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英語で日本が亡びるとき――英語民間試験は何をもたらすか(3)

英語教育(2020/02/15) OECD学力調査、 PISA 2013・2018、小学校英語、「ザルみず効果」、大学入試「民営化」、愚民化政策としての英語教育

OECD成人学力調査2013
資料 OECD学力調査 PISA2013 国語力(16-24歳
資料 OECD学力調査 PISA2013 国語力(16-65歳)


 私は前々回のブログ(2020/01/29)で次のように書きました。

ただし今回ひとつだけ言っておきたいのは、安倍内閣・文科省が今のような英語教育政策を続けているかぎり、日本人の英語力は向上しないだけでなく、日本の子どもや若者の国語力も限りなく劣化していくということです。文科省の指導要領は私の言う「ザルみず効果」しか産まない英語教育政策だからです。・・・
 ところが、この私の主張を裏付けるかのように、昨年12月3日、経済協力開発機構(OECD)は、世界79か国・地域の15歳約60万人の生徒を対象に、2018年におこなった学習到達度調査(PISA)の結果を公表しました。そこでは、日本は「読解力」が15位となり、前回15年調査の8位から後退しているのです。


 これを受けて、さらに私は前回のブログ(2020/01/29)で、日経新聞に載っていた、もうひとつの学習到達度調査(PISA)の図表「上位になった国・地域」を紹介しつつ、次のように述べました。

 これを見ると、中国、シンガポール、マカオが上位3位を占め、香港、韓国が含めれば上位10位をアジア勢が占めていることが分かります。マカオや香港は本来は中国の領土ですから、中国、韓国がトップ層に進出し始めていることが分かります。
 つまり、日本がアメリカの言いなりになって、中国や韓国に経済制裁をおこなったり、大手メディアを使って反中国・反韓国の感情を煽り立てているうちに、いつのまにか経済的にも学力的にも、これらの国に追い越されつつあるわけです。


 私は拙著『英語で大学が亡びるとき』(明石書店2015)を著したとき、その第3章第2節「アメリカの大学は留学するに値するか」で、まず最初に「OECD成人学力調査2013から――アメリカ学生の学力は最底辺、日本は最上位」と題して、冒頭の図表を掲げました。
 ご覧のとおり、16-24歳の若者だけに絞った場合、日本人の読解力は、フィンランドに次いで2位でした。ところが16-65歳まで年齢の幅を広げると、日本人はフィンランドを抑えて、堂々の1位でした。
 ということは、年寄りの方が読解力が高いということです。逆に言えば、若い世代の学力が劣化しつつあることになります。これは2013年の調査ですが、それが2018年になると、年齢の異なる調査とは言え、15歳の読解力は、ついに15位にまで転落しました。
 繰り返しになりますが、前回15年調査の8位からさらに後退しているのです。私に言わせれば、この結果はなるべくしてなったというべきでしょう。
 「安倍内閣・文科省が今のような英語教育政策を続けているかぎり、日本人の英語力は向上しないだけでなく、日本の子どもや若者の国語力も限りなく劣化していく」という私の予言どおりの結果でした。
 ところが文科省は、この結果を真摯に受け止めるのではなく、「PISAは15年調査で、紙に手書きで解答する方式からパソコンで入力する方式に変更しており、日本の生徒は機器の操作に慣れていないことが影響した可能性がある」として次のような方針を打ち出しています。

今後、情報を精査して自分の考えをまとめて発表したり、多様な文章を読んで生徒同士で話し合ったりする授業に力を入れる。デジタル時代に対応した学力を伸ばすため、小中学校の児童生徒1人あたり1台のパソコンを配備することも目指す。


 つまり、小学校に英語教育や道徳教育やプログラミング教育を導入して、国語力や数学力を育てることから生徒の時間や精力を奪おうとしているのです。これでは英語教育やプログラミング教育の土台となる基礎学力(国語力や数学力)は育ちようがありません。
 まして道徳教育を必修化して点数までつけるというのですから、開いた口が塞がりません。いま道徳教育が必要なのは子どもではなく、公文書を改ざんしたり廃棄して自分の犯した罪を逃れようとする安倍晋三氏および安倍内閣の面々ではないでしょか。
 台湾出身で日本国籍を取得した評論家の金美齢女史も、『週刊新潮』2019年12月19日号(132頁)で次のように述べています。

私は大学で英語を教えていたことがあるのですが、その経験から言っても、外国語を操る能力は母語のそれに正比例します。日本語ができなくて英語ができるわけがない。日本人として生まれ日本で暮らしていて、日本語がろくにできないのに英語ができるなんて絶対にあり得ません。小学3、4年生から英語をやったって身につくはずがない。まずは国語をしっかりと学び読解力をつけなければ、英語だって上達しません。


 つまり金女史は、小学校英語を、まさに私の言う「ザルみず効果」としてしか位置づけていないのです。
 数学者でお茶の水女子大学名誉教授の藤原正彦氏も、『文藝春秋』2020年1月号の巻頭論文で、私と同じことを主張しているので驚きました。
 というのは、藤原氏は、小学校英語を「国民のエネルギーの壮大な無駄使い」と述べつつ、「『英語教育』が国を減ぼす――大学入試改革は産業界主導の愚民化政策である」と題した、10頁にも及ぶ論文を次のように結んでいるのです。

 これほど無駄で、実害のある「グローバル人材育成」は愚民化政策と言って過言でない。反日的とも言える愚策に十年余りも政府や経済界が拘泥するのには訳がある。
 二〇〇一年に成立した小泉竹中政権の頃から、半ばアメリカによる洗脳と強要により、日本は新自由主義に大きく舵を切った。規制緩和、規制撤廃などを合言葉に、人、カネ、モノが自由に国境を越えるグローバリズムにのめりこんで行った。
 互いを思いやるという日本型社会に、競争と評価という世知辛いシステムが導入され、人々は生き残るため、我が国になかった自己中心主義や金銭至上主義に傾いた。そして政府は、グローバリズムでの敗者とならぬよう、デフレ不況克服という課題もあり、経済至上主義を政治の基軸に据えるようになった。
 当然の成行きとして、経済界の発言権がそれ以前に比べ格段に高まった。とりわけ、小泉竹中内閣の時代から、規制を作り守るのは官僚ということで、官叩きや官外しが始まり、代りに首相直下の経済財政諮問会議や規制改革会議などが、外交、国防を除く多くの政策の大綱を決めるようになった。各省庁はそれらをつつがなく実行する機関に成り下がった。
 そしてこれら内政を決定する、最強力な会議のメンバーのほとんどは、経済人、および新自由主義に染まったアメリカ帰りのエコノミストであった。この時以来今日に至るまで、官邸直属の会議による内政主導が続き、その主たるメンバーも経済界によって占められてきている。例えばここ二十年間の大きな教育改革のほぼすべては、専門性のある文科省でなく、いわば教育の素人である経済界の提起したものであったと言える。
 彼等にとって教育とは、大学を出てすぐに役立つ有能なグローバル戦士の育成なのである。英語、IT技術、プレゼンテーション技術といった小手先技術を小中高大で掲げたのはそのためだ。これでは文学者も芸術家もノーベル賞科学者も出なくなる。教育とはむしろ、「グローバリズムが決して人間を幸福にしない」「経済より大切なものがある」といったことを分かるだけの教養や情緒を持つ人間を育てることなのだ。


 金女史の主張も藤原正彦氏の主張も、すでに私が一貫して主張してきたことですから、内容にとくべつ目新しいものはありません。
 しかし、金女史も藤原氏も、どちらかと言えば右派系と目されている人物です。とくに金女史はウィキペディアによれば「安倍晋三の支持者として知られ、“ばあや”を自称する」人物だそうですし、『文藝春秋』もどちらかと言えば右派系の月刊誌です。
 そのような人物が安倍内閣の文教政策を痛烈に批判していることに、私は大きな意義を見出しました。
 とりわけ上記の藤原論文の結びは、小泉竹中内閣と新自由主義を痛烈に批判しているのですから、まるで山本太郎の演説を聴いているような気分すらしてきます。
 このような流れを考えると、安倍内閣と現文科省の命もそう長くはないのかも知れないと思えてきます。また是非そうあって欲しいと願っています。

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英語で日本が亡びるとき――英語民間試験は何をもたらすか(2)

英語教育(2020/01/29) 教育の民営化、「ザルみず効果」、萩生田氏に功労賞を、日本語力の劣化、学習到達度調査(PISA)、15歳の読解力15位に、四技能は螺旋状に発展する

PISA2019 「上位になった国・地域」
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO52905290T01C19A2CC1000/?n_cid=NMAIL007_20191203_Y

 
私は前回のブログの末尾で、次のように述べました。

 ただし今回ひとつだけ言っておきたいのは、安倍内閣・文科省が今のような英語教育政策を続けているかぎり、日本人の英語力は向上しないだけでなく、日本の子どもや若者の国語力も限りなく劣化していくということです。文科省の指導要領は私の言う「ザルみず効果」しか産まない英語教育政策だからです。
 これは、拙著『英語教育原論:英語教師三つの仕事三つの危険』2007→『英語教育が亡びるとき:「英語で授業」のイデオロギー』2009→『英語で大学が亡びるとき:「英語力=グローバル人材」というイデオロギー』2015、という三部作のなかで繰り返し述べてきたことです。
 ところが、この私の主張を裏付けるかのように、昨年12月3日、経済協力開発機構(OECD)は、世界79か国・地域の15歳約60万人の生徒を対象に、2018年におこなった学習到達度調査(PISA)の結果を公表しました。そこでは、日本は「読解力」が15位となり、前回15年調査の8位からさらに後退しているのです。
 私に言わせれば、この結果はなるべくしてなったというべきでしょう。


 前回のブログでは、日本は「読解力」が15位となり、前回15年調査の8位からさらに後退していることをグラフで紹介しました。このグラフを載せた日経新聞(2019/12/3)には、もうひとつの図表も載っていました。それが冒頭で紹介した「上位になった国・地域」という図表です。
 これを見ると、中国、シンガポール、マカオが上位3位を占め、香港、韓国が含めれば上位10位をアジア勢が占めていることが分かります。マカオや香港は本来は中国の領土ですから、中国、韓国がトップ層に進出し始めていることが分かります。
 つまり、日本がアメリカの言いなりになって、中国や韓国に経済制裁をおこなったり、大手メディアを使って反中国・反韓国の感情を煽り立てているうちに、いつのまにか経済的にも学力的にも、これらの国に追い越されつつあるわけです。
 私は前掲書で繰り返し、「日本のノーベル賞受賞者で英語に血道を上げてきた人はひとりもいない」「こんなバカな英語教育政策を続けていると将来、日本からはノーベル賞受賞者は出てこないだろう」と述べましたが、不幸なことに、その予感が当たってしまいました。
 つい思わず愚痴になってしまいましたが、以下では、私へのインタビューが載った週刊『I・B TOKYO』を送ったところ帰ってきた反響の一部を紹介し、今回の末尾とさせていただきます。「グーグル翻訳を使えば、フランス人との会話もできた」というエピソードは、何のために英語教育をするのかを改めて考えさせてくれるのではないでしょうか。

寺島先生
 ご多忙の中、先生のインタビュー記事をわざわざご送付頂き、本当にありがとうございました。
 先生の民間英語試験に対する鋭いご指摘、核心をついたご意見に読んでいて私も胸がすく思いでした。(「ザルみず効果」はまさに的を得た表現で、いつも激しく頷いております)
 と同時に、バタバタしていてなかなかメーリングリストもチェックできていない私のことを先生が覚えていて下さり、わざわざこの情報誌を送って下さったことが何よりも嬉しく、感激しております。
 私の方は、年末のCT検査でも今回も「ガン再発、所見無し」との結果を県病院から頂き、ほっと安堵しながら、また教壇に立っております。しかしながら、大切な友人である**中学校の**先生を12月に大腸ガンで亡くし、悲しい思いも致しました。
 私たちは、健康に平凡な日々が過ごせる幸せ、当たり前に生きられる幸せを噛み締めなければなりませんね。
 寺島先生・美紀子先生もどうかくれぐれもお体ご自愛頂いて、これからももっともっと日本の英語教育のために、大切な警鐘をご発信頂きたいです。
 先生のようなはっきりとした事実、貴重なご意見を言って下さる方こそ、混迷を極める英語教育の世界に今まさに必要です。
 記事を拝読しながら、しみじみ先生の存在の大きさを感じ入っておりました。本当にありがとうございました。


寺島先生
 お礼の連絡が遅くなりました。先日まで**の準備・入試・採点でした。今度は高校の入試準備が始まります。
 萩生田大臣に功労賞はまさにその通りですね。あんなに穴だらけの制度のまま本当に押し切るのかと冷や冷やしていました。
 河合塾の本校担当者には春先から「こんなの無理だから絶対なくなるよね」と言っていたのですが、担当者曰く「こんなにお金動いているのに今更絶対なくならない」。そう言われて、ケンブリッジ英検を受けさせるように勧められていたので、校内で英検にするか、ケンブリッジにするか、GTECにするか何度も英語科で検討会を開いてきました。
 結局、今年は全員「英検」を受験させるということで、本校では予約金3000円で申し込みも完了していたのですが、受験日が部活大会などとの絡みでどうなることやらずっと悩んでいたところでした。
 IBの記事の中の先生の「4技能は均等に発展しないらせん状に上達していく」というのは、まさにその通り!だと思いました。「しかも今後は、日常会話レベルの「話す」はポケトークなどの翻訳機で間に合う時代がくる」というのまさに同感です。
 年末年始、息子のホストファミリーがフランスから来日してていたのですが、グーグル翻訳はかなり役立ちました。英語でしゃべれば、ほとんど通じるフランス語になったようです。
 息子がお世話になったお礼を英語でスピーチすると、それをグーグルが仏語で音声化し絵くれて、向こうのお母さんとお父さんが泣いてくれてました。数年後、日本語でも、もっとすごい安い翻訳機ができたら「先生、なんで英語学ぶしかないの」の質問にどう答えようかと考えさせられます。
 取り急ぎ、お礼とご報告まで。今年もよろしくお願いします。

英語で日本が亡びるとき――英語民間試験は何をもたらすか(1)

英語教育(2020/01/29) 教育の民営化、「ザルみず効果」、萩生田氏に功労賞を、日本語力の劣化、学習到達度調査(PISA)、15歳の読解力15位に、四技能は螺旋状に発展する

PISA2019 「日本人の読解力15位」
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO52905290T01C19A2CC1000/?n_cid=NMAIL007_20191203_Y


 新年の御挨拶を前回のブログに載せてから、あっという間に3週間が経ってしまいました。前回のブログで私は次のように書きました。

 この英語民間試験については上記の年賀状でも述べましたが、中日新聞や週刊『I・B TOKYO』からインタビューを受けました。この中日新聞インタビューについては、下記のブログでも紹介しました。 
http://tacktaka.blog.fc2.com/blog-entry-349.html (2019/08/15)
 しかし、週刊『I・B TOKYO』から受けたインタビューについては紹介する機会がないまま新年を迎えてしまいました。
 というのは、このインタビューが週刊『I・B TOKYO』に載る前に、下記のWEBにそのインタビューが3回にわたって紹介されてしまったからです。
 そのうちに週刊『I・B TOKYO』でも載るだろうから、そのときに併せて紹介すればよいと考えているうちに、新年になってしまったというわけです。


 ところが1月の中旬になってから週刊『I・B TOKYO』の新年第1号に(正確には1月14日号、1月7日号は正月休刊)、何と驚いたことに、私へのインタビューが載っているではありませんか。
 しかも、その巻頭には週刊『I・B TOKYO』の発行者であるマックスデーター社の社長論文が載っていて、かつ私へのインタビューには冒頭に「令和のキーパーソン」という文字が躍っていましたから、こちらのほうが度肝を抜かれてしまいました。
 それはともかく、せっかく私へのインタビューが届いたのですから、さっそく本ブログで紹介したいと思いました。ですが、私の主宰する研究所の活動の一環として2017年から始めたサイト『寺島メソッド翻訳NEWS』http://tmmethod.blog.fc2.com/の責任者が、昨年末に癌の手術を受け、その後の対応に追われて今に至ってしまいました。
 このサイトは『マスコミに載らない海外記事』に刺激を受け、その応援をできないかと思って始めたものです。というのは大手メディアを視聴している限り世界の真実は見えてこないと思ったからです。その意味で『櫻井ジャーナル』や『マスコミに載らない海外記事』などは非常に貴重な存在なのですが、いかんせん多勢に無勢で、ともすれば大手メディアにかき消されてしまいます。
 そこで独立メディアが少しでも多く誕生すれば、少しは『マスコミに載らない海外記事』などにたいする側面援助になるのではないかと、研究所の活動の一環として始めたのが先述の『寺島メソッド翻訳NEWS』でした。このサイトの冒頭には責任者によって、その趣旨が次のように書かれていました。

元岐阜大学教授寺島隆吉先生による記号づけ英語教育法に則って開発された翻訳技術。大手メディアに載らない海外記事を翻訳し、紹介します。


 しかし残念なことに、その責任者が胃癌と診断され、胃腸のかなりの部分を切除されてしまい、このサイトの運営をどうしようかという大問題にぶつかってしまったのです。研究所の「翻訳グループ」が、下訳→相互の校正→最終の改訂訳→サイトに掲載、という手順でやってきたのですが、その大黒柱が倒れてしまったのでした。
 そういうわけで今後の対応に追われているうちに現在に立ってしまったというわけです。しかし何とか上記のサイクルを維持できる見通しが出てきたので、私もやっと、このブログに復帰できることになりました。
 そこで手始めとして、まず週刊『I・B TOKYO』の私へのインタビューを一挙に載せ、それへの反響や私の解説は次回に回したいと思います。
 ただし今回ひとつだけ言っておきたいのは、安倍内閣・文科省が今のような英語教育政策を続けているかぎり、日本人の英語力は向上しないだけでなく、日本の子どもや若者の国語力も限りなく劣化していくということです。文科省の指導要領は私の言う「ザルみず効果」しか産まない英語教育政策だからです。
 これは、拙著『英語教育原論:英語教師三つの仕事三つの危険』2007→『英語教育が亡びるとき:「英語で授業」のイデオロギー』2009→『英語で大学が亡びるとき:「英語力=グローバル人材」というイデオロギー』2015、という三部作のなかで繰り返し述べてきたことです。
 ところが、この私の主張を裏付けるかのように、昨年12月3日、経済協力開発機構(OECD)は、世界79か国・地域の15歳約60万人の生徒を対象に、2018年におこなった学習到達度調査(PISA)の結果を公表しました。そこでは、日本は「読解力」が15位となり、前回15年調査の8位から後退しているのです。
 私に言わせれば、この結果はなるべくしてなったというべきでしょう。


IB TOKYO 20200113 1

IB TOKYO 20200113 2

IB TOKYO 20200113 3

IB TOKYO 20200113 4

新年(2020)の御挨拶――週刊『I・B TOKYO』から受けたインタビューについて

英語教育(2020/01/07) 教育の民営化、英語民間試験、元文科大臣=前学習塾経営者・下村博文、大山(たいざん)鳴動して鼠(ねずみ)一匹、放射能で「おもてなし」、山本太郎と「れいわ新撰組」

年賀状2020 taka改訂jpg


 遅ればせながら新年のご挨拶を申し上げます。学校も冬休みが終わり、教員にとってはいよいよ忙しい新学期が始まります。
 昨年は大学入試改革で大揺れしましたが、「大山鳴動して鼠(ねずみ)一匹」で終わりました。
 しかし教師や生徒にとってはホッと安心できた年末ではなかったでしょうか。もともと本気で教育のことを考えた入試改革ではなく、初めから教育産業のことを念頭においた改革でしたから当然の結末ではあったのですが。
 この英語民間試験の強力な旗振り役をした下村博文・元文科大臣が議員になる前の前職は、学習塾経営者でしたから、さもありなんと納得させられます。
 
 この英語民間試験については上記の年賀状でも述べましたが、中日新聞や週刊『I・B TOKYO』からインタビューを受けました。この中日新聞インタビューについては、下記のブログでも紹介しました。 
http://tacktaka.blog.fc2.com/blog-entry-349.html (2019/08/15)
 しかし、週刊『I・B TOKYO』から受けたインタビューについては紹介する機会がないまま新年を迎えてしまいました。
 というのは、このインタビューが週刊『I・B TOKYO』に載る前に、下記のWEBにそのインタビューが3回にわたって紹介されてしまったからです。
 そのうちに週刊『I・B TOKYO』でも載るだろうから、そのときに併せて紹介すればよいと考えているうちに、新年になってしまったというわけです。

*間違いだらけの大学英語入試~経済政策にひた走る文科省!
https://www.data-max.co.jp/article/33025(2019年12月09日)
https://www.data-max.co.jp/article/33026(2019年12月10日)
https://www.data-max.co.jp/article/33027(2019年12月11日)


 このインタビューを受ける前に、私が主宰する研究所の準研究員O君から多大な資料提供を受け、それを元にしてインタビューのための準備原稿を書いていたら、かなり膨大な量になってしまいました。
 そこでインタビューが終わったあと、家人が「これだけ書きためたのだから勿体ない」と言って長周新聞への投稿を勧めるものですから、さっそく原稿を送ったところ、驚いたことに、この膨大な原稿を丸々すべて、3回にわたって掲載してくれました。
 これについては、前回および前々回のブログで紹介しましたが、準研究員O君が集めてくれた大量の資料のおかげで、何とか週刊『I・B TOKYO』によるインタビューを乗り越えることができたにもかかわらず、それを紹介する機会が昨年中にはありませんでした。
 そういうわけで、O君には本当に申し訳なく思ってきました。さてどうしようかと悩んだ結果、新年の挨拶を兼ねて、週刊『I・B TOKYO』のWEB版に載ったものを紹介することによって、O君に対する感謝の念を表したいと思うようになりました。読者諸氏の御理解をいただければ幸いです。

週刊『I・B TOKYO』インタビュー

<追記>
 ちなみに週刊『I・B TOKYO』に載ったインタビューは、上記の写真を載せた上で、次のような出だしで始まっています。


 大学入学共通テストに導入予定だった英語の民間試験は10月の萩生田光一文部科学大臣の「身の丈」発言(BS討論番組)であっけなく延期となった。
 しかし、火の粉は高校・大学関係者はもちろん、受験生を抱える両親にまで飛び火して、燃え上がる一方である。それは、英語の民間試験導入が、受験生50万人という巨大市場を教育産業に提供する「経済政策」であり、教育政策ではないことが暴露されたからに他ならない。
 小学校から始まる一連の英語教育改革、そして大学英語入試への民間試験導入に関して終始一貫警鐘を鳴らし続ける寺島隆吉・国際教育総合文化研究所所長・元岐阜大学教育学部教授に聞いた。同席は夫人の寺島美紀子・朝日大学名誉教授である。

<逆説的ですが、萩生田光一氏に、最高の功労賞を差し上げたい>

 ――本日は大学英語入試への民間試験導入に関して、いろいろとお聞きしたいと思います。まず、10月の萩生田文科大臣発言に関する先生のご感想をお聞かせください。

寺島隆吉氏(以下、寺島)
 私は大学英語入試への民間試験の導入に関して、さまざまな新聞・雑誌のインタビューや自分のブログ「百々峰だより」を通じて繰り返し、その中止・廃止を訴えてきました。しかし、大手メディアはこの問題を一向に取りあげようとしませんでした。
 ところが・・・(以下、省略)


日本人全員に英語4技能は必要か――大学入試を食いものにしながら肥え太る教育産業(下)

英語教育(2019/12/19) コンセッション方式、チャータースクール、国立大学協会の「痴性」、ノーベル賞受賞者の英語力、OECDの学力調査、若者の国語力の劣化


 長周新聞の連載については前回の投稿で終えるつもりだったのですが、新聞に載った3回の記事を雰囲気だけでも知りたいという要求がありましたので以下で紹介することにします。
 下記のWebサイトでも論文は読むことができるのですが、Webの記事は文字ばかりで新聞に載せられたときの雰囲気がよく分からないという意見です。
* 日本人全員に英語4技能は必要かー大学入試を食いものにしながら肥え太る教育産業
https://www.chosyu-journal.jp/kyoikubunka/14511
 確かに調べてみたら、新聞に載せられていた写真が、かなり削られていました。これでは読む意欲がかなり減少するのではないかと思いました。

 それはともかく、先日の日経新聞(2019/12/3)に「日本の15歳、『読解力』15位に後退」という記事が載っていました。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO52905290T01C19A2CC1000/?n_cid=NMAIL007_20191203_Y
 私は『英語で大学が亡びるとき』(明石書店2015)で、文科省が間違った英語政策を続ける限り、英語力は「ザルみず効果」で停滞または低下、他方で、英語で無駄な時間と精力を奪われ、国語力の劣化がさらに進行するだろうと予言しておきました。
 それがみごとに予言どおりになったのですから、喜んでいいのか悲しんでいいのか。

 そう思っていたら、私が主宰する研究所の一員から、藤原正彦「『英語教育』が国を滅ぼす」という論考が『文藝春秋』1月号に載っているという知らせが届きました。
 サブタイトル「大学入試改革は産業界主導の愚民化政策である」という主張は、この間ずっと私が言ってきたことですので、内容的に特段の目新しさはないのですが、右派の雑誌と目されている『文藝春秋』の表紙に、朱書きで、これが1月号の目玉記事だとして紹介されていることに大きな意義を感じました。



長周新聞20191122寺島隆吉「大学入試を食い物にしながら肥え太る教育産業」中
長周新聞20191122寺島隆吉「大学入試を食い物にしながら肥え太る教育産業」中 (2)逆転正常化

長周新聞20191122寺島隆吉「大学入試を食い物にしながら肥え太る教育産業」下
長周新聞20191122寺島隆吉「大学入試を食い物にしながら肥え太る教育産業」下(2)逆転正常化

日本人全員に英語4技能は必要か――大学入試を食いものにしながら肥え太る教育産業(上)

英語教育(2019/12/08) 萩生田文科大臣、「身の丈」発言、麻生太郎副総理兼財務相(当時)の方言、利益相反、コンセッション方式、チャータースクール、国立大学協会の「痴性」、誇るべき日本人の英語力、ノーベル賞受賞者の英語力


 週刊『I・B TOKYO』からインタビューの依頼があり、去る(2019年)11月21日に東京で、英語民間試験についてのインタビューを受けました。
 そのインタビューに向けて、頭をもう一度、整理しておこうと思って、英語大学入試「民営化」について書き始めたら止まらなくなって、一通り書き終えてみたらA4版(40字✕40行)で20頁近くになってしまいました。
 週刊『I・B TOKYO』のインタビューは、与えられた紙面が4頁しかありませんので、この書きためた小論をどうしようかと考えました。そこで思いついたのが長周新聞に送るという案です。

 さっそく原稿を長周新聞に送ったところ「25日の月曜日からすぐ連載を始めたい」「日曜日までに校正原稿を送ってほしい」というので、こちらの方が慌ててしまいました。
 というのは掲載までにまだ時間があるから、それまでに原稿を読み直して推敲できると思っていたら、小見出しをつける暇もなく送り返さなければならなくなったからです。
 というわけで、10回近くの連載になると思っていたら、何と(上中下)の3回で終わり、しかも1回目は1面と2面の全てをつぶして載せたというのですから、2度ビックリでした。

 それっきり長周新聞から何の連絡もなかったので、あまり反響がなかったのだろうと少し落ち込んでいたら、一昨日になって後掲のような反響があったというメールが届きました。
 これを読んで「まずまずの反響だった」ということが分かり、ほっと胸をなでおろしました。しかし長周新聞のWEB版では、連載ではなく一挙掲載ということでしたから「その反響やいかに」と、また心配になりました。

*日本人全員に英語4技能は必要かー大学入試を食いものにしながら肥え太る教育産業
https://www.chosyu-journal.jp/kyoikubunka/14511

 それでも届いた便りでは、「サイトに掲載後は、『長い文章だが読む価値がある』などと拡散されています」とありましたから、再び、ほっと胸をなでおろしました。
 とはいえ、「長い文章だが・・・」という反響を読むと、やはり小見出しをつけるゆとりがなかったことが悔やまれます。

On 2019/12/06 21:13
寺島隆吉 先生

いつもご心配をおかけして、申し訳ありません。サイトの主見出しは訂正しました。

記事の反応ですが、高校現場では管理職を含めていたるところで、連載の紙面を見たとたんに喜びの表情に変わります。そして「寺島先生がよく書いてくれた」と、これまで思っていたが表だってはいえずにきたことを、解放されたように語り始める契機になっています。

山口県内の高校では校長が、「わあー、寺島さんだ。よくやっていただいた。この紙面(連載)を先生方に回覧します。とくに英語の先生に読んでもらわないといけない」と大歓迎しています。

下関の高校では、校長が50万人の市場というベネッセの巨大な利権に生徒、親を取り込もうとすることへの怒りをあらわにしています。水産大学校の教授も、「数年前から、先生たちと目的の違う7種類の民間試験を採用するなど、できないことをなぜやろうとするのかと、話になってきた。物理的にもできないとわかっているのに、無理にやるのは国語や数学に記述問題にも共通している」と、さらに新共通テストが持つ問題へと批判を強めています。

山口大学の人文学の先生が、「山口大学の岡学長が国大協の入試委員長で、一般選抜の全受験生に民間試験を課すという基本方針と利用法のガイドライン策定の先頭に立ってきた。大学としての民間試験の採用も、学内討議もなくトップダウンで決めた。山大でも親の年収が200万円以下の学生が5%いることなど、経済的不平等など念頭にない。働き方改革でも同様だ」と怒りをぶつけ、最初から全国的な運動に関わってきたことに確信を強めて、さらに追い詰めていく意欲を高めています。

サイトに掲載後は、「長い文章だが読む価値がある」などと拡散されています。

とりあえずお知らせします。メール送信が遅れましたこと、ご容赦ください。

長周新聞社



長周新聞新聞20191122隆吉「英語民間試験」376
長周新聞新聞20191122隆吉「英語民間試験」379

長周新聞20191122寺島隆吉「大学入試を食い物にしながら肥え太る教育産業」上、裏
長周新聞20191122寺島隆吉「大学入試を食い物にしながら肥え太る教育産業」上、裏2



中日新聞インタビュー「これは教育政策ではなく経済政策である」―― 大学入試「民間委託試験」を岐阜県立看護大学が見送り

英語教育(2019/08/15) 香港「逃亡条例」、カンフー(中国拳法)、ジャッキー・チェン(Jackie Chan)、大学入試「英語」の民営化=民間委託、イラン戦争に向けた「有志連合」、全て英語で指揮・命令される軍事行動

香港「逃亡条例」抗議デモに抗議声明を発表するジャッキー・チェン
ジャッキー・チェン
https://on.rt.com/9zws
 香港では相変わらず「逃亡条例」に反対するデモhttps://admin.blog.fc2.com/control.php?mode=editor&process=load&eno=349が荒れ狂っています。
 この抗議デモに参加する若者が(中国国旗を海に投げ捨て)アメリカ国旗を振り回したり、香港在住のアメリカ大使館員がデモの若者を激励している映像が流れたりして、この抗議デモを裏で動かしているのは誰かが、ますます明らかになってきました。
 それを端的に示すのが、有名なカンフー映画の俳優ジャッキー・チェン(Jackie Chan)でした。香港生まれでアメリカに移住しているにもかかわらず、現在の「抗議デモ」に抗議することを、公の場で正式に表明したからです。

*Hong Kong native Jackie Chan takes part in pro-Beijing campaign to protect national flag
「香港生まれのジャッキー・チェンが中国国旗を守るため「抗議デモ」に抗議する」

https://www.rt.com/news/466444-jackie-chan-china-protests/

 このようにアメリカ政府はイランや中国に対する包囲網を強化し「不安定化工作」を煽っているのですが、それに全面的に協力しているのが我が安倍政権です。今ではイランを包囲し、あわよくば戦争に持ち込もうとする「有志連合」に、安倍政権は先頭に立って参加しようとしています。
 この「有志連合」は、欧州諸国でさえ参加を躊躇しているのに、安倍政権は、アメリカ軍の指揮の下で、自衛隊を積極的に参加させようとしているのです。そこで先ず必要になるのは英語力です。米軍の英語による指揮を理解しなければならないからです。大学から小学校まで英語一色にしようとしているのは、このためだったのかという疑いすら出てきます。
 それに輪をかける動きが大学入試「英語」の民間委託です。これについては、先日、中日新聞から取材の依頼があり、その記事が2019年8月9日号に載りました(後掲)。その記事の最後あたりで、私が「四技能を試験で測るのはナンセンスだ」と語ったことになっていますが、これは「四技能を民間試験で測るのはナンセンスだ」の誤植ですからご注意ください。

中日新聞インタビュー記事20190804 入試に民間試験370

<註>
先日、次の記事を見つけたので追加しておきます。
* 日本も参加要請されている「有志連合」から、ドイツがいち抜けた!
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/08/post-12711.php
(ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト)

大学入学共通テスト英語の「民営化」中止を求める国会請願・記者会見、署名は1週間足らずで全国から8100筆!!

英語教育(2019/06/19) 「CEFR対照表」、ケンブリッジ英語検定、TOEFL iBTテスト、IELTS、TOEIC L&RおよびTOEIC S&W、GTEC、TEAP、TEAP CBT、英検(S-Interview、S-1day、CBT)の8種類

大学入試「英語」外部試験に反対する国会請願
英語民間試験の利用中止を求める要請文を、文科省の担当者に渡す京都工芸繊維大の羽藤由美教授(右)(18日午後、東京都内)=共同

 前回のブログでは「2021年度(2020年度実施)の大学入学共通テストにおける英語民間試験の利用中止を求めます」と題する緊急の国会請願署名について紹介しました。私も求められて、その賛同人のひとりになりました。

 この緊急署名運動は、立ち上がりが遅かったので、国会請願の受付6月 19 日(水)までに余り時間がなく、署名用紙必着日( 6 月 16 日)までに1週間ほどしかありませんでした。それで果たしてどれほどの署名が集まるか心配でした。
 しかし短期決戦の署名運動であったにもかかわらず、全国から集まった署名は8100筆にも及びました。このことは、文科省の新しい大学入試制度に、いかに多くの人が不満や疑問をもっているかを如実に示すものとなりました。
 もうひとつ心配だったのは、たとえ多くの署名が集まったにしても、それを大手メディアが報道してくれるかどうかという点でした。大手メディアが報道してくれなければ、運動の効果は半減してしまいます。

 ところが、これは杞憂に終わりました。NHKでも報道されましたし、朝日新聞・読売新聞・日経新聞なども取りあげてくれました。共同通信も取材に来てくれましたから全国の地方紙にも載る可能性があります。
 このことは、「大学入学共通テスト「英語」の民営化に反対する国民が、いかに多く潜在していたか」を改めて示すことになったように思います。
 矛盾した受験制度に翻弄され苦悩する教師、思い惑っている受験生とそのような子どもを抱える親など、本当は疑問や怒りを胸に秘めながらも、今までそれを声にできなかったひとたちが、この署名で初めて自分の思いを表明できる機会が与えられた――それが署名数と大手メデイアの報道に現れたのではないでしょうか。

 あとは、国会で各党の議員がこの問題にどう立ち向かうかです。これが次の国会議員選挙で大きな争点になれば、情勢はさらに好転する可能性もあります。その意味では、地元の国会議員に「入試民営化に反対しない限りあなたには投票できません」という文面の公開質問状を送りつけるのも、効果的かも知れません。
 以下に紹介するのは、インターネットで検索し、2019年6月19日15時の時点で私が収集できた限りでの、報道のすべてです。この問題に対する各報道機関の姿勢の違いも、文面から読み取っていただければ幸いです。


大学入学共通テストに英語の民間検定試験 大学教授らが中止訴え
LivedoorNews 2019年6月18日 18時4分
https://news.livedoor.com/article/detail/16638986/
大学入学共通テストを巡り、大学教授らが18日に国会内で会見した
導入される英語の民間検定試験について当面の利用中止を訴えた
公平性が確保されておらず、受験生の間に不安が広がっているとしている


英語民間試験の利用中止訴える 大学教授ら、公平性に懸念
共同通信2019年6月18日 18時4分
https://news.livedoor.com/article/detail/16638986/

 大学入学共通テストに導入される英語の民間検定試験を巡り、英語科専門の大学教授らが18日、国会内で記者会見し、公平性が確保されておらず、受験生の間に不安が広がっているとして、当面の利用中止を訴えた。

 会見したのは、京都工芸繊維大の羽藤由美教授や、東大の阿部公彦教授ら。同日、趣旨に賛同する大学関係者ら約8千人分の署名を、衆参両院への提出に向けて国会議員に預けたほか、文部科学省の担当者にも中止を求める要請文を渡した。

 共通テストの英語民間検定試験は2020年4月開始予定で、受験生は同年12月までに「英検」など計8種類の試験から最大2回受験する。


朝日新聞デジタル2019年6月19日 
英語民間試験導入、中止に8千筆 大学教授ら野党に請願
https://www.asahi.com/articles/ASM6L4WRJM6LUTIL01Z.html

 2020年度から始まる大学入学共通テストをめぐり、英語の民間試験の導入に反対する大学教授らが18日、活用の中止などを求めて野党の衆参議員計11人に請願を提出した。大学や高校の教員ら約8千人分の署名を添え、「公平性や公正性の問題が解決できていない」と訴えた。

 共通テストの英語は「読む・聞く・書く・話す」の4技能を測るため、民間試験を活用することになっている。20年度は英検やTOEICなど8種類の民間試験の成績が活用される予定だ。請願を提出後に会見した荒井克弘・大学入試センター名誉教授らは、目的が異なる試験の結果を比較することはできないと指摘。「このまま実施すれば、多くの受験生がトラブルに巻き込まれる可能性が高い」として、活用をやめるよう求めた。

 要請者代表で、京都工芸繊維大で英語のスピーキングテストを開発した羽藤由美教授は、「制度の問題点を訴えてきたが、文部科学省などが方針を変えないまま、実施が迫っており、とにかく動こうと請願した。これを機会に、広く社会で議論してもらいたい」と話した。同様の内容の要請書は、文科省側にも手渡した。(増谷文生)


英語民間試験中止求め国会請願へ
NHK首都圏 NEWS WEB 06月18日19時10分
https://www3.nhk.or.jp/lnews/shutoken/20190618/1000031421.html
[動画ニュースあり、1分30秒]

再来年から始まる「大学入学共通テスト」に導入される英語の民間試験について、入試の専門家らが今のままでは最低限の公平性が確保できないなどとして、導入の中止を求める請願書を近く国会に提出することになりました。

請願書を提出するのは、大学入試制度や英語教育に詳しい専門家などです。

このなかでは、再来年1月から始まる「大学入学共通テスト」に導入される英語の民間試験について、「深刻な欠陥があり、大学入試に必要な最低限の公平性、公正性が確保できていない。このまま導入すれば、多くの受験生が犠牲になる」などとして、導入を中止するよう求めています。

英語の民間試験は日本英語検定協会やベネッセなど7つの事業者が実施しますが、異なる目的の試験の成績を1つの指標で評価することの難しさなどが指摘されています。
請願書は、8100人あまりの署名を添えて近く国会に提出される予定です。

請願の賛同者の1人で大学入試制度に詳しい東北大学の荒井克弘名誉教授は、「入試は理論的にはトラブルがないよう準備しなければならないが、今回そのレベルに達しているかというとほど遠い状況で、見直しを求めたい」と話していました。



「英語民間試験、利用中止を」 学識者らが国会請願
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO46257240Y9A610C1CR8000/
日経新聞2019/6/18 19:38
英語民間試験の利用中止を求める要請文を、文科省の担当者に渡す京都工芸繊維大の羽藤由美教授(右)(18日午後、東京都内)=共同
大学入試「英語」外部試験に反対する国会請願 2020年度に始まる大学入学共通テストを巡り、学識者のグループが18日、英語民間試験の利用の中止を求め、約8千筆の署名を添えた請願書を衆参両院にそれぞれ提出した。

学識者は京都工芸繊維大の羽藤由美教授(外国語教育)ら。18日、東京都内で記者会見した羽藤教授は、8種類ある民間試験は測る英語力がそれぞれ異なり、成績の一律比較はできないと指摘。利用すれば「入試への国民の信頼が一気に失われる」と批判した。

試験の日程や会場などの詳細がいまだに示されていないことや、受験生の居住地や家庭の経済状況によって受験機会に差が出る恐れも指摘。制度の見直しを求めた。

広尾学園中学・高校の南風原朝和校長(元東京大教授)は「民間試験の受験を課しながら成績は不問にする大学も出てきている。大学にも社会から厳しい目を向けてほしい」と話した。

請願には苅谷剛彦・オックスフォード大教授や鳥飼玖美子・立教大名誉教授、荒井克弘・大学入試センター名誉教授らが賛同している。


民間英語試験の利用は中止すべき…大学教授ら請願【大学受験2021】
RakutenNews 2019年6月19日 11時45分
https://news.infoseek.co.jp/article/resemom_51086/

 2021年度の大学入学共通テストで民間の英語資格・検定試験を活用することについて、大学教授らが2019年6月18日、利用中止と制度の見直しを求める請願書を国会に提出した。「公正性・公平性が確保されていない」と、英語民間試験の利用を批判している。

 2021年度大学入学者選抜では、英語4技能を評価するため、民間の英語資格・検定試験の成績情報を大学入試センターが一元的に集約し、各大学に提供する「大学入試英語成績提供システム」を導入する。

2021年度入試には、ケンブリッジ英語検定、TOEFL iBTテスト、IELTS、TOEIC L&RおよびTOEIC S&W、GTEC、TEAP、TEAP CBT、英検(S-Interview、S-1day、CBT)の8種類が参加を予定している。

 これに対して、大学入試センター名誉教授で東北大学名誉教授の荒井克弘氏らは、請願書で「新制度には多数の深刻な欠陥があり、大学入試が有するべき最低限の公正性・公平性が確保されていない。それどころか、2020年4月の新制度導入を間近に控えた現時点でも、希望者全員がトラブルなく民間試験を受験できるめどが立たず、高校生や保護者、学校関係者に不安が広がっている」と指摘している。

 さらに「このまま導入を強行すれば、多くの受験生が制度の不備の犠牲になり、民間試験の受検のために不合理な経済的、時間的、精神的負担を強いられる。また、予想される各種のトラブルのために、当該年度の入学者選抜が大きく混乱することも危惧される」と訴え、「2021年度大学入学共通テストにおける英語民間試験の利用中止」と「新制度の見直し」を求めている。

 大学教授ら学識者グループでは新制度について、各資格・検定試験の結果スコアから英語4技能の能力を6段階で認定する「CEFR対照表」の科学的な裏づけがないこと、受験機会の不平等なども問題視している。

 請願書は6月18日、全国から集めた約8,100筆の署名とともに衆議院と参議院に提出。文部科学省にも要請書を手渡した。

 同日の記者会見には、荒井氏のほか、東京大学大学院人文社会系研究科教授の阿部公彦氏、東京大学大学院教育学研究科教授の中村高康氏、元東京大学大学院教育学研究科教授の南風原朝和氏、京都工芸繊維大学基盤科学系教授の羽藤由美氏も出席した。



英語民間試験「中止を」東大の元副学長ら請願書
読売新聞20190618
https://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/kyoiku/news/20190618-OYT1T50262/

 2021年1月に始まる「大学入学共通テスト」で導入される英語の民間試験について東京大の元副学長らが18日、東京都内で記者会見を開き、「民間試験の制度に多くの問題点がある」などとして利用中止を求める請願書を野党の国会議員に提出したと明らかにした。

 記者会見を行ったのは、今年3月で東大を定年退職した南風原朝和(はえばら ともかず)元副学長や大学入試センター元副所長の荒井克弘氏、羽藤由美京都工芸繊維大教授ら5人。約8000人分の署名を添えて同日、国会議員に渡し、文部科学省に対しても民間試験の利用中止を要請した。

 南風原氏らは、実用英語技能検定(英検)やTOEFLiBTなどの民間試験と、試験結果を6段階で評価する国際標準規格「CEFR」との対照について「科学的な裏付けがない」と指摘。また、これらの民間試験について、「所得や地域によって受験機会が均等ではない」「採点ミスや機器トラブル発生時の責任体制が構築されていない」などの課題を挙げた。

 国立大学協会は昨年3月、国立大の全受験生に民間試験を課す指針を発表した。東大は利用について「拙速」としたが、その後、活用を検討する方針を示し、昨年9月には「必須としない」と表明。国立大では北海道大、東北大、京都工芸繊維大が、民間試験を活用しないことを公表している。

大学入学共通テスト「英語」に、民間試験を利用することに対して、緊急の国会請願署名

英語教育(2019/06/09) 安倍政権の民営化路線、水道の民営化→大学入試の民営化、教育政策ではなく経済政策、教育産業への巨大な補助金政策

検証 迷走する英語入試 『英語で大学が亡びるとき』

 私のところに和歌山大学の江利川先生から「国会請願署名(6/7〜6/16)にご協力ください!」とする案内が送られてきました。
 読んでみると、羽籐由美さん(京都工芸繊維大学教授)が中心になって「大学入学共通テスト英語に民間試験を利用することに反対し,その中止と制度の見直しを国会に求める運動」を起ち上げるので、賛同者になってほしいというものでした。
 私も大学英語入試への民間試験導入にたいして強い憤りを感じて、すでに下記のブログで2度にわたって私見を述べてきましたから、喜んで賛同者になる旨を伝えました。
http://tacktaka.blog.fc2.com/blog-entry-325.html
http://tacktaka.blog.fc2.com/blog-entry-326.html
 しかし請願署名の締切が「6 月 16 日(日)署名用紙必着」となっていて、時間が余り残されていないので、私のブログでもこの反対運動について紹介し、少しでも羽籐由美さんたちの運動に協力したいと考えました。
 羽藤さんたちが起ち上げた「2021年度(2020年度実施)の大学入学共通テストにおける英語民間試験の利用中止を求めます」と題するサイトのトップページは、次のようになっていました。

国会請願署名(6/7〜6/16)にご協力ください!
 私たちは,2021年度(2020年度実施)の大学入学共通テストにおいて英語の民間試験を利用することに反対し,その中止と制度の見直しを国会に求めます。
 国会請願は,国民が国政に対する要望を直接国会に述べることのできる,憲法で保証された権利です。日本に住んでいれば,外国人や未成年(たとえば,小・中・高生)も請願することができます。
 今国会における請願の受付は 6 月 19 日(水)まで。そのために短期決戦の署名運動になりますが,国政選挙の直前でもあり,私たちの声を国会に届ける大きなチャンスです。
 署名・送付の方法のページをご参照のうえ,署名運動にご協力ください。
 締切 6 月 16 日(日)[署名用紙必着]


 この「署名・送付の方法のページ」は下記のURLにリンクが貼られていました。
https://nominkaninkyotsu.com/signaturecampaign/
 また「以下の請願書を衆議院と参議院に提出します」と題して、次の文面が枠で囲まれて掲示されていました。調べてみると、これは署名用紙の冒頭に書かれているものと同一のものでした。
 しかし「一 請願要旨」は、段落改行が全くない13行にもわたる文章だったので非常に読みづらいものでした。そこで以下では私の判断で適当と思われるところに改行を加えました。お許しただければ幸いです。

一 請願要旨
  2021年度(2020年度実施)の⼤学⼊学共通テストにおいては,⼤学⼊試センターが作成する 英語の試験と,英検,GTECなど8種類,計23の民間試験が併⽤されることになっている。
 文部科学省は,大学⼊試センターが作る英語の試験を2024年度から廃⽌し,民間試験に⼀本化したい意向といわれる。しかし多くの専⾨家が指摘するように,新制度には多数の深刻な⽋陥があり,大学入試が有するべき最低限の公正性・公平性が確保されていない。
 それどころか,2020 年 4 ⽉の新制度導⼊を間近に控えた現時点でも,希望者全員がトラブルなく民間試験を受検できる目処が立たず,高校生や保護者,学校関係者に不安が広がっている。
 このように,ずさんな 制度設計,拙速な計画の弊害が,制度の開始前から表面化しているにもかかわらず,当初の予定どおりの導⼊にこだわることは高大接続改⾰の意義をないがしろにする。
 このまま導⼊を強行すれば,多くの受験生が制度の不備の犠牲になり,民間試験の受検のために不合理な経済的,時間的,精神的負担を強いられる。また,予想される各種のトラブルのために,当該年度の⼊学者選抜が⼤きく混乱することも危惧される。


上記のホームページでは、上の「一 請願要旨」を受けて、次の2項目が「二 請願事項」として記載されています。

以上の趣旨から、次の事項を速やかに実現するよう請願いたします。
⼆ 請願事項
1 2021年度大学入学共通テストにおける英語民間試験の利用を中⽌すること。
2 大学入学共通テスト全体としての整合性を考慮し,公平性・公正性を確保するために新制度のあり方を見直すこと。


 さらに、このホームページでは、先に紹介した「署名・送付の方法のページ」だけでなく、次の項目が設けられていて、それぞれにリンクが貼られています。
 「Home」「新制度の問題点」「賛同研究者」「参考リンク」「お問い合わせ」
 まだ未完成のページもありますが、「参考リンク」には貴重な情報が載せられていました。とりわけ私のとって興味深かったのは「東大で開催されたシンポジウムの報告書」でした。
 このシンポジウムについては、すでに『検証 迷走する英語入試――スピーキング導入と民間委託』(岩波ブックレット)となって公刊されているのですが、ここに盛り込まれなかったものを知ることができて便利でした。

英語教育残酷物語 「『英語で授業』という名の拷問」その4――大学「共通教育 英語」の闇  

英語教育(2019/03/06) 刑法246条、会社法第7条、「英語で授業」と「マケレレ原則」、native speakers「母語話者」という神話、統一教科書・統一進度・統一テストという悪弊

41pSAO2CzQL.jpg 『英語で大学が亡びるとき』

私は前回のブログを次のように結びました。

 ・・・。とすれば、現在の「英語で授業」は、税金を食い潰しながら生徒も教師も疲弊させているだけでなく、平和憲法の土台を掘り崩す悪質な役割すら果たしていることになります。
 ひょっとして、これが「英語で授業」という政策の真の狙いではないかと疑りたくなります。こうして「英語で授業」という政策を震源地とする「英語教育残酷物語」は終わるところがありません。
 しかし、もう十分に長くなったので、一旦ここで今回は打ち止めにしたいと思います。次回は「英語教育残酷物語その4」として、大学教師・村上春樹の「英語で授業」を書きたいと思います。


 そこで今回は、「小説家村上春樹が客員教授としてアメリカの大学にいたころ英語で授業をせざるを得なくなり、どんなに苦労したか」「あの英語が出来るはずの村上春樹でさえ英語で授業することが一種の拷問だった」ということを紹介するつもりでした.
 しかし最近もっとひどい事件が起きたので、今回はそれを取りあげたいと思います。
 というのは、中日新聞(2019年2月21日)の33面に、カラーの写真入りで、しかも四段抜きの大出しで「架空出版社名で教材PR、岐阜大准教授 HP作成 出版装う」という記事が出たからです。その記事を読んでみると、まず冒頭で次のような説明が書かれていました。

 岐阜大(岐阜市)で全学部共通の英語教育を集約的に担う「イングリッシュ・センター」のセンター長が、架空の出版社名でホームページ(HP)を運営していたことが分かった。
 HPでPRした自著は、英語教材として岐阜大の授業で使われている。センター長は取材に「社名を名乗れば、正式に(出版したように)見えると思った」と釈明している。
 出版社名として使われていたのは「BTB Press」(以下BTB)。本紙取材に大学側は「テキストなどの編集グループの名称だ。誤解のないよう修正するよう依頼した」と回答。今月中旬、HPからはBTBが出版社であるかのような表現は削除された。


 この社名として使われているBTBというのは何を意味するのかと思って教材現物を取り寄せてみたら、Back to Basics だということが分かりましたが、これが架空の出版社ということに、まず驚かされました。
 しかも、この架空の出版社をつくって、「イングリッシュ・センター」のセンター長であるバーカー准教授は、売上金約680万円を自分の懐に入れている疑いがあります。というのは、上記の記事では、さらに次のように書かれていたからです。

2種類の著作(税別1900円、同1700円)は本年度、英語の「話す」「書く」技能を学ぶ2科目の計67授業で使われた。受講する約1900人のほとんどが事実上の教科書として購入したとみられる。


 この記事が正しいとすると、2冊の教科書は合計3600円(=1900+1700円)で、それに1900人の人数を掛けると、684万円になります。
 このような大金を自分個人の懐に入れているとすれば、それだけでも問題なのに、それが自分のでっち上げた架空の出版社から出されたものだったというのですから、これは明らかに犯罪ではないでしょうか(会社法第7条)。
 またバーカー准教授は、センター長という地位を利用して、嘘をついて、自分の著作物を受講生全員に買わせたことになるとすれば、これは詐欺罪ではないのでしょうか(刑法246条)。
 中日新聞は、この件について、次のような説明を加えています。

 センター長は、教育学部のデイビッド・バーカー准教授(英語教育)。
 BTBのHPは「日本人英語学習者向けの教材を制作している出版社です」と記し、会社紹介の欄もあった。自身を「BTBのオーナー兼設立者」と説明していた。
 ところが、BTBの実態について本紙が問い合わせたところ、准教授は「法人登記はしておらず、会社にもなっていない。自費出版だ」と明らかにした。



 ところで、会社法第7条は次のように記述しています。

会社法 第1編 総則 第2章 会社の商号(会社と誤認させる名称等の使用の禁止)
第7条 会社でない者は、その名称又は商号中に、会社であると誤認されるおそれのある文字を用いてはならない。
会社法 第8編 罰則
第978条 次のいずれかに該当する者は、100万円以下の過料に処する。
一 第6条第3項の規定に違反して、他の種類の会社であると誤認されるおそれのある文字をその商号中に用いた者
二 第7条の規定に違反して、会社であると誤認されるおそれのある文字をその名称又は商号中に使用した者
三 第8条第1項の規定に違反して、他の会社(外国会社を含む。)であると誤認されるおそれのある名称又は商号を使用した者


 バーカー准教授がでっちあげた会社名は、BTB Pressとなっています。...Pressという名前の付け方は、明らかに出版社を名乗るものです。前述のとおり、中日新聞の記事でも次のように書かれていますから、これは明らかに「会社法」違反でしょう。

 BTBのHPは「日本人英語学習者向けの教材を制作している出版社です」と記し、会社紹介の欄もあった。自身を「BTBのオーナー兼設立者」と説明していた。
 HPでPRした自著は、英語教材として岐阜大の授業で使われている。センター長は取材に「社名を名乗れば、正式に(出版したように)見えると思った」と釈明している。


 ところがバーカー氏は、このような犯罪が明るみに出たにもかかわらず、何ら処分を受けた形跡はなく、それどころか上記の記事では、次のように釈明しています。

准教授は、自身の著作を多くの学生が購入する形になっていることについて「(授業を行う非常勤講師らに)強制でなく、推薦しただけ」と話している。


 しかし実際に非常勤講師として岐阜大学で教えた知人に尋ねたところ、「推薦しただけ」どころか、実質的「強制」だったそうです。それどころか、「大学の方針すなわちセンター長の命令に従えないものは身分を保障しない」とすら言われたそうです。
 そのせいかどうか分かりませんが、今までいた非常勤講師(日本人)のほぼ全てが、この3月で辞職したと聞きました。教えたくもない教科書を強制されることにたいする抗議の意思表明だったのかも知れません。「日本語を使うな、英語だけで教えろ」という指示も、不愉快だったでしょう。
 あるいはバーカー氏の犯罪行為に対する抗議の意思表示だったのかも知れません。というのは、、このような事件があったにもかかわらず、バーカー氏が、処罰されるどころか、相変わらず横柄な態度でのさばっていることにも嫌気がさしたのではないか、と知人は言っていたからです。
 その証拠に、岐阜大学側の態度は奇々怪々です。というのは、上記の中日新聞記事は次ような叙述で結ばれていたからです。

センターを統括する岐阜大教学担当の江馬諭・理事は「BTBが法人登記された会社でないことは認識していた。教科書として指定する場合には、しかるべきプロセスを設ける予定だ」と話している。


 何と驚いたことに、上記の記事によると、教学担当の江馬理事は「BTBが法人登記された会社でないことは認識していた」と言っているのです。江馬氏は、これが会社法違反であることを知らなかったのでしょうか。もし知らなかったとすれば理事失格でしょうし、知っていたとすれば「共謀罪」ということになります。
 いずれにしても、一刻も早くバーカー氏を辞職させることが、いま岐阜大学として最も緊急に求められていることではないでしょうか。

 ここで、もうひとつ問題なのは、学生や非常勤講師に強制的使わせた教科書のなかみです。中日新聞は学生にもインタビューを試みています。それについて同記事は次のように述べています。

著作は英語で自己紹介をしたり、簡単な英文を参考に英作文をしたりする内容。学生の中には大学レベルの教材としてふさわしいか疑問視する声もある。地域科学部1年の男子学生(18)は「中学生向けといってもおかしくない」。工学部1年の男子学生(19)は「易しすぎ、英語の勉強そのものをしなくなった」と話す。


 私が岐阜大学に勤務していたときの経験で言えば、工学部の学生は英語嫌い、英語が苦手だというのが一般的です。その工学部の学生でさえ「易しすぎ、英語の勉強そのものをしなくなった」と言っているのですから、この教科書のおおよその傾向は分かってもらえるのではないでしょうか。
 念のため私も現物を調べてみましたが、『Nice to Meet You』という教科書は、ほとんど中学高校レベルと言ってもよいものだと思いました。なぜなら文科省の新指導要領は会話一辺倒に大きく傾斜していますから、この教科書で展開されているような練習は、すでに中学高校でいやというほどやらされてきたものばかりではないかと思わされたからです。
 もちろん進学校では会話練習をあまりやらずに受験勉強ばかりやらされてきたので新鮮だったという学生もいる可能性はあります。しかし全ての学生にこのような教科書と練習をやらせることに、ほとんど意味はないと思わざるを得ません。地域科学部の学生が「中学生向けといってもおかしくない」と言ったそうですが、さもありなんと思いました。
 これは、「話す」ではなく、書く」という領域を念頭においた教科書『Read to Write』についても同じでした。というのは、この教科書は作文の初歩を教えることに焦点をおいているのですが、説明がすべて英語で書かれていることを除いては(ですから文法用語もすべて英語です)、高校の文法で習うべきことばかりだったからです。
 そもそも日本語で説明すれば短時間ですむことを、文法用語もその説明も、すべて英語を使っておこなうことに、どれだけの意味があるでしょうか。壮大な時間の無駄遣いでしょう。完了形や進行形の意味や用法を日本語で説明しても、なかなか理解させることが難しいのに、それを英語でおこなって、どれだけ教育効果があるのでしょうか。
 たとえば、“He is dying."は、なぜ「彼は死んでいる」のではなくて「死にかけている」という意味になるのでしょうか。それを、進行形というものの本義からどのように説明すれば生徒・学生は納得するのでしょうか。それを日本語できちんと説明できる教師はどれだけいるのでしょうか。まして、それを英語で生徒・学生に説明できる教師は?
 このように考えれば「英語で授業」という教え方が、いかに荒唐無稽なものか、よく分かってもらえるはずです。それはNHKの外国語講座「ロシア語」を、最初から日本語を使わずにロシア語だけで教えるということを、ちょっと想像しただけでも分かるはずです。そのような講座や授業に何人の人が参加するでしょうか。
 そもそも「英語の理想的教師は母語話者である」「英語は、英語を使って教えるべきである」などという原則は、1961年にウガンダのマケレレで開かれた「英語教育をめぐるイギリス連邦会議」で提起された、いわゆる「マケレレ5原則」をそのまま鵜呑みにしたものです。詳しくは下記を御覧ください。
*英語教師残酷物語、その1―「英語で授業」と「マケレレ原則」
http://tacktaka.blog.fc2.com/blog-entry-313.html
 イギリスが旧植民地を維持するために打ち立てた原則を、なぜ日本人が後生大事に守らなければならないのでしょうか。日本はアメリカの属国としての地位を未来永劫に守り続けて行くつもりなのでしょうか。いつまで「自己家畜化」の教育政策を続けるつもりなのでしょうか。
 チョムスキーは、『チョムスキーの教育論』(明石書店2006)で、「ほとんど常に公教育は生徒・学生の家畜化を狙いとしてきた」と述べていましたが、日本の英語教育は、「日本を家畜化・属国化を狙いとしておこなわれている」と言ってよいのではないか、と最近、強く思うようになりました。
 政府・文科省はそんなことを意識し意図的におこなっているとは思いませんが、結果として、そのような働きをしているということです。自衛隊がアメリカと合同軍事演習をするとき全て英語でおこなわれますから、日本人を小さいときから英語漬けにしておくことは、アメリカにとって巨大な利点利益があります。
 (日本がアメリカその他と交渉していたTPPは、政府がもつ正式な文書は英語版しかがありません。カナダが仏語圏であるケベック州のために仏語版をつくらせたのとは雲泥の差です。ここでも日本の属国ぶりは歴然としています。どうも日本は主権国家ではないようです。)
 日本もかつて朝鮮を支配し、満州国をつくって属国化したとき、真っ先に手をつけたのが朝鮮人や満州人に日本語を強制し日本語で教育をすることでした。いま日本政府は、かつて朝鮮や満州で現地人に強制したのと同じことを、いま自ら求めて実行しようとしているのです。この点については『英語で大学が亡びるとき―「英語力=グローバル人材」というイデオロギー』で詳しく説明しました。

 大学とは本来、自分の意志・興味・能力に従って自由に自分の学びたい科目を選べるところに大学らしさがあるはずです。統一教科書・統一進度・統一テストは、高校までの授業のあり方であり、それを超えたところに高等教育としての大学教育があるはずです。ところが、岐阜大学の英語教育は、それを高校や中学レベルに引き下げるようとしています。
 大学の共通教育「英語」に統一教科書・統一進度・統一テストを持ち込んだ元凶は、東大教養部にありました。彼らは 『Universe of English』 という教科書を編集し、それを非常勤講師に強制しました。それ以降、全国の大学で統一教科書を編集し、学生・非常勤講師に強制することが広がり始めました。
 これについては拙著『英語教育が亡びるとき:「英語で授業」のイデオロギー』で厳しく批判しましたし、その当時、研究社『現代英語教育』の編集長をしていた津田正さんに頼んで、『Universe of English』の編集者と対談する機会をつくってもらい、そのような方針に強い異議を唱えました(その一部始終は『現代英語教育』1993年11月号32-37頁)に載っています)。
 しかし最近、仕入れた情報では、東大もこのような統一教科書・統一進度・統一テストの制度をやめて、学生が自分の能力や興味にあった授業内容(教師・教科書)を選択・受講できる制度に戻したそうです。これでやっと大学本来の姿に戻ったと言うべきでしょう。私が上記の対談をして数年もたたないうちに、『Universe of English』の統一テストでは、カニングが横行して対応に追われているという噂を聞きましたから、当然と言えば当然の成り行きでした。
 私が岐阜大学に在職していた頃は、共通教育「英語」は担当者がどのような教科書を使い、どのような授業をするかをあらかじめ公開し、学生はそれを読んで自分の取りたい授業を選択できようにしていました。それが破壊され始めたのが、東大の統一教科書・統一進度・統一テストという制度が広く知られるようになった頃です。文科省の意向を受けて、第2外国語を必修から外し、英語に一極集中させ、大学当局が「岐阜大学も東大方式にしたらどうか」という圧力を掛けるようになってきたからです。
 しかし考えてみれば、大学どころか高校や中学でも、学年全体で「統一教科書・統一進度・統一テスト」をするというのは、本来おかしなことです。授業は教師が生徒の顔を見ながら、生徒の興味や学力に応じて担当教師が自由に教材を選んでこそ教育効果があがるものです。しかし毎回そのつど自主教材を教師が自分で編集して生徒に与えるというのは大変な作業ですから、試され済みの典型教材や市販教材を与えて、その授業の評判が良ければ、それが自然と学年全体に広まっていくというのが、最も望ましいスタイルでしょう。
 事実、学力世界一として有名なったフィンランドでは、外国語教育どころか全ての教科で教師に教育研究の自由が与えられています。もちろんフィンランドでも指導要領らしきものはありますが、それは全くの大綱を示すにすぎず、教室でどのような教材を使い、それをどのように教えるかは、担当教師の自由に任されています。しかし優れた教師の授業は強制しなくても他の教師が授業を見学に来たりして自然に広まって行きます。それどころか一時期、世界中からフィンランドへの訪問者が絶えないという状況になりました。
 ところが文科省は、検定教科書を与えて、指導要領というかたちで教え方も縛ってしまい、教育研究の自由が現場教師にほとんど認められないような仕組みにしました。その典型例が「英語の授業は日本語を使うな、英語の授業は英語でしろ」という新指導要領の方針でした。このような制度で教育効果が出ればまだ我慢もできるでしょうが、むしろ英語力が停滞どころが劣化しているのが実態です。そして、このような悪行を大学に持ち込んだ典型例が岐阜大学だというわけです。
 しかし岐阜大学をこのような事態に追い込んだのが、文科省の「英語の授業だけでなく他の科目も授業を英語でおこなえ」という方針でした。それが大学を「国際化」する最も有効な方法だというのが文科省の方針で、そのような政策を追求する大学には巨額の助成金を出すということまでやるようになりました。このような政策で大学の教育力や研究力が向上すれば、これも我慢できないわけでないでしょうが、日本の研究力がとみに劣化しつつあることは、世界に向けて発表される論文数の激減ぶりに、よく表れています。
 この事実を私はすでに下記ブログで詳細に論じて来ました。時間と興味のある方は覗いてみていただけると有り難いと思います。

*書評『英語で大学が亡びるとき』に寄せて(その5)――ノーベル賞・大隅良典氏の軌跡から学ぶ (2017/10/04)
http://tacktaka.blog.fc2.com/blog-entry-303.html
*書評『英語で大学が亡びるとき』に寄せて(その4)――米国の貿易相手は今や日本ではなく中国! (2017/09/07)
http://tacktaka.blog.fc2.com/blog-entry-302.html
*書評『英語で大学が亡びるとき』に寄せて(その3)――米国は共同研究に日本よりも中国を選ぶ! (2017/08/23)
http://tacktaka.blog.fc2.com/blog-entry-301.html
*書評『英語で大学が亡びるとき』に寄せて(その2)――科学誌『Nature』の5つのグラフの衝撃 (2017/08/08)
http://tacktaka.blog.fc2.com/blog-entry-300.html
*書評『英語で大学が亡びるとき』に寄せて(その1)――急速に失速しつつある日本の科学力 (2017/07/28)
http://tacktaka.blog.fc2.com/blog-entry-299.html

 岐阜大学で上記のような馬鹿げた制度を推進した岐阜大教学担当の江馬諭理事は、おそらく文科省の政策を良しと信じて、バーカー准教授の提言を受け入れたのでしょう。その意味では江馬氏も「英語で授業」という政策の犠牲者という言うべきかも知れません。
 しかし、「英語で授業」ということは、「外国人教師」「英語の母語話者」を優先して採用するということは、岐阜大学学生の英語力・思考力・研究力を劣化させるだけでなく、それまで英語の授業を担当していた日本人非常勤講師の首切りにつながっているわけですから、単なる被害者ではなくて、むしろ加害者でもあります。
 こうして、またもや、「英語教育残酷物語」はとうぶん終わることがないように見えます。


<註1> 日本のように日常生活で英語を使う必要にせまられない環境では、公教育で教えられるべき英語教育は、「学習言語」「研究言語」としての英語であって「生活言語」としての英語ではありません。ところがバーカー氏も江馬理事も、この自覚がまったく欠けているように思えてなりません。この二つを区別できれば、教材も教え方もまったく違ってくるはずなのですが、この区別が出来ないからこそ、バーカー氏が編集したような教科書が誕生するわけでしょう。

<註2> バーカー氏が編集・執筆したとされる教科書『Read to Write』を見ると、英語の母語話者が執筆に関わっているはずなのに、不自然な英語が散見されます。たとえば、本書の22頁では、"So"と"Because”の使い方として次のような例文が掲げられています。
(X) I put on a jacket. Because I was cold.
) I put on a jacket because I was cold.
(X) I was cold. So I put on a jacket.
) I was cold, so I put on a jacket.
 上記の英文は「寒かったからジャケットを着た」と言いたかったのでしょうが、だとすれば、 "I was cold"ではなく、"It was cold"とするのが標準的な英語表現だと思われるのですが、いかがでしょうか。
 この教科書では、このように気になる説明が散見されます。「母語話者こそ最善の英語教師である」という神話が、いかに信用ならないかの、一つの例と言えるかも知れません。


<追記1> 本日(2016/03/17)、友人からいただいた情報によると、東大の共通教育「英語」は次のようになっているそうです。

 東大生の必修英語は「英語一列、英語二列W、英語二列S、英語中級」の4つの系列に分かれ、内容は順に「読む、書く、話す、多様」となっている。
 英語一列で統一テキスト「東京大学教養英語読本」が使われる。入試成績の上位から10%、30%、60%の割合でG1、G2、G3に分かれるが、途中の試験結果でクラスが変わる。
 英語二列W(Writing)には文系向きALESAと理系向きALESSがある。
 英語二列S(Speaking)はFLOW(Fluency-Oriented Workshop)とも呼ばれ6つのレベルに分かれていて自分でレベルを選択できる。
 中級英語は教員ごとにテーマや内容が異なり、希望者が多いと抽選になる。
 統一テキストが使われるのは時間で見ると全体の25%である。以下のサイトを参考にした。   
   https://goukaku-suppli.com/archives/45557
   https://bonjintoudai.com/entry/2018/11/10/213255
   https://www.asuka-ukaru.com/entry/2018/07/15/213000

 以上の情報が正しいとすれば、「英語一列」は相変わらず「統一テキスト」が残っているようです。
 しかし、「統一テキストが使われるのは時間で見ると全体の25%」だそうですから、基本的には、これまでの「統一教科書・統一進度・統一テスト」の体制が崩れたことだけは確かでしょう。
 しかも統一教科書「東京大学教養英語読本」を使う「英語一列」にしても、前期・後期に各々1.5ヶ月のみで、グレード別に分かれ授業の仕方も違うのですから、統一進度・統一テスト」は実質的には意味を成していません。
 ところが岐阜大学は相変わらず旧体制の東大を見習おうとしているかのようです。 

<追記2> この記事を書いている現在(2016/03/17)、刑法246条および会社法第7条に違反した可能性がある人物と、それに共謀した人物は、相変わらず何の処分も受けていないようです。
 我が国のトップである安倍首相でさえ、数々の不正を働きながら、未だに辞職をしていませんから、当然と言えば当然かも知れません。元大統領パク・クネ(朴 槿恵)を刑務所に送り込んだ韓国の民主化ぶりがうらやましく見えてきます。


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