英語力 は貧困力(その5-2) 世界を破壊する先兵としての英語 (下)――世界を破壊するアメリカ式経済、アメリカが破壊したいイスラム式経済

────────────────────────────────────────
アメリカ国旗を燃やす、元大統領モルシ氏の支持者たち

http://rt.com/news/cairo-protest-morsi-scuffles-327/

────────────────────────────────────────
話が少し横にそれましたが、モルシ大統領がエジプト軍とアメリカ政府にすり寄った姿勢を示していたにもかかわらず、なぜオバマ政権はモルシ追放・軍事クーデターへと動いたのでしょうか。

それは、モルシ氏の出身母体であるムスリム同胞団がイスラム教を基盤にした国づくりを目指してきたことと深く関わっているように思います。私の仮説を結論的に先に述べてしまうと次のようになります。

(1)たとえモルシ氏が今は軍とアメリカの要求に従っているように見えても、イスラム教を基盤にした国づくりを目指しているから、将来どのように変わるか見通しが立たない。

(2)それにひきかえ独裁者ムバラクは、軍と一体であり、軍はアメリカの支援なしには存在し得ないから、アメリカの意向に沿ってエジプトを動かすことは非常に容易であった。

(3)しかしモルシ氏は曲がりなりにも選挙で選ばれた大統領であるから露骨な軍事クーデターで追い落とすことは難しい。そんなことをすれば軍事政権を倒した「アラブの春」の再来になりかねない。

(4)またアメリカの法律では「軍事クーデターによってできた政権には資金援助してはならない」ことになっているから、その意味でもエジプト軍にクーデターをおこさせることは、シリア情勢から見ても好ましくない。

(5)だから、モルシ政権の政策に不満をもった民衆が自分たちの力でモルシ政権が倒したという形にするのが、いちばん望ましい。しかしモルシ氏を支持する勢力もあなどりがたい力と数をもっているから、今の情勢ではそれも難しい。

(6)そこで次善の策として、治安部隊によってモルシ派を挑発すると同時に、モルシ反対派に資金援助や戦術指導をしてモルシ支持派と激突させるのがよい。そうすればエジプトは内乱状態になり、それを沈めるために軍が出動したという形にすれば、「クーデターによる政権転覆」という非難を受けなくてもよくなる。

(7)ムバラク政権のときは軍人がそのまま大統領になったから「軍事独裁政権」という非難を浴びたが、モルシ氏を追放したあとに軍の傀儡(かいらい)として自由にあやつれる暫定政権をつくれば、今後アメリカはエジプトを非常に管理しやすくなる。

────────────────────────────────────────
いわゆる「アラブの春」で追放された独裁者ムバラク氏は元々は軍人です。ですからムバラク政権は表向きは文民政府のように見えますが、実体は軍事独裁政権でした。

それは、アメリカによるエジプトへの巨額援助$1.5 billion(15億円)のほとんど($1.3 billion)が、エジプト軍にまわされていることからも歴然としています。
http://www.globalresearch.ca/us-ships-f-16s-to-egypt-as-junta-intensifies-crackdown/5342497

これを逆に言えば、アメリカの援助なしには軍も独裁者ムバラク氏もまったく無力であり、エジプトそのものがアメリカの属国であり傀儡国家だったということになります。エジプトはイスラエルに次いで世界第2位の巨大被援助国なのです。

ですから、その国で「すべてを英語で講義する大学」が存在するのも、国中に英語が氾濫し若者が英語を流暢に話すのはある意味で当然のことでした。

これは、かつて日本が支配していた台湾や朝鮮に、台北帝国大学や京城帝国大学が存在していて、台湾人や朝鮮人のほとんどが日本語を話していた(「話すように強制されていた」と言うべきか)状況を思い浮かべれば、すぐ納得できることではないでしょうか。傀儡国家「満州国」でも事情は同じでした。

ではエジプトは英語が氾濫する国になって豊かな国へと成長できたのでしょうか。実際はその逆でした。富は一部の特権階級に偏重し、庶民はますます貧困になっていきました。その民衆の悩み・苦しみを受けとめる一つの大きな「受け皿」になったのがムスリム同胞団でした。

────────────────────────────────────────
軍事クーデターを糾弾して行進する、ムスリム同胞団のひとたち

http://rt.com/news/cairo-protest-morsi-scuffles-327/
(訴えが英語で書かれていることに注目ください。英語漬けのエジプトです。)

────────────────────────────────────────
ムスリム同胞団はイスラム教の教え「喜捨」(「富者は貧者に返礼を期待せずして施しをすべし」という教え)を土台にしながら、医療・福祉・教育などで献身的な社会奉仕活動を展開しました。それが30十年以上にも及ぶ弾圧の嵐をくぐり抜けて現在のような巨大勢力を築きあげる土台になっています。

またイスラム教は「利息をとってはならない」ということを教えの基本的な原則にしています。つまりイスラム世界では、商業による利潤は是とする一方で、「利子」については厳しく禁じられています。彼らのことばを借りるならば次のようになります。

「神は商売はお許しになったが利息取りは禁じたもうた」

ですからイスラム銀行では利息をとりません。ところが不思議なことに、利息を取らないイスラム銀行がどんどん発展をとげているのです。

他方、アメリカ経済は工場が海外に出て行ってしまっていますから国内の製造業は壊滅状態です。ですから、武器製造業・軍事産業を除けば、保険業を含む金融業がアメリカ経済を支える主力産業となっています。

これが、アメリカが世界各地で戦争を継続・拡大する一つの理由でもあるのですが、もう一方の金融業はどうでしょうか。

資本主義経済は、利息を取って事業者に金を貸す「商業銀行」と株や証券を取引する「投資銀行」に大別できますが、いずれにしても、その土台にあるのは「利息」です。

ですから、アメリカなどがイスラム世界に進出するとき、まず破壊しなければならないのが「イスラム銀行的価値観」「神は商売はお許しになったが利息取りは禁じたもうた」という考え方でした。

アメリカがイラクを侵略したときも、まず最初に手をつけたのが「イラク中央銀行」の改革だったそうです(内橋克人『悪夢のサイクル:ネオリベラリズム循環』文藝春秋)。そうしなければ「貪欲資本主義」が大手を振ってイラクを闊歩できないからです。

────────────────────────────────────────
このように考えると、エジプトの億万長者やオバマ政権がなぜモルシ大統領とムスリム同胞団の進出を警戒したかがよく理解できます。

彼らがモルシ政権を転覆させ、かつてのムバラク政権下のように、思うままに利益をむさぼることができる体制に戻したいと思ったとしても、何の不思議もありません。

しかし他方でエジプト国民は、生活のすべてがイスラム教の教えで縛られる社会も望んでいません。国民の多くが望んでいるのは、貧しくても生活がきちんと保証される社会、そして信教の自由が保障される社会です。

(日本でも安倍政権は国家神道 [公明党は日蓮の教え] を基本とする社会を目指しているようですが、そんなことが憲法で明記されたら困ると思っている国民が多いのと同じです。)

そのような多くのエジプト市民の声をうまく利用して、モルシ派と反モルシ派を対立させ、内乱状態を作りだして軍の出番を演出する(そして出来れば、内乱を理由に暫定政権=軍事独裁政権を維持する)。これが、エジプトの特権階級とアメリカの作戦ではなかったかと思うのです。

この私の仮説が正しいのかどうかは今後のエジプト情勢が証明してくれることでしょう。しかしいずれにしても、「英語力=経済力」ではなく「英語力=貧困力」であったことだけは、この事件で明らかになったように思います。

────────────────────────────────────────
<註> ムスリム同胞団はアメリカでは「イスラム原理主義」というイメージで宣伝されて、アメリカ在住のイスラム教徒も監視され弾圧されています。
 それと同じように、FBIは、60年代にアメリカ全土に広がったブラックパンサー党を「銃で武装した黒人集団」というイメージを振りまいて弾圧の口実にしました。
 しかし実際は、貧困に苦しむ黒人の医療・福祉・教育を援助するための奉仕活動が中心で、銃を持ったのは白人からの暴力から身を守るための自衛手段にすぎませんでした。
 また女性が政党の中枢で活動することは当時では白人社会でも難しいことでしたが、ブラックパンサー党では有能な女性がきら星の如く存在し、生き生きと自分の個性・能力を生かして活動していました。
 詳しくは『肉声でつづる民衆のアメリカ史』下巻262-270頁を参照ください。

────────────────────────────────────────
1973年9月11日の軍事クーデターで死に追いやられたチリ大統領サルバドル・アジェンデ


────────────────────────────────────────
<参考> 選挙で正式に選ばれたアジェンデ大統領を軍事クーデターで倒し、シカゴ大学教授ミルトン・フリードマンが唱えた「新自由主義」「市場原理主義」を強引に実行したのがピノチェト将軍でした。

このクーデターを裏で工作したのがアメリカCIAとアメリカ企業ITT(国際電信電話会社)であったことは、アメリカ上院調査委員会による下記報告に詳しく記されています。

「政府・CIAによるチリでの秘密工作」(ハワード・ジン『肉声でつづる民衆のアメリカ史』下巻、315-319頁)

またピノチェト将軍がクーデターを起こして大統領になったあと強行された「新自由主義」経済政策は、チリ社会を壊滅させるものでした。その内容および、それと併行して実行された弾圧・拷問・惨殺のようすは下記に生々しく詳述されています。

「もう一人のショック博士――ミルトン・フリードマンと自由放任実験室の探求」(ナオミ・クライン『ショック・ドクトリン――惨事便乗型資本主義の正体』上巻、第2章、67-99頁)
「ショック状態に投げ込まれた国々――流血の反革命」(同上、第3章、103-136頁)

ですから、このエジプトにおける軍事クーデターも、悪くすると、チリの「二の舞」になるのではないかと不安になります。

────────────────────────────────────────
<註1> ちなみにピノチェト将軍による軍事クーデターは1973年9月11日に決行され、アジェンデ大統領は自殺か他殺かいまだに不明です。私がアメリカの「911事件」のニュースを聞いたとき、真っ先に思い浮かべたのがチリのクーデターでした。なおアジェンデの死を覚悟した最後の演説(日本語字幕付) は下記にあります。時間があるときに御覧ください。
アジェンデ最後の演説
http://www.youtube.com/watch?v=SG3f08LVwhE

────────────────────────────────────────
<註2> 小泉首相のもとで荒れ狂った「聖域なき構造改革」(「規制緩和」→「民営化」)はミルトン・フリードマン教授が唱えた「新自由主義」と同じもので、貧富の差を拡大して日本社会を破壊する結果に終わりました。「ワーキングプア」ということばが流行りだしたのもこの頃からです。今度、安倍内閣によって、アメリカが狙っているTPPが導入されたら、日本に第2の破局が訪れるでしょう。

関連記事
スポンサーサイト

英語力 は貧困力(その5-1) 世界を破壊する先兵としての英語 (上 )――オバマ政権とエジプト特権階級によって仕組まれた軍事クーデター

────────────────────────────────────────
軍事クーデターに抗議するムスリム同胞団

http://rt.com/news/cairo-protest-morsi-scuffles-327/
(横断幕が英語で書かれていることに注目ください。)

────────────────────────────────────────
私は前回のブログで、現大統領モルシの退陣を要求しつつ、エジプト全土であっというまに何百万もの署名を集めた‘Tamarod’(アラビア語で「反乱」)という若者集団は、IT機器を駆使する上層階級の出身者だったことを紹介し、最後を次のように結びました。

要するに、繰り返しになりますが、このような「IT機器を駆使し」「英語を自由にあやつることができる」高学歴の若者すら、まともな仕事にありつけない、これがエジプトの現状なのです。

このような現状を見れば、「経済活性化のために英語力を!」「そのためには大学入試にTOEFLを使え!」「大学でも英語でおこなう講座をつくれ!」「小学校低学年から英語を教科として教えろ!」という政策が、いかにバカげたものかがよく分かるはずです。

しかも単にバカげたものならあまり害悪はないのですが、こんなバカげたことのために膨大な税金を使われる一方で、消費税は大幅増税され、福祉その他が大幅削減されるのです。今まさに求められているのは、日本の‘Tamarod’ではないでしょうか。

ちなみに、TOEFLの受験料は225USドル(約2万2500円)です。米軍基地の維持費と同じように、国民の税金によって支払われるTOEFL受験料は、アメリカにたいする巨大な「思いやり予算」となるでしょう。


────────────────────────────────────────
私が上記のブログを載せた後すぐ、この‘Tamarod’と呼ばれる若者集団がエジプトの億万長者から資金援助だけでなく事務所などの物質的援助も受けていたことが明らかになりました。

Bill Van Auken氏の論文(Global Research、July 12, 2013)によると、ニューヨークタイムズは次のように報じているそうです。
http://www.globalresearch.ca/us-ships-f-16s-to-egypt-as-junta-intensifies-crackdown/5342497

「モルシ追放劇の裏で暗躍していたのは、旧来の支配者集団で、その中には既に追放されたムバラク氏の取りまきやエジプト軍の高官たちもいた。彼らは、ムスリム同胞団が主導権をにぎっている現政権を倒そうとしている若者たちに金銭的援助を与えただけでなく運動の組織方法も教えた。この援助者のひとりが億万長者であり同胞団の敵として名高いNaguib Sawirisだった。」

────────────────────────────────────────
<註> 英語原文は次のとおりです。
US Ships F-16s to Egypt as Junta Intensifies Crackdown
http://www.globalresearch.ca/us-ships-f-16s-to-egypt-as-junta-intensifies-crackdown/5342497
“Working behind the scenes, members of the old establishment, some of them close to Mr. Mubarak and the country’s top generals, also helped finance, advise and organize those determined to topple the Islamist leadership, including Naguib Sawiris, a billionaire and an outspoken foe of the Brotherhood,” the New York Times reported.

────────────────────────────────────────
しかし、このような事実が明らかになったからといって、既に何度も述べてきた下記の仮説が間違っていたとは思えません。

「英語が中東に広がっていった」のと「貧困が中東に広まって行った」のが同時進行であり、その結果として高学歴のものでさえ仕事につけない状況が「アラブの春」を生み出したのではないか?

というのは、若者集団「IT機器を駆使し」「英語を自由にあやつることができる」高学歴の若者すらまともな仕事にありつけないエジプトの現状は、変わりようがないからです。

また若者集団‘Tamarod’は、自分たちの運動を支援してくれていたのが独裁者ムバラクと親しかった億万長者Sawirisだったことを知らなかったようです。Sawiris氏はニューヨークタイムズ紙に次のように語っています。

「それが俺だったということをTamarod’の連中はまったく知らなかった」「恥ずかしくないかって?何が悪いんだ!」と彼は言った。


────────────────────────────────────────
<註> 英語原文(下線部)は次のとおりです。
US Ships F-16s to Egypt as Junta Intensifies Crackdown
http://www.globalresearch.ca/us-ships-f-16s-to-egypt-as-junta-intensifies-crackdown/5342497
Sawiris told the Times that he “donated use of the nationwide offices and infrastructure of the political party he built, the Free Egyptians. He provided publicity through his popular television network and his major interest in Egypt's largest private newspaper. He even commissioned the production of a popular music video that played heavily on his network. “Tamarod did not even know it was me!” he said. “I am not ashamed of it.

────────────────────────────────────────
アメリカ国旗を燃やす、モルシ元大統領の支持者たち

http://rt.com/news/cairo-protest-morsi-scuffles-327/

────────────────────────────────────────
Auken氏の論文を読んでいて、もっと驚いたことがあります。それは、モルシ大統領の追放劇を仕組んでいたのは、単に独裁者ムバラク氏の取りまきやエジプト軍の高官たちだけでなく、裏でオバマ政権も暗躍していたという事実でした。

Auken氏の論文では次のように書かれています。

複数の新聞がモルシ政権を転覆させるクーデターにアメリカが直接かかわっていたことを指摘している。

7月6日づけのニューヨークタイムズ紙は、モルシ追放が進行していた頃に、国家安全保障問題担当補佐官Susan Riceと他のアメリカ政府役人たちが加わった会談を詳述している。(中略)

モルシ大統領の外交顧問Essam el-Haddadは、アメリカのエジプト大使Anne Pattersonや国家安全保障問題担当補佐官Susan Riceと会談したが、大統領がアメリカの提案を断ればクーデターになると脅迫された[と語った]。


────────────────────────────────────────
<註> 原文は次のとおりです。
US Ships F-16s to Egypt as Junta Intensifies Crackdown
http://www.globalresearch.ca/us-ships-f-16s-to-egypt-as-junta-intensifies-crackdown/5342497
Multiple press reports have pointed to a direct US role in the coup that toppled Mursi. In a July 6 report, the New York Times detailed discussions involving US national security adviser Susan Rice and other US officials in the period proceeding Mursi's overthrow.
(中略)
Mursi's foreign policy adviser, Essam el-Haddad, then held discussions with the US ambassador to Egypt, Anne Patterson, and with national security adviser Rice and was told, after Mursi rejected the offer, that the coup would begin.

[この論文ではMursi(ムルシ)となっていますが、他の英字紙ではMorsi(モルシ)と書かれていることが多いので、和訳は「モルシ」としました。英語の人名や地名をカタカナでどう表記するかで悩むのと似ています。]

────────────────────────────────────────
上記で「アメリカらの提案」というのは、モルシ氏にたいする次のような最後通告final ultimatumでした(出典は同上)。

軍が任命する閣僚を受け入れて名目だけの大統領(figurehead president)になるか、それを拒否して軍によって追放されるか
(a final ultimatum to Mursi ordering either that he accept being turned into a figurehead president with a government appointed by the military, or that the military would overthrow him.)

いわゆる「アラブの春」では、結果として独裁者ムバラクは追放されましたが、その中で多くのひとが殺され、多くのひとが牢獄につながれました。

しかし新しく選挙で選ばれたモルシ大統領は、自分の政権を維持するため上記のような軍の犯罪に眼をつむり、アメリカの要求する(IMF資金と引き替えの)「緊縮財政」政策も受け入れました。

この「緊縮財政」政策はスペイン、ギリシャなどの南欧諸国を見れば分かるように、国民に更なる犠牲を強いるものでした。ですから民衆がモルシ氏の強権的なやり方や緊縮政策に抗議して巨大な反対運動になったわけです。

しかし、モルシ氏がこの運動を武力で弾圧した結果、国民の怒りがいっそう高まりました。

────────────────────────────────────────
アメリカやエジプトの富裕層にとっては、モルシ大統領が自分たちにすり寄った政策をとっていたにもかかわらず、それでもモルシ氏には満足できなかったようです。

前述のとおり、アメリカ政府は、軍の傀儡になるよう(スーザン・ライスなどを通じて)モルシ氏に直接せまっただけでなく、驚いたことに、エジプト民衆を裏で煽動する工作までもしていたからです。

そのことを示すのがアルジャジーラによって暴露された次のような事実です(出典は同じくAuken氏の論文)。
http://www.globalresearch.ca/us-ships-f-16s-to-egypt-as-junta-intensifies-crackdown/5342497

カリフォルニア大学バークレー校の「調査報道プログラム」(the Investigative Reporting Program)が情報公開法を通じて入手した文書によると、

オバマ政権はモルシ大統領追放を呼びかけているエジプトの有力者たちに、秘かに資金援助をしていた。

この資金は、次のような団体を通じて、「民主主義援助」という名目で[エジプトの有力者や民間NGOを装った組織に]手渡された。

MEPI (the Middle East Partnership Initiative)
NED (the National Endowment for Democracy)
DRL (the State Department's Bureau for Democracy, Human Rights and Labor)
USAID (the US Agency for International Development)

────────────────────────────────────────
<註> 原文は次のとおりです。
US Ships F-16s to Egypt as Junta Intensifies Crackdown
http://www.globalresearch.ca/us-ships-f-16s-to-egypt-as-junta-intensifies-crackdown/5342497

In a separate report Thursday, Al Jazeera cited documents obtained under the Freedom of Information Act by the Investigative Reporting Program at University of California Berkeley establishing that the Obama administration had “quietly funded senior Egyptian opposition figures who called for toppling of the country's now-deposed president Mohamed Morsi.”

The funding, provided under the guise of “democracy assistance,” came through various US agencies, such as the Middle East Partnership Initiative (MEPI), the National Endowment for Democracy (NED), the State Department's Bureau for Democracy, Human Rights and Labor (DRL) and the US Agency for International Development (AID).

────────────────────────────────────────
<参考> 上記の資金がエジプトのどのような個人や組織に手渡されたかは、下記論文に詳しい分析がありますが、長くなるので割愛させていただきます。

US Bankrolled Anti-Morsi Activists: US Money Trail to Egyptian Groups that Pressed for President’s Removal.
http://www.globalresearch.ca/us-bankrolled-anti-morsi-activists-us-money-trail-to-egyptian-groups-that-pressed-for-presidents-removal/5342377

ただ一つだけ付けくわえておきたいのは、アメリカ政府がNED、DRL、MEPI、USAIDなど様々な組織を使って撹乱工作をしているのは、エジプトだけではないということです。

特にその活動が顕著なのは中南米で、最近ではチャベスが亡くなった後でおこなわれたベネズエラ大統領選挙でした。

これについては下記ブログ(2013.3.12、2013.4.19、2013.5.22)に書きましたので、時間がある方は御覧ください。

http://pub.ne.jp/tacktaka/?entry_id=4800792
http://pub.ne.jp/tacktaka/?entry_id=4852710
http://pub.ne.jp/tacktaka/?entry_id=4899289

またオバマ氏は [他国への撹乱工作どころか] 悪名高いブッシュ氏でさえおこなわなかった中南米のクーデターにも手を出しています。

これについても下記ブログ(2010.10.17、2011.1.5、2012.6.26、)で取りあげました。時間があれば御覧いただければ幸いです。

いずれのクーデターも選挙で選ばれた人物を追い落として、代わりに独裁政権・軍事政権を据え付けたところが共通しています。

http://pub.ne.jp/tacktaka/?entry_id=3245737(ホンジュラスのクーデター)
http://pub.ne.jp/tacktaka/?entry_id=4396635(ホンジュラスのクーデター)
ttp://pub.ne.jp/tacktaka/?entry_id=3404860(パラグアイのクーデター)

関連記事

英語力 は「貧困力」(その4) エジプトに「全科目を英語で教える大学」が存在する!――アメリカ人学生が胸を刺され、カイロ・アメリカン大学教授が首を刺された事件は何を示すか

────────────────────────────────────────
アメリカ大使館の国旗を引きずり下ろすカイロ民衆

http://rt.com/news/us-fighter-jets-egypt-930/

────────────────────────────────────────
私は前回のブログで、次のような疑問を提示しました。

エジプトのカイロ「タハリール広場」を占拠する若者たちの映像が全世界に流れて注目を集めましたが、その映像やインタビューを視聴していて不思議に思ったのは、インタビューに応じる若者の英語があまりにも流暢だったことでした。

これはリビアやイエメンで蜂起している若者にも共通する現象で、「貧しい生活に追いやられている若者や民衆が、腐敗した政権に抗議して蜂起したにしては不自然なくらいに英語が巧すぎる」というのが、まず頭に浮かんだ印象であり、素朴な疑問でもありました。

────────────────────────────────────────
上記の疑問を解く鍵として、私は前回のブログで次のような仮説を提示しました。

「英語が中東に広がっていった」のと「貧困が中東に広まって行った」のが同時進行であり、その結果として高学歴のものでさえ仕事につけない状況が「アラブの春」を生み出したのではないか?

エジプトの民衆蜂起に参加した若者のなかには、イギリスやアメリカで学位を得て帰国したけれども仕事がないひとも少なからずいたのではないでしょうか。英米で学位を得た若者であれば、英語が流暢であっても何の不思議もありません。

────────────────────────────────────────
そして、「アラブの春」で独裁者ムバラクが退陣させられ、あらたに登場したモルシ大統領でしたが、エジプトは以前よりも貧困度が増しています。私はこのことを指摘しつつ、前回のブログを次のように結びました。

しかし、このような事態になること[エジプトの更なる貧困]は最初から予想されていたことでした。というのは、モルシ大統領はアメリカ政府からの強い要請で、IMFから巨額の資金援助を受け入れるさい、ギリシアその他の南欧諸国が受け入れたと同じように(庶民への増税や福祉の切り捨てなど)緊縮政策の実行を条件づけられていたからです。

拙訳「緊縮政策は殺人行為だ」(http://www42.tok2.com/home/ieas/HowAusterityKills.html)でも示されているように、庶民への増税や福祉の切り捨てで「庶民の購買力」を奪っておきながら景気回復=経済改革をするというのは不可能です。ものを作っても庶民にはそれを買う力がなくなっているのですから景気は回復するはずがありません。

要するに、エジプトに英語を話せる若者がどれだけ増えようがエジプトの経済力に何の関係もないのです。むしろIMFからの資金援助を口実に「新自由主義」というアメリカ流の経済運営を押しつけられた結果、いっそうの貧困化が進行したと言った方が真実に近いのです。

────────────────────────────────────────
さらに私は、「アラブの春」に登場する若者の英語が流暢なのは英米からの留学帰りが多いからではないかと述べつつ、次のようなコメントを最後に付けくわえました。

ところが残念なことに、日本では「大学入試にTOEFLを!」と叫ぶ政権が、またもやアメリカ流の「新自由主義経済政策」を復活させ、それが「アベノミクス」としてもてはやされています。

このままいくと、日本も早晩、エジプトと同じようになるのではないかと考えると恐ろしくなります。

いま話題になっているTPPも、日本の主権と経済的土台を踏みにじり、アメリカ巨大多国籍企業の利益だけを守る内容になっているのですが、ここではそれを詳述しているゆとりがありません。別の機会にしたいと思います。

────────────────────────────────────────
しかし、英語の流暢さには、留学帰りだけではなく、もう一つの可能性があることに気づきました。エジプトでは、韓国に勝るとも劣らない「英語熱」が荒れ狂っていたのではないか、と思ったのです。

というのは、「エジプト大統領モルシの退陣を求める史上最大のデモ」を伝える報道のなかで、次のような衝撃的な記事(DemocracyNow!、2013/07/01)を目にしたからです。

エジプトのアレキサンドリア市で金曜日、抗議行動の間に、アメリカ人の学生が、胸を刺されて死んだ。どのような状況だったか分からないが、彼が抗議行動の写真またはビデオを撮っていたことだけは間違いない。

エジプトでは左右を問わず多くの側から反米感情が高まっている。ちょうど2~3ヶ月前にも、カイロ・アメリカン大学(the American University in Cairo)の教授が、アメリカ大使館の外で首を刺された。

つまり、モルシ大統領に抗議する人たちだけでなく、ムスリム同胞団の中からも反米感情が強まっているのだ。

────────────────────────────────────────
<註> 原文は次のとおりです。
Millions Protesting Morsi Show Egyptian Revolution Still Going Strong
http://www.democracynow.org/2013/7/1/sharif_abdel_kouddous_millions_protesting_morsi

  And the American student died, was stabbed in the chest on Friday in Alexandria during a protest, unclear why the circumstances exactly surrounding his death. He was apparently stabbed while he was photographing or filming the protests.
  There’s been rising anti-American sentiment from many sides of the political spectrum in Egypt. Just a couple of months ago, an American professor at the American University in Cairo was stabbed in the neck outside the U.S. embassy here.
  So, there’s an increasing anti-American sentiment from the anti-Morsi protesters and from the Muslim Brotherhood, as well.

────────────────────────────────────────
反米感情が高まるなかエジプト軍に供与される?F16ジェット戦闘機
US to deliver F16 fighter jets to Egypt as anti-American sentiment grows

http://rt.com/news/army-egypt-roadmap-protest-633/

────────────────────────────────────────
アレクサンドリアで胸を刺されて死んだAndrew Pochterは、アラビア語やアラビア文化に興味をもち、AMIDEASTというインターンシップのプログラムでエジプトに来ていた学生で、子どもに英語を教えながら生活していたようです。

US student among dead as riot-ridden Egypt descents into ‘security crisis’
http://rt.com/news/protests-morsi-violence-opposition-366/

ここで私が注目したのは次の二つの事実でした。

(1)エジプトでは、英語の母語話者は、教師の資格をもたなくても、エジプト人に英語を教えながら生活できる。
(2)エジプトの首都カイロには英語ですべての授業を行う大学があり、教授の大部分も英語の母語話者である。

日本や韓国では英語熱が燃えさかっていますが(その炎をかきたてている張本人は文科省であり、それを裏で支えているのが財界・大企業と英語教育産業です)、そのおかげでアメリカ人とくに白人は、手ぶらで日本に来ても食うに困ることは、まずありません。

というのは、全国どこへ行っても英会話教室がありますし、その経営者は講師が白人の母語話者であることを売り物にしていますから、母国アメリカで失業している若者でも、日本に来ればすぐ飯にありつけるわけです。

これは拙著『英語教育が亡びるとき』でも書いたことですが、極端なばあい、英語の母語話者でなくても、顔つきが白人らしくありさえすれば、そして少し英語が話せれば、英会話教室の講師にしてもらえます。

事実、私のところに来ていた院生はイラク人でしたが、英会話教室の講師どころか、会社社長の会話練習につきあってくれと頼まれて、1時間1万円以上の謝礼をもらっていました。岐阜のような田舎町でもこのような状態なのです。

彼は確かに話す英語には苦労していませんでしたが、書いたものは(内容もさることながら)直してやらねばならない文法的間違いが少なくありませんでした。こんな状態で修士論文が書けるのだろうかと心配になるほどでした。

他方、彼よりもはるかに素晴らしい英語を話したり書いたりできる中国人院生には、英会話教室の講師になる道は閉ざされています。彼らがアルバイトで学資を稼ごうにも、スーパーのレジ打ちかレストランの皿洗いぐらいしか仕事はありませんでした。

────────────────────────────────────────
私が上で言いたかったことは、岐阜のような田舎の都市でも英語を母語とする白人は食うに困らない、それほど日本では「英語熱」が盛んだということです。

韓国ではこれ以上の「英語熱」が高まっています。「英語村」と称する「英語漬けの施設」が各地にあって(30カ所)、最近では済州島でも公営の「英語村」ができたそうです。しかし、その韓国でさえ、すべてを英語でおこなう大学は聞いたことがありません。

ところがエジプトでは、「カイロ・アメリカン大学」という全てを英語でおこなう大学があるのです。逆にいえば、それほどエジプトでは、韓国の英語熱をはるかに超える「英語の炎」が燃えさかっているのです。

アメリカやイギリスに留学するお金がなくても、地元エジプトでアメリカの大学を出たのと同じ学位が取れるのですから、留学するゆとりのない学生は、こちらを選ぶでしょう。

とはいえ、一般庶民や貧困層にとっては、大学に進学することそのものが困難です。ですから、いくら留学しなくても済むとはいえ、アメリカ人の経営する私立大学に入学することそのものが、経済的上位者にしか許されていないことは、容易に想像できます。

しかし問題はその先なのです。このように「全ての授業を英語だけでおこなう大学」を出て、英語を自由にあやつれるようになったとしても、エジプトでは高学歴の若者にすら、仕事が見つからないのです。

そして、この「英語力=経済力」という神話が見事に崩壊したことを示すのが、カイロ「タハリール広場」で炸裂した民衆運動でした(その先頭に立ったのが、インターネットやFacebook, Twitterなどを駆使する若者だったことは、すでに述べたとおりです),

ちなみに、「カイロ・アメリカン大学」は、1920年に「タハリール広場」の一角に建てられた「タハリール・キャンパス」が出発点でした。皮肉ととしか言いようがありません。

────────────────────────────────────────
<註> 英語熱が過熱している韓国の「貧困力」については下記の小論で略述しました。
http://www42.tok2.com/home/ieas/kyotoUniversitySymposium2010.pdf
その詳細については、いずれ当ブログでも紹介するつもりです。

────────────────────────────────────────
こういうわけで私は、下記の自分の仮説にますます確信をもつようになりました。つまり英語力=「経済力」ではなく、英語力=「貧困力」だったのです。

「英語が中東に広がっていった」のと「貧困が中東に広まって行った」のが同時進行であり、その結果として高学歴のものでさえ仕事につけない状況が「アラブの春」を生み出したのではないか?


先日RT(RussiaToday、2013/07/10)を読んでいたら、この私の仮説を明確に裏づけるインタビュー記事が見つかり、「やっぱりそうだったんだ!」と小躍りしてしまいました。そこに次のような1節(下線部)を見つけたからです。

I know that even the ‘Tamarod’, the curiously naive, according to some commentators, people that gather in Tahrir square from the upper classes of Egypt, even they are now saying to al-Sisi: “Hang on a minute. We’re against the 6 month or 5 month timetable that has been issued”.

つまり、現大統領モルシの退陣を要求しつつ、エジプト全土であっというまに何百万もの署名を集めた‘Tamarod’(アラビア語で「反乱」)という若者集団は、IT機器を駆使する上層階級の出身者(from the upper classes of Egypt)だったのです。

────────────────────────────────────────
<註> 原文は次のとおりです。
It is Saudi-backed military coup in Egypt, Obama just dragging his heels over it
http://rt.com/op-edge/military-coup-egypt-saudi-889/
RT: How is all that cash going to impact the situation in Egypt? Do we know where the money will end up?
AR: I presume that the people of Egypt realize that these $5 billion isn’t going to go to support jobs program, clean water and health care. I know that even the ‘Tamarod,’the curiously naive, according to some commentators, people that gather in Tahrir square from the upper classes of Egypt, even they are now saying to al-Sisi: “Hang on a minute. We’re against the 6 month or 5 month timetable that has been issued. ”As for al-Sisi, he is already threatening the number two party that won at the elections the Islamist Al-Noir party, saying “No political games, you back us or you’ll be in a kind of trouble the Muslim Brotherhood is in”.

────────────────────────────────────────
要するに、繰り返しになりますが、このような「IT機器を駆使し」「英語を自由にあやつることができる」高学歴の若者すら、まともな仕事にありつけない、これがエジプトの現状なのです。

このような現状を見れば、「経済活性化のために英語力を!」「そのためには大学入試にTOEFLを使え!」「大学でも英語でおこなう講座をつくれ!」「小学校低学年から英語を教科として教えろ!」という政策が、いかにバカげたものかがよく分かるはずです。

しかも単にバカげたものならあまり害悪はないのですが、こんなバカげたことのために膨大な税金を使われる一方で、消費税は大幅増税され、福祉その他が大幅削減されるのです。今まさに求められているのは、日本の‘Tamarod’ではないでしょうか。

ちなみに、TOEFLの受験料は225USドル(約2万2500円)です。米軍基地の維持費と同じように、国民の税金によって支払われるTOEFL受験料は、アメリカにたいする巨大な「思いやり予算」となるでしょう。

────────────────────────────────────────
<註> 軍によるモルシ大統領逮捕は明らかに軍事クーデターですが、オバマ政権はこれを「クーデター」と呼ぶのをためらっています。アメリカにとっては真の民衆革命が実現するよりも、シシ(al-Sisi)将軍をトップとする[ムバラク時代と同じような]軍事政権にもどるほうが望ましいのでしょう。
 というのは、エジプト史上最大の抗議運動によって、軍の出動を待たなくても、モルシ政権は崩壊していたはずだからです。 しかしクーデターはモルシ派に反撃の口実を与えますからエジプトを内乱におとしいれる危険性があります。だからこそ、「内乱をおさえてエジプトを安全で平和な国に!」を口実に、再び軍の出番が回ってくるとも言えるわけです。
関連記事

「英語で授業」を考える(その5)――英語力 は "貧困力" その3: 中東を席巻した "アラブの春" が示したもの、現在のエジプト大統領モルシが示しつつあるもの

────────────────────────────────────────
エジプト大統領モルシの退陣を求める、史上最大のデモ "Biggest protest in Egypt’s history"


Protesters opposing Egyptian President Mohamed Mursi use lasers to write "Egypt" on the Mogamma building, Egypt's biggest administrative building at Tahrir Square in Cairo July 2, 2013
http://rt.com/news/egypt-milllions-protest-morsi-458/

────────────────────────────────────────
私は前回のブログ(2013.6.18)「緊縮政策は殺人行為だ」で、経済学者デイビッド・スタックラーと医師・疫学研究者サンジェイ・バスの共著『The Body Economic: Why Austerity Kills』)を紹介し、次のように結びました。

 彼らの膨大な調査・研究によれば、アメリカ流の経済運営がもたらした経済危機のあと、各国政府が緊縮政策を導入した結果、多くの悲劇・惨状が現出しました。
 たとえば、欧州と米国で自殺者が1万人以上、うつ病患者は最大で100万人増加しました。公衆衛生費が40%削減されたギリシアでは、HIVの感染率が200%上昇し、1970年代以来初めてマラリアが発生しています。
 この調査・研究の結果、彼らが達した結論は次のとおりです。

 「歴史上の経験と現在の景気後退を通じて、別の選択肢があることが分かった。人間とその健康を景気回復の中心に置くことは、経済をより早く回復させ社会に持続的な利益をもたらす。」
 「公衆衛生プログラムに1ドルを投資することは、経済成長に3ドルを与えるのと同じだ。公衆衛生への投資は景気後退のときに命を救うだけではなく、景気回復に拍車をかける。」

 詳しくは、ニューヨークタイムズ(2013/05/13)に掲載された次の小論「緊縮政策は殺人行為だ」[拙訳による]を読んでください。
http://www42.tok2.com/home/ieas/HowAusterityKills.html
 そうすれば、「日本が停滞しているのは国民が英語を話せないからだ」「国家の成長戦略は国民を英語漬けにすることにある」という政策がいかにバカげたものか、いかに税金の無駄づかいかが、よく分かっていただけるのではないかと思います。

────────────────────────────────────────
以上で見てきたように、「英語力=貧困力」(その1,その2)では、次のことを指摘してきたつもりです。

英語を母語とするアメリカが、豊かなのは「1%」の特権階級だけで「99%」の民衆にとっては「貧困大国」に転落していること、またEUの新しい言語政策で英語が爆発的に広がったヨーロッパでも、英語と共に広がったのは貧困だった。


では地中海を通じてヨーロッパに接しているアラブ諸国はどうなのでしょうか。

スローガン"We are the 99%" を掲げて「貧困大国アメリカ」を告発した "Occupy Wall Street Movement" は、いわゆる「アラブの春」がスペイン等における運動を経由してアメリカに至ったものでした

このチュニジアに端を発しエジプトの政権転覆をもたらした民衆運動「アラブの春」は、何を契機に広がったものだったのでしょうか。

────────────────────────────────────────
エジプトのカイロ「タハリール広場」を占拠する若者たちの映像が全世界に流れて注目を集めましたが、その映像やインタビューを視聴していて不思議に思ったのは、インタビューに応じる若者の英語があまりにも流暢だったことでした。

これはリビアやイエメンで蜂起している若者にも共通する現象で、「貧しい生活に追いやられている若者や民衆が、腐敗した政権に抗議して蜂起したにしては不自然なくらいに英語が巧すぎる」というのが、まず頭に浮かんだ印象であり、素朴な疑問でもありました。

というのは、生活が貧しければ学校にも行けないのが普通であり、高等教育を受けない限り英語学力も熟達しないのが当然だと思われるのに、エジプトその他でインタビューに応じる若者の英語があまりにも流暢すぎることに強い違和感を覚えたのです。

エジプトの識字率は極めて低いはずだったのに、「タハリール広場」でインタビューに応じる若者は、顔つきや話し方も高等教育を受けたもののように見えたことも、私の疑問を大きくしました。

アラビア語は、英語と同じインド・ヨーロッパ語族に属していますから、日本語と英語の「言語間距離」の大きさと比べれば、アラビア語と英語の「言語間距離」は、はるかに小さいものです。したがってアラブのひとたちにとって英語は日本人よりもはるかに学びやすい言語であることは事実です。

しかし、だとしても、エジプトその他の中東諸国における識字率の低さを考えると、中東で蜂起している若者の「英語の流暢さ」は、彼我(ひが)の「言語間距離」のみに帰することはできないのではないか。私はそう思ったのです。

────────────────────────────────────────
そこで考えられるのは、「英語が中東に広がっていった」のと「貧困が中東に広まって行った」のが同時進行であり、その結果として高学歴のものでさえ仕事につけない状況が「アラブの春」を生み出したのではないか、という仮説です。

言い換えれば、「新自由主義」というアメリカ流の経済運営が広がっていったのと、貧困が中東に広まって行ったのが同時進行であり、それによって「アラブの春」が勃発したのではないか、という仮説です。

なぜなら、英語の広まりは真空のなかで生まれるのではなく、それを伝達する媒介物なしにはあり得ないと思うからです。

────────────────────────────────────────
いわゆる「アラブの春」では、FacebookやTwitterと呼ばれる新しいメディアが大きな役割を果たしたと言われています。しかし、このような機器を自由に操れる若者は、日本の状況を考えると、高等教育を受けたもの以外には、あまり考えられません。

というのは、日本のようにIT産業が発達し、アジアの他の諸国と比べれば、はるかに豊かで高等教育も広く行きわたっている国でさえ、インターネットやFacebookあるいはTwitterを駆使している若者はそれほど多くはいません。

少なくとも私が教えてきた大学で、このような機器を使いこなして学習に役立てている学生はわずかしか見かけませんでしたし、同業者ですら「家では高速インターネットに接続していない」と言っているひとが少なくなかったからです。

このような現状を考えると、エジプトの民衆蜂起でFacebookやTwitterが大活躍したと言っても、それを駆使していたのは裕福な家庭で育ち、高等教育を受けたもの以外には考えられないのです。

しかも、「接続時間」「接続料金」を気にしながら仕事をしていたのでは、インターネットを駆使して情報を集めたり、FacebookやTwitterで自由に情報を交換したりできません。

だとすれば、「アラブの春」で活躍した若者は、そうとう豊かな環境だったはずです。つまり、かなり豊かでないかぎりIT機器を本当に生かして使うことはできないのです。

少なくとも高卒程度の学歴で、就いている職業も肉体労働や派遣業だったりする若者が、しかも深夜まで残業に追いまくられ家やアパートに帰っても後は寝るだけといった若者が、FacebookやTwitterを駆使している姿は想像できません。

────────────────────────────────────────
しかし他方で、エジプトでは貧富の格差が極端に広がり、失業率も極めて高かったことが、民衆蜂起の原因になったことも広く知られている事実です。だからこそ次のような疑問が生まれてくるのです。

「では、このような失業や貧困と、FacebookやTwitterを使いこなす豊かさとは、どのようにして同居できるのか」「この矛盾をどう説明するのか、それと彼ら若者の英語の流暢さは、どのように関係するのか」


そこで私の頭に浮かんだ仮説が次のようなものだったのです。

すなわち、「英語が中東に広がっていった」のと「貧困が中東に広まって行った」のが同時進行であり、その結果として高学歴のものでさえ仕事につけない状況が「アラブの春」を生み出したのではないか、という仮説です。

言い換えれば、「新自由主義」というアメリカ流の経済運営が広がっていったのと、貧困が中東に広まって行ったのが同時進行であり、それによって「アラブの春」が勃発したのではないか、という仮説です。

────────────────────────────────────────
エジプトの民衆蜂起に参加した若者のなかには、イギリスやアメリカで学位を得て帰国したけれども仕事がないひとも少なからずいたのではないでしょうか。英米で学位を得た若者であれば、英語が流暢であっても何の不思議もありません。

私が大学院で教えていた頃の留学生は、すべて留学するだけの経済的ゆとりをもっていた若者でしたが、それでも「中国人で豊かなひとはアメリカに留学する」「僕の家はあまり豊かではなかったから日本に来た」と言っていましたから、アラブ諸国の若者も豊かな家庭の子弟は留学先としてアメリカやイギリスを選んだはずです。

若者の失業率が高ければ高いほど、より良い就職口を求めて留学しますし、学歴も「学士」よりも「修士」、「修士」よりも「博士」を求めて留学します。その典型が韓国で、韓国では失業率が深刻ですから、アメリカ留学を目指す若者のほとんどは大学院を目指します。日本でアメリカ留学を目指す若者の大半が大学院ではなく学部レベルなのと対照的です。

日本人学生がTOEFLを受験したときの点数が韓国と比べて非常に低いということが、よく日本の英語教育を批判するときの口実に使われています。しかし、それはある意味で当然なのです。韓国人は大学院をめざしてTOEFLを受験しますから当然ながら得点が高くなります。TOEFLで高得点をとらないと大学院に入学を許可されないからです。

つまり逆に言えば、日本の若者のTOEFL得点が低いのは、韓国よりも就職難が深刻でないことの表れなのですから、むしろ喜ぶべきことだとも言えるわけです。

それを何を血迷ったのか、自民党は選挙の公約として「日本人の英語力が貧弱だから、大学入試にTOEFLを!などと大声をあげ始めました。嘆かわしいかぎりです。

それとも日本を、韓国並みの失業率の高い国、韓国並みの「首切り自由」の国にしようというのでしょうか。

────────────────────────────────────────
<註> 韓国の英語力と貧困力については、京都大学国際シンポジウム「大学のグローバル化と複言語主義」で発表した下記論文を参照ください。

*大学における英語教育を再考する、
はたして 「英語力=研究力」「英語力=経済力」「英語力=国際力」 なのか

(日本フランス語教育学会『紀要』Vol.6, No.2, 2011:166-72)
http://www42.tok2.com/home/ieas/kyotoUniversitySymposium2010.pdf

────────────────────────────────────────
モルシ大統領の退陣を求めるエジプト民衆


Egyptian protesters calling for the ouster of President Mohamed Morsi react as they watch his speech on a screen in a street leading to presidential palace early in Cairo on July 3, 2013.
http://rt.com/news/egypt-milllions-protest-morsi-458/


────────────────────────────────────────
いま(2013/07/03)エジプトでは再び全土を揺るがす巨大な民衆運動が起きています。独裁者ムバラクが「アラブの春」で退陣させられ、あらたに登場したモルシ大統領でしたが、エジプトは以前よりも貧困度が増しているからです。

最近のDemocracyNow!(2013/07/01)によると、デモ参加者は「今の政府は前よりも悪い。少なくとも、こんな問題は以前にはなかった。俺たちには水も電気も燃料もない。何もない。毎日、悪くなるばかりだ」と言っています。

"This regime is worse than its predecessor. At least we didn’t have the problems we are seeing now, with no water, electricity, fuel. There’s nothing. It gets worse every day. "
http://www.democracynow.org/2013/7/1/sharif_abdel_kouddous_millions_protesting_morsi

しかし、このような事態になることは最初から予想されていたことでした。というのは、モルシ大統領はアメリカ政府からの強い要請もあってIMFから巨額の資金援助を受け入れるさい、ギリシアその他の南欧諸国が受け入れたと同じように、庶民への増税や福祉の切り捨てなど、緊縮政策の実行を条件づけられていたからです。

前々回のブログ「緊縮政策は殺人行為だ」をお読みいただいた方には既知のことですが、庶民への増税や福祉の切り捨てで「庶民の購買力」を奪っておきながら景気回復=経済改革をするというのは、不可能だからです。ものを作っても庶民にはそれを買う力がなくなっているのですから景気は回復するはずがありません。

要するに、エジプトに英語を話せる若者がどれだけ増えようがエジプトの経済力に何の関係もないのです。むしろIMFからの資金援助を口実に「新自由主義」というアメリカ流の経済運営を押しつけられた結果、いっそうの貧困化が進行したと言った方が真実に近いのです。

‘Moderate Islamist regimes are effectively neoliberal regimes’
http://rt.com/op-edge/moderate-islamist-regimes-effectively-neoliberal-355/

────────────────────────────────────────
ところが残念なことに、日本では「大学入試にTOEFLを!」と叫ぶ政権が、またもやアメリカ流の「新自由主義経済政策」を復活させ、それが「アベノミクス」としてもてはやされています。

このままいくと、日本も早晩、エジプトと同じようになるのではないかと考えると恐ろしくなります。

いま話題になっているTPPも、日本の主権と経済的土台を踏みにじり、アメリカ巨大多国籍企業の利益だけを守る内容になっているのですが、ここではそれを詳述しているゆとりがありません。別の機会にしたいと思います。

────────────────────────────────────────
<註> エジプトとほぼ時を同じくして、トルコでもブラジルでも巨大な民衆運動が起きています。これもよく調べてみると、エジプトと同じ経済構造をもっていることが分かりました。しかしそれも、ここでは詳述しているゆとりがありません。
Report from Turkey: A Taste of Tahrir at Taksim
http://www.globalresearch.ca/report-from-turkey-a-taste-of-tahrir-at-taksim/5337342
Brazil burning: The story of an illusion gone sour
http://rt.com/op-edge/brazil-protests-world-cup-014/

関連記事
検索フォーム
プロフィール

狐狸庵居士(田舎の国立大学を2010年に定年退職)

Author:狐狸庵居士(田舎の国立大学を2010年に定年退職)

リンク
最新記事
全記事表示リンク

全ての記事を表示する

カテゴリ
月別アーカイブ
最新コメント
RSSリンクの表示
QRコード
QR