福島原発事故(3)ー海外から日本を見ると、どのように見えるか

いま(3月29日)これを香港からの機上で書いています。震災の復興状況が気がかりで中国にいても全く落ち着かない日々を過ごしていました。前回もエジプト民衆蜂起があったときに上海にいましたが、今回は香港です。

なぜ中国に行くのかについては、機会を改めて詳しく述べたいと思いますが、中国にいる間も、イギリス・アメリカ・フランスはリビアを爆撃しています。その理由はイラクを侵攻するときと同じで「独裁政権を倒す」という触れ込みです。

しかし「独裁政権を倒す」というのであれば、バーレーンやイエメンでも独裁政権を倒すために民衆蜂起が起きていて、それに対する逮捕・拷問・殺害も絶えないわけですから、リビアだけが制裁の対象になるというのは実に奇妙な話です。

ましてリビアの場合は「内戦」ですが、バーレーンの場合はサウジアラビアやアラブ首長国連邦という「ほとんど選挙をしたことのない王制国家」が、バーレーンの民衆蜂起に対して軍隊を出動させているのですから、明らかに「侵略」に当たるわけですが、これに対しては英・米・仏の三国は何の抗議もしていません。

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そんなわけで「中東」情勢も気になって仕方がないのですが、それよりも遙かに深刻なのが東北関東大震災と福島原発事故のゆくえです。深圳(中国)の状況を見に行っている間も被災者がどうなっているのか放射能被害の広がりがどうなっていくのかが気になって仕方がありませんでした。

とりわけ福島原発事故が、スリーマイル島事故のレベルを超えてチェルノブイリ事故に近づいているという情報が、Democracy Now!やホテルの英字新聞で、連日、報じられているのに、ホテルのテレビで見るNHKニュースでは、外国のメディアの心配を「風評被害」ということばで切り捨てているのも大いに気になりました。

しかも、NHKニュースでは流れたことのない写真や映像を、Democracy Now!やホテルの英字新聞で見せつけられると、かつてアジア太平洋戦争の最中に日本の大手メディアが「勝った、勝った、ニッポン勝った」と言い続けた姿を思い浮かべてしまったのですが、これは本当に「風評被害」であり「杞憂に過ぎない」のでしょうか。

たとえば、全身防護マスクで完全防備した警察官や自衛隊員が復興作業している中に、消防服のハッピ姿の地元の人たちが点在している写真は、私には異様そのものです。なぜ地元の人たちにも防護服が配られないのでしょうか。地元民は被爆しても当然だと考えられているのでしょうか。そんなに全身を防護服で完全防備しなければならないほど危険な地帯なら、なぜ政府は避難指示を出さないのでしょうか。

私には全身を防護服で固めた人たちが、遠くから手を伸ばして、みっともないほどの及び腰で、全く無防備な子ども達にガイガー計数管を突きつけている写真も醜悪そのものに見えました。

しかしNHKで私が目にする映像は、ボランティアの人たちがたくさん駆けつけて、復興が進んでいる姿ばかりでした。これでは、かつてアジア太平洋戦争の最中に日本の大手メディアが「勝った、勝った、ニッポン勝った」と言い続けた報道ぶりと、どこが違うのでしょうか。

言い方を変えれば、原爆投下直後の日本では、GHQの命令で、広島・長崎の写真や映像は、決して新聞などに掲載を許されませんでした。今の状況は(少なくとも私には)何かそれと似た雰囲気が感じられます。これは私の思い過ごしなのでしょうか。

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いま政府がしなければならないのは、被災者のひとたちに「意味のない安心感」を与えることではなく、包み隠すことのない情報を住民に与え、今後どうすれば生活を立て直すことができるのかの見通しを与えることではないでしょうか。

ホテルの朝食時に手に入れた朝日新聞で宮崎駿氏が「原発事故で国土の一部を失いつつある国で自分たちはアニメを作っているという自覚を持っている」と語っていましたが、「国土の一部を失いつつある国」という一見「さりげない」ことばが、現在の事態の深刻さをグサリと突いているように私には思えました。

つまり宮崎駿氏は、東北地方の一部が確実に住めない「死の地帯」に変貌してしまうだろうと認識しているのです(原発の「メルトダウン」が「部分的」ではなく「全面的」なものになれば、それでは済まないかも知れません)。

放射能汚染で住めなくなる地域があるとすれば、まず政府がすべきことは、住民に真実を告げて、集団移住をも視野に入れた仮設住宅の建設するなど、一刻も早い対策を立てることでしょう。それはあくまで政府や自治体の政策であるべきで、決してアメリカのハリケーン・カトリーナの時のような「自主退避」であってはならないのです。

ハリケーン・カトリーナがニューオーリンズを襲ったとき、米国政府も州や市の自治体もいっさい援助をしませんでした。そのときのドキュメンタリーを見て驚いたのは「アメリカは社会主義国ではないのだから国も自治体も援助する必要はない」と述べ、スクールバス一台も出そうとしない政府や自治体の姿でした。

こうして米国では、自家用車を持たない貧困者の多く(そのほとんどが黒人だった)が逃げ遅れて水に飲まれていきました。日本はこれほど冷酷な国ではないと思いますが、政府が「自主待避」を言うのであれば、結局、水や電気や食料などが十分にない中で取り残されるのは、老人や障害者などの弱者や貧困者ばかりになっていくでしょう。

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ここからは3月30日です。自宅に戻ってから書いています。昨日中に書き終えたいと思っていたのですが、旅の疲れが残っていて、書き終えることができませんでした。

ところで、この原発事故が起きてから慌てて原発について勉強し直しました。すると少しは知っていたつもりだったのに、まだまだ知らないことが余りにも多いことに驚かされています。下記の小出裕章氏の講演で、チェルノブイリ原発事故が如何に広大な地域を人の住めない死の地帯に変えてしまったのかを実感しました。

【大切な人に伝えてください】小出裕章さん『隠される原子力』
http://www.youtube.com/watch?v=4gFxKiOGSDk

上記の講演は、「チェルノブイリ原発事故によって死の地帯に変えられた場所が、現場地域だけではなく、死の灰が風によって大量に飛散し落下した遠方の広大な地域にまで及んでいること」を、地図・図表・写真を通して、まざまざと教えてくれました。

また小出氏の講演から、原子力発電所の電気料金が、電力会社が儲かるように勝手に決められていることも知り、仰天してしまいました。

その他にも、この講演では、驚くべき事実が多く提示されています。全部を見ようとすると疲れますので、後半の質疑応答部分は省いて前半の講演(約1時間)だけでも視聴していただければ思います。
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<註> 小出裕章氏の講演で、もう一つ驚いたのは、氏がいまだに京都大学原子炉実験所の「助教」だということでした。調べてみると1949 年生まれですから、「教授」になっていてもおかしくない年齢です。それが「助教」(昔の「助手」)のままなのですから、お上の流れに逆らうと、数々のノーベル賞受賞者を出している最高学府の京都大学においてさえこのような目にあうのか?!!と思わず言葉を失いました。
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ところで原子力発電所の電気料金で思い出したのが、Democracy Now!で報道された記事です。「アメリカのウオール街では誰も原子力発電に投資するものはいない。それは儲からないからだ」という事実でした。

つまり原子力発電という事業は「金食い虫」「危険なだけで金にはならないもの」というのが財界・投資家の一般認識だというのです。ただし「国家が危険と儲けの面倒を見てくれるのであれば話は別だが・・・」というわけで、オバマ氏が大統領になってからは、原子力産業が復活したというのでした。

オバマ氏は、既に2010年10月の時点で、約30年ぶりの原子炉建設に必要な債務保証として83億ドルを約束しました。この動きは、大統領の予算において原子力債務保証を3倍にすることと並んで、原子力発電部門を推す米連邦政府の新たな姿勢を如実に表しています。

"A Bad Day for America": Anti-Nuclear Activist Harvey Wasserman Criticizes Obama Plan to Fund Nuclear Reactors
http://www.democracynow.org/2010/2/18/nukes

オバマ氏は、ブッシュ大統領ですらやらなかったことをやり始めたのでした。これではオバマ氏が「社会主義者」、つまり「企業社会主義」と言われても仕方がないのではないでしょうか。オバマ氏が2011年2月に打ち出した予算教書も、「損失・危険」は国が持ち、「儲け・利潤」は企業のものだったからです。

軍事費・原子力発電所増大と社会福祉プログラムの大幅削減を求めるオバマの3.7兆ドルの予算教書
http://www.democracynow.org/2011/2/15/obamas_37_trillion_budget_calls_for

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オバマ氏と核兵器・原子力産業で、もう一つ思い出すのは、オバマ氏がインドに核技術を売りに行ったときのことです。インドはIAEA(国際原子力機関)に加盟しないまま核兵器を所有している国ですが、そのインドに、ノーベル平和賞を受賞したオバマ氏が出かけ、原子力発電を含めた核技術を提供する商談に乗りだしたのでした。

オバマ大統領がインドに売りにいったもの
http://democracynow.jp/video/20101108-1

十日間にわたるアジア4カ国歴訪の皮切りとなったインド訪問には、ゼネラル・エレクトリックやボーイングなど軍事産業の企業幹部が250人ばかりも同行しました。このとき原子力発電所についても商談が成立し、インド政府も合意したのですが、インド議会では大問題になりました。

というのは原子力発電で事故が起きたときに、インドに進出したアメリカ企業が責任を取ることに、アメリカ側が同意しようとしなかったからです。インドでは既に1984年に、米国の化学産業ダウ・ケミカルがボパールでの大事故を起こし、1万5000人~2万5000人の死者を出したにもかかわらず、いまだに責任を取っていないからです。

このような事例を見るにつけても、今回の原発事故に対する被害者への補償は誰がおこなうのかということが重要な問題になってきます。菅内閣は政府が補償するようなことを漏らしたことがありますが、こうなると日本も「儲けは企業に」「損失は国民の税金で」という典型的な「企業社会主義」国家ということになります。
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<註> 国家が面倒を見てくれるという点で、もう一つ思い出されるのは、ウオール街が引き起こした金融危機です。ゴールドマン・サックスなどが引き起こした住宅金融危機は多くのアメリカ人を路上に放り出しましたが、政府は税金でウオール街だけを救い、そのおかげで立ち直った金融界が手にする給料やボーナスは、今や(庶民の私たちからすると)天文学的な数字です。彼らにしてみれば笑いが止まらないでしょう。

 また、巨大石油会社BPはメキシコ湾で石油掘削の爆発事故を起こし、ルイジアナ州・アラバマ州・ミシシッピ州・フロリダ州などの漁業や自然を壊滅状態に陥れましたが、オバマ政権は周囲の反対を押し切って、ブッシュ政権でさえ躊躇していたアメリカ近海の石油掘削に大量のゴーサインを出しました。そのせいか、事故責任者を牢屋に入れるつもりはなさそうです。
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中国に行っている間に溜まっていたメールや留守電に答えていると、3月30日もあまりブログに割ける時間が無く、ここまで書いてきたら、3月31日になってしまいました。

滞っていた翻訳に早く復帰しなければなりませんので、以下は、中国に行ってから調べて得た情報を簡単に紹介するだけに止めさせていただきます。

まず紹介したいのは原子力資料情報室の緊急記者会見です。

原子力資料情報室 緊急記者会見[2011.03.26]『福島原発事故の真相を解く』
田中三彦(サイエンスライター)、後藤政志(元原子炉格納容器設計技師) 
http://www.ustream.tv/recorded/13590008

上記の映像では、最初に田中三彦氏(元・福島4号炉の設計技術者、サイエンスライター)から1号炉の事故「冷却材消失事故」について報告がありました。これは原発事故の中で最も恐れられている事故だそうです。東京電力、原子力安全保安院、原子力安全委員会が、これを隠し続けてきたのではないか、そう考える理由を氏は明快に説明しています。

原子炉の中身が大写しでスクリーンに映し出されて、説明も後藤政志氏のものと比べて極めて分かりやすくこれを視聴すれば原子炉の仕組みが素人でも理解できるのではないかと思いました。ですから、このインタビューは、後半の後藤氏のものは見る必要がなく、最初から60分の田中氏による説明だけを視聴すればよいと考えます。
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<註> このインタビューを視聴していて、通訳者の女性の通訳ぶりが非常に素晴らしく、このような難しい内容をよくスムーズに英語に直すものだと感心させられました。更に感心したのは田中三彦氏が、その通訳の中身をよく理解していて、ときどき通訳が困りそうな専門語を英語でも言い換えながら事故の説明していることでした。それに反して後藤政志氏は通訳の英語が分からないので、まだ通訳の説明が終わっていないのに、自分の説明を始めようとして、ときどき通訳と説明者との間で混線が起きるのでした。
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次に紹介したいのは、「DemocracyNow!Japan」による下記の字幕つき映像です。英語版については、「福島原発事故ー『チェルノブイリ』を避けるために(1)」で既にURLを紹介済みですが、これは「字幕付き」なので非常に理解しやすいものになっています。

日本の原発危機「メルトダウン(原子炉・炉心完全溶融)の深刻な危機」
http://democracynow.jp/video/20110317-1

元の英語版は3月17日(木)に放映されたものですから事故の情報に関しては新しいものを与えてくれるわけではありません、福島原発が基本的には米国のジェネラル・エレクトリック社の設計によるマーク1型であり、この旧式の原子炉は1970年代から欠陥が指摘されてきたものであることを,この映像からはっきりと知ることができます。

また、米国の原子力規制委員会が、上院のエネルギー環境小委員会で公式答弁したところによれば、1985年の時点で、米国にある約100基の原発で炉心溶融を伴う大事故が20年以内に起こる可能性は、なんと50%とされていたこと(そして日本の東電・原子力安全委員会・原子力保安院は、それを知りながら隠していたであろうこと)も、この映像から知ることができます。

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<註> NHKニュースを見ていて、最近とても不思議なことが一つあります。それはニュース報道でもニュース解説でも、ほとんど絶対に「メルトダウン」という用語を使わずに「溶融」という難しい用語を使っていることです。

 最近のNHKは、「コンプライアンス」などで代表されるように、英語教師でも意味の不明なカタカナ語を頻発していて、NHKに抗議しても一向に改める気配がありませんでした。ところが不思議なことに今回だけは「メルトダウン」というカタカナ語を使わないのです。

 これは「溶融」という用語よりも事故の内容を庶民がすぐ理解してしまうことを恐れているからではないか、というのが私の「仮説」ですが、皆さんの力で検証していただければ有り難いと思います。
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最後に紹介したいのは、武田邦彦氏の次のインタビューです。氏は原発賛成論者だそうですが、その氏が下記のようなことを言いたい放題に語っていることが、私には面白く思われました。「関東エリア未放送」というのも意味深長です。

中部大学教授・武田邦彦「原子力保安院の大ウソ暴露!」(関東エリア未放送)20分
http://www.youtube.com/watch?v=gW8pfbLzbas

NHKのニュースで「原子力保安院」なるものが記者会見で何かを発表する度に、この人の話は本当に信用がおけるのかと、常々、不安に思いながらテレビを見ていました。そして上記の武田氏のインタビューで、やはり私の不安は杞憂でなかったことを知りました。

武田氏の話のなかに中部電力の浜岡原子力発電所(静岡県)のことも出てきますが、元原子力安全委員会の委員だったという武田氏の話を聞けば聞くほど、(生まれ故郷の志賀原発も勿論のことですが)、いま住んでいる百々峰に近い方の、浜岡原発を一刻も早く止めなくては、という思いに駆られます。

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<註> 下記の東京新聞(3月29日)によれば、東京電力は「日当40万円出すから」という餌を提示しながら、原発作業員の確保に躍起だそうです。東北で職を失ったひとたちを下請け・孫請けの「派遣社員」として雇うつもりなのでしょう

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2011032990065850.html#print

しかし、チェルノブイリの経験によれば、「日当40万円」の先に見えているものは明らかです。その一方で正社員の姿はほとんど現場で見かけませんし、社長は一度も謝罪会見をしないまま入院しました。何とも胸のつぶれるような光景ではないでしょうか。

http://www.sanspo.com/shakai/news/110331/sha1103310506011-n1.htm

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福島原発事故(2)―広瀬隆、高木仁三郎、そして原子力資料情報室(CNIC)

先のブログを書いてから、これでしばらくは翻訳に専念できると思っていたのですが、今の原発状況を見ると、どうしても少しだけ付け足しておきたいことが出てきて困っています。

というのは、下記の「原子力資料情報室」の発表によれば、原発事故の状況が改善するどころか、いっそう悪くなっているような気がするからです。

記者会見「最新映像資料」
http://www.ustream.tv/channel/cnic-news

この「原子力資料情報室」は、故・高木仁三郎氏が1975年9月に設立したもので、1999年9月に特定非営利活動法人化されました。原子力業界から独立した立場で、調査・研究などを行っています。

また、公開研究会や国際会議、シンポジウム等を開催していますが、今回の福島原発事故を受けて、連日のように収集した情報を元に、記者会見などをおこない、現状を一般市民に知らせると同時に、政府への申し入れをおこなっています。
http://www.cnic.jp/modules/news/article.php?storyid=1040

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昨日20日(日)も、詳細な理由をあげて、政府の、「福島原発から20キロ以内の住民に避難、20~30キロ以内の住民に屋内退避」という指示はあまりにも危機意識が欠けているとして、警告を発すると同時に緊急の対応を要請しました。

この記者会見では,現時点での問題点と今後の見通について後藤政志氏(元東芝の原子炉格納容器設計者)が詳しい説明をしていましたので、時間がある方は是非みていただきたいと思いました。
http://www.ustream.tv/recorded/13447172

[ここで非常に印象的だったのは、原子炉の冷却がうまく作動するようになったとしても、それを2~3年も冷却し続けなければ(コンクリートで覆って)廃炉にできないということでした。つまり、この原子炉および近辺地域はもう使えなくなるという前提で話されているのです。]

この記者会見では視聴者から寄せられた質問にも丁寧に答えていくので、ひじょうに勉強になりますが、NHKなど大手メディアでは、専門家と称する学者が出てきて解説する場合も、全くの短時間で終わりますから、理解できない部分も多く、まして放送記者の解説では、あまり信用できません。

この記者会見では英語による同時通訳もついていて、現状に不安を感じている外国人にも今の事態を理解するのに大きな助けになるような気がしました。(通訳をされている外国人が、通訳に困って、ときどき日本語で質問する場面があって、英語教育を考える上でも極めて興味深く思われました。)
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<註> 上記の「原子力資料情報室」をつくりあげた高木仁三郎氏については、下記を御覧ください。

高木仁三郎の部屋
http://cnic.jp/takagi/
高木仁三郎市民科学基金
http://www.takagifund.org/

高木氏は、時々いかがわしい人物にも受賞させる「ノーベル平和賞」と違って、本当に実績ある人にしか賞を出さないことで有名な「Right Livelihood Award」を、1997年に受賞しています。詳しくは下記を御覧ください。
http://www.rightlivelihood.org/takagi.html

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ところで、前回のブログでは、大学時代の友人から(もとNHK技術者)、次のサイトをぜひ見るように電話があったことをお知らせしましたが、上記の後藤政志氏による記者会見を見比べてみれば、現状に対する理解がいっそう深まるはずです。

ニュースの深層3/17(木)「福島原発事故 広瀬隆 メディア報道のあり方」1/3
http://www.youtube.com/watch?v=veFYCa9nbMY&feature=player_embedded
ニュースの深層3/17(木)「福島原発事故 広瀬隆 メディア報道のあり方」2/3
http://www.youtube.com/watch?v=wlVlmyyNxlw&feature=player_embedded#at=440
ニュースの深層3/17(木)「福島原発事故 広瀬隆 メディア報道のあり方」3/3
http://www.youtube.com/watch?v=rpcuM1v90XE&feature=player_embedded

また、「原子力資料情報室」による番組では、関東以北で心配されている放射能に対して庶民はどのように対処したら良いのか、どのような薬を,どう飲めば良いかについても、専門家(崎山比早子=元放射線医学総合研究所主任研究官、医学博士、現高木学校)と産婦人科女医による詳しい説明と対談があります。
http://www.ustream.tv/recorded/13446685

上記の説明で特に印象的だったのは、「外部被曝」と「内部被曝」の違い、およびNHKなどが「ただちに」影響はないなどと解説していることの欺瞞性と犯罪性をみごとに暴いていることでした。なぜなら「ただちに」影響が出るということは、原爆投下直後の広島や長崎のことであって、いま問題なのは放射性物質の微粒子が水や空気を通じて体内に入り込み、「内部被曝」することの重大性だからです。

なお、Ustream中継や記者会見で使用しているスライド資料は下記のとおりです。
資料:福島第一原発で何が起きているのか(2011/3/19)
http://cnic.jp/files/earthquake20110311/CNICpresentation_20110319.pdf

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もう一つどうしても紹介したいのは、平井憲夫氏の「原発元配管技能士の証言」と題する講演記録です。

これも、氏が実際に原発の配管技能士としてかかわってこられた生々しい体験が述べられているだけでなく、私の故郷につくられた志賀原発などにもふれられていて、読んでいて胸の詰まる思いがしました。

■平井憲夫「原発がどんなものか知ってほしい(全)」
http://www.iam-t.jp/HIRAI/pageall.html#page1

平井氏は、日本全国で原発事故が起こる度に、修理のために引っ張り出されて、結局、被爆のため1997年1月に逝去されました(実は高木仁三郎氏の死も日本原子力事業(NAIG)に勤務していた頃の被爆が遠因だと言われています)。

上記の講演記録は、「私は原発反対運動家ではありません。二十年間、原子力発電所の現場で働いていた者です」という出だしで始まりますが、読んでみて、氏の講演は、このような「血を吐く」ような体験に基づいているだということを、本当に実感しました。

YouTubeなどによる映像資料は、それを見終わるのに時間がかかりますし、パソコンが茶の間ではなく書斎にあったりすると(普通のテレビ番組を見るように)食事をしながら見るわけにはいきません。

しかし添付ファイルやPDF文書は印刷して、寝るときにベッドで横になりながらでも読むことができます。その意味で、平井氏の文書は少し分量がありますが、読み出したら止められない迫力があり、思わず引き込まれて読んでしまいます。

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ところで前回のブログで、「個人で対処するには今回の地震・津波・原発事故はあまりに強大すぎるから国や県レベルで対処すべきだ」という提案をしました。

最近の報道を見ていると、島根県から被災者受け入れの声が上がっていたり、福島県の双葉町が町ぐるみで移住する動きが出てきています。

双葉町の場合は、受け入れ先の「さいたまスーパーアリーナ」が3月一杯で退去しなければならず、埼玉県は20日、同県加須市の閉校になった高校の校舎を活用する方針を発表した。畳などを敷けば約1000人の収容が可能だそうです。

千葉県は20日、東日本大震災の被害が大きかった旭市と香取市に避難者向けの仮設住宅を建設すると発表しました。一方、旭、香取、山武、九十九里の4市町では、県内の国家公務員宿舎と県営住宅への入居手続きも進めています。

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このような動きが、もっと加速されることを願っています。しかし、このようなことを自治体まかせにするのではなく、国が先ず指導・援助すべきでしょう。それにつけても不思議なのは、昨日20日(日)のNHK早朝の番組[名古屋放送局]です。

朝食を食べながら、家族でテレビを見る一番の時間帯に、東北関東大震災について視聴者に知りたい情報を提供するのではなく、なんと名古屋市議選で河村市長を代表者とする「減税日本」が第1党になったことを宣伝するかのような特集番組でした。

しかも河村市長は19日、東日本大震災で大きな被害を受けた宮城、福島、岩手の3県に、2011年度の市民税10%減税を実施しないことで生じた財源から3億円分の物資を緊急支援すると発表しています。

しかし、逆にいえば、河村氏の言うとおりの減税をしていれば、このような援助は不可能だったことを示しています。もし河村氏の公約どおりに進めば、埼玉県や千葉県がおこなっているような援助もできなくなるでしょう。

私はこのような減税は、日本版「ティー・パーティ」であり、結局は「金持ち減税」だけに終わること、そして自治体財政を破局に追い込むことを、以前からブログで繰り返し指摘してきました。

アリゾナ州の惨状とチョムスキー講演、そして日本
http://pub.ne.jp/tacktaka/?entry_id=3065751
アリゾナ州の惨劇(続)―銃乱射事件とオバマ大統領
http://pub.ne.jp/tacktaka/?entry_id=3422879

調べてみたら、何と名古屋市も既に財政赤字になっているのです!!これでは、河村氏が市長をつとめる限り、名古屋市も早晩、アリゾナ州に転落することは間違いないでしょう。

また、このような流れがアメリカで加速しているからこそ、教育・医療・福祉が大幅に削られ、貧困大国アメリカがその加速度をいっそう増すことになっているのです。それが私の前々回のブログでした。

揺れうごく貧困大国アメリカ―高校生までもが立ちあがる
http://pub.ne.jp/tacktaka/?entry_id=3533091

私は、これまで何度も、「英語を学ぶのは日本をアメリカにしないためだ、」という趣旨のことを述べてきましたが、益々その切実さは増しているように思われます(たたしそれは「会話ごっこ」や「英語で授業」では決してありません)。
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福島原発事故(1)ー「チェルノブイリ」を避けるために

現在、3月18日(金)です。既に何度も書いていますが、翻訳の仕事に追われているので、このブログも10日に一度が自分にできる最大の頻度だと観念していたのですが、まわりの情勢が深刻さを増しているので、疲れた体に鞭打って、今日のブログを書き始めています。(医者にも「無理すると、もう一つの血管が詰まりますよ」と言われているのですが、今回も眼をつむって[耳をふさいで]作業を続けます。)
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前回のブログでは、アメリカ、ウィスコンシン州で燃え上がっている「ほぼすべての公務員から団交権を奪い取る法案」に対する闘いを紹介しました。

13日(日)、ウィスコンシン州では18万人以上の人々が州都マディソンの路上に集結しました。この抗議運動は同州で行われたもので史上、最大規模であると伝えられています。

州下院が夜中の不法な強行採決をした直後の、3月10日(金)にも、マディソンでは千人以上の学生・生徒たちが授業をボイコットしました。消防士たちもウォーカー知事に関係する銀行のボイコットを訴える運動まで発展しました。

この3週間にわたる闘いは、州知事が正当な議会手続きを経ないで可決されたものなので、法廷闘争やリコール運動など、新しい闘いへと拡大しつつあります。

同じ動きはミシガン州などアメリカ全土にも広がりつつありますが、今回は日本の震災についてどうしても書いておきたいことがあるので割愛させていただきます。

授業ボイコット 銀行ボイコット 議員更迭要求
組合弾圧法案の州議会強行採決で米ウィスコンシン州の抗議激化
http://www.democracynow.org/2011/3/11/walkouts_bank_boycotts_and_recalls_wisconsin
反組合法にウィスコンシン州知事が署名、18万5000人が抗議デモ
http://www.democracynow.org/2011/3/14/worker_uprising_up_to_185_000

(写真は、州議事堂を埋め尽くす民衆)






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翻訳の手を止めてもブログを書かなくては、という思いにさせられたのは、原発事故をめぐる政府や東京電力の対応が、あまりにも鈍いということでした。「危機感の完全な喪失」と言ってよいくらいです。

いま東北関東の人たちは、巨大地震だけでなく、大津波の被害を受け、それだけでも眼を覆わんばかりの惨事になっているのに、それに追い打ちをかけるように、原発事故が被災者に襲いかかっています。

いま避難生活を強いられている人たちは、水も電気もガスも食料も衣料も寝具も医薬品も、あるいはこれらのどれかが欠乏して、深刻な状況に追い込まれています。親戚を頼って遠方に脱出しようにもガソリンもないという状態です。

それに追い打ちをかけるように原発事故が深刻さを増しています。にも関わらず、政府や東電の対応は歯がゆいばかりです。私は前回のブログを書いたときに、既に次のように書きました。

<しかし、同時に東北地方で地震があり、原子力発電所の危険性など、それについても思うところが多々ありますが、両方について書いているゆとりがないので、今回は米国の問題だけにしぼって(日本の問題に関わらせつつ)所感を述べることにします。>

これを書いた時点で、私には「これはチェルノブイリ原発事故に匹敵するか、それ以上の深刻な事態になる可能性がある」と思ったからでした。

日本は地震大国です。そこに原発を建設すれば、いわゆる「自爆テロリスト」が腹帯に爆弾を巻いている状態と同じになります。地震は、自爆テロリストが腹帯に巻いた爆弾の点火スイッチを押すのと同じ作用をすることになりかねないからです。

私は自分の研究会メンバーやセミナーの学生には「飛んでくるはずもない北朝鮮のミサイルを心配するくらいなら、自分の足元の原発を心配した方がよい。広島・長崎に落とされた原爆に匹敵するか、それ以上の破壊力を持った爆弾を抱えて、毎日を生きているのが日本だから」と言ってきましたが、その予言が当たったのかも知れないという嫌な予感がします。
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<註> 上で「飛んでくるはずもない北朝鮮のミサイル」と書きましたが、その理由については、ここでは詳述するゆとりがありませんので割愛します。

私が高校教師をしていた頃に石川県でも原発建設問題が起こり、反対する地元の人たちを応援するために、何日も抗議運動に駆けつけました。そのときに驚かされたのは、地元のお年寄りたちが独学で物理学(原子力)や法律の勉強を始めていたことでした。これこそ本物の勉強だと思わされました。

しかし、電力会社の執拗な切り崩し工作によって、何年も続いた地元の人たちのエネルギーも遂には枯渇し敗北してしまいました。その頃には私は大学教師になり、地元を去っていました。そして久しぶりに当地を訪れたとき、そこが反対住民を慰撫するための広大な併設施設「憩いの村」になっていて驚かされました。だからこそ、私には福島原発の問題が、なおさら他人事には思えないのです。
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ところで私が政府や東電の対応が余りに危機意識に欠けていると思ったのは、いつも読んでいるDemocracy Now!(3月15日(火))で「より深刻なチェルノブイリになる可能性、原子力技師が語る高まる日本の核危機」と題する次のような記事を読んだからでした。

<日本は、3月11日のマグニチュード9.0の地震と津波によって大きな被害を受けた福島第一原子力発電所の3回目の爆発により、核の大惨事の瀬戸際に立たされています。
 爆発は原発2号機の格納容器を著しく損傷し、周辺の放射能濃度は年間被曝線量限度の8倍に上昇しました。
 原発作業員らは「圧力を下げるために格納容器の弁を手動で開けていましたが、放射線量が高くなったことによって、そうした作業の多くが中断されたのではないかと考えられます」と、原子力技師のアーニー・ガンダーセン氏は言います。>

“This Could Become Chernobyl on Steroids”: Nuclear Engineer Arnie Gundersen on Japan’s Growing Nuclear Crisis
http://www.democracynow.org/2011/3/15/this_could_become_chernobyl_on_steroids

このアーニー・ガンダーセン氏は、かつて巨大原子力産業the Westinghouseの執行役員でしたが、その蓄蔵している放射性物質の危険性について内部告発をして会社を去った人物です。その彼が、福島原発に対する東京電力の対応を見て、3月15日(火)の時点で、これは既に手遅れになっている可能性があると言っているのです。

この記事で、もっと驚いたのは、運転開始から38年になる同原発は、過去に一連の放射性トリチウム漏れを起こしており、渦中の福島第一原発とほぼ同じつくりであり製造された時期もほとんど同じだということでした。

ガンダーセン氏は、会社を辞めた後、アメリカ国内にある原発について、その危険性を告発する運動を始めました。それが具体的なかたちで実を結んだのがバーモント州でした。バーモント州議員らは2012年に現在の許可の期限が切れた後、ヤンキー原発を廃炉にすることを可決していました。その裏で大きな力を発揮したのが、ガンダーセン氏でした。

このことを見るにつけても、内部告発者の存在がいかに大切かがよく分かります。水俣病の場合も、内部告発をした医者・細川一(ほそかわ・はじめ)氏も結局、会社を辞めざるを得ませんでした。ウィキリークスのような組織がもっと早くに存在し、東電の原発についての内部告発が寄せられていれば、現在の事態は避けられていたかも知れません。
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<註> 米原子力規制委員会は1985年の報告書で、米国の100を超す原子力発電所のいずれかが20年の間に深刻な炉心事故を起こす可能性は50%にのぼると認めていたにもかかわらず、オバマ政権も日本政府も原発推進政策を全く止めようとしませんでした。

「原子炉炉心完全溶融の深刻な危機」: 日本の原発危機、最新情報
http://www.democracynow.org/2011/3/17/serious_danger_of_a_full_core

損傷の福島原発と同方式の米原発23基の一つ 
ヤンキー原発廃炉へ向けて闘うバーモント州知事
http://www.democracynow.org/2011/3/15/vermont_gov_fights_to_close_vermont

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さらに私が危機意識を強めたのは、この3月15日(火)の時点で、ガンダーセン氏はさらに「私が日本にいたら、子供たちを原子炉から出来る限り離すようにします。子供たちの方が汚染されやすい。私なら少なくとも50キロは離れます」と述べていることでした。

「子供たちを原子炉から離せ」
放射能漏れが広がる中、原発周辺の避難区域拡大を日本に要請」
"Get the Children Away from the Reactors":
Japan Urged to Expand Evacuation Area Around Nuclear Plants as Leaking Radiation Spreads
http://www.democracynow.org/2011/3/15/get_the_children_away_from_the

ところが日本政府は、15日の時点で、「福島原発から20キロ以内の住民に避難、20~30キロ以内の住民に屋内退避」を指示するのみでした。しかも、このような指示すら、自治体には正式に伝えられることはなく、テレビで知った自治体の首長が、慌てて緊急の対応に追われる始末でした。

ところがテレビを見ていると、もっと奇妙なことに気づきます。それは福島原発の1~6号機が現在どのような状態にあり、どう対応しているかを記者会見で説明すべきなのは、自己の当事者である東京電力であるはずなのに、状況を説明しているのは政府であったり、各テレビ局の記者やそこに招かれた学者だけだということです。

東京電力は事故の対応を責任をもってやるどころか、15日になって「750人以上の従業員を退避させ、残った50人の作業員だけで原始炉の温度を下げる努力をする」という体たらくでした。800人で不可能だったことが、どうして50人で可能なのでしょうか。

東電が自己責任を放棄したこの時点で、私は「チェルノブイリの事態が近づいた」と思わざるを得ませんでした。いま東京電力が記者会見で説明しているのは「計画停電」のみです。しかも、その無責任さを問うメディアが皆無に近いことは驚くばかりです。

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<註> 現場に残された50人の作業員は東京電力の下請けだった可能性があります。だとすれば、事故を起こした当事者は何一つ責任を負っていないことになります。
 また住民に放射線量を計っている人間が防護マスクをしているのに、住民自身は全く無防備の服装であることも、見ていて実に不快感を覚えさせる映像でした。
 しかも、このような映像を初めて見たのは、日本のメディアを通じてではなく、DemocracyNow!であったことも私の不快感を倍増させました。
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さらに、私の危機意識を高めたのがアメリカからの次の報道でした。

<【ワシントン時事(2011/03/17)】ルース駐日米大使は16日、声明を出し、福島第1原発の半径80キロ圏内に在住する米国民に対し、米原子力規制委員会(NRC)の指針に基づく「予防的措置」として避難を勧告、避難できない場合は屋内に退避するよう呼び掛けた。また、国防総省も、同圏内への米軍の立ち入りを禁止した。
 一方、国務省はこれを受け、渡航延期勧告を発令し、日本国内の米国人にも出国を検討するよう強く促した。また、東京の米大使館、名古屋の総領事館と横浜市内の日本語訓練施設に所属する職員の家族約600人に自主的な国外退避を認めると発表した。>

ガンダーセン氏は「私なら少なくとも50キロは離れます」と述べているのに対して、原発政策の旗振り役だったオバマ政権が、アメリカ政府は原子力規制委員会(NRC)の指針に従って、「屋内退避」どころか「避難勧告」を80キロまで拡大しているのです。

もっと驚いたことには、福島近辺ではなく、「名古屋の総領事館と横浜市内の日本語訓練施設に所属する職員の家族約600人に自主的な国外退避を認める」指示をしているのです。東京の米大使館に呼びかけるだけでなく、名古屋にまで国外退避を呼びかけているのです。いかに事態が深刻化を示す好例ではないでしょうか。

この私の危機意識をさらに強めたのが一本の電話でした。というのは私のところで修士論文を書いた学生が電話をかけてきて、「先生、一緒に内モンゴルを行こう」と言うのです。彼は奥さんも院生なので、もうしばらく日本にいる予定だったが、この情勢では危険だから内モンゴルに帰ろうかと思うが一緒にどうか、と言うのでした。

このように留学生が思っているということは、外国人が日本を見る目は私たち全く違っていることを示しています。そこで調べてみると外国の多くは自国民を東北・関東どころか日本そのものから退去させようとしていることが分かりました。詳しい報道は下記を御覧ください。
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外国人の日本脱出続く
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20110318-OYT1T00358.htm

 米政府は17日、米国民を退避させるため、最初のチャーター機を飛ばし、日本に滞在していた自国民約100人を台湾に退避させた。また、17日までに東京、横浜、名古屋で働く外交官らの家族など約600人についても、日本からの退避を許可した。米国防総省は17日、日本の本州に勤務する米軍人の家族2万人を対象に、自主的な国外退去を支援することを決めた。

 英国やフランス、ベルギーもチャーター便や軍用機で自国民を香港などに移すことにしている。英大使館はウェブサイト上で、「20日以降はチャーター便を運航しない」としており、自国民に対し、早めの出国を促している。インターファクス通信によると、ロシア非常事態省は18日、日本に滞在するロシア国民を退避させるため、輸送機を派遣する。スペインも自国民を退避させるための航空便を手配するとしている。
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このような外国政府の動きに対して日本政府の対応は本当に歯がゆいばかりです。政府は東北一円から住民を移住させるための抜本的な対策を立てる必要があるのではないでしょうか。

私が指導した院生の多くは市営住宅に入っています。留学生が帰国するとなれば空きが出る公営住宅も少なくないでしょう。また、私が住んでいる地区を、犬を連れながら歩いていても、空き家が目立ちます。

このような空き室や空き家を国や自治体が借り受けて、東北からの移住者を受け容れることも、緊急に考えるべきではないでしょうか。岐阜県の多治見市では被災者の病人とその家族のために市民病院が空き病室を提供すると発表しています。

国や自治体は一刻も早くこのような対策を立てるべきでしょう。そうすれば「水も電気も食料もない、住むところもない、・・・・」などと言っているひとを、弱小自治体まかせにしなくても済みます。

津波が来ると予想されるときは、あらかじめ住民を学校や公民館に避難させます。もし津波がそれほどひどくなかったとしても、そのことで避難指示をした自治体が「無駄なことをさせた」と住民から非難されることはありません。住民は「この程度の津波でよかった」と喜んだり安心したりするだけです。

今の原発事故についても、上記の津波対策と同じ考え方で臨むべきではないでしょうか。さもなければ、最悪の場合、日本全体の生産活動が壊滅状態になり、日本人の多くが喉頭癌などの病気で苦しむことになりかねないからです。

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<註1> Democracy Now!を視聴していたら、Amy Goodmanは「原爆を初めて投下された国である日本が、なぜこのような原発を容認してきたのか」と驚いています。しかし、私は、もう一つの質問が外国人から出てくるように思います。それは「あれほどノーベル物理学賞やノーベル化学賞の受賞者を出している日本が何故?!」という疑問です。

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<註2> 民間機関「憂慮する科学者同盟」は次のような見解を発表しているそうです。
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20110318-OYT1T00344.htm?from=main4
(2011年3月18日14時18分 読売新聞)

民間機関「憂慮する科学者同盟」は17日、記者会見を開き、核専門家のエドウィン・ライマン博士が「日本は絶体絶命の試みを続けているが、もし失敗すれば、もう手だては
ない」と指摘、放射性物質が大量に放出されて「100年以上にわたって立ち入れなくなる地域が出るだろう」との悲観的な見方を示した。
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<註3>
ここまで書いてきたら、大学時代の友人から(もとNHK技術者)、次のサイトをぜひ見るように電話がありました。視聴してみたら、現在の事態が非常に分かりやすく、かつ極めて鋭く論じられていました。皆さんも是非どうぞ。

ニュースの深層3/17(木)「福島原発事故 広瀬隆 メディア報道のあり方」1/3
http://www.youtube.com/watch?v=veFYCa9nbMY&feature=player_embedded
ニュースの深層3/17(木)「福島原発事故 広瀬隆 メディア報道のあり方」2/3
http://www.youtube.com/watch?v=wlVlmyyNxlw&feature=player_embedded#at=440
ニュースの深層3/17(木)「福島原発事故 広瀬隆 メディア報道のあり方」3/3
http://www.youtube.com/watch?v=rpcuM1v90XE&feature=player_embedded

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揺れうごく貧困大国アメリカ―高校生までもが立ちあがる

現在、3月11日(金)です。翻訳が思うように進んでいないので、ブログで書きたいことがあっても禁欲をしてきましたが、今の米国ウィスコンシン州の状況を見ていると、どうしても書かずにはいられなくなって、パソコンに向かっています。

しかし、同時に東北地方で地震があり、原子力発電所の危険性など、それについても思うところが多々ありますが、両方について書いているゆとりがないので、今回は米国の問題だけにしぼって(日本の問題に関わらせつつ)所感を述べることにします。

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さて、そのウィスコンシン州ですが、昨日10日に州議会は公務員の団体交渉権を制限する法案を賛成53,反対42で可決しました。この法案については既に下記のブログで紹介しましたが、この3週間、エジプト民衆蜂起にも匹敵する運動が、マディソン市の州議会議事堂を埋め尽くし、市民が籠城を続けるかたちで展開されてきました。

エジプトの民衆蜂起から何を学ぶか(4)
―ウィスコンシン州で爆発したアメリカ民衆の闘い
http://pub.ne.jp/tacktaka/?entry_id=3514053

一般の大手メディアでは、海外のニュースとしてリビア情勢ばかりが取りあげられ、上記のウィスコンシン州の闘いが、全米に拡大していることは、ほとんど紹介されていません。

逆にいえば、社会福祉や教育の切り捨て、公務員の首切りや団体交渉権の制限(剥奪)などの攻撃が、シガン州・アイダホ州・インディアナ州・オハイオ州・アイオワ州・フロリダ州・テネシー州など、全米に広がっていることをも意味します。

もっと紹介されていないことは、この「公務員の団体交渉権を制限または剥奪する」口実が州の財政難だったのですが、実はウィスコンシン州の財政はウォーカー知事が提案した時点では黒字だったことです。

彼が予算案で金持ち減税や企業減税を打ち出したから、その時点で赤字になる見込みが出てきただけでした。何度も言いますが、彼が知事に当選した時点では、州財政は黒字だったのです。

ウォーカー知事がFOXテレビなどで繰り返し言ってきたことは、「公務員は民間企業の労働者よりも恵まれた生活をしているのに、組合を盾にして既得権を守ることだけを主張して,州の財政立て直しに協力する気が全くない」という攻撃でした。
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<註> ウォーカー知事は、当然のことながら、金持ち減税や企業減税には全くふれません。それどころか、お仲間の州上院議員が、国民の税金から300000ドル以上もの補助金をもらって農場経営にかかわっているにも関わらず、それは非難せず、公務員を「税金泥棒」だと非難しているのです。
http://www.democracynow.org/2011/3/9/headlines

「ウィスコンシンの誤報」 
労働者の年金は納税者が負担という知事の偽りの主張を鵜呑みにするメディア
http://www.democracynow.org/2011/3/3/really_bad_reporting_in_wisconsin_media

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「公務員の賃金は高い」といった言い方で公務員を攻撃するやり方は既に日本でお馴染みのものですが、日本の大手メディアはもちろんのこと、組合ですら、このような攻撃にきちんと反論しているのを見たことがありません。

しかし、米国のメディア監視団体FAIRは次のように反論しています。

「公務員と同じ学歴や同じ規模の民間企業で働く労働者の賃金と比較すれば、決して公務員の賃金は恵まれているわけではない」
http://www.fair.org/blog/2011/02/28/what-union-voices-mean-to-the-wisconsin-debate/

そう言われてみれば、確かに民間企業から「天下り」して大学教師になったひとが、「今の大学での給料は、あまりに低くて、かつての同僚には恥ずかしくて言えない」とこぼしているのを聞いて驚いたことがあります。

そのひとは私立大学の教師になり、国立大学と比べれば、はるかに高い給料をもらっているのですが、それにもかかわらず上記のような言葉が飛び出してくるのですから、民間企業にいたときの給料は並みのものでなかったことだけは想像できます。しかし「公務員の賃金は高い」と攻撃されるのです。

ちなみに米国の教員賃金が「高い」どころか、いかに低いかは、その平均年収が3万5千ドル(約280万円)であることを見ても明らかでしょう。だから教師がもう一つの仕事を持たないと、まともな生活ができないのも当然なのです。これで教育が良くなるはずがありません。

ところが他方で、アメリカの財政破綻は46州を合計すると$126 billionだそうです。アフガニスタンでオバマ政権が、毎日のように民間人を殺しながら浪費している軍事費は、毎週 $2 billionですから、この戦争をやめさえすれば、1年強で赤字は解消されてしまいます。
http://www.democracynow.org/2011/3/8/womens_rights_are_workers_rights_kavita
(アフガン戦争は10年以上も続けられている戦争です!)

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ところで、米国でも日本でも主たる攻撃の対象になっているのは教職員組合であることは全く同じです。どちらの国も民間企業には組合がほとんど存在していませんし、存在しているものも御用組合と化しているのが両国の現状です。

つまり米国でも日本でも、大企業と為政者による長い弾圧と工作の結果、まともに組合として残っているのは [大企業の組合と]公務員の組合だけになっています(これはハワード・ジンの名著『民衆のアメリカ史』に詳しく述べられています)。

そこで今回のウィスコンシン州における攻撃となったのですが、では、なぜ教職員組合が主たる攻撃対象になったのでしょうか。それは米国では今、公立学校をつぶしてチャータースクールにする動きが強まっていますが、それに最も強く抵抗しているのが教職員組合だからです。同時にそれは「民主党の地盤つぶし」にもなります。

そして公立学校をつぶす口実として使われるのが「共通学力テスト」です。そのテストで良い成績を上げないからという理由で、点数の低い学校をつぶしてチャータースクールに変え、それを政府の補助金付きで民間企業に引き渡します。それに最も強く抵抗しているのが教職員組合です。

日本でも大阪府知事が同じような動きをして、「共通学力テスト」と教職員の給料を連動させようとしているようですが、それを更に極端に押し進めようというのが、米国のチャータースクールでした。

ニューオーリンズがハリケーン「カトリーナ」で壊滅状態になったとき、市の再建を口実に公立学校の全てを解体してチャータースクールにしたのですが、同時に組合に結集していた教員も全て解雇されました。今回は「州財政の赤字」を口実に同じことをしようとしたのがウォーカー知事だと見てよいでしょう。

カナダの著名な女性評論家ナオミ・クラインは、「台風や戦争などの惨事を利用して、ドサクサ紛れに大企業の願うような経済体制をつくりあげていく政策」として、これを「ショック・ドクトリン」と名づけています。

ノーベル経済学賞を受賞したPaul Krugman教授(プリンストン大学)は最近、New York Timesのコラムで、ナオミ・クラインの古典的名著『ショック・ドクトリン:惨事活用型資本主義の台頭』(The Shock Doctrine: The Rise of Disaster Capitalism)を引用しながら、「このショック・ドクトリンが全面展開されているのがウィスコンシン州だ」と書いて話題になりました。

ナオミ・クラインが語る 反組合法案と米国式ショック・ドクトリン
「これは民主主義に対する正面攻撃 企業クーデターのようなもの」
http://democracynow.jp/dailynews/11/03/09/1

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ウォーカー知事が裏で財界からお金をもらいながら、財界の指導のもとで今回の法案を提出したことが暴露されてから、ウォーカー氏の支持率は一挙に急落し、今は30%台にまで落ち込んでいます。

右翼の億万長者コーク兄弟 ウィスコンシン州知事選と反組合推進に資金を提供
http://democracynow.jp/dailynews/11/02/24/5

ウォーカー知事は、分裂工作のため、今回の公務員攻撃(団体交渉権の制限・剥奪)をするにあたって、警官と消防士を除外しました。しかし、警官と消防士は「彼らへの攻撃は我々に対する攻撃でもある」として、デモや集会に積極的に参加し、州議会議事堂の籠城にも参加しました。

しかも時間が経てば経つほど、抗議に参加する人数は増えるばかりですし、ウォーカー知事の法案に反対する世論も、今では50%をはるかに超えるようになりました。だからこそ、世論の風向きが圧倒的に変わらないうちに、ということで3月10日(木)の上院における不意打ち採決となったのでしょう。

それまでは、民主党議員の不参加で定足数に達せず、上院の採決ができませんでした。そこで予算案と公務員の団体交渉権を切り離して、後者だけを独立の法案として提出して採決に持ち込んだのでした。しかし、真夜中の採決で、「独立の法案」なるものも、文書としては民主党議員の誰も見たことのないものだったそうです。

ウィスコンシン州で怒りのデモ 
上院共和党の不意打ち投票で公務員団体交渉権剥奪法案が可決
http://www.democracynow.org/2011/3/10/outrage_in_wisconsin_thousands_flood_capitol

さすがにこの暴挙には市民の怒りが高まり、高校生からも「授業を放棄して抗議行動に参加する」との声が、映画監督マイケル・ムーアのところにまで届いているというから驚きです。(ムーアは3月5日にウィスコンシンに駆けつけて応援演説をしています。)
http://www.democracynow.org/2011/3/10/this_is_a_class_war_michael

マイケル・ムーア、ウィスコンシン州労働デモで演説「米国は破産なんてしてない」
http://www.democracynow.org/2011/3/7/michael_moore_joins_wisconsin_labor_protests

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この高校生の授業放棄で思い出すのが、アイダホ州の高校生による授業ボイコットです。
アイダホ州でも教師の解雇と団交権縮小の案が共和党の知事から出されていましたが、この計画に抗議して高校生数百人が授業をボイコットしました。

アイダホ州の高校生たち 教師の解雇と団体交渉権制限に反対して授業ボイコット
Idaho Students Stage Walkout to Oppose Teacher Layoffs, Collective Bargaining Curbs
http://www.democracynow.org/2011/3/2/idaho_students_stage_walk_out_to


今度の教員攻撃は、単に教員の賃金カットや大量の人員削減だけでなく、「共通学力テスト」の点数が教員給料(さらには、首切りやチャータースクールへ)へと連動する仕組み(いわゆる「能力給」Merit Pay)になっていることが大きな問題になっています。

また教員の大量解雇は同時に「クラスサイズの拡大」に直結します。30人以下の学級が当然だったものが、今度からは60人学級になると言われています。

拙著『英語教育が亡びるとき』(pp.119-122)では、米国における「学級規模と教育効果」の研究を紹介したばかりなのに、これでは荒廃している米国の教育は、ますます暗いものになるでしょう。

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それはともかくとして、アイダホ州の高校生ジョニー・サンダーズは、Democracy Now!の司会者Amy Goodmanに対して、授業ボイコットの理由を次のように語っています。

「算数や国語(英語)の点数だけで生徒の進歩が計られるようになれば、教師は創造的なカリキュラムにもとづいて教育することを放棄せざるを得なくなる。」

When you have standardized testing, especially math tests, in particular, and tests like that that are the only metric of how student progress is measured, the teacher can give up on their creative curriculum.

「まして、それが能力給merit payとして給料に跳ね返るようになれば、点数をあげるための暗記主義的ドリル一辺倒になり "drill and kill"、生徒と教育を殺すことになる。自分は教師を責めるわけではないが、そのことが教師に不正行為を働かせる誘因にもなる。」

And what merit pay does is it incentivizes teachers to "drill and kill" the test answers, or sometimes they will---it literally gives them an incentive just to increase test scores, and so they can---I’m not claiming any teacher of being dishonest, but it does incentivize cheating.

長くなるので、以下は省略しますが、とても高校生の発言とは思えないような内容です。大阪府の橋下知事に、この高校生の爪の垢でも飲ませてやりたいと思うのは、たぶん私だけではないでしょう。

ところが、彼はこのような意見を見透かしたかのように、次のように述べています。

「ぼくたちがこのような言動をすると、教師に洗脳・扇動されて妄動しているかのように言う政治家がいる。言語道断だ。これはあくまで自分たちの意志であり、法案をちゃんと読んだ上で、その内容に反対しているんだ。」

The general attitude of students today is that we’re kind of caught in the crosshairs, so to speak, that we are being blamed by politicking senators that we are the ones that are being abused by our teachers or something like that. And we just wanted to show that it was our free will, and we chose to oppose the bill---it wasn’t the evil teachers that were brainwashing us---that we had read the bill, and we oppose what it said.

これを読んだとき、私は思わず自分が高校教師をしていたときのことを思い出しました。というのは、かつて私が勤務していた進学校で、生徒たちが「ここは受験予備校ではないのだから、受験問題を解くだけの授業ではなく、もっとまともな教育をしろ」というビラを各教室に貼るという事件が起きたからです。

そのグループの一人が、たまたま私が顧問をつとめる部員だったことで、あたかも私が扇動したかのように同僚から手ひどく非難され、校長訓戒という処分を受けるはめになったのでした。

昔も今も、同じことを言う人間がいる者だと苦笑せざるを得ないのですが、もっと深刻なのは、今や大学でさえ、TOEICを全員に受験させたり、その受験対策授業をセールスポイントにする雰囲気が強まり、それに反対すると有形無形の圧力を受けるようになってきているということです。

また、そのことに嫌悪感を示せば、「来年からは来ていただかなくてけっこうです」と言われかねず、涙をのんでTOEIC対策の授業を、砂を噛むような思いでやっている、という非常勤講師の声も聞こえてきます。

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いま翻訳しているで本で、ちょうど「ヘイマーケット事件」(イリノイ州シカゴ市)で無実のまま死刑に処せられた人物の、裁判における陳述を訳し終わったばかりのときに、ウィスコンシン州議会の強行採決のニュースが飛び込んできたので、思わずブログの方にエネルギーを拡散することになってしまいました。

この「ヘイマーケット事件」は、1886年5月1日に「8時間労働制」を求めるストライキとデモがおこなわれ、それは双方に死傷者を出すような弾圧事件となりました。しかし、全く無実の罪で絞首刑になった4人の遺志は、「メーデー」として現代にまで受け継がれていますが、今またウィスコンシン州で民衆蜂起が起きました。

いまウィスコンシン州マディソンを震源地とした勤労者の運動は、エジプトのカイロで起きた運動「世界を揺るがした18日間」が中東に大きなうねりを引き起こしたのと同じように、「マディソンを揺るがした3週間」として全米に大きなうねりを引き起こしていくのではないかという予感がしています。
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<註> ヘイマーケット事件の引き金となった5月1日は、今では「メーデー」として全世界的に祝われていますが、当のアメリカでは、9月の第1月曜日を「レイバーデー」としています。これも、「5月1日」では「寝た子を起こしかねない」という、為政者の「深い配慮」の現れでしょう。
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エジプトの民衆蜂起から何を学ぶか(5)―「頭髪・服装指導」と「英語でディベート」への疑問

今日(2月27日)は、前々回のブログ「英語教育の目的と方法を問い直す」で書き残したことを書くつもりでしたが、その前段が長くなって、なかなか目的地に到達できません。

それで少しイライラしています。翻訳が予定のスケジュール通りに進まないので、なおさらです。しかし頑張って先を急ぐことにします。

さて、その前々回のブログで、エジプトの民衆蜂起で大きな役割を演じた若い女性アスマ・マフフーズの映像と訴えを紹介しました。そして、「彼女の訴えを英語に翻訳したものがあるから、それを読解教材や音声教材として利用したらどうか」という提案もしました。

ところが、しばらくぶりに Democracy Now Japan! をアクセスしてみたら、私が前回に紹介した若い女性アスマ・マフフーズだけでなく、エジプトの民衆蜂起で大きな役割を演じた、もうひとりの若者ワエル・ゴニムの映像と訴えも、「動画エクスプレス」として、字幕付きでアップされていることが分かりました。

エジプト蜂起の火付け役アスマ・マフフーズのYouTubeビデオ
http://democracynow.jp/video/20110208-2
エジプト蜂起のフェイスブック呼びかけ人、ワエル・ゴニム 「私は英雄ではない」
http://democracynow.jp/video/20110208-3

ワエル・ゴニムについて前々回のブログで少し書きましたが、彼はエジプト当局に密かに拘束されていました。彼は、12日間の牢獄生活の後、釈放されました。そこでローカルテレビ番組が彼にインタビューを申し込み、その結果、上記の訴えになったのでした。

ですから、これは、民衆への決起を直接に訴えるものではなかったのですが、若き女性マフフーズの訴えを全土をに配信する道具=フェイスブックの運営・管理者だったとして、エジプトではあっという間に英雄になってしまいました。

しかし彼は「俺は英雄ではない。皆が広場や街頭で血を流しているときに俺は牢屋で寝ていただけだ。本当の英雄は体を張って闘った(或いは死んでいった)若者や民衆だ。俺を英雄扱いしないでくれ」と涙ながらに訴えたのでした。

これがアスマ・マフフーズの訴えと重なって感動を呼び、1月25日(火)の大集会を成功につながったのでした。

アラビア語による彼の訴えも、上記の「字幕版」を視聴すれば、字幕がありますから、訴えていることの内容も分かります。また翻訳された英文も付いていますから、英語学習の教材としても最適です。

前回のブログでアスマ・マフフーズさんを紹介したときにも述べたことですが、「単文の羅列だけでこれほど人を動かす英語が話せる(書ける)のだ」ということを生徒・学生に教えるのに、これは最適の教材ではないかと思うからです。

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ところで、前回のブログでは次のようなことも書きました。

<インターネットの独立メディアDemocracy Now! を毎日のように視聴・購読しながら、今度の「エジプトの民衆蜂起」を追いかけてきて思ったことは、英語を「読む力」「聴く力」の大切さ・重要さです。>

上記の字幕付きの「動画エクスプレス」を見ると、ますます英語を「読む力」「聴く力」の大切さ・重要さを確信させられます。

というのは、この字幕付き動画を配信しているDemocracy Now Japan! の活躍なしには、英語が読めない一般の日本人は、米国の独立メディアDemocracy Now! による目の覚めるような報道に接することは不可能だからです。

Democracy Now Japan! は、日本の大手メディアがますます「権力の召使い」「財界の従僕」に成り下がりつつある現状に我慢ができず、せめて米国の独立メディアDemocracy Now! の報道を翻訳して日本の人たちに伝えようではないか、との趣旨で起ち上げられたものでした。

その翻訳にたずさわっている人たちの多くが女性ですから、「女性パワー」のすごさを改めて認識させられます。

それはともかくとして、ここで第1に必要なのは「読む力」であって、「話す力」ではありません。彼女たちの英語を「読む力」がDemocracy Now Japan! を支え、それが日本のメディア界に新風を吹き込んでいます。

つまり日本で英語が一般庶民のために最も生きたかたちで役立っているのは、「読む力」であって「話す力」ではないということを、いちばん明瞭に示してくれているのが、Democracy Now Japan! の仕事ではないのか、と私は言いたいのです。

そして最近では、それが、Democracy Now Japan! 「動画エクスプレス」というかたちで更に機動性を増しています。

エジプトの民衆蜂起をきっかけに、Democracy Now Japan! に新しい番組「動画エクスプレス」がスタートしました。そのトップページには下記のように書かれていました。

<いますぐ見たい動画を超特急でアップする「動画エクスプレス」のページをつくりました。まずはエジプトの民衆蜂起から。若干ラフなのはお赦しください。>

私が上記で紹介した「エジプト蜂起の火付け役アスマ・マフフーズのYouTubeビデオ」「エジプト蜂起のフェイスブック呼びかけ人ワエル・ゴニム「私は英雄ではない」は、そのトップバッターだったということになります。
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<註> Democracy Now Japan! 「動画エクスプレス」の3番目に載っているのは、数々の賞を受賞している著名な中東ジャーナリスト=ロバート・フィスクが、カイロの現場から歴史的なエジプトの民衆蜂起を語ったものです。これを見ると、オバマ政権の偽善がいかなるものかがよく分かっていただけると思います。

ロバート・フィスク 「差しのべた手を握りこぶしに変えたオバマ」
http://democracynow.jp/video/20110203-5

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ところが、昨今の英語教育は、英語が話せないと全く英語学習の価値がないかのような風潮に満ちあふれています。しかし、拙著『英語教育原論』でも書いたことですが、英語教師ですら、教壇を離れれば、ほとんど英語を話す機会はありません。

英語教師は、教室で「英語は役に立つから勉強せよ」と生徒・学生にお説教し、文科省も新高等学校学習指導要領で「英語で授業」と言い始めていますが、英語の「会話力」を日常生活で役立てている教員は(私の周りを見ている限り)ほとんどいないのです。

そして使う機会のない外国語は確実に消えて行きます。しかし、読みたいものさえあれば「読む力」は消えて行きません。それどころか確実に向上していきます。それを私は、Democracy Now!で日々、体験しています。
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<註> 私は世界で大事件が起きると、「これについてチョムスキーはどう言っているのだろうか」ということが気になって、いつもインターネットで「Chomsky.Info」やZNet「Noam Chomsky」を覗くことにしています。これを読むと、人間や世界を見る眼がどんどん広く深くなっていく自分を感じて、とても充実感を感じますし、「読む力」が確実に伸びていくのを実感できます。

http://chomskydotinfo.blogspot.com/ 「Chomsky.Info」
http://www.zcommunications.org/zspace/noamchomsky ZNet「Noam Chomsky」

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では英語教師に「読む力」があるかといえば、必ずしもそうではないように思います。というよりも、「読む力」をつけている暇がないといった方がよいかも知れません。

後述するように、特に「困難校」にいる教師は、生活指導に追われて、ほとんど自己研修どころか教材研究をする時間もありません。

では「進学校」にいる教師はどうでしょうか。生徒と一緒に、大学受験問題集(あるいは受験参考書)に取り組んでいれば「読む力」は向上するのでしょうか。

少なくとも私は、母校の進学校で(周りの雰囲気に押されて)そんな教育=学習を10年近く続けたのですが、英語を学び・教える喜びを感じたことはありませんでしたし、英語力が伸びたという実感を持つことができませんでした。

私が英語を教える喜びだけでなく自分の英語力が伸びたと感じたのは、「統一進度・統一テスト」の網の目をかいくぐって、自主教材・投げ込み教材を授業に取り入れたときや、定時制高校に異動して「統一進度・統一テスト」の縛りから解放されたときでした。


<註> 私が大学に異動するまでの事情は「できない英語教師の歩み」『英語にとって教師とは何か』(第3部、あすなろ社/三友社出版)に書きました。いわゆる「TMメソッド」「記号研方式」なるものが誕生したのも、このような悪戦苦闘のなかでのことでした。

こうして少しだけ英語が読解聴解ができるようになってから大学に異動しました。

ですから私の場合、英語ができるから英語教師になったのではなく、生徒・学生に言い続けてきたのは、「英語ができないから英語教師をしている」「英語ができるようになったら英語教師をやめる」でした。しかし、結局は定年になるまで「英語教師」をやめることができず、「ダメ教師」のまま教師生活を終えてしまいました。

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今の教育現場は、特にいわゆる「困難校」では、頭髪・服装指導などの生活指導に追われ、教科指導にかける時間、教材研究にかける時間、自主研修に振り向ける時間がほとんどないのが実情です。

教育現場がこのような状況であるにもかかわらず、各県の教育委員会では、新高等学校学習指導要領=「英語で授業」を振りかざし、[私の見聞きする限り]、それを現場に押しつけているところが少なくないのです。

もっと驚いたのは、教育委員会の強制研修で、「英語で授業」の延長として「英語でディベート」を、英語教員に押しつけているところがあることです。私が講演で呼ばれた県でも、夏の官製研修会は「英語でディベート」一色で、参加を義務づけられた教師は困り切っていました。

「論争したくないテーマで論争させられ、守りたくない立場を無理やりに守る議論をさせられることほど苦痛なことはない」というのが、その教師の言い分でした。ところが、最近は授業でも、「英語でディベート」をさせるのが、英語授業の最善最高の形態であるかのような風潮も出始めています。

しかし、授業の最初10分間を、「マニキュア・付け睫毛」を取らせるなどの「服装検査」をしてからでないと授業を始めてはならない、ということが授業順序として強制されている学校に、「英語で授業」や「英語でディベート」を押しつけることが、果たして英語教育として、どれだけの意味をもつのでしょうか。どれだけの教育効果があるのでしょうか。

以上の話は、ある県の新採教師が「自分は職業として教師を選んだが、選択を間違ったのではないか」と思い悩んで、遠路はるばる私の家まで訪ねて来たときに聞いた話です。これと同じことは全国的にあるようで、最近で私の研究会に入会してきた新入会員の「入会申し込み書」の「悩み・疑問」にも、次のように書かれていました。

<生徒指導担当の教師が行き過ぎとも思える眉指導・髪形指導を行うため、教師間で基準が統一されていない。教師間では話し合いというより言い争いになり、雰囲気が悪くなる。また、当然生徒は教師集団への信用を失う。眉の一本一本を覗きこんでまでしなればならない頭髪・服装指導の持つ意味を 私自身生徒に語ることができない。>

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上記のような服装指導(眉指導・髪形指導)は、教師と生徒との関係を悪くするだけで、得られる教育効果はほとんどないのではないでしょうか。

まして授業の最初10分間を眉指導・髪形指導に費やすことは、まず生徒と教師の関係を気まずくさせた上で授業を始めるのですから、その後の教科指導がうまく行くはずがありません。

しかも、そのようなことが、教育的な観点で、納得いくまで「話し合われる」のではなく、感情的な「言い争い」になるような環境で、「英語で授業」「英語でディベート」をするよう要求されたのでは、「私は職業の選択を間違えたのではないか」と悩むのは当然のことでしょう。

[ 既に述べたことですが、このような教育的論争が率直におこなえない環境が珍しくないなかで、「英語で授業」や「英語でディベート」だけが強く推奨されるというのも,私には全く理解し難いことです。]

また生徒が荒れていて(そのような学校は、同時に眉指導・髪形指導が非常に厳しいのが普通ですが)、授業以外の時間を学校の巡回に当てざるを得ず、教師に休む暇も教材研究する暇もない学校を、私は幾つも知っています。

しかし校内の巡回に費やす時間を教材研究や授業の工夫に回し、生徒が目を輝かす授業をおこなえば、授業の荒れや生徒の生活の荒れは確実に減っていきます。私の定時制高校における経験からも、それは、はっきり断言できます。

ですから、生徒と教師の関係を破壊し、授業崩壊を招きかねない服装指導は、一刻も早くやめるべきではないでしょうか。さもないと、生徒と教師の関係を悪化させるだけでなく、教師に対する刺殺事件すら起きる可能性すらあります。


<註> 生徒に対する「生活指導」「服装指導」をどう考えどう指導するかについては拙著『英語にとって教師とは何か』の第2部「つまずく教師とともに」で詳しく論じました。ここでは、「女教師の服装(ファッション)」や「かつて起きた教師に対する刺殺事件」についても論じてあります。興味のある方は参照ください。

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拙著『英語教育が亡びるとき』でも述べたことですが、いま学校では校長の「指導力」というので、職員会議そのものが形骸化していて、教育をめぐる率直な論争がありません。

大学でも同じです。国立大学が「民営化」「法人化」されてから、学部長や学長の「指導性」が声高に叫ばれるようになり、教授会も上の方で決められた方針をそのまま了承する場になりつつあります。

かつては日産のゴーン社長が大量の首切りをしたとき「さすが指導力・決断力ある社長だ」と言われたものですが、それが教育の場にも広がっているのです。

だとすれば、「英語でディベート」をする前に、「日本語で率直に論争する場」を回復することこそが、今の教育現場では急務なのではないでしょうか。そうすれば確実に学校の「荒れ」も収まり、教師も生き甲斐を回復できます。

逆に、学校現場が(大学すらも)日産のゴーン社長のような指導者を良しとする風潮が広がっていけば、その先に待っているのは、ウイスコシン州のウォーカー知事であり、エジプトのムバラク大統領やリビアのカダフィ大佐ということになるでしょう。

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「英語でディベート」に関しては、他にも論ずべき点は数多くあります。しかし、もう十分に長くなりすぎていますし、私も翻訳に復帰しなくてはなりませんので、別の機会にゆっくり論じたいと思います。

関連記事

エジプトの民衆蜂起から何を学ぶか(4)―ウィスコンシン州で爆発したアメリカ民衆の闘い

前回のブログ「エジプトの民衆蜂起から何を学ぶか(3)」を書いてから、約10日が経ちました。そのときに私は次のように書きました。

<昨日(2月18日)のDemocracy Now! によれば、アメリカ=ウィスコンシン州では州知事が、「公務員労働者の団結権やストライキ権を剥奪する」「抵抗自治体があれば、市であろうが町であろうが州兵を出動させても鎮圧する」と宣言しました。いまエジプトでは、禁止されていた労働者の団結権が、やっと認められようとしているのに、いまアメリカは全く逆の方向に動こうとしているのです。>

いま、このブログを書いている現在(2月27日(土))、ウィスコンシン州の議会は、議事堂を埋め尽くす抗議にもかかわらず、下院で州知事提案の法案を可決しましたが、内輪の共和党議員からも反対が6名も出るという、異例の強行採決でした。

この法案は、公務員の団結権・スト権を奪うだけでなく、ウィスコンシン州の資産を民間企業に売り渡す権限を知事に一任するという案で、まるでエジプトのムバラク大統領やリビアのカダフィ大佐を思わせるような法案でした。

このような信じがたい法案ですから、怒りが州全土で沸騰し、州の歴史上かつてない集会やデモが11日間も続いています。参加者は10万人という規模になり、毎晩数百人の市民が議事堂内で寝泊まりする日々が続いています。なんと驚いたことに、この集会・デモ・泊まり込みに、消防士や警察官までも、組織をあげて参加しています。

ウィスコンシン州 反組合法案で例外扱いの消防士たちも他の公務員たちに連帯
http://www.democracynow.org/2011/2/25/despite_exemption_from_anti_union_bill
ウィスコンシン州の警察官 議事堂警備と同時に抗議デモにも参加
http://www.democracynow.org/2011/2/25/policing_protesting_wisconsin_officers_patrol_capitol

エジプトのカイロでずっと取材活動を続けてきたDemocracyNow!のシャリフ・アブドゥル=クドゥースは、「人々はやっと自分たちの声を持った」とムバラク後のエジプトを語り、最後を次のように結んでいます。

「世界中が今回のエジプトの行動を目撃していたのはすごいことだ」「エジプトが米国に民主主義を輸出しているんだ」

「人々はやっと自分たちの声を持った」アブドゥル=クドゥースが語るムバラク後のエジプト
http://www.democracynow.org/2011/2/23/people_have_finally_found_their_voice

カイロの「解放広場」で寝泊まりして勝利した市民の闘いは、18日間で勝利しましたが、それに励まされて始まったウィスコンシン州の闘いは、いつまで続くのか、まだ見通しが立っていません。
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<註1> オバマ氏は、「グアンタナモ拷問刑務所の閉鎖」など多くの公約を掲げ、民衆の期待を担いながら大統領に立候補しましたが、当選すると公約の多くを投げ捨てました。
 他方、ウィスコンシン州知事のウォーカー氏は、立候補のときは一言も言及しなかったことを、知事になったとたんに、なりふりかまわず強行し始めました。
 どちらも選挙民にたいする大きな「裏切り」行為ですが、こんなことを考えると、「言行一致」で悪行の限りをつくした悪名高いブッシュ氏のほうが「可愛く」見えてくるから、不思議なものです。
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<註2> 州の財政破綻を口実に、公務員の賃金や年金を削減しようとする案を州知事が提出したことが、今回のウィスコンシン州で民衆が蜂起するきっかけになりました。というのは、この時点で州財政は黒字だったのに、金持ちや大企業減税の案を州知事が提案したことで州財政が赤字に転落することを、州の住民が知り、それが住民の怒りをかきたてました。
 そしてその怒りに日を注いだのが、予算とは何の関係もない「公務員のスト権・団結権」を予算案に絡めただけでなく、そのようなシナリオを書いて、州知事を裏で指導・援助していたのが、億万長者コーク兄弟だったことが暴露されたことでした。

右翼の億万長者コーク兄弟 ウィスコンシン州知事選と反組合推進に資金を提供
http://www.democracynow.org/2011/2/24/billionaire_conservative_koch_brothers_fund_wisconsin

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ところで、私は前回のブログで次のようにも書きました。

<しかし、ウィスコンシン州の民衆・労働者の闘いも、エジプトの闘いに励まされて、必ず勝利するでしょうし、そうあることを願っています。>

アメリカは「民主主義を教える」「民主主義を輸出する」と称して世界のあちこちで戦争を起こしてきましたが、イラク戦争がその典型でした。

そのアメリカの民衆が、エジプトの民衆蜂起に励まされて(エジプトから民主主義を輸出されて)、「民主主義」を守るために闘っている姿は、実に皮肉であると同時に非常に感動的です。

米ウィスコンシン州 反組合法案可決で10万人の州都抗議デモへ
http://www.democracynow.org/2011/2/25/protesters_expect_100_000_in_madison
ろう城11日目の マディソン州議事堂 内部の状況を案内
http://www.democracynow.org/2011/2/25/wisconsins_uprising_a_guided_tour_of

しかし考えてみれば、世界中のあちこちで、独裁国家・王制国家を裏で支えてきたのもアメリカでした。エジプト、バーレーン、イエメン、リビアなどがその典型です。

リビアのカダフィ大佐が強気なのも、アメリカやEUが武器輸出などでカダフィ大佐と裏で強い結びつきがあったことと無縁ではありません。
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<註> カダフィ大佐はアメリカなど兵器産業など大企業と莫大な金額の契約を結んでいますから、欧米の支配層もカダフィ大佐とできれば手を切りたくありません。

しかし、どうしても裏で支えきれないと判断すれば、エジプトと同じように、容赦なく彼を切り捨てて、次の有望な政権に乗り換えます。これがリビアの現状です。

なおリビアと契約を結んでいる企業は下記(下線部)のとおりです。いずれも世界的に有名な大企業ばかりです。a $165 million contract という巨額の契約金額にも注目してほしいと思います。

AMY GOODMAN: What about what the U.S. and U.S. contractors can do, the news that General Dynamics signed a $165 million contract to arm the Libyan armed forces elite second brigade two years ago, or Halliburton, Shell, Raytheon, Dow Chemical? Do you think President Obama is doing enough?
http://www.democracynow.org/2011/2/22/gaddafi_cares_more_for_himself_and

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だとすれば、いまアメリカ国内でおこなわれている権利剥奪は、考えてみれば当然なのかも知れません。

いま翻訳している『Voices of a Peoples History of the United States』を読んでいると、アメリカが国内でやってきたことを,今は海外でもおこなっているのだ、ということが痛いほど分かるからです。

しかし同時に、それと常に闘いながら(一進一退を繰り返しつつ)自由の枠を着実に拡大してきたのも「民衆のアメリカ」でした。

それを感動的な叙事詩としてまとめあげたのが、200万部を重ねた名著『民衆のアメリカ史』でした。また、この名著に登場する人物の肉声を文字として記録したのが『Voices of a Peoples History of the United States』でした。

これを翻訳していると、血と汗を流しながら、一歩一歩、自由を広げていくアメリカ民衆の力と情熱のほとばしりを感じます。

そして、いまMiddle East(中東)の闘いが、Middle West(米国中西部)で展開されている闘いとだぶってきて、胸が痛くなります。

「中東」から「中西部」へと輸出された闘いが一刻も早く勝利することを願ってやみません。
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<註1> ウィスコンシン州マディソンでは、26日に10万人以上の人々が、スコット・ウォーカー州知事の提案した公務員の団体交渉権を奪う法案に反対する抗議デモを行いました。マディソンで実施されたデモとしてはベトナム戦争以来最大のものとなりました。

Voices from the 100,000-Strong Protest for Workers' Rights in Wisconsin
http://www.democracynow.org/2011/2/28/voices_from_the_100_000_strong

 この集会で私の目をひいたのはパイロットまでも集会とデモに参加していることでした。マイケル・ムーアの最新映画『CAPITALISM』では、パイロットが生活保護をもらいに行く場面が出てきて驚かされました(しかも会社の管理職から「制服姿で行ってもらったら困る」と言われる場面があり衝撃は2倍になりました)が、この集会でパイロットが挨拶をしているのを見ると、「あの話はやはり本当だったのだ」と納得しました。

エジプトの民衆蜂起も、その背景にアメリカ流経済の導入による「貧困」があると言われてきましたが、人口の半数が1日2ドル以下の生活を強いられてきた、という記事を読むと、アメリカの「東のプードル犬」と言われている日本の未来が、本当に心配になります。

(詳しくは、世界的著名なイギリス人ジャーナリストJohn Pilgerの下記評論を御覧ください。)
Behind The Arab Revolt
http://www.zcommunications.org/behind-the-arab-revolt-is-a-word-we-dare-not-speak-by-john-pilge

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<註2> これを書いているうちに、沖縄のことを思い浮かべてしまいました。沖縄の人たちも自分の体を張って米軍基地の移転と闘っています。

その映像を見ていると、地元のお爺ちゃんやお婆ちゃんの表情から、「この豊かな美しい海を汚させてなるものか」という固い決意だけでなく、民衆の声を聴く耳を持たない政府への怒りと、そんな政府への悲しみが、強く伝わってきます。

その人たちにエジプト民衆の闘いはどのように映っているのでしょうか。ふと気になりました。

と同時に、OurPlanet-TVという独立メディアが、若者を中心に起ち上げられ、沖縄のようすも、少しずつ本土の人たちにも知られるようになっていることは、喜ばしいことです。

沖縄・高江 米軍ヘリパッド建設に対し 米国大使館へ抗議
投稿者: ourplanet 、投稿日時: 火, 01/11/2011 - 17:00
http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/782

OurPlanet-TVが日本で確実に成長し、DemocracyNow! のように、自国と世界の世論を変える大きな存在になってくれることを、願ってやみません。

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Author:狐狸庵居士(田舎の国立大学を2010年に定年退職)

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