にまで出かけるようなことになれば、今まで日本に大きな親近感をもっていたアラブの人たちを敵に回すことになるだけでなく、日本国内をEU諸国と同じようなテロ攻撃の舞台として提供することになるでしょう。

<註2> 悪の枢軸(Axis Of Evil)という場合、アメリカが名指したのはイラン、イラク、北朝鮮でした。しかしチョムスキーがしばしば言及する「世界を危険にさらす」「悪の三大国」とは、氏の祖国アメリカ、そしてイスラエル、サウジアラビアの三つでした。これは記憶しておくに値する事実ではないでしょうか。 

翻訳 チョムスキー「ヒロシマの影のなかで」

ヒロシマ、ケネディ、フルシチョフ、キューバ危機、イランの核開発、「二重思考」"Double Think"、平和研究(2015/08/07)

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 今年も原爆記念日がめぐってきました。しかし安倍首相は、一方でアメリカの手下として原発再開と戦争法規(「戦争放棄」ではない!)への道をまっしぐらに走りながら、他方では8月6日のヒロシマでの挨拶では「核兵器廃絶のために努力する」と挨拶しました。この矛盾した行動を同時におこなえる図太い神経は、まさにジョージ・オーエルのいう「二重思考」"Double Think" そのものです。そう思いながら、かつてのチョムスキー翻訳を読み直していたら、いま読んでも全く古くなっていない小論「ヒロシマの影のなかで」があることに気づきました。そこで以下に、その拙訳を紹介することにします。

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ヒロシマの影のなかで
In Hiroshima's Shadow
Thursday, 02 August 2012 09:25
By Noam Chomsky,
Truthout | News Analysis
http://truth-out.org/opinion/item/10660-in-hiroshimas-shadow


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8月6日、ヒロシマに原爆が投下された日は、深刻な反省を迫る日である。1945年の、その恐ろしい事件についてだけでなく、それが明らかにしたことについて――人間が破壊力をどこまで拡大できるかの探求に全精力を費やし、ついに極限にまでいたる手段を見つけたことについて、真剣に考え直す日である。

今年の原爆記念日は特別に重要な意味をもっている。というのは、その日から数日も経たないうちに、「人類史で最も危険な瞬間」となった日の50周年がやってくるからだ。歴史家でありケネディ大統領の顧問であったシュレジンジャー(Arthur M. Schlesinger Jr.)は、キューバ・ミサイル危機」を、「人類史で最も危険な瞬間」と呼んだのだった。

アリソン(Graham Allison)はForeign Affairs誌の最新号で、ケネディは「通常の戦争どころか核戦争になる危険が増すことを知りながら、作戦行動を命令した」と書いている。核戦争になる危険は50%だとケネディは信じていたが、アリソンもその危険は十分にありえたとみなしている。

ケネディは核戦争への厳戒態勢を宣言し、「トルコ人(あるいは他の)飛行士が乗ったNATO軍の爆撃機がモスクワめざして飛び立ち爆弾を投下する」ことを許可した。

キューバに核ミサイルがあることを知って最も衝撃を受けたのは、6ヶ月前に同じようなミサイルを沖縄に秘かに配備した責任者たちだった。それは主として中国を攻撃対象としたものであり、それが近隣地域の緊張を高めていた矢先だったからだ。

ケネディはソ連のフルシチョフ議長(Nikita Khrushchev)を「核戦争の瀬戸際まで追い込んだが、崖っぷちを覗きこんで怖くなり、それを実行する気力をなくした」。これは当時のペンタゴンで戦争計画を立案していた高官、Burchinal将軍(David Burchinal)の言だが、今はそのような正気を誰にも期待できない。

フルシチョフはケネディの提起した打開策を受け入れて、開戦の一歩手前で危機を終わらせた。この打開策は、アリソン(Graham Allison)によれば最も大胆なもので、「キューバからミサイルを撤去した6ヶ月後に、アメリカがトルコからミサイルを撤去するという秘密の取引」だった。実を言うと、このミサイルは旧式のもので、アメリカはそれらをポラリスと入れ替つつあった。すなわち、もっと破壊的な弾道ミサイル=ポラリスを積んだ、難攻不落の潜水艦を用意していたから旧式ミサイルは不要となりつつあったのだ。

要するに、想像を絶するような破壊をもたらす戦争の危機に際しても、アメリカは「核ミサイルをどこにでも配備する一方的な権利をもつ」という原則を強化することが必要だと思っていたのだ。それは中国を標的にするものであったり、ロシアの境界に配備するものだったが、当のロシアはそれまで国外にミサイルを配備したことはなかった。もちろんアメリカは自分を正当化する口実を用意していたが、私にはそのどれも分析に堪えるものだとは思えない。

上記の付随的原則は、キューバはアメリカに侵略される危険がいかに迫っていても、それにたいして防衛するミサイルを持つ権利はないというものだ。ケネディによるこの計画は、いわば国家テロともいうべき作戦で、「マングース作戦」と呼ばれ、それは「公然と共産主義体制への反逆と転覆」を呼びかけるものだった。これが1962年10月のミサイル危機を引きおこした。しかも「その最終的な成功のためにはアメリカによる決定的な軍事干渉が必要だ」ということも分かっていた。

このキューバにたいする国家テロを、アメリカの批評家は「たいして重要でないCIAの悪ふざけ」として片付けるのが普通だが、当然ながら、やられる側はそれを全く違ったふうに受け取る。攻撃される側の悲鳴・意見は、少なくとも、ボレンダー(Keith Bolender)の著書『もう一方からの声――キューバにたいするテロ攻撃を語り伝える』 Voices from the Other Side: An Oral History of Terrorism Against Cuba で知ることができる。

この1962年の一連の出来事はケネディが最も手腕を発揮したものとして広く賞賛されているが、アリソンはさらにそれを「紛争を解決し、大国間の関係を処理し、外交について健全な決定をする際の一般的な指針」として提案している。特に現在の時点では、イランや中国との紛争解決に役立つというのである。

1962年の危機は世界を破滅に導きかねないものだったが、それ以来、似たような危機的瞬間は枚挙に暇(いとま)がないくらいに頻発している。1973年はアラブ=イスラエル戦争の末期で、キッシンジャー(Henry Kissinger)は核戦争にたいする厳戒態勢を指示したほどだった。インドとパキスタンの関係も核戦争寸前にまでいった、また自動警戒装置の誤作動で、危うく核ミサイルが発射される寸前に手動でかろうじてそれを制止することができた事件も、今までに数え切れないくらい起きている。だから8月6日は大いに反省し思考すべき日なのだ。

アリソンはイランとその核開発計画を現在における最も深刻な危機だとする点で多くの人と意見を同じくしている。イスラエルによるイラン攻撃の危険があるから、「アメリカの外交政策にたずさわっているものにとっては、キューバ危機よりもはるかに複雑な課題とすら言える」。

イランにたいする戦争は既に進行していると言ってもよいくらいだ。イランの核科学者にたいする暗殺や経済制裁をみればそれは明らかだ。イラン問題の専門家シック(Gary Sick)の判断によれば、それは「宣戦布告なき戦争」の段階にまで至っている。

アメリカはイランにたいする高度のサイバー攻撃を誇ってさえいる。ペンタゴンはサイバー攻撃を「戦争行為」だと見なし、The Wall Street Journal誌によれば、このような攻撃にたいしては「通常の軍事力で応戦してよい」と認めてさえいるが、ひとつだけ例外がある。それはアメリカやその同盟国がその実行者である場合だ。

イランの脅威にについては最近、エイランド将軍(Giora Eiland)がその概略を述べている。彼はイスラエル軍事政策の最高立案者のひとりだが、イランの脅威を「イスラエル軍が今までに創りだした最高傑作のひとつ」だと述べている。

彼が描く危機のなかで最も信頼できるのは、「イランの核の傘の下で国境地帯にいかなる衝突がおきても不思議はない」という分析だ。したがってイスラエルは軍事行動を控える可能性もある。いずれにしても、エイランドがペンタゴンやアメリカの情報機関と意見を共にしているのは、イランの[核による]抑止力が最大の脅威だとする点である。

イランにたいする「布告なき戦争」をさらに激化させることは、偶発的な大規模戦争にいたる危険性を増大させる。その危険は先月の事件で明らかになった。アメリカ軍艦(それはペルシャ湾に派遣された巨大な艦隊の一部に過ぎない)が小さな漁船に発砲し、インド人の乗組員をひとり殺し、少なくとも他の3人を負傷させた。それが大戦争の口火となるにはたいして時間はかからない。

そのような破局を避ける賢明な方法のひとつは「中東に大量破壊兵器や全てのミサイルの搬送・発射禁止区域を設けるという目標、化学兵器を包括的に禁止するという基本方針」を追求することである。これは1991年4月の安全保障理事会で成立した決議687の文言であるが、アメリカやイギリスは、その12年後に、この文言を隠れ蓑にしてイラク侵略に乗り出したのだった。

この目標は1974年以来ずっとアラブ諸国やイランの目標であったし、何度も国連総会でも定期的に確認されている目標でもある。しかもそれは今では満場一致に近い支持を得ている(アメリカやイスラエルの数少ない抵抗を除けば、少なくとも公式的には)。そのような合意[決議687]を実行に移すための方策を検討する国際会議が、12月には実現するかも知れない。

ただしそのような進展は、欧米世論の巨大な支持がなければ、実現は難しい。そのような機会を逃せば、8月6日という運命的な日からずっと世界を覆ってきた暗い不気味な影を、再び長引かせることになるだろう。


翻訳 ダグラス・ラミス「沖縄は緊急事態だ!」

沖縄、辺野古、普天間飛行場、「平等負担の会」、平和研究、国際理解(2014/06/14)


 いまアメリカは世界で大きく言えば「三つの戦い」を展開しています。
 一つは中東でイエメンからイラク、シリアに至るまで無人爆撃を繰りかえしながら各地を瓦礫に変えています。イエメンを瓦礫の地に変えているのはサウジアラビアですが、このサウジに高性能爆撃機やクラスター爆弾(国際的に禁止されている残虐兵器)を提供しているのもアメリカです。
 もう一つはウクライナで表向きは停戦協定を結びながら、実質はアメリカがウクライナ政府軍に武器や戦車などを提供してウクライナ東部のドンバス地方を攻撃させているのもアメリカです。政府軍の実働部隊はネオナチ・極右勢力で、アメリカが特殊部隊を送り込んで軍事訓練をほどしています。
 このウクライナ情勢はチョムスキーが「核戦争3分前」と言っているくらいに緊迫した情勢にあるのですが、日本の大手メディアはそれについてほとんど報道していません。左翼あるいはリベラルと言われている新聞でも、ウクライナ危機をつくり出したのはロシアだとして、裏でクーデターを仕組んだアメリカに言及することはほとんどありません。
 最後は中国近海、とりわけ魚釣島を舞台にした中国包囲網で、中国を攻撃するための実働部隊として自衛隊を利用するために、いまアメリカは日本政府に圧力をかけ、戦争法規を急ピッチで完備させようとしています。TPPも中国包囲の一貫であることを安倍首相はアメリカ議会で公に認め、その締結に全力をあげると宣言しました。
 このたびの総選挙で沖縄の小選挙区すべてにおいて政府与党勢力が全敗したにもかかわらず、安倍首相が「粛々と作業を進める」と言って、アメリカ軍の辺野古基地移転を頑として取り下げようとしないのは、上記のような背景があります。
 しかし「民主主義」というのは「民意を尊重する」ということですから、それを堂々と踏みにじって恥じない安倍政権は、いまや「独裁的ファシズム政権」に変質しつつあると言っても過言ではありません。このまま事態が推移すれば、沖縄がとるべき道はイギリスのスコットランドが掲げているのと同じように「独立」しかなくなるでしょう。
 ところで沖縄現地の辺野古では、基地移転の工事を阻止するために、地元の住民が連日のように、陸と海の双方で体をはって警察や海上保安庁職員と闘っています。その生々しいようすを、アメリカ人学者ダグラス・ラミスが沖縄からの現地レポート「沖縄は緊急事態だ!」を書き、本土やアメリカの心あるひとに支援を訴えています。
 いま私の主宰する研究所の研究員から、その翻訳が届きましたので以下に紹介させていただきます。このレポート(檄文)が書かれたのは2月18日ですが、アメリカ海兵隊の垂直離着陸輸送機オスプレイが5月17日にハワイで墜落し多数の死亡者を出している今、ラミス氏のレポートが新たな意味をもって甦ってきたように思います。
 ベトナム戦争時に元海兵隊員だったダグラス・ラミス氏が、津田塾大学を退職したあと沖縄に移住し、非常勤講師を勤める傍ら反戦平和運動をおこなっている姿に(1936年生まれですから、やがて80歳です)、私はある種の感動をおぼえています。名著『イデオロギーとしての英会話』(晶文社, 1976年)も、私にとっては忘れがたい本です。

<註> アメリカが三つの地域(中東、東欧・ウクライナ、中国近海)を中心として世界中で展開している汚い戦争については、その分析の根拠をいちいち明記しませんでしたが、それらについては私の今までのブログおよび下記サイトを御覧ください。
http://www42.tok2.com/home/ieas/translation_index.html
チョムスキー 「世界の誰もが知っている:アメリカは世界最強=最悪のテロ国家だ」 
「櫻井ジャーナル」
「マスコミに載らない海外記事」



沖縄は緊急事態だ!
C.ダグラス・ラミス
The Asia-Pacific Journal、2015.2.18
https://zcomm.org/znetarticle/okinawa-state-of-emergency/

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警官との衝突でけがをした女性
辺野古Injured_woman

沖縄北部辺野古の米軍海兵隊キャンプ・シュワブのゲート前で、一つの看板に、座り込みが220日に及んだことが示されていた。その隣で、老人が、「沖縄を差別するな!」と書かれた幟(のぼり)を掲げて立っていた。「これはどこの組織からもらったものでもない。俺が自分の金で作ったんだ」と彼は言った。「これなんだ。これが問題なんだ」と彼は思い詰めたように私に言った。

幟(のぼり)に書かれた文字「「沖縄を差別するな!」は、沖縄の反基地運動がこの15年ほどに潜り抜けてきた激変を象徴している。それは大きな考え方の変化であり、それが現在の大きな政治的再編に導き、それが今度は、現地で起きているすさまじい政治的対立に、ますます影響を及ぼしつつある。

簡単に言えば、長年このかた沖縄の政治は、反戦反基地の革新派と、人数は少ないが金持ちの保守派との対立だった。金持ちはお金が入ってくるのだったら基地のことを気にかけない。その後1995年沖縄の女子小学生が米軍兵士3人に集団暴行され、島中が怒りの炎に燃えあがった。保守も革新も参加して、全沖縄抗議集会が開催された。130万人の人口で約7万人の参加は、膨大な人数だった。アメリカと日本政府は、何かしなければいけないと覚悟した。

彼らが思いついたのは、沖縄中部、人口密集地域の宜野湾市中心部にある普天間海兵隊航空基地閉鎖を約束することだった。人々が喜んだのは、1日だけだった。その翌日、航空基地が県外に出て行くのではなく、北部の名護市辺野古村に移転するだけだと知ることとなった。喜びは、怒りに変わったのだ。

その時から、ほぼ20年が経過した。普天間飛行場が開いている間、これまで反基地抗議運動が、新しい基地建設を阻止してきたのだ。当時しばしば繰り返し聞かれたスローガンは、「沖縄は日本領土の0.6%しかないのに、在日米軍基地の74%が存在している」だった。興味深いことに、これは反戦スローガンではないことだ。それは沖縄の全ての米軍基地撤去を要求しておらず、露骨に不平等な扱いに対する抗議だった。この不平等な扱いが沖縄人の意識を変えたように、これは反基地活動家の考え方にも変化をもたらした。沖縄人の熱烈な平和主義に、彼らが日本の植民地(又は、日本と米国の二重植民地とも言われるが)として扱われているという意識が加わり、それがますます大きくなっている。「差別」という用語は、政治的用語には入っていなかったが、みんなの考え方の中心におかれたのだ。この情況を把握する方法の変更が、保守派にも反基地運動に参加する扉を開け、そして多く者が、保守派陣営を割って参加したのだ。みなが差別されているとき、侮辱されていることを免れる保守派はいないのだ。

抗議運動を推し進めるもう一つの要因は、この新しい基地計画が、大量の土砂とコンクリートを大浦湾に捨てるからだ。そこは、沖縄と日本の最後の原生珊瑚の楽園で、絶滅危惧種ジュゴンを含む何千という希少海洋生物の豊かな生息地でもあるのだ。革新派のみならず多くの保守派も、その計画の悪辣な破壊に本当に心を痛めていた。徐々に新しい連帯が形成され、これはイデオロギー的には革新陣営抱いていたほど純粋ではないが、政治的にさらに力強いものとして登場した。

2010年に在職中の保守派知事仲井眞弘多は、彼の主席アドバイザーのひとり、当時那覇市長の翁長雄志に「もし次の選挙で反基地の立場をとらなかったら、選挙で負ける」と言われた。従って彼は自分の立場を変えて、海兵隊空軍基地を辺野古に移転しないで、本土へ移すべきだと言った。それで彼は選挙に勝つことができた。4年間この気むずかしい老人は、辺野古での新たな基地建設に反対して、見事にやってのけた。その後、彼の任期の終わり頃、突然意見を変え、基地移転の許可を出した。この彼の選挙公約への裏切りによって、その約束を説得した翁長那覇市長を含めて大勢の怒りが渦巻いた。2014年に行われた次の選挙で、翁長氏は反基地の立場で仲井真氏に対抗して立候補し、約10万票差で彼を打ち負かした。翁長氏の歴史的勝利の少し前、反基地派の名護市長も、安部晋三政権による猛烈な支援にもかかわらず再選された。さらに、衆議院選挙で、沖縄の基地賛成派候補4人が全員が、小選挙区で見事に敗れた。沖縄の選挙民が、新たな基地建設に反対の意思を示したことは、極めて明白であり、繰り返し行われた意識調査でも証明された。

日本とアメリカ政府は、この圧倒的な沖縄人の新基地反対の意思を無視することに決めた。安部首相は、選挙は基地建設になんら影響はないと繰り返し述べた。それは、沖縄に対する政府の政策が、深い差別によって打ち立てられていると考える者を説き伏せるために計算された行動のように思えた。そして今、私たちは現在に至る。建設準備の現場は、衆議院選挙中は中断されていたが、1月15日に再開された。沖縄ではその伝統的難題がいま試されている。つまり「有無を言わさぬ勢力」が、「動かしがたい対象」に出会う時、何が起こるのか。

「動かしがたい対象」の側では、まず最初に、1月15日から1週間に7日、24時間続けられているキャンプ・シュワブ第1ゲート前の座り込みがある。この示威行動の目的は、基地建設に関連したトラック本部への搬入を阻止して、それが失敗したら、工事を遅れさせることだ。「有無を言わさなぬ勢力」の側では、2台に分乗した機動隊がいて、トラックの正面にデモ隊が座ったり、横たわったりするとき、彼らを引きずり出し、退去させることが彼らの仕事だ。夜は昼間よりデモ隊が少ないため、今やほとんどのトラックが、ちょうど夜明け頃、または時には真夜中でも入ってくる。デモ隊は、ビニルシートとポールで、脆くて漏れるテントをつくり、そこで彼らは寝たり、あるいは、とにかく寝ようと試みる。それはひどいもので、特に夜に雨が降ったときは惨めだと聞いている。それにもかかわらず多くの人々が、そこで何日も寝泊まりした。座り込みをしている人々のほとんどは、中年かお年寄りで、70歳や80歳代の人々もいる。これは、彼らがほとんど退職していて、毎日自由にそこへ行けるからでもあるが、さらに沖縄戦を耐え抜き、戦争や、戦争に結びつくもの全てに深い恐怖や嫌悪がある世代だからである。辺野古基地に対するこの闘いは、この世代の沖縄人の最終的な意思表示であり、歴史的な遺産であると言っていいだろう。

第2の対決は、大浦湾で起こっている。そこはキャンプ・シュワブに隣接し、新しい空港予定地だ。ここで日本の海上保安庁沿岸警備隊が、非常に広大な地域をオイルフェンスと呼ばれる一連の大型浮具を張り巡らした。これは多分海でオイル漏れを抑えるために使われるものだと思われる。そして彼らは、そのフェンスの中へ入らないように命じた。毎日12人かそれ以上の抗議者たちがシー・カヤックに乗り込み、フェンスの周りを行ったり来たりしている。ある者は建設を阻止しようとしてフェンスを乗り越えたりするのだ。

彼らを阻止するために、政府は沿岸警備隊のカッターや高速モーターボートの大群を配備した。カッターは船首をみな建設現場に向けて並んでいて、まるでGreat White Fleet(訳注:白い大艦隊=1907年~09年、ルーズベルトがアメリカの新興海軍力を誇示するために、世界一周巡航に派遣した白塗りの艦隊)のようである。これは抗争中の尖閣諸島/钓鱼岛群岛問題で中国と大きな対決場面になったときに送ったのと同じ部隊を、これらのシー・カヤック隊を追跡するために派遣したのかも知れない。海岸から見ると、それはまるで沖縄がまさに侵略されるかも知れないように見える。これらの堂々とした白いカッター(white cutters訳注:coast guardに属する軽武装の沿岸警備用の小型船)からけたたましい何十隻かの黒いゴムの双発高速ゴムボートが出てくる。それぞれ逞しそうな、ヘルメットをかぶった沿岸警備隊員を乗せている。身体は救命胴着や様々な装備をつけて、ある者はスキューバ・ダイビング用のタンクや足ひれを付けて、抗議側が泳ごうとしたらすぐ飛び込めるように準備していた。
カヤック隊はオイルフェンスを乗り越える技術をマスターした(背を反らせて舳先を海上に上げ、強く漕いでフェンスに乗り上げ、それから身を乗り出して、カヤックを滑り込ませる)。しかし乗り込んだ人々は、すぐさまこれらの巨大な水生の虫けらどもの一群に取り囲まれてしまう。「安全確保のための適切な警備」と彼らは説明するが、彼らがカヤック隊をカヤックからたたき出し、背後から跳びかかり、彼らの頭を水中に沈める行為の説明にはなっていない。それはまた、なぜ彼らを海岸から4km離れた所に連れて行き、珊瑚礁より遥か沖で、彼らのカヤックを外洋に捨て去り、戻れるものなら戻ってみろと言うのか、説明がつかない。カヤック隊の人数が不足して、力負けするけれど、彼らを追い出すためにとても多くのエネルギーが費やされるので、あまり仕事が進まず、彼らは大きな阻止力の主役となっている。そして政府が抗議側に対抗するために組織した巨大な勢力は、政府がいかに彼らを恐れているかという明白な指標である。しかし政府が10~45トンのコンクリートブロックを海に投げ入れ始めているので、建設を止めるための緊急性が増している。

だからカヤック隊もあきらめずに、毎日戻ってくる。


湾内での対決
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第3の対決地点は知事庁舎だ。反基地革新派と反基地保守派の同盟で、座り込みやカヤック抗議行動を実行したのは主に革新派だが、知事庁舎をコントロールしたのは主に保守派だ。そしてこれらの保守派が反基地感情においてどれほど真剣でも、彼らはこの種の対決政治には慣れていない。ゆっくり動き、書類を整理して、普段通り働き、取引をするのが彼らの生活スタイルなので、彼らが新しい情況に適応することは難しことに気づいている。

翁長知事は彼の選挙の後すぐに、慣例に従って、首相と他の官庁を表敬訪問をするために上京した。そして彼らは翁長知事をホテルの部屋にとどまらせたまま、彼に会うことをきっぱり拒否したのだ。脅しに屈せず、彼は2度目の上京をしたが、会えたのは2・3の下級官僚だけだった。大多数の沖縄人は、これが翁長知事個人への侮辱のみでなく、沖縄人全体への侮辱であると判断した。その侮辱が意味するところは、翁長氏の反基地公約が地滑り的勝利をおさめたとしても、阿部政権による政治的意志は、それは顧慮に値しないという扱いを受けるということだった。東京は直ちに過去5年連続増加していた沖縄予算を4.6%削減し、3340億円にすることを明確にした。

現在、翁長知事が直面している大きな問題は、空港施設建設に関する防衛省の大浦湾埋め立て許可申請に対して、前知事の公式承認をどうするかということである。日本の法律では埋め立ては県知事の承認なしでは行うことはできない。そして仲井真前知事がそれを承認した。そして日本の法律では、知事はすでに許可されたものを失効させたり、撤回したりする力を持っている。失効は、結婚の破棄のようなものだ。つまり過程に法的不備があったので、関係は一度も成立しなかった。つまり結局あなたは一度も結婚しなかったということだ。撤回は離婚のようなものである。つまりあなたは法的には結婚した。しかし何か重要なことが変化して、今あなたはそれを終わらせる。埋め立て許可の場合、前者(失効)は法的根拠を持っており、より強力で、より決定的だ。しかし説得力のある方法で失効させるためには、まず全ての法的プロセスが、法律の専門家によって注意深く調査される必要がある。後者(撤回)は法律にもとづかず、むしろ知事の裁量でなされる政治的判断に基づく。それ故、直ちに行うことができるが、東京の政府によって無視される危険性も大きい。

知事は、法律専門家や環境問題専門家の委員会を設立した。埋め立て失効を本気で正当化するために、埋め立て許可の発行過程で、法的不備があったかどうかを調査するためだ。委員会の委員長は、この調査を完成するには6月末までかかると言っている。それはとても長い期間で、カヤック隊が毎日の海の闘いを続け、座り込み隊が24時間の監視を続けられるか心配だ。さらに大浦湾の貴重な珊瑚の楽園の破壊がすでに始まっていて、7月までに珊瑚がどれくらい残っているかわからない。だから工事撤回命令を直ちに出すように、知事に大きな圧力がかかっているのは、まったく当然のことなのだ。しかしこれに対して、たとえそのような命令が出されたとしても、東京の政府がそれを無視するだけだ、ということはありそうなことだ。これまで知事がしてきたことを彼らが全て無視してきたのだから、その可能性がある。このことは、カヤック隊と座り込み隊がどんなことがあっても抗議活動を続けなければならないことを意味する。それに加えて、もし失効命令が7月に出されたとき、いま撤回命令を出すことが、法廷では有効でなくなってしまう、という弁護士の意見もある。

これを書いている時点で、この厳しいジレンマがどれほど解決されるかはっきりしない。しかしキャンプ・シュワブで抗議する者たちの負担が、すぐ軽くなるという見込みは余りない。

私が住んでいる那覇から、辺野古の座り込みに行くバスが毎日出ている。それは観光バスなので、マイクがある。そして1時間半の旅は、かなり面白い政治討論の場になっている。先週私がそのバスに乗っていたとき、ひとりの女性が「とにかく何が起ころうとも、私たちはこの闘いに勝たなければならない。もし私たちが勝てなかったら、それは沖縄の終わりだ」と言っておられた。多くの人々がそう感じている。この闘いは違うんだ。東京の政府は、これまでの方法、つまり、お金、裏取引、約束破り、分割支配が通用しないとわかり、あらゆる正面攻撃を、沖縄や、それを支持し、信じる者達に仕掛けてきた。彼らはこの勇敢で独立精神豊かな人々を、今度ばかりは打ち破ろうと狙っているようだ。政府側は失敗するか、それに近い結果になると私は思う。

もしこの記事の読者で、この危機にある沖縄の人々へ支援をしたいとお考えの方がいたら、あなた方にできる様々なことがある。まず、あなた方の声を上げることができる。マイクや手紙やプラカードやビラなどで、誰かと個人的にそれぞれ可能な方法で声を上げることができる。もし国外に住んでいるのなら、あなた方の声を日本大使館や領事館に行って、または通りの外から届けることができる。もしあなたがアメリカに住んでいるなら、あなたの考えを国会議員や下院軍事委員会委員長や米軍海兵隊司令官や大統領(正確には苦情処理担当)に知らせることができる。(もしあなたがアメリカ政府の人に接触できるなら、現在の方針を続けると、彼らが沖縄へ出入りする権限を全面的に失う現実的な危機があるということを彼らに気づかせられるかも知れない。私は全くかまわないのだが、彼らにはもう少し慎重に自分たちが何をしているかを考えさせる刺激になるかもしれない。確かに普天間基地を移転する最高の場所は、アメリカ本土なのだから)。もしあなたが日本に住んでいて、可能なら沖縄に行って、自分でその情況を見て、そしてさらには座り込みに加わることができる。

そしてもしあなたが沖縄の外に住んでいる日本国民なら、あなたはもう一つの極めて強力な武器をもっている。全ての沖縄運動の中心的な命題は、米軍基地の不平等な分布(75%が小さな沖縄にある)が正しいことではなく、差別的であるということなのだ。いま沖縄と連帯する行動は、この命題「沖縄を差別するな」に連帯して行動することだ。そして連帯する簡単な方法は、自分の住んでいる地域で「平等負担の会」を結成し、米軍基地を好きではないが(少なくとも日本の世論が米軍基地を日本の外へ移転させることを支持するまでは)沖縄の負担を軽減するために普天間海兵隊航空基地を自分の地域に受け入れる用意があると宣言するのだ。このような宣言が、辺野古に基地を押しつける政府の理由、すなわち「どこも普天間基地を受け入れるところはない」という口実を打ち砕く効果を持つ。そしてこれが沖縄人の運動を非常に元気づけることになるのだ。

もちろん他の行動もたくさんある。もしあなたが沖縄を支援したいと思ったら、今がその時なのだ。


ダグラス・ラミスは元沖縄の米国海兵隊員、現在は沖縄に在住して、沖縄国際大学講師、著書に『ラディカル・デモクラシー』、その他、日英両語で書かれた著書が多数。Japan focusの寄稿・編集者者であり、津田塾大学の元教授。


「軍事力を行使せずとも簡単に“イスラム国”の残虐行為をやめさせる方法がある」- ふたりのアメリカ女性専門家

「イスラム国」、Sibel Edmonds、Phyllis Bennis、湯川遥菜・後藤健二、
平和研究、国際教育、アメリカ理解 (2015/02/03)


Sibel Edmonds             Phyllis Bennis
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 イスラム武装集団「イスラム国」ISISが、拘束している日本人2人(湯川遥菜・後藤健二)をふたりとも殺害したニュースで、ふたたび日本中に衝撃波が走りました。
 それに関して、私は前回のブログで、「いわゆるイスラム国ISISについては不可解なことが多すぎます。突然この集団が大手メディアに登場したとき、私にふたつの疑問が湧きました」と述べ、その理由を次のように書きました。

 しかし、この「イスラム国」については不可解なことが多すぎます。突然この集団が大手メディアに登場したとき、私にふたつの疑問が湧きました。
 ひとつは彼らがシリア方面からイラクの首都バクダッドに向かって進撃してきたときの速度があまりにも速かったことです。
 アメリカのブッシュ政権が嘘をついてイラクに侵略を開始したとき、イラク南部のクウェートから上陸を開始したのですが(2003年3月20日)、バクダッドに達する(4月7日)までに要した日数よりも、はるかに短い日数で、バクダッド近くまで侵攻しています。
 世界最大最強の軍隊を誇るアメリカ軍が、イラク戦争でイラク軍と闘いながらバクダッドに達することができたよりも短い日数で、どうして「イスラム国」の武装勢力が、易々とバクダッド近くまで侵攻できたのでしょうか。
 というのは、イラク軍はアメリカの最新兵器で武装されていましたし、裏でアメリカの援助や軍事指導があったのですから、寄せ集めのゲリラ部隊であった「イスラム国」の武装集団と闘って、そんなに簡単に敗走するというのは、考えられないからです。

 もう一つの疑問は、アメリカの情報機関は、「イスラム国」なるのものが突然うまれてきたこと、その武装集団がバクダッドに向かって進撃していたとき、なぜそれを放置してきたのか、という疑問です。
 いまアメリカはシリア領内で「イスラム国」の武装集団を空から爆撃しているわけですが、ニュースの映像を見ていると、「イスラム国」の武装集団がバクダッドに向かって進撃しているとき、たくさんの武装集団を乗せたトラックが旗をなびかせ列をなして砂漠を横切っていく光景が、繰りかえし画面に映し出されました。
 アフガニスタンやパキスタン、さらにはイエメンにおけるアメリカの無人爆撃機を見れば分かるように、米軍は地上を走る車の人物までも空から特定して攻撃できる能力を誇っているのですから、砂漠をある意味では裸同然の状態で走っているトラックを空から攻撃して壊滅させることができたはずなのです。
 それが、ほとんど無傷の状態でバクダッド近くまで侵攻できたのは、実に不可解としか言いようがありません。これが大手メディアに「イスラム国」が登場したときに私の頭に浮かんだ二つ目の疑問でした。


 私が前回のブログをアップしたとき、もうひとつ「大きな疑問」を書き忘れていたことを思い出しました。それは「イスラム国」ISISの資金源はどこから来ているのかという点でした。
 ひとつの説明は「ISISはイラク北部の石油がたっぷり採れる地域を占領しているので、その原油を売ったお金を資金源にしているのだ」というものです。この説明がもし正しいのであれば、その売買をストップさせれば簡単に彼らの残虐行為を制止できるはずです。
 というのは、ウィキリークスの創始者アサンジ氏が、今は牢獄につながれているマニング上等兵からの情報をもとに、アメリカのイラクにおける戦争犯罪行為を暴露したとき、オバマ大統領は、ウィキリークスの資金源を断つために献金ルートをすべて遮断し、その結果、ウィキリークスは苦境に追い込まれたからです。
 またオバマ氏は、「化学兵器を使って自国民を殺している」という口実でシリアを爆撃してアサド政権を倒そうとしたのですが、それが嘘だということをプーチン氏によって暴露されたため、今度は「マレーシア航空機の撃墜はロシアがやった」という口実で、ロシアに経済制裁を加えました。
 (マレーシア航空機の撃墜は、キエフ政府軍の戦闘機によるものであることが確実になりつつあります。)
 その結果、ロシア経済は苦境に追い込まれ、そのことがロシアを中国との貿易強化へと大きく衝き動かすことになりました。
 (この経済制裁はロシアとの貿易に大きく依存していたEU諸国をも同時に苦しめることになりましたが、アメリカにとってはEUそのものがアメリカの競争相手になりつつあったのですから、一石二鳥でした。)
 それはともかく、このように「経済制裁」という手段を使えば、簡単に「イスラム国」ISISの活動を止めたり弱体化させることができるのに、アメリカは一向にそのような手段をとろうとはしません。それが私には不思議でなりませんでした。

 こんな疑問をもっているのは私だけかと思っていたら、DemocracyNow!で同じことを主張している人物がいることを発見しました。
 アメリカのシンクタンク「政策研究所」[Institute for Policy Studies]の研究員フィリス・ベニス(Phyllis Bennis)氏です。
 彼女は、「イスラム国」ISISの資金源はサウジアラビアだと述べています。しかも次のように言っているのです。

王制独裁国家サウジは極めて厳しい統制国家だから、サウジ政府にその気さえあれば、サウジから出ていくお金がサウジの王子からであろうが普通の個人からであろうが、それにストップをかけ、それを封じ込めるとは可能だ。
<原文は以下のとおり>
But this is a very tightly controlled society, where if there was an interest by the government in stopping its own citizens, whether they are Saudi princes or ordinary citizens, who are the source of a huge amount of the money funding these organizations, including ISIS, it could be contained.

http://www.democracynow.org/2014/9/15/is_there_a_diplomatic_solution_to_isil#

 
さらに彼女は、「したがってアメリカがもつ影響力をサウジに行使しさえすれば、イラクやシリアを爆撃して、無実の一般市民を殺す必要もない」として、次のようにも述べています。

 サウジはまた、この2年間で600億ドル相当もの武器をアメリカから購入し、その多くは結局、ISISの手にわたっている。[中略] サウジとアメリカの同盟関係は極めて強力だから、アメリカは新しい戦争(=第3のイラク戦争)で死の商人として儲けている国内の企業やサウジ政府に圧力をかけさえすれば、ISISのような恐ろしい組織にわたる資金や武器に歯止めをかけることができる。
<原文は以下のとおり>
But there is $60 billion worth of arms that they've been engaged in buying from the United States over this last two years. Many of those arms are the ones ending up in the hands of ISIS. It's U.S. arms and it's Saudi arms that are ending up there. (中略)
And the U.S.-Saudi alliance is such that if the U.S. chose to challenge the arms sellers in this country, who are making a killing on this new war, this Iraq War 3.0, we might say—if they were to prepared to challenge those arms suppliers, and thus challenge the Saudi government, there could be a real effort to put a stop to the funding and arming of these terrible organizations like ISIS.
http://www.democracynow.org/2014/9/15/is_there_a_diplomatic_solution_to_isil#


 フィリス・ベニス女史によれば、シリアに送り込まれたアサド政権打倒のための反乱軍には、ISISの他にも、アルヌスラ(the al-Nusra Front)など多くの雑多な組織があるのですが、彼らはサウジだけでなく、カタール、クウェート、アラブ首長国連邦など、他の王制独裁国家からも支援を受けています。
 しかし「デモクラシーナウ」の上記インタビューでベニス女史は、「その中でもサウジが資金援助の中心になっている(but Saudi Arabia is very much at the center of this)」と述べているのです。
 しかも、そのサウジと最も親しい同盟国がアメリカであり、このイスラム原理主義の王制独裁国家は、刑罰として「首を切る」Beheadingなどの酷刑を実行してきました。2014年だけでも87人が、この刑を実行されています。

「アブドゥラ国王の下で『近代化』を進めてきたサウジアラビアの、衝撃的な七つの事実」
Seven shocking facts about Saudi Arabia under ‘modernizing’ reign of King Abdullah

 ところがオバマ氏は、このようなイスラム原理主義=シャリーア法に基づく残酷な鞭打ち、手足の切断、首切り死刑などを実行してきたサウジアラビアとアブドゥラ国王を、「テロ国家」とか「テロリスト」と呼ぶどころか、このたびの訃報の際して、「アラブの啓蒙君主」として讃えました。
 他方でシリアは、世俗主義の国家であり、このような厳しいシャリーア法は採用していませんし、選挙もおこなわれていますが、オバマ大統領は選挙もおこなわないサウジと手を組みながら、「アサド政権の打倒」を叫んできました。
 ですからオバマ氏は、表向きは、ISIS「イスラム国」を残酷なテロ集団と非難し攻撃しながらも、実際は裏で「アサド政権打倒」のためにISISを支援してきたのではないかと疑われてきたのです。
 実際、アメリカによる「イスラム国」への爆撃が進めば進むほど「イスラム国」の領土は広がって行くばかりです。私は前回のブログで、そのことを次のように書きました。

  しかも、最近の映像を見ていると、アメリカによる「イスラム国」への爆撃が進めば進むほど「イスラム国」の領土は広がって行くばかりです。これは、ますます奇怪です。『櫻井ジャーナル』によると、昨年9月と比較してシリア領内で「イスラム国」が支配する地域は3倍に拡大したそうです。
http://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201501190000/
 もともと「イスラム国」の武装集団は、シリアのアサド政権を倒すために、アメリカやイスラエル、フランスなどのEU諸国、さらにはサウジアラビアなどイスラム原理主義諸国によって訓練や支援を得てシリアに送り込まれた種々雑多な反乱軍の一派に過ぎませんでした。それなのに、いつのまにアメリカや欧米と敵対する勢力になったのでしょうか。
 このように「イスラム国」についての疑問は尽きることがありません。そんな疑問をいだいていたとき、次に紹介するカナダのオタワ大学教授ミシェル・チョスドフスキー氏の次の論考を目にして、その疑問の一部が解けたような気がしました。

「オバマ大統領が皆に知られたくない、「イスラム国」に関する26の事実」
Twenty-six Things About the Islamic State (ISIL) that Obama Does Not Want You to Know About


 このチョスドフスキー教授の意見は、つまるところ「イスラム国」なるものは、かつてアメリカがソ連と闘わせるためにつくりあげた「ムジャヒディーン」(聖戦士)やビンラディンの「アルカイダ」と同じく、アメリカ国民を戦争に賛成させるための道具にすぎない、とするものでした。詳しくは上記の翻訳を御覧ください。
 ところで、これと同じ意見を、元FBI職員だったエドモンズ女史(Sibel Edmonds)がRTへのインタビューで述べていて、驚きました。と同時に元はFBI職員だったひとの意見だけに、非常な迫力と説得力を感じました。英文を読むゆとりのある方はぜひ参照ください。
「アメリカは、テロ戦争産業を維持するために、テロの恐怖を復活させたいのだ」
U.S. wants to revive terror scare in order to keep up the terror war industry - FBI whistleblower


 かつてチョムスキーは「ソ連が崩壊して一番困ったのはアメリカの国防総省やCIAだった」「自分の仕事がなくなって失業するかも知れないからだ」「だから新しい敵をつくりださなければならなかった」と述べたことがあります。
 私はちょうどその頃カリフォルニア州立大学ヘイワード校で1年間、日本語教師をしていたことがあるのですが、そのとき知り合いになった日本人学生(彼女はヘイワード校の学生でした)の夫君が米軍兵士だったのですが、実際に基地や兵士が減らされ、彼女の夫君も職探しに苦労したと言っていました。
 こうしてソ連崩壊後に新しくつくられた敵の第一号が中米パナマのノリエガ将軍であり、この作戦がブッシュ大統領によって成功したことに味をしめて、次の敵に仕立て上げられたのがイラクのフセインでした。「アルカイーダ」という新しい敵がつくられたのも、ほぼ同じ頃です。
 その後ビンラディンが死亡して、また新しい敵が必要になりました。それが「ISIS」だというのが、先述の元FBI職員エドモンズ女史の意見でした。もう「アルカイーダ」の賞味期限がもう切れたからだそうです。言われてみればなるほど、今回のオバマ大統領の一般教書演説から「アルカイーダ」という単語が消え、代わりに何度も登場したのが「イスラム国」でした。
 彼女は情報翻訳官としてFBIに勤めていた頃、ワールドトレードセンターを攻撃する計画があることを知らせる情報をつかんで、それを翻訳して上司に伝えたところ、まったく取りあげてもらえなかった経験から、内部告発者になりました。そしてアメリカの政治史を徹底的に研究した結果たどりついたのが上記のような結論だったそうです。
 彼女によれば、「イスラム国」の賞味期限が切れた頃には、今度は「イスラム教」「イスラム教徒」そのものが次の敵として祭り上げられるだろうから、アメリカは半永久的に戦争を続けることができる。だからアメリカの軍産複合体は今後も武器の製造・販売に困ることはないだろう。これが彼女の意見でした。
 
いまアメリカでは刑務所が民営化されつつあるだけでなく、軍隊までもが民営化されつつあります。民営化刑務所は犯罪者を更生させる施設ではなく儲けの手段になってしまいました。
 (いまアメリカでは、 "School to Prison Pipeline" 「学校から刑務所への直通パイプライン」という用語すら定着しつつあります。学校や裁判所が民営刑務所に空き室が出ないよう、経営に協力しているのです。)
 民営化された軍隊も国民を守る部隊ではなく儲けの手段になり、戦争をつくらなければ破産してしまいます。だからこそ無理やり悪魔化した敵をつくりあげ、国民の恐怖心を煽り立てます。
 かくしてアメリカの民間軍事会社「Black Water」はイラク戦争で悪名を高めましたが、ジェレミー・スケイヒルの著書『Black Water』およびこれを元にしたドキュメンタリー賞受賞の映画『Dirty Wars=汚い戦争』によって、その残虐非道ぶりは完膚無きまでに暴露されました。
 しかし、この民間軍事会社「Black Water」が今こっそり名前を変えて、ウクライナその他で相変わらず暗躍しているようです。それにしても、「黒い水=石油」という会社名がすでにアメリカによるイラク侵略の本質をみごとに表してはいないでしょうか。
 アメリカでは国内の製造業のほとんどが海外に移転し、多くの国民には仕事がないか、あっても安い賃金労働しか残っていません。ですから、国民の購買力は激減して経済は疲弊しています。これを活性化するのが戦争です。
 考えてみればアメリカも二度の大戦を経て世界を支配する大国へと成長しました。ランドルフ・ボーンは、第一次大戦の頃、アメリカの参戦に反対し、「戦争は国家の健康法である」という有名な論文で、このことを見事に喝破しました(ハワード・ジン『肉声でつづる民衆のアメリカ史』上巻、532-539頁)。ボーンは「戦争は国家の行事であって国民の行事ではない」と言うのです。
 だからこそ、第一次大戦に賛成しない国民をむりやり納得させるために開発されたのが、プロパガンダ=宣伝扇動の技術だったとチョムスキーは述べています(『アメリカが本当に望んでいること』現代企画室)。
 
それはともかく、私が今度の「日本人の人質事件」で驚いたのは、すでに日本にもそのような民間軍事会社が存在し自衛隊と結びつきを深めているということでした。
 安倍政権になってから「武器輸出3原則」が大幅に緩められましたから、日本の軍産複合体も本格的に動き始めるでしょう。日本人の貧困化も進んでいますから、国民の購買力は落ちています。だとすれば大企業が儲ける一番手っ取り早い方法は、武器を海外に売ることであり、そのためには紛争や戦争が必要です。
 安倍政権がアメリカのプードル犬になって、アラブ諸国の紛争に介入するようになれば、フランスで起きたような事件が日本でも起きる可能性があります。むしろそれが、日本を米仏と同じ監視国家にするための、安倍氏の狙いなのかも知れません。それは戦争にのりだすための土台になるからです。
 もう一つ、この事件で私が心配していたことがあります。それは安倍内閣は人質になったふたりの人物を救う努力をしないかもしれない、という心配でした。
 というのは、彼らの首が切られた残酷な映像が全国に流れれば、国民の怒りが安倍内閣にたいしてではなく、ISIS「イスラム国」に向かって爆発し、それを口実にして「邦人を救うためには自衛隊を海外に派遣できるようにするための新しい法律が必要だ」という宣伝をすることができるからです。
 しかし、この私の心配は、どうも本当になったようです。

「安倍首相は邦人救助のための海外派兵を検討している」
PM Abe to debate possibility of Japan's military rescuing citizens abroad


<註1> また、メディアがこの人質問題で占領されれば、今まさに正念場を迎えている沖縄・辺野古の闘いが、大手メディアから全く消えてしまう可能性もあります。これもアメリカ政府や安倍内閣にとっては実に好都合な事態です。

<註2> イスラム国 ISISが、サウジなどの王制独裁国家だけでなく、アメリカの強力な同盟国であるパキスタンでも活動している事実が、明らかになりました。イスラム国へ送り込む人材獲得の拠点がパキスタンに存在していたというのです。

「秘められた真実:イスラム国の兵士募集係がアメリカ経由で資金を得ていたことを認めた」
The Forbidden Truth: Islamic State (ISIS) Recruiter Admits Getting Funds from America

<註3> なお、この事件で人質になったふたりの人物の不可解な背景については下記ブログ「世に倦む日々」を御覧ください。この記事を読んでいる限りでは、このふたりは政府の特命で動いていた可能性もあるからです。彼らは政府の道具として使われたのでしょうか。
http://critic20.exblog.jp/23435863/
*後藤健二の神話化と神格化の洪水となった日本のマスコミと世論、2015-02-04
*湯川遥菜と後藤健二の命の尊厳の格差 - 差別に抵抗を感じない世論、2015-02-02
*「英語のできない湯川遥菜が工作員のはずがない」への反論、 2015-01-29
*後藤健二とNHKと外務省の真実 - 「政府関係者」とは誰なのだ、2015-01-27
*人質を見殺しにする安倍晋三の不作為 - 「人命第一」の二重思考、2015-01-22
*後藤健二の疑惑 - マスコミが正確に報道しない湯川遥菜との関係、2015-01-21
*「湯川機関」の謎 - マスコミはなぜ湯川遥菜と田母神俊雄の関係を隠すのか、2014-08-25
*湯川遥菜の正体は何者か - PMCに仕事と資金を与えた黒幕は誰なのか、2014-08-19


香港「オキュパイ・セントラル」、別名「雨傘革命」を考える(続)

平和研究、アメリカ理解、国際教育 (2014/11/17)

 10月8日のレイバーネットTVで、「いま香港で何が起きているのか?―香港で起こっている民主化運動の世代交代」と題する番組が放映されました。
 この直前に「証拠で示す“慰安婦問題”の真実」と題する番組があり、そこには渡辺美奈さん(Wam:女たちの戦争と平和資料館事務局長)が実名で登場しているのに、これだけは「雨傘太郎」なる匿名人物が出てきて香港情勢を解説していました。
 なぜ素性を明らかにして実名で解説できないのか不審に思っていたら、内容的にもアメリカが世界で展開している現在の惨状をあまりにも知らない一方的な解説で、このままでは、ウクライナだけでなく香港が発火点になって、ユーラシア大陸全体が不安定化し内乱や戦争がいっそう進行するような危険性を感じました。
 そこで、目の前に急を要する仕事が山積しているだけでなく体調が相変わらずおもわしくないのですが、このまま放置しておくわけにはいかず、思い切って体力の続く限り私が日ごろ考えてきたこと、香港について慌てて調べたことを綴ったのが、前回のブログでした。今回は、その後に分かったこと思ったことを若干だけ追加/補足することにします。


 まず最初に前回のブログの末尾に「追記」したものを以下に再録しておきます。というのは、上記のレイバーネットTVで雨傘太郎氏は、アメリカが展開している世界戦略のなかで「オキュパイ・セントラル」がどのような意味をもっているのかについて一言も言及していないからです。
 <香港の問題は、香港だけを見ていても理解できない複雑さを抱えています。アメリカの国家戦略は世界的規模で進行していますから。
 その一例は「イラン・コントラ事件」です。アメリカはフセイン大統領をけしかけてイランと戦争させると同時に、イスラエルを通じてイランに武器を売却し、その資金で中米のニカラグア左派政権をつぶすべく反共ゲリラ「コントラ」に武器を供与していました。
 しかもフセインが「イラン・イラク戦争」で使ったとされる化学兵器もアメリカがイラクに与えたものでした。つまり「事実は小説よりも奇なり」なのです。このような地球を一周するような作戦は凡人の理解を超えています。
 それはともかく、香港の問題は、「イラン・コントラ事件」と同じように、地球を半周したウクライナ情勢と深く連動しています。ですからウクライナ危機を理解していないと、香港問題の本質は見えてきません。
 だとすればウクライナ問題についても詳しく解説しなければならないのですが、すでに体力が尽きています。とはいえ、ウクライナ危機については、すでにこのブログで何度も論じているので、そちらを参照していただければ幸いです。>


 上記のレイバーネットTV(2014/10/08)における雨傘太郎氏の解説を聞いていて、これでは「木を見て森を見ない」解説ではないか、これでは反中国感情に乗っかった大手メディアの報道ぶりと、ほとんど変わらないのではないか、と思ったのでした。
 というのは、「イラン・コントラ事件」にさかのぼるまでもなく、最近のウクライナ危機、いま惨状を呈しているシリア情勢、その直前に展開された「アラブの春」をたどってみれば、それがすべて一本の糸でつながっていることが分かるはずなのです。
 エジプトで「アラブの春」が展開されているとき、最初はその本質がよく分かりませんでした。しかしアメリカに主導されたNATO軍が国連決議に違反してリビアを空爆し始めてたとき何かこれはおかしいと思い始めました。
 リビアは隣国のどこをも侵略していないし、サウジアラビアのような王制独裁国家でもありません。それどころかリビアでは医療も無料でしたし、イスラム国家でありながら政教分離の世俗国家で、女性でさえ無料で大学に行くことができましたから、そこで軍事独裁国家のエジプトと同じ民衆反乱が起きるはずがないからです。
[藤永茂「リビア挽歌1~2]
 これはシリアについても同じで、アサド大統領は「独裁者」だとして攻撃されているのですが、それなら、なぜアメリカやEUは、シリアではなく、サウジラビアやバーレーンなどの王制独裁国家で展開されている「民主化運動」を支援しないのでしょうか。少なくともシリアは政教分離の世俗国家で選挙もおこなわれていました。
 そのうえ最近あきらかになってきた情報では、サウジラビアやバーレーンなどの王制独裁国家(かつイスラム原理主義国家)はシリアの反体制運動に武器や資金を供給し、それが現在のISIS=「イスラム国家」を産みだしました。皮肉なことに、それを裏でアメリカやEUが支援していたのです。


 このシリア内戦が終わらないうちにウクライナ危機が起きました。アメリカやEU、そしてNATOの言い分では、ロシアが領土的野心をもってウクライナ危機を引きおこしたというのですが、当時のロシアは「冬季オリンピック」を成功させるのに精一杯で、そんなことに精力を注いでいるゆとりはありませんでした。
 この詳しい経過は、ウクライナ情勢の読み方(1~7)その他で詳しく書きましたから、再論しません。ただ、「アラブの春」から「ウクライナ危機」までをつなげている「一本の糸」とは何か、それはRegime Change「政権転覆」すなわち「クーデター」というキーワードです。
 今のウクライナで成立したポロシェンコ政権は、アメリカが裏で画策し、ネオナチが実行部隊となったクーデター政権であったことは、小手川大助氏(キヤノングローバル戦略研究所研究主幹、元IMF日本代表理事)ですら認めていることです。
 詳しくはブログ[2014/04/22]で紹介しましたので割愛しますが、アメリカの名門プリンストン大学のステファン・コーエン教授も同じ意見です。
Stephen Cohen: A New Cold War? Ukraine Violence Escalates, Leaked Tape Suggests U.S. Was Plotting Coup
 さらにコーエン氏は「アメリカがEUとNATOを焚きつけて、このままロシアを追い詰めれば、核戦争になりかねない」「今や核戦争5分前だ」と警鐘を鳴らしています。
Stephen Cohen: NATO's games with Ukraine bring world to 5 minutes before nuclear midnight


 同じことをチョムスキー氏も言い始めました。「NATO軍は、アメリカが裏であやつる干渉戦争=政権転覆のための軍隊だ」というのです。
Chomsky: NATO is a U.S.-run intervention force(November 07, 2014)
 またチョムスキー氏は「レーガン大統領は当時、ゴルバチョフにたいして『NATOは東欧には1インチたりとも進出しない』と約束した。それを踏みにじってNATO軍はロシア国境直前にまで迫っている。今や核戦争寸前だ」とも言っています。
Chomsky: World ominously close to nuclear war(November 7, 2014 )
 アメリカがリビアに爆撃を加えようとしたとき、ロシアと中国は「国連決議違反だ」と強く反対しましたし、シリアを「化学兵器を使った」という理由で爆撃しようとしたときも、それが嘘だということを暴露して攻撃をやめさせました。
 また、ロシアが中国やBRICS諸国と一緒になりWB世界銀行やIMF国際通貨基金に代わる新しい国際金融機関をつくろとしていることも、スノーデンをかくまっていることも我慢がならないことでした。これらのことがすべて今回のウクライナ危機の背景にあることです。
 ですから、ウクライナ危機を理由にロシアに経済制裁を加え、口実さえ見つかれば戦争に持ち込んでロシアを叩きつぶしたいというのが、オバマ大統領の本音でした。というのは通常兵器でNATO軍(=アメリカ軍)にまさる軍備をもつ国は世界に存在しないから、戦えば勝てると思っているのです。
 となると、ロシアが降伏したくなければ残るのは核兵器のみで、だからコーエン氏やチョムスキー氏の言う「核戦争5分前」ということになるわけです。


 チョムスキー氏は「TPPというのは、アメリカ多国籍企業の利益だけでなく、中国封じ込めの一貫でもある」と述べていますが、このような情勢を考えれば、ロシアの次に中国が標的になるのは時間の問題でした。
 ブッシュ大統領のときは、戦争をするといっても、手を出した国はアフガニスタンとイラクだけでした。またイラクとアフガンに手を取られていたせいか、他国にクーデターを仕掛けることもありませんでした。
 ところがオバマ氏になると、アフガニスタンとイラクだけでなく、リビア、シリア、イエメンなど手当たり次第に戦争を拡大し、次々と政権転覆の画策を始めました。中南米でもホンジュラスやベネズエラで不安定化工作が進行しました。
 あまり知られていませんが、中米のホンジュラスではクーデターが成功しました。中道左派の政治家として知られていたセラヤ大統領が、2009年に、とつぜん軍隊によって拘束され、空軍基地に連行されたのちコスタリカのサンホセに追放されたのです。このように、オバマ大統領になってからは世界中に内乱内戦・政権転覆が広がる一方でした。
 ですから、ウクライナ情勢を見ていて、私は次の標的は中国に決まっているが、オマバ氏は中国のどこに、いつ火をつけるのだろうか、と思っていました。私の予想でいちばん可能性が高いのは新疆ウイグル地区でした。イスラム教徒が多いところなので、反乱を起こさせるのは容易ですから。
 ところが予想に反して、火がついたのは香港でした。しかし、これは私の勉強不足でした。香港への工作はずっと以前から始まっていたのです。
 ウクライナの場合もヌーランド女史(米国務次官補)の言によれば10年も前から50億ドルものおかねをかけて準備してきたと言っているのですから、香港の場合もかなり前から準備されていたと考えるべきでしょう。
 ベネズエラでチャベス追い落としのクーデターが失敗した後も、アメリカは政権転覆のために実に綿密な計画を立てて、反政府勢力を支援しました。その詳細は今では機密解除されて文献で明らかになっています。時間があれば下記の研究をぜひ熟読していただきたいと思います。
ベネズエラに対する米国の介入の仕組み
3部構成の第1部:いくつかの歴史上の前例
第2部:政府の計画を偽装する米国民間企業体系の利用
第3部:ベネズエラにおける共和・民主両党基金とのUSAIDの4つの契約書の分析
第1部~第3部の単一HTMLファイル


 そもそも東欧で「色の革命、カラー・レボリューション」で一連のいわゆる民主化運動が起きましたが、これもいま考えてみればNED(アメリカ民主主義基金)その他が裏で資金援助と戦術指導をしたものであることが分かっています。
 CIAの元高官レイ・マクガバンも、「旧ソ連にたいする反感・不満を利用して民衆を扇動し、その成果を自分たちがもらう」というのが、一連の「カラー・レボリューション」だと言っています。
http://tacktaka.blog.fc2.com/blog-entry-178.html
http://tacktaka.blog.fc2.com/blog-entry-182.html
 過去をさらにさかのぼれば、ポーランドでワレサが独立労組「連帯」を率いていわゆる民主革命を成し遂げましたが、これもよく調べてみると、アメリカの「二正面作戦」が裏で進行していたことが分かりました。
 それについては前回のブログで紹介しましたので詳細は割愛しますが、CIAが裏で支援していたポーランド独立労組「連帯」が現在のウクライナのクーデターと、どのようにつながっているのか、「連帯」議長だったワレサ氏は、いま何をしているのか、それを教えてくれる情報を見つけましたので、以下に紹介しておきます。

 <ところで、アメリカが東ヨーロッパへの揺さぶりを本格化させるのは1970年代のこと。1979年にハンガリー生まれの投機家、ジョージ・ソロスは「オープン・ソサエティ基金」を開始、84年にはハンガリーでも基金を創設した。
 1979年にはポーランド生まれのズビグネフ・ブレジンスキー米大統領補佐官がソ連軍をアフガニスタンへ誘き出すための秘密工作を始め、エルサレムではアメリカとイスラエルの情報機関に関係する人びとが「国際テロリズム」に関する会議を開き、「ソ連がテロの黒幕」だというキャンペーンを開始している。
 そして1980年には「連帯」が設立されるが、この反コミュニスト労組は「西側」から支援を受けていて、活動資金のほか、当時のポーランドでは入手が困難だったファクシミリ、印刷機械、送信機、電話、短波ラジオ、ビデオ・カメラ、コピー機、テレックス、コンピュータ、ワープロなどが数トン、ポーランドへアメリカ側から密輸されたと言われている。「連帯」の指導者だったレフ・ワレサも自伝の中で、戒厳令布告後に「書籍・新聞の自立出版所のネットワークが一気に拡大」したと認めている。(レフ・ワレサ著、筑紫哲也、水谷驍訳『ワレサ自伝』社会思想社、1988年)>
 いま、キエフのクーデターにポーランド政府が協力していたとポーランドで報道されている。ウクライナのネオ・ナチは2004年以降、バルト3国にあるNATOの訓練施設でメンバーを軍事訓練していると言われているが、ポーランド外務省は2013年9月にクーデター派の86人を大学の交換学生を装って招待、ワルシャワ郊外にある警察の訓練センターで4週間にわたり、暴動の訓練をしたという。
 訓練の内容には、追跡技術、群集操縦、ターゲットの特定、戦術、指揮、緊張した状況における行動制御、警察のガス弾に対する防御、バリケードの建設、そして銃撃のクラスにも参加して狙撃も学んだという。そうした訓練をキエフで生かしたわけだ。
 このように、CIAの秘密刑務所が設置された国のひとつであるポーランドは現在、アメリカの手先として活動している。そのポーランドをアメリカが支配する突破口を作った「連帯」。その労組で議長を務めたワレサはポーランド大統領を経て2002年にアメリカのソフトウェア会社の重役に就任、資本主義社会の「成功者」になったと言えるだろうが、大多数のポーランド人やウクライナ人には縁のない話だ。>
 
出典「櫻井ジャーナル」(2014/04/18)


 以上のような事実を考えれば、現在の香港をアメリカが指をくわえて黙ってみていたということは、まず考えられません。中東・中南米・ウクライナの「不安定化工作」をみれば分かるように、オバマ氏は、前大統領ブッシュ氏よりもはるかに「タカ派」ですから、香港にたいして何もしていないと考える方がおかしいのです。
 にもかかわらず、このことを指摘する学者・研究者がほとんどいないのが非常に不思議でした。NHKや大手メディアが「反中国感情」を煽り立てる流れに乗って「雨傘革命」を賛美するのは当然としても、日ごろ大手メディアを批判している側までもが、この運動を手放しで褒めそやすのでは、少し待て!と言いたくなるのです。
 そう思っていたときに前回のブログを読んだ知人が「こんな記事を見つけましたが」と言って、堤未果「香港デモの真相-民主化の先にあるのは『明るい未来』なのか」と題するコラム記事(『週刊現代』10月25日号)をもってきました。その一部を以下に引用します。
 <アメリカでは80年代以降,急速に拡大し政府へへの影響カを得た多国籍企業の意向で、世界各地の市場開放政策がとられている。アメリカ国務省から資金を受けるNED(全米民主主義基金)は世界中の反政府・民主化デモを後押しし、資金や戦略指導などを行ってきた。政権倒壊後に開かれた市場は、例外なく彼らのビジネスチャンスになっている。
 今回の香港の民主化デモも同様だ。14年4月、NED傘下のNDI(全米民主国際研究所)にて、オキュバイらセントラル主宰者の一人であるマーティンー・リーは、香港には中国本土を、香港と同じ欧米式統治に変える役目があると述べている。香港での影響力を維持したい米系多国籍企業や投資家たちにとっても、今回のテモは重要な意味を持っているのだ。>



 日本のジャーナリストでも、このような発言をしているひとがいることを知って、少しホッとしました。しかし10月8日のレイバーネットTVの番組では、上記のような分析はまったくありませんでした。
 その後レイバーネットで紹介されている香港情勢を読んでいても、「左翼21」というグループの声明その他が紹介されていますが、アメリカが世界的に展開してきた「色の革命、カラー・レボリューション」についての分析は読んだことがありません。
 香港の若者たちが真摯な気持ちで運動していることは疑うつもりはありませんが、「オキュパイ・セントラル」には多くの分派があり、それらのいくつかが、NEDその他のNGOによって操作されている可能性は十分あるわけですから、それにたいする分析がほとんどないのは実に奇妙です。
 それはともかく、アメリカの裏の援助によって、たとえ自分たちの闘いが勝利し、中国が崩壊したとしても、その後の未来はロシアやポーランドを見れば分かります。ソ連崩壊後のロシア、ワレサのポーランドは、アメリカ流「市場原理主義」が跋扈して貧困がいっそう拡大し、自殺者が続出する社会でした。
 前回のブログでも述べたことですが、ネルソン・マンデラが牢獄から解放され、マンデラ氏が大統領になった選挙は、まさに「普通選挙」でしたが、その後の南ア共和国は、悲惨の一語でした。黒人の生活は「アパルトヘイト」の時代よりも悪くなったのです(ナオミ・クライン『ショック・ドクトリン』)。ですから、「普通選挙」だけを求める闘いをしているかぎり、それは貧困にあえぐ香港民衆に何ももたらさないでしょう。
 とすれば、香港での闘いは「経済民主主義」を求める闘いを最優先すべきではないでしょうか。そうすれば、今は「オキュパイ・セントラル」に反対している貧困層も、学生の運動が誠実なものであるかぎり、それを支持する側に回る可能性があるからです。高い家賃と低賃金に苦しむひとびとの5人に一人は貧困ライン以下の生活をしているのですから。


 ですから私は、香港では、「政治民主主義」→「経済民主主義」ではなく、「経済民主主義」→「政治民主主義」という方向の運動をすべきだとおもうのです。アメリカは「2大政党制」で「普通選挙」をしているはずなのに、貧困の広がりは目を覆うばかりです。すでに「発展途上国」になりつつあるとチョムスキーは言っています。大学を卒業しても多くの学生にとってはファスト・フード店ぐらいしか働き口がないからです。
 今度の中間選挙ではオバマの民主党は惨敗し、オバマ氏自身も「今やlame duck(役立たず)の大統領」と揶揄されている始末です。これもチョムスキーの言うように「胴体がひとつで頭がふたつ」の怪物が「二大政党制」の正体だということを、アメリカ民衆が見破ってしまったたからでしょう。アメリカもその実態は、ウォール街が支配する一党独裁の国だということを、民衆はやっと気づき始めたというわけです。
 ですから、香港の「オキュパイ・セントラル」を口火にして中国本土を不安定化させ、あわよくば中国政府を転覆させたいと思っているアメリカにとっては、「普通選挙」だけを求める闘いをしてもらったほうが都合がよいわけです。
 なぜなら、これは「零か百か」の闘いであり妥協点がないわけですから(しかも闘いの矛先が香港やアメリカの金融街に向かわないわけですから)不安定化工作を半ば永遠化させる戦術としては、抜群の戦術と言ってよいでしょう。
 アメリカに留学したトップエリートが「市場原理主義」「規制緩和」「民営化」のアメリカ流経営を学んだとはいえ、中国が世界一の経済大国になったからこそ、アメリカは、これをそのまま放置しておくわけにはいかないのです。
 中国の実態は資本主義ですが、名前は「社会主義国」ですから、「経済民主主義」という民衆の要求が強くなれば、いつ社会主義に回帰するかも知れません。だから、一刻も早くつぶさねばなりません。
 しかも、ロシアと一緒になり、今やアメリカの覇権に挑戦する最大の敵になりつつあるのですから、アメリカにとっては、いっそう危険です。だから新しい「2正面作戦」(東と西で、中国とロシアを包囲する作戦)が必要だというわけです。


 なお念のために申し添えておきますが、私は現在の中国が良いと言っているのではありません。堤未果氏は上記に引用したコラムで、さらに次のように言っていました。
 <香港の活動家たちは、この抗議デモが目指すものを「資本家による国民の抑圧構造との闘い」だという。だが、共産主義下の新自由主義から、多国籍企業が率いる米国コーポラ一ティズムに移行するならば、待っているのは同じ未来だろう。>
 ここで堤氏の言う「待っているのは同じ未来」というのは、氏が前段で述べていた「政権倒壊後に開かれた市場は、例外なくアメリカ多国籍企業のビジネスチャンスになっている」「そして更なる貧富の拡大」という事実を指しています。
 ただし、中国は「共産主義」の国でも「社会主義」の国でもありません。マルクスの定義によれば、「能力に応じて働き、必要に応じて与えられる」のが「共産主義」で、「能力に応じて働き、労働に応じて受け取る」のが「社会主義」なのですから、弱肉強食の「新自由主義」が跋扈する現在の中国が「共産主義」の国であるはずがありません。
 ですから現在の中国は「新自由主義」を経済運営の基本にしている、れっきとした「資本主義」の国です。しかし世界中に大量の死を撒き散らしつつある現在のアメリカ、世界を核戦争に導きかねないアメリカと比べれば、まだマシではないかと言いたいのです。先にも述べたとおり、今や「核戦争5分前」なのです。
 しかも、このような「ならず者国家」(Rouge State)、「世界最大最悪のテロ国家」(a Leading Terrorist State=いずれもチョムスキーの言)に鈴をつけることができるのは、いまのところロシアと中国しかいないのです。
Chomsky, "Official: The US is a Leading Terrorist State"
 だとすれば、今の中国をアメリカの望みどおりに政権転覆させても、世界に平和は訪れません。むしろ巨大な面積をようする中国が、イラク、リビア、シリア、ウクライナのような内乱状態に陥り、世界の破壊はさらに深刻化していくだけでしょう。チョムスキーが言うように「一党独裁」はアメリカも同じです。ただし派閥がふたつあるだけです。
 ですから非常に複雑で長い闘いになるでしょうが、以上のような巨視的な視野にたった闘いを構築していく以外に、中国の民衆にとっても世界の平和にとっても、未来は開けてこないのではないでしょうか。「木を見て森を見ない闘い」「お釈迦様の手のひらで踊る孫悟空」であってはならないと思うからです。


<註1> 関連情報として『アジア記者クラブ通信』2014年11月号に下記の翻訳記事が載っています。必読文献だと思います。
* 米英の対中工作の不可欠な砦、香港「民主化」運動の真相・深層 (サラ・フウラウンダーズ)
* 中国は米国支援の「カラー革命」を封殺できるのか (フリッツ・モルゲン)
*“起爆剤”は中国の"金保有"急増と人民元の国際化、香港騒動の経済的要因 (シェドローバ)
 なお『アジア記者クラブ通信』の申込先は次のとおりです。http://apc.cup.com/


<註2> また私が読んだ最新記事に下記のものがあります。ここにはアメリカのどこからお金をもらっているか、誰がもらっているのか、その金額まで書いてありました。
“Hong Kong Occupy Central's” Dirty Money, Leaders engaged in Unethical “Shadow Funding”
 今の私には、これを訳出するゆとりがありません。「レイバーネット日本」には、せっかく「国際部」があるわけですから、ぜひ翻訳してほしいと思いました。
 これに関連して、「レイバーネット日本」を読んでいて不思議に思ったことがあります。それは、ときどきアメリカやイギリスの情報が紹介されることがあるのですが、どういうわけか、韓国語や中国語に翻訳されたものを、日本語に再翻訳しているということです。なぜ直接、英語の原文から翻訳された情報が出てこないのでしょうか。
 これだけ声高に「読めるけど話せない日本人」ということが言われ、安倍内閣の「英語で授業」という馬鹿げた教育政策が出てくる根拠にされているのですから、国際部には「英語が読める」人材はいくらでもいるはずです。にもかかわらず、「伝言リレー」のような翻訳になる意味が私には理解できないのです。
 ただし「英語で授業」「読めるけど話せない」「英語が話せないのは日本人だけ」という言説については、下記に反論を書いておきましたので、時間がある方は御笑覧ください。
http://www42.tok2.com/home/ieas/EnglishClassInEnglishMakesJapaneseIdiots.pdf


香港「オキュパイ・セントラル」、別名「雨傘革命」を考える

平和研究(2014/10/16) 

 いま私たちは、ジョージ・オーウェルが書いた小説『1984年』の世界を生きているような気がします。あるいは芥川龍之介の小説『藪の中』の世界と言った方がよいかも知れません。
 というのは、いま私たちが生きている世界は、一見しただけでは「何が真で何が嘘か分からない世界」だからです。その典型が福島原発事故でした。大手メディアどころかNHKすらも戦前さながらの「大本営報道」を繰り広げました。
 海外では、アメリカが「フセイン政権が大量破壊兵器WMDをもっている」と嘘をついて始めたイラク戦争だけでなく、シリアのアサド政権が化学兵器で自国民を殺したとしてオバマ大統領はシリアを攻撃しようとしましたが、これも嘘だったことが分かりました。
 もっと最近の事件では、マレーシア航空機の撃墜事件があります。これもアメリカはロシアのしわざだとしてNATO軍を総動員してロシア攻撃の口実にしようとしました。しかし、時間が経てば経つほど、キエフ政府軍のしわざであることが濃厚になりつつあります。するとロシア非難の声はいつのまにか消えてしまい、事件そのものまで皆の記憶から消えつつあります。
 その一方で、パレスチナのガザ地区と同じくらい凄惨な光景が展開されたウクライナ東部地区における「民族浄化」のようすは、大手メディアでは全くと言ってよいほど無視されて、報道されていません。
 ルガンスクやドネツクを中心とするウクライナ東部地区では、国連報告でも50万人近い難民が生まれ、3000人をこえる死者が出ているのに、日本のメディアは、中東におけるイスラム原理主義ISIS(いわゆる「イスラム国」)や香港の「雨傘革命」に関心を寄せるのみです。


 では香港「オキュパイ・セントラル」、別名「雨傘革命」とは、本当に中国における「民主革命」なのでしょうか。これについては大手メディアの報道は「反中国」を土台にして報道していますから、まったく信用できません。
 しかし、最近もてはやされたウクライナの「民主革命」も今になってみれば、ずっと以前からNED(アメリカ民主主義基金)が大金を注ぎ込んで用意周到に準備した「民主革命」だったことが明らかになってきています。
 それどころか、ウクライナの「民主革命」は、裏でアメリカに支持されたネオナチや極右勢力が暴力的に奪い取ったクーデターでした。これについては私のブログでは何回にもわたって書いてきましたからここでは割愛します。
 いずれにしても、今度の「民主革命」は、いまから振り返ってみれば、2003年のグルジアにおけるバラ革命、ウクライナでは2004年にオレンジ革命、2005年のキルギスにおけるチューリップ革命を、もっと暴力的にしたものだったわけです。
 ですから香港の「雨傘革命」も注意深く検討する必要があります。
 今回のデモは、香港の警察当局がデモ排除のため催涙弾を使い、それを避けるために学生らが傘を使ったことから「雨傘革命」と呼ばれていますが、運動の中心になっている学生たちは「オキュパイ・セントラル」と呼んでいるようです。
 この名称はニューヨークで展開された「オキュパイ・ウォールストリート」にちなんで名づけられたものでしょうが、この名称を見たり聞いたりしてかぎり、いま香港で起きている運動もアメリカで起きたものと同じものではないかと考えがちです。
 しかし、すでに、「オキュパイ・セントラル」はアメリカ民主主義基金NEDその他から多大なる援助のもとに準備されてきたことが分かってきています。
US Openly Approves Hong Kong Chaos it Created (September 30, 2014)
The US Grand Strategy for Eurasia: Hong Kong's ‘Umbrella Revolution’ and Secessionist Politics in China (October 05, 2014)


 ウクライナでは、2014年2月のクーデターが起きるまで62団体ものNGOが活動していましたし、国務次官補ヌーランド女史は恥ずかしげもなく50億ドルもの大金を注ぎ込んでクーデターを成功させたと自慢していました。
 ところが現在の香港では、あの小さな島で30,000を超えるNGOが活動していると言われています(Social Indicators of Hong Kong)。またアメリカ民主党の外郭団体NDI(全米民主国際研究所)だけでも、460,000ドルものお金を香港に注入しています。
Operation ‘Occupy Central’
 他方、ニューヨークの「オキュパイ・ウォールストリート」は外国のいかなる勢力からも人的・金銭的援助を受けていません。この点だけを見ても、香港「オキュパイ・セントラル」との違いは歴然としています。
 もしニューヨークの「オキュパイ・ウォールストリート」にたいして中国やロシアから多大なる人的・金銭的援助がなされていたことが暴露された場合、オバマ政権は激怒してすぐ武力攻撃に走ったかも知れません。それに比して中国政府の対応は比較的に穏やかなものだと言えます。
 たとえば、いまアメリカでは(2014/10/14現在)、武器を持っていない黒人の青年マイケル・ブラウンが殺害されてから2か月、ミズーリ州ファーガソンでの抗議行動参加者は州兵などによる弾圧に立ち向かい、青年を射殺した警察官ダレン・ウィルソンの逮捕を求めて路上に繰り出してきました。
 これにたいしてオバマ氏は、「外国勢力が煽動している」と口走ったことがありましたが、「黒人大統領」であるはずのオバマ氏が、いまアメリカで新しい黒人差別が復活していること、それにたいする黒人の憤りがどれほど大きいかを知らないとすれば、東ウクライナで民衆が置かれている苦境・憤り・悲しみを理解できないのは当然とも言えます。


 それはともかく、ニューヨークの「オキュパイ・ウォールストリート」は、金融危機を引きおこし国内だけでなく世界を破壊した金融街を、オバマ政権が大量の血税を使って救ったこと、しかも税金を支払っている民衆は大きな借金を背負ったり家を失ったりしても全く放置されたままであることに強く抗議したものでした。
 アメリカ政府は、1%の大金持ちを救い、99%の民衆を見捨てました。政府の言い訳が「Too Big to Fail(大きすぎて潰せない)」であり、民衆運動のスローガン「They Are 1%, We Are 99%」であったことがそれをよく表していました。では香港の「オキュパイ・セントラル」は何を求めているのでしょうか。
 一般の報道でもレイバーネットTVでも、彼らの要求は「普通選挙の完全実施」であり、これを拒否するいかなる妥協案も認めないと言っているようにみえます。しかし1997年にイギリスとの間で合意された「香港基本法」は50年は変更できないとされています。そのなかでこのたび中国政府から出された香港特別区行政長官の選挙案は、間接選挙ながら「一人一票制」が認められた史上初めての選挙になるようです。
 これは健全な民主主義を求めるために確かな一歩になり得るものでしょう。たしかに「上から出された数人の候補者以外の投票を認めない」というのは民主主義の原則に反するものです。ですから「香港基本法」の枠内で、さらに前進した選挙案をお互いに妥協しあってつくりあげることが、今後さらに求められていると言えます。


 しかし、普通選挙が完全実施されれば香港民衆に幸せが訪れるのでしょうか。
 それは南アフリカ共和国を見れば分かります。かつての南アは「アパルトヘイト」で知られる有名な黒人差別の国でした。しかし差別反対闘争の闘士ネルソン・マンデラが牢獄から釈放され、1994年4月に、同国史上初の全人種参加の総選挙が実施されました。そしてアフリカ民族会議 (ANC) の議長マンデラ氏が大統領に就任しました。
 では、この選挙の結果、黒人の生活は豊かになったでしょうか。むしろ「アパルトヘイト」の時代よりも悪くなっているのです。それはマンデラ氏が牢獄から釈放されるとき政治の権力(普通選挙権)は黒人に渡すが、白人のもつ財産および経済・金融の権力には手をつけないという約束がなされていたからです。(ナオミ・クライン『ショック・ドクトリン』岩波書店)
 ですから、たとえ香港で普通選挙が実現したとしても、そのことで香港民衆がいま抱えている生活苦(5人に1人が貧困ライン以下)が解消される見込みはまずありません。香港を中国に移管するにあたって1984年に英国と中国との間で結ばれた契約は2047年まで有効ですが、そのなかで中国政府は白人がもっていた経済的特権には手をつけないという約束を結ばされたからです。
 ですから、2010年に導入された最低賃金制度(時間給HK$28=US$3.60)も、香港を支配している財界・金融界は容易にこれを変更しないでしょう。また住宅価格は世界で一番高く、17万人が「ワーキング・プア」の生活を強いられ、「犬小屋」のような住まいで寝起きしています。摩天楼の裏で、貧富の格差が最も極端に進行しているのが香港なのです。
 香港住民の全てが必ずしも学生たちの要求を支持していないことは、このような裏事情があるからだと思います。実際、学生たちの運動を最も支持しているのは年収100,000ドル以上の富裕層であり、他方、年収10,000ドル以下の大半は「雨傘革命」を支持していませんし、年齢層での支持格差もはっきりしています。
Hong Kong Protests: Why Imperialists Support 'Democracy' Movement
 だとすれば、香港の「オキュパイ・セントラル」の目標は、ニューヨークの「オキュパイ・ウォールストリート」と同じように、住民の経済的生活要求を最優先にすべきだと思うのです。「普通選挙の完全実施」を求め、それ以外のいかなる妥協案も認めないという姿勢では、「落としどころ」がありませんから、この闘いは香港民衆にとっても中国政府にとっても長期的泥沼に陥る危険性があります。
 これでは、アメリカ民主主義基金NEDその他を資金源にして「雨傘革命」「オキュパイ・セントラル」を香港で起こし、それを起爆剤にして中国を不安定化させようとしているオバマ政権の思う壺でしょう。以下その点についてもう少し説明します。


 チョムスキーが『アメリカが本当に望んでいること』(現代企画室)で述べているように、アメリカは第2次大戦で大国になって以来ずっと一貫して自分の覇権を脅かす恐れのある国は徹底的につぶすことを外交政策の基本に据えてきました。
 ベトナム戦争もその一貫でしたし、小さな島国であるキューバをいまだに経済制裁し続けている理由もそこにある、とチョムスキーは述べています。ましてや、今や大国としてアメリカの覇権を脅かす存在になりつつある中国を、このまま放置しておくわけにはいきません。
 同じことはロシアについても言えます。ソ連が崩壊した直後に、アメリカ資本は大挙してロシアになだれ込み、ミルトン・フリードマンの唱える「新自由主義」「市場原理主義」の実験場となりました。(ナオミ・クライン『ショック・ドクトリン』岩波書店)
 その結果、ロシア経済は一時的に栄えたかに見えましたが、その後の経済は大崩壊し、路上には失業者があふれ自殺者も急上昇しました。ロシア人の平均寿命が60歳にまで下がり、他方で「オリガルヒ」と呼ばれる新興財閥が、民衆の苦境を尻目に、この世の春を楽しむようになったのも、この頃でした。
 この崩壊したロシアを建て直したのがプーチンでした。以前のブログ(2014/07/21)でも書いたことですが、私は「チェチェン独立運動を手荒く弾圧した」というイメージがあり、今までプーチンという人物はあまり好きではありませんでした。しかしロシアのことを勉強し直してみると、別のプーチン像が浮かび上がってきました。
 プーチンは、アサド政権が化学兵器を使ったという口実でシリアを爆撃しようとしたアメリカの嘘を暴露しただけでなく、アサド大統領を説得してシリアの化学兵器を廃棄させることに同意させました。ところがノーベル平和賞は化学兵器を廃棄する実務団体に与えられてしまいました(これがノーベル平和賞の実態です)。
 それどころかプーチン氏は、どこも引き取り手のなかったエドワード・スノーデンを亡命者として引き取る決断をしました。アメリカ国民だけではなく世界全体を監視する「盗聴網」を張りめぐらしていることを暴露したスノーデン氏を引き取ったのですから、オバマ氏の激怒は想像するに余りがあります。
 ですからウクライナでクーデターを起こし、それを起爆剤にしながらロシアを不安定化させる(あわよくばNATO軍を総動員してロシア攻撃の口実にする)という戦略は、いわば必然的な流れであったとも言えます。
 つまり一方ではEUやNATOを使いながらロシア包囲網を強化し、他方では日本・韓国・台湾・フィリピンといった国々と自由貿易協定TPPを結びながら中国包囲網を強化するのは、オバマ政権の壮大な世界戦略でした。
 [註:ただしTPPはアメリカ企業が損失を被ったとき国家を裁判に訴えることができるという恐ろしい協定でもあります。国家主権を踏みにじっても遺伝子組み換え食品などを喰わせよう買わせようというわけです。]
 アメリカは中国包囲網を着々と強化しつつあります。朝鮮戦争以来「休戦状態」にある北朝鮮と和平条約を結ばず、東北アジアにおける「盲腸的存在」として適当に暴れさせておいた方が、韓国や日本の危機感を煽るのに極めて好都合です。
 また日本・韓国ラインの延長上に台湾があり、これを中国包囲網に巻き込むこと、その延長上にあるフィリピンやベトナムを中国包囲網の陣営に巻き込むこともアメリカの重要な政策のひとつです。この視点で尖閣列島の問題も考え直す必要があります(孫崎享『日米同盟の正体――迷走する安全保障』講談社現代新書)。
 また、かつて民衆蜂起でフィリピンから撤退を余儀なくされた米軍基地が再び復活し始めているのも、かつては敵対していたベトナムにアメリカ企業が移り始めていることも、労賃の低さだけでなく中国包囲網という視点で初めて理解することができます。
 ですから、香港の「雨傘革命」「オキュパイ・セントラル」は、ウクライナのクーデターやマレーシア航空機の撃墜事件と併せて考える必要があると思うのです。


 香港の「オキュパイ・セントラル」を考えるにあたって、私が心配していることがもうひとつあります。
 それは、中国政府や香港政府が対応を誤って、強力な武力弾圧をすると(ましてや「もう一つの天安門事件」など論外です)、それは逆に民衆の怒りを引きおこし、解決がいっそう長引くということです。
 そして、さらにこの運動が長引くと、どこかでスナイパーによる狙撃事件が起き、警官と民衆の双方に死者が出て、騒乱が一層拡大する危険性があることです。スナイパーは、民衆側だけを殺すわけではありません。
 ウクライナでも元大統領ヤヌコービッチ氏が追放される直接的きっかけになったのは、集会・デモの最中に何者かによって警官とデモ隊29名が射殺されたことでした。そして死者がでたことを口実に騒乱がいっそう拡大先鋭化してクーデター完了となりました。
 あとで、このスナイパーは反ヤヌコービッチ派によるものであったことも、明らかにされています。エストニア外務大臣は2月22日の射撃について、市民と警官を狙撃したのはヤヌコーヴィチ政権の関係者ではなく、反対運動の側が挑発行動として起こしたものであるということをアシュトンEU外務大臣に告げています。
http://www.canon-igs.org/column/network/20140320_2453.html
 同じような戦術は、かつてベネズエラでも使われました。2002年4月11日、CIAの支援を受けて軍部によるクーデターが発生したときも、民衆が銃撃される事件が起き、10数人の死者を出しました。そして、それを口実にチャベスは軍に監禁され、中産階級や富裕層を基盤とする暫定政権がつくられました。
 しかし大統領の支持基盤である貧困層のデモが激化し、軍や国家警備隊からもチャベス支持層が現れたことにより、クーデターは幸いにもわずか2日間で失敗に終わりました。また当時そこを訪れていたジャーナリストの映像により、この銃撃は反チャベス派によるものであることが判明しました。
 [註:上記のベネズエラにおけるクーデターについて貴重な記録を残したアイルランドのパワーズピクチャーズの映像(2003年)は、その後、数々のドキュメンタリー賞を受けました。詳しくは下記を御覧ください。]
http://www.jca.apc.org/stopUSwar/Bushwar/venezuela_coup.htm
 反チャベス派の財界人は、5つの民放全てを所有し、そこでチャベス批判を繰り返していました。これらの放送局は高い視聴率を有し、これに対するチャベス政権の宣伝手段は国営放送ただ一局でした。この両派の闘いは、メディア戦争でもありました。
 いま香港で展開されている闘いについても、欧米そして日本のメディアはすべて無条件に「オキュパイ・セントラル」を支持する報道だけと言ってもよいでしょう。なにしろレイバーネットですら「雨傘革命」支持なのですから。


 私が心配するのは、ウクライナやベネズエラで起きたような「スナイパーによる殺傷事件」が香港でも起きはしないかということです。ハワード・ジン『肉声でつづる民衆のアメリカ史』を読めば、権力者が騒乱をたくらむときには、味方の陣営の誰かを射殺してそれを口実に騒乱に持ち込む事例すら、いくつも出てきます。
 こうして香港の「オキュパイ・セントラル」の騒乱が拡大し長引けば、それは新疆ウイグル地区などのイスラム教住民の地域にまで波及するかも知れませんし、さらに中国本土のあちこちに拡大するかも知れません。
 チョムスキーは『現代世界で起こったこと』(日経BP社)のなかで、アメリカによる他国の「不安定化工作」は、アメリカにとってはその国を「安定化」させることであり、それは世界各地でおこなわれてきたことだ、と述べています。
 たしかに中国は一党独裁の国ですから、「民主化」という観点からすれば世界で最も遅れた国のひとつだと言えるかも知れません。貧富の格差も広がり、幹部の腐敗も事実でしょう。しかし世界における民主主義の旗手として自画自賛しているアメリカの実態はどうでしょうか。
 アメリカもイギリスも、香港の「オキュパイ・セントラル」を警察が弾圧しているとして重大なる懸念を表明しました。が、自分が統治しているときは100年間も自分の好む人物を一方的に独裁的に任命してきたイギリスが、今さら恥ずかしげもなく民主主義の心配をするなどというのは、笑止千万でしょう。
 またアメリカも、ニューヨークやオークランドその他の「オキュパイ・ムーブメント」を弾圧する仕方は香港の比ではありませんでした。催涙弾や胡椒弾はもちろんのこと、ゴム弾まで使用して、「オキュパイ・オークランド」に参加していたスコット・オルセンは頭蓋骨を割られて瀕死の状態に追い込まれました。
 最近でも、ミズーリ州ファーガソンでは、非武装の18歳の少年マイケル・ブラウンが警察に射殺された(8月9日)ことへの抗議運動が起きましたが、この弾圧ぶりもひどいものでした。たとえば8月20日には、取材していたジャーナリストまでゴム弾で撃たれたあと逮捕され投獄されました。このような弾圧にたいする怒りは 「ファーガソンの10月」と称する運動となっていまだに続いています。
 このようにアメリカの民衆弾圧ぶりはひどいものです。警察は軍隊式に重装備され、民衆を徹底的に弾圧していますが、このような弾圧ぶりをメディアはほとんど報道しません。そして香港「オキュパイ・セントラル」だけは、中国の一党独裁による民衆弾圧として、日本でも大々的に報道されています。これではアメリカによる中国包囲網工作にマンマと乗せられているとも言えないでしょうか。


 アメリカの民衆弾圧は国内にとどまるものではありません。その典型例が嘘をついて始めたイラク戦争ですが、チョムスキーによれば、イラク戦争が終わったあともイラク復興の土台となるはずの「普通選挙」をアメリカは徹底的に妨害しました。アメリカ資本がイラクの資源を自由にできる政権が誕生する見込みがなかったからです。
 イラクのみならずリビアやエジプトでも、「アラブの春」と言われる民衆運動が起きましたが、リビアにもエジプトにも民主主義は実現しませんでした。女性までも無料でも大学に行けたリビアは、「独裁者カダフィ大佐が自国民を虐殺している」という嘘がばらまかれて完全に破壊されました。そして今は混乱の極致です。
 カイロの「オキュパイ・ムーブメント」で有名になったエジプトも、イスラム同胞団の政権を良しとしないアメリカは、ペンシルバニア州のアメリカ軍関係の学校で訓練を受けたシシ将軍を裏で支援して、再びクーデターとなりました。そして今はシシ将軍が名ばかりの選挙で大統領になりましたが、実態は軍事独裁政権です。
 こうして、アメリカが支援した民主化運動のはずだった、これらのリビアもエジプトも、今では、「アラブの春」と呼ばれた民主化運動はCIAが裏で仕組んだ運動であり、民衆の決起を煽りながら、その果実をアメリカが摘み取るためのものであったことが、次々と暴露され始めています。そのもうひとつの実例がシリアです。
 シリアの場合も独裁者アサドを倒せという名目でアメリカは反体制諸派の武装闘争を支援しましたが、裏でその反体制諸派にお金と武器を支援してきたのは、独裁王制を維持しているサウジアラビアやバーレーンやアラブ首長国連邦です。他方、アサドはまがりなりにも選挙で選ばれた大統領です。
 しかしアメリカは、サウジアラビアなどの国内で徹底的な弾圧体制をしいている独裁王制を倒せとは言わずに、シリア転覆に血道をあげてきました。しかもシリアの「反体制派」と言われている勢力は種々雑多であり、その大半がイスラム原理主義勢力なのですから、アメリカの言う「民主主義」は何かが再び問われています。
 そのうえ、911事件以来、アメリカが手をつけたこれらの国で「民主主義」が実現されたところはどこにもありません。広がったのは流血と殺戮、破壊と混乱のみです。イラクに至っては国家としての存在すら危ぶまれています。もともとネオコンと言われるひとたちが狙っていたのは中東地図の書き換えだったのですから、当然のことかも知れません。
 そのもう一つの証拠は、香港やウクライナの民主化を支援すると称して、たくさんのNGOが現地になだれ込み、大量のお金を注ぎ込んで体制転覆を謀ってきたのですが、しかし不思議なことに、アメリカ民主主義基金NEDを初めとするNGOは、中東の王制独裁国家のどこにも姿を見せないのです。


 だとすれば、香港の「オキュパイ・セントラル」も中東やウクライナと同じ結果に陥る危険性は十分にあります。むしろ中国を破壊と混乱におとしいれることこそ、アメリカの狙いだとも言えます。というのは、最近のIMF発表では(10月7日)ついに中国はアメリカを抜いて世界一の経済大国になったからです。
 そのうえ中国は、ブラジルで最近おこなわれたBRICSの会合で、ロシアと協力してIMFやWB(世界銀行)に代わる新しい金融機関を設立すると発表しました。これをアメリカがそのまま放置するとは考えられません。あらゆる手段を講じて中国の経済的政治的影響力の拡大を阻止しようとするでしょう。
 香港の「オキュパイ・セントラル」にたいする支援もその一貫であり、ウクライナのクーデターもその一貫であったと考える方が、むしろ自然です。
 これは香港の「オキュパイ・セントラル」に参加している若者たちの「民主化を求める純粋な気持ち」とは全く無関係のことです。アメリカは「アラブの春」で同じように若者の純粋な気持ちを利用して自分の覇権を維持しようとしてきたのですから。
 ポーランドの民主化運動でも同じ光景が展開されました。まだソ連政府が健在だったころ、ワレサ氏は独立自主管理労働組合「連帯」の指導者として頭角を現し、東欧では先頭を切って「自由選挙」「普通選挙」が実施された結果、ついに大統領になりました。
 しかし、そのワレサ氏が実現した政策は、アメリカの望む規制緩和=自由化・民営化であり、結局マンデラの南アがたどったと同じ「市場原理主義の跋扈する社会」であり、アメリカ資本が自由にふるまい貧富の格差が拡大する社会、一部の新興財閥だけが豊かになる社会でした。これが「普通選挙」がもたらした社会でした。(ナオミ・クライン『ショック・ドクトリン』第9章)
 あとで分かったことですが、ポーランドの独立自主管理労働組合「連帯」は、裏でローマ法王やアメリカの労働組合連合AFL-CIOなどから資金援助を受けていました。しかもこれはCIAが「連帯」を支援していることが分かってしまうとワレサの人気はガタ落ちしますから、バチカンや労働組合による援助だということにしたのでした(田中義晧『世界の小国――ミニ国家の生き残り戦略』)。
 <これら両国 [レーガン政権のアメリカ、ローマ法王のバチカン] にとっての第一の課題はポーランドの「連帯」運動を存続させることであり、このために援助に乗り出したのだ。すなわち、大量の物資・機材、たとえばファックス、印刷機、、無線機、電話機、短波ラジオ、ビデオ・カメラ、コピー機、テレックス、コンピューターなどが司祭、アメリカの秘密工作員、米国労働総同盟・産別会議(AFL-CIO)などによって作られたネットワークを通じて、密かにポーランドへ持ち込まれたのである。こうして「連帯」は地下メディアを通じてビラや地下新聞を流布させ、送信機を用いて当局のラジオ・テレビ放送に介入し、着々と民衆の支持を獲得していった。p.80>


 私がこのことを知るきっかけは、NHK-BSの番組で「二正面作戦」というドキュメンタリーを見たからです。それによると当時のアメリカは、一方でソ連をアフガニスタン戦争に誘い込んで軍事的経済的に消耗させ、他方では手漉きになった東欧でソ連から離反させる運動を裏で支援するという作戦を実行していました。
 この作戦はみごとに成功し、アフガニスタンで消耗したソ連が崩壊しました。それと併行してポーランドでは独立自主管理労働組合「連帯」が勢力を拡大して、ワレサ大統領の誕生となったのでした。ソ連はアフガニスタンで勢力を奪われ、財政的にも疲弊して、東欧に手を回せなくなりました。
 この作戦を裏で企画・指導した大統領補佐官ズビグニュー・ブレジンスキーはフランス紙『ヌーヴェル・オブゼルヴァチュール』で、「ソ連を崩壊させたのは俺だ」と自慢げに語っています。
「アフガンのイスラムはワシントンが作り上げた」
 しかも、そのインタビューでは、「ビンラデンなどのイスラム原理主義勢力を集めて訓練しアフガニスタンでソ連軍と戦わせた結果、アルカイダを生み出すことになったことについて、どう責任をとるのか」と尋ねられて、彼は「ソ連を崩壊させることと、どちらが大事か」と答えて、何ら恥じることを知りませんでした。
 [註:私は当時、東欧を旅行していました。その記録は拙著『国際理解の歩き方』に載せましたが、ワルシャワ大学の図書館前で熱烈なワレサ支持の学生と話したことも書いてあります(22~24頁)。しかし今となっては、ワレサも学生も(そして私も)CIAによって見事にだまされていたことが分かります。]


 要するに私がここで言いたかったことは、ポーランドでワレサが民主化を求めて闘った運動は「アメリカによって仕組まれた罠」にマンマと取り込まれたとも言えるわけで、同じことは香港の「オキュパイ・セントラル」でも生じる可能性があるということです。
 ですから、アメリカ資本の様々なNGOから支援を受けていることを知っていて活動している者は論外としても、それを知らないまま純粋な気持ちで「雨傘革命」に情熱を注いでいる若者には、ワレサと同じ運命が待ち受けている可能性があります。
[註:香港で活動するNGOには、たとえばthe National Endowment for Democracy (NED), National Democratic Institute (NDI), National Republican Institute, Ford Foundation, Carter Center, Asia Foundation, Freedom House, Soros's Open Societyなどがあります。]
 したがって真の意味で香港を民主化したいのであれば、まずこれらアメリカ資本のNGOを香港から追い出したうえで活動すべきでしょう。さもないと若者の運動も一般民衆から真の信頼を得られないでしょう。
 それどころか、中国もウクライナと同じ混乱・内乱に追い込まれる恐れがあります。リビア、シリア、イラク、アフガニスタンの混乱も根っこは同じです。これは中国の民衆にとっても世界平和にとっても最大の不幸となるでしょう。
 アメリカは「普通選挙」が存在する国ですが、世界中に軍隊を派遣して6大陸120数カ国で破壊と殺戮の種をばらまいています。そのなかで何万人ものひとが命を失い、何百万人ものひとが難民になっています。
 たとえば、イラクは半ば瓦礫状態であるにもかかわらず、いまだに内乱状態は終わっていません。第1次湾岸戦争(1990)から2012年までに、イラクだけでも330万人の人が殺され、そのうちの75万人が子どもだと言われています。
 そのうえアメリカが育てた原理主義勢力が今は「イスラム国家」を名乗り、シリアまで殺戮が拡大しています。独裁者と言われたフセイン大統領ですら、こんな馬鹿げた破壊と殺戮はおこないませんでした。


 チョムスキーは、ナチスや軍国日本が裁かれた「ニュルンベルク裁判」=「戦争犯罪」の基準で判断すれば、「戦犯」として裁かれないアメリカ大統領は恐らく皆無に近くなるだろうと言っています。しかし一党独裁と非難されてはいても、今の中国はこのような犯罪に手を染めてはいません。
 たしかに中国は、名前は「社会主義」ですが実態は一党独占の「資本主義」国家です。幹部の腐敗もひどく貧富の格差は深刻です。これが鄧小平がシカゴ大学教授ミルトン・フリードマン氏を招いて学習した「新自由主義」の結果です(『ショック・ドクトリン』。ではアメリカはどうなのでしょうか。
 チョムスキーが繰りかえし述べているように、「二大政党制」と言っても「胴体が一つで頭が二つの怪物」がアメリカです。アメリカを支配した「新自由主義」の嵐は金融危機を引きおこし、平均的アメリカ人の生活は今や発展途上国に転落しつつあります。教育の貧困と破壊もすざまじく、「School to Prison」という用語を定着させているほどです。
 つまり、アメリカ=「自由主義」「普通選挙制」とは言っても政権トップの腐敗はとどまるところを知らず、軍産複合体は相変わらず健全なのです。政権トップが大企業の重役になり大企業の重役が政権トップに舞い戻るという「回転ドア」の仕組みは微動だにしていません。
 また世論調査の結果でも、世界の平和にとって最大の脅威はアメリカです。これもチョムスキーが繰りかえし述べているとおりです。今やその先頭に立って走っているのがオバマ大統領で、世界中に「宣戦布告なき戦争」を拡大し、相変わらず無人爆撃機で一般市民への殺戮を続けています。これは明らかな戦争犯罪です。
 このような犯罪をくい止める勢力は今のところロシアと中国しかありません。「化学兵器を口実にしたシリアへの爆撃」をくい止めたプーチンの努力はその一例にすぎません。
 だからこそ、いまアメリカは新しい「二正面作戦」を展開しているのです。一方ではウクライナ問題を利用してロシアを不安定化し、他方で香港の「オキュパイ・セントラル」を利用して中国を不安定化する戦略です。
 もしこの戦略が成功すれば、今は中東だけに限定されていた混乱や殺戮は、ユーラシア大陸全体に広がっていくかも知れません。それどころか元プリンストン大学教授ステファン・コーエン氏は、「ウクライナ問題を口実にアメリカがNATO軍と展開している戦争ゲームは、今や世界を核戦争5分前の状態に追い込んでいる」とすら述べています。
NATO's games with Ukraine bring world to 5 minutes before nuclear midnight- Stephen Cohen


 スノーデン氏が暴露したように、現在のアメリカはジョージ・オーウェル顔負けの監視国家になってしまっています。しかも、その監視は国内だけにとどまっていません。ドイツのメルケル首相の携帯ですら盗聴されていたニュースは、まだ記憶に新しいはずです。
 そのような国家犯罪を暴露したのがスノーデン氏でしたが、オバマ氏は彼の南米への亡命を認めませんでした。そこで氏はやむなくロシアに留まらざるをえなくなりました。それを認めたプーチンのロシアを、許しがたい存在として攻撃を始めたのが、今回のウクライナ危機だったことは、すでに何度も述べたとおりです。
 旧東ドイツの秘密警察(シュタージ)の活動は、いかにも恐ろしげに語られていますが、同じことをアメリカがしていても、不思議なことに、声を荒げてそれを非難する声を大手メディアからあまり聞いたことがありません。そして聞こえてくのは香港の「オキュパイ・セントラル」を中国政府が弾圧しているという話ばかりです。
 旧東ドイツの秘密警察(シュタージ)は、全国民に関するあらゆることを把握するためには手段は選びませんでした。個人に対して誰が家を訪ねてきたか、誰に電話をかけたか、配偶者が異性と関係を持っているかどうかまで把握していたと言われています。しかし、アメリカNSAは今や全く同じことをしているにもかかわらず、中国にたいする批判はあってもオバマ批判はほとんど聞こえてきません。
 アメリカには1917年にできた「スパイ防止法」がありますが、この法律によって逮捕されたひとは、1918年に反戦を訴えて国外追放されたエマ・ゴールドマン女史を始め、数人しかいませんでした。ところがオバマ大統領になってから、この法律で投獄されたり投獄されそうになったひとの数は激増するのみです。
 一般市民がイラク戦争で殺されている映像をウィキリークスに漏洩させたとして投獄されている陸軍兵士ブラッドリー・マニング氏は、その典型例ですが、国家犯罪を内部告発したCIAやNSAの高官を次々と逮捕・投獄するオバマ氏の行動は、旧ソ連や旧東ドイツも舌を巻くほどの不気味さではないでしょうか。
 (たとえば元CIA職員キリアコー氏や元NSA高官ウィリアム・ビニー氏など、その例はいくらでもあげることができます。)
 その一方でアメリカでは、デトロイト市民が貧困のため代金を払えず水道を切られ、「水への権利は人権・生活権の問題だ」として国連に訴えるという騒ぎまで起きています。世界で一位二位を争う経済大国が、まるで発展途上国の様相を呈しているのです。
 また60年代の公民権運動でかちとられた選挙権も、いま新たな巻き返しが起こり、黒人を中心とした貧困層から選挙権が奪われる州が次々と拡大しています。南北戦争のあと黒人議員が誕生したのに、しばらくしたら議員どころか選挙権すら奪われたころと似ています(『肉声でつづる民衆のアメリカ史』)。
 ですから、消費者運動の旗手ラルフ・ネーダー氏がオバマ大統領を「コンマン(詐欺師)」と呼び、映画監督オリバー・ストーン氏が「羊の皮をかぶった狼だ」と断じているのも、ある意味で当然とも言えます。
 それどころか、ハーバード大学やプリンストン大学で教鞭をとり、今度の「ファーガソンの10月」の行動で逮捕された黒人教授コーネル・ウェスト氏は、オバマ大統領を「戦争犯罪人」と呼び始めたくらいです。このようなオバマ氏を大統領として選んでいるのが、アメリカの「普通選挙」制度なのです。


 ですから日本の「進歩的」と目されるひとたちが、香港における民主化=普通選挙を求める闘いを支援する場合、アメリカのグローバル戦略をきちんと見据えた慎重な対応をしなければならないのではないでしょうか。
 そのひとたちの善意を私は疑うものではありませんが、ただ、その善意が意図せずして中東の惨劇をユーラシア大陸全体に拡大することにつながり、今は経済的に凋落しつつある超大国=チョムスキーの言う Rouge State(ならず者国家)に再び活力を与える契機になるのではないかと恐れるからです。
 戦後、アメリカが超大国としてのし上がる契機となったのも、先の二つの大戦で疲弊したイギリス、フランス、ドイツを尻目に、アメリカが漁夫の利を得たからに他なりません。だとすれば私たちは、「地獄への道は善意のバラで敷き詰められている」という有名な格言を、ここで改めて噛みしめてみる必要がありはしないでしょうか。


 まだまだ書きたいことがかなり残されているのですが、ここまで書いてきたら力尽きましたので、いったん筆をおくことにします。この拙論がアジアの平和に少しでも役立つことを願っています。
 私が参照した英語の文献は以下のとおりです。気力と体力そして時間的ゆとりがあれば、その幾つかだけでも翻訳したいのですが、いまはそのゆとりがありません。
 ただし*印がついたものは、『アジア記者クラブ通信』2014年10月号に翻訳が載せられています。参照していただければ幸いです。


Thousands join Hong Kong anti-Occupy protest (17 Aug 2014)
Pro-Beijing protesters come out against Occupy's plans to paralyse city centre with mass sit-in over election processes.
http://www.aljazeera.com/news/asia-pacific/2014/08/hong-kong-occupy-protest-20148178541119961.html
*Hong Kong's ‘Semi-Autonomous Democracy’ is still a leap forward(September 30, 2014)
http://rt.com/op-edge/191824-hongkong-rally-conflict-protests-violence/
US Openly Approves Hong Kong Chaos it Created (September 30, 2014)
http://www.globalresearch.ca/search?q=Ming+Chun+Tang
Occupy Central: Hong Kong's Fight against Neoliberalism(September 30, 2014)
http://www.globalresearch.ca/occupy-central-hong-kongs-fight-against-neoliberalism/5405426
US Now Admits it is Funding “Occupy Central” in Hong Kong (October 01, 2014)
http://www.globalresearch.ca/us-now-admits-it-is-funding-occupy-central-in-hong-kong/5405680
Hong Kong's “Occupy Central” is US-backed Sedition(October 01, 2014)
http://journal-neo.org/2014/10/01/hong-kong-s-occupy-central-is-us-backed-sedition/
The 'Umbrella Revolution' and Secessionist Political Contagion in China (I)(October 3, 2014)
http://orientalreview.org/2014/10/03/the-umbrella-revolution-and-secessionist-political-contagion-in-china-i/
*The 'Umbrella Revolution' and Secessionist Political Contagion in China (II)(October 3, 2014)
http://orientalreview.org/2014/10/03/the-umbrella-revolution-and-secessionist-political-contagion-in-china-ii/
On Occupy Central and the NED, Hong Kong Should Decide Its Own Fate(October 3-5, 2014)
http://www.counterpunch.org/2014/10/03/on-occupy-central-and-the-ned/print
Hong Kong “Occupy Central” Protest Scripted in Washington. Leaders Mislead Grassroots
(October 5, 2014)
http://www.globalresearch.ca/hong-kong-occupy-central-protest-scripted-in-washington-leaders-mislead-grassroots/5406352
Hong Kong Strikes Back – West Attempts to Spin Growing Anti-Occupy Movement
(October 05, 2014)
The US Grand Strategy for Eurasia: Hong Kong's 'Umbrella Revolution' and Secessionist Politics in China(October 05, 2014)
http://www.globalresearch.ca/the-us-grand-strategy-for-eurasia-the-umbrella-revolution-and-secessionist-political-contagion-in-china/5406379
'Another Tiananmen Square in Hong Kong'-would be victory for US(October 06, 2014)
http://rt.com/op-edge/193544-china-usa-hongkong-protests-confrontation/
Hong Kong Protests: Now the Hard Part, Kick out the US, Build National Consensus
(October 07, 2014)
http://www.globalresearch.ca/hong-kong-protests-now-the-hard-part-kick-out-the-us-build-national-consensus/5406676
Operation 'Occupy Central'(08.10.2014)
http://rt.com/shows/crosstalk/194064-china-beijing-hongkong-relations/
Hong Kong Protests: Why Imperialists Support 'Democracy' Movement (October 08, 2014)
http://www.globalresearch.ca/hong-kong-protests-why-imperialists-support-democracy-movement/5407032
Accusing Hong Kong Activists of Being Tools of US Policy is Both Ignorant and Dangerous
(October 9, 2014)
http://zcomm.org/znetarticle/accusing-hong-kong-activists-of-being-tools-of-us-policy-is-both-ignorant-and-dangerous/
Hong Kong's “Occupy Central” Fooling No One (October 11, 2014)
http://www.globalresearch.ca/hong-kongs-occupy-central-fooling-no-one/5407471

<以下は、日本語で読める文献です> 
チャベス政権 クーデターの裏側
*ドキュメンタリー賞記録映像(パワーズピクチャーズ、アイルランド2003年)
東ヨーロッパ 「民主化ドミノ」の舞台裏
トロイの木馬:米国民主主義基金(NED)
アメリカ民主基金(NED)という名の工作機関
エジプトの実力者シシ将軍のプロフィール
ブレジンスキー「アフガンのイスラムはワシントンが作り上げた」
キエフのクーデターに協力したポーランド政府、元大統領ワレサの現在
チョムスキー「なぜアメリカとイスラエルが平和への最大の脅威なのか」
オリバー・ストーン「オバマは羊の皮をかぶった狼」―化学兵器騒動の裏側
香港返還の日、雨傘は役に立たなかった-香港人と中国人のミゾを埋めるには
中国が世界最大の経済大国に、「China as No.1」を完全スルーした日本メディア
イラク人330万人の死-米英によるジェノサイドの22年 (翻訳は『アジア記者クラブ通信』10月号21頁)

お「マスコミに載らない海外記事」にも関連情報が載っています。


<追記> 香港の問題は、香港だけを見ていても理解できない複雑さを抱えています。アメリカの国家戦略は世界的規模で進行していますから。
 その一例は「イラン・コントラ事件」です。アメリカはフセイン大統領をけしかけてイランと戦争させると同時に、イスラエルを通じてイランに武器を売却し、その資金で中米のニカラグア左派政権をつぶすべく反共ゲリラ「コントラ」に武器を供与していました。
 しかもフセインが「イラン・イラク戦争」で使ったとされる化学兵器もアメリカがイラクに与えたものでした。つまり「事実は小説よりも奇なり」なのです。このような地球を一周するような作戦は凡人の理解を超えています。
 それはともかく、香港の問題は、「イラン・コントラ事件」と同じように、地球を半周したウクライナ情勢と深く連動しています。ですからウクライナ危機を理解していないと、香港問題の本質は見えてきません。
 だとすればウクライナ問題についても詳しく解説しなければならないのですが、すでに体力が尽きています。とはいえ、ウクライナ危機については、すでにこのブログで何度も論じているので、そちらを参照していただければ幸いです。(2014/10/23)

ポール・ロバーツと梶村太一郎、両氏の「ウクライナ危機論」を考える

平和研究(2014/09/27)
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 キエフ政府と東ウクライナの抵抗勢力との間で休戦協定が結ばれ、ウクライナにもやっと小康状態が訪れました。
 ガザでもイスラエルが思う存分に破壊した後、イスラエルにたいする戦犯追及の声が強くなり休戦となりました。
 これらはいずれも「市民の殺戮」「民族浄化」をやめろと要求する世界の世論の勝利と呼ぶべきでしょう。これでやっと「二つの民族浄化」に少し歯止めがかかったようで正直ホッとしています。
 しかしウオール・ストリート・ジャーナルの元共同編集者ポール・ロバーツ氏は(Paul Craig Roberts:レーガン政権で財務次官補を務めたこともある)、この停戦に大きな疑問をいだき次のように述べています。
 「しかし、停戦は維持できるだろうか? メンバがナチスの記章をつけていることが多いキエフの右翼民兵を、キエフ政権が完全に掌握しているわけではない。こうした民兵は容易に停戦に違反するし複数の違反の報道が既に存在している。更にアメリカがキエフにウクライナ大統領として据えつけた億万長者のオリガルヒも、プーチンが彼をひどく怖がらせない限りはもちろんアメリカの命令で停戦違反をするだろう。」
http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2014/09/post-8b86.html

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<註> 上記でロバーツ氏が「アメリカがキエフにウクライナ大統領として据えつけた億万長者のオリガルヒ」と言っているのは、チョコレートメーカー「ロシェン」の設立者で大富豪のポロシェンコのこと。彼は「チョコレートキング」の異名をもつ。彼のような「寡頭新興財閥」は、「寡頭制 (Oligarchy) にちなみ、オリガルヒ (Олигархи, oligarch) と呼ばれる。

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 ではロバーツ氏は、どうすればこのウクライナ危機を終わらせることが出来ると言っているのでしょうか。それには「ロシアからEUに送られているガスを止めるだけでよい」というのです。氏は上記ブログの最終部分で次のように述べています。
 「キエフ政権は、アメリカ政府の傀儡なのだから、ウクライナとロシアに、アメリカ政府が引き起こした紛争に対する解決策を、彼等に期待できるわけがない。
 アメリカが作り出した、ウクライナの困難な問題を解決することを拒否しているのは、アメリカ政府だけではなく、EUもそうなのだ。アメリカ政府の隠れみの機構=欧州理事会の議長であり、アメリカ政府の傀儡であるヘルマン・ファン・ロンパイが、もしマスコミ報道が正しければ、滅多にそういうことはないのだが、欧州連合は、ロシアのエネルギー企業、ロスネフチ、ガスプロムネフチと、トランスネフチや、年間、70億ドル以上の売上高をもつ国営企業に対し、経済制裁を課している。
 この無謀さに対するロシアの対応は、冬、警告無しにガスを遮断することだろう。全てのガスを。プーチンの関心は、ヨーロッパを、アメリカの支配から引き離すことなのだから、これでそれが実現できよう。西欧と東欧の全てとウクライナは、モスクワに、エネルギーを再び流してくださいと、跪いて懇願することになろう。プーチンが言う必要があるのは“NATO非加盟国だけが、ガスを得られる。”だけだ。
 これで、アメリカのロシア攻撃を終わらせることができるだろう。」

http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2014/09/post-8b86.html

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 しかし私の考えではプーチン大統領は、そのような「警告なしのガス遮断」という手段をとらないでしょう。というのは、これまでもロバーツ氏は以前から次のように主張してきましたが、プーチン大統領は外交に徹してきたからです。
 「今回のウクライナ危機はアメリカが仕掛けたものだ。東ウクライナ住民が無差別の爆撃を受け大量の死傷者が出ているのだから、このような戦争犯罪・民族浄化をくいとめるためにも、ロシアは軍隊を出して民衆を救うべきだ。」
 「東ウクライナのロシア系住民を見殺しにしているという理由でロシア国内で反プーチン勢力の声が強まる。それをアメリカはロシア国内のNGOを使って後押しをするだろう。そうなってからでは遅い。一刻も早く行動すべきだ。」

 これを見ただけでも、EUやアメリカの大手メディアが「プーチンはウクライナに軍隊を出動させている」と言って非難してきたことが、いかに嘘だったかがよく分かるはずです。それどころかプーチン氏は、ロシア議会が「ロシア軍を使え」という議決をしたにもかかわらず、それを取り下げるよう要求し、国境近くで待機していた軍隊を撤退させたくらいでした。
 これは前回のブログで紹介したように、ドネツク人民共和国(東ウクライナ)ザハルチェンコ首相のインタビュー発言とも符合するものです。インタビューでザハルチェンコ首相は、「ロシア軍の加勢があれば地元で苦しい自衛の戦いをする必要はなかった。我々はずっと以前に首都キエフを陥落させ、西ウクライナの都市リボフ(ポーランド国境近く)にまで迫っていただろう。」と語っていました。
「ドネツク人民共和国(東ウクライナ)ザハルチェンコ首相―メディアに初めて登場して語る衝撃と感動のインタビュー 」(09/14)


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<註> ロバーツ氏は「ドネツク人民共和国の民兵集団がやっと体制の整った軍隊組織になり今やウクライナ政府軍を徹底的に壊滅できる機会が訪れているまさにこのときに停戦とは!?」とも言っています。これは上記の記者会見でザハルチェンコ首相が民兵集団がやっと体制の整った軍隊組織になったと言っていたこととも符合します。また自分の父祖たちが第2次大戦中にこの地でナチスの部隊「Galicia SS Division」と戦ったが、我々は今また、ナチスの記章を付けた連中と、同じ戦いをこの地でしていると語っていました。

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 では、もし逆にプーチン大統領がロバーツ氏の忠告・進言にしたがって正規軍を出動させていたらどうでしょうか。そのときは確かにザハルチェンコ首相の言うように「首都キエフを陥落させ、西ウクライナの都市リボフ(ポーランド国境近く)にまで迫っていた」かもしれません。
 しかし、それこそアメリカとNATO軍が望んでいたことです。彼らは「待ってました!」とばかりに、これを口実にしてロシアへの全面攻撃に移っていたことでしょう。彼らはマレーシア航空MH17機の撃墜事件を口実に攻撃したかったのですが、出てくる証拠は自分たちにとって不利なものばかりでした。ですから、次はロシア軍の侵攻を口実にしようとしたのですが、残念なことにそれも失敗に終わりました。
 以上のようなことを考えると、ポール・ロバーツ氏の言行にも疑問が生じてきます。彼はプーチン大統領の政策に全面的な同情を寄せるふりをしながら実はロシアを全面戦争に引きずり込もうとしているのではないかとすら思えてきます。これは邪推だとしても、少なくとも氏の善意にもとづく忠告・進言は、裏目に出たであろうことだけは確かです。(それにしてもロシア=プーチン大統領の外交力には本当に感心させられます。)

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 ところで、ここで思い出されるのが「明日うらしま」というブログです。このブログはドイツ在住の梶村太一郎というひとが書いているものですが、「原発を廃止し再生エネルギーをめざすドイツ」から脱原発を中心とした話題を発信しているというので、最近とみに有名になりつつあります。
 このブログを書いている梶村氏をIWJ代表の岩上安身氏がベルリンまで行ってインタビューしているというニュースを偶然にも『マスコミに載らない海外記事』で知りました。そこでさっそくIWJの無料記事になっているインタビューを視聴してみました。そして二重の意味で驚きました。
 というのは、ブログ「明日うらしま」に載っていた自己紹介によると、「74年以来ベルリン在住。86年作家小田実と市民運動交流団体『日独平和フォーラム』立ち上げ、2001年ドイツ人良心的兵役拒否者の日本での兵役代替役務を実現」などと書いてあったので、梶村氏から大手マスコミと違った意見が聞けると思って期待していたからです。
 ところが梶村氏の意見はアメリカのオバマ大統領でさえ言っていないようなことを平気で(?)紹介して、そのことにあまり疑問をもっていないようなのです。普通のひとがそんなことを信じているのはある意味で当然だとしても、いわば進歩的と目されているひとの発言だっただけに、二重に驚いたのです。
 イギリスのキャメロン首相は、「プーチンはクリミアを武力で奪い取った。軍事侵攻してしてオーストリアをドイツに併合したヒトラーと同じだ」と言って心あるひとの顰蹙(ひんしゅく)を買ったのですが、氏はドイツでも同じような世論だと述べ、プーチンの行動は弁護しようもないという口調でした。
 メルケル首相の携帯電話やその閣僚の電話までもアメリカによって盗聴されていることが暴露されているにもかかわらず、なぜドイツがアメリカに同調してロシアとの緊張関係を強める方向に動いているのか、これまで私にはよく分からなかったのですが、このインタビューで、その謎の一端が解けたような気がしました。

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 しかし、調べる気が少しでもあれば、ウクライナ危機は次のような諸要因が絡んでいることはすぐわかったはずなのです(これらについては、これまでのブログで書いてきたので、典拠は割愛させていただきます)。
(1) ロシアのルーツはキエフ公国にある。しかもクリミアは旧ソ連時代にフルシチョフが住民との相談なしに勝手にウクライナに併合した。だからウクライナに住むロシア語話者にとってウクライナは、感情的には今でもロシアの一部である。
(2) ソ連が崩壊する直前にゴルバチョフ氏が東ドイツを西ドイツに併合することを認める代わりに、レーガン大統領が「NATOは一寸たりとも旧東欧に侵攻しない」と約束したにもかかわらず、アメリカはそれを踏みにじって次々と東欧に勢力を拡大した。
(3) 旧東欧諸国を次々とNATOに加盟させただけでなく、そのロシア周辺諸国にアメリカの軍事基地やミサイル基地を築いてきた。そして政変後のウクライナにも軍事基地やミサイル基地をつくろうとしている。
(4) それだけでなく、アメリカは NED「アメリカ民主主義基金」(National Endowment for Democracy)などを資金源としたいわゆる「カラー革命」と称するクーデターで政権転覆を謀った。今回の政変もさまざまなアメリカのNGOが絡んでいたことは、今や公然の秘密になっている。
(5) しかも、選挙で選ばれていたヤヌコービッチ大統領を今回の政変で暴力的に追放するにあたって大きな力を発揮したのは、第2次大戦後も西ウクライナに勢力を残存させてきたネオナチ勢力や極右勢力だった。その功労で新しい政権の閣僚に多くのネオナチ勢力や極右勢力の人物が据えられた。
(6) 新しいクーデター政権は、ウクライナの公式言語はウクライナ語であると宣言し、東部・南部に住むロシア語話者から今まで公用語として認められてきたロシア語を剥奪しようとした。そして極右・ネオナチ勢力の閣僚たちからは「民族浄化」「ロシア語話者をウクライナの地から一掃すべし」と声高に叫ばれるようになった。
(7) 実際、ネオナチ勢力や極右勢力はヤヌコービッチ大統領の追放劇にあたって、武器を手にして敵対者を脅迫したり傷つけたりした。またネオナチ勢力や極右勢力はキエフ政府軍とは別の特殊部隊をつくって東ウクライナにのりこんで行っている。彼らはしばしばキエフ政府の統制を無視し休戦協定を破って市民を攻撃してきた。

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 私が非常に深刻だと思ったのは、ウクライナからはるか遠くにいる日本の私でさえ知っていることを、ドイツ在住の活動家・進歩的ジャーナリストを自称する梶村氏が知らないことでした。
 ドイツと言えば、アメリカとは一定の距離を置いている国ですから、アメリカと違った視点でウクライナ危機を見ているメディアやジャーナリストがたくさん存在していても不思議はないはずなのに、梶村さんはどうもようすが違うのです。
 今まで「ロシア=ソ連」「プーチン=スターリン」という図式でウクライナ情勢を語る記事は、しばしば見たことはあるのですが、「プーチン=ヒトラー」という図式で今の情勢を分析し、それにたいしてほとんど何の疑問も批判も提示しない梶村氏の姿勢に、私は心底、驚かされてしまいました。
 現在のNATO軍の体制やウクライナ情勢は、アメリカに置き換えてみれば、アメリカと地続きのメキシコやカナダにロシアの軍事基地やミサイル基地を置くのと同じ状況なのです。キューバにミサイル基地があるというだけで当時のケネディ大統領は恐怖感に襲われてあわや核戦争のボタンを押しそうになったのです。
 だとすれば、メキシコのアメリカ国境近くにロシアの軍事基地やミサイル基地ができたらアメリカはどうしていたのでしょうか。梶村氏にこのような想像力が働かないというのが私には信じられません。
 氏には、「2001年ドイツ人良心的兵役拒否者の日本での兵役代替役務を実現」などといった平和運動家としての経歴があるだけに残念でたまらないのです。
 ドイツは日本よりもウクライナはずいぶんと近い距離にありますし、言語的にもドイツ語と英語は親戚関係にある言語ですから、梶村氏にとっては私たちよりも英語の文献ははるかに読みやすいはずです。知る気になれば、アメリカによるプロパガンダに毒されない情報を、Global Research その他で、いくらでも手に入れることができるはずなのです。
 にもかかわらず何が梶村氏をして今のような思考状態に追い込んでいるのか。これは真剣に検討してみる価値がありそうです。



東ウクライナ(ドネツク人民共和国)ザハルチェンコ首相―メディアに初めて登場して語る衝撃と感動のインタビュー

平和研究(2014/09/14)
ザハルチェンコ
左がコノフ国防大臣、右がザハルチェンコ首相

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 ウクライナ危機はプーチンの努力によってやっと休戦に持ち込まれました。これでルガンスクやドネツクの住民に援助物資が届くことになります。ガザに匹敵するほどの深刻な人道危機が進行していただけに、ホッと胸をなで下ろしたひとも少なくなかったでしょう。
 ところが相変わらず欧米の大手メディアは、「ロシア軍がウクライナ領に侵攻している、だから一層の経済制裁が必要だ」とオバマ大統領が言っている嘘を、そのまま撒き散らしています。
 しかし、これが真っ赤な嘘であることは、欧州安全保障協力機構(OSCE: Organization for Security and Cooperation in Europe) という、57カ国も参加している国際監視団体による詳細な報告からも明らかです。チョスドフスキー教授(カナダ、オタワ大学)による次の論文を御覧ください。
Obama is a Liar. Fake NATO Evidence. OSCE Confirms that No Russian Troops, No Tanks, have Crossed the Russia-Ukraine Border

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 ところがオバマ氏がいかに嘘つきであるかを示すもう一つの記者会見が、8月24日(日)に東ウクライナのドネツクでありました。ドネツク人民共和国のアレクサンドル・V・ザハルチェンコ首相が初めて公の場に姿を現し、現在の状況と自分たちの胸の内を明かしたものです。
 このインタビューでザハルチェンコ首相は次のように語っています。
 「もしもロシアがウクライナに正規軍部隊を派遣しているとお考えであれば、一言申しあげたい。もしロシアが正規軍を派兵していれば、我々は東ウクライナのエレノフカ市の戦いについて語ってはいなかっただろう。我々は、ウクライナの首都キエフの戦い、あるいは西ウクライナのリボフ市攻略を語っていただろう。」
https://www.youtube.com/watch?v=yH35raTPVu8
 つまり、ロシア軍の正規部隊が我々と共に闘っていれば、地元のルガンスクやドネツクで貧弱な装備を身につけた地元民による苦しい防衛戦を闘う必要はない、ずっと以前に首都キエフを陥落させ、西ウクライナの都市リボフ(ポーランド国境近く)にまで迫っていただろうと言うのです。
 しかし、従来どおりロシア語を公用語とするなど、自分たちはより強力な自治を求めて連邦制を主張しただけであって、ウクライナから分離・独立することを求めていなかった。ところが彼らは我々をテロリスト呼ばわりして一般市民に無差別のテロ爆撃を始めた。自分たちは売られた喧嘩を買っているのであって、首都キエフや西ウクライナを攻撃することは初めから考えていなかった。―これが彼らの主張でした。

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 実を言うと、このような記者会見があったことを私は「マスコミに載らない海外記事」で、P. ロバーツ氏(Paul Craig Roberts)の次の記事を読むまで知りませんでした。
「人類史上最大の戦争原因である欧米はあらゆる正当性をはぎ取られて立っている」
 この記事でロバーツ氏は次のように述べています。
 「The Sakerのおかげで、ドネツク人民共和国首相のアレクサンドル・ザハルチェンコがおこなった記者会見の英語字幕付きのものを見ることができる。ロシアと欧米のマスコミが出席した。
 ザハルチェンコが無知で腐った欧米マスコミ代表連中をやすやすとあしらう様子には感嘆されるだろうし、“あなた方の側について戦っている正規ロシア軍部隊はいますか?”というマスコミ質問への彼の回答で、腹の皮がよじれるほどお笑いになるだろう。
 我々既に知っての通り、イギリスとアメリカのジャーナリストが最も愚かだった。“あなたはなぜ捕虜に行進させたのか”という質問に対する回答には、皆様笑い死にされよう。
 このザハルチェンコという人物が、アメリカ、ヨーロッパ、カナダ、オーストラリア、日本、全てアメリカ帝国の傀儡政治家である連中に赤恥をかかせたのだ。ザハルチェンコの様な品格、資質の人間が、アメリカ合州国にも、いてくれればよいのだが。
 ザハルチェンコが正体を現し、愚劣な欧米マスコミを、こてんぱんに、やっつけた以上、彼は悪魔化され、事実をねじ曲げて伝えられるはずだ。そこでこの機会を利用して、ご自分の目で、品位と人格を併せ持つ人物をご覧願いたい。欧米の政界、マスコミ界には無い人物だ。」


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 この記事を読んでさっそく下記に載っている記者会見の「英語字幕つき動画」を見たくなりました。
 http://vineyardsaker.blogspot.jp/2014/08/watershed-press-conference-by-top.html
 そして、この動画を見ているうちに、この字幕を「文字起こし」して英語を読めるひとにぜひ読んで欲しいと思うようになりました。
 というのは、この記者会見は30分程度のものですが、この字幕を見ながら動画が消えて行く速度でザハルチェンコ首相の言っていることがすぐ理解できるひとは、そんなに多くないと思うからです。しかし「文字起こし」があれば、これを読むことはそんなに難しくはないでしょうし、分からない字句があれば辞書で確かめることもできます。
 そして、ザハルチェンコ首相が言っていることを一通り理解したあとで、もういちど動画を見ていただければ、ロバーツ氏が上記で次のように言っていたことの意味が本当に分かっていただけると思うからです。
 「ザハルチェンコが正体を現し、愚劣な欧米マスコミを、こてんぱんに、やっつけた以上、彼は悪魔化され、事実をねじ曲げて伝えられるはずだ。そこでこの機会を利用して、ご自分の目で、品位と人格を併せ持つ人物をご覧願いたい。欧米の政界、マスコミ界には無い人物だ。」
 以下が、そのザハルチェンコ首相の記者会見です。

<註> この「文字起こし」をしながら改めて思ったことは、庶民が権力による情報隠しと闘うために必要なのは英語で「会話する力」ではなく辞書さえあれば英語を「読むことができる力」だということです。会話のフレーズをいくら丸暗記しても、お金とエネルギーをいくら注ぎ込んでも、身の回りに英語人がいないのですから日常的に使う場がなく「「ざる水」効果」に終わります。ザルにいくら水を入れても溜まりません。これでは英語教育産業を喜ばすだけですし、もっと喜ぶのは権力者でしょう。というのは庶民のエネルギーは会話の暗記に浪費され、隠蔽された情報を読む方面に向けられないのですから。政府・文科省が「英語で授業」と大騒ぎしている本当の理由が、ここにあるのかも知れません。
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Novorossia TV com
Press Conference
―Formation of a State

24 Aug 2014
http://www.youtube.com/watch?v=yH35raTPVu8
http://vineyardsaker.blogspot.jp/2014/08/watershed-press-conference-by-top.html

[Alexander V. Zakharchenko, Chairman of The Council of Ministers of The Donetsk National Republic]
  As you all know, a week ago we announced our plan to attack. We started it yesterday. Until yesterday we have been preparing for the attack, examining trophy equipment, arming the crews, and testing communication between different military formations.
  I can now proudly announce that we formed 2 tank battalions, 2 full artillery brigades, 2 Grad divisions, 1 mechanized infantry battalion, 3 infantry brigades and a special purpose assault airborne brigade. All these units have now received Army numbers. The communication system have been regularized and 2 field hospitals and 1 maintenance brigade have been formed.
  We have begun testing all these units in battle. Yesterday we began an attack on Amvrosiyivka enemy group. According to our data, in course of the offensive, the enemy lost about 45 units of military equipment, we captured 14 units of military equipment, and about 1,200 people were killed and wounded.
  There are two cauldrons at the moment, in Amvrosiivka and Starobeshevskaia. We started to advance at 4 a.m. on Elenovka, where the fighting is still going on. 2/3 of Elenovka is under our control. We hope to clean up these areas before the night. However, the offensive will not end at that.
We will continue until we free all populated areas in the Donetsk National Republic. The army is ready and we have the support of the people. There will be more and more prisoners.
  Now regarding the Parade. I deliberately put the trophy equipment on display on Lenin Square. Everything that will come to us from Kiev, will end up in the same condition sooner or later.
  The more will come, the easier it'll be for us to restore our economy. As you may know, metallurgy is one of our main industries.
  I would like to thank the Minister of Defense for the close cooperation, understanding of the challenges facing the government, for his unlimited capacity to work and for his personal courage.

[Vladimir Konov, Defense Minister of DNR]
  Dear journalists, TV audience, I would like to appeal to you.
  The Ukrainian aggressive occupation army came on our soil. They brought a nationalistic ideology that has no respect for human life. Their only interest is in our territory and resources. They launch their vile attack on residential civilian complexes with grandmothers, women, and children.
  Just yesterday they fired on a residential quarter and killed a 9-year-old girl. There was no militia there. They use sneaky tactics of mobile mortar groups that come to a place, shoot at it for 10-20 minutes, and quickly leave.
  We already have all data on the movements of these mortar groups. They will be neutralized soon.
  Now regarding the armed forces. This is a uniform forces with the principle of undivided authority that prevents disobedience and disorder, contrary to those who call the DNR army Makhnovist, etc. It's a lie disseminated by the Kiev's junta as well as by those who have unleashed tanks, Grads, and artillery against its people.

[Alexander V. Zakharchenko, Chairman of The Council of Ministers of The Donetsk National Republic]
  You can now ask your questions.

[Press]
  Does the militia fire on the houses?

[Alexander V. Zakharchenko, Chairman of The Council of Ministers of The Donetsk National Republic]

  Let me correct you right away. We were the militia 10 days ago. Today, we are the armed forces of the Donetsk National Republic.
  The DNR's armed forces by no means try to strike on residential neighborhoods and houses. We don't and never practice this. This is our homeland, our soil, and our Motherland. This is a war on our territory that we want to preserve. We're not animals. We are not fighting in Kiev, we are fighting at home.

[Channel 1, Moscow]
  How would you characterize the Ukrainian armed forces' response to your offensive? Were they aware of it? Are they in confusion, resisting or rolling back?

[Alexander V. Zakharchenko, Chairman of The Council of Ministers of The Donetsk National Republic]
  Most likely they knew about our counter-attack as we did not make a secret of this. They didn't know the time and place of the attack.
  There are regular army officers who, unfortunately, at some point graduated from the Soviet military schools and the Academy. They were preparing for different options, and have guessed some of them. The fighting was heavy because the regular units fight well. The regular army really fights, gets defeated, but never gives up.
  Those who roll back are the battalions of Shakhtersk, Aydar etc. They are usually easy to attack because they retreat at the first shot and never engage in direct fire contact. They usually retreat and call on the regular units, and then they start to attack together.
  Again, the fighting is very heavy. You can feel the enemy's superiority in their quantity of equipment. To give you an idea of the intensity of the fighting: we cross about 40 km in the day.

[Press]
  The Parade of prisoners of war we've seen this afternoon, isn't it against all humanitarian conversations and motions of dignity?

[Alexander V. Zakharchenko, Chairman of The Council of Ministers of The Donetsk National Republic]
  As a lawyer, I can say that we did nothing against international law. The prisoners were not undressed or starved. Show me a single international law, which prohibits parading prisoners. We have not done anything illegal.

[Press]
  What was the purpose of this parade? Were you trying to send a message to Kiev? Why did you make a decision to parade the prisoners of war?

[Alexander V. Zakharchenko, Chairman of The Council of Ministers of The Donetsk National Republic]
  Kiev said that they will march in parade in Donetsk on the 24th. So they did. Poroshenko didn't lie: they were here together with their hardware.

[Press]
  This week Lugansk received humanitarian aid from Russia. Are you waiting for such help, and when do you think you can expect it to come?

[Alexander V. Zakharchenko, Chairman of The Council of Ministers of The Donetsk National Republic]
  We expected it yesterday, even before Lugansk. Our city's population is bigger than Lugansk, as it was logical to send it to us first. But situation in Lugansk is much harder, so it was sent there first. I hope that we will receive our help soon.

[Press]
  Are there any negotiations about the terms of delivery?

[Alexander V. Zakharchenko, Chairman of The Council of Ministers of The Donetsk National Republic]
  Yes, the negotiations were conducted on the same day as Lugansk, but, unfortunately, we didn't get it.

[Press]
  Will Lugansk share their received help with you?

[Alexander V. Zakharchenko, Chairman of The Council of Ministers of The Donetsk National Republic]

  As practical business managers, we would like it. However, from the humanitarian position we understand that the situation is more difficult there. We have to rely on our own resources for now. Hopefully, help will come soon.

[Press]
  There are historical parallels with July 1944 and the March of the Nazis. Did it happen by accident or was it done on purpose?

[Alexander V. Zakharchenko, Chairman of The Council of Ministers of The Donetsk National Republic]
  Honesty, we have recently seen one of the insignias of the 2nd separate brigade: the complete emblem of the Galicia SS Division, a 79 SS Galicia badge.
  When we saw the full symbol of this Division... Many Russian families suffered losses in the Second World War. One of the ancestors in my family fought against the Galicia SS Division. This is not just a parallel, this is generational: my great-grandfather, and now I, and the same division...
  That's why a desire was born to repeat 1944 so they would realize that it all already happened before, it has repeated itself with the same result. Every time you come to Russia with a sward, "from a sward you will perish."
  Unfortunately, dear journalists, the West tries to invade us with regularity of 30-50 years. That is, every 30-50 years the Western civilization tries to impose on us their opinion and their way of life. The First World War, the Great Patriotic war, the Crimean war before that and so on well into the depths of history. As a result, the West traditionally gets the fall of Berlin, Paris, etc. There is Maidan every year in Kiev―"Those who don't jump are Moskals."
  The West comes every 30-50 years to get what it deserves. Now in 2014, they are slightly delayed.

[Press]
  What kind of aid do you now get from Russia?

[Alexander V. Zakharchenko, Chairman of The Council of Ministers of The Donetsk National Republic]
  Individuals and certain organizations send us food, clothes, and medicine. Ramzan Kadyrov has collected humanitarian aid worth of $70 million, which is now waiting in Rostov. It was not a state program, it's from the Republic and the President of Chechnya.

[Press]
   ...experts in artillery from Samara?
  (Samara: ロシア西部のボルガ川に臨む都市)

[Alexander V. Zakharchenko, Chairman of The Council of Ministers of The Donetsk National Republic]
  I will invite several officers of the French Navy, who want to fight with us. They are willing to give an interview. We have Europe fighting amongst us. The European ideals of equality, fraternity, and the French revolution, as in the Marseillaise, resonate with the patriots of France.
  It means, the nation is not dead, since it has such representatives who are willing to go to the far away place to fight for their ideals, which the Bastille was once taken for.
  Yes, there are volunteers: the French, the Russians. Is it a bad thing? It's great.
  (Marseillaise: フランス革命中にマルセイユ義勇軍がパリ進軍の際に歌った。フランス国歌。)
  (Bastilleバスチーユ監獄襲撃でフランス革命が始まった)

[Press]
  Are there regular Russian military units fighting on your side?

[Alexander V. Zakharchenko, Chairman of The Council of Ministers of The Donetsk National Republic]
  If you think that Russia is sending its regular units here, then let me tell you something. If Russia was sending its regular troops, we wouldn't be talking about the battle of Elenovka here. We'd be talking about a battle of Kiev or a possible capture of Lvov.
  (Lvov: リボブ、ウクライナ西部の都市)
  Now there is a war on our soil for our territory. We have an influx of volunteer from all over the world. Of course, the Russian help would be very desirable, but from a political point of view it is impossible and unrealistic.
  Thanks, by the way, to the European countries. You do not acknowledge this war just as you did not acknowledge the great Patriotic war, didn't you?
  You support the anti-terrorist operation against terrorists and separatists. Have you not developed a Charter of free territory, I believe, in Switzerland? A Territory has a right of self determination and separation after a referendum. Germany lives by the same principles. There will be a referendum in Scotland soon. That is, you call your own principles democratic and carry them out (almost) democratically.
  The example of Czechoslovakia was peaceful. Yugoslavia, unfortunately, was torn into a thousand little pieces by you. Using military methods by the way. We have the same thing happening here. That is, if you stop pursuing a policy of double standards and will be able to understand that people live here.
  What is our fault? The fault of Donetsk, Donbass, our land? That we are asked to live independently? That we wanted to live the way we want? To speak our language? To make friends with whom we want? We didn't want to go to Europe. We have different mentalities, religion. But we have a different religion. We want to go East. We wanted to live the way we want, but we were not allowed to. We were called terrorists and separatists.
  Please note, we did not capture any regional administrations, nor did we scorch district departments. That's what the Maidan did.
  Slogans: "No oligarchy", "Equality and brotherhood", "Freedom of religion and language", "Freedom of choice." All these slogans are from the Maidan. We want the same thing. So why are we the bad guys? What did we do to deserve being bombed from planes?, shot at from tanks? and have phosphorous bombs dropped on us?
  Explain to me what an anti-terrorist operation is?! There police forces and intelligence services are involved, and not regular military units, military vehicles and aircrafts.
  Dear journalists, please correct me if I am wrong. If we are terrorists, then the police and the security service of Ukraine must fight us.
  30, 25, 95, 72, and 76―the entire Ukrainian army is present on our territory. Three conscriptions, the national guard, territorial battalions, private battalions Aidar, Azov, Shakhtersk, Donbass, Dnieper-1, Dnieper-2, Dnieper-3, battalion Kiev, and now Kryvbas.
  What have we done? What is our guilt? The fact that we have shale gas, for which you want to erase entire Slavyansk from the face of the earth? Or any other financial interests?
  We are all descendants of the glorious ancestors. We all have ancestors that we are proud of. Only between the two of us there are two Heroes of the Soviet Union.
  We are still able to hold weapons in our hands. We swallowed with our mothers' milk a pride and desire to live in free and happy Donbass. We'll tell anyone who comes to harm us on our soil: we will fight tooth and nail for our Motherland.
  Kiev and the West made a big mistake by awaking us. We are the hardworking people. While others were jumping on the Maidan for 300 graves, our people were down in the mine, mining coal, melting metal and sowing crops. None of us had time to jump, we were busy working.
  When a person who just yesterday worked with a jackhammer or operated a harvester, today got behind a steering wheel of tank or Grad, or picked up a machine gun, the line has been crossed and you cannot stop him. The one who left his job knows that he will fight to the end and to his last breath. You may pass it on to others: do not wake the beast. Just don't.
  While there is still an opportunity, let mothers spare their sons. For some, perhaps this will be terrible news: there still lie several hundred soldiers of armed forces of the Ukrainian army under Panovka, Saur-Mohyla, who are unaccounted for.
  Families receive "missing in action" letters. They are actually dead. Kiev authorities do it on purpose. Hundreds and thousands dead in more than a dozen graves. I announce it officially. Let everybody know if you received a "missing in action" letter, then most likely, your husband, brother, or son got killed.

[Vladimir Konov, Defense Minister of DNR]
  I can you give an example from the battle of the 72nd and 25th battalions against us in Shakhtersk. I have all the documents of the soldiers who burned near the wrecked machinery.
  We returned the bodies to the Ukrainian army. Two weeks later, we received information that they were "missing in action." Why did they bother to pick up the bodies?
  It was reported that the Ukrainian army from the beginning of conflict had 12,000 killed, 19,000 wounded and 5,000 missing. They are not missing, they were killed and buried under Karachun, in Krasnyy Liman... They were dumping bodies from a helicopter with stones tied to their feet into the Blue lakes near Slavyansk.

[Alexander V. Zakharchenko, Chairman of The Council of Ministers of The Donetsk National Republic]
  Vladimir Petrovich, let's not excite our press with such gruesome details.
  Poroshenko said that all 120 people out of 1,200 who participated in the Parade in Kiev, will go to the East. Now I want to say: I don't want to fight. It wasn't my choice, but I'll fight till the end for my land, no matter who, when and how numerous they were.
  This is a battle of annihilation. Unfortunately, the Slavs are fighting among themselves and destroying their best people. We want to reach out to all the relatives and mothers: do not send your sons here.
  Leave us alone. Let us live free and in peace. We didn't come to you in Kiev, Dnepropetrovsk, or Zaporozhye. We are not marauding your villages, raping your women, killing your elders and stealing their military decorations.
  Remember decorations for Stalingrad, the capture of Berlin, Gold Star medals, Orders of Glory, Orders of the Red Banner, mixed up with women's earrings? ... We don't do that. We want to live on our land the way we want. We don't need you. We are different.
  Ukraine of the East and the West is an artificially created conglomerate. However, we didn't start this war.
  If someone has a political conscience, a will and a courage of real man, I'm just suggesting to stop this operation.
  You don't have to recognize our status, just leave us alone within our borders of Donetsk and Lugansk republics, and we will kiss each other goodbye.

[Press]
  A question from the French newspaper Liberation. When will a press conference with the French internationalists, that you mentioned, take place?

[Alexander V. Zakharchenko, Chairman of The Council of Ministers of The Donetsk National Republic]
  They will arrive tomorrow. Talk with Vladimir Petrovich tomorrow. Contact him through his press Secretary.

[Press]
  Do you think the meeting with Poroshenko will bring any positive solutions?

[Alexander V. Zakharchenko, Chairman of The Council of Ministers of The Donetsk National Republic]
  Let me clarify. No federalization can be possible today. There is time for everything. We asked for the federalization 3 months ago, then we asked for a permission to hold a referendum. That time has passed, now we want to live independently.
  The Ukrainian authorities are using police methods to subdue us: they arrest us, cordon us off, and conduct anti-terrorist operations against us. By now so much blood has been spilled and so many people have died for freedom. How can we speak of federalization? What is federalization? This is a series of bureaucratic procedures that need to be done.
  But we want to live independently. We have very rich land. Talks about subsidies is a lie perpetrated by thieves to steal money. Each President understood this very well and always participated in it.
  We are a self-sufficient region with its agriculture, developed industry, forests, fields, and seas. We have everything from a "Switzerland" to the sea. Resort areas, agriculture, chemical and coal industry, rich minerals, gas deposits, etc. Despite close ties with the rest of Ukraine, we can and must be able to feed ourselves. If they do not understand it in a good way, then we will ask them in a hard way.
  I hope that the meeting between Poroshenko and President Vladimir Putin will lead to the taking of our position into account.

[Press]
  About the law in relation to people who are in prison.

[Alexander V. Zakharchenko, Chairman of The Council of Ministers of The Donetsk National Republic]
  Please specify what kind of law you are talking about.

[Press]
  On what basis these people have arrested?

[Alexander V. Zakharchenko, Chairman of The Council of Ministers of The Donetsk National Republic]
  We have recently adopted a new criminal code and the creation of court-martials and tribunals. Is that what are you talking about?
  This is not a law, this is a provision that we have discussed in the Council of Ministers and then submitted to the Supreme Council. The Supreme Council gave us a go-ahead. Are you asking about people who were arrested prior to this or after?
  At the moment we have mostly detained soldiers who violated military discipline and the oath of allegiance. A court-martial will have to deal with it. Now regarding the rest. Since the adoption of this law, all detained civilians were transferred to the Ministry of Internal Affairs and the Ministry of State Security for their hearings.
  Depending on the sentence, they will either be released, or subjected to administrative punishments in the form of community service from 10 to 30 days. Donetsk Detention Center came over to our side, so civilized places will be used for detentions.

[Press]

[Alexander V. Zakharchenko, Chairman of The Council of Ministers of The Donetsk National Republic]

  For further clarifications you can enquire at the reception a desk of the Deputy Prime Minister or to appeal to the Prosecutor General.

[Press]
  A question about the death penalty.

[Alexander V. Zakharchenko, Chairman of The Council of Ministers of The Donetsk National Republic]
  I'll be honest, I think the death penalty is the highest form of protection of security. You probably remember that my first decree was to fight banditry.
  Yes, this is a widespread phenomenon, because all sort of criminal elements penetrate under the guise of a revolution. We must fight it now so we wouldn't have to hunt these paramilitary groups down later. That was the reason behind this decision.
  After the long discussions it has been decided to adopt the death penalty. You all know perfectly well that the abolition of the death penalty does not reduce crime. Statistics show that with the death penalty abolished crimes "for some reason" tend to go up.
  The society, ordinary people, and private entrepreneurs have to be able to live and work in the safety. We made a decision to guarantee their security.
For details, please familiarize yourself with the code. It is written in quite clear language.


<註>
2014/08/26 に公開
Subtitles in english, french, german and korean
Transcription/Translation/Timecoding: Marina
English proofreading and editing: Erebus, Michael and Vaughan
This is a thorough press conference by Alexander V. Zakharchenko, Chairman of The Council of Ministers of The Donetsk National Republic. It touches upon a few key points regarding the war, its origins and what and whom Kiev is fighting.
The possibility of Federalization is also discarded as irrelevant as that ship had certainly sailed. This is a fight for independence now.
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