放射能汚染地図(1)―福島の子供たちを救うことが日本を沈没から救う

この街で子どもたちを学ばせるつもりですか?

チェルノブイリ原発から4キロメートルのプリピャチ市の空間線量=3~4マイクロシーベルト/時
福島市で学校を通常通り開校し、子どもたちを学ばせていいと定めた基準値=3・8マイクロシーベルト/時


心臓バイパス手術をしてから、やがて1年が経とうとしているのですが、手術後の傷跡の痛みが取れず、今日も病院に行ってきました。

今も相変わらず食事をしたあとは30-60分くらいベッドで横にならないと次の仕事ができません。そんなわけで、ブログを書くためにいまベッドから起き上がってきたところです。

いつもなら10日に1回くらいしか書けないし、それ以上の頻度で書こうとすると、身体に良くないので、自制していたのですが、今週末に再放送がある番組について、どうしても早めにお知らせしておいた方が良いと思ってパソコンに向かい始めました。

というのは、いつもブログを読んでいただいている方から次のようなメールをいただいたからです。(このようなメールをいただくと、書いている方も元気が出てきます。本当に有難いことです)。
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(前半部省略、「既に御存知の情報かも知れませんが、より多くの方に知っていただきたいと思いました」という私のメールに対する返信の部分からのみ引用します。)
 いえいえ、知っていたものも一部ございましたが、詳しくは知らないものばかりで、いつも先生の情報収集能力には感嘆させられます。汚染地図自体は見ておりましたが、きっこさんの解説を読んでその深刻さに驚き、また揚水発電のことも聞いたことはありましたが、ジャピック計画のようなことは思いもよらないことでした。
 一昨日のNHKのドキュメント『ETV特集:ネットワークで作る放射能汚染地図、福島原発事故から2ヶ月』(20日金総合で午前1:30、28日土教育午後3:00で再放送)が話題になっておりましたのでYouTubeで見ました。
http://www.youtube.com/watch?v=m-KN6GPX3XQ&feature=related
 ここに出てくる木村博士の研究者魂、本当に感嘆致しました。またこれを見て、学校での20ミリはやはり誰が決めたのか疑問になったのとNHKにも、ニュースを伝える外向けの顔以外にも、真実に迫ろうというドキュメント制作者もいることを知って、少しは公共放送としての体面が保てたのでは、と思いました。
 原子力の専門家ではなくても、とにかく、より原子力の恐ろしさを知った今は全面停止にしていくように声を上げて求め続けることが重要と思いました。
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上記にもあるとおり、YouTubeでも見ることができるのですが、「細切れ」で見なければなりませんし、インターネットの接続料もかかります。ですから再放送を見るのが一番だと思います(録画できる人はぜひ録画を!)。

このドキュメントを見ると、「風評被害」という名の「風評被害」を流してきた、政府・東電・大手メデイアの責任は、本当に重大なものだということが分かってもらえると思います。

私は本ブログで何度も「学童疎開」「自主避難ではなく」「政府自治体による集団疎開」の緊急性を何度も訴えてきたつもりでしたが、そのことの正しさを、この映像で改めて確認することができました。

政府が正しい情報を流し、一刻も早く避難指示を出していれば、大量被曝しなくても済んだ人が如何に多かったことか!! 
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私は、最近のNHKの「かつてのソ連における国営放送と全く変わらない報道ぶり」に嫌気がさして、ほとんどNHKの報道を見なくなりました。だから「地デジ」移行を機会にNHKとは縁を切り、受診料も払わないつもりでいました。

しかし上記の番組を見て、全くひどいNHKニュース報道の裏で、このような「番組をつくる闘い」「それを報道する闘い」が続けられていたことを改めて知ることができました。

というのは、原発番組をつくることにたいして強い圧力があったことをこの番組をつくったディレクターの一人である七沢潔氏は、かつて次のように語っていたからです。
http://sci-tech.jugem.jp/?eid=1272

「原発の番組から足が抜けられなくなり続けていると、上司が『長いこと、テレビでこういうことをやらないほうがよい』と言われました。原発事故がたくさん起きていた時期で、東海村の臨界事故も手がけましたが、放送研究所に行きなさいということになりました」

その彼が今回どのようにしてこの番組制作に関わったかは不明ですが、放送文化研究所に籍を置きながら、脇からこの番組制作に協力したのかもしれません、しかし、もうひとりのディレクターである大森淳郎氏は今後どのような運命をたどるのでしょうか。

NHK上部の締めつけに抗して、このような番組を制作した人たちの努力と勇気に深い敬意を表したいと思いますが、大森氏がどこかに飛ばされないようにするためにも、再放送の要求をどんどんNHKに送りつけることが大切だと思います。
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<註> ここまで書いてきて、もうひとりのディレクターである大森淳郎氏の名前を確認しようとして、上記のYouTubeを覗いてみたら、既にNHKにより削除されていました。だとすれば尚更この番組の再放送を一人でも多くの人に見てもらうこと、それが無理ならそれを予約録画して一人でも多くの人に見てもらうことが必要です。
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この村で子どもたちを育てるつもりですか

チェルノブイリ事故の後、ウクライナ共和国が定めた居住禁止地域=5ミリシーベルト/年
文科省の定めた子どもの年間放射線許容限度=20ミリシーベルト/年


政府・東電やNHKを含む大手メデイアが如何に原発の真実が国民に知れ渡ることを恐れているかは、この番組に登場する木村真三氏の運命を見ても分かります。

放射線医学総合研究所の線量計測部門で研究員をしていた木村真三氏は、その後、独立行政法人労働安全衛生総合研究所に移ったのですが、原発事故が起こった直後に福島へ調査に行こうとしたら、上から(つまり厚生労働省から)圧力がかかり、現地調査をするために、辞表を提出せざるを得ませんでした。

しかし、元理化学研究所の岡野眞治博士の全面的な協力のもと(博士が独自に開発した計測機を自動車に搭載して)木村真三氏が福島県内の道路2000キロを走破して作成した放射能汚染地図は、今回の事故の深刻さをまざまざと示しています。

それにしても、このような調査を国家・東電の責任ではなく、個人や私的グループでやらなければならないということ、それどころか国家がそのような調査を圧力をかけて妨害しているという事実が、私の心を暗澹とさせます。これでは日本がしばしば非難の対象としてきた中国や北朝鮮とどこが違うのでしょうか。

それと同時に木村氏や岡野氏が、京都大学・広島大学・長崎大学の放射線観測・放射線医学を専門とする科学者達のネットワークと連係し、震災の3日後から放射能の測定を始め汚染地図を作成してきた地道な活動に、唯々、敬服あるのみです。この調査と、それを追いかけたこの番組が、必ずや日本の未来を変える起爆剤になるでしょう。

私がいま翻訳しているHoward Zinn &Anthony Arnove(編)『Voices of a People's History of the United States』も、歴史はそのような民衆の地道な闘いによって造られてきたことを、民衆の声を綴ることによって鮮やかに示していますが、今度のドキュメント番組で、そのことを改めて確認させられたような気がしています。
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<註> 思い起こせば、国家は国民を守るどころか犠牲にすることが多かったことは、あのアジア太平洋戦争が証明しています。
 敗戦間近の中国東北部(いわゆる「満州国」)で、開拓民を放置して真っ先に逃げ出したのは帝国軍隊でしたし、いわゆる「ガマ」と呼ばれる地下洞窟に逃げ込んできた沖縄県民を、米軍に見つかるからという理由で追い出して集団自決に追い込んだのも国家=軍隊でした。
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ところで、今も原発は空と海に放射能を出しながら、いつ終息するか分からない状態が続いています。その汚染地帯は雨と風、そして海流によって、福島県だけでなく日本全体に、ゆっくりと確実に広がって行きつつあります。今や神奈川県や静岡県の茶葉にでさえ放射能が検出されつつあります。

このように海も陸も汚染したまま放置しておいて、政府・東電は「風評被害」「地産地消」などと叫んできました。下記の「汚染予測」「汚染予報」を御覧ください(この予報はドイツ気象局によるものです!!なぜ日本政府ではないのですか!?)。
http://www.dwd.de/wundk/spezial/Sonderbericht_loop.gif

しかし、最近の食品売り場では農産物・海産物は産地が明記されるようになってきています。生産者を明記した農産物が売られることさえ珍しくなくなってきています。

ところが今度の事故が起きてからは、生産地を「まぜこぜ」にして売るところが出てきました。たとえば「このトマトは千葉&長崎産」などといった表示です。これでは、どこの野菜から分からず怖くて買えません。

しかし、千葉産であっても「被曝線量**マイクロシーベルト」という表示があれば、安心して買うことができます。

だとすれば、農産物についても海産物についても正しい汚染データを公表しなければ、誰も買わないどころか国民の命を危険に晒すことになります。真っ先に、その犠牲になるのは幼児・児童・妊婦などです。

したがって、いま最も求められているのは、全国に放射能の測定器を置き、毎日そのデータを公表することです。天気予報で「洗濯指数」や「花粉指数」を出すくらいなら、「放射能汚染指数」を先ず出すべきでしょう。そのようなデータを出すことなく「風評被害」のみを叫び続けるならば、今後だれも政府の言動を信じなくなるでしょう。

(イソップ寓話「狼と少年」を思い出してください。)
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また、正確な汚染データを公表しないかぎり、「農産物」「海産物」「汚染部品」「汚染製品」の買い手が(国内どころか国外からも)全くなくなり、日本経済は壊滅的打撃を受けるでしょう。農業や漁業を救うのは「汚染された農産物や海産物」を食べさせることではありません。

賞味期限の切れた食品や中国の毒入り餃子を売ったという理由で業者を袋だたきにした人たちは、現在の事態を何と言うのでしょうか。口蹄疫にかかった牛を何千頭(何万頭?)も殺してきた政府・自治体の役人たちは、そのとき「地産地消」を叫んだのでしょうか。

今この事態を放置すれば、どこにも住めなくなるし、どこの食品も食べることができなくなります。汚染された農産物や海産物を国家が買い上げ、それを他の地方に拡散させないこと、汚染地の農漁民には別の生計の道を提示することなど、全く別の方法を考えるべきです。

さもないと下記のグラフが示すように、日本経済は壊滅的打撃を受けるだけでなく、「長寿国世界一」を誇ってきた日本は、確実に死滅への道を歩み始めるでしょう。そんなことを考えると、英語教育をどうするかなどは枝葉の問題ではないかと思えてきて、仕事が手につかなくなります。

平均寿命が1994年に急落したロシア国民
http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/8985.html

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ロシア国民の平均寿命が急落した原因には、ソ連が崩壊し,今まで保障されていた社会保障が得られなくなり、「教育も医療も全て自分持ち」という「剥き出しの資本主義」、特に小泉・竹中コンビが日本にも導入したと同じ「弱肉強食の新自由主義経済」がロシア国民に襲いかかったことが大きな要因になっていることは間違いないでしょう。

しかし、チェルノブイリから出てきた放射能がドイツやハンガリーなどヨーロッパにも大きな被害を与えたことを考えると、ロシアに降り注いだ放射能も平均寿命が急落した一つの大きな原因だと私は思っています。チェルノブイリ原発事故がヨーロッパに与えた影響については下記を御覧ください。

ソ連・ヨーロッパの放射能被曝評価 瀬尾健(1986)
http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/seminar/No110/keisemi1986seo.pdf
ヨーロッパで発見された「危険な放射能汚染食品」
(広瀬隆・広河隆一1991『悲劇が進む、新版四番目の恐怖』講談社文庫:80-81頁)
http://www42.tok2.com/home/ieas/Dangerous_Foods_found_in_Europe.pdf

いま庶民が最も求めているのは、手頃な値段で放射能が測れる「線量計」です。ところが昨日5月23日の参議院行政監視委員会でソフトバンクの孫正義社長が指摘したように、政府は「この線量計500台を税関で停めたまま」にしています。政府が正確なデータを出さないのであれば、それを自分で調べたくなるのは当然ですが、それも政府は許そうとしないのです。

食品の安全など、自分で自分の体を守る方法については、下記の武田邦彦氏のブログが便利です。かつて「日教組反対」「原発推進派」であった武田氏ですら、真剣に子供や妊婦のことを考えているのに、政府・文科省が全く耳をかそうとしない姿勢は、全く異様としか言いようがありません。
http://takedanet.com/「武田邦彦ブログ」

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また先日のDemocracyNow!(2011/05/16)では、下記のような海洋汚染について報道していました。

Japan Expands Exclusion Zone around Damaged Nuclear Plant, Greenpeace Calls for Radiation Investigation
日本政府が損傷した原子力発電所周辺の「立ち入り禁止区域」を拡大、グリンピースは放射能の調査を要求
http://www.democracynow.org/2011/5/16/headlines

この記事によると、「東電は3000トンもの高濃度汚染水を海洋に流し続けているにもかかわらず、汚染度を調査しようとすると、それを日本政府が妨害する」とグリンピースの放射能専門家Ike Teuling氏は厳しく批判しています。

これでは、海外から海洋汚染国家として厳しい批判を浴びることは必至です。既に「海洋汚染テロ」ということばすら聞こえてきています。日本政府が認めたところですら「驚くべき高濃度で汚染された海藻」(radioactive seaweed with alarming high levels of contamination)が発見されているのですから。

  Japanese authorities are widening the exclusion zone around the crippled Fukushima Daiichi nuclear power facility as radiation levels remain high more than two months after the nuclear disaster.
  Meanwhile, the Tokyo Electric Power Company has revealed substantial damage occurred to the reactor cores at reactors 2 and 3 of the nuclear complex.
  Last week TEPCO acknowledged the fuel inside reactor 1 had apparently melted down, creating a hole in the chamber causing a leak of more than 3,000 tons of highly contaminated water.
  Greenpeace is urging Japan to start an investigation after high levels of radiation were found in seaweed off the coast of Fukushima. Ike Teuling is a radiation expert at Greenpeace.
Ike Teuling, Greenpeace radiation expert: "Although the Japanese government gave us only very limited permission to do our marine research, we did find radioactive seaweed with alarming high levels of contamination."

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私は先に、「そんなことを考えると、英語教育をどうするかなどは枝葉の問題ではないかと思えてきて、仕事が手につかなくなります」と書きました。しかし日本が海外からどのような眼で見られているかを知らせることも、英語に関わるものの大きな仕事ではないkと思い直しています。

だとすれば、いま学校教育で必要なのは、日本では使う機会がほとんどなく「笊水(ざるみず)効果」しかないような「会話ごっこ」「英語で授業」にうつつを抜かすのではなく、きちんと「読み」「聞き」できる英語力こそ生徒に付けてやらねばならない学力だと、改めて思うのです。

かつて日本は「HIROSHIMA」と「憲法9条」でその名を世界に知られてきましたが、今や日本は「FUKUSHIMA」として、その名を知られつつあります。

Democracy Now!を視聴していても、上記の記事にもあるとおり、「Fukushima Dai-ichi」が当たり前のように発音されています。今や「TUNAMI」が英語になっているのと同じような感覚で、「FUKUSHIMA」も英語になっていくのかも知れません。

FUKUSHIMA ということばで,直ぐ頭に浮かぶのは、緊急出版された『FUKUSHIMA、福島原発メルトダウン』 (広瀬隆、朝日新書、2011/5/13) です。これは同じく緊急出版された『暴走する原発、チェルノブイリから福島へ、これから起こる本当のこと』( 広河隆一、小学館、2011/5/20)と供にぜひ読んで欲しい本です。

これらは、福島で何が起きたのか、いま何が起きているのか、これから何が起きるかを知る絶好の本だと思います。また、後者の帯には「頼む。一緒に子供たちを救おう」という広瀬隆氏の推薦と呼びかけのことばが大きく書かれていますが、その彼らの怒りと叫びが、本当に胸に迫ってくる本です。

<註> また広瀬隆&広河隆一氏が責任編集したフォトジャーナリズム月刊誌『DAYS JAPAN』も、ゆとりのある方は、是非とも手に取ってみてほしい月刊誌です。
 その5,6月号の特集「暴走する原発」「日本の原発:浜岡から脱原発へ」は、高濃度汚染地帯に危険を犯して取材を敢行し真実を伝えようとしてきた人間による、生々しい写真に満ちています。 いま私にとって気になるのは広河氏の内部被曝の線量です。
 (実は今回のブログでカット代わりに使わせてもらったのは、『DAYS JAPAN』から「是非みなさんに知らせて欲しい」と呼びかけのあった写真です。)
http://daysinternationaljp.seesaa.net/category/10130220-3.html
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チェルノブイリ原発事故二五周年(下)―原子力発電は今すぐ止めても困らない

前回のブログでは「浜岡の原発など、少しでも早く原発を止めるためには、署名なども有効でしょうが、より建設的な意見としてある程度、その分のエネルギーをどうするかについての案も、これからは出していく必要があるのかもしれません」という声が寄せられていることを紹介しました。

しかし、その声に応えるブログを書こうとして矢先に「ビンラディン暗殺」のニュースが飛び込んできました。その殺され方が余りにも異様であるにもかかわらず、相変わらずNHKの報道、菅内閣の声明も、米国政府の単なる伝声管となっていることに我慢できなくなって、予定を急に変更して、それについて若干のコメントを書きました。

このコメントについても「ビンラディン暗殺は日本の未来とどんな関係があるか」など、書き足りないことがまだあるのですが、原発について上記の宿題がまだ残っているので、今回はそれについて書きたいと思います。
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<註> ハワード・ジン『Voices of a People's History of the United States』の翻訳は、ほぼ完了したのですが、まだ最後の詰めが残っていて、それも気になります。翻訳をしていると原発が気になり、原発について調べていると翻訳が気になるという状況で、全く困っています。しかし、原発をこのまま放置しておくと翻訳や英語教育どころか日本全体が崩壊するのではないかという危機感でイライラしてきて、体の具合が少し悪くてもブログを書かなくてはという脅迫感に襲われるのです。
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福島原発は今も沈静化する作業が続けられていますが、「モグラ叩き」の状態で1-6号機のどれかが良くなれば別のものが悪くなるといった具合で、いまだに放射能が各号機から放射能が出続けているという状態です。

チェルノブイリやスリーマイル島の場合は一回こっきりの原子炉一個だけの事故でしたが、福島の場合は6機もの原子炉がブスブスとくすぶり続けていて、いつ収まるかの見通しも立っていません。

Expert: Despite Japanese Gov't Claims of Decreasing Radiation, Fukushima a "Ticking Time Bomb"
http://www.democracynow.org/2011/4/13/expert_despite_japanese_govt_claims_of

その間、海には大量で高濃度の放射能汚染水が垂れ流し状態ですから、陸も海も時間が経つにつれて汚染地域が確実に広がっていきます。もっと恐ろしいのは、「原発周辺の累積汚染度」のことです。

最近、文部科学省とDOE(米国エネルギー省)による合同の航空機モニタリングが発表されましたが、その汚染地図を見ると、今回の事故の汚染がチェルノブイリの事故をはるかに超えていることが分かります。

「チェルノブイリを超えた放射能汚染」きっこのブログ20110509
http://kikko.cocolog-nifty.com/kikko/2011/05/post-6f19.html

この調査は4月29日に、福島第一原発から半径80キロの範囲の放射能汚染度をヘリコプターと航空機から計測したものですが、今回の調査でチェルノブイリの事故をはるかに超えていることは、より明確になりました。

今回の原発事故がチェルノブイリの事故をはるかに超えていることは、外国の研究者や外国のメディアで、事故当初から指摘されていたことです。

“Serious Danger of a Full Core Meltdown”: Update on Japan's Nuclear Catastrophe
http://www.democracynow.org/2011/3/17/serious_danger_of_a_full_core

"Underestimating the Seriousness of the Problem": Experts Urge Japan to Raise Nuclear Alert Level and Evacuate Wider Area
http://www.democracynow.org/2011/3/18/underestimating_the_seriousness_of_the_problem

Nuclear Catastrophe in Japan “Not Equal to Chernobyl, But Way Worse”
http://www.democracynow.org/2011/4/12/nuclear_catastrophe_in_japan_not_equal

ところが今頃になって(5月15日)、既に3月11日にはメルトダウンが起きていたというのですから呆れてしまいます。外国にいても分かることが何故ここ日本で分からないのでしょうか。緊急避難指示が出されず既に多くの人が大量被曝してしまった責任を誰がどのようにとるのでしょうか。

また、上記「汚染地図」を見る限り、福島県どころかその周辺も、完全にチェルノブイリ事故で言う「強制避難区域」に入ることが分かります。ところが、以前にも書いたとおり、政府・文科省は避難させるどころか、「20ミリシーベルトまでは大丈夫と言って強制的に学校へ行かせようとしているのです。

大人ですら、「1年間で、1ミリシーベルトを超えてはならない」としているにもかかわらず、その法律を国や文科省が自ら破っていくのですから、頭が混乱してしまいます。これでは、福島の子供たちに「10-20年かけて、ゆっくりと死んで行きなさい」と言っているのと同じではないでしょうか。

ところが不思議なことに福島ではこの文科省の指示に校長や教育委員会が素直に従っているという報道を見聞きすると、ますます頭が混乱してしまいます。本来ならエジプト「タハリール広場」で起きたような「民衆蜂起」が起きても不思議ではない指示だと思いますが、「歌を忘れたカナリア」「怒りを忘れた日本人」状態が今の日本です。
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<註> 上記の汚染地図を知らせてくれたのは、私の主催する研究会の会員です。この場を借りて、改めて御礼を申しあげたいと思います。
 また上記の「きっこのブログ」では、今回の事故がチェルノブイリ事故と比べていかに度を超えたものかが、実に軽妙な文体で説明されていますので、ぜひ一度お読みくださるようお勧めします。
 ただしブログには「文部科学省と米国DOEによる航空機モニタリングはPDF資料なので、見られる人は見てもらうのが早いんだけど・・」とあるんですが、そのリンクをクリックしても図表は空白になってしまいます。よほど「きっこ氏の説明」が怖かったのでしょう。
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さて今回のブログでは、「原発は経済的にも全く非合理的だし」「いま保有している火力発電や水力発電で必要電力は間に合わせることができる」ということを書くつもりでしたが、福島の現状を知ってもらうことが先決と考えて、それを書いているうちに、思わぬ長さになってしまいました。

さて、本題の、「原発がなくても、いま保有している火力発電や水力発電で必要電力は間に合わせることができる」という点ですが、これは下記の図表で一目瞭然です(出典:小出裕章『隠される原子力・核の真実』104-107頁)。


この図表を御覧いただければお分かりの通り、極端な電力使用のピークが生じるのは、真夏の数日、そのまた数時間だけで、それ以外は「いま保有している火力発電や水力発電で必要電力は十分に間に合わせることができる」のです。

小出裕章氏は、この図表の説明で下記のようにも述べています。
「かりにその時にわずかの不足が生じるというのであれば、自家発電をしている工場からの融通、工場の操業時間、そしてクーラーの温度設定調整などで十分乗り越えられます。」

実は、上記の本『隠される原子力』に載せられているこの図表は、下記のインタビュー映像でカラーの図表として見ることができ、しかも小出氏自身の肉声を通して説明を聞くことができますので、時間がある方は、そちらを御覧ください。

小出裕章インタビュー「福島原発事故と原子力以外の現実的な発電方法について」
http://k-onodera.seesaa.net/article/195576908.html(20110413)90分
(ただし90分近くのインタビューですから、後半の60分から視聴し始めると時間の節約になります。)

上記のインタビューでは、次のような興味深い事実も指摘されています。
1)原子力発電が極めてコストが高く、電気料金が経済力を圧迫するので、大企業の多くは自家発電に切り替えつつある(上記のグラフ「自家発電」を参照)、
2)アルミ産業が特に電力を喰うので日本で生きのびている企業は1社しかない、
3)電力が余って仕方がないので、水力発電の48%、火力発電の20%をわざと休止させている。

また、余った電力は溜めておくことができないので、「揚水発電所」というものをつくって、水をあげたり下げたりして「電力不足」に備えるふりをしているという驚くべき事実も述べられています。

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実は、この「揚水発電所」については、広瀬隆・広河隆一1991『悲劇が進む、新版四番目の恐怖』が、「ジャピック計画」という恐ろしい計画があったことを、既に20年前に暴露しています。

「揚水発電所Japic計画」 
http://www42.tok2.com/home/ieas/Yousui_JAPIC_Plan.pdf

この図を御覧いただければお分かりのように、「余っている電力を消費するために、日本海側から太平洋側に縦断するダムと揚水発電所を幾つも建設し、日本海側で汲み上げられた水を、日本の背骨を横断するトンネルを貫いて太平洋側に落下させる」という途方もない計画です。

これに群がる巨大建設業、巨大電力会社、巨大家電業社は、国家予算・国民の税金を湯水のように使って、大儲けをしようと計画したわけです。そのためには「電力が足りない」ということを国民に大宣伝しなければなりませんでした。いまも東電は「原子力発電がなくなれば大変なことになる」と思わせるために、「計画停電」「夏場の節電」を声高に叫んでいます。

しかし先にも述べたように、休ませてあった火力発電や水力発電を復活させれば、必要な電力を十分にまかなうことができます。また「節電」という場合、家庭や個人に節電を呼びかけるよりも、電力のほとんどを消費している企業にこそ節電を呼びかけるべきでしょう。夜9~10時まで働かせるのではなく8時間労働を守らせ、労働者に人間らしい生活を保障するだけで、どれだけ節電になるでしょうか。

学校現場でも、いま非常勤講師が異常に増えて、専任教員はますます過重労働になっています。私の知っている中学校では英語教師が専任1人で残り3人講師という異常な構成です。こうして専任教員は帰宅するのが夜9~10時というのが日常になっている学校を私は幾つも知っています。専任教員を増やして、こんなバカなことをやめれば、教育の質を大きく向上できますし、夜間の電気料金は節約できます。同時に失業率を低めることにも貢献できます。

いま不況の中で大学を卒業しても仕事が見つからない若者が激増しています。同じことを民間企業で実行すれば失業者救済にも役立ちます。なぜなら国民が職を得て豊かになれば、それは購買力の向上につながり、それは同時に企業の活性化に直結するからです。ところが、いま政府のやろうとしていることは、「企業減税」と「復興税」という名の新しい「消費税」です。これで、どうして「がんばれ日本」ということになるのでしょうか。
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<註> ほとんど客もいないのに終日=夜間も営業している全国のコンビニも、正常な人間らしい営業状態に戻すべきでしょう。そうすれば、電力の大量節約になるだけでなく、「名ばかり管理職」という非人間的労働もなくなり自殺を防ぐこともできます。これは同時に低賃金労働の「一つの温床」をなくすことにもつながります。
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原発を今すぐ止めても困らないという点については、広瀬隆2011『FUKUSHIMA福島原発メルトダウン』にも非常に分かりやすい説明が載っていますし、代替エネルギーとして天然ガス火力・石油火力がすぐに活用できる理由が書かれています。

「原発がなければ停電するか」
http://www42.tok2.com/home/ieas/Hirose2011Fukushima.pdf

さらに上記では、東電などによる電力業の独占をやめさせ、発電と送電を分離し送電線を国家管理(つまり「国民の管理」)にすれば、電力供給がもっと安く豊富に供給できるようになることも指摘されています。

また、代替エネルギーの将来の大きな可能性として「燃料電池」があるのですが、緊急出版されたこの本ではふれられていません。時間にゆとりのある方は、下記の本も御覧ください。

広瀬隆 2001『燃料電池が世界を変える:エネルギー革命最前線』日本放送出版協会

これを読めば、将来は、家庭の電力は自宅でまかなえるようになることが分かります。これを妨げているのは、現在の権益を守ろうとする電力業者と(それと癒着しつつ)新エネルギーの開発を援助しようとしない政府であることも、この本で知ることができます。

同じことはアメリカでも起きています。ジェネラル・モーターズ(GM)は1996年に電気自動車 EV-1をカリフォルニア州とアリゾナ州で提供し始めました。数百台の電気自動車が市中を走り始めましたが、やがてそれらはすべて姿を消してしまいまし た。

姿を消した電気自動車は、人里はなれた処分場に運び込まれ、ぺしゃんこに潰された後、シュレッダーにかけて文字通り粉砕されてしまいました。電気自動車の予想外の人気に危機感を覚えた自動車メーカーが、2003年末ごろから各社いっせいに回収に動きだしたのです。

つまり、輸送用燃料の供給を独占する石油企業、ガソリン車を主力商品とする自動車メーカーが、それぞれの既得権益を守るために、電気自動車という新技術の市場拡大を、力づくで阻止したのです。この詳しい顛末については下記を御覧ください。

『誰が電気自動車を殺した?』 GMのEV-1の不可思議な消失
http://democracynow.jp/video/20070413-3 (日本語字幕版)
Who Killed the Electric Car? New Documentary Looks at the Mysterious Disappearance of the EV-1
http://www.democracynow.org/2007/4/13/who_killed_the_electric_car_new

何度も言います。環境に優しいエネルギーは原発以外にいくらでもあるのです。それを妨げているのは、既得権益を守ろうとする企業と、それに癒着している政府です。

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原発は、政府や企業の宣伝と違って、全く「環境に優しくない」のですが、長くなってきたし疲れてきましたので、それについては割愛します。というのは、あと一つだけ、どうしても書いておきたいことがあるからです。

私が「揚水発電所」「ジャピック計画」の話を家人にしていたら、彼女が怒りに満ちた調子で次のように言うのを聞いて、改めて今の電力業界のありようを根本的に見直す必要を感じたのでした。

「最近、『オール電化』を声高に宣伝しているが、『計画停電』などを押しつけるくらいなら『オール電化』など止めれば良い。『オール電化』を声高に言うのは、余った電気をいかに使わせるかの戦術でしょう。」

「また洗濯機でも『乾燥機』つきの洗濯機が最近では当たり前になっているが、これも余った電気を無理に使わせるための戦略かと思わず勘ぐってしまう。」

「洗濯物を太陽で乾かした方が、洗濯物に太陽や自然の香りが漂ってこんなに気持ちが良いことはないし、エネルギーの節減になる。ところが自然乾燥させるのではなく電力を使った乾燥させようとするのが電気産業だ。」

「最後の極めつけは、原発事故で放射性物質を日本全土に撒き散らし、洗濯物を外で干せないような環境をつくってしまった。ますます乾燥機つき洗濯機が売れることになり、電機業界は笑いが止まらないことだろう。」

彼女が怒りまくって話すのを聞いているうちに、私が勤務していた大学で、どんどん自販機が導入されていることを思い出しました。そのときも私は教授会で次のように発言したのですが、ほとんど誰からも賛同がなくてがっかりしたことを思い出したのです。

「夏場の電力削減ということで廊下や事務室の電気を消したまま仕事をするよう強い要請があるが、そんなことをするくらいなら、キャンパスから自販機を一掃するべきだ。」

「これは莫大な電力を喰うだけでなく健康を損なう。アメリカの公立学校では肥満児を少なくするために学校から自販機を一掃する運動が起きている。元々、大学にはキャンパスのあちこちにペダルを踏めば冷たい水が出てくる装置があり、それを飲めば済むのだから、自販機は無用だ。」

「誰も薄暗い環境で仕事や学習をしたくないはずだ。学校はもっと明るく伸び伸びとした環境であるべきだ。他方で、クリスマスシーズンになるとキャンパスのあちこちの木々に小さな豆電球を点滅させて、それが一ヶ月も続く。一方で節電を言いながら、こんな馬鹿げたことに電力を無駄遣いしている。樹木にとっても全くの迷惑ではないか。」
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<註> 教授会で私が上記のような発言をしたからかどうか分かりませんが、私が退職する前に、ようやく廊下は人が来ると自動的に明かりが付くシステムになりました。
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最近、私の住む田園地帯ですら自販機が急増しつつあります。原子力発電を維持したい企業にとっては、これほど美味しい話はないでしょう。

しかし、既に紹介した下記映像で小出氏は、アルミ産業は電力を食い過ぎるから日本では企業として成り立たなくなっていると述べています。
http://k-onodera.seesaa.net/article/195576908.html(20110413)90分

だとすれば、自販機は健康を破壊する飲料水を売っているだけでなく、アルミ缶を製造する過程で全く無駄なエネルギーを消耗していることになります。

かつて私がアメリカの大学で1年間、日本語を教えていたとき、誰もが水筒を持参し、キャンパスのあちこちにある冷水を入れては、それを飲んでいたことを思い出しました。教授会では、それらのことを言えなかったことが、今となっては悔やまれます。

またペットボトルの飲料水も決して安全でも健康でもありません。これについては下記を御覧ください。
「ボトルウォーターのウソ、水の民営化への抗議はテロ?」
http://democracynow.jp/video/20070801-2

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<註> 昨日(2011/05/14)、福島原発の作業員の方が亡くなられました。しかし、これは氷山の一角で、これまでどれだけ多くの下請け作業員が被曝労働で亡くなられたり療養生活を送っておられることでしょうか。
 私たちは、そんなに多くの弱者を犠牲にしながら原発を維持しなければならないのでしょうか。この点についても書きたいことは多いのですが、ここで力尽きました。後日にさせてください。

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ノーベル平和賞は暗殺を好む?ー ビンラディンを「ジェロニモ」の地位に押し上げた大統領

前回のブログで次のように書きました。

 「ここまで書いてきたら、また風邪がひどくなってきました。しかし次のようなメールをいただいているので、「原発を止めて電力が大丈夫なのか」という問いにも答えなければならないのですが、風邪がぶり返しては何にもならないので、ここで止めます。
 <先生の最新のブログと「福島原発事故の資料一覧」も拝見させて頂きました。特に写真集「チェルノブイリの子どもたち」が、かなり印象的でした。浜岡の原発など、少しでも早く原発を止めるためには、署名なども有効でしょうが、より建設的な意見としてある程度、その分のエネルギーをどうするかについての案も、これからは出していく必要があるのかもしれません。>
 しかし、結論だけを先に言わせてもらえば、「原発は経済的にも全く非合理的だし」「いま保有している火力発電や水力発電で必要電力は間に合わせることができる」ということです。詳しくは次回のブログで書きます。」

ところが、この直後に「ビンラディン暗殺」のニュースが飛び込んできました。その殺され方が余りにも異様であるにもかかわらず、相変わらずNHKの報道、菅内閣の声明も、米国政府の単なる伝声管となっていることに我慢できなくなって、予定を急に変更して、以下、ビンラディン殺害について若干のコメントを書いておきたいと思います。
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<註> 実を言うと、先のブログを書いた直後に能登半島の親戚に不幸があり、すぐにでも駆けつけなければならなかったのですが、風邪がひどくて行けず、風邪が良くなった金曜日に出かけて昨日5月7日(土)に自宅に戻ってきたばかりです。しかし一刻も早く「ビンラディン暗殺」について書いておきたいと思って、いまパソコンに向かい始めたところです。
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暗殺のニュースを知ったときの最初の思いは、「なぜ妻や子どもの目の前で頭を銃で撃って殺さねばならなかったのか」ということでした。最初の報道はビンラディンや側近との銃撃戦だったという発表だったのですが、その舌の根も乾かぬうちに、実はビンラディンは全くの丸腰だったというのですから、二重に呆れてしまいました。

しかも子どもや妻のいる目の前で頭を銃で撃ち抜くという行為にどのような正当性があるというのでしょうか。

アメリカ政府はアフガン戦争以来、自由な新聞報道を一切許していません。米軍に同行する記者以外の取材や報道はできませんし、戦死した米兵の棺桶すらも新聞に載せることは許されていません。棺桶の写真すら、市民の目に残酷に映るから許されないというのであれば、子どもの目の前で頭を打ちく光景は残酷ではないというのでしょうか。

しかも、その子どもは、次の報道を見れば分かるとおり、12歳の娘の他に、他に9人の子どもが傍にその光景を見ていたようです。というよりも「無理やり見るよう強制された」というべきでしょう。
http://www.democracynow.org/2011/5/4/headlines

One of bin Laden's wives was wounded in the raid but not killed as previously reported. Both the wounded wife and a daughter of bin Laden, believed to be about 12 years old, are in Pakistani custody along with nine other children.

一歩譲って、ビンラディンが911事件の首謀者だったしても、その妻や子どもにどんな罪があったというのでしょうか。「妻も12歳の子供も殺された」という最初の報道は嘘だったのですが(上記の下線部)、考えようによっては「妻や子供の目の前で、その夫(あるいは父)の頭を銃で撃ち抜く」方が残酷ではありませんか。

阪神淡路大震災や今度の東日本の原発震災では、地震や津波,さらには余震の恐怖で、多くの子供たちが大きな精神的障害(PTSD)を負ったと言われていますが、ビンラディンの子供たちの心に、この後どのような傷が残るのでしょうか。このような殺害方法を命じる人物に「ノーベル平和賞」が与えられたことに、改めて愕然たる思いを禁じ得ません。

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<註> 日本の菅政権は即座に、オバマ氏の行動に対して全面的な支持を表明しました。菅氏が「20ミリシーベルトという高濃度の放射能汚染に子供を晒しても平気だということを見れば、それも当然のことかも知れません。オバマ氏も菅氏も人間に対して、とりわけ子供の命や人権に関してほとんど何の関心もないように見えるからです。
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上記では「一歩譲って、ビンラディンが911事件の首謀者だったしても」と書きました。というのは、911事件はビンラディンが企画・立案・指示して実行された事件だったという証拠は今のところ何一つ提出されていないからです。

当時の大統領ブッシュが「ビンラディンをアメリカに引き渡せ」とアフガニスタンのタリバン政権に要求したとき、タリバン側は「証拠を見せていただけるなら引き渡します」と言ったにもかかわらず、時のブッシュ大統領は、「その必要はない」としてアフガン戦争に踏み切りました。

チョムスキーも、5月7日(土)のコメントで次のように述べています。
http://www.zcommunications.org/my-reaction-to-osama-bin-laden-s-death-by-noam-chomsky

What they only believed in April 2002, they obviously didn't know 8 months earlier, when Washington dismissed tentative offers by the Taliban (how serious, we do not know, because they were instantly dismissed) to extradite bin Laden if they were presented with evidence—which, as we soon learned, Washington didn't have.

つまりアフガン侵攻の8ヶ月前に、証拠を出せば(if they were presented with evidence)引き渡す(extradite)と言っているのに、それを即座に足蹴にした(dismissed)のでした。後で分かったことですが、ブッシュはそのような証拠など持っていなかったのです(—which, as we soon learned, Washington didn't have)。

法を尊重する社会では(In societies that profess some respect for law)、容疑者"suspects" は公正な法廷で裁かれる(brought to fair trial)べきものであり、暗殺の対象であってはなりません。当時のFBI長官でさえ、「証拠はない、そのように信じた"believed"」と述べているだけなのです。

チョムスキーは、それを次のように述べています。

In societies that profess some respect for law, suspects are apprehended and brought to fair trial. I stress "suspects."
In April 2002, the head of the FBI, Robert Mueller, informed the press that after the most intensive investigation in history, the FBI could say no more than that it "believed" that the plot was hatched in Afghanistan, though implemented in the UAE and Germany.
  
チョムスキーは上の文で、最後に、"the plot was hatched in Afghanistan, though implemented in the UAE and Germany" と言っています。つまり「911事件の着想は、アフガンで生まれたかもしれないが、UAEアラブ首長国連邦とドイツにいた人物によって企画・実行された(implemented)」とFBIは「信じている」(it "believed")だけなのです。

要するにアフガン戦争で今までに大量に殺されてきたアフガン人=タリバンは、911事件とは何の関係もありませんでした。関係があったのは、首謀者にとされたモハメド・アタ(ドイツに留学していたエジプト人)を除けば、あと残りの多くはUAEやサウジ・アラビア人だったとされています。

したがってチョムスキーも述べているように、オバマ氏が暗殺後に、「911事件はアルカイダによるものだと,その直後に直ぐ分かった」とホワイトハウスで声明を発表したのは、だから真っ赤な嘘だったのです。

Thus Obama was simply lying when he said, in his White House statement, that “we quickly learned that the 9/11 attacks were carried out by al Qaeda.”

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<註> 上記で、首謀者にとされたモハメド・アタがエジプト人だということを紹介しましたが、ビンラディンの片腕とされるアイマン・ザワヒリという人物もエジプト人だということに注目して欲しいと思います。最近「民衆蜂起」で世界の注目を浴びた国です。両者ともエジプトの最高学府であるカイロ大学を最優秀の成績で卒業したそうです(アタは建築学科、ザワヒリは医学部)。
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ついでに付言させていただければ、911事件では、ワールド・トレード・センターが崩壊する前に地階部分で爆発音があったとか、ペンタゴンに突入したはずのユナイテッド航空機は、その残骸すら見つかっていないとか、多くの疑義が残っています。

このことと関わって、911事件は「ブッシュ氏による自作自演ではなかったのか」という声があるくらいですから、ビンラディンを捉えて裁判にかけ、真相を解明することは世界中の心ある人が願っていたことでした。

このような疑惑を晴らすためにも裁判にかけて真相を究明することは不可欠の作業ではなかったでしょうか。

まして殺されたときのビンラディンの写真が公開されなかったり、死体も海の底に埋めてしまい、第3者に確認しようがないやりかたで処分するのでは、無用な疑惑を拡大するだけではないでしょうか。

この度の東北関東大震災では、肉親の遺体を発見できずに、いまだに探し続けている方も少なくありません。その上、放射能汚染がひどくて、探し続けることすらも断念せざるを得ない方も見えます。

このように肉親の遺体をしかるべき場所にしかるべきかたちで葬ってあげたいと願うことは、誰しも願っていることです。その願いもオバマ氏は、公正な手続きもなく、無惨にも踏みにじってしまいました。

ですから、この度のオバマ氏によるビンラディン殺害とその遺体の処理は、初歩的な国際法違反であるだけでなく、人命軽視・人権無視という点でも、吐き気をもよおす行為であり、強い憤りを感じざるを得ません。

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イラク戦争は、嘘で始められた戦争でした。その結果、無実のイラク人を大量に殺すことになった(百万人を超えると言われている)ブッシュ氏は、何ら罪に問われることなく、逆に侵略された側のフセイン大統領が死刑にされました。

しかも、クルド人を毒ガスで大量殺戮したとされる犯罪その他も、ブッシュ氏が殺した人数と比べれば、実に小さく見える犯罪です。またそれは、当時の米国政府=ブッシュ大統領(父)の資金援助と武器援助によって初めて可能となったものでした。

フセインがミロシェヴィッチ大統領(ユーゴスラビア)の裁判のような国際裁判ではなく、イラクの国内裁判になったのは、このような経過を国際裁判で暴露されたくなかったからだというのが一般的な見解です。

このイラク戦争ではフセイン大統領の息子が殺されたときも死体がこれ見よがしに米国新聞の紙面を賑わせましたし、フセイン大統領が絞首刑になるときも、テレビで繰り返し映像が流されました。

今回さらに驚いたのは、ビンラディンが殺害されるようすをオバマ氏を初め政府高官が、まるでスポーツを観戦するかのように大画面で眺めている写真が公開されたことでした。

まるで闘牛でも観戦するかのように、大勢で人殺しの場面を大画面で見つめ、しかもそのようすが写真で取られることを許す神経を私は信じることができません。なぜなら報道によれば、「逮捕」ではなく「暗殺」が最初からの指示だったからです。

自国の兵士は棺桶すらも撮影を許さないのに、敵の暗殺は大画面で観戦するというオバマ氏のやり方は、ブッシュ氏の言動だけを「妄動」「理不尽だ」としてきた私たちの認識を更に大きく変えるものになりました。

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しかし、よく考えてみれば、ブッシュ氏が犯してきた巨大な犯罪を「未来に向かって進むためには過去は問わない」「過去の犯罪を糾明しない」とするオバマ氏の姿勢を見れば、今日のことは予想されて当然のことだったのかも知れません。それはアフガニスタンやパキスタンで無人爆撃機を使って殺戮を繰り返してきたことにも、よく表れています。

報道記事を読んでいて更に驚いたことがあります。それはビンラディンが住んでいたアボタバードの邸宅は、パキスタンの名門士官学校のすぐそばにあり、ビンラディンがアフガニスタンからパキスタンに移り住むようになってから既に7年半が経っているのです。
Democracy Now Japan!の記事では次のように述べています。

ビンラディン潜伏への直接関与の証拠でパキスタン軍に疑惑の目
http://democracynow.jp/dailynews/2011-05-05
 アボタバード市の、オサマ・ビンラディンがどうやって潜伏していられたのか、多くの疑問が生じています。
 レオン・パネッタCIA長官はビンラディンの潜伏場所について、パキスタン政府はそれを「知っていたか、そうでなければ突き止める能力がなかったということだ」と述べたと報じられています。パキスタン軍がビンラディン潜伏に直接関与していた可能性を示すいくつかの証拠が出はじめています。
 一方、パキスタン政府は、今回ビンラディンが殺害された場所のことを、2年前に米国情報部に警告したと主張しています。
 カナダのグローブ・アンド・メール紙の外報特派員で数々の受賞歴があるジャーナリストのグレイム・スミスに、パキスタンから話を聞きます。スミスは、4日にアボタバードでビンラディンの潜伏場所をめぐる謎を調査しました。
(この記事のさらに詳しいインタビュー記事は下記を御覧ください。)
Pakistani Military Faces Scrutiny as Unfolding Evidence Suggests Direct Role in Harboring bin Laden
http://www.democracynow.org/2011/5/5/pakistani_military_faces_scrutiny_as_unfolding

 この記事を読む限り、オバマ氏もパキスタン政府もビンラディンがパキスタンのアボタバード市(しかも名門士官学校がある有名な保養地)にいることを知りながら、アフガニスタンやパキスタンにおける「アルカイダ撲滅作戦」を続けていたことになります。

アフガニスタンで兵員増派による戦争を続け、さらにそれをパキスタンのいわゆる「トライバル・エリア」と呼ばれる国境地帯まで戦争を拡大したのがオバマ氏でした。今までブッシュ氏がやらなかった無人機による殺害の大幅採用で、多くの民間人を殺害しているのも、オバマ氏です。

ところが911事件を起こしたとされる「アルカイダ」は、ほとんど実態らしきものはなく、しかもその指導者とされるビンラディンがアボタバード市にいたとなると、今までにアフガンやパキスタンで戦死した人たちは、多くの民間人も含めて、いったい何のために殺されたのでしょうか。

(しかも無人機よる殺害はパキスタン政府による許可がなく、CIAの秘密作戦だと言われているのですから、ますます頭が混乱してきます。これはアメリカ正規軍の行動でもないのですから。)
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最後に、もう一つだけ書いておきたいことがあります。それはこの暗殺計画の作戦暗号名がアメリカインディアンの伝説的なアパッチ族の指導者「ジェロニモ」だったことです。
アメリカ先住民の人たちは、このニュースを聞いて「白人の侵略と闘った自分たちの偉大な指導者をテロリストと同列に扱う気か」と激怒しました。

先住民の活動家ウィノナ・ラデュークは、ビンラディンを 「ジェロニモ」と呼ぶ米政府は先住民との戦争をいまだに継続中なのだとして、このことを次のように述べています。
http://democracynow.jp/(2011/05/06)

「実際のところ、米軍用語は先住民族関係の言葉で溢れています」「ブラックホーク・ヘリコプターにアパッチ・ロングボウ・ヘリコプター、トマホーク・ミサイルもそう。外国にある米軍基地を“リザベーション”(保護地区)と呼び、基地を離れるときには“保護地区を離れてインディアンの土地に入る”と言います。ここにこめられているメッセージは何でしょう? 基本的に、先住民に対する戦争はいまも続いているということです」

(もっと詳しい記事は下記を御覧ください。)
Native American Activist Winona LaDuke on Use of "Geronimo" as Code for Osama bin Laden: "The Continuation of the Wars Against Indigenous People"
http://www.democracynow.org/2011/5/6/native_american_activist_winona_laduke_on

しかし、私はアメリカ政府がビンラディン暗殺計画を「ジェロニモ」と名づけたことを非常に興味深く思いました。というのは、白人の侵略と闘った先住民指導者の名を取ってビンラディン暗殺計画を立てたということは、逆にビンラディンを、ジェロニモと同じ「勇気ある抵抗者」の地位に押し上げたことになるとも考えられたからです。

またアメリカに住む多くの国民に、今まで忘れ去られていた「ジェロニモ」の名を再び呼び起こし、アメリカという国がどのような血塗られて歴史を背負って現在に至っているかを改めて考えさせる絶好の機会を与えることになりはしないか、とも考えたのです。

ハワード・ジンのVoices of a People's History of the United Statesの翻訳が終了目前であるだけに、特にその思いを強くしたのでした。そう思っていたら、下記のようにチョムスキーも私と全く同じことを考えていることを知り、二重に嬉しく思いました。

My Reaction to Osama bin Laden's Death
http://www.zcommunications.org/my-reaction-to-osama-bin-laden-s-death-by-noam-chomsky

Same with the name, Operation Geronimo. The imperial mentality is so profound, throughout western society, that no one can perceive that they are glorifying bin Laden by identifying him with courageous resistance against genocidal invaders.
「ジェロニモ作戦という名前についても同じである。帝国主義的な思考方法は西側社会ではとても深遠なので、ビン・ラディンを大量虐殺の侵略者に対する勇敢な抵抗者ジェロニモに見立てたことで、彼らがビン・ラディンを賛美していることになっていることを、誰も気づくことができない。」

このチョムスキーの「My Reaction to Osama bin Laden's Death」という小論は下記に翻訳を載せておきましたので、時間があるときに全文をお読みいただけると有り難いと思います。

チョムスキー「ビンラディンの死について考える」公開110509
http://www42.tok2.com/home/ieas/chmsky110507binladen_assasination..PDF


<註> オバマ氏がビンラディンの暗殺をホワイトハウスで緊急声明で発表したのは、アメリカ時間の2011年5月1日(日)夜でした。日曜日の夜に緊急声明を発表するのは極めて異例のことです。なぜ暗殺に「メーデー」の早朝が選ばれたのか。米国は「メーデー発祥の地」でありながら、なぜ「メーデー」という日を認めず、「レーバーデイ」を別に定めているのか[9月の第1月曜日で法定休日]。これについても書きたいことがあるのですが、今は時間がないので後日にします。
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チェルノブイリ原発事故二五周年(上)ー 生まれてきた子どもの80%が障害児ですよ

さる4月26日(火)はチェルノブイリ原発事故25周年記念に当たる日でした。先のブログで私は、下記の「原発事故・学習資料」を載せ、「詳しくは時間を見つけてブログに解説を連載していくつもりです」と書きました。

ですから25周年記念日までに1回は解説を書きたいと思っていたのですが、翻訳の無理がたたったのか風邪で寝込んでしまい、5月1日(日)の今、やっとパソコンに向かっている次第です。

福島原発事故「学習資料」
http://www42.tok2.com/home/ieas/educationindex.html

さて、このブログを書こうと思っていた矢先の、昨日4月30日(土)に内閣官房参与である小佐古敏荘(こさこ・としそう、東大教授。放射線安全学)氏が辞任したというニュースが飛び込んできました。政府の示した「子ども、年間20ミリシーベルト」という被曝線量の制限値があまりに緩すぎて「学者としての良心からも受け入れがたい」など幾つかの理由をあげていました。

小佐古参与が涙の辞意表明 政府の原発対応批判
http://www.youtube.com/watch?v=1DQfFR4NsZM

しかし、NHKの報道では肝心の「年間20ミリシーベルト」という被曝線量の制限値があまりに緩すぎて「学者としての良心からも受け入れがたい」と涙ながら述べた部分が、すっぽりと抜け落ちてしまっています。従来からNHKは政府の宣伝機関に成り下がっているのではないかとの批判が強かったのですが、それを自ら証明するようなかたちになってしまいました。

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そもそも「年間1ミリシーベルト」というのが、大人の一般人に許容された被曝線量とされてきたのですから、「子ども、年間20ミリシーベルト」という被曝線量値が示されたとき、「政府は子どもを殺したいのか!」と思わず心の中で怒鳴ってしまいました。この関係を分かりやすく図式化したものを、先に紹介した「学習資料」でも載せておきましたから、ぜひ参照して欲しいと思います。

図表「被曝線量と健康障害の関係」
http://www42.tok2.com/home/ieas/hibakusennryou062.pdf

上記の図表は『増補新版、受ける?受けない?エックス線 CT検査、医療被ばくのリスク』(七つ森書館、2008:.168-169、600円)から引用したものです。この本は、原発の学習資料として役立つだけでなく、日頃からエックス線 CT検査を受ける際に、どのようなことに留意すれば良いかを分かりやすく説明した小冊子ですから、ぜひ一読されることをお勧めします。

また、「子供と放射線」「放射線被曝線量と健康障害の関係」の関係を手っ取り早く、インターネットで知りたいという方は、下記の映像をお勧めします。原子力資料情報室の崎山比早子氏(元放射線医学総合研究所主任研究官)に今井理恵氏(港町診療所産婦人科医)が質問するというかたちで進行していきますので理解しやすいですし、時間がない方は最初の15~30分を見るだけでも良いと思います。

「放射線被曝線量と健康障害の関係」
http://www.ustream.tv/recorded/13473951(20110321)約60分

しかし、放射線が人体にどういう影響をもたらすかを具体的に知っていないと、毎日を忙しく追い回されているひとは、上記に紹介したような本や映像をなかなか見る気にはなれないかも知れません。そういう意味では、下記の写真集は放射能とは何なのかを一目瞭然に教えてくれます。

写真集「チェルノブイリの子どもたち」
http://www.paulfuscophoto.com/#mi=2&pt=1&pi=10000&s=0&p=1&a=0&at=0

上記の写真はチェルノブイリの被害だけですが、下記の文庫本は、チェルノブイリの被害だけでなく、スリーマイル島、イギリス再処理工場、イスラエル核基地の事例が、広河隆一さんのカラー写真で豊富に盛り込まれています。発行は1991年ですが、いま読んでも全く古さを感じさせません。

広瀬隆&広河隆一『悲劇が進む―新版 四番目の恐怖』講談社文庫、1991

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ところで、上の写真は、放射能を浴びた子どもにどのような症状が現れるか、その子どもが成人して結婚したとき、どのような子どもが生まれる可能性があるかを示してくれますが、チェルノブイリ の原発事故とはどのような規模のものだったかを教えてくれるわけではありません。それを教えてくれるのが下記の映像です。

「NHK特集、汚された大地で~チェルノブイリ 20年後の真実」約50分
http://www.youtube.com/watch?v=PHeq8TfSRBM

公共放送であるNHKは、チェルノブイリ25周年記念として再びこのような特集番組を組んで国民を啓蒙する役割を、担っているはずですが、残念ながら今のNHKは先にも述べたとおり、政府の御用機関と化していますので、過去にNHKが編集したものを見る以外にありません。

チェルノブイリ原発事故は国際評価基準で最高度の「レベル7」を記録し、今度の福島原発事故はそれを超える可能性があると言われています。そのチェルノブイリの現在を記録した最新映像・最新データを紹介した番組が下記のものです。

「チェルノブイリ、百万人の犠牲者」(日本語字幕つき 30分)
http://www.universalsubtitles.org/en/videos/zzyKyq4iiV3r/

この映像は、大著『チェルノブイリ、その大惨事が人と自然に与えた影響』(Chernobyl: Consequences of the Catastrophe for People and Nature)という調査記録をまとめた一人、ジャネット・シェルマン女史に対してインタビューをおこなったものです。

先ず第1の驚きは、このインタビューが福島で事故が起きる6日前だったということです。この番組で、同じ悲劇・惨劇が世界のどこかで今すぐにでも起きる可能性があることを警告していた矢先に、福島の原発事故が起きたことは、非常に皮肉な事実でした。

第2に驚かされたのは、上記の本では、公刊されているあらゆる調査資料・記録を集大成した結果として、死者の総合計を98万5千人としていることです。しかも1986~2004年までの調査ですから、2011年の現在では百万人を超えているだろうと推測されています。

第3の驚きは、国際原子力機関(IAEA)が、その犠牲を小さく見せようとして、チェルノブイリ事故による死者数を4000人としているだけでなく、世界保健機構(WHO)と一緒になって、被害実態の科学的調査を妨害してきたという事実でした。

(だとすれば、日本政府や東京電力が、なるべく事故を小さく見せようと努力してきたのも、当然と言えるでしょう。)

上記の映像には、放射能がドイツを初めとして世界中に広がっていくようすもカラーの世界地図で示されています。これを見れば、何故いま世界中の眼が日本に注がれているのかも、改めて理解できるでしょう。

私は今、この文章を書きながら、この30分足らずの映像が持つ迫力を十分に読者に伝えきれない、自分の文章力に歯がゆさを感じています。ぜひ自分の目で確かめてください。
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<註> 上記のインタビューは先述のとおり、福島で原発事故が起きる6日前におこなわれたものですが、これに日本語字幕を付けて直ぐに配信してくれる人がいることに本当に感謝したいと思います。
 と同時に、日本で英語力が本当に役立つのは、「読んで理解できおる力」「聞いて理解できる力」であって、いま流行の「英語で会話」「英語でディベート」ではないことを、この映像資料は改めて教えてくれます。
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私は既に3月18日のブログ「福島原発事故(1)」で、外国政府がいち早く日本在住の自国民に退去勧告を出したことについて次のように書いています。

<このような外国政府の動きに対して日本政府の対応は本当に歯がゆいばかりです。政府は福島一円から住民を移住させるための抜本的な対策を立てる必要があるのではないでしょうか。>
<津波が来ると予想されるときは、あらかじめ住民を学校や公民館に避難させます。もし津波がそれほどひどくなかったとしても、そのことで避難指示をした自治体が「無駄なことをさせた」と住民から非難されることはありません。住民は「この程度の津波でよかった」と喜んだり安心したりするだけです。原発事故の場合も、これと同じです。>
<国や自治体は一刻も早くこのような対策を立てるべきでしょう。そうすれば「水も電気も食料もない、住むところもない」などと言っているひとを、弱小自治体まかせにしなくても済みます。>

ところが政府が今やっていることは、全くこれと逆のことをやっているように私には見えます。新聞報道によれば、仮設住宅の建設も必要数の約1割に達したばかりというのですから呆れるばかりです。

東北地方では、ホテルや旅館も今は観光客がなく閑古鳥が鳴いているという話ですから、国や自治体が借り受けて被災者に提供すれば、その分だけ経済効果も出るはずです。

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放射能の被害を防ぐためにも遠距離への緊急避難が、先ず求められる指示・対応策だったはずです。ところが、政府は今頃になって、「自宅退避」だった地区の住民も「強制退避」に踏み切るなどの措置を取っています。これでは順序が全く逆です。先ず大事を取って遠距離に避難させた上で、安全だと分かったら自宅または自宅近辺に戻すのが、緊急避難の鉄則です。

津波にさらわれてから避難指示を出したのでは、救助のしようがありません。これは放射能被害についても全く同じです。特に「放射性ヨウ素(131)」は半減期が短いのですから、原子炉が事故を起こした直後に避難させなければ、ほとんど意味がないでしょう。

なぜなら、今ごろ遠距離に避難させても、既に大気中に放出されたヨウ素を吸い込んでしまっている可能性があるわけですから、強制避難させる意味が半減してしまうからです。

ところが政府が取った態度は既に述べたように、これと全く逆でした。それどころか福島県いわき市では自治体独自の判断で「ヨウ素剤」を配ったら、それを国の命令で回収させられるという事件もありました。

緊急報告会「福島原発震災 ―“いわき”からの報告―」
http://www.ustream.tv/recorded/13745975

放射性ヨウ素の場合、あらかじめ「ヨウ素剤」を飲んでいれば、放射性ヨウ素を間違って吸い込んでも、ヨウ素剤を飲むことによって甲状腺癌になることを防ぐことができます。しかし、これは放射性ヨウ素の吸入後8時間では、その効果は40%、24時間以内では7%程度になってしまいます。

つまり、ヨウ素剤は予め配っておいて必要なときに即座に飲んで初めて効果があるのに、政府の対応は全く逆だったということになります。事故が起きてから慌てて放射性ヨウ素を取り寄せて配っているうちに、24時間くらいはあっという間に過ぎてしまうからです。
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<註> なお「ヨウ素剤」の服用については下記に詳しい解説がありますから、心配な人は、ぜひ参照してください。
「放射線被曝線量と健康障害の関係」
崎山比早子(元放射線医学総合研究所主任研究官)&今井理恵(港町診療所産婦人科医)
http://www.ustream.tv/recorded/13473951(20110321)

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以上のことは、郡山市の小学校で運動場の土が放射能で汚染されている問題についても、全く同じことが言えます。このときも、自治体の判断で、その表土を取り除こうとしたときに、文科省から「待った」がかかりました。

このような措置を外国の人たちが見たら、日本の文科省は気が狂ったのかと思うに違いありません。小佐古敏荘氏の辞任の弁にも、「国際常識とヒューマニズムに則ってやっていただきたい」との文言がありました。
http://peacephilosophy.blogspot.com/

少しでも放射能汚染が少ない環境で子どもたちに学習させたいと思うのは、教育者としての当然の責任だと思うのですが、以上のような状況を見る限り、どうも政府や文科省が守りたいと思っているのは、子どもの「命や生活」ではなく、自分たちの「メンツ」であったり東京電力の賠償金であるようです。

かつてアジア太平洋戦争のとき、多くの子どもたちが「学童疎開」をしました。それは米軍の空爆から子どもたちの命を救うためのやむを得ない措置だったと私は思います。だとすれば、同じような措置を今回もなぜ取れないのでしょうか。今のままでは、「年間20ミリシ-ベルト」という放射能の「空爆」を我慢して浴びて討ち死にしなさい、と文科省から命じられているのと同じではないでしょうか。

文科省としては「年間20ミリシーベルト」という基準を断固守りたいのかも知れませんが、これは一種の殺人行為ではないでしょうか。

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同じことは、政府・文科省が言っている「地産地消」「学校給食に弁当持参は禁止」についても言えるでしょう。

かつて中国で生産された餃子が危険だというので、日本では一斉にこれを拒否する事件が起きました。それが中国で生産された食品全体に波及する勢いがあり、それに異議を唱える意見をあまり聞いたり読んだりした記憶がありません。

また2010年4月に宮崎県で家畜に口蹄疫が発生したときも、約29万頭の家畜が殺処分されましたが、このときも、そのような処分に抗議の声や異議を唱える意見を、あまり聞いたことがありませんでした。

屠刹処分は止むなしと政府も農水省も判断したからこそ、「地域経済に与える影響が大きいから我慢して宮崎産の牛肉を食べよう」などというスローガンを、政府・農水省も掲げませんでしたし、宮崎県も「地産地消」などということを声高に叫ばなかったのでしょう。

ところが不思議なことに、現在の福島県を初めとする農産物や海産物については「地産地消」が声高に叫ばれ、その危険性を指摘する意見は「風評被害」として逆に攻撃されるというありさまです。学校給食に弁当を持参する子どもが「いじめ」に遭いかねない雰囲気すらあるようです。

■大人は子供たちを被ばくさせたがっている・・・
http://takedanet.com/2011/04/post_faf5.html
■給食 法律上(規制値以下の)汚染された食材は使えない!
http://takedanet.com/2011/04/post_f0cd.html

こんなことを押しつける政府・文科省は、福島で育った子どもたちが、10年後・20年後に、チェルノブイリ放射能汚染と同じ病状を発病させたとき、どのように責任を取るつもりなのでしょうか。

重ねて問います。政府・文科省としては「年間20ミリシーベルト」という基準を断固守りたいのかも知れませんが、これは一種の殺人行為ではないでしょうか。

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<註> 政府はセネガルの首都ダカールで5月1日に開かれるアフリカ開発会議(TICAD)閣僚級フォローアップ会合で、アフリカへの政府開発援助(ODA)を2012年までに18億ドルに倍増させることを表明する、というニュースが今朝、突然に飛び込んできました。自国民の緊急避難や仮設住宅でさえ十分に手当てできず、国家予算も赤字だと大騒ぎしているのに、対外援助だけは倍増するというのですから、ますます政府の価値観を疑ってしまいます。それともODAは、結局は日本の大企業に儲けが戻ってくる仕組みだから、それはOKだというのでしょうか。
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先に紹介したジャネット・シェルマン女史は、Democracy Now!(2011/04/26)のチェルノブイリ原発事故25周年記念の番組で次のように語っています。

 「原発事故が起きると、それは一つ地区、一つの国、一つの世代、一つの生物だけにとどまらない、巨大な影響をもたらします。」
 「とくにベラルーシという国の場合、子どもの20%しか健常児がいません。もし人口の80%が病気や障害を持っていたとしたら、その社会、その国の未来はどうなるのでしょうか。」

  When a nuclear reactor explodes, the radiation goes around the entire hemisphere. It is not confined to where the people live—or where the accident occurred. The effects are ubiquitous across all species: that's wild and domestic animals, birds, fish, bacteria, viruses, plants and humans. So the effects are extremely serious, and they last for generations.
  We're terribly concerned about Belarus, where only 20 percent of the children are now considered healthy. So, what do you do with a society if 80 percent of your population is sick? Who are going to be the artists and the musicians and the scientists and the teachers, if your population is not well?
http://www.democracynow.org/2011/4/26/chernobyl_catastrophe_25th_anniversary_of_worlds

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<註> 今まで私がずっと不思議に思ってきたことがあります。それは次のようなことです。たとえば、運転を誤って自動車事故を起こした場合(そして死傷者を出した場合)、それは「単なる不注意でした」では済まないはずです。日本の法律では、事故が余りに酷い場合には(私は個人的には死刑制度には反対ですが)殺人罪で死刑になる場合もあるでしょう。ところが、どうもこの原発事故の場合、今の情勢では、単に補償金だけが問題で、死刑どころか誰も牢屋に入る気配すらないのです。これが私には不思議でなりません。

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ここまで書いてきたら、また風邪がひどくなってきました。しかし次のようなメールをいただいているので、「原発を止めて電力が大丈夫なのか」という問いにも答えなければならないのですが、風邪がぶり返しては何にもならないので、ここで止めます。

<先生の最新のブログと「福島原発事故の資料一覧」も拝見させて頂きました。特に写真集「チェルノブイリの子どもたち」が、かなり印象的でした。浜岡の原発など、少しでも早く原発を止めるためには、署名なども有効でしょうが、より建設的な意見としてある程度、その分のエネルギーをどうするかについての案も、これからは出していく必要があるのかもしれません。>

しかし、結論だけを先に言わせてもらえば、「原発は経済的にも全く非合理的だし」「いま保有している火力発電や水力発電で必要電力は間に合わせることができる」ということです。詳しくは次回のブログで書きます。

既に紹介した「福島原発事故の資料一覧」にも、その答えが載っていますので、お急ぎの方はそちらを御覧ください。
http://www42.tok2.com/home/ieas/educationindex.html

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