"Big Brother" の面目躍如たるオバマ大統領(下)――「通信の秘密」と「報道の自由」を守るため自主閉鎖"Seppuku"を決意する弱小企業

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泣く泣く「暗号化メールプロバイダーLavabit」の閉鎖を決意したLadar Levison

http://rt.com/usa/lavabit-levison-internet-surveillance-816/

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Key Words: Encrypted Eamil(暗号化されたメール)、エドワード・スノーデン、NSA(国家安全保障局)、Lavabit、ラダー・レビソンLadar Levison、Silent Circle、Groklaw、"We Pay, They Spy"、不安ビジネス、スメドレー・バトラー将軍、上院CIA調査特別委員会(チャーチ委員会)

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私は前回のブログ[緊急情報]で、オバマ大統領の意向を受けてミランダ氏を拘束したイギリス政府が、それだけにとどまらず、新しい攻撃を始めたことを紹介しました。

グリーンワルド氏が寄稿しているガーディアン紙にたいして、イギリス政府が「スノーデンの機密文書を破棄するか、さもなくばそれらをこちらに渡せ」と脅迫してきたことを、ガーディアン紙の編集長が明らかにしました。

UK ordered Guardian to destroy hard drives in effort to stop Snowden revelations
http://rt.com/news/guardian-hard-drives-destroyed-697/(20.08.2013)

結局、ガーディアン紙の編集長アラン・ラスブリッガーAlan Rusbridgerは、機密文書の入ったハードドライブを破壊する道を選びました。これが「報道の自由」を守るための最低限の抵抗であると思われたからです。

イギリスと同じことがアメリカ国内でも起きています。

NSAがアメリカ国民のメールを盗聴しようにも、これに抵抗してメールを暗号化して顧客のプライバシーを守ろうとする弱小会社があったのです。

このLavabitという会社にたいしてオバマ氏は「スノーデンがこの会社を利用していた疑いがある」という理由でイギリス政府と同じ要求を突きつけました。

しかし、Lavabit の経営者であるラダー・レビソン Ladar Levison氏 は、顧客の情報を政府に渡すくらいならと(持っている情報のすべてを破壊して)泣く泣く会社を閉鎖する道を選びました。

情報の引き渡しを拒めば自分も牢屋送りになる危険性があったからです。

Owner of Snowden's Email Service on Why He Closed Lavabit Rather Than Comply With Gov't
http://www.democracynow.org/2013/8/13/exclusive_owner_of_snowdens_email_service

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Lavabitに同調して自主閉鎖を決断したSilent Circle

http://rt.com/usa/silent-circle-shutdown-lavabit-300/

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しかし会社の自主閉鎖に追い込まれたのはLavabitだけにとどまりませんでした。

というのは、Lavabitが閉鎖を宣言した数時間後に、メールのプライバシーを顧客に保証していたSilent Circle(創業者Mike Janke)という弱小会社も、「政府がおこなっている犯罪に加担したくない」と言って、同じように自主閉鎖を宣言したからです。

Another encrypted Internet service shutting down after Lavabit
http://rt.com/usa/silent-circle-shutdown-lavabit-300/

自主閉鎖はさらに続きました。

IT関係の報道でさまざまな賞を受賞してきたGroklawという会社(創業者Pamela Jones女史)も、「情報源の秘匿という原則を守れなくなった、もはや報道の自由はない」と自主閉鎖を宣言したのです。

'No shield from forced exposure': Groklaw website shuts down over NSA spying
http://rt.com/usa/groklaw-shuts-down-privacy-741/(August 20, 2013)


こうして、「報道の自由」と「プライバシーの権利」を守るため、Lavabitなど三つの会社が、政府に情報を提供するくらいならと、相継いで、自ら情報を破棄し会社を閉鎖する道を選びました。何とも痛ましい話です。

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このニュースには、さらにもう一つの挿話が続きます。

というのは、Google, Yahoo, Microsoft, Facebook といった巨大IT企業が、アメリカ国民をスパイするのに協力する見返りとして、総計何百万ドルものお金をもらっていたことが、分かったからです。

NSA paid millions to Internet companies to cover surveillance program costs
http://rt.com/usa/nsa-payed-internet-companies-911/(August 23, 2013)

弱小IT企業が、血のにじむような努力をして積み上げてきた成果を棒に振ってまで国家の犯罪に抵抗し、国民のプライバシーを守るために闘っているときに、これら巨大IT企業の貪欲さを何と表現したらよいのでしょうか。

上記の報道は映像ニュースとしても見ることができますが、その見出しは「我々が支払った金で奴らは俺たちをスパイする」「NSAによって、血税で支援されるシリコンバレー」というものでした。言い得て妙、と思わずうなってしまいました。

We Pay, They Spy: NSA backs Silicon Valley with taxpayers' money
https://www.youtube.com/watch?v=-fc1dUOEWC8(2013/08/24)

日本企業は、しばしば「親方日の丸」と非難されてきましたが、アメリカはその比ではありません。巨大企業が自国民をスパイすればするほどお金が天から降ってくるのですから、こんなに美味しい話はありません。

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実を言うと、スノーデンが勤務していた民間企業も、NSAやCIAの幹部が天下りしてつくった数多い外注会社の一つでした。

これも、アメリカ国民はおろか世界中をスパイして、そのお金は全てNSAすなわち血税から支払われるわけですから、一度始めたら辞められない商売でしょう。

しかし、これを逆に言うと、世界にテロや戦争がなくなり、アメリカが攻撃される心配がなくなれば、彼らは失業する危険性があるわけです。

アメリカがいま力を入れている「民間軍事会社」の拡大についても同じことが言えます。

彼らが失業しないためには、あるいは企業規模を拡大するためには、永遠にテロリストを養成し、永久に戦争を続けなければなりません。まさに小説『1984年』の世界です。しかしなんというおぞましい世界でしょう。

これはアメリカの全土で拡大している「不安ビジネス」「刑務所民営化」についても同じことが言えます。アメリカで犯罪が絶えない理由の一つは、これで説明がつきます(詳しくは拙著『英語教育原論―英語教師、三つの仕事・三つの危険』120-122頁を参照ください)。

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シリアへの干渉戦争に反対して官庁街(White Hall)を埋め尽くすロンドン市民

Protesters block Whitehall during a demonstration against British military involvement in Syria
opposite Downing Street in central London on August 28, 2013.
http://rt.com/news/syria-crisis-live-updates-047/

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ソ連が崩壊したとき、米軍もCIAも国民から規模縮小を命じられ、職を失う恐れがあるペンタゴンもCIAも新しい敵と新しい仕事を探すのに躍起になりました。

私はちょうどその頃カリフォルニア州立大学で1年間、日本語を教えていたのですが、そのとき米軍を退職して軍港のあったオークランドの放送局に仕事を見つけたひとと知り合いになり、その裏事情を知ることができたのでした。

そのころ日本は、アメリカの土地やビルを買いあさる世界第2の経済大国として、アメリカに大きな脅威を与えつつありましたから、これをいかにたたきつぶすかがアメリカの重要な課題になりつつありました。

こうしてCIAも日本企業の行動をスパイするという新しい仕事を見つけたのでした(ティム ワイナー『CIA秘録』文藝春秋舜)。「ジャパン・バッシング」が始まったのもこの頃からです。

ですから、NSAが「テロとの戦争」を口実に、アメリカの「国益」、すなわちアメリカ大企業の利益を守るためにスパイ・監視活動をしていたとしても何の不思議もないわけです。

そもそも元大統領ブッシュ氏によるイラク侵略も「大量破壊兵器」を口実にしていましたが、実は石油獲得のための戦争だった[少なくともそれが最大の理由だった]ことは、その後の経過で赤裸々に暴露されてしまいました。

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いまブラッドリー・マニングやエドワード・スノーデンによって暴露された事実によって、世界最強の帝国(およびそれと共謀する旧大英帝国)の威信は、落下の速度を速めています。

それをくい止めるためには、世界中の耳目を集めるような大事件に皆の関心を向けさせるのが一番です。私には、それが「シリア政府による化学兵器の使用」というニュースではないかと思うのです。

イギリスやアメリカが[そしてイスラエルも]、アラブ諸国の一部と手を握り、虎視眈々と干渉戦争にのりだす準備をしているときに、アサド政権がみずから墓穴を掘るために化学兵器を使用するなどということは、常識では考えられないからです。

私には、「化学兵器」を口実にしたシリアへの攻撃は、「大量破壊兵器」を口実にしたイラク戦争の繰り返しにすぎないと思われるのですが、これが本当かどうかは事件の経過が証明してくれることでしょう。

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<追記> 私が『肉声でつづる民衆のアメリカ史』(明石書店、2012)の翻訳に取り組んでみての、最大の驚きと発見は、大統領はしばしば単なる「巨大企業の番頭」「巨大企業のセールスマン」にすぎないということでした。
 その具体例として、ここでは二つの事例だけを紹介するにとどめます。
(1)スメドレー・バトラー将軍「私は33年と4か月の間、大企業の用心棒として時をすごした」(『肉声でつづる民衆のアメリカ史』上巻、442-448頁)
(2)上院CIA調査特別調査委員会「1973年のチリ・クーデターは、CIAとアメリカ多国籍企業ITTによる共謀だった」(同上『肉声史』下巻、315-319頁)
 つまりオバマ氏と言えば「正義の味方」のようなイメージがありますが、アメリカの歴史を丹念にたどってみると、アメリカ大統領は「巨大企業のセールスマン」にすぎないことがよく分かります。
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"Big Brother" の面目躍如たるオバマ大統領(上)――英国政府を通じてガーディアン紙のハードディスクを破壊、グリーワルド氏のパートナーを空港で拘束、そしてついに国連までも盗聴!

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威容を誇るNSA(国家安全保障局)本部

NSA(the National Security Agency) at Fort Meade, Maryland
http://rt.com/usa/nsa-payed-internet-companies-911/

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Key Words国家安全保障局 NSA、盗聴プログラム "XKeyscore"、米州機構OAS(Organization of American States)、ボリビア大統領エボ・モラレス、エドワード・スノーデン、グレン・グリーンワルドGlenn Greenwald、デビッド・ミランダDavid Miranda、ガーディアン紙の編集長アラン・ラスブリッガーAlan Rusbridger、ジョージ・オーウェル『1984年』、ビッグ・ブラザー Big Brother

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前回のブログを書いてから10日がすぎようとしているのですが相変わらず腰痛がひどく、なかなかパソコンに向かう気力が沸いてきません。

しかし世の中の情勢を見ていると神経を逆なでされるような事件が次々と起きて、このまま座視するわけにはいかないという気持ちも強くなってきます。

特にアメリカが、国内だけでなくEUなどの国外にまで盗聴の手を広げ、遂には国連本部に盗聴マイクを仕掛けるまで至っていることを示す次のニュースを見て、これは放置しておけないと思うようになりました。

NSA bugged UN headquarters
http://rt.com/news/nsa-us-un-germany-snowden-964/(August 23, 2013)

そこで「英語力は貧困力」という連載を一時中断して、今回は「このアメリカの動きをどう見るべきか、それが日本とどう関わるか」について私見を述べることにしたいと思います。
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<註> bug【他動】盗聴する、~に盗聴用マイクをつける〔盗聴用のマイクロフォンは虫(bug)のように小さくて、さりげなく机の脚や引き出しの中、あるいは天井に取り付けられることから。〕●tapも同意語。彼の電話には盗聴装置が仕掛けられている(His telephone has been tapped. )出典『英辞郎』
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アメリカが「War on Terror」を口実に、国内だけでなく国外にまで盗聴・監視網を広げていることはすでに下記ブログで紹介しました。

[緊急情報] エドワード・スノーデンとは誰か?――米国NSAによる世界監視網、EUでは、ドイツが監視対象ナンバーワン!!
http://pub.ne.jp/tacktaka/?entry_id=4941737

アメリカが、EUの牽引車となっている経済大国ドイツを、とりわけ厳しい監視・盗聴の対象として選んでいることは、「War on Terror」という口実が、まさに「口実」にすぎないことを如実に示しています。

かつて日本が「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と言われていた頃、アメリカ=CIAが日本を大きな攻撃目標の一つにしていた(ティム・ワイナー『CIA秘録』文藝春秋、2008)のと似ています。

さらに今度は、国連がスパイ行為の対象になっていたことが暴露されたのですから、アメリカの言う「テロ行為をおこなう危険性のある人物や団体を監視する」ための盗聴行為だというのは、まったくの嘘だったとしか言いようがありません。

なぜなら国連やEU(とくにドイツ)が監視対象になるということは、これらの組織や国家が「テロ組織」「テロ国家」だとみなされていることを意味するからです。ドイツ国民がアメリカに対して激しい抗議行動を展開したのは、ですから当然のことでした。

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世界中に広がる監視・盗聴プログラム "XKeyscore"のサーバー分布図

The map of XKeyscore servers from a 2008 presentation
NSA's XKeyscore gives one-click real-time access to almost any internet activity
http://rt.com/news/xkeyscore-nsa-snowden-prism-858/(July 31, 2013)

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このようなアメリカの盗聴・監視活動にたいする怒りは、ドイツだけでなく世界中に広まりつつあります。その怒りがとりわけ激しかったのが中南米でした。

というのはボリビアの大統領エボ・モラレスがロシアでの国際会議から帰国する途中、大統領専用機が「亡命を希望しているエドワード・スノーデンが乗っている可能性がある」という理由でオーストラリアのウイーンで強制着陸させられたからです。

国際法では、正当な理由があれば誰にでも亡命する権利があり、どの国であろうと正当な理由があればそれを受け入れる権利があります。

しかしアメリカが自分の意向に従わないという理由だけで小国ボリビアの大統領機をオーストリアに命じて強制着陸させて機内を捜索させたのですから、その傍若無人ぶりに中南米の怒りが頂点に達したのも当然でした。

もしロシアが旧ソ連の小国に命じて同じような行為をしたらアメリカはどう反応したでしょうか。

そこで、米州機構OAS(Organization of American States)の緊急会議が招集され、このような国際法をふみにじる行為にたいする糾弾決議が採択されました。この決議に反対を表明したのはアメリカとカナダだけで、オバマ政権の権威はアメリカ大陸では完全に失墜してしまいました。

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<註>> この間の事情をチョムスキーは下記の論文で詳述していますので、時間的にゆとりのあるかたは参照してください。
Noam Chomsky: Imperial Power on the Decline
http://www.zcommunications.org/america-s-imperial-power-is-on-the-decline-by-noam-chomsky(Aug 03, 2013)

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ガーディアン紙の記者グリーンワルド(左)と英国ヒースロー空港で拘束されたミランダ(右)

http://rt.com/news/uk-detain-greenwald-partner-terrorism-645/

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心あるひとたちの神経を逆なでし、世界の怒りをかきたてたもう一つの事件がありました。

それは、イギリスUKがアメリカUSの意向を受けて、ドイツからブラジルに帰国しようとしていたデビッド・ミランダDavid Mirandaを、乗り継ぎ空港であるヒースロー空港で拘束した事件です。

ミランダ氏は8月18日、英国テロリズム法第7条に基づいて、罪状なしで拘束できる最大時間である9時間も、ヒースロー空港で拘束され、パソコンや携帯電話などのすべてを没収されてしまったのです。

UK Media Crackdown: Greenwald’s Partner Detained, Guardian Forced to Destroy Snowden Files
http://www.democracynow.org/2013/8/20/uk_media_crackdown_greenwalds_partner_detained

しかもオバマ政権は、イギリス当局者から「ミランダを拘束するという事前通告」を受けていたことを認めています。

ミランダ氏はは、NSAの大規模なスパイ活動をスノーデンからの情報をもとに暴露したガーディアン紙のジャナーリスト=グレン・グリーンワルドGlenn Greenwaldのパートナーであるという理由だけで拘束されたのです。

不正行為を暴露しようとしたジャーナリストを弾圧するだけでなく、その友人、恋人、パートナーまで執拗に追いかけ回し、物理的にも拘束して脅迫するのですから、アメリカの誇る「報道の自由」とはいったい何でしょうか。

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情報の入ったハードドライブを泣く泣く破棄した、と語るガーディアン紙の編集長

http://rt.com/news/guardian-hard-drives-destroyed-697/

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この話にはもう一つの挿話を欠かすことができません。それは世界最強の帝国が犯している犯罪に、旧大英帝国が加担・共謀しているというニュースです。

オバマ大統領の意向を受けてミランダ氏を拘束したイギリス政府が、それだけにとどまらず、新しい攻撃を始めたのです。

グリーンワルド氏が寄稿しているガーディアン紙にたいして、イギリス政府が「スノーデンの機密文書を破棄するか、さもなくばそれらをこちらに渡せ」と脅迫してきたことを、ガーディアン紙の編集長が明らかにしました。

UK ordered Guardian to destroy hard drives in effort to stop Snowden revelations
http://rt.com/news/guardian-hard-drives-destroyed-697/(20.08.2013)

結局、ガーディアン紙の編集長アラン・ラスブリッガーAlan Rusbridgerは、機密文書の入ったハードドライブを破壊する道を選びました。これが「報道の自由」を守るための最低限の抵抗であると思われたからです。

憲法学者であったオバマ大統領には「テロリスト」と「ジャーナリスト」の区別がつかないようです。これでは世界最強の帝国(および旧大英帝国)の威信は、落下の速度を速めるだけでしょう。

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それはともかく、ジョージ・オーウェルの小説『1984年』で描かれた世界が、フィクションではなく今まさにイギリスやアメリカで現実のものになろうとしていることは、本当に恐ろしいことです。

あの小説に登場するビッグ・ブラザー Big Brotherの像が、オバマ氏の姿と二重写しになって見えるのは、私だけなのでしょうか。

かつてチョムスキーは、「権力者の知られたくないことを暴露するひとは、しばしばテロリストとして扱われる」と述べたことがありますが、いま改めてこのことばの重さをかみしめています。
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英語力は貧困力(番外編)、消費税の増税は必要か―月刊『楽しい授業』編集部への手紙(その5)

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目次
0 はじめに
1 なぜ月刊『楽しい授業』を?
2 グラフ「日本の税金の変遷」
3 消費税がこれからの税の中心?
4 社会保障制度は本当に「危機」なのか
5 法人税の引き上げを、そして所得税を累進課税に
6 税収 - 倍増した消費税、半減した法人税・所得税
7 日本の法人税は高すぎるのか
8 金持ち減税の実態 - 最高税率75%が今では37%
9 金持ち特権階級「ただ乗り」税制 (以上、前号)
10 金融資産への課税強化を
<追伸> 法人税を高くすると経済成長率が止まる?

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10 金融資産への課税強化を
 このように、働かずに株の配当だけで左団扇の人々は、所得が三倍に増えているということです。ところが日本の税制は、このような人たちにはほとんど課税していないのです。前掲書『脱「格差社会」への戦略』第五章「金融資産への課税強化を」で、森永卓郎氏は次のように語っています。
たとえば株式の売却益への課税が一〇%というのは、どう考えてもおかしくないか。ホリエモンが、もともと大きな価値を持たなかった自社株を一四〇億円で売却しても、一〇%しか税金を取られない。他方、普通のサラリーマンはといえば、限界税率は所得税一〇%、地方税が五%、それに健康保険・雇用保険・厚生年金等を合わせると、三〇%も持っていかれるのだ。

なぜ年収五〇〇万のサラリーマンが三割も税金を取られて、紙くずを一四〇億円に変えたホリエモンがたったの一割しか持っていかれないのか。これはとんでもない不平等である。税率が同じだとしてもまだ不平等だ。一生懸命、額に汗して働いたお金には高率の課税をして、濡れ手に粟で右から左にもうけたカネにはあまり課税しない。これはもう、税制の基本原則に反する。

私は「金融資産課税」を行うのが一番だと考えている。これは、世帯あたり一五〇〇万円を超える部分にだけ、一律、一一%の税率をかけるというものだ。すると課税べ-スで一〇〇〇兆円ぐらいになるので、三〇兆円も入る。劇的に税収が増えるのだ。もう国債を発行しなくてもよくなる。しかも四分の三の世帯は、一銭も払わなくてすむ。(前掲書57頁)


以上で見てきたように、消費税を値上げしなくても社会保障の財源を確保する道はいくらでもあるのです。ところが本論の冒頭でも述べたとおり、池田毅司さんは「消費税がこれからの税の中心になるのではないでしょうか」と、当然のごとく述べています。

 しかし、これでは、俗説・通説に鋭い疑問を突きつけることが仮説実験授業研究会や『楽しい授業』「グラフで見る世界」の一貫した姿勢であったはずなのに、その評判・名声を傷つけることになっているのではないかと恐れています。

  とりわけ、『楽しい授業』「グラフで見る世界」は現場教師だけでなく多くの一般市民に広い読者を持つだけに、その影響力は計り知れません。私の勤務する大学でも図書館職員に『楽しい授業』の読者がいることを知って驚いたことがあります。

 だからこそ、今回の池田さんのグラフについてはどうしても一言コメントを申し上げたいという思いが強くなり、こうして筆を執った次第です。よろしく御検討いただければ幸いです。




<追伸> 法人税を高くすると経済成長率が止まる?
 社会保障の財源については、米軍グアム島移転費やミサイル防衛計画など、直すべき財源は他にも多くありますが、既にスペースを取りすぎていますので、ここでは割愛させていただきます。
 また企業への税金を高くすると経済成長率が止まるのではないかとの疑問・批判があるでしょうが、前掲書『脱「格差社会」への戦略』がこれに対しても明快に反論する次のようなグラフを載せています(125頁)。



 税金を高くすると経済成長率が下がると言う人たちの理論どおりであれば、縦軸が「租税負担率」,横軸が「平均実質成長率」ですから、上記図表の平均値は右肩下がりの直線を描くはずです。しかし、これを見ていただければお分かりのとおり、一九九一年から二〇〇〇年までの直線はほぼ水平です。
 
 この図表で最も経済成長率の高いノルウェーは日本の租税負担率三〇%を遙かに超えて四〇%強です。またこの図表で租税負担率が最も高いスウェーデン(五〇%以上)ですら経済成長率は日本よりも高いのです。また、学力世界一で有名になったフィンランドも、租税負担率が日本よりも高いにもかかわらず、経済成長率が高いことにも注目していただきたいと思います。

 よく知られているように、ノルウェーもスウェーデンもフィンランドも社会福祉が充実している国です。つまり国民が安心して消費にお金を回せる国が結果として経済成長率が高くなっていることを、この図表は示しているのではないでしょうか。前掲書『脱「格差社会」への戦略』でも神野直彦氏は次のように解説しています。

育児や養老など、生活に密着した対人社会サービスを充実させることが、いま必要になってきているのではないか。これはOECDの統計の分類でいえば、「年金」や「医療」以外の、「家族現物」や「高齢者現物」「その他」などに含まれます。

かつてのような金銭給付的な社会保障をそのまま復活させるのではないにせよ、生活を保障する新たなシステムをきちんと構築した国が経済も伸びている。ところが日本はこの部分が弱く、社会保障のなかでも、依然として年金と医療のウェイトだけが突出しています。(125頁)

その一方で、必要な生活保障サービスが現にないことが、医療や年金にはね返っている面もありますよね。たとえば欧州ではケアハウスが提供されているために、年金の給付水準はそれほど高くなくても大丈夫だったりする。(126頁)


 つまり、既に何度も言ってきたことですが、今のところ消費税率を緊急に引き上げなければならない根拠は何もないのです。むしろ経済成長にとっては逆効果でしょう。それを傍証するものとして下記論文をぜひ読んでいただきたいと思います。

Stucker and Basu 「医療・福祉への1ドルは、3ドルの経済成長をもたらす」
http://www42.tok2.com/home/ieas/HowAusterityKills.html

関連記事

英語力は貧困力(番外編) 消費税の増税は必要か―月刊『楽しい授業』編集部への手紙(その4)

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目次
0 はじめに
1 なぜ月刊『楽しい授業』を?
2 グラフ「日本の税金の変遷」
3 消費税がこれからの税の中心?
4 社会保障制度は本当に「危機」なのか
5 法人税の引き上げを、そして所得税を累進課税に
6 税収 - 倍増した消費税、半減した法人税・所得税(以上、前号)
7 日本の法人税は高すぎるのか
8 金持ち減税の実態 - 最高税率75%が今では37%
9 金持ち特権階級「ただ乗り」税制
10 金融資産への課税強化を(以下、次号に続く)

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7 日本の法人税は高すぎるのか
 ところで、「欧米と比べて日本の法人税は高すぎる」という点については既に見たとおり森永氏が明快な反論をしていますが、神野・宮本編の前掲書でも次のように述べています。

大沢: 同じOECDのデータで所得税を見ると、先進国の中で日本がいかに所得税負担が軽いか、よくわかります。しかも所得税負担はこの間に、さらに下げられた。その一方で、年金保険料は、現行の一四%程度が二〇二二年までに一八・三%へと引き上げられ、介護保険料にしても低下する可能性はありません。(前掲書23頁)

神野: 企業の利潤そのものが、欧州は日本よりも小さい。たとえばフランスの場合、事業主の社会保険料負担は日本の三倍以上、ドイツでも二倍弱です。利潤はそれだけ圧縮される。そうすると、対GDP比に占める法人利潤も当然小さくなるわけですから、それに対する税負担で比較すれば、日本の企業の負担は圧倒的に小さいことになります。(前掲書26頁)


このように、法人税を引き下げていることが日本の社会保障財政を大きく苦しめていることが分かりますが、もう一つ財源を減らしている理由は企業が正規雇用を大幅に削減していることにあります。それを前掲書では次のように述べています。

大沢: 要するに正規雇用を非正規雇用へ、フルタイムをパートタイムへ置き換えることで、厚生年金適用を外し、労働費用をカットしたわけです。その結果、厚生年金制度は、被保険者数でも適用事業所数でも九七年をピークに収縮しています。脱法的な未適用、つまり適用されるべきなのに未加入の人は、最大で九二六万人、未加入率は一割ないし二割にも達すると見られます。(23頁)


つまり企業は法人税を払わなくなっただけでなく、正規雇用を非正規雇用へと転換することによって厚生年金の費用を払わなくなったので、ますます社会保障の財源が減ったわけです。


8 金持ち減税の実態 - 最高税率75%が今では37%
 いま日本では非正規雇用=ワーキングプアが大きな問題になっていますが、こうして貧困者を激増させていますから、所得税による財源も減っていきます。それに追い打ちをかけているのが金持ちに対する減税です。それは次の図によく表れています。



ご覧のとおり、所得税も、かつては最高税率が七五%でしたが、いまでは三七%にまで引き下げられました。相続税も最高七五%あった税率が、現在は五〇%です。その上、〇三年からは相続時精算課税まで導入されました。つまり高額所得層の税率を大幅に下げてきたわけです。これに関して前掲書(22頁)では次のように説明しています。

 その上、〇三年からは相続時精算課税まで導入されました。親が子どもに対して、生前に資産を贈与しやすいような制度をつくったのです。これは実質的に、民法上は認められていないはずの生前遺産分割です。相続税の税率が高いと資産家は自分で使ってしまい、低ければ貯蓄に回すといわれています。資産活動への税の優遇は景気回復にはむしろ逆効果なのではないでしょうか。

 (中略) いずれにせよ、この一〇年余りの間に、「持てる者」に手厚くし、そうでない者は置き去りにするような税制改革が一貫して行われてきました。その典型例が所得税の基礎控除で、いまだに年間三八万円に据え置かれたままです。課税最低限を諸外国と比較するなら、この数字で比べないといけません。



9 金持ち特権階級「ただ乗り」税制
 要するに、貧困層にたいしては底辺層まで課税し、超富裕層には減税どころか全体として税の負担が低くなっているのです。チョムスキーが先に「金持ちの特権階級はただ乗り」と言っていたものです。これを如実に示すのが次のグラフです。(前掲書228頁)



 ご覧のとおり、所得税・社会保険料・消費税を合計したもので調べてみると、年収二千万円を境にして、それ以上の富裕層は税金負担率が激減していきます。これは上図で明らかなように「税額控除による課税漏れ」「分離課税による課税漏れ」「除外項目による課税漏れ」が重なった結果です。このような逆累進課税になっているものを是正するだけで大きな財源が生まれることは、もはや明らかではないでしょうか。
なぜなら、この近年、一般の勤労者と違って、富裕層の収入は増えることはあっても減ることはなかったからです。それを森永氏は前掲書『教育格差の真実』で次のように述べています。

 次に、雇用者報酬です。雇用者報酬とは、サラリーマン全体に支払われた給与やボーナスの合計額、つまり、働く人への分配金のことです。二〇〇二年から〇七年までの五年間で、これは小泉構造改革の期間とほぼ一致しますが、日本の名目GDP(国内総生産)は二二兆円増えた。ところが、その五年間に、働く人への分配金は五兆円も減ったんですね。二六八兆円から二六三兆円へと雇用者報酬は五兆円も減少した。そればかりか資本金一〇億円以上の大企業の役員報酬は二倍になり、株主配当は三倍になった。(前掲書46-47頁)

 こうして一億総中流といわれた日本はあっという間に階層化されて、所得格差が出現しました。二〇〇七年の国税庁の統計では、サラリーマンの平均年収は九年連続して減少しているんです。毎年のように実施される増税や社会保険料の上昇のせいで、手取り収入の平均は大幅に下がった。しかも、所得の二極化が起こっているんです。これも国税庁の統計ですが、年収二〇〇万円台の人が一〇二三万人に達する一方で、年収一〇〇〇万円や二〇〇〇万円以上の人も大きく増えている。

 つまり、中間層が消えて、階層分化が起きていることは明らかなんですね。それにしても、年収二〇〇万円台の人が一〇〇〇万人を超えたのは二一年ぶりですよ。その一方で、働かずに暮らせる人が、どんどん増えているんですよ。(前掲書48頁)


10 金融資産への課税強化を
 このように、働かずに株の配当だけで左団扇の人々は、所得が三倍に増えているということです。ところが日本の税制は、このような人たちにはほとんど課税していないのです。前掲書『脱「格差社会」への戦略』第五章「金融資産への課税強化を」で、森永卓郎氏は次のように語っています。(以下、次号)
関連記事

英語力は貧困力(番外編) 消費税の増税は必要か―月刊『楽しい授業』編集部への手紙(その3)


目次
0 はじめに
1 なぜ月刊『楽しい授業』を?
2 グラフ「日本の税金の変遷」
3 消費税がこれからの税の中心?(以上、前号)
4 社会保障制度は本当に「危機」なのか
5 法人税の引き上げを、そして所得税を累進課税に
6 税収 - 倍増した消費税、半減した法人税・所得税
7 日本の法人税は高すぎるのか(以下、次号に続く)


4 社会保障制度は本当に「危機」なのか
 しかし、言語学者としてだけでなく米国外交政策の厳しい批判者としても世界的に有名なチョムスキーは、米国の社会保障費について次のように述べています。以下は、邦訳『すばらしきアメリカ帝国』( 集英社、2008)を元に、氏の著書『IMPERIAL AMBITIONS』の該当箇所を寺島が改訂翻訳したものです。

 社会保障制度の「危機」について喚き立てている人々は、退職者に対する就労者の比率低下を指摘しています。ますます増える退職者を、いま働いている人々が支えていかなければならない、と。これは事実ですが、重要ではありません。重視すべき数字は、全体的依存人口比率です。これは全人口に対する就労者の割合なのであって、退職者だけに対する割合ではないのです。

 たとえば、有名な団塊の世代を取り上げてみましょう。彼らの引退後を、どうやって支払うかという疑問が出されているわけですが、それでは、彼らが生まれてから二十歳になるまでは誰が支えていたのでしょうか?

 年老いた母親の面倒をみるのと同じく、子どもの面倒だってみる必要があります。この世代が大人になった一九六〇年代を振り返ってみると、学校など子どものための政策に出費が急増しましたが、当時の政府歳入は今よりもずいぶん少なかったのです。

 団塊の世代が子どもだったときには面倒をみられたのに、なぜ六十歳を越えると不可能なのでしょうか?[だから]問題が大きくなったわけではないのです。危機の捏造(でっち上げ)なのです。これは単に財政的な優先順位の問題なのです。実際、米国は一九六〇年代よりずっと裕福な国になっているのですから、六十才以上の人々の面倒をみることなどずっと容易なはずなのです。


 上でチョムスキーは米国のことを述べていますが、この説明はそっくりそのまま日本に当てはめることができるのではないでしょうか。
 つまり、社会保障費危機論は「過剰にイデオロギー的な解釈を表明している。しかし、それは個人的先入観や何らかの別の圧力を反映している可能性があり、この問題とは本質的に何ら関係がない」(チョムスキー)というわけです。
 またチョムスキーは、この文章の直前で「一歩譲って財政上の問題があるとしても」と仮定した上で次のようにも述べています。
 では四十年あるいは五十年後、社会保障制度に財政上の問題が生じると仮定しましょう。どのような手を打てばよいのでしょうか? めったに議論に上がってきませんが簡単な解決法はいくつかあります。

 たとえば、給与における社会保障税は、ひどい逆累進課税方式(所得が多くなればなるほど少なくなる)になっています。およそ九万ドル以上の高額所得には課税されません。つまり金持ちの特権階級はただ乗りをしているのです。

 少数の富裕層がただ乗りをするというのは、道理に適っているのでしょうか? もし完全に課税の上限を取り払ってしまえば、社会保障の財政問題は今後も生じないのです。



5 法人税の引き上げと所得税を累進課税に
 同じようなことを、経済アナリスト森永卓郎氏も、尾木直樹氏との共著『教育格差の真実』(小学館新書、2008、37頁)で次のように述べています。貧乏人のために所得税の基礎控除=課税最低限を引き上げて累進課税にするべきだ(同時に法人税も引き上げて元に戻す)と主張したらマスコミで袋たたきにあったのでした。

尾木: 応援してくれるような人は、評論家の世界ではいないんですか。

森永: いや一、とにかく、いつも一人ぼっちなんですね。事実認識から全く違うんですよ。真っ先に頭ごなしに否定されますね。

 例えば、税制の話をしていて、「日本の課税最低限は先進国で一番低い」と言ったら、もう総攻撃を受けたんですよ。「お前は何を考えているんだ。世界一高いんだよ」などと反論された。

 きちんと勉強していれば、「日本の課税最低限が高い」というのは過去の話であることは明白なのですが、反論する識者のなかには政府税制調査会の委員までいたんです。

 それでもう、あんまり袋叩きになるから、「わかりました。私は嘘を言っているつもりは毛頭ないし、まだ番組は数時間あるので、今すぐスタッフが財務省のホームページにアクセスして、政府税調の資料を見てください。財務省のホームページに出ています。もし私の発言が事実と異なっていたら、番組終了後、私を皇居前広場に連れて行って、公開銃殺刑で構いません」と叫んだら、ようやくみんなが黙った(笑)。


上記のように森永氏は消費税について語った後、法人税および消費税についても、尾木氏の質問に答えて次のように述べています(38-39頁)。

尾木: 昔のどこかの国みたい。一種の情報操作ですよね。

森永: そういうイロハのイも知らないふりをするんですよ。相も変わらず、「日本の法人税負担は高すぎる。企業負担は高い」と主張する。

 二〇〇七年一一月の政府税制調査会の答申では、日本の企業負担は税制調査会がきちんと国際比較した結果、必ずしも高くないという結論を得たと政府の公式文書に書いてあるのに、嘘ばっかり言うんです。世の中の人たちを平気で騙しているんです。

 他によく言うのは、「日本の財政は破綻状態だ」という言葉です。日本の長期債務は、実は二〇〇七年末で、二〇〇六年末に比べて二兆九〇〇〇億円も減っているんですよ。

 国のプライマリー・バランス(国債費などを除いた基礎的財政収支)は、これはまだ正式な統計は出ていないんですけど、地方を合わせたら、もしかしたら二〇〇七年度は黒字だったかもしれない。そのぎりぎりのところなんですよ。破綻なんか何もしていないんです。

 八○○兆円の借金があっても、金融資産は五〇〇兆円あるから、実のネット{[正味]の借金は三〇〇兆円しかないんです。つまり、ヨーロッパ諸国並みなんです。

 ありとあらゆることが嘘なんです。でも、新聞はどこも書かない。消費税率を上げる必要なんて微塵もないんですよ。



6 倍増した消費税、半減した所得税と法人税
 日本が従来の累進課税制度を改悪し金持ちや大企業のために所得税や法人税をどんどん引き下げてきたことについては次の図表(神野直彦・宮本太郎編『脱「格差社会」への戦略』岩波書店、2006、20頁)が良く実態を示しています。



これを見ていただければお分かりの通り、九〇年から二〇〇四年までの間に、国の税収における所得税と法人税の額は、見事に半減しています。その一方で消費税は、四兆六〇〇〇億円から九兆六〇〇〇億円へ倍増しています。
所得税  26兆円      →  13兆8000億円
法人税  18兆円      →   9兆4000億円
消費税  4兆6000億円 →   9兆6000億円


つまり、消費税を上げなくても、税制を元に戻すだけで十分におつりが来るのです。逆に言えば、財源が不足していたから消費税が必要だったのではなく、お金持ちや大企業を減税するために消費税が必要だったのです。これを税率で確認してみると、下図のようになります(同上書21頁)。



ご覧の通り、法人税は八五年の四三・三%をピークに、現在は三〇%にまで引き下げられています。 かつて経済界は「欧米と比べて日本の法人税は高すぎる」と主張していましたが、最近はアジアとの競争を口実にさらなる引き下げを主張しています。


7 日本の法人税は高すぎるのか
 ところで、「欧米と比べて日本の法人税は高すぎる」という点については既に見たとおり森永氏が明快な反論をしていますが、神野・宮本編の前掲書でも次のように述べています。(以下、次号に続く)

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英語力は貧困力(番外編) 消費税の増税は必要か―月刊『楽しい授業』編集部への手紙(その2)


目次
0 はじめに(前号)
1 なぜ月刊『楽しい授業』を?
2 グラフ「日本の税金の変遷」
3 消費税がこれからの税の中心?
4 社会保障制度は本当に「危機」なのか(以下、次号に続く)


1 はじめに
 突然の便りをお許しください。岐阜大学教育学部英語教育講座で「未来の英語教師」を育てていますが[当時、担当「英語科教育法」「異文化理解」]、大学で教師をしながらも日頃から『楽しい授業』を愛読してきました。板倉先生をはじめ皆さんの論考からいつも新鮮な刺激を受けています。
 私は1944年生まれで、大学時代の専攻は教養学科「科学史科学哲学」でしたから板倉先生の後輩に当たります。浪人中に武谷三男の『科学入門』、入学してエンゲスルスの『自然の弁証法』や三浦つとむの『弁証法・いかに学ぶべきか』などを読み、専門学科を決めようとしていた頃、教養学部教養学科に「科学史科学哲学」というコースがあることを知り、迷わず科学史を選択することに決めました。
 そんな私がなぜ大学で英語を教えているかについては機会があればお話ししたいと思いますが、いつも私の頭の中には仮説実験授業研究会の考え方を英語教育に応用するとどうなるのかという視点がありました。英語教師をしながらも日頃から『楽しい授業』を愛読してきたのは、そのような理由からです。
 毎号の裏表紙に載せられている「グラフで見る世界」も、世界を違った視点で見るための貴重なデータがグラフ化されていますが、この図表が時間と共に埋もれて行ってしまうのが残念でたまりませんでした。ですから、これを単行本にしていただけないものかと、いつも密かに願っていました(カラー刷りですから、これを出版すると費用がかさむので難しいとは思いますが)。

2 グラフ「日本の税金の変遷」
 そんな思いで毎号の「グラフで見る世界」を眺めていたところ、2008年10月号にグラフ「日本の税金の変遷」が載り、次のような説明が付けられていました。
「消費税がはじまって今年で20年、消費税が政府の税収入に占める比率はすでに20%ほどになっています。もしも税率が上がることになれば、「消費税」の占める比率が今後さらに増えることは明らかです。税金の主流が所得・法人税から消費税へと移り変わっていくのでしょうか」



 この説明を読んでいる限りでは「税金の主流が所得・法人税から消費税へと移り変わっていくのでしょうか」という疑問文で終わっていますから、「税金の主流が所得・法人税から消費税へと移り変わっていく」ことに対して賛成なのか反対なのかよく分かりませんでした。
 従来から「グラフで見る世界」は、俗説にたいして異論をぶつけ、それによって読者の思考をゆさぶる刺激的なデータに満ちていたように思います。考えてみれば、授業書もそのような刺激的な問いを生徒にぶつけ論争させ最後に実験で決着をつけるものであったからこそ、生徒に人気があったのではないでしょうか。
 ですから、この図表も「消費税増税は当然だ」とする俗説にたいする批判的意味を込めて提出されたものだと思い込んで解説を読みました。というのは現在の政府は社会保障その他の財源不足を消費税増税によって乗り切ろうとしていることは、マスコミ報道から明らかでしたし、それにたいして異を唱えるマスコミも皆無に近かったからです。


3 消費税がこれからの税の中心?
 しかし、「解説」(116頁)を読んで驚きました。というのはグラフ作成者の池田毅司さんは「これからの税の中心」という小見出しで次のように書いていたからです。
 自民党の中には「政府の収入を増やすために<消費税>の税率をあげよ」という声があったのですが、「いま税率を上げると国民の生活を圧迫するところが大きい」「次の選挙に勝てなくなる」というので、「消費税」の税率についてはあまり触れなくなったようです。
 では今後の税の中心は、今までどおり「所得税・法人税」ということになるのでしょうか。
 現在、日本の人口は1億3000万人で65歳以上の老年人口比率は20%です。これが2025年には人口1億2000万人で65歳以上が30%、2055年には人口9000万人で65歳以上が40%と推計されています(国立社会保障・人口問題研究所の2006年推計、中位推計値)。
 今後、所得税を納める人の比率がへり、年金を受け取る人の比率が増えるのはまちがいありません。
 このようにみてくると、物やサービスを買うときにすべての人が納める税、つまり消費税がこれからの税の中心になるのではないでしょうか。(下線部は寺島)

 上の下線部でお分かりのように、池田さんは裏表紙の「説明」では「税金の主流が所得・法人税から消費税へと移り変わっていくのでしょうか」という疑問文にしていたのが、本文の詳しい解説では明らかに論調が変わり、「消費税がこれからの税の中心になるのではないでしょうか」としているのです。
 確かに解説文の最後も疑問文になっていますが、この解説を読む限り、池田さんには「消費税が税の中心になっても仕方がない」という考えがあるとしか読めません。彼はその論拠として次のような事実をあげています。
 
現在、日本の人口は1億3000万人で65歳以上の老年人口比率は20%です。これが2025年には人口1億2000万人で65歳以上が30%、2055年には人口9000万人で65歳以上が40%と推計されています。今後、所得税を納める人の比率がへり、年金を受け取る人の比率が増えるのはまちがいありません。



4 社会保障制度は本当に「危機」なのか
 しかし、言語学者としてだけでなく米国外交政策の厳しい批判者としても世界的に有名なチョムスキーは、米国の社会保障費について次のように述べています。以下は、邦訳『すばらしきアメリカ帝国』( 集英社、2008)を元に、氏の著書『IMPERIAL AMBITIONS』の該当箇所を寺島が改訂翻訳したものです。(以下、次号に続く)


関連記事

英語力は「貧困力」(番外編、その3)、消費税の増税は必要か―月刊『楽しい授業』編集部への手紙(その1)

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アメリカ最大の破産都市デトロイトで、「職をよこせ」とデモをする自動車産業の労働者たち


Chrysler Transport worker James Theisen carries a "Detroit Needs Jobs" sign as he joins a demonstration of about a dozen workers demanding jobs, in front of Cobo Center in Detroit.
http://rt.com/op-edge/detroit-bankruptcy-usa-economy-405/

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 安倍政権は「英語力=経済力」と称して「TOEFLを大学入試や卒業要件に!」という政策を掲げてきましたが、それにたいする反論としてこれまで私は「英語力=貧困力」の事例をいくつも対置してきました。
 それに関してまだまだ書きたいことは山積しているのですが、このところ腰痛がひどくなり、長時間パソコンに向かっていることができません。そこで私が過去に書いた論文を連載のかたちで紹介することにより、当面の「つなぎ」にしたいと考えました。

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 安倍氏が声高に叫んでいる「成長戦略」なるものは、よく調べてみると、小泉政権のときに打ち出されてた「構造改革」と何ら変わるところがありません。結局、「庶民増税」と「規制緩和」(→「民営化」「アメリカ企業の参入」)なのです。
 この「庶民増税」は「消費税8~10%」という政策になって表れていますし、「規制緩和」の極致がアメリカ巨大企業の言い分を丸呑みさせられる「TPPへの参加」いう政策でしょう。

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 このTPPは「地産地消」を日本政府に禁じ「アメリカ企業の参入」を最大限に認めさせようとするものですから、安倍氏の言う「美しい日本」を完全に破壊することになるでしょう。
 「美しい日本」を唱道し右翼=タカ派として有名な安倍氏の「愛国心」なるものがどのようなものか、それはこの「TPPへの参加」という政策によって如実に示されているように思います。
 というのは、「英語力=経済力」の本家本元でありながら財政難であえいでいるアメリカを、「美しい日本」を破壊してまでも守り救ってやろうとするのが、「TPPへの参加」という貿易政策なのですから。
 (今やアメリカと一体になり巨大多国籍企業と化した日本の大企業も、日本国民の利益を顧みず、このような政策に加担しています。)

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かつてアメリカ産業界の中心だったデトロイトで、消失したまま放置されているアパート


A burnt out abandoned apartment building is seen in Detroit.
http://rt.com/op-edge/detroit-bankruptcy-usa-economy-405/

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 それはともかく、「消費税の増税」という政策ですが、これは財政赤字を解消し経済を好転させるためには避けて通れない道であるかのように宣伝されていています。
 しかし、はたして本当にそうなのでしょうか。これに関連して非常に興味深いのが、月刊『楽しい授業』2008年10月号の裏表紙に載った「日本の税金の変遷:グラフで見る世界244」という記事です。
 本文の詳しい解説を読む限り、消費税増税があたかも当然の流れのように書かれています。というのは最後に「消費税がこれからの税の中心になるのではないでしょうか」と結ばれているからです。
 そこで慌てて反論を書き、月刊『楽しい授業』編集部宛に送付しました。この雑誌は私の敬愛する板倉聖宣(きよのぶ)氏が編集代表をしている極めてユニークな月刊誌ですから、ひょっとして載せていただけるのではないかと考えたからです。

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かつて自動車産業の中心地だったデトロイトで、放置されたまま朽ち果てている自動車工場


The abandoned and decaying manufacturing plant of Packard Motor Car is seen in Detroit
http://rt.com/op-edge/detroit-bankruptcy-usa-economy-405/(July 22, 2013)

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 しかし残念ながら私の原稿は何の返事もなく「なしのつぶて」状態になってしまいました。そこで、せっかくの論考(月刊『楽しい授業』編集部あての手紙)がこのまま闇に消えていくのは余りに勿体ないと考え、研究室HPに載せることにしたのでした。
「消費税の増税は必要か―月刊『楽しい授業』編集部への手紙」

 今これを読み返してみると、決して古くなっていないどころか、むしろ今こそブログの読者に読んでみて欲しいと思うようになりました。そこで、これを数回に分けてブログで紹介しようと思い立ちました。
 というのは、ホームページに載せただけではよほど奇特なひとでもないかぎり読んでいただけないと思うからです。よろしくお付き合いいただければ幸いです。

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<註> 自民党政権下の「規制緩和」で派遣社員ばかりが増え、しかも激減した正社員の給料すら減額か横ばい状態ですから、「消費税8-10%」となれば、消費者の購買力が急速に落ち込みます。これでは景気が後退することは目に見えています。
 そのうえ安倍内閣は年金や生活保護など福利厚生費も大幅に削る予定ですから、景気がよくなるはずがありません。もてはやされているアベノミクスなるものも、EUやアメリカの大都市を荒廃させつつあるものとほとんど同じものです。
医療・福祉への1ドルは 3ドルの経済成長をもたらす
http://www42.tok2.com/home/ieas/HowAusterityKills.html

 アベノミクスは一部投資家の利益を大きく増大させるかも知れませんが、このまま進行すれば、日本に第2のデトロイトが登場する日も遠くないでしょう。そんな強い不安が私にはあります。やはり「英語力=貧困力」なのです。

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英語力 は貧困力(番外編その下) 安倍内閣が育てたい「グローバル人材」とは――ワイマール憲法はどのようにして停止状態に追い込まれたか、そして同じ手口で平和憲法も?

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憲法「改正」で麻生氏講演

http://rt.com/news/revising-constitution-nazi-weimar-890/

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Key Words: トレイボン・マーティン、ジョージ・ジンママン、ブラッドリー・マニング、TOEFL、留学政策、英語ディベート、麻生副総理・財務大臣、ワイマール憲法、ヒトラー政権、授権法(全権委任法)、

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そんなことを思っていると、麻生副総理にかんする次のような報道が目に飛び込んできました。歴史が逆転しているのはアメリカだけかと思っていたら、日本も同じ状況のようです。

ナチスの手口、学んだら…憲法改正で麻生氏講演
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20130730-OYT1T00050.htm

戦前のように自由に海外で戦争するためには平和憲法を改悪しなければならないわけですが、そのために、かつてナチスがおこなった手法を学んだらどうか」というのですから、空いた口がふさがりません。

しかも、当時「世界で最も進歩的憲法」と言われていたものを、ヒトラー政権が暴力的な方法を用いずに「ナチス憲法」に「改正」したと言うのですから、無知も甚だしいと言うべきでしょう。

このような人たちが日本を代表して海外に出かけたりしているのですから、安倍内閣が学生にTOEFLを強制受験させて育てたいとする「グロ-バル人材」なるものがどの程度のものかよく分かります。

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しかし、ここでもう一つ確認しておきたいことは、ワイマール憲法も「いつの間にかナチス憲法に変わっていた。(国民が)騒がないで、納得して変わっている」と麻生氏は言っていますが、具体的事実はどうだったのかということです。

日本人が大部分は、中学・高校で世界史を学んでも受験勉強としてしか学んでいませんし、ともすれば現代史を教えることはタブ-視されていますので、本当の経過を知らないなのではないでしょうか。

そこで私が一員となっている「レーバーネット日本」のメーリングリストに寄せられた情報を以下に紹介することにします。ナチスによる「ワイマール憲法」停止の流れがよくわかるものだったからです。

(なお、これは「レーバーネット日本」の松原明氏が「市民社会フォーラム」へのD氏投稿を上記メーリングリストで紹介され、それを私が再転載させていただくものです。)

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行進する自衛隊員

http://rt.com/news/japan-pre-emptive-strikes-564/

ーー以下、転載ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
麻生発言を、今朝の読売新聞(2013年7月30日07時32分)も報じていました。

▽▽ナチスの手口学んだら…憲法改正で麻生氏講演
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20130730-OYT1T00050.htm
 麻生副総理は29日、都内で開かれた講演会で憲法改正について、「狂騒、狂乱の中で決めてほしくない。落ち着いた世論の上に成し遂げるべきものだ」と述べた。
 その上で、ドイツでかつて、最も民主的と言われたワイマール憲法下でヒトラー政権が誕生したことを挙げ、「ワイマール憲法もいつの間にかナチス憲法に変わっていた。あの手口を学んだらどうか。[国民が] 騒がないで、納得して変わっている。喧騒(けんそう)の中で決めないでほしい」と語った。△△



朝日新聞も同じ講演を記事にしていますが、なぜか「ナチスに学べ」の部分だけ削除しています。この発言はいずれ海外から激しく非難されると予想されます。その前に国内批判を高めないと。

みなさんはよくご存知でしょうが、麻生発言のデタラメさを年表にもとづいて検証しました。

> ワイマール憲法もいつの間にかナチス憲法に変わっていた。

【間違い】 ドイツワイマール憲法は「変わった」のではない。

ワイマール憲法は変えられたのではなく、なくなったのでもない。「ナチス憲法」というものも存在しない。

「非常事態」を口実に導入された「授権法」「全権委任法」(ヒトラーに全権を委任する法)により、憲法が執行停止にされたのです。

自民党改憲案99条には、「緊急事態」の定めがあり、議会の同意を得ないまま内閣が法律の効果をもつ政令を発布できるとしています。 おお、怖っ!
 
> (国民が)騒がないで、納得して変わっている

【間違い】 大騒ぎの中で強権的に停止させられた。

ワイマール憲法が停止に追い込まれるまでの、たった1ヶ月の年表を繰ってみます。

1933年2月27日
 国会議事堂が何者かの手で放火された。 ヒトラーはこれを共産党の仕業であると決めつけ、弾圧を開始した。 同時に緊急大統領令を布告して非常事態を宣言した。ワイマール共和国憲法の保障する基本的人権や労働者の権利のほとんどは停止された。

1933年3月1日
 ゲーリングがラジオ放送で「共産主義を我々の民族から抹殺する」と叫び、政府自らが共産主義者に対してテロルを振るうことを宣言した。共産主義者は次々と警察によって予防拘禁され、2日後には無政府主義者、社会民主主義者も対象に加えられた。

このさなかに選挙が実施され、各地で共産党や民主主義政党の集会がナチス突撃隊に襲われた。選挙期間中に殺害された共産党員など51人、負傷者は数百人にのぼった。

選挙の結果、100議席を持っていた共産党は81議席へと後退した。一方ナチス党は199議席から288議席へと躍進し、ヒトラーが首相に就任したが、全体の647議席の過半数獲得には至らなかった。

1933年3月23日
 連立政権を組んだ右翼政党の協力で、 授権法(全権委任法)が成立。 ワイマール憲法は執行停止された。立法権を政府が掌握し、議会が無力化されて独裁体制が確立された。

麻生のいう「騒がないで納得して変わった」というのは、こういう状態でした。さて、その後。

1933年7月14日
 「政党新設禁止法」公布。ナチ党以外の政党の存続・結成が禁止された。授権法に賛成した連立政党も解散させられた。(公明党は他山の石とすべきだ)

1933年12月1日
 「党と国家の統一を保障するための法律」公布。ナチ党と国家の一体化が定められた。

ヒトラーは「政権を取ったらヨーロッパ中に戦争を仕掛けまくるぞ」と公約して政権を取ったのではない。「(ドイツが敗北して)ベルサイユ講和条約で失われたドイツの誇りを取り戻そう」と訴えたのだった。

 「(日本が敗北して)サンフランシスコ講和条約で失われた日本を取り戻そう」という安倍とそっくりだ。勝利におごり、歴史をねじ曲げてナチスに学ぶ自民党内閣を、一日も早く打倒しなければ。

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自衛隊「戦車部隊」

http://rt.com/news/japan-pre-emptive-strikes-564/

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以上が、D氏の投稿内容です。

この麻生発言について、日本維新の会の橋下共同代表は1日、大阪市役所で記者団に、「行き過ぎたブラックジョークだ。ナチスドイツを正当化した発言ではない。国語力があればすぐにわかる」と語り、麻生氏を擁護したそうです。
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20130802-OYT1T00257.htm?from=popin

しかし、麻生副総理が7月29日、都内の国家基本問題研究所月例研究会で講演した発言要旨は次の通りです。
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20130801-OYT1T01081.htm?from=popin
(2013年8月1日19時38分 読売新聞)

これを読めば、麻生氏が「ナチスの手法を学べ」と言っていることは間違いようがありません。国語力がないのは、むしろ橋下氏の方でしょう。

その証拠に、与党からも苦言を呈する声が出ており、公明党の山口代表も1日の記者会見で、「枢要な立場にある政治家は発言に重々配慮することが重要だ」と語っています。

「ナチス発言」火消し急ぐ…麻生氏撤回表明
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20130802-OYT1T00257.htm?from=popin
(2013年8月2日09時04分 読売新聞)

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今の安倍政権は従順な同盟者としてアメリカのTPP推進に力を注いでくれているので、大喜びしていたところ、このような発言が飛び出してきたのですから、オバマ氏も今ごろ頭をかかえていることでしょう。

というのは、日本と韓国を協力させて強固な中国包囲網をつくりあげようと努力している最中のことだったからです。

韓国を苛立たせている従軍慰安婦問題だけでも頭が痛いのに、それに輪をかけた麻生発言ですから、アメリカにとって今の安倍政権は、「沖縄の基地を国外へ」と言った鳩山内閣に劣らず、頭の痛い存在になるかも知れません。

というのは、アジア諸国からも「発言が多くの人々を傷つけるのは明らかだ」(韓国外交省報道官)、「国際社会の懸念と警戒を呼び起こさずにはいられない」(中国外務省副報道局長談話)などと批判が出ているからです。
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20130802-OYT1T00257.htm?from=popin

アジア諸国どころか、次のRT記事「“ナチスのスタイル” 日本国憲法「改正」の提案が怒りをかきたてている」を見れば分かるように、国際社会からも大きな反響や批判が聞こえてきます。

‘Nazi style’: Japan constitution revision proposal sparks outrage
http://rt.com/news/revising-constitution-nazi-weimar-890/(August 01, 2013)

何度も言いますが、TOEFLを強制受験させて育てたいとする、安倍内閣の「グロ-バル人材」なるものは、この程度の世界認識しか持たない閣僚たちによって提案されているのです。

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<註> 上記RT記事の最後は次の文章で終わっています。

 「また麻生氏は、政治的に問題を呼ぶ乱暴な『見識』を撒き散らす人物としても有名だ。氏は今年も早々に、税金による医療費支出を減らすため老人は『さっさと墓場に行ってくれた方がよい』という趣旨の発言をして物議を醸(かも)した。」
 Aso has a reputation for dispensing harsh, politically charged “wisdoms.” Earlier this year he suggested that elderly people should "hurry up and die" to avoid taxing the country's medical system.
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関連記事

英語力 は貧困力(番外編その上) 安倍政権が留学させたいとする国とは?――ナチス化する監視国家アメリカとナチスから学ぼうとする従属国家日本

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全世界に広まりつつあるブラッドリー・マニングの釈放運動

http://rt.com/op-edge/manning-guantanamo-prison-veil-878/

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Key Words: トレイボン・マーティン、ジョージ・ジンママン、ブラッドリー・マニング、TOEFL、留学政策、英語ディベート、麻生副総理・財務大臣、ワイマール憲法、ヒトラー政権、授権法(全権委任法)

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私は前回のブログを下記のように結びました。

そのような多くのエジプト市民の声をうまく利用して、モルシ派と反モルシ派を対立させ、内乱状態を作りだして軍の出番を演出する(そして出来れば、内乱を理由に暫定政権=軍事独裁政権を維持する)。これが、エジプトの特権階級とアメリカの作戦ではなかったかと思うのです。

この私の仮説が正しいのかどうかは今後のエジプト情勢が証明してくれることでしょう。しかしいずれにしても、「英語力=経済力」ではなく「英語力=貧困力」であったことだけは、この事件で明らかになったように思います。



私の仮説を裏づけるかのように今もエジプトでは混乱が続いています。本当は、この事件を敷衍(ふえん)したかたちで「英語力=貧困力」の続編を書きたかったのですが、1週間前から腰痛がひどくなり仕事ができない状態になっていました。

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ところで、今度の参議院選挙で圧勝した安倍内閣は、共産党は躍進したものの、「教育再生」と称して、「12万人を海外留学させる」、そのためには「TOEFLを大学入試や卒業要件に!」という政策を大胆に押し進めようとしています。

そうこうしているうちにアメリカでは、丸腰の黒人少年トレイボン・マーティン(Trayvon Martin)を射殺した白人ジョージ・ジンママン (George Zimmerman )に無罪判決が出たり、イラクにおける戦争犯罪を内部告発した兵士ブラッドリー・マニング(Bradley Manning)に禁固136年の有罪判決が出たりで、アメリカ社会の暗黒面がいっそう露呈してきました。

(こんなことを考えると、まさにアメリカは「白を黒と言いくるめるための技術を磨いている社会」ではないかと思えてきます。)

それどころかアメリカでは銃の乱射事件は日常茶飯事で、下記のような「シカゴで36人が銃で撃たれ7人が死亡」といった大きな事件以外はニュースにすらなりません。しかし、この事件すら日本ではまったく報道されていません。

36 People Shot in Chicago over Weekend, 7 Killed
http://www.democracynow.org/2013/6/17/headlines#61717

このような「いつ銃の乱射事件に巻き込まれるかも知れない」危険なアメリカに、しかも世界中に不正と戦争犯罪を撒き散らしているアメリカに、安倍政権は(TOEFLを強制受験させた上で)多くの留学生を送り出そうとしているのです。

安倍政権は、このような不正と危険が充ち満ちているアメリカで、いったい何を学ばせようとしているのでしょうか。「白を黒と言いくるめる」ための技術として「英語ディベート」を学んでこいと言っているのでしょうか。

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丸腰の黒人少年を射殺した白人への無罪判決に、
全米100都市で噴出する抗議行動


http://rt.com/usa/justice-trayvon-martin-rallies-364/
'Justice for Trayvon': Rallies hit 100 cities

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ジョージ・ジンマンに無罪判決を出した法廷は、北部の黒人少年エメット・ティル(Emmett Till)が南部ミシシッピーの親戚を訪ねたとき白人女性に声をかけたという理由だけで惨殺され、その犯人が無罪判決を受けた事件(1955年)を思い出せます。

まるで歴史が60年近くも前に戻ったかのような光景でした。この評決に怒りが燃え上がり、アメリカ全土で抗議運動が広がったのは当然のことでした。

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Author:狐狸庵居士(田舎の国立大学を2010年に定年退職)

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