小出裕章氏の言説について ― 追加資料

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小出裕章氏の「変節」を喜ぶ ―「除染は意味がないし、もう福島には戻れない」という言説について

翻訳の校正が予定どおり進んでいませんし、身体の調子もあって、このブログは10日に1度くらいのペースでしか書けないと思ってきたのですが、最近の小出裕章氏の言動が大きく変化しつつあるので、記憶が鮮明なうちに書いておかないと、出典も分からなくなってしまうと思って、いま仕方なくパソコンに向かっています。

というのは今までのブログで何度か小出氏の発言を取りあげ、その問題点を指摘してきした。たとえば、7月21日(木)のブログで私は氏について下記のように書きました。

歌と映像で学ぶ私の原発学習(2)―南正人「原発小唄」、黒澤明「赤富士」(「私たちをこんな目にあわせた連中を“縛り首”にしてやりたい」)、そして広瀬隆氏らによる刑事告発へ
http://pub.ne.jp/tacktaka/?entry_id=3790771

・・・。ところで、放射能で汚染された牛肉が全国で発見され家庭でも食されていることが、最近の大手メディアでも話題になっています(しかしNHKニュースやクローズアップ現代では、ほとんど話題になっていないのが不思議です)。
 しかし考えてみれば、大手メディア(特に国策放送局と化したNHK)が「福島を食べよう」とか「福島の復興を!」とかの宣伝・煽動を重ねてきたのですから当然と言えば当然のことです。
 「汚染されたものを福島から外に出すな」「汚染されていない食品を福島へ!」と、くりかえし呼びかけてきた私としては、「何を今さら!」というのが実感です。
 もっと困ったことは、今や「反原発の英雄」「反原発のヒーロー」となっている小出裕章氏が、ラジオ番組「たね蒔きジャーナル」で、「一次産業を救うためには福島を食べざるをえない」「原発事故を起こしたのは大人の責任だから汚染された食べ物を私たちが食べよう(そして子どもを救おう)」と、くりかえし言ってきたことです。
 インターネットだけでなく民放にも登場するようになった小出氏がこんなことを言っていれば、福島の農家の人たちが「安心して」農産物や畜産物を県外に出そうとするのは、当然のことではないでしょうか。原発事故の現状分析にかけては小出氏を超える人物がいないだけに、何とも名状しがたい気分です。
 ただし、広瀬隆さんたちが東電などを刑事告発してからは、「犯罪者の東電に調査させて食物の汚染度を公表させろ」というように、小出裕章氏の言辞は若干の変化を見せ始めています(下線部に注意)。
 しかし、いずれにしても、「反原発」の運動を地道におこなってきた小出氏を、上記のように告発することは、私自身にも大きな躊躇(ためらい)がありましたが、いつも「政治は嫌いだ」と言っている氏の言動が別の大きな「政治的働き」をしているだけに、放置しておくわけにはいかないと思うようになりまし た。
 しかし、「この原発事故の責任は誰にあるか」という「責任論」は、「戦争責任」の問題とも重なって、非常に重要な問題であり、十分なスペースを取って論じなければならないことなので、今回は事実の指摘のみにとどめさせていただきます。

また8月11日(木)のブログでは、再び氏の言説を取りあげ、下記のように書きました。

(ブログのタイトルに本当は、「怒りを忘れた日本人」ではなく「怒りを忘れた小出裕章」と書きたかったのですが、「それでは余りにも小出氏が可哀想ではないか」「同士討ちの印象をブログ読者に与えるのはまずいのではないか」との意見を入れてタイトルから外すことにしたのでした。)

歌と映像で学ぶ私の原発学習(3) ―「歌を忘れたカナリア」「怒りを忘れた日本人」VS「東大教授・児玉龍彦」「俳優・山本太郎」
http://pub.ne.jp/tacktaka/?entry_id=3829276

・・・。ところで、一貫して反原発を貫いてきた小出裕章氏によって、「汚染されたものは原発を許した大人が食べるべきだ」といった発言が何度も繰り返されると、それは全く別の政治的影響を持ち始めます。
 原発反対運動の英雄によって何度も繰りかえされるこのような発言は、政府と東電はさぞかし大喜びでしょう。氏の発言は政府と東電に絶好の「免罪符」を与えることになりかねないからです。
 他方、衆議院厚生労働委員会の参考人として、「私は法律を犯しています!」「いったい国会は何をしているのか?」「国の原発対応に満身の怒りを表明します!!」と怒りをあらわにした学者もいました。

動画:東大教授・児玉龍彦、国会で怒りの訴え(2011/07/27、約16分)
http://peacephilosophy.blogspot.com/2011/07/blog-post_29.html

 「御用学者しかいないのか」と東大への幻滅感が広がりつつあるときだっただけに、児玉氏の怒りの声は、ツイッターなどを通じて、日本全国に共感の大津波を広げました。
 しかし小出氏の発言には上記の児玉氏のような怒りが感じられないのです。原子炉をめぐる分析の鋭さに感心しつつも、「たね蒔きジャーナル」を聞くたびに、それが私を大きく失望させてきました。
 それに引き替え、怒りをかたちしながら子どもを守るために奔走する俳優・山本太郎氏の真摯な発言と行動は、私に何か未来に明るさを感じさせました。約30分にわたるものですが、時間を見つけてぜひ見ていただきたいと思います。

山本太郎が見た“福島の現実”(2011年7月21日、32分)
http://www.dailymotion.com/video/xk1bxv_20110720-yyyyyyy-yyyyy_news

(「騙した連中よりも騙された方に責任がある」とも受け取られる小出氏の言説については時間をかけてゆっくり詳しく論を展開しなければならないのですが、今日はこれで力が尽きましたので、機会を改めて書きたいと思います。)

私が上記で、「原子炉をめぐる分析の鋭さに感心しつつも、『たね蒔きジャーナル』を聞くたびに、それが私を大きく失望させてきました」と書きましたが、その典型例をひとつだけあげるとすれば、6月21日(火)の下記「たね蒔きジャーナル」でしょう。

海の汚染を調べれば漁師の生活を壊す。私は躊躇する。
http://hiroakikoide.wordpress.com/?s=%E6%B5%B7%E3%81%AE%E6%B1%9A%E6%9F%93

この中で氏は次のように語っています。[氏の発言は毎回、「小出裕章(京大助教)非公式まとめ」というブログで文字起こしされているのですが、この回だけは要約だけが載せられていましたので、それを以下に転載します。]

水野アナ:
 被災地の漁港。海の大量の瓦礫を引き上げていた。再開のためには船が必要。億単位のお金の投資をしなくてはいけない。これまでどおりの商品価値の魚は採れるのか。放射能の汚染について伝えにくかった。どう思うか。

小出裕章:
 私も言えないと思う。現在の海の状態を調べる一番有効な手段は海藻を調べること。 ずっと伝えてきたが。原子力発電所から距離ごとに100メートル、200メートル、あるいは500メートル、1キロというように海藻を調べていく。どの距離までどれだけの汚染が到達しているかを概算だが把握できる。
 ただこれを行うと、どこまで漁ができるか、商品価値のある漁業ができるか、が歴然と分かってしまう。そうなると私自身は福島の一次産業を守りたいと思っているので、どんな汚染があっても日本人として買い支えなくてはいけないと思っているし、今まで通り漁をして欲しいと思っている。だが実際汚染がわかると、日本の人たちは買わない方向に走る事は疑い得ない。汚染を調べることがいいことなのかどうなのか。漁師の生活を壊す方向になる。私としても躊躇がある。
 私自身は科学という場に携わっている人間。正しい情報が命です。他の皆さんに比べても、私はどうしても正しい知識を知りたいし、正確に公表したいと思っている。それでも今の段階でそれをすると、福島の農業漁業が崩壊するおそれがある。なんとか買い支えよう食べようと呼びかけているが、そんなことが 実現できるかには自信がない。立ちすくんでしまうという現実がある。

私はこのときも、この番組を音声で聞いていました。いつもは明るい調子でするどい質問を投げかける水野アナウンサーが、今度ばかりは少しトーンを落として次のように質問しているのです。

「取材で漁港へ行ったが、そこで漁業復興の意気に燃えている漁師さんに、そこは高濃度の放射能で汚染されている恐れがあるんではないですか。復興にかける努力・お金が無駄になりはしませんかと言いたかったが、胸が痛んで最後まで言えなかった。しかし科学者である小出先生はいかがですか」と

彼女としては「子どもたちを守るためには、大人は汚染物を食べなければならない。そのためには農産物の汚染度を調べなければならない」と言っていた小出氏だから、「でも測るべきだ」と言ってくれるものだとばかり思っていたのに、その氏からまさか「測ると福島の農業漁業が崩壊するおそれがある。だから私は立ちすくんでしまう」という答えが返ってくるとは夢にも思わなかったのではないでしょうか。

私の思い過ごしかも知れませんが、だからこの日の彼女は、最後を消え入るような声で「ありがとうございました」と締めくくっていたのが印象的でした。彼女にしてみれば、「もし汚染度を調べることによって漁業が崩壊するおそれがあるのであれば、農業についても全く同様ではないか・・・」という釈然としない思いが残ったからではないでしょうか。

彼女の疑問は当然でしょう。「汚染された農産物については(汚染度を調べた上で)大人が引き受けるべし」というのが氏の主張なのであれば、海産物についても同じはずです。逆に、調べることによって漁業が崩壊するのであれば、「農産物は調べた上で大人が食べろ」という主張は、なぜ農業を崩壊させないのか、と誰しも思うからです。

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私にしてみれば「大人は食べろ」という主張も理解し難い論理です。普通の平均的家庭で大人と子どもの両方を別々につくる時間的かつ金銭的ゆとりのある家庭は、日本にどのくらい存在するのでしょうか。

お金持ちでお手伝いさんなどを雇うことができる裕福な家庭であれば、そんなことも可能でしょうが、そもそもお金持ちは汚染された食べ物など絶対に買わないでしょう。どんなにお金がかかっても汚染されていないものを、通販などあらゆる手段を使って手に入れるでしょう。

旧ソ連では汚染されていない食料を外国から輸入して被災者に配るということもやったそうですから、お金持ちは外国から輸入したものを食べているかも知れません。それどころか、子どもを外国へ避難させているかも知れません。こうして「大人は食え」と言っている限り、弱者・貧困者だけが汚染食料を食べることになっていく恐れがあります。

(旧ソ連では、汚染されていない食料を買うために、毎月、補助金すら支給されていた事実があります。)

だからこそ私は何度もこのブログで下記の三つを緊急の取り組みとして呼びかけたのでした。
(1)汚染されたものを食べようと呼びかけるのではなく、逆に汚染されていない農産物や海産物を東北・関東地方に届けて、住民の生命と生活を守ること
(2)国や自治体の力で住宅を用意し、高濃度の放射能に汚染されている地域の住民を集団疎開・集団移住させ、一刻も早く義援金や賠償金を「前倒し」して、それを被災者に届けること
(3)それと同時に、将来の「被曝訴訟」に備えて被災地の住民全員に「被曝手帳」「被曝証明書」を配布し、いつ・どこで何日いたかを記録させること、既に移住してしまっている人たちにも、移住先を追跡調査して、「被曝手帳」を必ず届けること


ところが、ほとんど毎回この「たね蒔きジャーナル」を聴いていても、小出氏の口から「汚染されていない農産物や海産物を東北・関東地方に届けよう」ということばが出てくるのを一度も耳にしたことがありません。

また「子どもだけは守らなければならない」ということばは何度も耳にしましたが、「高濃度の放射能に汚染されている地域の住民を集団疎開・集団移住させよう」「せめて子どもだけでも学童疎開させよう」ということばも、氏の口から出てきたことは、私の知る限り一度もありませんでした。

福島県郡山市の小中学校に通う子ども14人が郡山市に対し安全な地域に学校ごと集団疎開するよう求める裁判の第1回審理が7月6日に行われましたが、このような動きを支援するということばも、私の知る限り、氏の口から出てきたことは一度もありません。

それに反して、市民による放射能測定所を設け一貫して学童疎開を呼びかけてきたのは、広瀬隆・広河隆一氏らのグループでした。

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しかし、広瀬隆さんたちによる政府・東電などの刑事告発があってから、小出氏の言動は若干の変化を見せ始め、さらに8月22日(月)あたりから、氏は突然、「除染はしても意味がない。除染はできない」「本当はもっともっと深刻な汚染なんだと国はまずは言わなければいけない」「少なくとも50キロ離れた飯舘村までは人が戻れるレベルではありません」と言い出したのです。

「本当はもっともっと深刻な汚染なんだと国はまずは言わなければいけない」
(STVラジオ2011年8月22日)
http://hiroakikoide.wordpress.com/2011/08/25/stv-aug22/

「汚い国。少なくとも50キロ離れた飯舘村までは人が戻れるレベルではありません 」
(MBSラジオ「たね蒔きジャーナル」(毎日放送)2011年8月22日)
http://hiroakikoide.wordpress.com/2011/08/23/tanemaki-aug2-2/

「高濃度の下水処理場汚泥などは石棺や地下バウンダリーの材料にすればよい」
(MBSラジオ「たね蒔きジャーナル」(毎日放送)2011年8月22日)
http://hiroakikoide.wordpress.com/

しかし、小出氏による「大人は食べるべきだ」との声に励まされて、今まで畑や田で野菜や米を作ろうと意気込んでいた人たちは、小出氏の「少なくとも50キロ離れた飯舘村までは人が戻れるレベルではありません 」と言われて、どんな気持ちがしたでしょうか。

耕作地の汚染された表土をひっくり返したり表土をはぎ取ったりしながら野菜や稲作に励んできた農民にとっては、今さら「本当はもっともっと深刻な汚染なんだ」「人が戻れるレベルではありません 」と言われたんでは、立つ瀬がないでしょう。怒りを通り越して、ことばも出ないのではないでしょうか。

しかも、「本当はもっともっと深刻な汚染なんだと国はまずは言わなければいけない」ということばを聞いて、私は思わず耳を疑ってしまいました。この「国」ということばを「研究者」「科学者」ということばに代えて、そのまま小出氏にお返ししたいと思ったからでした。

というのは、政府3キロ地点は帰宅できないほど高濃度汚染地域になっていることを政府が発表にしたことに関して、驚いたことに、小出氏は、8月22日の「たね蒔きジャーナル」で、次のように言っているのです。

「汚い国。少なくとも50キロ離れた飯舘村までは人が戻れるレベルではありません 」
http://blog.livedoor.jp/amenohimoharenohimo/archives/65759478.html

水野 「はあー、で、この発表がなんで今なんだろうかと、思うんですよ。これは今にならないとわからないものなんですか」
小出 「いいえ、とっくに分かっていました」
水野 「だいたい何月頃にだったらわかって…できるだけ早く皆さんにお伝えしようとしたら、何月頃に発表できるものだったんですか。」
小出 「もう3月中には分かっていました」
水野 「ああ、3月中には計算できるものなんですね」
小出 「はい」
水野 「なんで今なんですか?」
小出 「言いたくなかったんでしょうね」
(中略)
水野 「ただですね、ラジオネーム・こーらるさんごうさんという方がこういう1句(ママ)下さっております。『今頃に、なってやっぱり、だめという』。つまり、えーまあ、もう戻れるかも知れないというような淡い期待だけを持たせて、今度はもしかしたら最低10年帰れないところもあると、いうような話になってきているわけですよね」
小出 「はい。最低ではありません。何十年、100年、200年という単位で帰れません。」
水野 「はあー、じゃあ、人間の一生から見たらずうっと帰れない…」
小出 「1人の人間から見れば、もう一生です」
水野 「でもそのことを国が言いませんやん」
小出 「汚ない…」
水野 「いかにも何年かしたら帰れそうですし。早い人はもう9月にも帰れそうではないですか」
小出 「はい。汚い国だと私は思います」
水野 「でも本当にもし、どっかの地域を除染して、帰れるということで、帰してしまう可能性もありますよね、国は」

上記の小出氏のことばからすれば、「帰れない」ことは「もう3月中には分かっていた」のです。

そして「戻れるかも知れないというような淡い期待だけを持たせて、今度は最低10年は帰れないところもあるというような話になってきている。でもそのことを国は言わなかった」という水野アナウンサーのことばを受けて、小出氏は「はい。汚い国だと私は思います」と述べているのです。

しかし、「帰れない」ことは政府にも「3月中には分かっていた」とすれば、原子炉の研究者である小出氏にも同じことが言えるはずです。ところが毎回の「たね蒔きジャーナル」を聞いてきたつもりの私が、これまで一度たりとも氏の口から「帰れない」ということばが出るのを耳にしたことはありません。

沖縄の集団自殺や満州の残留日本人孤児を例にあげながら、私はブログで何度も「これまで国家は国民を守ったことがない」と述べてきましたから、国家が「汚い」ということは私もよく知っているつもりですが、「3月中には分かっていたのに国民にそれを言わなかった」ことを理由に小出氏が国家を「汚い」と評するのであれば(そして事実それは「汚い」行為なのですが)、「では小出氏はどうだったのか」と、どうしても問い詰めたくなるのです。

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では今頃になって、なぜ小出氏は「除染はできない」「自宅に戻ることもできない」と言い出したのでしょうか。

それは私が推測するに、7月28日の衆議院厚生労働委員会で東大教授・児玉龍彦氏が「七万人の人が自宅を離れて彷徨っているときに国会は一体何をやっているのですか」と満身の怒りを込めて政府と議員を告発し、それが大きな反響を呼んだたことが一因になっているのではないかと私は思っています。

児玉氏は上記の委員会で現地における自分の除染体験を述べつつ、「今のままだと除染は利権がらみの公共事業になりかねない危惧を私はすごくもっております。国の財政事情を考えたら、そんな余裕は一瞬もありません。どうやって除染を本当にやるか」と訴えましたが、それを受けて今や「除染、除染」の大合唱という観すらあります。

小出氏は、このような新しい流れに危機感を感じて、ついに重い腰をあげて「除染はむりだ」「帰宅もむりだ」と声を上げ始めたのではないか。これが私の推測です。

私は、前回8月21日の下記ブログで紹介したように、チェルノブイリの経験からすれば、高濃度汚染地域では「除染」ではなく、「集団移住」や「学童疎開」、あるいは旧ソ連で実施したような、「被爆者」たちだけでつくる「新しい街」づくり以外にないと思っています。

チェルノブイリの教訓 ― 復興へのヒント「新しい街」スラブジチの建設、 ECRRからの警告 ―首都圏を含む200キロ圏内で今後10年間で20万人がガンを発病する!!
http://pub.ne.jp/tacktaka/?entry_id=3848007

莫大な経費をかけても、25年後の現在、放射能のレベルがほとんど下がっていないチェルノブイリの経験から、私たちはもっと学ぶ必要があります。

ですから、小出氏が「除染はむりだ、できないのだ」とハッキリ言い始めたことは大きな前進だと思っていますし、この「変節」を喜びたいと思いますが、あたかも「汚れている」のは「国・政府」だけであるかのような言説は、氏の評価を大きく下落させるのではないかと恐れています。

国・政府だけでなく、おそらく小出氏も「帰れない、戻れない」ということは分かっていたはずなのですから、そのことを自己批判した上で政府を「汚い」と言うべきではなかったでしょうか。

さもなければ、「政治が嫌いな」小出氏の言動が今や大きな政治的意味をもつようになってきているだけに、今後の「真の復興」の妨げにもなりかねません。

この教訓をふまえて、願わくば、「原発事故を引き起こした責任者として、大人は汚染食品を食べるべきだ」という言説にたいしても氏の建設的「変節」を願わずにはいられません。

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<註1> 原発事故にたいする「大人=責任」という論については、、汚染された瓦礫の処理とも深く関わる問題ですので、別に詳しく論じる必要があるのですが、今は時間的肉体的にそのゆとりがありません。いつになったら、その責任を果たせるか分かりませんが、必ず書きたいと思っています。
<註2> 小出氏は、「除染はできない」「家には戻れない」と言い出したら福島県民全体を移住させなければいけないことになり、それでは国家が破産すると考えて、今まで言い出せずにいた可能性もあります。しかし、それでは政府と全く同じレベルになり、「国は汚い」などと批判すれば、「天に唾するもの」ということになるでしょう。
<註3> それにしても第2のノーベル賞と言われる「ライト・ライブリフッド賞」を受賞し、原子力資料情報室(CHNIC)の代表として活躍してきた故・高木仁三郎氏が、この福島原発事故の時にまだ生きていれば、反原発・脱原発の運動はもっと違った様相を呈していただろうに!と残念でたまりません。
<註4> 詳細は省きますが、戦後の廃墟=焼け野原から現在の日本をつくりだしたことを考えれば、現在の技術力を活用して「第2の敗戦」と言われる現状を立て直すことは、あの当時ほど困難だとは思えません。しかし、ただでさえ疲弊している庶民をさらに鞭打つような「復興税」では復興=景気回復などあり得ない。このことだけは確かでしょう。ではどうすればよいのか。それについても今回は割愛せざるを得ません。
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鹿児島講演から戻ってきたら疲れが出て2-3日、寝込んでしまいました。しかし、鹿児島から帰るとすぐ、『Voices of a People's History of the United States』翻訳原稿の初校(約1400頁)が届き、ゆっくり休息しているわけにもいかず、今その仕事に忙殺されています。

しかも昨年8月に愛犬が亡くなり、もう一匹が残っていたのですが、その愛犬もついに動けなくなり、夜にも起きて水を飲ませたりオムツを替えたりの新しい仕事が出てきました。そんなわけでブログの続きを書きたいのに時間がなかなか取れません。



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そうこうしているうちに北海道の泊原発を再稼働するというニュースが飛び込んできました。事故を起こした福島原発すら収束の目処が立たず、大量の高濃度汚染水を太平洋に垂れ流している(これは国際法違反です)にもかかわらず、泊原発を再開するという知事の神経が信じられません。

しかも未だに余震が思わぬ時に襲ってきて、東北の人たちを不安に落とし入れています。今度の原発事故は津波が原因ではなく地震に依るものであったことが今や明白であるにもかかわらず、しかも泊原発の近くに活断層があることが明確になってきているにもかかわらず、再開を許可するというのですから、「いったい北電からいくら貰ったの?」と尋ねたくなります。

北海道・泊原発の活断層と3号機の検査記録の改ざん
http://kaleido11.blog111.fc2.com/blog-entry-778.html

いったん原発事故が起きれば、原発周辺の人たちの命が危険に晒されるだけでなく、国土全体の水・空気・土地・農産物・畜産物・海産物が放射能「汚染まみれ」になりつつあることは、チェルノブイリの事故どころか今回の事故で十分すぎるほど経験しつつあるはずなのに、北海道知事は福島の経験から何を学んだのでしょうか。

(国内どころか海外にまで汚染は広がっています。こんなことを考えると、彼女は「原発再稼働」→「プルトニウム製造」→「核兵器保有」という路線を密かに強制されているのか、という疑問すら湧いてきました。)

先日、福島県から数百キロも離れた首都圏の150カ所で、市民が土壌の放射能汚染を測定した結果、チェルノブイリ事故の「強制移住区域」にあたる地区すら首都圏に存在することが明らかになっています(2011/08/08)。

http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/1192
(出典のURLをクリックしてもらえば、各地区の詳しい数値も知ることができます。)

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ところで、前回のブログで「東大教授・児玉龍彦」の発言を紹介しましたが、その頃から福島の「除染」だけが大声で叫ばれるようになってきています。

もちろん「除染」しないよりも、したほうが良いに決まっていますが、庭や校庭から削り取った汚染土をどこに保管するかが大問題です。今のところ自宅や校庭の一部に穴を掘って保管する作業がおこなわれているようですが、そこから絶えず放射能が出続けているわけですから、決して安全とは言えません。

また地面の中に埋めたとしても、雨が降ったときに放射能が地中にしみ込んで地下水と合流し、飲料水や農家の田や畑の灌漑用水になっていく危険性もあります。これは道路を水で除染した場合も同じです。放射能を洗い流した水は地中にしみ込んで地下水に合流するでしょうし、下水道を通って川に流れ着くことにもなります。

もっと大きな問題は「除染処理」が数か月で終わるのか数年かかるのか分からないという点です。森林や田畑の除染を完全におこなうことを考えると気が遠くなります。ですから旧ソ連では途中で諦めてしまいました。

その間も福島に住む人たちは放射能で汚染された環境に住み続けることになります。だとすれば、汚染地区にいる子どもたちや妊婦に深刻な影響が出ることは、チェルノブイリの経験から明らかです。

土壌に落ちたセシウムは放射能を出し続けていますし、今も事故を起こした原発は「最終処理」が終わるまでは熱と放射能を出し続けていますから、「福島の復興を!」という美名のもとに住民を除染処理が終わるまで福島での居住を強制することは、一種の「殺人罪」と言ってもよいくらいです。

(福島市のような汚染濃度のところで「”自主避難”には補償金を出さない」というのも、金銭的ゆとりのないひとには「福島での居住を強制されている」のと同じことを意味します。)

それをハッキリ明言しているのがクリストファー・バズビー博士(欧州放射線リスク委員会ECRRの技術部長)です。

博士は、日本政府などが様々な基準に採用しているICRP(国際放射線防護委員会)と一線を画し、内部被ばくや低量被ばくについて長年、研究を重ねてきましたが、その彼が日本の汚染はどのような状況にあるのかについて、つぎのような衝撃的な発表をおこなっています。
http://peacephilosophy.blogspot.com/2011/07/japanese-translation-of-ecrr-chris.html

│1.ECRRリスクモデルにより福島事故の100キロ圏の住民300万人に対する健康影響
│を検討した。
│1) 100キロ圏内に1年居住を続けることにより、今後10年間で10万人、50年間で
│およそ20万人がガンを発病すると予測された。直ちに避難を行うことで、この数字は
│大きく減少するだろう。
│2) 100キロ圏と200キロ圏の間に居住する700万人から、今後10年間で10万人、50
│年間で22万人が発ガンすると予測された。
│3)これらの予測値は、ECRRリスクモデルおよびチェルノブイリ事故後のスウェーデ
│ンでの発ガンリスクに関する疫学調査に基づいて算定されたものである。

│2.ICRPモデルは、100キロ圏での発ガン数を2838人と予測している。したがって、
│福島事故によるガンの最終的な発生数が分かるときに、どちらのリスクモデルが適切
  かの答えがでるだろう。

│3.日本の文部科学省が公表したガンマ線量の公式データは、一般的に承認された科
  学的手法を用いて、測定箇所の地表汚染レベルを逆算するために使用できる。その結
  果、IAEAは汚染レベルを明らかに低く見積もった報告を行っていることが分かった。

│4.放射性同位体別の地表汚染レベルの測定を緊急に実施することが必要である。

│5.100キロ圏の北西部に居住する人々は直ちに避難し、その地域を立ち入り禁止と
  すべきである。

│6.ICRPリスクモデルを廃棄し、すべての政治的決定をECRR www.euradcom.orgの
│勧告に基づいて行うことを求める。これは、2009年のレスボス宣言に署名した著明な
│放射線リスク専門家が出した結論である。

│7.一般国民から意図的にデータを隠した者に対しては、調査のうえ法的処罰を与える
│べきである。

│8.メディアを通じて今回の事故の健康影響の過小評価をもたらす行為を行った者に対
│しても調査のうえ法的処罰を与えるべきである。

バズビー博士の発表で注目されるのは「100キロ圏内に1年居住を続けることにより」「今後10年間で10万人」「50年間でおよそ20万人」がガンを発病すると予測していることです。

だからこそ博士は「直ちに避難を行うことでこの数字は大きく減少するだろう」として一刻も早い避難を呼びかけているのです。このブログで私が一貫して「集団移住」「学童疎開」を呼びかけてきたのですが、その正しさが改めて確認されたという思いがしました。

また「100キロ圏と200キロ圏の間に居住する700万人」から、「今後10年間で10万人、50年間で22万人」が発ガンするという予測も、十分に恐ろしいものですが、もっと不気味なのは、下記のように「ICRPモデルとECRRモデルのどちらが正しいかは今後10年で証明されるだろう」と言っていることです。

<ICRPモデルは、100キロ圏での発ガン数を2838人と予測している。したがって、福島事故によるガンの最終的な発生数が分かるときに、どちらのリスクモデルが適切かの答えがでるだろう。>
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<註> 上記発表についてバズビー博士は、Our Planet TVのインタビューで簡潔明快に説明していますので、時間がある方は、これもぜひ視聴してください。

内部被ばくに警鐘:クリス・バズビー博士インタビュー
http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/1190

30分弱で字幕付きですから、簡便な英語のリスニング訓練(あるいはリスニング教材)にもなるのではないでしょう。
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また既に述べたように、バズビー博士は下記のような提案もしています。

4.放射性同位体別の地表汚染レベルの測定を緊急に実施することが必要である。
5.100キロ圏の北西部に居住する人々は直ちに避難し、その地域を立ち入り禁止とすべきである。

ところが政府や東電は福島の生徒に線量計を持たせるだけで、「集団移住」「学童疎開」を考えているようすは全く見えません。これでは評判の悪かった旧ソ連の対応の方が、遙かに良かったと考えざるを得ません。

というのは、旧ソ連は事故が起きた翌日には1200台のバスを使って住民を避難させただけでなく、チェルノブイリから50キロ(専用列車で45分)のところに2万5千人が暮らす「新しい街」を、たった2年間でつくりあげてしまったのです。

チェルノブイリの教訓 ― 復興へのヒント、「新しい街」スラブジチの建設
http://youtu.be/vB_l7lbPxl0 (2011/08/09)約7分
http://www.youtube.com/watch?v=vB_l7lbPxl0&feature=player_detailpage

上記の映像を見て驚かされるのは、人々が希望を持って毎日を生きていることです。街の人たちには定期健康診断が実施され、検査も治療も無料です。街の「自由市場」では野菜などの食料も全て汚染値を測った上で基準値以下のものが販売されています。(しかも日本のように、外国に輸出するときに恥をかくような基準値ではありません。)

かつては世界第2の経済大国だった日本で、しかもノーベル賞をの受賞者を何人も産みだしている日本で、旧ソ連のやり遂げたようなことをなぜできないのでしょうか。それとも、かつてアメリカABCCが広島・長崎の被災者を「原爆病」のモルモットとして使ったと同じことを、今度は福島でおこなおうというのでしょうか。

それにしても、旧ソ連に出かけていって、このようなドキュメンタリーをつくりあげて、福島・浪江町の人たちに「復興へのヒント」を提供しようとしたテレビ朝日の努力に大きな拍手を送りたいと思います。上記で紹介したものはその一部ですが、7分程度のものですから、ぜひ視聴していただきたいと思います。

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なお、バズビー博士がこのような発表をするためにどのような研究をおこなったかの詳細は下記論文を御覧ください。

論文『福島の破局的事故の健康影響』
https://docs.google.com/viewer?a=v&pid=explorer&chrome=true&srcid=0B6kP2w038jEAYmExZDE0MzAtYTk3NS00NGE2LTg5NGQtMWU1NGE1NjZiMzgw&hl=en_US
英語の原文は下記にあります。
http://www.bsrrw.org/wp-content/uploads/2011/04/fukusima-health-ECRR.pdf

また博士が論文で言及している汚染地図の一つが、群馬大学の早川由紀夫氏の作成した下記「放射能地図」です。これを見れば、バズビー博士が言うように、200キロ圏も決して安全ではないことが、じゅうぶん納得できるのではないでしょうか。
http://savechild.net/map


しかしそれにしても、個人の研究者でこれだけのことができるのに、なぜ政府はもっと迅速に、精密で広範囲の汚染地図を作成できないのでしょうか。謎は深まるばかりです。

(もともと、このブログは、「ことばの教育・研究」を中心に、日ごろ思いついたこと発見したことを徒然なるままに書き連ねようとして始めたものでしたから、いつまでも原発事故から抜けられないことに悶々としています。)
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歌と映像で学ぶ私の原発学習(3) ―「歌を忘れたカナリア」「怒りを忘れた日本人」VS「東大教授・児玉龍彦」「俳優・山本太郎」

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東電に入ろう、元歌詞:高田渡
http://protestsongs.michikusa.jp/japanese/touden.html

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せめて「10日に一度はブログを」と思っているのですが、前回のブ゙ログから既に20日が過ぎました。しかし親戚の33回忌や両親の墓参り、さらには鹿児島講演などで全く時間が取れませんでした。

さて、このブログは前回が「歌と映像で学ぶ私の原発学習(2)」だったので、「その3」として「東電に入ろう」を取りあげました。

この歌を聞くとき、1回目は「歌詞」だけを楽しんでいただき、2回目に聞くときは、ときどき歌を停止させながら背景に流れている映像資料を注意深く読んでみてください。

音楽&歌詞のなかみと背景に流れる映像資料が見事に融合しています。「よくぞ!こんな資料を集めたものだ」と、この動画を創りだした才能・才覚・ユーモアに脱帽させられました。
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ところで鹿児島講演に出かける前に、私の主催する英語教育研究会の会員ISさんから、下記のようなメールが届きました。(ちなみに、彼女は定年退職後に私が研究・開発したTMメソッドで英語を教えています。)

<いつもブログでいろいろ勉強させていただいていますが、3.11以後のブログで最初の頃紹介された平井憲夫氏の「原発がどんなものか知って欲しい」は特に印象的で心を打たれました。
 英語教室の生徒やら退職教の人やらいろんな知り合いにコピーを渡したり、これを読んで学習会をしたりしましたが、まだ原発についての情報が氾濫していなかった頃ですので、「原発って難しくてわからないと思っていたけどこれを読んでよくわかった」「自分たちだけで読んでいるのはもったいない。もっと皆に知ってもらいたい」と皆から感謝されてきました。
 これは20部以上はコピーし、また孫コピーも出回っているようです。(先生の原発資料集にはこれが載っていないのでどうしてだろうかと思っていますが。)
ブログを見て日本にもいろいろな独立系放送局(と言ったらよいのでしょうか)があることを知りました。コンピューターやらインターネットやら、なかなかついてゆくのが大変ですが、せめてブログで紹介されたものは見たいものだと頑張っています。>
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このメールを見て、慌ててホームページの「福島原発資料」を調べてみましたが、確かに平井憲夫氏の「原発がどんなものか知って欲しい」が載っていません。

福島原発資料
http://www42.tok2.com/home/ieas/fukusima.html

ブログを書き始めた頃は、まだ「福島原発資料」を独立したサイトにしていませんでしたので、新しく「福島原発資料」をつくる際に抜け落ちてしまったようです。そこで慌てて下記を追加しました。

[必読!] 平井憲夫「原発がどんなものか知ってほしい」
http://www.iam-t.jp/HIRAI/

平井憲夫氏は、1級プラント配管技能士 として原発現場で20年働いたあと、原発の悪に耐えきれず、自ら職を辞し、余生を被曝労働者の救済に尽くした人です。

上記は氏の講演を文字化したものですが、「私は原発反対運動家ではありません。20年間、原子力発電所の現場で働いていた者です」という出だしで始まり、読み出したら思わず引き込まれてしまう不思議な力を持っています。

ぜひ読んで見てください。そして良ければISさんのように友人・知人に広めてください。

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平井氏について、もう一つ紹介しておきたいものがあります。というのは、ISさんに言われて平井憲夫氏のことを調べ直しているうちに下記のような動画も、YouTubeにアップされていることを知ったからです。

平井憲夫氏の遺言 内部告発-原発1-10、[YouTube]
http://www.youtube.com/watch?v=0x1AQ5HRu0o

この動画の解説には「1996年10月12日 この講演の3ヵ月後に他界」と書いてあって、原発反対運動の陰にはこのような無名の人たちの地道な活動があったことを改めて思い知らされました。

この動画のコメント欄に次のような書き込みがあり、私が過去のブログで紹介した「原発がどんなものか知ってほしい」という講演記録が「怪文書」と言われてきたことを初めて知りました。

<書き込みA>
 平井文書をインチキ呼ばわりしてた自称理系サイトがあったけど、今もあるんでしょうか?あるならあるでいいんだけどね。もし福島の原発事故がなかったら、ああいう低劣なデマゴーグがいまだに大手を振って歩いていたのだろうなあ。

<書き込みB>
 「平井さんは実在していない」などとネットで言われ、「怪文書」と言われてきましたが、実際の映像があることを知って興味深く拝聴いたしました。フクシマ事故以前に警鐘をならす人がいたことそのものが、日本の原子力行政が「想定外」という言い訳をさせない大きな力となると思います。

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ところで、平井氏は上記の動画講演のなかで次のようなことを言っていて、非常に興味深く感じました。

「選挙をバカにしてはいけない。なぜなら議員は有権者の意見を非常に気にしているからだ。だから選挙で原発議員を落選させること、反原発議員を当選させることも極めて重要だ。」

私がこの平井氏の話を非常に興味深く思ったのは、小出裕章氏がしばしば「私は政治が嫌いだ」と発言し、「たね蒔きジャーナル」というラジオ番組でも「海江田大臣(の秘書)から電話がかかってきたが断った」と述べていたからです。

テレビや新聞によれば、原発再稼働を叫ぶ民主党の若手議員が「我々の意見を無視して菅首相は勝手に脱原発を言っているがけしからん。すぐに首相の座から引きずり下ろさせねばならない」と叫んでいるそうです。

このような現状では、そういう議員の名前を公表させ、選挙で叩き落とす運動をしなければ、「脱原発」の展望は開けてこないでしょう。

ハワード・ジン『民衆のアメリカ史』も示しているように、アメリカ公民権運動の勝利も裁判闘争によって得られたものではなく、民衆が「非暴力直接行動」などで闘った(それは、しばしば死をも伴った)結果として得られたものでした。

私が今、Howard Zinn &Anthony Arnove『Voices of a People's History of the United States』の翻訳・出版に総力を注いでいるのも、権利は上から与えられるものではなく下からの民衆運動で勝ち取るものだということを歴史が示している、そのことを知ってほしいと思うからに他なりません。
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ですから小出裕章氏には酷な話かも知れませんが、「私は政治が嫌いだ」などと言っている限り「脱原発」の展望は得られるはずもないと、私は思うのです。

そもそも政治家になって何かの利権に有りつこうと思っているひと以外に「政治が好きだ」というひとは普通いません。黒人が公民権運動に乗り出したのも「政治が好き」だからではなく、そうする以外に道がなかったからです。

もちろん裁判闘争も無視できませんが、黒人の公民権運動を見れば明らかなように、黒人に公民権を与える最高裁判決が出たのは、「バスボイコット運動」など血のにじむような運動の結果でした。

平井氏の「原発がどんなものか知ってほしい」という講演記録の解説には、下記のような略歴が載っていました。

<略歴> 1997年1月逝去。1級プラント配管技能士、原発事故調査国民会議顧問、原発被曝労働者救済センター代表、北陸電力能登(現・志賀)原発差し止め裁判原告特別補佐人、東北電力女川原発差し止め裁判原告特別補佐人、福島第2原発3号機運転差し止め訴訟原告証人。「原発被曝労働者救済センター」は後継者がなく、閉鎖されました。

数々の裁判闘争を経て平井氏が到達したのは、「政治は嫌いだ」などとは言っていられない現実だったのではないでしょうか。平井氏の「選挙をバカにしてはいけない」ということばも、このような体験から生まれたものだと思えてならないのです。
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上記の「平井憲夫・略歴」で、平井氏が北陸電力能登原発(現・志賀原発)差し止め裁判原告特別補佐人だったことを知り、私がまだ高校教師だったとき能登半島の志賀町に何度も足を運び団結小屋にも泊まり込んだことを改めて思い出しました。

そして団結小屋で法律や原子力について学習している村の古老たちの姿を見て、「これこそ本当の学問だ」と思ったものでした。

また先日、帰郷した折、能登半島に残してある今は誰も住んでいない我が家を掃除をしていたら、小野周(監修)『原発はなぜこわいか』高文研という本を見つけました。その当時、私が学習したものですが、いま読んでも全く内容が古くなっていないことに驚きました。
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ところで、一貫して反原発を貫いてきた小出裕章氏によって、「汚染されたものは原発を許した大人が食べるべきだ」といった発言が何度も繰り返されると、それは全く別の政治的影響を持ち始めます。

原発反対運動の英雄によって何度も繰りかえされるこのような発言は、政府と東電はさぞかし大喜びでしょう。氏の発言は政府と東電に絶好の「免罪符」を与えることになりかねないからです。

他方、衆議院厚生労働委員会の参考人として、「私は法律を犯しています!」「いったい国会は何をしているのか?」「国の原発対応に満身の怒りを表明します!!」と怒りをあらわにした学者もいました。

動画:東大教授・児玉龍彦、国会で怒りの訴え(2011/07/27、約16分)
http://peacephilosophy.blogspot.com/2011/07/blog-post_29.html

「御用学者しかいないのか」と東大への幻滅感が広がりつつあるときだっただけに、児玉氏の怒りの声は、ツイッターなどを通じて、日本全国に共感の大津波を広げました。

しかし小出氏の発言には上記の児玉氏のような怒りが感じられないのです。原子炉をめぐる分析の鋭さに感心しつつも、「たね蒔きジャーナル」を聞くたびに、それが私を大きく失望させてきました。

それに引き替え、怒りをかたちしながら子どもを守るために奔走する俳優・山本太郎氏の真摯な発言と行動は、私に何か未来に明るさを感じさせました。約30分にわたるものですが、時間を見つけてぜひ見ていただきたいと思います。

山本太郎が見た“福島の現実”(2011年7月21日、32分)
http://www.dailymotion.com/video/xk1bxv_20110720-yyyyyyy-yyyyy_news

(「騙した連中よりも騙された方に責任がある」とも受け取られる小出氏の言説については時間をかけてゆっくり詳しく論を展開しなければならないのですが、今日はこれで力が尽きましたので、機会を改めて書きたいと思います。)

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<註> 先に紹介したISさんは、「ブログを見て日本にもいろいろな独立系放送局(と言ったらよいのでしょうか)があることを知りました。コンピューターやらインターネットやら、なかなかついてゆくのが大変ですが、せめてブログで紹介されたものは見たいものだと頑張っています」と書いていました。
 確かに、書斎で30分以上の動画を見ることは、なかなか大変なことです。いつぞやのブログでも紹介しましたが、茶の間で動画を見れるよう、ぜひ環境を整えていただきたいと思います(簡単にできます)。テレビでは意味のない番組が余りにも多すぎますし、テレビを見ると逆に間違った情報で洗脳されてしまうことにもなりかねませんので。
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Author:狐狸庵居士(田舎の国立大学を2010年に定年退職)

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