毎日新聞の「英語でOC授業をする」という誤報

拙著『英語教育が亡びるとき:「英語で授業」のイデオロギー』の3刷りが1月20日付けで発売になりました。誤字脱字を御指摘いただいた先生方に先ず御礼を申しあげます。

やはり増刷というのは嬉しいものですが、これが少しでも文科省や各県の教育委員会に対する反省材料になり、英語教育の前進に少しでも役立ってくれればと願っています。

ところで、ちょうど3刷りが出た頃に、和歌山大学の江利川春雄先生のブログ「希望の英語教育へ」で下記の記事が出ていることを知りました。

(1)嘘だらけの新聞記事「授業はすべて英語で行うこと」、2011/1/13(木)
http://blogs.yahoo.co.jp/gibson_erich_man/22780510.html
(2)毎日新聞社からの返信、2011/1/15(土)
http://blogs.yahoo.co.jp/gibson_erich_man/22848280.html
(3)毎日新聞の誤報問題で文科省が「大変遺憾」と回答、2011/1/19(水)
http://blogs.yahoo.co.jp/gibson_erich_man/22926080.html

上記(1)の記事では、その冒頭は下記のように書き始められています。

<2013年度から授業中の会話を英語だけに限定することが決まっている高校の教科「オーラルコミュニケーション(OC)」を、10年度に大筋で実施している高校が19.6%(速報値)にとどまっていることが、文部科学省の調査で分かった。07年度の前回調査20.7%を下回る数値で、文科省は約2年後に迫った「英語限定授業」の実施に向けて危機感を強めている。>

しかし、新指導要領では「コミュニケーション英語」という科目はありますが、「オーラルコミュニケーション(OC)」という科目はありません。「オーラルコミュニケーション(OC)」という科目は旧指導要領要領に出てくる科目名です。

にもかかわらず、天下の三大紙の一つ(と言われる)毎日新聞の記者ですら、「オーラルコミュニケーション(OC)」と「コミュニケーション英語」を混同するという初歩的ミスをするのですから、その不勉強ぶりには、呆れるばかりです。

また、この「英語で授業」をめぐっては、朝日新聞や月刊『英語教育』などで、ずっと論争が続けられてきました。ですから、少しでも英語教育に関心のある記者なら、上記のことは常識だったはずです。

拙著『英語教育が亡びるとき』も、現場教師に少しでも援助の手を差し伸べられないかと思い、頼まれていたハワード・ジン『Voices of a People's History of the United States』の翻訳を中断して、突貫工事で執筆したものでした。

現在でさえ、疲弊の極に達しようとしている英語教師が、新指導要領では授業崩壊に追い込まれかねないと考え、重い腰をあげての論争参加でした。授業崩壊は、まさに「英語教育が亡びるとき」だと思ったのです。

(たとえ授業崩壊しなくても、生徒の学力低下に必ず貢献するでしょう。この詳しい説明を、ここでするゆとりはありません。、拙著『英語教育が亡びるとき』を参照ください。)

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江利川先生のブログでは、<記事の中の、以下の言葉はすべて嘘である>として、順次その理由が述べられています。詳しくは、そちらを御覧ください。。

「授業中の会話を英語だけに限定することが決まっている」
「英語限定授業」
「13年度からOCを必須単位とし、授業はすべて英語で行うこと」
「OCを担当できる英語力として、文科省が設定した『英語検定準1級もしくはTOEIC730点以上など』の資格」

これにたいして毎日新聞では「本社で十分に検討させていただきます」という返事だったそうです[上記(2)参照]。他方、文科省[文部科学省初等中等教育局国際教育課外国語教育推進室]は次のような回答を寄せてきているようです[上記(3)]。

<毎日新聞の取材では、「OC」は現行学習指導要領における科目であり、現行学習指導要領では、「授業は英語で行うことを基本とする」旨の記載はないこと、新学習指導要領における「授業は英語で行うことを基本とする」という記述は、授業のすべてを必ず英語で行わなければならないということを意味するものではない旨伝えており、記事のような回答はしておりません。また、記事掲載後、毎日新聞社に対して紙面の内容は事実誤認であり大変遺憾である旨を伝えております。>

江利川先生は、この回答にたいして次のように述べておられます。

<毎日新聞の記事は、新指導要領を作った「黒幕たち」の「授業はすべて英語で」という本音をある意味で代弁したものでした。しかし、文部科学省が公式にそれを否定したわけですから、極論すれば、黒幕の連中はハシゴをはずされた形です。攻勢のチャンスです。今後「授業はすべて英語で」などという人たちがいたら、にっこり笑って、「文科省はそんなこと言ってないよ」と教えてあげましょう。その上で、新指導要領が含む重大な問題点を批判し、実践的に乗り越えましょう。>

このような回答を文科省から引き出された江利川先生の御奮闘には、本当に頭が下がるのみです。

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しかし、新指導要領では、「コミュニケーション英語」を初めとする各科目の冒頭で,毎回「英語で授業をする」と繰り返し書かれているのですから、不勉強な新聞記者は、そのとおり信じ込んで記事を書いても不思議はないのかもしれません。なにしろ「基本」という語句は新指導要領の最後部に1回しか出てきませんから。

ですから、先に「天下の三大紙の一つ『毎日新聞』の記者でも、こんなに不勉強なのかと呆れてしまいました」と書きましたが、新指導要領の文面を文字通りに読めば、「英語で授業をする」のだと思い込んでしまっても、これもある意味で当然だとも言えます。

というのは、拙著『英語教育が亡びるとき』では、「いくら指導要領の解説書で、あくまで『英語で授業』は『基本』だと弁解しても、文字化されたものは、それだけで一人歩きするので極めて危険だ」という趣旨のことを、日の丸・君が代の法制化などを例に詳しく展開しました。

ですから、毎日新聞の記事は、拙著(pp.220-223)で書いたことの「生きた見本」のような気がしますが、念のためにその箇所を以下に引用しておきますので、読んでいただければ幸いです。というのは、同じ間違いをする新聞記者や放送記者が,また必ず現れるような気がするからです。

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 ・・・。こんなことが分かっていながら、文科省教科調査官である菅氏は、なぜ「授業を英語で行う」とする指示を、繰り返し指導要領に書き込ませてしまったのでしょうか。それとも、これは単なる「ハッタリ」であって、「こんなことを書いても誰もそれを額面どおりに受け取るはずがないんだから、厳しい文面の方が、教師のためには、むしろ良い」とでも考えたのでしょうか。もしそうだとしたら、「ことば」というものに対して余りにも不誠実ではないでしょうか。

 ところで、田尻氏と同じように英語達人として有名になり、さらに田尻氏と同じように、中学校教諭から大学教授となっている中嶋洋一氏が、この座談会の最後で次のような興味ある発言をしています。下線部に注意して読んでいただければと思います。(下線は筆者)

私たちは英語の教師の前に、言葉の教師ですよ。言葉を通しで子どもたちをどう育てていくかということを考えたいですね。いったん私たちの口から言葉が出てしまったら、それは相手に委ねるしかない。言い直すことはできない。書いてしまったら書き直すことはできない。だとしたら、言葉をしっかり受け止めるような心のセンサーを育てる。正しく理解してくれるような心のセンサーを育てなきゃいけない。それには正しく理解する力、正しく伝える力をつけてあげなきゃいけない。それが言葉の教師の仕事じゃないかと思いますね。

ところが不思議なことに、この座談会の参加者の誰も、最後まで、上記で紹介した菅氏の発言を問題にするどころか、むしろ賛同しているかのように見えるのです。しかし、先に私が詳細に検証したように、文字通り正しく読めば、指導要領の「次のような言語活動を英語で行う」という文言は、「英語で授業をする」以外に読みようがないのではないでしょうか。

これは憲法九条「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」を文字通り読めば、「軍隊を持たない」としか読めないのと同じです。憲法発布当時の政府も、その旨を繰り返し国会で答弁していましたし、当時、教科書として使われていた『あたらしい憲法のはなし』も同じことを述べていました。<註二>

だからこそ、先述のとおり、この座談会が載った同じ号の『英語教育』で、金谷憲氏が「英語教員養成は変わるか」という論考を寄せ、「英語で授業ができるためには」教員養成に何が必要かを真剣に論じているのです。さらに大谷泰照氏も同じ号で「学習指導要領が映すこの国の姿」という論考を寄せ、結局は、医者と同じように「教員志望の学生全員が大学院に行き、実習も含め十分な力量を身につけること」が、「英語で授業ができるためには不可欠」という、金谷氏と同じ結論に達しています。

もし「言語活動を英語で行う」という文言を、単なる「努力事項」だと分かっていれば、誰もこんなに大まじめに議論しなかったでしょう。現行の指導要領は、フィンランドのように現場教師に大幅な裁量権を与えるものではなく、非常に拘束力の強いものです。だからこそ、その文言は慎重にも慎重を重ねて言葉が選ばれねばなりません。

なぜなら、いみじくも中嶋氏が上記で述べているように、「いったん私たちの口から言葉が出てしまったら、それは相手に委ねるしかない。言い直すことはできない。書いてしまったら書き直すことはできない」のですから。それによって教科書の内容が変わったり、現場教師が右往左往したり縛られたりするわけですから。また、だからこそ日の丸・君が代問題で東京都の教員に厳しい処罰が下されているのではないでしょうか。

一九九九年夏の国会で「国旗国歌法」が成立しましたが、「日の丸を国旗とする。君が代を国歌とする」というだけの簡素な法律で、「学校教育の現場で強制はしない」「学校教育の現場に影響は与えない」と当時の小渕総理と野中官房長官は何度となく国会で答弁しました<註三>。

ところが一度文章化されてしまうと、法律は大きな力を持ち始めます。それを利用して、当時の小渕総理と野中官房長官の国会答弁を真っ向から踏みにじったのが東京都教育委員会でした。しかし、それでも [東京都のやり方では] 憲法違反の恐れがあるというので不安だったからこそ文科省は新しい指導要領で国旗・国歌についても書き込まざるを得なくなったのでしょう(それでも憲法違反の恐れがあることは免れませんが)。

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同じことは逆の立場ですが、憲法九条でも生じています。米国政府は日本の敗戦直後、二度と自分たちに刃向かう力を持たせないようにと、「武力放棄」の条項を日本国憲法に書き込ませました。そして戦争に疲れた日本の民衆もそれを歓迎しました。民間からも同趣旨の憲法草案が出されました。したがって米国による全くの押しつけではありませんでした。

ところが朝鮮戦争を機に米国政府の立場は逆転し、それ以来ずっと、軍隊を持ち海外派兵もできる「普通の憲法」に変えるよう陰に陽に日本政府に迫っていますが、いまだにその望みを達することはできていません。それほど書かれた文章の力は強いのです。そこで「九条廃棄」を諦めて、今のところは解釈改憲という裏技を使わざるを得なくなってきているわけです。

このように、公にされた文書は独り立ちして強い力を持ち始めます。だらこそ、議論を尽くして「決めたことは守る」、ただし「守れないことは決めない」ということが、民主主義の大原則として大切にされなければならないのです。

だからこそ故大西忠治は「班・核・討議づくり」という有名な実践の中で、「多数決制」ではなく「全班一致制」というルールを設け、「守れないことは決めない」ということを民主主義の基礎原理として、まず生徒に教えようとしたのでした。多数決で安易に決めてしまうと結局は守れないので、結果として「何を決めようが守らなくてもよい」ことを生徒に教えてしまうからです(大西忠治『核のいる学級』『班のある学級』)。

ところが、こともあろうに指導要領の作成に直接携わったであろう教科調査官が、「英語で授業」はマスコミが言いふらしたことであって、「先生方はマスコミに踊らされてはいけない」というのですから、空いた口がふさがりません。

先の引用で中嶋洋一氏は、「私たちは英語の教師の前に言葉の教師ですよ」「だとしたら、言葉をしっかり受け止めるような心のセンサーを育てる。正しく理解してくれるような心のセンサーを育てなきゃいけない。それには正しく理解する力、正しく伝える力をつけてあげなきゃいけない。それが言葉の教師の仕事じゃないかと思いますね」と述べています。

だとしたら、相手に誤解を与えないような、言葉を通じて意図を「正しく伝える力」を、まず文科省こそ身につける必要があるのではないでしょうか。あるいは教育の専門家として、現場教師が初めから守れないと分かっていることは決めない力、(たとえ外圧があったにせよ)守れないことは断固として拒否する力を、文科省すなわち教科調査官こそ身につけなければいけないのではないでしょうか。・・・

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残念ながら、「なぜ英語を学ぶのか」「どんな英語力が求められているのか」「どうすれば英語力が身につくのか」「教員養成はどうすればよいのか」などについての私見は、ここでは詳述できません。拙著『英語教育原論』『英語教育が亡びるとき』(ともに明石書店)その他を御覧いただければ幸いです。

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アリゾナ州の惨劇(続)―銃乱射事件とオバマ大統領

既に何度も書いてきたことですが、いま、Howard Zinn &Anthony Arnove『Voices of a People's History of the United States』の翻訳に取り組んでいるところです。昨日、やっと17章の公民権運動のところまで来ました。

これはハワード・ジンの名著『民衆のアメリカ史』の資料編に当たるものですが、民衆の生の声がそのまま収録されていて、読んでいると『民衆のアメリカ史』にも勝るとも劣らない感動をおぼえます。

また同時に、これを読んでいると、アメリカの歴史は暗殺に彩られたものであることを、改めて認識させられます。この17章でも、黒人の投票権を確立するためにアメリカ深南部に北部からやってきた青年二人と、それを地元で受け容れて一緒に活動する黒人青年が、地元の白人集団に惨殺される事件が出てきます。

映画『ミシシッピ・バーニング』は、この事件を描いたものですが、3人が惨殺された後、FBIが捜査に乗り込んできて犯人を捕まえるという筋立てになっています。しかし実際には、FBIは南部で黒人が暗殺されてもほとんど捜査らしい捜査をしたことがありませんでした。

この3人が行方不明になったときも、暗殺されたことがほぼ確実だったにもかかわらず、夫と一緒に南部で活動していた妻が捜査願いを出しても全く動こうとしませんでした。この17章では、この活動家の妻が南部でどのような活動をしてきたか、日々どのような脅迫の中で生きてきたかを切々と述べていて、心を揺り動かされます。

この事件では、3人を惨殺したグループは「白人至上主義」を掲げるグループで、その裏には地元の保安官すら関わっていました。それが当時の南部では当たり前のことだったというのですから、本当に恐ろしいことです。ですから、南部では黒人を殺しても罪に問われることはなかったのです。まさに「テロ国家、アメリカ」でした。

(映画『ミシシッピ・バーニング』では、その地元保安官の妻が苦悩の末、FBIに協力するという筋立てになっているのですが、この映画自体が事実にそくしたものではないので、多分これもフイクションだと思われます。)



丁度この17章を訳し終わったときに、やはり南部のアリゾナ州で、「6人死亡 下院議員らが重体」という銃の乱射事件が起きました。銃を乱射したのは、地元トゥーソンのコミュニティ・カレッジの学生でした。ただし「精神不安定」という理由で停学処分を受けていました。

いま危篤状態に陥っているガブリエル・ギフォーズ下院議員(民主党)は、昨年末におこなわれた中間選挙で、共和党の相手候補から僅差で勝利を勝ち取り、1月から始まった議会で、合衆国憲法の修正第1条「表現の自由」を朗々と読み上げて、選挙中におこなわれた彼女に対する脅迫を非難したばかりの出来事でした。

というのは、選挙期間中にも彼女の選挙事務所のガラスが銃撃されて粉々にされたり、銃を持った男が事務所に乱入してきて脅迫する事件が起きていました。もう一人の民主党地元議員ラウル・グリハルバの事務所でも同じような事件が頻発し、事務所を閉じざるを得ないほどでした。

このような事件が起きる背景には、オバマ政権の「ウォール・ストリートの住人(金持ち)だけを救い、メイン・ストリート(貧乏人)は見捨てる」という政策に対する民衆の不満があり、それを最大限に利用したのが「ティー・パーティ」と呼ばれる共和党の最右翼集団でした。その先頭に立っていたのが、共和党の副大統領候補だったサラ・ペイリンという女性です。

この「ティー・パーティ」という集団は、一般の大手メディアでは「保守派の草の根運動」として紹介されていますが、この運動に資金を提供しているのが,アメリカで一二を争う大富豪であることは、ほとんど知られていません。

サラ・ペイリン元アラスカ(Alaska)州知事の選挙事務所は、昨年11月、中間選挙の際、自分のウェブ上で、接戦が予想される選挙区にライフルの「標的マーク」である「照準線」を記した米国地図を公開していました。そしてギフォーズ議員の選挙区にも「照準線」が合わせられていただけでなく、「Don't Retreat, Reload(撤退せずに再装填しろ、弾を込め直せ)」が政治スローガンでした。



<註>

ニューヨーカー誌報道:億万長者のコーク兄弟 1億ドル以上を右翼の運動にこっそり寄付
http://www.democracynow.org/2010/8/25/the_new_yorker___billionaire

• Tea Party Backer David Koch Becomes Wealthiest New Yorker
September 24, 2010 | Headline



もうひとつ、ここで指摘しておきたいことは、暗殺を暗示していたのはサラ・ペイリンだけではなかったという事実です。このアリゾナ州でギフォーズ女史と激戦を演じた相手候補は、ジェシー・ケリーという若者で、彼は選挙中に、次のように「俺とともに、M16自動小銃を手にして、ギフォーズを消せ!」と呼びかけていました。

"Get on Target for Victory in November. Help remove Gabrielle Giffords from office. Shot a fully automatic M15 with Jesse Kelly."
(出典:グリハルバ議員が銃撃事件を語る「アリゾナ州の政治は憎しみと怒りに覆われている」)
http://www.democracynow.org/2011/1/10/politics_in_arizona_have_become_fueled

ここでもう一つ注意しておきたいのは、「俺とともに、M16自動小銃を手にして、ギフォーズを消せ!」と呼びかけたジェシー・ケリーは、イラク戦争に従軍し、それを売り物に立候補していましたし、ポスターも銃を持って立っている姿を大写しにしたものでした。




ところで、銃を乱射した青年ジャレド・リー・ロフナー22歳は、重度に心の病んだと若者だとメディアでは報道されていますが、その裏にはアリゾナ州が次々と企業減税・金持ち減税をした結果、財政難に陥り、教育・福祉・医療を次々と切り捨ててきたという事実です。このことを、きちとんと取りあげているメディアはほとんどありません。

重度の「精神不安定」を理由に、コミュニティー・カレッジを停学に追い込まれたジャレド・リー・ロフナーも、精神医療サービスに対して2010年に大幅な予算削減を行ったアリゾナ州の精神治療を取り巻く問題と、決して無関係ではありません。このように精神を病んだ若者がテレビやインターネットなどのメディアを通じた暗殺の呼びかけに大きく心を動かされたであろうことは、容易に推察できるからです。

ジャレド・ロフナー、精神障害、そして予算削減で低下したアリゾナの精神医療サービス
http://www.democracynow.org/2011/1/11/jared_loughner_mental_illness_and_how

アリゾナ州保安官「精神的に不安定な人はこの国で使われているレトリックの影響を受けやすい」
http://www.democracynow.org/2011/1/10/pima_county_sheriff_clarence_dupnik_people

このアリゾナ州の財政難については既に下記の私のブログでふれていますので、詳しくはそちらを参照ください。

アリゾナ州の惨状とチョムスキー講演、そして日本
http://pub.ne.jp/tacktaka/?entry_id=3065751

以下、上記からの引用を再録しておきます。

<アリゾナ州では右翼的民衆運動「Tea Party」のスローガンが「税金で金融界を救済する政府を拒否し、納税拒否または減税要求をすること」を基本としているため、アリゾナ州が財政難に陥り、公教育や年金など様々な社会保障の削減に乗り出していること、それどころか州議会の建物を初めとして、州庁舎を次々と売り払い、その建物を売却相手から賃借りして議会を開いているなど、信じがたい惨状が展開されています。>

議員定数削減、チョムスキー講演、そしてマイケル・ムーア(上)
http://pub.ne.jp/tacktaka/?entry_id=3091859

ご覧のとおり、アリゾナ州では財政難を解消するために、議員定数の削減や議員報酬の引き下げ、州庁舎の売却と州議会の賃貸など、目もあてられない惨状が展開していましたが、その惨状に追い打ちをかけたのが今回の乱射事件でした。

名古屋の河村市長もアリゾナ州と似たような政策を打ち出していますが、アリゾナ州の惨状を見れば、このような政策がいかに危険極まりないものか、よくわかるのではないでしょうか。



<註>
ところが、このような事件があったにもかかわらず、アリゾナ州議会は(全米でも有数の銃規制が緩い州とされているにもかかわらず)銃の規制をさらに緩めて、「大学などにも自由に銃を持ち込めるようにする案」が与党共和党で検討されているというから驚きです。

ギルフォード銃撃事件直後、アリゾナ州議会は銃規制を引き続き緩めるのか?
http://www.democracynow.org/2011/1/11/in_wake_of_giffords_shooting_will



オバマ大統領は、1月12日(水)にアリゾナ州立大学で開かれた追悼式の演説で、事件の背景として指摘されている過激な政治対立に言及し、今回の事件が新たな分裂を招くようなことがあってはならないとし、国民の結束を呼びかけました。

そして、あれは狂信的個人の犯行であって、それを理由に共和党(特に最右派のティー・パーティ)の選挙戦術や政治路線を問題にするのは誤りであるとして、「一瞬立ち止まって、対話が互いに傷付ける方向にではなく解決する方向に向かっているかどうかを確認する必要がある」と述べたそうです。

米銃乱射事件で追悼式、オバマ大統領「結束」呼びかけ
2011年01月13日 12:56 発信地:トゥーソン/米国
http://www.afpbb.com/article/politics/2782242/6659871

オバマ演説を素直に受け取れば「なるほど」と思える内容ですが、しかしよく考えてみると、極めて奇妙な主張です。相手候補を口汚く罵り、暗殺さえ示唆するようなメッセージをインターネットに載せているにもかかわらず、それを正しく非難しなければ、相手はますます付けあがるだけでしょう。

これは、オバマ氏が大統領に就任したとき、ブッシュ氏やその側近の「戦争犯罪」に対する処罰要求が出てきたときの演説と酷似しています。

ブッシュ氏が嘘をついて戦争を始めたり、アブグレイブ刑務所(イラク)やグアンタナモ刑務所(キューバ)や世界に散らばっている秘密の刑務所で凄惨な拷問をおこなってきた人たちへの訴追要求が、国内からも国外からも強く出されているにもかかわらず、オバマ氏は「過去にこだわるのではなく、未来を見つめて前進しよう」と演説しました。

しかし、よく考えてみれば、オバマ氏が、サラ・ペイリン元アラスカ州知事や「俺とともに、M16自動小銃を手にして、ギフォーズを消せ!」と呼びかけたジェシー・ケリーなどを非難できないのは当然とも言えます。

というのは、ブッシュ氏が「オサマ・ビン・ラディンを “capture or kill” しろ」と言っていたのですが、それをオバマ大統領はさらに一歩進めて、「アン ワル・アウラキを “capture or kill” しろ」と言い始めたからです。

CIA の米国民暗殺命令は合法か?
http://www.democracynow.org/2010/4/8/is_the_cia_assassination_order_of

<米当局は、 イエメンを拠点とするイスラム聖職者が、CIAの生死を問わない追跡対象者リストに加えられた初の米国民であることを認めました。米国生まれの聖職者アン ワル・アウラキは、クリスマスに起きた航空機爆破未遂事件とフォート・フッド基地乱射事件につながりがあるとされています。多くの司法専門家が、この暗殺 命令が米国法あるいは国際法のもとでのこの暗殺命令の合法性に疑問を呈しています。>

ですから、今度の事件の背景を徹底的に掘り下げて議論し究明すれば、その矛先はいずれオバマ氏も向かって行くはずです。そうなっては、オバマ氏としては非常に困るわけで、事件の背景をさぐるのではなく、単に「国民の結束」を呼びかけるにとどめざるを得なかった理由もそこにあったのでしょう。



そもそも、「オサマ・ビン・ラディンを “capture or kill” しろ」と命令するのも、超法規的・恣意的処刑に当たるわけですから、国際法違反です。なぜなら、当時のタリバン政権も「証拠を見せていただければ、ビン・ラディンを引き渡します」と言っているにもかかわらず、問答無用にアフガン攻撃に踏み切ったのがブッシュ元大統領でした。

(証拠がなかったから出せなかったのかもしれません。なにしろ911事件はブッシュ政権の自作自演ではなかったかという強い疑念も出されているくらいですから。)
http://zoome.jp/xanthou/diary/1

このブッシュ氏がやったことを、外国人ではなくアメリカ国籍の人間にまで拡大してしまったのがオバマ氏でした。ですから、アメリカ国民が「アメリカの国益に反するものは殺してもよい」と考えても何の不思議もないわけです。そんな雰囲気がブッシュ時代から醸成され、それがオバマ氏によってさらに深化・拡大されているのです。

(暗殺の対象とされている米国生まれの聖職者アン ワル・アウラキの父親が、「暗殺してもよいとする客観的基準」を明確にしてくれと裁判所に提訴しているにもかかわらず、オバマ政権は未だに何の回答も示していません。)

既にウィキリークスの創始者ジュリアン・アサンジ氏に対しても、議員という公の立場に立つすらがテレビで堂々と「始末しろ」と発言して、何のお咎めもないくらいに今の米国は倫理的に腐敗しています。そのような動きに歯止めをかけるどころか助長してきたのがオバマ氏でした。

そもそもジュリアン・アサンジ氏は、内部告発者から情報を得て、それを公に知らしめる仕事をしているわけで、これは新聞社や放送局がやっているのと同じことです。その媒体が新聞か、放送か、あるいはインターネットかの違いだけです。

もしアサンジ氏のやっていることが有罪であり、暗殺に値するのであれば、アサンジ氏からの情報を新聞に載せた世界的新聞(英国のガーディアン、独国のシュピーゲル、米国のニューヨークタイムズ)も同罪ですし、その内容を放送したDemocracy Now!なども牢獄に入れられるか、極端な場合、暗殺に値することになります。

ところが、有名なペンタゴン・ペーパーズを新聞社に漏洩させた国防総省(元)高官ダニエル・エルズバーグ氏は、最終的には無罪になっています。今回の事件で言えば、ウィキリークスに情報を渡したブラッドリー・マニング氏がそれに当たります。ところがオバマ氏はマニング氏ではなく、アサンジ氏を「暗殺しろ」と密かに指示しているわけです。ですからテレビで公人が堂々とそのことを口にしても、それを止めないわけです。

ダニエル・エルズバーグ氏も「当時はFBIが(飲み物に毒物を入れるなどして)密かに私を暗殺しようとしていたが、それを公言することはしなかった。それをオバマ氏は恥ずかしげもなく公言するようになったと憤っています。

ペンタゴン内部告発者ダニエル・エルズバーグ:ジュリアン・アサンジはテロリストではない
http://www.democracynow.org/2010/12/10/whistleblower_daniel_ellsberg_julian_assange_is

ですから、何度も言うように、今度のトゥーソンにおける銃撃事件は、「テー・パーティ」運動が、精神を病んでいる若者を利用して起こした事件とも言えるわけですが、その背後には、「ブッシュ氏から引き継いだ暴力的政治風土をオバマ氏がいっそう深刻化させた」という事実があったことを決して見逃してはならない、と私は思います。



<註1>
アサンジ氏は、英国の裁判所が決定を下すまで事情聴取のために拘束が続きます。「スウェーデン当局から性犯罪の告発を受けて引き渡しを要請されている」というのが、その口実です。しかし、スウェーデン当局からの正式な告訴状はいまだに届いていません。

アサンジ氏の弁護士によれば、オバマ政府がアサンジ氏を米国で勾留・拷問あるいは死刑にする準備が整うまで引き留めるか、スウェーデン政府経由でアメリカに引き渡すことができるようにするための勾留だそうです。だからこそ、元情報部員や元政府職員らで構成する国際的グループがアサンジを支持する声明を発表しているわけです。

We Support WikiLeaks
http://salsa.democracyinaction.org/o/592/p/dia/action/public/index.sjs?action_KEY=5343



<註2>
年賀状の追加後半部分「オバマ政権は・・・どころか、愛国者法案を延長して国民を監視し(イスラム教徒はもちろんのこと)平和運動や環境運動の活動家すら、逮捕・拘禁する事態に至っています」と書いたことに対して、次回のブログで典拠を示す予定だと書きましたが、ここまで書いてきたら、もう1月14日(金)の午前1時になってしまいました。

そこで詳しく紹介することは諦めて、平和運動に関するもののみ下記に示します。これは1月13日付けの Democracy Now! に載った最新ニュースです。他にもたくさん紹介したい情報があるのですが、体力の関係で今回はこれだけしか紹介できません。どうかお許しください。

Government Spy Infiltrated Antiwar Groups Before FBI Raids
http://www.democracynow.org/2011/1/13/headlines

FBI Expands Probe into Antiwar Activists
http://www.democracynow.org/2010/12/23/fbi_expands_probe_into_antiwar_activists
December 23, 2010 | Story



<註3>
1月12日(水)にアリゾナ州立大学で大きな追悼式が開かれました。この銃撃事件では9歳の子どもを含む6人が殺されました。しかしオバマ氏が引き継いだアフガン・パキスタン戦争では、これ以上の一般人が毎日のように殺されています。

アフガンやパキスタンの人たちからすれば、「たった6人の死者なのに、大統領も参列するあんなに大きな追悼集会が開かれている。しかし俺たちはどうだ。それ以上の人数が毎日のように殺されていても、オバマは、そんなことを一顧だにせず、戦争を拡大し続けている。俺たちは虫けらか!?」と思うのではないでしょうか。

ブッシュ氏も嘘をついてイラクに侵攻し、100万人以上もの一般市民を殺害し、ファルージャという町では、劣化ウラン弾や黄燐弾などの残虐兵器を使用し、ほとんど町ごと破壊したと言われています。隣国に流出した難民は数百万人にも上ります。

ウィキリークスによって暴露された武装ヘリコプターに殺害は、ロイター通信社の記者だけでなく、多くの一般市民をも、空から銃撃するものでした。しかも、その負傷者を自家用車で病院に連れて行こうとする民間人までも、機関銃で襲いかかる様子は、目を背けさせるほど残酷なものでした。

しかしオバマ氏は、このような戦争犯罪を反省するどころか、このような映像を暴露したウィキリークスを「テロ機関」とし、創始者アサンジ氏をテロリスト=犯罪者扱いしています。ダニエル・エルズバーグ氏が、アサンジ氏の暗殺を心配しているのも無理からぬことです。

もしイラク戦争前にウィキリークスが誕生していて、ブッシュ氏やブレア氏による戦争の捏造計画(たとえば「ダウニング・メモ」など)が暴露されていれば、アフガン戦争やイラク戦争のような悲惨な事態は避けられていたでしょう。

このように考えれば、ウィキリークスは「犯罪機関」どころか、まさに「人道機関」と言ってもよいくらいではないでしょうか。


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年賀挨拶(明けましておめでとうございます)

遅ればせながら明けましておめでとうございます。

ブログを書き始めてから初めての正月を迎えました。ほかの人のブログを覗くと、やはり新年の挨拶を書いているようなので、自分も書かなくてはいけないと焦りながら正月を過ごしました。

といっても、ほとんど正月を返上して翻訳に取り組んでいるので、正月らしい休息を取ったのは1月1日だけでした。というのは出版期日が決まっていて、来年の2月までに出版しないと版権が切れてしまうと出版社からお叱りを受けたからです。

それから逆算すると、新年の3月(どんなに遅くとも6月)くらいまでには脱稿していないと、その後の校正や索引づくりが間に合わなくなります。今までは心臓手術の予後を気遣って、翻訳にあまり集中しないようにしてきたのですが、どうもそんなわけには行かない状況になってきたようです。

それで1月2日から翻訳に復帰したのですが、やはりブログの「新年挨拶」が気になります。いただいたばかりの年賀状を読んでいたら、かつて高校教師をしていたときの友人から「ブログを読ませてもらっています」と書いてあったので、なおさらブログをこのまま放置できないという気分に追い込まれてきています。

数学の教師である彼でさえ読んでくれているのだから、やはり少し時間を取って書かなくてはと思いながら、愛犬ミック(他界したタックの兄弟です)を連れて日課の散歩をしていたら、突然ひとつのアイデアが浮かびました。「そうだ!年賀状で書いたことを、そのままコピーして,何か少し付け足すだけでもいいんだ!」と思ったのです。

そこでまず、既に友人その他に送った年賀状の文面をそのまま以下に紹介します。私の賀状を既に受け取っておられる方には新鮮みがないかも知れませんが、お許しください。

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謹 賀 新 年 2011

 2010年3月で定年退職を迎え、いよいよ待望の「晴耕雨読」の生活に入ることができると楽しみにしていたのですが、思いもかけず6月に心臓のバイパス手術を受け、いまだに病後の療養生活を送っているという状態です。
 しかし、2年前から頼まれていた下記の翻訳を一刻も早く完成しなければならず、最近は手術跡の痛む傷を「痛み止め」を飲みながら悪戦苦闘しています。ちなみに、ハワード・ジンはミリオンセラーの名著『民衆のアメリカ史』の著者であり、下記はその資料編にあたるものです。

Howard Zinn &Anthony Arnove,
Voices of a People's History of the United States

 もうひとつお知らせしておきたいのは、拙著『英語教育が亡びるとき』(明石書店、2009)が第3刷りになるという知らせを出版社からいただいたことです。
 本当はハワード・ジンの翻訳を先に頼まれていたので、そちらを優先しなればならなかったのですが、文科省が新しい学習指導要領を発表し、とんでもない教育方針を出したので、止むに止まれず、突貫工事で上記の書を執筆しました。
 心臓のバイパス手術を受けざるを得なくなったのは、この執筆のため無理を重ねたことが一因になっているかも知れないと思うのですが、現場で苦しんでいる先生方からは好感を持って受け止められているようなので、今は「無理をしても、書いて良かった」という思いのほうが強くなっています。

 ところでオバマ政権は、アフガン戦争をパキスタンにまで拡大し、無人機による無差別爆撃は、ブッシュ氏4年分の殺戮を1年で更新してしまいました。中南米においても、ブッシュ氏ですらおこなわなかったクーデタ―を矢継ぎ早におこない、更に 「アメリカ人であっても暗殺する」 と公言するまでになりました。
 ところが残念なことに、「憲法9条」 をもつ菅政権は、このようなオバマ政権に異議を申し立てるどころか、プードル犬のごとく付き従うのみです。そこで、ささやかな抵抗として、国際教育総合文化研究所を起ち上げ、ホームページ「寺島研究室」を再開すると同時に、ブログ「百々峰だより」を書き始めました。体が壊れない程度に 「細く長く」 頑張るつもりですので、従前にも増して御指導御鞭撻いただければ幸いです。

ホームページ「寺島研究室」
http://www42.tok2.com/home/ieas/

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毎年このように、葉書1枚に、私の1年の思いを書き込んで送っているのですが、限られた枠内に入りきれず、書きたいことで割愛せざるを得なかったことが多くあります。

しかし実は、「せっかくブログで年賀状を紹介するのであれば、紙幅の関係で泣く泣く削ってしまったものも、この機会に紹介しておくのも悪くないのではないか!」ということも、愛犬を連れて散歩していたときに思いついたのでした。

そんなわけで、最初の原稿段階では次のようなことも書いてあったのですが、最終的には削除しました。

<民主党の新政権ができて沖縄と日本に新しい希望が生まれたかと思っていたら、あっけなく鳩山政権が崩壊して菅政権に変わりました。しかし菅政権の政策を見る限り、自民党と何ら変わるところがなく、それどころか、最悪だった小泉・竹中コンビの時代に逆行しつつある感すらします。これでは貧富の格差は広がるばかりです。
 この状況は米国と酷似しています。オバマ政権で新しい希望が生まれたかと思いきや、アメリカ国内では、貧困者を放置したまま最富裕層への減税をするなど、ブッシュ時代と何も変わるところがないどころか、愛国者法案を延長して国民を監視し、(イスラム教徒はもちろんのこと)平和運動や環境運動の活動家すら逮捕・拘禁する事態に至っています。>

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上の文面では、オバマ氏が「中南米においても、ブッシュ氏ですらおこなわなかったクーデターを矢継ぎ早におこない、更に 『アメリカ人であっても暗殺する』 と公言するまでになりました」と書きましたが、葉書という小さな紙面では、その根拠を示すことができませんでした。興味がある方は下記を御覧ください。

クーデターから1年:依然として続くホンジュラスにおける弾圧
http://democracynow.jp/dailynews/10/06/28/4、dailynews date: 2010/6/28(月)
ホンジュラスの軍部クーデターを率いた将軍 米国の軍事学校で訓練
http://democracynow.jp/dailynews/09/07/01/3
ホンジュラス・クーデターの背後にあるもの セラヤの経歴をたどる
http://democracynow.jp/dailynews/09/07/01/4、dailynews date: 2009/7/1(水)
エクアドル大統領が語る、米国による9月のクーデター事件、ウィキリークスによって暴露された「米国による気候資金提供の拒否」、賛否両論の森林計画REDD
http://democracynow.jp/dailynews/10/12/09/1、dailynews date: 2010/12/9(木)

上記の最後に紹介したものは、最近のウィキリークスの暴露で明らかになった米国のエクアドルへの援助拒否の詳細、2010年9月におきた彼に対するクーデター未遂事件、そして市場主導の森林保護策として賛否両論のあるREDD(森林減少・劣化からの温室効果ガス排出削減策)への支持について、エクアドルの大統領ラファエル・コレアにインタビューしたものです。

エクアドルは、米国主導のコペンハーゲン合意に署名しなかったことで援助を失った国の一つです。内部告発サイト=ウィキリークスによって最近公表された極秘の米外交公電は、米国が2009年のコペンハーゲンでの気候会議をいかに操作したか、「温暖化をくい止めるのに役立たない」としてコペンハーゲン決議に反対したボリビアやエクアドルに、米国が資金援助をしないことに決めたことなど、新事実を暴露しました。

また年賀状では、オバマ氏は「更に 『アメリカ人であっても暗殺する』 と公言するまでになりました」とも書きましたが、これについては下記を御覧ください。

CIA の米国民暗殺命令は合法か?
http://democracynow.jp/dailynews/10/04/08/3、dailynews date: 2010/4/8
CIA、秘密暗殺プログラムで民間軍事会社ブラックウォーター社を使用
http://democracynow.jp/dailynews/09/08/20/1、dailynews date: 2009/8/20(木)

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このように、年賀状に書いたことの根拠を示していくと、どんどん時間が取られていきます。このブログも、せめて正月3が日が過ぎた1月4日(火)にはインターネットにアップしたいと思っていたのですが、このままでは、これを掲載するのが1月5日になってしまいそうです。

そこで年賀状の追加部分「オバマ政権で新しい希望が生まれたかと思いきや、アメリカ国内では、貧困者を放置したまま最富裕層への減税をするなど、ブッシュ時代と何も変わるところがないどころか、愛国者法案を延長して国民を監視し、(イスラム教徒はもちろんのこと)平和運動や環境運動の活動家すら逮捕・拘禁する事態に至っています」の根拠については、なるべく簡単にしたいと思います。

オバマ・共和党合意の減税延長に対して「バナナ共和国(リパブリツク)だ」と、バーニー議員が議会で8.5時間の批判演説、
http://democracynow.jp/dailynews/10/12/13/1、dailynews date: 2010/12/13(月)

12月13日に、ブッシュ大統領時代から続いている富裕層国民への減税延長の法律に関する重要な投票が行われました。オバマ大統領が発表して論争の巻き起こっている法案には、今回の投票が発表された前週、大きな批判が起こりました。しかしそのなかで最も強く反対したのはバーニー・サンダース上院議員です。

米国上院では、フィリバスター〔filibuster〕といって「長時間の演説などの合法的な手段によって議事の進行を妨げること」が認められていますが、サンダースは10日午前10時24分、議会で演説を始め減税計画を批判しました。そして午後6時59分まで、8時間半以上のあいだ、白髪の議員は演台を離れることはありませんでした。

上記のニュースは、共和党にも民主党に属さない「バーモント州選出の独立派議員」バーニー氏がおこなった演説の一部を報道したものですが、非常に感動的なものでした。ぜひ視聴していただきたいと思います。英文スクリプトも付いていますので、文字で確認することもできます。

チョムスキーがいつも言っているように、「米国は2大政党制だと言っても、頭が二つで胴体が一つの、同じ穴のムジナに過ぎない」わけで、金持ち減税=貧乏人増税に正面切って反対したのは、結局「インデペンデント」のバーニー氏しかいなかったのです。その結果、この法案は上院で可決されてしまいました。

このような米国議会を見ていると、日本の自民党と民主党を見ているような気がします。日本はまだ完全な「2大政党制」ではありませんから、米国ほどひどくはなっていませんが、日本も米国と同じような「2大政党制」になったら、どんなに大きな不幸が待ち受けているか―この映像ニュースはそのことをはっきり示しているように思います。

これらのことを上記の映像ニュースから知ることができます。しかし、以上のことを理解するには、英語を読んだり聞いたりして分かる力が必要ですが、現在の文科省が進める「コミュニケーション」中心の英語教育では、「会話ごっこ」がどうしても時間的に大きな比重を占めますから、いつまでたっても本当の英語力は育ちません。これが拙著『英語教育が亡びるとき:「英語で授業」のイデオロギー』を書いた大きな動機の一つでした。

(また、「英語読みの米国知らず」「日本を第二の米国にしないために英語を学ぶ」というのも拙著のテーマの一つでしたが、このことの重要性も、上記で紹介した幾つかの事実から分かっていただけたのではないかと思います。)

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ここまで書いたら、既に1月5日(水)の午前零時36分になってしまいました。

そこで、年賀状の追加後半部分「オバマ政権は・・・どころか、愛国者法案を延長して国民を監視し(イスラム教徒はもちろんのこと)平和運動や環境運動の活動家すら、逮捕・拘禁する事態に至っています」の根拠については、次回のブログに回したいと思います。

本当はウィキリークスについて書きたいこともあったのですが、明日は(実は、もう「明日」になってしまているのですが)翻訳に復帰しなければなりませんので、泣く泣く、ここで打ち止めとさせていただきます。

ただ一つだけ紹介しておきたいのは、先のブログで紹介したウィキリークスの支援サイトは(ノーム・チョムスキーやダニエル・エルズバーグが呼びかけ人になっている)、現在の時点(2011年1月4日)で8500名の署名が集まっていることです。

We Support WikiLeaks
http://salsa.democracyinaction.org/o/592/p/dia/action/public/index.sjs?action_KEY=5343

またYouTubeでも次のような支援サイトができていて、たった1分半程度の呼びかけなのですが、文字と音楽の組合せが絶妙なので感心しました。日本の音楽家にも、このような骨のある人物が登場して欲しいものです。

IsupportWikiLeaks.org
http://www.youtube.com/watch?v=768xY_2PFcA&feature=related

さらに若者が次々と自分のメッセージを録画録音して載せていることを発見して驚きましたが、このサイトの力によるものではないでしょうか。若者がこのように大きく動き出していることに希望を感じました。

http://www.youtube.com/watch?v=Ygd44LTo1aM&NR=1


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Author:狐狸庵居士(田舎の国立大学を2010年に定年退職)

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