オバマの偽善、イスラエルとの共謀、血に染まった「青天井の牢獄」ガザ、報道陣へのミサイル攻撃、「民族浄化」としてのパレスチナ

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前回のブログを書いてから早くも10日以上も経ってしまいました。この間にあまりにも多くの出来事が起き、そのどれもが重要なので、一刻も早くブログを書きたいと心が焦るばかりで体が動きません。

近くでおこなわれたアーサー・ビナードさんの講演を2回も参加し、講演後の懇親会に 出たり(場所もテーマも別々です)、その間に私の主催する英語教育研究会の実践懇談会がおこなわれたりしたので、多分その疲れが出たのでしょう。

このブログを「まだか、まだか」と待っておられる皆さんには本当に申し訳なく思っていますが、相変わらず起きているよりもベッドで過ごす時間の方が長い状態ですので、それに免じてお許しください。

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<註> 福島原発告訴団は、11月15日、1万3262人分の告訴・告発状を福島地検に提出しました。告訴人は全47都道府県に広がり、6月提出の福島県民1324人分と合わせれば1万4586人もの人が、適切な捜査を求めて訴えるという、かつてない大規模告訴となりました。解散騒ぎでこのような重大ニュースが消されてしまってはなりません。
http://kokuso-fukusimagenpatu.blogspot.jp/2012/11/blog-post_17.html
 もう一つ嬉しいニュースは、「君が代」不起立を理由にした停職処分1ヶ月の差し戻し裁判の判決が11月7日に出て、河原井純子さん(東京都立特別支援学校元教諭)が勝訴したことです。停職処分による精神的苦痛は未払い給与の支払いだけではすまされないとして30万円の賠償を都に命じる画期的な判決でした。
http://www.labornetjp.org/news/2012/1107kawarai

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http://rt.com/news/gaza-family-idf-mistake-017/(以下、写真はすべて同じ出典)

* 一般読者の皆さんへ: 以下では英文をたくさん引用してあります。しかし半分は自分のメモを兼ねています。時間のない方は飛ばして読んでください。
* 英語教師の皆さんへ: 授業における会話ブーム(しかも覚えてもすぐ忘れる)のおかげで、生徒どころか英語教師の「読む力」も大きな落ち込みを見せています。この英文記事が「読む力」の回復に少しでも役立てば幸いです。
* 教育研究者の皆さんへ: 最近わたしは、英語を学ぶ目的の一つは、アメリカの実像を知り日本を「第二のアメリカ」にしないことにある、と考えるようになりました。以下は、今まであまりにも「虚像のアメリカ」を教えてきた私の反省が込められています。
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今この文章を書いている間にもイスラエルによるガザ攻撃が続いています。イスラエルはシリアの反政府勢力に武器などの援助を続ける一方、今回の攻撃でパレスチナの「ガザ地区」に冷酷きわまりない爆撃を続けています。

殺されているひとたちの多くが女性や子どもなのですから、いかに理不尽な攻撃なのかがよく分かると思います。その理不尽さは、ガザ地区のメディアセンターをミサイル攻撃で破壊するという蛮行で、いっそう顕著なものになりました。

Israel Wounds Journalists in Attack on Gaza Media
http://www.democracynow.org/2012/11/19/headlines#11192

多くの報道陣が拠点をかまえている建物にミサイルをぶちこむという行為は明らかな「戦争犯罪」行為ですが、同時にこのような行為は、「自分たちのやっていることがいかに世界に知られては困る行為か」を間接的に語っていることにもなります。

さらに皮肉なのは、この攻撃の対象になった報道機関は、下記の記事でも分かるように、パレスチナのTV局だけではなく。イスラエル支持で有名なアメリカの右派放送局FoxNewsまでもが含まれていたことでした。

On Sunday, six Palestinian journalists were wounded when Israeli missiles slammed into the Gaza offices of the Hamas TV station, Al Aqsa, and the Lebanon-based Al Quds TV. A number of international media outlets, including Fox News, CBS and Sky News, have used studios in the targeted buildings.
http://www.democracynow.org/2012/11/19/headlines#11192

要するに、イスラエルはFoxNewsにも自分のやっていることを知られたくなかったのです。

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かつてブッシュ氏が嘘をついてイラク攻撃を開始したとき、やはり外国からの報道陣がたくさん陣取っていたバクダッド市内パレスチナ・ホテルを戦車から砲撃し、スペイン人ジャーナリストら(*)が殺害される事件がありました。

(*→ホセ・コウソ [スペインのテレビ局テレシンコのカメラマン]、タラス・プロチュク [ロイター通信のカメラマン])

このときも、パレスチナ・ホテルが外国報道陣の拠点だったことは、アメリカ軍の上層部には分かっていたことでした。これは、その当時、諜報機関で働いていたAdrienne Kinne さん(女性)の証言で明らかになっています。

Fmr. Military Intelligence Sgt. Reveals US Listed Palestine Hotel in Baghdad as Target Prior to Killing of Two Journalists in 2003 
(元米軍諜報部高官との独占インタビュー:2003年の米軍による砲撃で2人のジャーナリストが死亡 バグダッドのパレスチナホテルは最初から攻撃目標だった)
http://www.democracynow.org/2008/5/13/fmr_military_intelligence_officer_reveals_us

キンヌさんは、1994年から2004年まで米軍諜報機関で働き、事件当時はジョージア州フォート・ゴードンで、イラクとアフガニスタンの衛星電話を傍受する任務についていました。

キンヌさんは、米軍のイラク侵攻作戦(「衝撃と恐怖」作戦)の準備段階で、自分の所属する基地に電子メールで送られてきた攻撃対象リストにパレスチナ・ホテルがあることを発見。

それまでの電話傍受で、同ホテルにはジャーナリストしかいないことを知っていたので、上司に「ジャーナリストたちはこのホテルにいて安全だと思っている」と直訴しましたが、退けられたといいます。


報道陣を真っ先に抹殺しようとする戦争は必ず後ろ暗いところがあるに決まっているのです。戦争の口実とされた「フセインが大量破壊兵器をもっている」という嘘も、暴露されるにはそれほど時間がかかりませんでした。
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<註> それと同じように「イランが核兵器を開発している」という嘘も、そのうち簡単に暴露されることになるのかもしれません。もし原発をもっていることが核兵器開発と同義なのであれば、あれだけの大事故を起こしながらも再稼働に固執する日本こそ、「裏で秘かに核兵器の開発をねらう国」として真っ先に糾弾されねばならないことになるでしょう。
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もっと驚いたことは、このような蛮行を大統領に再選されたばかりのオバマ氏が「我々は全面的にイスラエルの行為を支持する」と、訪問先のミャンマーで堂々と表明したことでした。

Palestinian Toll Mounts in Gaza as Obama Defends Israeli Assault
http://www.democracynow.org/2012/11/19/headlines#11191
President Obama: "There’s no country on earth that would tolerate missiles raining down on its citizens from outside its borders. So we are fully supportive of Israel’s right to defend itself from missiles landing on people’s homes and workplaces and potentially killing civilians."

オバマ氏は上記の声明で「いかなる国も家庭・職場に打ち込まれて市民を殺害するミサイルから自国を防衛する権利がある」という理由でイスラエルを擁護しているのですが、これこそまさに「白を黒と言いくるめる」ものと言うべきでしょう。

というのは、非公式な停戦協定が成立していたにもかかわらず、しかもその停戦協定に積極的だった軍事部門の責任者 Ahmed Jabari 氏を空から暗殺して、2日間続いていた停戦を自ら破ったのは、イスラエルの方だったからです。

Hamas Commander Was Assassinated Hours After Receiving Truce Deal from Israel
(ハマスの指令官はイスラエル側の停戦申し入れを受け取った数時間後に暗殺された)
http://www.democracynow.org/2012/11/16/israeli_negotiator_hamas_commander_was_assassinated
Israel broke an informal ceasefire on Wednesday by assassinating Hamas military commander Ahmed Jabari in an air strike. Jabari was assassinated just hours after he received the draft of a permanent truce agreement with Israel, which included mechanisms for maintaining the ceasefire.

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このイスラエルによる攻撃は「金魚鉢の中で逃げ惑う金魚」を狙い撃ちにするのに似ています。というのは、ガザ地区はイスラエルによって周囲を封鎖されていますから、ガザ地区の住民は金魚鉢のなかの金魚と同じく外へは出れないからです。

こうしてガザ地区の住民は、隠れる場所も逃げる場所もない空間を走り回るだけで、最終的には死を待つ以外にありません。これほど残酷な攻撃があるでしょうか。

"Nowhere to Run": Israel Fires Over 500 Strikes in Gaza, Civilian Toll Grows in Humanitarian Crisis
(「逃げ場なし」イスラエルがガザ空爆500回以上、人道危機の中で市民の犠牲者が増加)
http://www.democracynow.org/2012/11/16/nowhere_to_run_israel_fires_over

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この攻撃が始まる少し前に、世界的に著名な言語学者チョムスキーがガザで開かれた国際学会に参加していたのですが、イスラエルはチョムスキーにガザ入国を許さなかったので、やむなく(大変な時間と距離を使って)エジプト経由で行かざるを得ませんでした。

アメリカに帰国したとき、チョムスキーはインタビューに答えて、ガザ地区のようすを 「青天井の牢獄」"open-air prison" と呼びました。それをチョムスキーは次のように説明しています。
http://www.democracynow.org/2012/11/14/noam_chomsky_on_gaza_and_the

それは青天井の刑務所のようなものです。住民はすべてイスラエルにたいする市民的不服従のゆえに牢獄に入れられているのです。そこに住む住民がもつ抗しがたい気持ちは、誰か他人によって完全に管理統制されているという感情です。専制的政府が生活のすべてを管理するのです。立ったり、座ったり、食べ物を見つけたり、トイレに行ったり、その他すべてのことをイスラエルが決めるのです。住民は何もできません。

それがガザ地区の基本的な生活様式です。住民はそのような生活に何とか適応しようとします。しかしそれはイスラエルという外的権力にたいして常に隷属して生きることです。それはパレスチナ人を辱(はずかし)め、誇りを奪うこと以外に目的はありません。もちろんイスラエルにも口実はあります。誰でも口実は作れますから。しかし、その口実は全く意味のないものです。

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<註> 英語原文は下記のとおりです。

Noam Chomsky on Gaza,
http://www.democracynow.org/2012/11/14/noam_chomsky_on_gaza_and_the
  It’s an open-air prison. As soon as you—you know, we’ve all been in jail for civil disobedience and so on. The overwhelming feeling everyone gets is somebody else is in total control of you. There’s an arbitrary authority who can control anything you do. Stand up, sit down, you know, find something to eat, go to the bathroom—whatever it may be, they all determine it; you can’t do anything.
  Now that’s basically what it’s like living there. And, you know, there’s—people find ways to adapt, but it’s just a constant—it’s constant subjugation to an external force, which has no purpose except to humiliate you. Of course, they have pretexts—everybody has pretexts—but they don’t make any sense.


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かつてDemocracyNow!を読んでいたら、イスラエルはガザの住民にどれだけの水や食料を与えれば最低限生きていけるかを厳密にカロリー計算して、供給を管理しているという報告が載っていて驚愕しました。要するに、イスラエルはガザ地区の住民を「生かさぬよう」「殺さぬよう」管理しているのです。

今回このブログを書くにあたって、その記事を探してみたのですが、なかなか見つかりませんでした。しかし代わりに「イスラエルがおこなっている行為は『民族浄化』“Ethnic Cleansing”である」とする国連人権委員会の報告を見つけました。

U.N. Investigator Accuses Israel of “Ethnic Cleansing”
http://www.democracynow.org/2011/3/22/headlines#32211
A top United Nations investigator has called on the U.N. Human Rights Council to investigate Israel’s continued expansion of illegal settlements in the West Bank. The U.N. Special Rapporteur on Human Rights in the Palestinian Territories, Richard Falk, described Israel’s actions as a form of ethnic cleansing.

この場合の「民族浄化」は、イスラエルから入植者たちが西岸地区のパレスチナ住民から土地や家屋を力尽くで奪っていくことを指しているのですが、今回のガザ攻撃は(4年前の攻撃と同じく)住民の命そのものまで奪うのですから、正真正銘の「民族浄化」作戦と言うべきでしょう。

にもかかわらずオバマ氏がイスラエル全面支持を公言する意図が私には分かりません。これでは、彼が受賞した「ノーベル平和賞」の名誉にますます傷がつくだけですから。

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<註> このブログの冒頭部分で、ブッシュ氏がイラク戦争を始めたとき、アメリカ軍の戦車がジャーナリストたちで満杯だったバグダッドのパレスチナ・ホテルを砲撃した事件を紹介しました。
 このとき、スペイン人カメラマン、ホセ・コウソも殺されました。スペインが事件に関与した3人の米兵を起訴し、身柄の引き渡しを要求したにもかかわらず、アメリカはこれを拒否し続けてきました。沖縄に似た状況です。
 ところが、ウィキリークスはもう一つ新しい事実を暴露しました。アメリカ政府がスペイン政府に圧力をかけて、遺族が起こした裁判を中止させようとしていたことが、「マドリッド米大使館からの公電」によって明らかになったのです。
 オバマ氏が、イギリス政府やスウェーデン政府に圧力をかけて、ウィキリークスの創始者アサンジを逮捕・拘束しようと、権謀術数をこらしている理由も、これで納得できるのではないでしょうか。

Leaked Cables Reveal U.S. Pressured Spain to Drop Case of Cameraman Killed in 2003 Attack on Journalists in Baghdad 
(漏れた公電が明かす:米国が裁判中止へ圧力、バグダッドでの米軍によるジャーナリスト砲撃死亡事件)
http://www.democracynow.org/2010/12/1/us_pressured_spain_to_drop_case

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米兵によるレイプ事件(3)――「大国から自立して、日本は日本自身に属すべきなのだ」、トマス・ペイン『コモンセンス』は訴える  [沖縄から日本とアメリカを見る]

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演説する緑の党の大統領候補 Jill Stein

http://www.wbur.org/2012/08/09/green-candidate-obama

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いまアメリカでは大統領選挙がおこなわれ、オバマ氏が引き続き大統領を続けることが確実になりました。

しかし民主主義のモデル国であるはずのアメリカは、オバマ氏以外にも大統領に立候補している人物(たとえば、Green Party、Justice Party、Libertarian Partyなどからの立候補者)がいるにもかかわらず、彼らに公開討論の機会を与えませんでした。

それどころか、緑の党の大統領候補ジル・スタインと副大統領候補のシェリ・ホンカラが16日、大統領選討論会が行われているホフストラ大学の会場に入ろうとしたところを逮捕され、椅子に手錠でつながれて8時間拘束されるという事件すら起きています。

Green Party Candidates Arrested, Shackled to Chairs For 8 Hours After Trying to Enter Hofstra Debate
http://www.democracynow.org/2012/10/17/green_partys_jill_stein_cheri_honkala

あたかも立候補者が二人しかいないような報道ぶりに業を煮やした独立放送局が、独自に討論会を企画してきましたが、大手メディアは全く無視したまま投票日を迎えることになりました。

As Obama and Romney Agree on Afghan War, Israel and Syria, Third Parties Give Alternative
http://www.democracynow.org/2012/10/23/exclusive_as_obama_and_romney_agree
Third Party debates: Ending the foreign policy monologue (Op-Ed)
http://rt.com/usa/news/us-election-third-party-770/

上記のDemocracyNow! が企画した討論会もタイトル "As Obama and Romney Agree on Afghan War, Israel and Syria,..." でも明らかなように、オバマ氏もロムニー氏も外交政策については、全く変わりがありません(実は内政についても大きな違いはないのです)。

とりわけオバマ氏は、悪名高いブッシュ氏すらやらなかった「無人爆撃機を使った暗殺・殺人」を、アフガン、パキスタン、イエメンなど世界各地で繰り広げるようになってきていますから、オバマ氏が再び大統領に選ばれたからといって沖縄や日本の未来は決して明るいとは言えません。
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<註> アメリカの選挙でおかしいのは、投票権を得るためにわざわざ選挙人登録をしなければならないとか、白人は投票所でほとんど並ぶ必要がないのに、黒人やヒスパニックなど貧困者が多いところでは長蛇の列をなして6時間以上も並ばないと投票できないとか、投票日を週末ではなく平日にし、さらに不在者投票までも平日にして、働いている者を投票しにくくするとか――数え上げれば切りがないくらいの反民主主義的仕打ちが目立つことです。しかし、ここでは詳しく説明するゆとりがないので別の機会にしたいと思います。

逮捕される緑の党の大統領候補と副大統領候補

http://tinycomb.com/2012/10/20/green-party-candidate-jill-stein-arrested-before-second-presidential-debate/

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ところで私は前回のブログで、孫崎享『戦後史の正体』を引用しつつ、昭和天皇がGHQ側に「沖縄を半永久的に占領してほしい」と伝えていることを紹介して、次のように書きました。

 島ぐるみで「本土復帰運動」をして、1972年(昭和47年)5月15日にやっと実現した復帰運動でしたが、本土の反応は、沖縄の苦しみにはほとんど無関心という冷たいものでした。
 また、これは日本政府がアジア太平洋戦争の末期に「集団自決」など沖縄住民に多大なる犠牲を強いたにもかかわらずいまだにそれを正式に認めようとしないことにも通じるものです。これでは沖縄の人たちが憤(いきどお)るのも無理はないと言うべきでしょう。
 ではなぜ日本が沖縄にたいしてこんなにも無関心だったのでしょうか。それは戦後の日本がアメリカにたいして従属的であり続けてきたことと深く結びついています。そこで次回はアメリカ独立宣言の基礎を築いたと言われるトマス・ペイン『常識=コモンセンス』を取りあげながら、もういちど日米関係を考えてみたいと思います。


このブログの後すぐに、「米兵によるレイプ事件(3)」を書くつもりだったのですが、相変わらず体調がすぐれず、すぐには仕事にとりかかれませんでした。今か今かと待っておられた皆さんには本当に申し訳なく思っています。

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前回のブログで取りあげた孫崎享『戦後史の正体』(創元社、2012)は、戦後史に登場する首相・外相をアメリカにたいする「自主路線」と「追随路線」とに大きく二つに分け、日本の戦後史をこの二つの路線の相克・せめぎ合いとして描いた点に大きな特徴がありました。

日本がアメリカに支配されている属国であることは、共産党などが古くから主張していることですし、戦後の大きな事件がアメリカの謀略によるものではないかということも春名幹男『秘密のファイル、CIAの対日工作』上下2巻(新潮文庫、2000)などで既に紹介されていることですから、それ自体に新味はありません。

この本が非常に新鮮だったのは、その著者がかつてイラン大使などを務めたエリート外交官であり、退職する前には防衛大学教授も務めた防衛問題の専門家だったことでした。自分の体験してきたことを踏まえて、「そこまで語っていいのか」と思われるほど、日本外交史の裏面を赤裸々に語っています。

そのなかには、自分がイラン大使として赴任したとき資源小国日本のために大変な苦労をしてイラン油田の開発権を手に入れたのに、それがアメリカの圧力によっていとも簡単に放棄させられてしまった、しかも首相も外務大臣もそれに強く抵抗しなかった、という事実なども含まれています。

このような事実をふまえて研究してみると、日本の戦後はアメリカによる収奪の歴史であり、それに異を唱える政治家はことごとく政界から放逐・抹殺されてきた歴史であったことを知るにいたった、それがこの本を書く大きな動機になった――と孫崎氏は語っています(政界から放逐された後すぐ亡くなっているひとも少なくない)。

日本がいま不況の只中にあるのは、世界第二位の経済大国になったあとアメリカによる猛烈なジャパン・バッシング(日本たたき)が始まり、その後、郵政民営化などを初めとする強力な経済介入をアメリカから受けた結果である。ソ連崩壊のあとCIAの仕事は他国にたいする経済スパイになってしまった。――こういう事実も本書では紹介されています。

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以前から私は日本の戦後史について次のような仮説をずっと胸にいだき続けてきました。私がTESOLの学会に参加するため渡米し、毎年1か月くらい滞在する生活を10年くらい続けている間に、この仮説をますます確信するようになりました。

1)日本がアジアに侵略戦争にたいする謝罪をせずに済んできたのは、ドイツと違って日本はアジアの隣国と貿易せずとも、アメリカの庇護の下で、基本的にアメリカと貿易するだけで復興してきたからだ。

2)それどころか朝鮮戦争やベトナム戦争などアメリカがおこなってきた戦争の後方部隊をつとめることによって(いわばアジア人の血によって)莫大な経済的利益を得て戦後の復興をなしとげた。こうして、アメリカはアジアにたいする謝罪の機会を日本から奪うことになった。

3)ソ連や中国などの社会主義国が存在し、医療や教育の無償化など国民の生活を安定させる実績をあげている国があるかぎり、その対抗上、資本主義国でも同じことが可能であることを実証せざるを得なかった。アメリカが日本の経済復興を援助したのは、上記のことを証明するためのモデル国家として日本を世界に陳列するためであった。

4)しかしソ連が崩壊し、その結果、社会主義の東欧も姿を消した。こうして社会主義の良さを実践する国は存在しなくなった。中国も名前は「社会主義国」だが、実態はアメリカで学んだ経済エリートが新自由主義的経済運営をおこなう国家独占資本主義国となってしまい、国内では極端な貧富の格差が生まれている。

5)したがってアメリカにとって、社会主義国に対抗するための「モデル国家」として日本を庇護しなければならない理由は消滅した。むしろいま必要なのはアメリカに対抗するまでの経済力を持つにいたった日本を徹底的に叩きのめし、日本がもつ豊かな資産をアメリカに移し替えることである。これがアメリカから毎年のように日本に突きつけられてきた「規制緩和」「年次改革要望書」だった。


孫崎氏の前掲書を読んで、ますます私の仮説が正しかったのだという確信をもつようになりました。そして孫崎氏が外交における「自主独立路線」を貫くことの大切を主張されている点にも、強く共感するところがありました

<註> チョムスキーを読んでいる私からすると、細かなところで孫崎氏の叙述に疑問な点がないわけではないのですが、それはここでは取りあげません。むしろ私はこのような書籍を公(おおやけ)にした氏の身辺を心配しています。

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トマス・ペインと『コモンセンス』
  
http://shisly.cocolog-nifty.com/blog/2012/07/post-83d6.html

ところで『肉声でつづる民衆のアメリカ史』(明石書店、2012)の第4章にトマス・ペイン『常識=コモンセンス』が出てきます。

これを翻訳していたら、アメリカ人トマス・ペインが呼びかけるイギリスからの独立が、ほとんどそのまま「日本人が呼びかけるアメリカからの独立」の文書として通用するのではないかと思うようになりました。

そこで、トマス・ペインの文書で、「イギリス」とあるところを「アメリカ」に、「アメリカ」とあるところを「日本」に書き換えた、新版『コモンセンス』を以下に紹介します。

なお、『肉声でつづる民衆のアメリカ史』に載せられている「コモンセンス」は長すぎるので、分かりやすくするため番号を打ちながら幾つかの箇所を省いてあります。それを...........で示しました。
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1 この小冊子で私が述べることは、単純な事実、率直な主張、常識ばかりである。このことをまず読者にお話ししておきたい。読者は偏見や先入観を捨て去り、もっぱら自身の理性と感情に従って、真の人間的品性を獲得するのか、あるいは今もっている品性を捨て去らずに保持するのかを自身で決断いただきたい。そして、自身の視野を明日へと大きく広げていただきたい。
 アメリカと日本との軋轢(あつれき)について、多くの書物が書かれている。あらゆる階層のひとが異なる動機とさまざまな意図でこの論争に加わった。しかしすべてが無駄だった。論争の時期は終わった。……

2 当時この問題について双方の代弁者が提案したのは、どれも同一目標、すなわちアメリカとの結合をめざすことだった。双方の唯一の違いは実現方法にあった。……

3 [アメリカとの] 関係修復の利益についてはいろいろと言われてきたが、甘い夢のごとく消え去り、元の木阿弥となった。したがって関係修復論とは正反対の議論を検討すべきであり、また日本がアメリカと結合し従属することで、現在および将来こうむる多くの物的損失を検討しなければならない。それは自然原理と常識にもとづいてアメリカとの結合と従属を検討することであり、離脱すれば何が期待できるか、従属すれば何が予期できるかを検討することである。
 日本はこれまでアメリカとの結合のもとで繁栄してきたのだから、将来の幸福のためにも同じ結合が必要であり、そうすれば常に同じ結果が得られると主張するものもいた。この種の議論ほど馬鹿げたものはない。それなら子供はミルクで育ったのだから決して肉を食べさせてはならないとか、人生の最初の二〇年間は次の二〇年間の先例になると主張してもよいことになる。
 しかし、これは前述の議論をもっと認めることになる。というのは率直にいえば、世界の大国が日本を無視したとしても、日本はこれまでどおり、いやはるかに繁栄していたと言えるからだ。日本をここまで豊かにしたのは生活必需品の貿易だった。衣食住というものが世界の習慣であるかぎり、他の買い手はいつでも見つかるからである。
 しかし、アメリカが日本を守ってくれたと主張するものもいる。アメリカが日本を独占してきたことは確かであるし、この国土を日本の費用だけでなくアメリカの費用で守ってきたことも否定はしない。だがアメリカは同じ動機があれば、つまり貿易と領土のためならトルコでも守っただろう。……

4 しかし、アメリカは保護者だと言うものもいる。それならアメリカの行為は一層恥ずべきだ。野獣でさえわが子を貪(むさぼ)り食おうとはしない。野蛮人でさえ自分の家族に戦いをしかけない。したがってこの主張が本当なら、なおさらアメリカを非難することになろう。……

5 最も熱狂的な関係修復論者に私は問う。この国土がアメリカと結合していることで得られる利益があるなら、一つでも示してみよ。くりかえし問う。何の利益も引きだせないではないか。我々の生産物は世界のどの市場でも売れ、輸入品は代金を払えば何処からでも買えるのだ。
 しかしアメリカとの結合から受ける被害と損失は計り知れない。自らのみならず人類一般への我々の義務感は、この結合を廃棄せよと命じている。なぜなら、少しでもアメリカに従属し依存していると、日本はすぐに世界の戦争や紛争に巻きこまれるからだ。
 そればかりではない。アメリカと結合していなければ関係修復を求めてくるはずの国々や、我々が怒りも不満も抱いていない国々と、我々は不和になってしまうからだ。
 世界は貿易の市場だから、どの国とも偏った関係を結ぶべきではない。世界の紛争に巻きこまれないようにするのが日本の真の利益だ。しかしアメリカに依存し、アメリカ政治の天秤の錘(おもり)にされているかぎり、そうはいかない。……

6 アメリカがどこかの国と戦争をはじめると、日本の貿易はいつでも壊滅的打撃をうける。日本がアメリカと結びついているからだ。次に戦争がおこれば、この前の戦争のようにはいかないかもしれない。うまくいかなくなれば、今は関係修復を主張しているひとも分離・独立を望むだろう。中立こそが戦艦よりも安全な護衛艦になるからだ。
 正義や道理にかなったものすべてが離脱を主張している。殺された者の血が、自然の泣き声が、「いまこそ独立すべきときだ」と叫んでいる。全能の神がアメリカと日本とのあいだに設けた距離でさえ、アメリカ権力の日本支配が天の計らいでないことを示す有力な自然の証拠である。……

7 アメリカによる日本国土の支配は、遅かれ早かれ終わりを告げる統治形態だ。しかし、いわゆる「現体制」が一時的なものにすぎず未来は変わるのだという痛みを伴うが否定しがたい信念は、保守的なひとには心から喜べないのである。統治が永続しないと、子孫に遺してやれるものがなくなることを、親としては喜べないからである。
 率直にいえば、いま我々は次の世代に借金を負わせつつあるのだから、だかこそ独立という仕事をしなければならないのだ。さもないと子孫を卑劣に浅ましく利用することになる。我々の歩むべき進路を見出すには、子供の手をとり数年先の立ち位置を決めることである。そうすれば、今わずかばかりの恐怖や偏見で視野から外されている展望が、高見から開けてくるだろう。……

8 おとなしいの性格のひとはアメリカ人の攻撃を軽く考え、相変らず前途を楽観して「さあさあ、あんなことはあったけれど、また仲よく」と呼びかけそうだ。しかし人間としての怒りや感情を考えてみるがいい。また関係修復論を自然の基準に照らして検討してみるがいい。その後で、諸君の郷土に砲火や剣をもちこんだ国を、今後もまた愛し尊敬し忠実に尽くすことができるか、聞かせてもらいたいものだ。
 そのどちらもできないというなら、諸君は自らを欺(あざむ)き、子孫に破滅をもたすだけだ。愛することも尊敬することもできないアメリカとの結合をこれからも続けるとすれば、その関係は強制的で不自然なものになる。また、それは便宜的につくられた一時しのぎの関係にすぎないので、すぐにこれまでより悲惨な状態に陥るだろう。
 それでも諸君が暴行を見逃せると言うなら、お尋ねしたい。家が焼かれたことがあるか。財産が目の前で破壊されたことがあるか。妻子が身を休めるベッドや命をつなぐパンに困ったことがあるか。親や子が彼らの手で殺害されたことがあるか。自身が落ちぶれた無惨な生き残りになったことがあるか。
 そうでないなら、このような体験をしたひとについて、とやかく言う資格はない。しかし、諸君がこのようなことを体験していながら殺害者と握手できるなら、諸君は夫や父、友人や恋人の名に値しない。地位や肩書が何であろうと、諸君は、心情は臆病者で、精神は密告者なのだ。……

9 日本国土がいつまでも外部権力に服従しつづけると考えるのは、理に反し、世の条理に反し、前時代からのあらゆる実例に反している。最も楽天的なアメリカ人でさえそうは考えない。知恵の限りを尽してどんな計画を立ててみても、いまとなっては分離する以外、この国土にわずか一年の安全・安(あん)寧(ねい)さえ保証できない。
 関係修復はいまでは誤った夢である。自然はこの結合を見捨てた。人為が自然の代りをすることはできない。ミルトンが賢明にも言うように「極度の憎悪という傷が、甚だしく深かったならば、真の和解は生じない」からだ。……


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読者の皆さんは、上記の文章を東京大空襲などで焦土と化した首都や県都、原爆で瓦礫と化した広島や長崎を思う浮かべながら読み直してみてください。そうすれば当時の日本人がアメリカにたいしてどのような思いをいだいていたかを、逆に想像できるはずです。

しかしアメリカの占領政策は日本人を親米へと洗脳することに見事に成功しました。私もその一人でした。アメリカが日本にプレゼントしてくれた素晴らしい贈り物は「日本国憲法」でしたが、この画期的試みに意欲を燃やした若きアメリカ人の多くは、帰国してから社会主義者として迫害されました。

いずれにしても、トマス・ペインが「常識とすべし」とした見解(それが書名『コモンセンス』の主旨だったはずです)が、日本人にとっても常識になる日が近いことを祈っています。


<註1> 『肉声でつづる民衆のアメリカ史』に載せられている「コモンセンス」も、実は全文ではなく抜粋です。詳しくは『肉声史』上巻、133-141頁を御覧ください。
<註2> 上記の日本版「コモンセンス」では、「ヨーロッパ」という字句もも「世界」に書き換えました。当時のアメリカ人にとってはイギリスを含むヨーロッパが「世界」でしたから。(ドヴォルザーク がアメリカを「新世界」としたゆえんです。)
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米兵によるレイプ事件(2)――戦後の沖縄をアメリカに「売り渡した」昭和天皇、GHQ政治顧問シーボルトの極秘メッセージ [沖縄から日本とアメリカを見る]

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http://www.peace-forum.com/mnforce/2012/02katudou/121002okinawa/01.htm
動画(15分):オスプレイ配備反対 普天間基地を封鎖した沖縄の人々
https://www.youtube.com/watch?v=1JyGxBeGiYQ

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いまアメリカでは巨大なハリケーン「サンディ」のためにニューヨークなど多くの地域が麻痺状態になり、ニューヨーク近辺ニュージャージー州のSalem、Oyster Creek、Indian Pointなど、多くの原子炉や燃料プールが危機的状況にあります。

ハリケーンで原発が停止または停止寸前に追い込まれるのですから、毎日のように全土が地震で脅かされている日本で、原発を再稼働させるというのは、まさに自殺行為というべきです。腹に爆弾を巻き付けて自爆しようとする人間と瓜二つです。

にもかかわらず、原発廃止の方針を受けてドイツ企業が放棄したイギリスの原発を、日立製作所が買収するというニュースが飛び込んできました。
http://news.goo.ne.jp/article/jiji/business/jiji-121030X486.html

また、10/29の東京新聞によれば、2011年度三次補正予算に盛り込まれた東日本大震災の復興予算のうち5億円を、経済産業省がベトナムへの原発輸出に関する調査事業費として支出していたそうです。

そんなお金があるんだったら、なぜ被災者の救済に回さないのでしょうか。

自国の原発事故がいまだに収束の気配すらなく汚染水を大量に出し続けているというのに、また福島の人たちがいまだに仮設住まいだったり集団疎開を求めて闘っているときに、政府や大企業にとっては住民の命よりも金儲けが大事なようです。

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ところで私は前回のブログで、次のように書きました。

 イラクの場合、石油の利権など多くの経済的権利をアメリカに奪われてしまいましたが、「自国で起きた犯罪は自国の司法に則って裁く」という主権国家として当然の権利だけは断固として守り抜きました。その結果が米軍の撤退だったのです。
 だとすれば日本も当然の権利として、「日米地位協定」を主権国家にふさわしいものに変えさえすれば、「米軍基地をなくせ!」などと声高に叫ばなくても、米軍は撤退するでしょう。
 そうすれば莫大な金(=日本国民の税金)をかけて米軍基地を維持する必要がなくなり、財政問題も簡単に解決します。問題は、アメリカの圧力に屈しないで毅然とした態度を貫く政府を、私たちがどうやってつくり出すかです。


そしてブログ原稿の最後を次のように結びました。
 ところで、米軍が起こす犯罪のほとんどすべてが沖縄で起きています。それが本土の私たちに沖縄問題から目をそらさせる大きな要因になっています。
 実は、沖縄を軍事占領するようアメリカに提案したのは昭和天皇自身でした。1947年(昭和22年)のことです。これはまだ日本人にはよく知られていない事実でしょう。そこで次回のブログは、そのことに焦点を当て書いてみたいと思います。


では、天皇がアメリカにたいして「沖縄を半永久的に軍事占領していてほしい」と伝えた極秘メッセージとは、どのようなものだったのでしょうか。

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以下でまず紹介するのは、終戦後、昭和天皇の側近となった元外交官の寺崎英成(ひでなり)が、天皇の意向を伝えるために占領軍総司令官マッカーサーを訪ねてきた内容を、政治顧問シーボルトが1947年9月22日、アメリカの国務長官に報告したものです{下線部は引用者}。

謹啓
 天皇の顧問・寺崎英成氏が当事務所を訪れたさいの、同氏との会話要旨をメモした1947年9月20日付けマッカーサー元帥あて覚え書きのコピーを同封することを光栄とするものです。
 米国が沖縄その他の琉球諸島の軍事占領を続けるよう日本の天皇が希望していること、それが疑いもなく私利に大きくもとづいているものである点が注目されましょう。また天皇は、長期租借(そしゃく)による、これら諸島の米国軍事占領の継続を求めています。寺崎氏の見解によれば、日本国民はそれによって米国に下心がないことを納得し、軍事目的のための米国による占領を歓迎するだろうということであります。
敬具
                 
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このシーボルトの極秘メッセージにたいして、有名な翻訳家・池田香代子さんは、2010年12月24日づけのブログで、次のように書いています。
http://blog.livedoor.jp/ikedakayoko/archives/51514436.html

1947年9月、このいわゆる昭和天皇の沖縄メッセージを、宮内庁御用掛・寺崎英成から伝えられた連合国最高司令官政治顧問シーボルトは、率直に a hope which undoubtedly is largely based upon self-interest、「疑いをはさむ余地なく主としてself-interest から出た要望」と評しています。self-interest は、私利私欲、利己心などと訳され、言うまでもなく道義的にあまり芳しくない意味を帯びています。この一語にはシーボルトの軽蔑すら感じられます。

シーボルトが天皇の私利私欲と見たのはどのようなものだったのか。ソ連の影響を阻止したいというのが国民の関心事である、という昭和天皇の認識をシーボルトが共有していたなら、東西対立がいよいよ激化していた折柄、かれは昭和天皇の言い分はもっともだ、と同意したでしょう。こんな侮蔑的な言い方はしなかったでしょう。


池田香代子さんは、「シーボルトは、率直に a hope which undoubtedly is largely based upon self-interest、『疑いをはさむ余地なく主としてself-interest から出た要望』と評しています」と述べていますが、英語原文は次のとおりです。該当箇所に下線を引いておきます。

It will be noted that the Emperor of Japan hopes that the United States will continue the military occupation of Okinawa and other islands of the Ryukyus, a hope which undoubtedly is largely based upon self-interest. The Emperor also envisages a continuation of United States military occupation of these islands through the medium of a long-term lease. In his opinion, the Japanese people would thereby be convinced that the United States has no ulterior motives and would welcome United States occupation for military purposes.


この文書の全文は「沖縄県公文書館のサイトに載っている」と池田香代子ブログに書いてあったので、調べて見ると確かにそのとおりでした。下記を御覧ください。
http://www.archives.pref.okinawa.jp/collection/images/Emperor%27s%20message.pdf

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池田香代子ブログは長いので途中は省略して、最後の部分だけを引用すると、それは次のようになっていました。私が下線部を引いた箇所に注目してください。

つまり昭和天皇は、日本に生きる市民たちから自分を(昭和天皇の心理的事実では日本国を)守るために、アメリカは沖縄をいつまでも軍事占領してほしい、と言っているわけです。天皇のなかでは、国家と「国民」が敵対関係、と言っては語弊があるならば、緊張関係にある。「国民」は時として国家すなわち自分を脅かすものと認識されている。だから、一朝事(いっちょうこと)あれば、沖縄にいる米軍の銃口を市民に向けてほしい、というわけです。

ここからは、皇国思想とともに、軍は人びとを守るものではないという現実をふまえた、冷徹な軍人政治家の発想がうかがわれます。なにしろ昭和天皇は、30代後半からの15年を軍服で生き、ほんの2年前まで、いかに形式的だろうが大元帥として戦争を「指揮していた」のです。そして、これはあまたの傀儡政権のトップに共通する発想です。傀儡政権のトップを、「宗主国」の人間は尊敬しません。溥儀を関東軍が尊敬しなかったように。


上記下線部で薄儀(ふぎ)とあるのは、中国の清朝が崩壊したときの最後の皇帝であり。日本が満州国という傀儡(かいらい)国家をつくったときに、日本によって満州国皇帝に据えられた人物です。

この人物は日本の傀儡(かいらい=あやつり人形)だったわけですから、満州国を実質的に支配していた日本陸軍=関東軍からは軽蔑されていた、それはアメリカが天皇を内心は軽蔑していたのと同じだ――と池田香代子さんは述べているのです。

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http://www.peace-forum.com/mnforce/2012/02katudou/121002okinawa/01.htm

昭和天皇が寺崎英成(ひでなり)を通じて自分の意向を伝えたのは1947年(昭和22年)9月でした。

このとき既に日本では新しい日本国憲法が、大日本帝国憲法73条の憲法改正手続に従って、1946年11月3日に公布され、1947年5月3日から施行されていました。

この頃の日本は、アメリカが日本の民主化を支持していました。そして1947年4月25日には新しい憲法のもとで初めての選挙がおこなわれ、その結果、片山哲がひきいる社会党が第一党になりました。

国民が社会主義政党に投票して、それが実現するほど国民の意識が大きく変化しつつある時代でした。ですから「朕は国家なり」という古い意識をもったままの天皇がこのような動きに危機感をもったというのは、ある意味で当然だったとも言えます。

その後、朝鮮戦争の勃発(1949年)が近くになるにつれて、占領軍内部でも、日本の民主化よりも再武装させてアメリカ軍と一緒に戦わせようとする勢力が勝ちを占めることになり、いわゆる「逆コース」の時代が始まりました。

最近でも「押しつけ憲法改正!」と叫んでいるひとが再び自民党の党首になりましたが、実は平和憲法の改正(改悪?)を最も望んだのは、「おしつけた」はずのアメリカだったことは、これまでの歴史からも明らかです。実に皮肉なことです。

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占領軍司令官マッカーサーが片山哲首相の就任を黙認したのは、片山哲がキリスト教徒だったからだ、日本にキリスト教を広めるのに今が絶好の機会だと考えていたからだと、『戦後史の正体』(73頁)は実に興味深い指摘をしています。

その孫崎享『戦後史の正体』(2012, 87頁)はさらに寺崎英成がシーボルトに伝えた天皇の意向を次のように紹介しています[池田香代子ブログは2010年だったことに注目してください]

天皇の顧問、寺崎英成氏が、沖縄の将来に関する天皇の考えを私に伝える目的で、時日をあらかじめ約束したうえで訪問してきた。寺崎氏は、米国が沖縄その他の琉球諸島の軍事占領を継続するよう天皇が希望していると、言明した。(中略)
 
さらに天皇は、沖縄(および必要とされる他の諸島)にたいする米国の軍事占領は、日本の主権を残したままでの長期租借[そしゃく]――25年ないし50年あるいはそれ以上――の擬制[ぎせい=フィクション]にもとづいてなされるべきであると考えている。


これは、シーボルトがアメリカ国務長官あての極秘メッセージの中で「マッカーサー元帥あての覚え書きを同封します」と書かれている同封文書の一節です。その和訳全文と英語原文は、末尾に資料として載せておきます。

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それはともかく、1979年に進藤栄一・筑波大学助教授(当時)がアメリカ公文書館から発掘した文書について、『戦後史の正体』(87-88頁)はさらに次のように解説しています。

「えーっ」と驚かれたかも知れません。私も初めてこの文書を読んだときは本当に驚きました。ここで昭和天皇はGHQ側にたいして「沖縄を半永久的に占領してほしい」と伝えているのです。さらに驚きべきことに、沖縄の現実はいまでも基本的にこの昭和天皇の要望どおりになっているのです。昭和天皇は戦後の沖縄関係を構築するうえで、ここまで深く直接かかわっていたのです。


ところが進藤氏が雑誌『世界』1979年4月号でこの文書について発表したとき、大手マスコミどころか学会もまったく黙殺の態度をとりました。

「不都合な事実には反論しない。あたかもそれが何の意味ももたないように黙殺する」それが戦後の日本のメディアや学会の典型的な対応なのです――と孫崎享氏は同書(88頁)の第1章を結んでいます。

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この極秘メッセージにたいする本土の対応は上述のとおり全くの黙殺でしたが、沖縄の反応はそれとは対照的でした。それを前述の池田香代子ブログは次のように伝えています。

この外交文書が機密解除されたのは1979年、沖縄「復帰」後7年目のことでした。沖縄は騒然としたと記録にあります。それはそうです。皇国教育をうけ、沖縄戦に巻き込まれ、家族や家や土地を失った人びとはまだ青壮年です。そして、戦場と化した島を逃げ惑ったおじぃおばぁが日の丸を掲げて島ぐるみで「本土復帰運動」をした経験は、ついこのあいだのこととして生々しく共有されていました。


島ぐるみで「本土復帰運動」をして、1972年(昭和47年)5月15日にやっと実現した復帰運動でしたが、本土の反応は、沖縄の苦しみにはほとんど無関心という冷たいものでした。

また、これは日本政府が、アジア太平洋戦争の末期に「集団自決」など沖縄住民に多大なる犠牲を強いたにもかかわらず、いまだにそれを正式に認めようとしないことにも通じるものです。

これでは沖縄の人たちが憤(いきどお)るのも無理はないと言うべきでしょう。

ではなぜ日本が沖縄にたいしてこんなにも無関心だったのでしょうか。それは戦後の日本がアメリカにたいして従属的であり続けてきたことと深く結びついています。

そこで次回はアメリカ独立宣言の基礎を築いたと言われるトマス・ペイン『常識=コモンセンス』を取りあげながら、もういちど日米関係を考えてみたいと思います。

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<資料1> 総司令部政治顧問シーボルトから国務長官宛の書簡、東京1947年9月22日
主題:琉球諸島の将来に関する日本の天皇の見解
国務長官殿 在ワシントン

謹啓
 天皇の顧問・寺崎英成氏が当事務所を訪れたさいの、同氏との会話要旨をメモした1947年9月20日付けマッカーサー元帥あて覚え書きのコピーを同封することを光栄とするものです。
 米国が沖縄その他の琉球諸島の軍事占領を続けるよう日本の天皇が希望していること、それが疑いもなく私利に大きくもとづいているものである点が注目されましょう。また天皇は、長期租借(そしゃく)による、これら諸島の米国軍事占領の継続を求めています。寺崎氏の見解によれば、日本国民はそれによって米国に下心がないことを納得し、軍事目的のための米国による占領を歓迎するだろうということであります。
敬具

合衆国対日政治顧問 代表部顧問、W.J.シーボルト

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<資料1の原文> UNITED STATES POLITICAL ADVISER FOR JAPAN、Tokyo, September 22, 1947.
Subject: Emperor of Japan's Opinion Concerning the Future of the Ryukyu Islands.
The Honorable, The Secretary of State, Washington.

Sir
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Author:狐狸庵居士(田舎の国立大学を2010年に定年退職)

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