北朝鮮の「延坪島」砲撃を考える―ヨハン・ガルトゥングの中国論

京都大学国際シンポジウム「大学のグローバル化と複言語主義」を終えたので、やっと先に予告をしてあった「ヨハン・ガルトゥングの中国論」について書くことができると思っていたのに、その直後に風邪で寝込んでしまいました。シンポジウムのための疲れが出たのかもしれません。(このシンポジウムは動画でも見れるようになりましたので、興味がある方は下記を御覧ください。)
http://ocw.kyoto-u.ac.jp/international-conference/18

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さて、風邪も快方に向かい、この原稿「ヨハン・ガルトゥングの中国論」を書こうと思っていた矢先に北朝鮮と韓国の衝突事件が起きました。大手メディアを見ている限りでは、北朝鮮が一方的に砲撃を加えてきたかのような印象ですが、この砲撃前に韓国と米軍が北朝鮮領海付近で合同軍事演習をしていたことを報じているメディアは、ほとんどありませんでした。

私が24日にインターネットで調べた限りでは、いわゆる「中立」と目されているNHKや朝日新聞ですら、このことを報じてはいませんでした。唯一つ『しんぶん赤旗』だけは地図を載せた上で下記のように、やや詳しい解説を付けています。

<韓国軍は、同日午前10時すぎからこの海域で軍事訓練を実施していました。同島から南側に向けて海上射撃訓練を行っていたところ、北朝鮮の海岸から砲撃を受けました。午後2時34分から2時55分までと午後3時10分から4時42分まで、断続的に100発ほど撃ちこまれました。そのうちの一部が、 民間人の居住する地域に落ちたといいます。北朝鮮は、韓国側の訓練に先立ち、「訓練は北朝鮮への攻撃ではないか」と非難し、同日午前8時には「南側が領海に射撃すれば、座視しない」と通告していました。>
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik10/2010-11-24/2010112401_02_1.html

しかし、「韓国軍は、同日午前10時すぎからこの海域で軍事訓練を実施していました。同島から南側に向けて海上射撃訓練を行っていたところ、北朝鮮の海岸から砲撃を受けました」という上記の解説だけでは、北朝鮮がなぜあれだけの激しい砲撃を加えてきたのか(世間で言われている「頭の狂った北朝鮮」という説明を受け容れれば別ですが)、私にはどうも納得できませんでした。

そこで外国の通信社のものを物色していたところ、イギリスの通信社ロイターが「韓国軍、北朝鮮の砲撃開始前に訓練で砲弾を発射=軍幹部」という小見出しで下記のようなニュースを配信していることが分かりました(2010年 11月 23日)。

<ソウル23日、ロイター:韓国軍は23日、北朝鮮の延坪島砲撃に関し、北朝鮮からの砲撃が始まる前に、定例の軍事訓練を実施し、訓練の一環で砲弾の発射もしたが、北朝鮮を狙ったものではない、と説明した。韓国軍幹部は「われわれは、通常の訓練をしていた。訓練上の砲弾は西に向けて発射しており、北には向けていない」と述べた。これより先、北朝鮮国営の朝鮮中央通信社(KCNA)は、韓国軍との交戦について、韓国側が最初に砲撃したため、応戦したと表明していた。>
http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPnTK880289320101123

このロイター記事で韓国側が先に砲弾を発射したことだけは明確になりました。そして『しんぶん赤旗』に載せられていた次の地図と照らし合わせると、「米韓の軍事演習が、いかに北朝鮮の主張する領海深くに入り込んでおこなわれていたか」「砲撃された延坪(ヨンピョン)島が、いかに北朝鮮の領土に近接したところにあるか」が、改めて分かったような気がしました。



ですから、このように近接したところで砲弾を発射訓練をされたのでは堪ったものではないと、少し北朝鮮側の気持ちも理解できたように思えました。北朝鮮が、韓国側の訓練に先立ち、「訓練は北朝鮮攻撃への予行演習ではないか」と非難し、同日午前8時には「南側すなわち韓国側が領海に射撃すれば座視しない」と通告していた理由、その強い苛立ちも、上記の地図でかなり納得がいったのです。

しかしそれでも、砲弾を「断続的に100発」も撃ち込んだ怒りの大きさが、上記の『赤旗』記事を読んだだけでは今ひとつ伝わってきませんでした。

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その謎が本当に解けたように思ったのは、Democracy Now!(2010/11/23)の次の記事を読んだときでした。下線部は私が付けたものですが。ここに述べられている兵員の数・戦艦の数、戦闘機の数の注目していただきたいと思います。

North and South Korea Engage in Border Artillery Clash
http://www.democracynow.org/2010/11/23/headlines
The fighting comes at a time when South Korea and the United States are conducting a major military exercise involving more than 70,000 troops, 50 warships and 500 planes. The military exercise has been sharply criticized by Pyongyang as “simulating an invasion of the North” and “a means to provoke a war.”

ご覧のとおり韓米の合同軍事演習は、何と驚いたことに、7万人の兵士、50隻の戦艦、500機の戦闘機を引き連れた巨大な軍事演習だったのです。しかも、このような巨大な軍事演習を、自分の領土のすぐ目の前で「実践さながらに」実弾射撃をまじえて大規模に展開されたのでは、普通の神経では持ちこたえられないように思いました。

これでは、“simulating an invasion of the North”「北に侵攻するするためのシミュレーション」だと言われても仕方がないのではないか、と私には思われました。米国が現在、イラクに駐留させている兵士の数が5万人であることを考えると、7万人という兵士がいかに大規模なものであるかは容易に想像できるのではないでしょうか。

(この記事を読んでいて、右翼の宣伝カーが何十台も列をなして建物の前を取り囲み、大音響の宣伝カーでガンガンと攻撃するだけでなく、銃までもぶっ放すといった光景を、思わず、思い浮かべてしまいました。)

また逆に、中国と北朝鮮が、7万人の兵士、50隻の戦艦、500機の戦闘機を引き連れて、巨大な軍事演習を韓国近海でおこなったら、韓国軍や米軍はどう反応するのでしょうか。おなじことを日本に当てはめて考えてみます。中国と北朝鮮が、7万人の兵士、50隻の戦艦、500機の戦闘機を引き連れて、巨大な軍事演習を日本海の北九州近海でおこなったとしたら、日本はどう反応するのでしょうか。

自衛隊や米軍はこれを放置するのでしょうか。オバマ政権は「過剰反応するな」と言って日本政府や自衛隊に自制を呼びかけるのでしょうか。無人爆撃機を使ってブッシュ氏よりも過激な攻撃をとるオバマ大統領の姿勢を見ると、そのような行動は全く期待できません。また中国漁船の拿捕事件を考えると、今の菅内閣からは、好戦的な姿勢は予想できても、このような冷静な対応はまず期待できそうにありません。

それどころか、日本の大手メディアの論調は「中国はこのような北朝鮮をのさばらせたままにしておくのか」「大国として責任ある態度を北朝鮮に対して示せ」「菅内閣は危機管理能力があるのか」「今こそ北にたいする守りを強化すべきだ」という論調ばかりが目立ちます。

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ここで思い出されるのが、平和学の創始者であるヨハン・ガルトゥングの中国論です。ガルトゥングはDemocracy Now!(2010/01/16)のインタビューで、司会者のエミー・グッドマンの質問に答えて次のようなやり取りをしています。

エイミー・グッドマン:中国は米国をどう見ているのでしょうか。

ヨハン・ガルトゥング:今まで中国は米国民衆と米国政府を明確に区別してきました。米国民衆は極めて善良だが米国政府は極めて悪質だと見なしてきました。このような単純な二分法は全く間違いですが、それが今は少し変化したと思いますよ。

米国政府にも良い要素もあるし米国人でも善良でないひとがいるという具合に、米国を少しずつ理解し始めていると思います。つまり陰と陽、黒と白に二分するのではなく、その立場の微妙な違いも見え始めているのです。彼らも米国と協調を望んでいるのです。

彼らは三つの回避原理を取っています。(1)包囲されることを避ける。(2)反革命を避ける。ここではとくに北朝鮮とミャンマーのことを念頭に置いていますが、それについては多くの議論に門戸を開いています。(3)米国との対決を避ける。彼らは対決を望んでいません。友好を望んでいます。それで現在、もちろん黄海や中国領海内での演習を非常に懸念しているのです。

エイミー・グッドマン:そこで誰が演習するんですか。

ヨハン・ガルトゥング:米国です。米国の航空母艦が黄海で韓国と合同演習を行うのです。その演習は中国領土に極めて接近しています。中国海軍がサンフランシスコやロサンゼルス沖合で演習するようなものです。

ワシントンはそれを歓迎しますか。だから中国は抗議していますが、同時に対決も避けたいのです。米国が中国と同じ方法でやることが可能ならば、あちこちに手出しをすべきではないのです。その方がどんなにか賢明でしょう。

エイミー・グッドマン:米国は何故それを避けないのですか。なぜ黄海で演習などしているのですか。

ヨハン・ガルトゥング:昔と変わらず、今も世界は自分の裏庭だと思っているのです。昔からそうしてきた、それが俺のやり方だ、というわけです。米国をリセットしうる御意見番が必要ですが、今のところ誰もいません。

Johan Galtung on the Wars in Iraq and Afghanistan, Mideast Peace Talks, and Why Obama Is Losing His Base)
http://www.democracynow.org/2010/9/16/johan_galtung_on_the_wars_in(原文)
http://www42.tok2.com/home/ieas/garltung_china.pdf(抄訳)

なぜ上記のような会話になるのかを理解していただくためには、その前段のやり取りから読んでもらった方がよいのですが、引用が長くなりすぎますので、割愛させていただきます。詳しくは上記の「抄訳」を読んでいただきたいと思います。

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さて、前回のブログでも紹介したことですが、ヨハン・ガルトゥングは国連平和大学の大学院で修士号を出すときに必ずと言って良いほど基本文献として紹介される多くの著書を出版している平和研究・紛争解決の世界的権威です。

そのガルトゥングが上記のインタビューで、「米国の航空母艦が黄海で韓国と合同演習を行うことを、米国は疑問にも思っていないこと」、それは米国が「昔と変わらず、今も世界は自分の裏庭だと思っているからだ」と述べていることに注目していただきたいと思います。ガルトゥングは上記で、「米国の航空母艦が黄海で韓国と合同演習を行うのです。その演習は中国領土に極めて接近しています。中国海軍がサンフランシスコやロサンゼルス沖合で演習するようなものです」とも述べています。

米国は、中国からの強い抗議を受けて今回の黄海における韓国との合同演習を取りやめたようですが、その代わりに今度は北朝鮮の領海に極めて近接した延坪(ヨンピョン)島沖で韓国との合同演習をおこなったわけです。しかしいくら北朝鮮領海に極めて近接した延坪(ヨンピョン)島沖での合同演習とはいっても、地図を見ればすぐ分かるように、これも黄海の一部に違いありません。だとすれば、中国にとっても、この合同演習は不愉快極まりないものだったに違いありません。

しかも、北朝鮮と韓国とではお互いの主張する「領海」の範囲が全く異なっています。それを無視して相手の領海だと主張している所で合同演習をするということは、自分から喧嘩を売っているようなものです。上記で紹介した、「中国海軍がサンフランシスコやロサンゼルス沖合で北朝鮮と合同演習するようなものです」というガルトゥングの言葉が改めて真実味を帯びて私に迫ってきます。これを日本に当てはめれば、「中国海軍が北九州や島根県の沖合で北朝鮮軍と合同演習するようなもの」と言い換えることもできるからです。

ガルトゥングが上記インタビューで述べているように、中国は「三つの回避原理」、すなわち、(1)包囲されることを避ける。(2)反革命を避ける。(3)米国との対決を避ける、という原則に則って自制した行動を取っていますから、このような演習でも戦争勃発に至っていませんが、これが米国だったら(アフガン戦争やイラク戦争、そして最近のパキスタンやイエメンでの爆撃を見れば分かるように)「即爆撃」という戦闘行為に移っていたでしょう。

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ところが日本の大手メディアを視聴している限りでは、このような複眼的視点は全く見られません。聞こえてくるのは「狂った北朝鮮の蛮行」といった論調ばかりです。北朝鮮や中国の脅威を煽り立てて一気に自衛隊の軍備を拡張したり、憲法9条をなくして自衛隊を堂々と海外に派遣できるようにしたい一部の人たち(米国もこれを強く望んでいますが)にとっては、これほど絶好の機会はないでしょう。

あるいはまた、「こんなに恐ろしい北朝鮮が近くで脅威を撒き散らしているのに、まだ基地撤去を求めて抵抗するのか」と、米軍基地の撤去や移転を求めて闘っている沖縄の人たちを脅迫したり揺さぶりを掛けたりするのにも、今度の事件は最大限に利用されるでしょう。それどころか、北朝鮮を挑発し「暴発させる」ために米韓合同演習を利用したのではないかという謀略論すら思い浮かんできます。

というのは、先に紹介したDemocracy Now!の報道では、米韓の合同軍事演習が、7万人の兵士、50隻の戦艦、500機の戦闘機を引き連れた巨大な軍事演習だったことを紹介した後に、下線部で示した一文が最後に付け加えられているからです。

The fighting comes at a time when South Korea and the United States are conducting a major military exercise involving more than 70,000 troops, 50 warships and 500 planes. The military exercise has been sharply criticized by Pyongyang as “simulating an invasion of the North” and “a means to provoke a war.” The fighting also comes just days after it was revealed that North Korea had made rapid advances in enriching uranium at a previously undisclosed plant.

最後の一文だけを取り出して、意訳を付けてみると、次のようになるかもしれません。

The fighting also comes just days after it was revealed that North Korea had made rapid advances in enriching uranium at a previously undisclosed plant.(また、その砲撃の数日前に、北朝鮮は、今まで秘密にしていたウラン濃縮過程の急速な進展具合を公開したばかりだった。)

北朝鮮がわざわざ米国から科学者を招き、自分たちの原子力開発がどこまで進展しているかを公開した上で、「これを破棄する用意があるから米国と和平条約を結びたい」という意思表示をした数日後に起きたのが、この砲撃事件だったことを、この最後の一文は示しています。

そして「我々としては、これだけの誠意を見せているのに、なぜ実弾発射までも含めた軍事演習を、しかも我々の主張する領海内にまで立ち入ってまで、おこなわなければならないのか」という憤りも、この一文から読み取れるような気が、私にはしたのです。

なぜそのように考えられるかを、少し回り道をしながら、以下に詳しく説明してみたいと思います。

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日本人にとって意外と知られていないことは、朝鮮戦争は1953年の時点で一時的停戦になっているだけで、法律的には北朝鮮と米国はいまだに戦争状態にあるということです。ですから、北朝鮮としては一刻も早く米国と平和条約を結び、このような戦争状態を解消して、中国や北ベトナムのような開放経済に移りたいと思っているわけです。

同じ社会主義国を名乗りつつも、中国やベトナムと比べれば、北朝鮮は経済発展どころか貧困化の一途を辿っています。ですから北朝鮮としては、一刻も早く経済体制を立て直し、中国やベトナムと同じような豊かな国になりたいと思っていることは、吉田康彦『「北朝鮮」再考のための60章』、同『北朝鮮を見る、聞く、歩く』などでも分かります。

しかし、中国やベトナムのような開放経済に移るためには米国との戦争状態を一刻も早く解消しなければなりません。金のかかる核兵器の開発も本当はやりたくないと思っています。ですから、平和条約締結のために北朝鮮としてはいつでもそれを放棄する用意があること、それを示すためにスタンフォード大学などから科学者を3人も呼び寄せたのでした。その他にも、砲撃事件の前の週には、元国務省職員2人と社会科学者1人も北朝鮮を訪れて、政府高官と会談しています。

これらのことは下記のTim Shorrock氏による説明で詳しく知ることができます

Tim Shorrock: Direct Talks With North Korea Are the Only Answer to End Korean War
http://www.democracynow.org/2010/11/24/tim_shorrock_direct_talks_with_north
(DemocracyNow!2010/11/24)。

しかしオバマ政権は(ブッシュ政権と同じく)イラクやイランと同列にして北朝鮮を「テロ国家」と指定し、必要とあれば何時でも武力攻撃をするぞという姿勢を崩していません。事実、イラクは丸裸にされた上で総攻撃を受け、あっけなく崩壊しました。ですから米国が「テロ国家」の指定から外し平和条約を結ぶという約束をくれない限りは、北朝鮮としては「核カード」を捨てるわけにはいかないわけです。

この論理をもっと明瞭かつ的確に知っていただくためには、私の下手な説明を聞くよりも下記のチョムスキーの語る「北朝鮮論」を読んでいただくのが一番だと思います。これは2006年のインタビュー記事ですから少し事情が違いますが、いま読み直してみても決して古くなっていないどころか、むしろ現在の状況を述べているのではないかと思えるほど示唆に富んでいます。ぜひ御一読を御願いしたいと思います。

チョムスキーの北朝鮮論「核武装に追い込んでいるのは誰か」
http://www42.tok2.com/home/ieas/chomsky20060124north_korea.pdf

では、今にも崩壊寸前の最貧国である北朝鮮を、なぜ米国は「生かさず殺さず」といった生殺しのまま放置しているのでしょうか。それは「EUに匹敵する巨大な経済共同体が東北アジアに(中国・朝鮮・日本を中核として)誕生することを、米国は最も恐れている」そのためには「東北アジアのド真ん中に『盲腸』を置いて暴発させておいた方がよいからだ」というのがチョムスキーの見解です。

しかし長くなりましたので、それについては機会を改めて紹介したいと思います。

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<註1> 上記では、ガルトゥングの「中国論」を詳しく紹介するゆとりはありませんでした。詳しくは下記に拙訳を載せてありますので、それを参照ください。
http://www42.tok2.com/home/ieas/garltung_china.pdf

これを読んでいただければ、ユーラシア大陸全体を睨んだ壮大なスケールで、ガルトゥングが現在の情勢を考えていることを知っていただけるはずです。たとえば、ベトナム戦争と同じように、イラク戦争やアフガン戦争でも米国はやがて敗北・撤退せざるを得なくなること、そのときの調停者として(トルコと共に)中国が登場せざるを得なくなると考えていることなど、興味ある論点に満ちています。

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<註2> 米韓の合同軍事演習がおこなわれた領海は、1953年に朝鮮戦争が休戦協定に持ち込まれたとき米国が勝手に線引きしたもので、国際的に認知されているものではないことも、ここで確認しておきたいと思います。これについても先述のTim Shorrock氏が、下記(DemocracyNow!, 2010/11/24)で詳述しているとおりです。ゆとりのある方は是非お読みいただければと思います。

Tim Shorrock: Direct Talks With North Korea Are the Only Answer to End Korean War
http://www.democracynow.org/2010/11/24/tim_shorrock_direct_talks_with_north

それにしても、双方が自分の領海だと主張して決着のついていないところで軍事演習をおこなえば問題が起きることぐらい初めから分かっていたはずです。北朝鮮の砲撃を「挑発的」と言うのであれば、事前の警告を無視した「実戦さながらの巨大な軍事演習」も同じ程度に、あるいはそれ以上に「挑発的」だったのではないでしょうか。ガルトゥングが言うように、米国は「昔と変わらず今も、世界は自分の裏庭だと思っている」としか考えられません。

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<註3> 北朝鮮の砲撃事件が起きる直前の11月20日(土)、東北アジア(中国・朝鮮・日本)の研究者として世界的に著名だったChalmers Johnson氏が亡くなりました。79歳でした。

カリフォルニア大学バークレー校で博士号取得。カリフォルニア大学サンタバーバラ校、カリフォルニア大学サンディエゴ校教授を経て、その後ずっと民間シンクタンク「日本政策研究所 the Japan Policy Research Institute」所長を務めていました。

元中央情報局CIA顧問を勤めていた氏ですが、ソ連崩壊後はCIAを退き、ソ連亡き後も帝国として傍若無人に振る舞う米国政府の鋭い批判者に転身しました。Blowback: the Costs and Consequences of American Empire (Henry Holt, 2000、邦訳『アメリカ帝国への報復』集英社, 2000年)は、2001年の911事件を予言した書として一躍ベストセラーになりました。

氏は、ロサンゼルス・タイムズ(2010/05/06)に投稿し、「米国は傲慢ぶりをやめて普天間の海兵隊部隊を米本土に戻すべきだ」「私は憶病な鳩山由紀夫首相よりも、基地を維持することに取り憑かれ、受け入れ国のことを顧みない傲慢な米政府を非難する」「米国は普天間返還は勿論のこと、沖縄の人々に対して65年間もの辛抱に感謝すべきだ」と主張したことでも有名でした。

チャルマーズ・ジョンソン「新たな沖縄での闘い」
http://www42.tok2.com/home/ieas/chalmersjohnson20100506okinawa.pdf

このLAタイムズ投稿については上記に拙訳を載せてありますが、氏が生きていたら、この北朝鮮の砲撃事件について、私たちにどのような論評を聞かせてくれたのだろうかと思うと、残念で堪りません。謹んで御冥福をお祈りしたいと思います。


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