TPP問題を考える――国家主権の剥奪そして沈没する日本、貿易協定の衣を着たアメリカ巨大企業による世界支配!、トマス・ペイン『コモンセンス』は訴える 「要するに、日本は大国から自立して、日本自身に属すべきなのだ」

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首都ワシントンで、「安い医薬品(後発医薬品 Generic drug)などが手に入らなくなる」と、TPPに抗議するアメリカ市民

AIDS activists sing and chant during a rally across from the White House in Washington July 24, 2012. (Reuters/Kevin Lamarque)
http://rt.com/usa/white-house-aids-march-981/

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安倍内閣が誕生してから急に世情が慌ただしくなってきました。というよりもアメリカにたいする日本の属国ぶりがより顕著になったというべきかも知れません。

その典型例が「原発の再稼働」「普天間基地移転問題」「TPPへの加盟宣言」の三つではないでしょうか。

北朝鮮問題を利用して、「原発を廃炉にすると、いざというときに核兵器をもてなくなる」ということすら公然とささやかれるようになりました。

しかし一触即発の状態になっている北朝鮮問題を解決する一番簡単な方法は、休戦状態になっている朝鮮戦争を終わらせるため、アメリカが北朝鮮と平和条約を結び、朝鮮半島を非核地帯にすることです。

これは北朝鮮自身が強く望んでいることですから、アメリカにその意志さえあれば簡単に実現できることです(詳しくは2月24日の本ブログを参照してください)。

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さて一向に解決の方向が見えない原発問題ですが、3月18日には福島第1原発で大規模停電が発生し、燃料貯蔵プールの冷却装置など9つの設備が停止するという深刻事故もおきています。

地震が多発しているなか、このような深刻事故がおきているいるにもかかわらず、安倍内閣は、原発をさらに6基も再稼働すると言い始めています(「経産省前テントひろば」を撤去する動きも、その一貫でしょう)。

また、普天間基地移設問題でも、自民党政権は、地元沖縄県民の意向よりもアメリカの意向を重視する方針を、民主党政権よりもさらに強く打ち出しています。

もっと問題なのは、いわゆるTPP(環太平洋戦略的経済連携協定:Trans-Pacific Strategic Economic Partnership Agreement または単に Trans-Pacific Partnership)への参加をはっきりと明言したことでしょう。

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<註> 原子力の平和利用という戦略が、日本の「原水爆禁止運動」を押さえ込むためにアメリカによって持ち込まれたものであることは、中日新聞の下記連載「日米同盟と原発」第5回で詳しく解明されています。
http://www.chunichi.co.jp/article/feature/arrandnuc/index.html

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Fish with radiation over 2,500 times safe levels found near Fukushima plant
http://rt.com/news/japan-fish-radiation-fukushima-321/ (January 19, 2013)

Fish market in Kitaibaraki, Ibaraki prefecture, south of the stricken Fukushima daiichi nuclear power plant number 1 on April 6, 2011 (AFP Photo / Toru Yamanaka)
http://rt.com/news/radioactive-cesium-japan-fish-seawater-895/

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肝心のTPP問題ですが、これがいかに有害無益なものであるかは、次のビデオを見ていただければよく分かるはずです。

TPPは貿易協定の衣を着た企業による世界支配の道具
http://democracynow.jp/video/20120614-2

このビデオはDemocracyNow!が市民団体パブリック・シチズン「グローバル・トレード・ウォッチ部門」代表ロリ・ウォラック女史にインタビューしたものに日本語字幕をつけたものです。

これは2012年6月14日に放映されたものですが、内容的には全く古くなっていません。それどころか、日本が加盟を表明した今こそ視聴すべきものではないかと考えます。

15分程度のもですから、時間を見つけて、ぜひ御覧いただきたいと思います。

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<註> 英語原版は下記のとおりです。
Breaking '08 Pledge, Leaked Trade Doc Shows Obama Wants to Help Corporations Avoid Regulations
(2008年大統領選挙での公約違反!、リークされた文書によれば、大企業による規制逃れをオバマが幇助したいと願っている)
http://www.democracynow.org/2012/6/14/breaking_08_pledge_leaked_trade_doc

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これを見て驚くのは、アメリカの一般市民にすらTPPの内容が公開されていないことです。アメリカ政府通商代表部が企業側と連携しながら秘密裏に進めてきたもので、国会議員でさえ内容を知ることができない始末です。

このような進め方そのものが、この協定の本質をよく示していますが、このビデオで分かることは、市民団体パブリック・シチズンのロリ・ウォラック女史が指摘する次の2点に要約できます。

「これは貿易協定ではない、企業による世界支配の道具だ」「1%の富裕層が私たちの生存権を破壊する道具だ」

つまりアメリカの大企業にとっては、自国の中産階級が消滅しつつありますし、貧困化したアメリカの一般庶民は、搾取の対象としてはもう魅力ある存在ではなくなりました。

そこで目を付けたのが、貧困化しつつあるとは言え、まだまだ豊かさを残している日本だいうわけです。

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<註> アメリカの貧困ぶりは、堤未果『貧困大国アメリカ』(岩波新書)でも知ることができますが、マイケル・ムーアの映画『Roger&Me』『Sicko』を見れば、さらによく分かります。この映画を通じて、TPPがもたらす結果を自分の目で確認できるでしょう。
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以前のブログでも書いたことですが、私は日本の戦後史について次のような仮説をずっと胸にいだき続けてきました。私がTESOLの学会に参加するため渡米し、毎年1か月くらい滞在する生活を10年くらい続けている間に、この仮説をますます確信するようになりました。

1)日本がアジアに侵略戦争にたいする謝罪をせずに済んできたのは、ドイツと違って日本はアジアの隣国と貿易せずとも、アメリカの庇護の下で、基本的にアメリカと貿易するだけで復興してきたからだ。

2)それどころか朝鮮戦争やベトナム戦争などアメリカがおこなってきた戦争の後方部隊をつとめることによって(いわばアジア人の血によって)莫大な経済的利益を得て戦後の復興をなしとげた。こうして、アメリカはアジアにたいする謝罪の機会を日本から奪うことになった。

3)ソ連や中国などの社会主義国が存在し、医療や教育の無償化など国民の生活を安定させる実績をあげている国があるかぎり、その対抗上、資本主義国でも同じことが可能であることを実証せざるを得なかった。アメリカが日本の経済復興を援助したのは、上記のことを証明するためのモデル国家として日本を世界に陳列するためであった。

4)しかしソ連が崩壊し、その結果、社会主義の東欧も姿を消した。こうして社会主義の良さを実践する国は存在しなくなった。中国も名前は「社会主義国」だが、実態はアメリカで学んだ経済エリートが新自由主義的経済運営をおこなう国家独占資本主義国となってしまい、国内では極端な貧富の格差が生まれている。

5)したがってアメリカにとって、社会主義国に対抗するための「モデル国家」として日本を庇護しなければならない理由は消滅した。むしろいま必要なのはアメリカに対抗するまでの経済力を持つにいたった日本を徹底的に叩きのめし、日本がもつ豊かな資産をアメリカに移し替えることである。これがアメリカから毎年のように日本に突きつけられてきた「規制緩和」「年次改革要望書」だった。

元外交官・元防衛大学教授の孫崎享『戦後史の正体』(創元社、2012)を読んで、ますます私の仮説が正しかったのだという確信をもつようになりました。
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<註> チョムスキーを読んでいる私からすると、細かなところで孫崎氏の叙述に疑問な点がないわけではないのですが、それはここでは取りあげません。むしろ私はこのような書籍を公(おおやけ)にした氏の身辺を心配しています。

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トマス・ペインと『コモンセンス』
  
http://shisly.cocolog-nifty.com/blog/2012/07/post-83d6.html

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ところで『肉声でつづる民衆のアメリカ史』(明石書店、2012)の第4章にトマス・ペイン『常識=コモンセンス』が出てきます。

これを翻訳していたら、アメリカ人トマス・ペインが呼びかけるイギリスからの独立が、ほとんどそのまま「日本人が呼びかけるアメリカからの独立」の文書として通用するのではないかと思うようになりました。

そこで、トマス・ペインの文書で、「イギリス」とあるところを「アメリカ」に、「アメリカ」とあるところを「日本」に書き換えた、狐狸庵居士版『コモンセンス』を以下に紹介します。

これは2012年11月8日のブログ「米兵によるレイプ事件(3)」に乗せたものですが、今回、再録するにあたって若干の改訂を加えました。

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<註> ただし、『肉声でつづる民衆のアメリカ史』に載せられている「コモンセンス」は長すぎるので、分かりやすくするため番号を打ちながら幾つかの箇所を省いてあります。それを.....で示しました。また、「ヨーロッパ」も「世界」に書き換えました。当時のアメリカ人にとってはイギリスを含むヨーロッパが「世界」でしたから。(ドヴォルザーク がアメリカを「新世界」としたゆえんです)
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1 私がこの小冊子で述べることは、単純な事実、率直な主張、常識ばかりである。このことをまず読者にお話ししておきたい。読者は偏見や先入観を捨て去り、もっぱら自身の理性と感情に従って、真の人間的品性を獲得するのか、あるいは今もっている品性を捨て去らずに保持するのかを自身で決断いただきたい。そして、自身の視野を明日へと大きく広げていただきたい。
 アメリカと日本との軋轢(あつれき)について、多くの書物が書かれている。あらゆる階層のひとが異なる動機とさまざまな意図でこの論争に加わった。しかしすべてが無駄だった。論争の時期は終わった。……

2 当時この問題について双方の代弁者が提案したのは、どれも同一目標、すなわちアメリカとの結合をめざすことだった。双方の唯一の違いは実現方法にあった。……

3 [アメリカとの] 関係修復の利益についてはいろいろと言われてきたが、甘い夢のごとく消え去り、元の木阿弥となった。したがって関係修復論とは正反対の議論を検討すべきであり、また日本がアメリカと結合し従属することで、現在および将来こうむる多くの物的損失を検討しなければならない。それは自然原理と常識にもとづいてアメリカとの結合と従属を検討することであり、離脱すれば何が期待できるか、従属すれば何が予期できるかを検討することである。
 日本はこれまでアメリカとの結合のもとで繁栄してきたのだから、将来の幸福のためにも同じ結合が必要であり、そうすれば常に同じ結果が得られると主張するものもいた。この種の議論ほど馬鹿げたものはない。それなら子供はミルクで育ったのだから決して肉を食べさせてはならないとか、人生の最初の二〇年間は次の二〇年間の先例になると主張してもよいことになる。
 しかし、これは前述の議論をもっと認めることになる。というのは率直にいえば、世界の大国が日本を無視したとしても、日本はこれまでどおり、いやはるかに繁栄していたと言えるからだ。日本をここまで豊かにしたのは生活必需品の貿易だった。衣食住というものが世界の習慣であるかぎり、他の買い手はいつでも見つかるからである。
 しかし、アメリカが日本を守ってくれたと主張するものもいる。アメリカが日本を独占してきたことは確かであるし、この国土を日本の費用だけでなくアメリカの費用で守ってきたことも否定はしない。だがアメリカは同じ動機があれば、つまり貿易と領土のためならトルコでも守っただろう。……

4 しかし、アメリカは保護者だと言うものもいる。それならアメリカの行為は一層恥ずべきだ。野獣でさえわが子を貪(むさぼ)り食おうとはしない。野蛮人でさえ自分の家族に戦いをしかけない。したがってこの主張が本当なら、なおさらアメリカを非難することになろう。……

5 最も熱狂的な関係修復論者に私は問う。この国土がアメリカと結合していることで得られる利益があるなら、一つでも示してみよ。くりかえし問う。何の利益も引きだせないではないか。我々の生産物は世界のどの市場でも売れ、輸入品は代金を払えば何処からでも買えるのだ。
 しかしアメリカとの結合から受ける被害と損失は計り知れない。自らのみならず人類一般への我々の義務感は、この結合を廃棄せよと命じている。なぜなら、少しでもアメリカに従属し依存していると、日本はすぐに世界の戦争や紛争に巻きこまれるからだ。
 そればかりではない。アメリカと結合していなければ関係修復を求めてくるはずの国々や、我々が怒りも不満も抱いていない国々と、我々は不和になってしまうからだ。
 世界は貿易の市場だから、どの国とも偏った関係を結ぶべきではない。世界の紛争に巻きこまれないようにするのが日本の真の利益だ。しかしアメリカに依存し、アメリカ政治の天秤の錘(おもり)にされているかぎり、そうはいかない。……

6 アメリカがどこかの国と戦争をはじめると、日本の貿易はいつでも壊滅的打撃をうける。日本がアメリカと結びついているからだ。次に戦争がおこれば、この前の戦争のようにはいかないかもしれない。うまくいかなくなれば、今は関係修復を主張しているひとも分離・独立を望むだろう。中立こそが戦艦よりも安全な護衛艦になるからだ。
 正義や道理にかなったものすべてが離脱を主張している。殺された者の血が、自然の泣き声が、「いまこそ独立すべきときだ」と叫んでいる。全能の神がアメリカと日本とのあいだに設けた距離でさえ、アメリカ権力の日本支配が天の計らいでないことを示す有力な自然の証拠である。……

7 アメリカによる日本国土の支配は、遅かれ早かれ終わりを告げる統治形態だ。しかし、いわゆる「現体制」が一時的なものにすぎず未来は変わるのだという痛みを伴うが否定しがたい信念は、保守的なひとには心から喜べないのである。統治が永続しないと、子孫に遺してやれるものがなくなることを、親としては喜べないからである。
 率直にいえば、いま我々は次の世代に借金を負わせつつあるのだから、だかこそ独立という仕事をしなければならないのだ。さもないと子孫を卑劣に浅ましく利用することになる。我々の歩むべき進路を見出すには、子供の手をとり数年先の立ち位置を決めることである。そうすれば、今わずかばかりの恐怖や偏見で視野から外されている展望が、高見から開けてくるだろう。……

8 おとなしいの性格のひとはアメリカ人の攻撃を軽く考え、相変らず前途を楽観して「さあさあ、あんなことはあったけれど、また仲よく」と呼びかけそうだ。しかし人間としての怒りや感情を考えてみるがいい。また関係修復論を自然の基準に照らして検討してみるがいい。その後で、諸君の郷土に砲火や剣をもちこんだ国を、今後もまた愛し尊敬し忠実に尽くすことができるか、聞かせてもらいたいものだ。
 そのどちらもできないというなら、諸君は自らを欺(あざむ)き、子孫に破滅をもたすだけだ。愛することも尊敬することもできないアメリカとの結合をこれからも続けるとすれば、その関係は強制的で不自然なものになる。また、それは便宜的につくられた一時しのぎの関係にすぎないので、すぐにこれまでより悲惨な状態に陥るだろう。
 それでも諸君が暴行を見逃せると言うなら、お尋ねしたい。家が焼かれたことがあるか。財産が目の前で破壊されたことがあるか。妻子が身を休めるベッドや命をつなぐパンに困ったことがあるか。親や子が彼らの手で殺害されたことがあるか。自身が落ちぶれた無惨な生き残りになったことがあるか。
 そうでないなら、このような体験をしたひとについて、とやかく言う資格はない。しかし、諸君がこのようなことを体験していながら殺害者と握手できるなら、諸君は夫や父、友人や恋人の名に値しない。地位や肩書が何であろうと、諸君は、心情は臆病者で、精神は密告者なのだ。……

9 日本国土がいつまでも外部権力に服従しつづけると考えるのは、理に反し、世の条理に反し、前時代からのあらゆる実例に反している。最も楽天的なアメリカ人でさえそうは考えない。知恵の限りを尽してどんな計画を立ててみても、いまとなっては分離する以外、この国土にわずか一年の安全・安寧(あんねい)さえ保証できない。
 関係修復はいまでは誤った夢である。自然はこの結合を見捨てた。人為が自然の代りをすることはできない。ミルトンが賢明にも言うように「極度の憎悪という傷が、甚だしく深かったならば、真の和解は生じない」からだ。……

10 [要するに] アメリカは世界の一つの国に、日本は日本自身に属すべきなのだ。

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上記の文章を、東京大空襲などで焦土と化した県都・首都、原爆で瓦礫と化した広島・長崎を思う浮かべながら読み直してみてください。そうすれば当時の日本人がアメリカにたいしてどのような思いをいだいていたかを、逆に想像できるはずです。

しかしアメリカの占領政策は日本人を親米へと洗脳することに見事に成功しました。私もその一人でした。

他方、アメリカが日本にプレゼントしてくれた素晴らしい贈り物は「日本国憲法」でしたが、この画期的試みに意欲を燃やした(アメリカですら実現しなかった理想の憲法をつくろうとした)若きアメリカ人の多くは、帰国してから社会主義者として迫害されました。

いずれにしても、トマス・ペインがイギリスからの独立を勝ちとるために「常識とすべし」とした見解(それが書名『コモンセンス』の主旨だったはずです)が、日本人にとっても常識になる日が近いことを祈っています。

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<註1>  上記の日本版『コモンセンス』に頻出する“関係修復”を、「民主党鳩山内閣によって破壊されたアメリカとの関係を修復する」と言ってアメリカ詣でに出かけた自民党安倍内閣を思い浮かべながら読んでいただければ、いっそう味わいが増すのではないかと考えます。
<註2> なお、このパロディ『コモンセンス』は下記HPの「国際教育資料」にも載せてあります。
パロディ『コモンセンス』ー―トマス・ペインの主張を日本に当てはめると
http://www42.tok2.com/home/ieas/CommonsenseJapan.pdf
http://www42.tok2.com/home/ieas/international_education.html
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ベネズエラ大統領チャベスの死を考える――民衆を貧困から救い医療と教育を与えた男が「独裁者?」、情報公開法にもとづいて、"暗殺計画の可能性" に関する文書の提出を請求

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────────────────────────────────────────「3月5日にベネズエラ大統領ウゴ・チャベス(Hugo Chávez)が亡くなった」というニュースが世界中を席巻しました。

というのは、ロシア革命を指導したレーニンや中国革命を指導した毛沢東、さらにキューバ革命を指導したカストロと並んで、「ボリーバル革命」と言われるベネズエラ革命を指導したチャベスは、世界史を変革した人物のひとりとみなされてきたからでしょう。

(「ボリーバル革命」というのは、、南米大陸のアンデス5ヵ国をスペインから独立に導き、統一したコロンビア共和国を打ちたてようとした革命家シモン・ボリーバルにちなんで名づけられた名称です。)

キューバの元首相カストロと同じように、チャベスを「独裁者」だとして攻撃してきたアメリカ政府や保守層は、チャベスの死で「南米に新しい章が始まる」と小躍りしましたが、チャベスのおかげで貧困から脱却しつつあったベネズエラ民衆にとっては、これほど悲しいニュースはなかったでしょう。

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またベネズエラだけでなく、エクアドル、ボリビア、アルゼンチン、ブラジルなどの民衆にとっても、チャベスを失ったことはどれほど大きな衝撃と悲しみであったかは、想像するに余りあります。

というのは、これらの国々は、アメリカに支援された独裁政権、民衆に残忍な拷問と弾圧を繰り広げてきた親米政権を倒して、「参加型民主主義」の新しい歴史を切り拓きつつあったからです。初の先住民大統領を産みだしたボリビア、ジュリアン・アサンジの亡命を認めたエクアドルは、その典型例でしょう。

他方、アメリカに支援されて中南米の民衆に残忍な拷問と弾圧を繰り広げてきた多くの中南米独裁政権のなかでも、、その際だった典型例が、1973年の9.11クーデタで独裁者の地位についたチリのピノチェト将軍でした。

ふつう「911事件」と言えば、2001年のアメリカを襲った911事件を思い浮かべますが、南米の人びとは、チリで民主的に選ばれたアジェンデ大統領を死に追い込んだ1973年のクーデタを、真っ先に思い浮かべます。

このクーデタがCIAとITT(国際電信電話会社)などアメリカ大企業によってどのように仕組まれたかは、アメリカ上院特別調査委員会(いわゆるチャーチ委員会)の下記報告書に、詳細に記されています。

「政府・CIAによるチリでの秘密工作―1963年から1973年」に関する特別委員会報告
(拙訳『肉声でつづる民衆のアメリカ史』下巻、第20章 第7節、315-319頁)

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<註> この20章第8節には、FBIによるスパイ撹乱工作を論じた非常に興味あるチョムスキーの論考「コ・インテル・プロ――大手メディアから『消されたもの』は何だったのか」も収録されていますので、参照していただければ幸いです。
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このように中南米は、アメリカによる暗殺・殺戮・クーデタで充ち満ちているのですが、それを詳細に記したものが『アメリカの国家犯罪全書』(ウィリアム・ブルム、作品社、2003)でした。

ですから、「チャベス死す!」という知らせが届いたとき、私の頭に真っ先に思い浮かんだのは、「ひょっとして毒殺ではなかったのか」「どこかで癌を引きおこす毒物を注入または食べさせられたのではないか」という疑いでした。

というのは、2002年4月11日に、CIAの支援を受けて軍部によるクーデターが発生し、チャベスは軍に監禁され、代わりに元ベネズエラ商工会議所連合会 (Fedecámaras) 議長のペドロ・カルモナが暫定大統領に就任するという事件が、既に起きていたからです。

このクーデターは成功したかに思われましたが、民衆による巨大な抗議運動に励まされて、チャベスを支持する軍の一部と国家警備隊がチャベスを奪還した結果、クーデターはわずか2日間で失敗に終わりました。

この事件の詳細は、偶然そのときにベネズエラを訪れていたカメラマンによって記録され、数々の栄誉あるドキュメンタリー賞を受け、NHKのBSプライムタイム「チャベス政権 クーデターの裏側」 でも紹介されました。

私は、このBSドキュメンタリーで初めてこの事件を知ったのでしたが、この映像を詳細に記録・紹介した木村菜保子氏は、その最後を次のように結んでいます。

 この映像を見終わって、もう一度考えてみる。チャベス政権は、はたして「独裁政権」なのだろうかと。

 憲法があり、大統領は選挙で選ばれ、議会や裁判所があり、オンブズマン制度があっても、そして、かつてなく多くのベネズエラ国民の政治的関心を目覚めさせたとしても、アメリカと特権層の利害に反する政策を採る限り、チャベス政権は「独裁政権」であるとして、その転覆が画策され続けるであろう。


http://webcache.googleusercontent.com/search?q=cache:b6lllUYM_B8J:www.jca.apc.org/stopUSwar/Bushwar/venezuela_coup.htm+&cd=1&hl=ja&ct=clnk&gl=jp&client=firefox-a

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首都カラカスを埋め尽くした民衆の葬列


私がチャベスの訃報を聞いたとき、「暗殺ではなかったのか?」と思ったもう一つの理由は、次の二つの事実がすぐに頭に浮かんだからです。

1)アメリカ政府から「独裁者」として非難され続けてきたキューバのフィデル・カストロは、何百回もの暗殺計画を生き抜いてきた
2)パレスチナPLOの議長だったヤセル・アラファトは、不審な死を遂げたが、最近、氏の遺品から放射性ポロニウムが検出された

このような疑いをいだいたのは私だけかと思っていたら、公民権運動団体ANSWER(Act Now to Stop War and End Racism)などが中心になって、「CIAなどのアメリカ政府機関がチャベスの死に関与していないかを調べるための資料」を提出するよう、情報公開法にもとづいて正式に請求していることを知りました。

資料請求の根拠を同団体は次のように述べています。

この請求は、アメリカ政府が―直接または間接を問わず―これまでも外国指導者の暗殺を企てたという広く知られた歴史、したがってそれに関する知識や情報を所有しているという事実に鑑みてなされるものである。

そして「情報公開法に基づいて入手された、これらの広く知られた外国人指導者の暗殺計画には、たとえば次のようなものがある」として三つの具体例をあげています。

フィデル·カストロ(Fidel Castro、キューバ)
ラファエル·トルヒーヨ(Rafael Trujillo、ドミニカ共和国)
ルネ·シュナイダー・シェロー将軍(General René Schneider Chereau、チリ)

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上記であげられている「カストロ暗殺計画」については、Wikipedia.Japanには次のような記事が載せられていました。

2006年に閣僚評議会議長の権限を暫定的にラウルに移譲するまでに暗殺を638回計画されたといわれ、命を狙われた回数が最も多い人物としてギネスブックへの掲載が決まっている。そのうち大半はCIAなどによるフィデル暗殺計画で、147回計画されたといわれる。

革命後にアメリカのマフィアが経営していたカジノを追放したことにより、マイヤー・ランスキーなどのマフィアからも暗殺の標的となる。また1960年にCIAがマフィアに15万ドルでカストロの暗殺を依頼していたことが2007年の文書公開で判った。
http://www.afpbb.com/article/politics/2245367/1726074
http://www.gwu.edu/~nsarchiv/NSAEBB/NSAEBB222/family_jewels_full_ocr.pdf


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上で例としてあげられているドミニカ共和国大統領ラファエル·トルヒーヨは、アメリカが支援していた独裁者でしたが、あまりにも評判が悪いため、CIAによって支援された軍部によって暗殺されてしまいました。

キューバ革命が起きた原因が、当時の大統領フルヘンシオ・バティスタがあまりにも評判の悪い独裁者だったことによるとして、アメリカはドミニカが「第2のキューバ」になることを恐れたのでした。

また上で例としてあげられているルネ·シュナイダー・シェロー将軍は、先に紹介したチリのアジェンデが大統領に当選しそうだったとき、クーデタを起こしてアジェンデを追放するよう圧力がかけられたのですが、それを拒否したため、CIAによって支援された軍部によって暗殺されてしまいました(1970年10月26日)。

その3年後の1973年9月11日にピノチェト将軍による「911事件」が実行されたのです。

こんなふうに解説していると、どんどん長くなっていき、肝心の「情報公開法にもとづく請求書」そのものをいつまでたっても紹介できないことになりますので、ここでやめます。以下が、その文書(ただし、その冒頭部)です。

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ウゴ·チャベスの死を調査せよ

情報公開法(FOIA)にもとづいて「暗殺計画の可能性」に関する文書の提出を請求

Investigating Hugo Chávez's death
FOIA filed demanding information on possible assassination plans
http://www.answercoalition.org/national/index.html
2013年3月5日


ウゴ·チャベス大統領の死の発表から数時間もたたないうちに、アメリカの市民運動団体が、情報公開法(FOIA:Freedom of Information Act)にもとづいて、情報・文書の提出を連邦政府機関に請求した。

それは、ベネズエラ大統領ウゴ·チャベス(Hugo Chávez)の毒殺または他の手段による暗殺に関する情報や計画、それを議論したり言及したり示唆したりする全ての文書の提出を求めるものである。

文書請求の宛先は、次のとおりであり、
中央情報局(CIA: the Central Intelligence Agency)、
国務省(the Department of State)、
国防省情報局(the Defense Intelligence Agency)、

また、この法的請求を提出した市民運動団体は次のとおりである。
the Partnership for Civil Justice Fund
ANSWER(Act Now to Stop War and End Racism)Coalition
Liberation Newspaper

ベネズエラ政府も、NBCニュースと他のメディアの報道に基づいて、チャベス大統領の病気にかかわる状況・疑惑の調査を呼びかけている。とりわけ彼が毒殺または故意に癌を引きおこす要因にさらされた可能性についての調査である。

情報公開法にもとづく請求文書は次のとおりである。

我々は、情報公開法(5 USC§552)に基づき、the Partnership for Civil Justice Fund, ANSWER Coalition (Act Now to Stop War and End Racism), Liberation Newspaper を代表して、次の情報を要求する。

亡くなったばかりのベネズエラ大統領の毒殺または他の手段による暗殺に関する情報や計画、それを議論したり言及したり示唆したりする全ての文書。

それには電子メール、手紙、電信またはその他の通信、メモ、ノート、下書き、写真、オーディオ録音、ビデオ録画、デジタル録音、情報評価、情報交換、議事録またはコレラに関するその他のデータを含む。

この請求は、アメリカ政府が―直接または間接を問わず―これまでも外国指導者の暗殺を企てたという広く知られた歴史、したがってそれに関する知識や情報を所有しているという事実に鑑みてなされるものである。

情報公開法(FOIA))にもとづいて入手された、これらの広く知られた外国人指導者の暗殺対象者には、たとえば次のような人物がいる。

フィデル·カストロ(Fidel Castro、キューバ)
ラファエル·トルヒーヨ(Rafael Trujillo、ドミニカ共和国)
ルネ·シュナイダー・シェロー将軍(General René Schneider Chereau、チリ)

(例えば、1975年1月3日、大統領ジェラルド·フォードとCIA長官ウィリアム・E・コルビーの間の会話の覚書を見よ)。

また、この請求は、パレスチナのリーダーだったヤセル・アラファト(Yassar Arafat)の死が毒殺だったのかどうかを検証するため死体が埋葬地から発掘され、「フランスの核物理学研究所が調べた結果、アラファト氏が身につけていたものから異常なレベルのポロニウム210が発見された」というマスコミ報道なども考慮に入れたうえでなされたものである。

たとえば次の報道を参照されたい。
Yasser Arafat Exhumed and Reburied in Six-Hour Night Mission: Samples Taken From Corpse of Late PLO Leader Will Be Used to Investigate Claims He Was Poisoned With a Radioactive Substance
[Chris McFreal, The Guardian, November 27, 2012]
(ヤセル・アラファト氏の死体が夜中に発掘され、6時間後に埋め戻された。PLO指導者の死体から取り出された検体は、氏が放射性物質で毒殺されたという主張を調査するために用いられる予定),

Arafat's Body is Exhumed for Poison Tests
[New York Times, November 28, 2012.]
(アラファト氏の死体が毒物テストのため発掘された)

さらに、後述するように、ベネズエラの大統領を暗殺するためにおこなわれたすべての活動に関する全情報を、国民は一刻も早く入手したいと切望している。その情報には、アメリカ政府が持つ暗殺計画の全知識、とりわけアメリカ政府が果たした役割に関する全情報が緊急に求められている。

複数のメディアの報道によれば、ベネズエラ政府もチャベス大統領の病気をとりまく状況・疑惑についての調査を呼びかけている。大統領が毒殺またはに癌の原因となる要因に故意にさらされた可能性についての調査である。

上記で述べた「複数のメディアの報道」については、例えば以下の報道を参照されたい。

Venezuela VP: Chávez's cancer was an“attack”by his enemies
[NBC News, March 5, 2013]
(ベネズエラ副大統領:チャベスの癌が彼の敵によって"攻撃"だった)


以下、省略。政府に提出された請求文書の全文は下記を参照。
http://www.justiceonline.org/docs/foia-request-hugo-chavez.pdf

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アメリカによる選挙介入を覚悟しつつ開かれた、巨大な民衆集会

http://www.npr.org/2013/03/12/174057927/in-upcoming-venezuelan-vote-hugo-chavez-looms-large

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チャベス死去にともなっておこなわれるベネズエラの大統領選挙は、4月14日に決まったようですが、今のところ暫定大統領のニコラス・マドゥロ(Nicolás Maduro)が優勢だとみられています。

しかし、貧困を激減させ医療と教育にも素晴らしい成果をあげつつあるベネズエラを押しとどめるための、CIAによる内部撹乱工作は必ずや深刻化し、将来いつベネズエラが「第2のリビア」や「第2のシリア」になるか、予断を許さない情勢が続くでしょう。

チョムスキーは「南米だけが世界を覆う暗雲を吹き払ってくれる希望の地だ」と言っていたのですが、その「希望の地」にどんな未来が待っているのか、心配でたまりません。

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<註1> 上記の「合衆国法典(USC: United States Code)タイトル5,セクション552」については、コーネル大学ロースクールの下記サイトを参照
5 USC § 552 --Public information; agency rules, opinions, orders, records, and proceedings
http://www.law.cornell.edu/uscode/text/5/552

<註2>.またGlobal Research というサイトには下記のような記事が載っていました。近いうちに訳出して紹介するつもりです。
CIA and FBI Had Planned to Assassinate Hugo Chávez
http://www.globalresearch.ca/cia-and-fbi-plan-to-assassinate-hugo-ch-vez/1296

関連記事

オバマの偽善・アメリカの犯罪(2) 「イランの核実験問題を考える」――シリアを壊滅させイラン攻撃へ、チョムスキー論文 「世界平和へのゆゆしき脅威:アラブの民衆が最も恐れているのは誰か」

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Manning上等兵を支援する人たち(ミード基地のゲート前)
http://rt.com/usa/army-releases-manning-docs-556/


有名なロック歌手Nashによるマニング支援の歌
"Almost Gone" by Graham Nash and James Raymond
http://www.youtube.com/watch?v=dAYG7yJpBbQ(3分50秒、背景の動画も必見!)

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現在の中東情勢を見ていると本当に胸が痛みます。アメリカが「イラクに大量破壊兵器がある」と嘘をつき、その嘘がばれると今度は「イラクに民主主義をもたらす」という触れ込みで侵略を続けました。

その結果はどうだったのでしょうか。かつては宗派間の争いがなかったイラクで、今は連日のように爆弾が爆発し(とりわけシーア派の寺院や居住区が狙われています)、国土は日に日に瓦礫状態になっていきっています。

私が勤務していた大学で修士号を取ってイラクに帰国したハッサン君からときどき思い出したように国際電話がかかってきますが、まず第一に私が無事にする言葉は「ハッサン、無事か?」です。それほど今イラクは荒廃の極に達しています。独裁者と言われたフセインでさえ、こんな酷い仕打ちを国民にたいしておこないませんでした。

ところが、これほど国内を荒廃させ,大量の難民と無数の拷問と死者を産みだした張本人であるアメリカから、誰ひとりとして「戦争犯罪」として告発されたものはいないのです。

それなのに、イラクにおける戦争犯罪を告発したブラッドリー・マニングは、死刑または終身刑の危機に直面しています

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<註> ブラッドリー・マニングBradleyManningは、死刑または終身刑への恐怖をのりこえ、2月28日(木)の軍事法廷で35頁にも及ぶ声明を読み上げ、法廷を拍手と感動の渦に巻き込みました。
WikiLeaks Whistleblower Bradley Manning Says He Wanted to Show the Public the "True Costs of War"
http://www.democracynow.org/2013/3/1/wikileaks_whistleblower_bradley_manning_says_he

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その一方で、国民を虐殺しているとして、シリアのアサド大統領をICC(国際刑事裁判所)にかけて「戦争犯罪人」として裁こうという動きが出てきています。

私は以前からシリアにおける反乱軍をNATOやアメリカが支援し続ける限り、国土が瓦礫になるまで、永遠に「内戦」は終わらない。それどころかシリアから大量の難民がうまれ、深刻な人道危機が訪れつつあります。

ですから私はこのブログでも、「今は朝鮮戦争やベトナム戦争の時と同じように、国民に平和な市民生活を与えるため一時休戦する以外にない」と述べてきました。

ところがオバマ政権は、一時休戦するどころか「シリア民衆のより良き未来のため、反乱軍への援助を増強する」と言明するようになりました。「ロシアがアサド政権を裏で支援している疑いがある」と非難しつつ、自分は裏でこっそり援助していたのに、今度は堂々と援助を公言するようになったのです。

さらに下記のDemocracyNow! の記事では、次のような3点を確認することができます(ただし「反乱軍」と言っても、アルカイダを含む雑多な集団から成っているといわれています)。
(1)新しい国務長官メリーが訪問先のローマで6000億ドルの援助をすると発表した、
(2)防弾チョッキや戦車を含むさまざまな軍需物資を援助している可能性があるとワシントンポスト紙が述べている
(3)場所は不明だが、アメリカがどこか近隣の国で秘かに反乱軍を軍事訓練しているとニューヨークタイムズ紙が報じた

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<註> 詳しくは下記の記事を御覧ください。
U.S. Increases Aid to Syrian Rebels; Training Underway in Regional Country
http://www.democracynow.org/2013/2/28/headlines#2286
  The Obama administration is increasing aid to rebels fighting Syrian President Bashar al-Assad. The Washington Post reports the United States may provide military supplies, including body armor and armed vehicles.
  Without revealing details, White House Press Secretary Jay Carney confirmed plans to assist the rebels.
  Jay Carney: "We will continue to provide assistance to the Syrian people, to the Syrian opposition. We will continue to increase our assistance in the effort to bring about a post-Assad Syria and a better path forward for the Syrian people."
  The New York Times reports U.S. training of Syrian rebels is underway at a military base in an unspecified regional country.
  At a summit today in Rome, Secretary of State John Kerry announced $60 million in new aid for the Syrian opposition.

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http://www.globalresearch.ca/us-nato-israel-agenda-syria-to-be-subdivided-into-three-weaker-states/5317128

オバマ政権がシリア民衆に明るい未来を与えようと反乱軍に武器援助をしているのでないことは、全く同じ時期にバーレーン民衆が独裁王制に抗議して大きな運動を展開し血なまぐさい弾圧を受けているにもかかわらず、アメリが武器援助をしているのは独裁王制であることを見れば一目瞭然でしょう。

それどころかシリアの解体はもっと大きな見通しを持って進められているようです。

つまり、かつて第一次大戦後、広大なオスマントルコ帝国が解体されて現在のサウジアラビアなど中東諸国がつくりだされたのと同じことが画策されているようなのです。そして最終目標がイラン転覆というわけです。

次の記事はそれをよく示しています。

Bahrain Protests Continue After Uprising's 2nd Anniversary
http://www.democracynow.org/2013/2/18/headlines#2186
Protests continued in Bahrain over the weekend after activists marked the second anniversary of their uprising against the U.S.-backed monarchy.(後略)

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<註> 関連記事として次のような興味深い論文がGlobalResearchに載っています。
Hidden US-Israeli Military Agenda: “Break Syria into Pieces”
http://www.globalresearch.ca/hidden-us-israeli-military-agenda-break-syria-into-pieces/31454
US-NATO-Israeli Agenda: Syria to be Subdivided into “Three Weaker States”
http://www.globalresearch.ca/us-nato-israel-agenda-syria-to-be-subdivided-into-three-weaker-states/5317128

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もしロシアや中国がアメリカの "Tea Party Movement" あるいは "Occupy Movement" にお金や武器を与えてオバマ政権の転覆を謀ったとしたら、アメリカ人はどんなに激怒するでしょうか。

しかし、実質的にはそれと同じことを、いまアメリカはシリアやイランにたいしておこなっているのですが、それを認識しているアメリカ人はほとんどいないようです。

オバマ氏は大統領2期目の就任演説で、「世界平和への脅威」だとして「ロシア、中国、イラン」を名指しで攻撃しましたが、かつてブッシュ大統領が「テロ国家」として「イラン、イラク、北朝鮮」を名指しで攻撃したことを思い出してしまいます。

しかしアメリカの良心的知識人の中には、アメリカこそ「世界平和へのゆゆしき脅威」をつくりだしている張本人であると厳しく追及しているひともいます。そのひとりが私の敬愛するノーム・チョムスキーです。

以下のチョムスキー論文を読んでいただければ、そのことがよく分かってもらえると思います(氏自身がユダヤ人であることを念頭において読んでください)。

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世界平和へのゆゆしき脅威

アラブの民衆が最も恐れているのは誰か

ノーム・チョムスキー  [Jan.4, 2013]


The Gravest Threat to World Peace
http://www.zcommunications.org/the-gravest-threat-to-world-peace-by-noam-chomsky


アメリカ大統領選の対外政策にかんする最終討論についての記事で、ウォールストリートジャーナル(WSJ)紙は次のように述べた。

「イスラエルよりも話題になった唯一の国はイランであった。中東のほとんどの国から、イランは当地域の安全保障にとって最もゆゆしき脅威としてみなされている」

二人の大統領候補者が共に同意したのは、核武装したイランが(たとえ世界最大の脅威ではないにしても)中東での最大の脅威だということであった。とりわけロムニーは皆が聞き飽きている旧来の主張を声高に繰り返した。

イスラエルにかんして二人の大統領候補者は、自分こそイスラエルに貢献していると公言するのを競い合ったが、イスラエル当局はそれでもまだ満足しなかった。

WSJ 紙によれば、イスラエル当局は「ロムニー氏からはもっと“攻撃的な”言葉を望んでいた」。ロムニーが、「イランは核武装の地点に到達することは許されない」と要求しただけでは、十分ではなかったのだ。

アラブの人たちも不満を抱いた。なぜならイランにたいするアラブの恐怖は「中東地域の安全保障ではなく、イスラエルの安全保障というレンズからしか、議論されてこなかった」からだ。このアラブの懸念はほとんど無視された。これまた従来どおりの報道姿勢だった。

WSJの記事は、多くの他紙と同じく、イランにかんする重大な問題に何ら答えていない。たとえば次のような問いである。

「イランを最もゆゆしき安全保障上の脅威だと思っているのはいったい誰なのか?また、それが本当だと考えたとしても、その脅威にたいして何をなすべきだとアラブ人(と世界のほとんどの人)は考えているのか?」

最初の問いにたいする答えは簡単だ。「イランの脅威」というのは欧米人の完全なる妄想であり、アラブ諸国の独裁者たちも同じ妄想をいだいている。しかしアラブの民衆はまったく違う。

多数の世論調査で明らかになっているように、アラブ諸国の民衆はイランを好んではいないが非常にゆゆしい脅威だとは見なしていない。むしろイスラエルと米国に脅威を感じているし、多くは、ときにかなり大多数が、イランの核兵器をこうした脅威にたいする対抗措置だと見なしている。

General George Lee Butler バトラー将軍


米国の高官のなかにはアラブ民衆の認識に同意しているものもいる。そのひとりがアメリカ戦略軍の前司令官リー・バトラー将軍(General George Lee Butler)である。1998年に彼は次のように言っている。

「“敵意が煮えたぎる大釜”と我々が呼ぶ中東で、ある国だけが(すなわちイスラエルだけが)強力な核兵器を保有するのは極めて危険だ」、それは「おまえたちも核兵器を持てと他国を鼓舞するに等しいからだ」

さらにもっと危険なのは、核抑止力戦略[the nuclear-deterrent strategy]、すなわち「核兵器を相手にたいする抑止力として使う戦略」である。長年その旗振り役だったのがバトラー将軍だが、その彼が2002年に次のように書いている。

そのような戦略は、「正真正銘の大惨事に導く方程式」であり、アメリカと他の核保有諸国はNPT(核不拡散条約)条約を受け入れ、核兵器による大惨事を避けるための「誠実な」努力をすべきだ。

国際司法裁判所は1996年に、国家というものはそうした努力を真剣に追求する法的義務がある、すなわち「核軍縮が厳密で効果的な国際管理の下でおこなわれるようにするため、あらゆる角度から交渉を誠実に追求する義務がある」という判決を下した。2002年、ジョージ・W・ブッシュ政権は、米国はそういった義務には一切縛られない、と宣言した。

イランの脅威にたいして世界の大部分はアラブ民衆と見解を共有している。非同盟諸国運動(NAM:The Non-Aligned Movement )はイランのウラン濃縮をする権利にたいして強力な支持を表明してきた。ごく最近では昨年8月にテヘランでおこなわれた首脳会議でもそうだった。

インドは、NAM加盟国のなかでは最も人口の多い国だが、米国の厄介な対イラン金融制裁を回避するいくつかの方策を見つけ出した。その計画は、イランのチャバハール港[Chabahar port]をインドの支援で改造し、それをアフガニスタン経由で中央アジにつなごうとするものだ。イランとの取引は増加傾向にあるとの報告もされている。アメリカからの強い圧力がなければ、これらの自然な関係は着実に前進していくだろう。

中国はNAMのオブザーバー国であるが、ほとんど同じことをおこなっている。中国は西方へ開発計画を拡張している。その中には、かつてのシルクロードを中国からヨーロッパにまで再構築する意欲的計画も含まれている。高速鉄道路線は中国とカザフスタンやそれより向こうまでをつなぐ。路線はおそらくトルクメニスタンまで届くであろう。豊かなエネルギー資源がそこにはあり、おそらくイランとも連結するであろうし、トルコとヨーロッパにまで及ぶであろう。

中国はパキスタンの巨大なグォーダー港[Gwadar port] を接収し、中国がホルムズ海峡とマラッカ海峡を経ないで中東から石油を獲得できるようにした。両海峡は非常に混み合っているだけでなくアメリカの支配下にある。パキスタンの新聞は、「イランやアラブ湾岸諸国およびアフリカから輸入された原油は、グォーダー港から陸路で中国北西部へ輸送することが可能になるだろう」と報じている。

8月のテヘラン・サミットで、NAMは、大量破壊兵器禁止地域を確立することによって中東における核兵器の脅威を緩和し、終了させるという長年の提案をくりかえした。その方向に向かって努力することは、核兵器の脅威を克服するための、もっとも簡単で、難題を避ける最も容易な道である。それは全世界のほとんどが支持している方策でもある。

そのような方策を前進させる良い機会が先月もちあがった。それを話題にした国際会議がヘルシンキで計画されたのである。

会議はおこなわれたが、計画どおりのものではなかった。開かれたのは、各国政府が参加するものではなく、フィンランド平和連合[the Peace Union of Finland] が主催する、非政府組織だけが参加するものだった。計画されていた国際会議は、11月にワシントン政府が参加しないと表明したことで、中止となった。イランがその会議に出席すると発表した直後のことだった。

AP通信によれば、オバマ政権の公式弁明は「中東地域での政治的混乱とイランの核不拡散にたいする挑戦的態度」だった。また同時に「会議の開き方」にたいする合意の欠如だった。その理由としてワシントン政府は次のような事実に言及した。すなわち地域の唯一の核大国イスラエルが出席を拒否しており、参加要請は「強制」になるというのである。

      

明らかにオバマ政権は「中東地域の全加盟国が参加しないかぎり会議開催の条件は整わない」という従来の立場に従っている。イスラエルの核施設を国際査察の下に置くという方針・法案を認めないだろう。またアメリカは「イスラエルの核施設と活動の範囲や内容」にかんする情報を出さないであろう。

クウェートの報道機関は即座に次のように報じた。「アラブ諸国と非同盟諸国運動NAMの加盟国は、中東の核兵器および他のあらゆる大量破壊兵器の禁止地域を確立する会議を開催するために、引き続き活動しつづけることに同意した」

先月、国連総会はイスラエルにNPT(核不拡散条約)への参加を要求するという決議を174対6で採択した。「否」に投票した6カ国はいつもどおりのメンバーで、イスラエル、米国、カナダ、マーシャル諸島共和国、ミクロネシア、パラオだった。

数日後、米国は核実験を実行した。またもやネバダ実験場から国際査察官を閉め出しておこなった実験だった。イランは抗議した。広島市長といくつかの日本の平和団体も同様の抗議をした。

核兵器禁止地域の確立に必要なのは、核保有国の協力である。中東では、アメリカとイスラエルがそれにあたるが、両者はそれを拒否している。他の地域でも同様である。アフリカと太平洋でも非核地域の実現を心待ちにしているが、アメリカは自らが支配する諸島における核兵器基地の維持・増強を主張して譲らないからである。

NGOの会合がヘルシンキで開催されたとき、国際会議を中止させた「祝賀会」がニューヨークで開かれた。それは、イスラエル・ロビーのひとつである、「ワシントン近東政策研究所」[the Washington Institute for Near East Policy] の後援によるものだった。

イスラエルの新聞に載った、その「ガラ(祝宴)」の興奮ぶりを伝える記事によれば、デニス・ロス[Dennis Ross]、エリオット・アブラムズ[Elliott Abrams] などの「オバマとブッシュの元最高顧問たち」は、聴衆に次のように太鼓判を押した。「もし外交が上手くいかなければ、オバマ大統領は来年には(イランを)空爆する」。なんと魅惑的な休日の贈り物であろうか。

外交がまたもや失敗したことにアメリカ人たちはほとんど気づいていない。その理由は単純だ。このアメリカでは、「ゆゆしき脅威」を取り除く最も簡単明白な方策、すなわち「中東における核兵器禁止地域の確立」の結末について、ほとんど何も報道されていないからだ。

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<註> なお上記の論文は単独の翻訳として下記のサイトにも掲載されています。
http://www42.tok2.com/home/ieas/translation_index.html

また、ブログ冒頭の「ブラッドリー・マニング支援歌」には次のバージョンもあります。
ナッシュによる語り&生演奏
Graham Nash plays for Bradley Manning
http://www.youtube.com/watch?v=XkzYmpGWzzc(6分40秒、)
歌詞 Almost Gone (The Ballad of Bradley Manning)
http://www.bradleymanning.org/activism/graham-nash-and-james-raymond-release-song-video-in-support-of-bradley


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