[翻訳] 暴力、それはアメリカの生活様式だ――アメリカを「国際標準」とした秘密保護法は国家の安全に役立たない(3)

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国連の人権担当者でさえ抗議声明を発表
アメリカの無人爆撃機、イエメンで「結婚式パーティ」を大量殺戮


http://rt.com/news/un-us-yemen-drones-860/
Fatal error in ‘wedding party’ drone strike prompts UN condemnation
Tribesmen stand on the rubble of a building destroyed by a U.S. drone air strike, that targeted suspected al Qaeda militants in Azan of the southeastern Yemeni province of Shabwa February 3, 2013. (Reuters/Khaled Abdullah)


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 安倍内閣の日本版NSCがさっそく稼働し始めました。南スーダンに派遣されているPKO韓国軍に弾薬1万発を無償譲渡することを決めたからです。
 新聞報道でも明らかなように、これは「武器輸出3原則」を大きく逸脱するもので、アメリカと同じような「死の商人」への道を歩む、そのための地均(じなら)しが、いよいよ始まったものと思われます。
 アイゼンハウアーが退職時におこなった有名な演説で「アメリカはすでに軍産複合体への道を歩み始めている」と警告しましたが、現在のアメリカはこの警告どおり、戦争なしでは経済が成り立たない国になっています。国内に残っている製造業と言えば武器・兵器の生産ぐらいしかなくなってきているからです。
 日本も、アメリカと同じように、「新自由主義」「市場原理主義」の結果、国内の産業が疲弊し、いまや安倍首相自身が「危険な原発を海外に売り出すためのセールスマン」になりさがっています。消費税を上げ福祉を削れば、国内の購買力が激減することは目に見えていますから、次に売り出すものは、アメリカと同じように武器・兵器しかなくなるでしょう。
 ただし、それを売るためにはアメリカに協力して戦争を継続・拡大する以外にはありません。そのための絶好の口実となるのが「集団的自衛権の行使」です。ただし、そんなことをすると国民の怒りが爆発します。ですから「秘密保護法」の制定が必要不可欠でした。そして今や「秘密保護法」も実質的に稼働し始めています。
 それを如実に示すものが、「テレビの生中継もなく傍聴者も傍聴しにくい深夜に、秘密保護法案が参議院で強行採決されたとき、これに靴を投げて抗議した人物が国会内で逮捕され、いまだに釈放されていない」という事件です。イラクでは嘘をついて侵略戦争にのりだした元大統領ブッシュ氏に靴を投げて抗議した新聞記者は、たちまち英雄となりましたが、日本のメディアは、この事件をほとんど取りあげていません。
(Aさんへの救援運動は下記サイトを御覧ください。)
http://himitsuhokyuen.wordpress.com/
 ところで私はこれまで一貫して「アメリカと一緒になって集団的自衛権を行使すれば、日本は自動的に戦争に巻き込まれる」と主張してきました。いまアメリカは毎日のように銃による殺傷事件が起きています(平均87回/毎日)。一昨日も下記のような銃乱射による殺人事件が報じられています。
Colorado Teen Dies After School Shooting; 3 Killed in Chicago Shootings
http://www.democracynow.org/2013/12/23/headlines#122317
 このような国に安倍内閣は「教育再生」と称して大量の留学生を送り込もうとしているのです。しかも国内のGun Violence(銃による暴力)が、そのまま国外のGun Violenceへと併行移動しているのがアメリカの特徴です。このようなアメリカの特質を見事に生き生きと描きだした論説を、Global Researchというサイトで見つけましたので、以下に訳出して紹介することにしました。
 日本の進路を考える際の大きなヒントを与えてくれるのではないかと思うからです。

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殺人(KILLING)に、殺人(KILLING) を重ねても、安全(SECURITY) にはならない

http://www.globalresearch.ca/violence-the-american-way-of-life/5318698

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暴力、それはアメリカの生活様式だ

Violence: The American Way of Life
By John Kozy、
Global Research, November 15, 2013
http://www.globalresearch.ca/violence-the-american-way-of-life/5318698

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 アメリカ合州国は暴力によって身ごもり、暴力によって養育された。
 アメリカ人は暴力に手を染めているだけでなく、暴力を楽しんでさえいる。
 殺人はアメリカで毎日平均87回も起きている。戦争のためアフガニスタンに行くほうが、シカゴで暮らすより危険ではない。
 ローマ人は殺人を観劇するためコロシアムに出かけたが、大都市のアメリカ人は窓の外を眺めるだけでいい。かつて野球はアメリカの国技だったが、温和で退屈なスポーツなので、アメカンフットボールのような、選手の脳を破壊するほど獰猛なスポーツに取って代わられてしまった。暴力映画は「アクション映画」と呼ばれ、映画館とテレビを支配している。子どもたちもビデオ殺人ゲームを楽しんでいる。
 だから 銃規制でアメリカを奇跡的に平穏な国へと変えることができるなんて、本当に信じられるかね?銃の製造と使用を非合法化することでアメリカ人を平和愛好者にできるなんて、本当に可能かね?文化は法律では変えられない。変化は何世代にもわたる息の長い努力が必要だ。アメリカ人にそんな仕事が務(つと)まるかい?

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 キャリー・アミリア・ムーア・ネイション(Carrie Amelia Moore Nation)は、1846年11月25日に生まれた。後に彼女は禁酒運動の過激な一員となった。彼女は、「主キリストの足元を走りまわり主がお好みにならないものに吠えかかるブルドッグ」と自称し、酒場の破壊を禁酒推進の聖なる儀式だと言い張った。禁酒運動を始めたのは、[1874に28歳で再婚し][1889年に]カンザス州メディスンロッジへ移住したあとのことだった。
 そこで彼女は、女性キリスト教徒禁酒同盟(the Woman's Christian Temperance Union)の地方支部を開設し、酒販売禁止令を実行するようカンザス州に求める運動を始めた。彼女は酒場を破壊するということで悪名をはせようになった。しばしば賛美歌をうたう女性たちと楽器演奏者を伴って酒場まで行進していき、うたいながら祈りを捧げながら酒場の備品や酒の在庫を斧(おの)でたたき割った。
 この「斧による破壊」で彼女は1900年から1910年のあいだに30回ほど逮捕された。彼女は、1911年6月9日に亡くなり、ミズーリ州ベルトンで埋葬された。墓には墓標がなかったので、のちに女性キリスト教徒禁酒同盟は石碑を建て、こう記した。「禁酒法を制定させた篤信者。彼女は自らの為し得ることを為した」。もう8年長生きしていたら彼女は禁酒がアメリカの国法となるのを見たであろう。

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  再婚した頃のネイション      斧を持つネイション女史        晩年のネイション女史


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しかし、もちろん長続きはしなかった。禁酒法は1933年12月5日に廃止されたからだ。ほんの14年間つづいただけだった。そして決して社会に有益な影響を与えなかった。それどころか、アメリカに犯罪組織(マフィア)を根づかせる手助けをしただけだった。
 しかしアメリカ人は容易に断念はしない。この知識人なんかいらないとする社会(だから、もっと科学者が必要なんだと言われている国)では、非科学的な慣習がはびこっている。だから、役に立たないと分かっているものが何度も何度もくりかえされる。ニクソン政権が1871年に麻薬戦争を宣言したのも同じ理由だ。
 それから50年後のいま麻薬戦争の塹壕(ざんごう)の壁はまさに崩れはじめている。麻薬禁止というこの長期にわたる努力も、まったく功を奏せず、社会にたいして何の益もなかった。それどころか国内と国外で何千人もの死者をうみだし、数えきれない若者の命を奪うことになった。同時に大量のお金を浪費した。禁酒法がそうであったように、麻薬戦争も、国際的犯罪カルテルの蔓延(まんえん)を助長しただけだった。
 科学的気質をもつ人なら効果がないと放棄するはずのことを、アメリカ人は驚くほどの熱意をもって実行に移してきた。愚劣だと考えるひとが一人くらいはいてもよさそうだが、一人もいない。群衆はふたたび騒ぎたてている。今はその対象が銃だ。
 ただし誤解のないように。私は銃をもっていない。というのは、文明国に住んでいる人に銃が必要だという理由が、私には思いつかないからだ。銃にはただひとつの目的しかない。人殺しだ!文明人には人殺しをする必要も理由もない。もし銃が自己防衛に必要だというなら、その国は国内に平安を保障するという基本的機能において失敗・破綻しているのだ。(合州国憲法を読んでみたまえ!)それさえ提供できない国は完全に失敗国家・破綻国家だ。銃の所持を強固に主張する人がいるという事実が、アメリカ人の性格とアメリカ国家の破綻について、多くを物語っている。銃について論じる以前の問題だ。

 しかし、もう一つの禁止[銃規制]を試みるということがアメリカにおける暴力になんら意味ある効果をもたらさないとしても、何かをしているという気休めにはなるだろう。銃規制法を「気分のいい」法だという人もいた。たぶんそうだろう。「気分の良い」法は「気分の悪い」法よりは良いに決まっている。そして銃規制に反対する充分な理由などないことも分かっている。しかし私が反対しているのは、銃規制さえすればアメリカ社会における暴力が著しく減少するんだという能天気な楽観主義なのだ。銃がアメリカの暴力の原因ではない。アメリカ社会の暴力性が銃偏愛の原因なのだ。
 アメリカ合州国は暴力によって身ごもり、暴力によって養育された。アメリカを植民地にしたヨーロッパ人は寛大だったわけでも文明的だったわけでもない。ヨーロッパ社会の屑だったのだ。そして互いに軽蔑し合っていた。マサチューセッツの、まったく不潔きわまりない(totally impure) 清教徒たち(Puritans) は、ペンシルベニアのクエーカー教徒とメリーランドのカトリック教徒を軽蔑していた。
 ピクォート戦争で英国の入植者たちは、ジョン・メイソンに命令されてミスティック川の大きなピクォート村に夜襲をしかけ、住民を家ごと焼き払い、生き残ったひとたちもすべて殺した。控えめな見積りでも、ヨーロッパ人の植民以前のアメリカの人口は、一千二百万人を超えていた。四百年後には、その数は二三万七千人まで減少させられた。四百年もの間、先住民にたいして絶え間のない暴力がふるわれ、その暴力はいまだに続いている。

 エイブラハム・リンカーンは偉大なる奴隷解放者として崇(あが)められているが、南北戦争で約七五万人のアメリカ人が殺された。戦争以前には耳にしたこともないような暴力によって、奴隷解放がおこなわれた。これとは対照的に、しかも同じ頃、ロシアの専制皇帝アレキサンダーⅡ世は、たった一人も殺さないで、二三万人以上の農奴を解放した。あの忌々しいロシアの専制君主が!
 南北戦争の後、アメリカ人は辺境地をひたすら突き進んで太平洋に至った。それを銃で使ってやったのだ。ウィンチェスターモデル1873自動連発銃とコルト連発ピストル1873「ピースメーカー」(平和をつくる!という名の銃だ!)は、俗に「西部を手に入れた銃」として知られている。西洋からやって来た植民者の手に握られ、圧倒的な役割を果たしたわけだ。こうしてアメリカ人はミシシッピから太平洋まで銃を撃ちまくって西進したのだ。

 アメリカの外交政策は何十年もの間、ほとんどが軍事的火遊びの連続だった。つまり砲弾外交だ。いま銃は、無人爆撃機(Drone)とそれから発射される弾丸、あるいはヘルファイア[地獄の火]ミサイル(=短距離空対地ミサイル)へと代わった。
 アメリカで名誉勲章を二度も受けた将軍はたった二人しかいない。そのうちのひとりがスメドレー・バトラー将軍(1881-1940)だ。その彼が次のように書いている。
 「在職のあいだ私は、大企業、ウォール街、銀行などの最高級用心棒として時をすごした。要するに私は、資本主義に奉仕する恐喝者でありギャングの一員だった。
 ・・・1914年に私はメキシコとくにタンピコで、アメリカ石油業界が安全に動けるよう手伝った。ハイチとキューバを、ナショナル・シティバンク行員たちが収奪しやすい場所にするよう手伝った。私はウォール街の利益のために、中央アメリカで六つの共和国の略奪に手を貸した。恐喝の記録は長い。
 私は1909年から1912年にブラウン・ブラザーズという国際的投資銀行のために、ニカラグアの浄化を手伝った。1916年には、アメリカ砂糖会社のために、ドミニカ共和国に焦点を当てた。中国では、スタンダード石油会社が思いどおりにできるように手伝った。」
 もちろん今は、中東と東南アジアを「民主主義のために」「安全な国」にするために銃を使っているが。

 しかしながらアメリカのこのような暴力的試みは、いま功を奏していない。

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 暴力はこの国の文化に浸透している。アメリカ人は暴力に手を染めているだけでなく、暴力を楽しんでさえいる。アメリカでは毎日、太陽が昇るよりも頻繁に殺人が起きている。今では毎日の平均が87回だ。アフガニスタンの戦場に行くほうが、シカゴで暮らすより安全だ。
 だからほんとうに信じられるかね? 銃規制でアメリカを奇跡的に平安な国へと変えることができるなんて。ほんとうに信じられるかね? 武器の製造と使用を非合法化することで、アメリカ人を平和愛好者にできるなんて。文化は法律では変えられない。法律の唯一の機能は復讐を正当化することだ。歴史の記録を見るかぎり、何かを減少させるつもりで制定された法律で、それを根絶させた例はない。有史以来、[マグナカルタのような]最も古い[人権]宣言でさえ今や死語とさせられ効力を失ってしまっている。それが現状だ。だから実のところ、法律に基づいた社会とは無法社会のことなのだ。

 アメリカ社会が暴力的なのは、銃のせいではない。アメリカ人の生き方のせいなのだ。ヨーロッパ人が最初に南北アメリカにやって来たとき、新世界を発見したと考えた。しかし彼らが発見した土地には、すでに独自の生き方・生活様式をもった人々が住んでいた。不寛容なキリスト教徒にとって暴力の使用は不可欠だった。ヨーロッパの欲しい地域をローマ人が略奪したのと同じように、移住したヨーロッパ人は南北アメリカを略奪した。暴力は彼らの骨の髄までしみこんでいる。今日のアメリカ人はその遺伝子を受けついでいるのだ。
 全米ライフル協会(NRA)のスポークスマン、ウェイン・ラピエール(Wayne LaPierre)は言った。「銃を持つ悪人を阻止できるのは、銃を持つ善人だけだ」。そう言っている彼こそが銃を持つ悪人なのだということを、誰かが教えてやらねばならない。
 だから、銃の拡散を規制する法をつくるのはたしかに結構だが楽観は禁物だ。そんな法は助けになるかもしれないが当てにはならない。アメリカ人の性格を変えることができないかぎり我々の粗暴さは自らを絶滅させてしまうまで続く。だから**に従って生きよ。おっと、この**が何かは言わずとも知れたこと。文化は極めて変え難い代物(しろもの)だから、それを変えるには何世代にもわたる息の長い努力が必要だ。アメリカ人にそんなことができるのかね?
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<註1> 上記で引用されているバトラー将軍の詳しい陳述は下記の拙訳にあります。参照いただければ幸いです。
 『肉声でつづる民衆のアメリカ史』明石書店、2012
  上巻、第12章、第4節、スメドレー・バトラー『戦争はペテンだ』
また上記の翻訳は単独で次のサイトにPDFファイルとして掲載されています。
http://www42.tok2.com/home/ieas/translation_index.html
http://www42.tok2.com/home/ieas/ViolenceTheAmericanWayOfLife.pdf

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<註2> ジョン・コーズィは哲学・論理学の元教授で、退職した今は社会的・政治的・経済的な諸問題について健筆をふるっている。朝鮮戦争中にアメリカ陸軍に服したあと、州立大学教授として20年間をすごし、退職後の20年間は作家として働いている。形式論理学の教科書を公刊し、学術誌や商業雑誌にも執筆している。また新聞のゲスト論説をたくさん書いてきた。彼の論説は下記サイトで読むことができるし、そのホームページから彼宛にメールを送ることもできる。
http://www.jkozy.com/
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セイモア・ハーシュ氏の爆弾発表:アルカイダの化学兵器攻撃をオバマ大統領が隠蔽――アメリカを「国際標準」とした秘密保護法は国家の安全に役立たない(2)

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「これでいいのか?!TPP、12.8大行動」に2700人が参加!!(日比谷公園野外音楽堂)

http://www.labornetjp.org/news/2013/1208shasin
TPPは「秘密保護法」の先取りだ!!アメリカの国会議員でさえ内容を知らされていない。「損失を被った」という理由で国家を訴える権利を、巨大多国籍企業に与える協定がTPPだからだ。

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 先週12月10日は、新聞やテレビを賑わせた大きな出来事が二つありました。
 ひとつは南アフリカ共和国の黒人差別(アパルトヘイト)と闘って世界的英雄となった元大統領ネルソン・マンデラ氏が死去し、巨大な追悼式が開かれたことです。
 もう一つは、ノーベル平和賞の授賞式がノルウェーの首都オスロの市庁舎で開かれ、化学兵器禁止機関(OPCW、本部オランダ・ハーグ)にメダルと証書が贈られたことです。
 ところが、その数日前に、ピューリツァー賞受賞者セイモア・ハーシュ記者が「アルカイダの化学兵器攻撃をオバマは隠蔽していた」という爆弾発表をしていたにもかかわらず、これを報道した大手メディアはまったくありませんでした。
 他方,日本では「秘密保護法」が参議院で強行採決され、それに抗議した数人が逮捕され、傍聴席から靴を投げて抗議したA氏が、いまだに釈放されていません。
 そこで以下では、マンデラ氏の死去とノーベル平和賞の授賞式が、日本の「秘密保護法」にとってどんな意味をもつのかを考察してみたいと思います。

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<註> 国会内で逮捕された「秘密保護法と闘う男」(Aさん) を助け出そう!と呼びかける「12.6 秘密法国会傍聴者弾圧救援会」のホームページは下記のとおりです。
http://himitsuhokyuen.wordpress.com/

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 ノーベル平和賞の委員会は、1997年の発足以来、「化学兵器廃棄のために幅広い努力をした」ことを評価して、OPCWに平和賞を授与したそうですが、今回シリアが化学兵器を撤去することに大きな貢献をしたのはロシアでした。
 ロシアがアサド大統領と交渉して化学兵器撤去に合意させていなければ、アメリカは今ごろシリア爆撃に踏み切っていたでしょう。というのはオバマ氏は「化学兵器によってシリアでたくさんの人が殺されたのは政府軍によるものだ」と断言してきたからです。
 オバマ氏は「反政府軍には化学兵器を保有し使用する能力も手段もない。その確かな証拠を私は持っている」と言い続けてきました。
 しかし他方で、世界の世論も、これ以上シリアの死者と難民を増やしてはならないという世論は高まる一方でした。アメリカ国内でも、タカ派と言われる共和党員のなかからすら、反対論が出始めていました。
 ですから、このような世論を無視してシリア爆撃に踏み切っていたら、嘘をついてイラク侵略に踏み切ってアメリカの威信を地に落としたブッシュ氏の愚行を、オバマ氏も繰り返すことになり、天下に大恥をかいていたことは間違いありません。
 というのは、「化学兵器を使ったことが明らかになればアメリカは攻撃に踏み切る」と宣言しているのに、しかも国連の査察団がシリア入りしている目と鼻の先で、堂々と化学兵器を使ってみせるバカはどこにいるのでしょうか。

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 このようなオバマ氏の危機を救ったのが、ロシアのプーチン氏でした。もしプーチン氏による仲介がなければ、オバマ氏は今さら自分の公言を取り下げるわけにもいかず、シリア爆撃に追い込まれていたことでしょう。
  ロシアは以前から「反乱軍のなかにはサウジアラビアなど中東から送り込まれたイスラム過激派が群雄割拠しており、そのなかには化学兵器を保有し使用する能力も手段をもっている集団がいる」と主張していました。
 ですから、最後の頼みの綱はアメリカ議会がシリア爆撃を否決してくれることですが、否決されたら否決されたで、「否決されるような戦略・軍事方針をたてた」ということで大きな打撃を受け、恥をかくことは免れません。
 しかし、プーチン氏がアサド大統領を説得して化学兵器の撤去・廃棄に合意させたことによって、オバマ氏はかろうじて面子を保つことができました。世論を押し切ってまで爆撃しなくてもよい口実が見つかったからです。
 しかも「アサド政府軍が化学兵器を使ったから爆撃に踏み切ったのだ」という、ブッシュまがいの嘘をつき続ける苦しみからも解放されたのですから、プーチン氏にどれだけ感謝しても、したりないはずです。
 またシリア民衆も、アメリカの爆撃によって死者や難民が激増することは世界中の識者が予想し指摘していたことですから、今回のアサド氏の合意にどれだけ安堵の胸をなで下ろしたか知れません。
 他方、今回ノーベル平和賞を授賞したOPCWは何をしたのでしょうか。なぜ今回の立役者であったプーチン氏にノーベル平和賞が授与されなかったのでしょうか。OPCWは、プーチン氏が仲介しアサド大統領が合意した「化学兵器の撤去・廃棄」の作業を、単に請け負ったにすぎないのですから。

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 「ノーベル平和賞はほとんど意味のない政治的な見世物だ」というのがチョムスキーの意見です(『現代世界で起きていること』日経BP社、153頁)。オバマ氏が授賞したときもそうでしたが、今度のOPCWの受賞で、改めてそのことを確認できたようにおもいます。
 朝日新聞(12月10日)によれば、OPCWのウズムジュ事務局長は受賞演説で、シリアで8月、多くの市民が化学兵器攻撃の犠牲になったことに触れ、「悲劇を繰り返してはならない。この賞により、化学兵器禁止条約を真に普遍的な規範にしようとする努力に拍車がかかることを熱望する」と述べたそうです。
 しかし、OPCWがシリアにたいしてどんな働きかけをしてきたのか何一つ分かりません。分かったのは、シリアが化学兵器の廃棄に合意したことを受けて、その撤去作業にのりだしたということだけです。
 すぐ隣にイスラエルという国があり、OPCWにもIAEAにも加盟していません。しかも、このイスラエルは反政府軍に加担して、シリアを爆撃すらしています。化学兵器も核兵器もその所有が確実視されているイスラエルにたいして、OPCWは何か行動をしてきたのでしょうか。何か声明を発表したのでしょうか。
 たとえば、ローマ教皇庁すら「巨大強制収容所」と呼んでいるパレスチナ「ガザ地区」に、イスラエルが2008-9年にかけて連日、猛爆撃を加え、400人を超える死者と4000人を超える難民をうみだしたとき、「白燐砲弾」(これは化学兵器です!)も使われたことを、国際人権団体Human Rights Watchは厳しく批判しています。
 この攻撃の際、OPCWは何をしていたのでしょうか。
 他方でシリアに働きかけて化学兵器の放棄を決意させたプーチン氏には何の賞も与えられていません。それどころかプーチン氏はアメリカの悪事を内部告発してどこにも行き場がなくなったスノーデン氏に亡命許可すら与えています。この二つのことを考えただけでも、OPCWよりもプーチン氏のほうが受賞にふさわしいことは明らかでしょう。
 プーチン氏にやりたくないというのであれば、自分の未来を危険にさらしてまでも大国アメリカの悪事を暴露したエドワード・スノーデン氏に授賞すべきだったのではないでしょうか。氏はすでに「廉潔な内部告発者」に贈られる「サム・アダムズ賞」を受賞しているのですから、資格は十分です。
 しかしノーベル平和賞の委員会は、「アメリカの仮想敵国」の反体制人物に授賞することはあっても、大国アメリカの逆鱗にふれるような人事は決してしません。

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調査報道記者セイモア・ハーシュ氏,アメリカ軍によるベトナム「ミライ村」での虐殺
 
http://pierretristam.com/Bobst/library/wf-200.htm
The My Lai Massacre、Seymour M. Hersh/St. Louis Post Dispatch

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 話が少し横にそれたので元にもどします。私がここで指摘したかったことは、元大統領ブッシュ氏と同じように、オバマ氏が嘘をついてまで戦争をしたがっている人物だということです。
 そのことを赤裸々に暴露したのが、ベトナム戦争における「ミライ村での虐殺事件」やイラク戦争における「アブグレイブ刑務所の捕虜虐待事件」などを暴露したことで知られる、有名な調査報道記者セイモア・ハーシュ氏でした。
 書評誌『ロンドン・レビュー・オブ・ブックス』に発表した記事で、ハーシュ氏は、オバマ政権が「情報を意図的に操作した」と非難しつつ、次のように書いています。
 最も重要な点は情報機関がつかんでいたことをオバマ氏が認めなかったことだ。それは、サリンを手にできる者はシリア軍だけではなかったということだ。
 化学兵器攻撃が起きる数か月前、情報機関は一連の高度な極秘報告をおこなっていた。そして、アメリカ軍がそれを元にたてた地上侵攻の作戦計画書には、シリア国内で活動するアルカイダ系イスラム武装組織「アルヌスラ戦線(Al-Nusra Front)」がサリンの製造方法を熟知し、大量に製造する能力を持つという証拠が挙げられていた。
 化学兵器による攻撃が起きた際、アルヌスラ戦線は疑われるべきだったのにオバマ氏は、アサド政権に対する攻撃を正当化するために情報を選別した。また、化学兵器攻撃の後になって入手した証拠をリアルタイムで収集していたように見せかけていた。
"Whose Sarin?" By Seymour Hersh (London Review of Books)
http://www.lrb.co.uk/2013/12/08/seymour-m-hersh/whose-sarin

 要するに、オバマ氏は、シリアを攻撃するするために自分の都合の良い情報だけを「つまみ食い」 していたのです。これはイラク攻撃の際、ブッシュ氏がチェイニー副大統領と一緒になっておこなった行為とそっくりです。

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 ここで注目すべきなのは、ハーシュ氏がこの情報を得たのは、実はオバマ政権の情報機関高官からだということです。氏はDemocracyNow!のインタビューで、「名前は明かせないが」と言いつつも、自分の情報源は情報機関の高官であるとはっきり明言しています。
Seymour Hersh: Obama "Cherry-Picked" Intelligence on Syrian Chemical Attack to Justify U.S. Strike
http://www.democracynow.org/2013/12/9/seymour_hersh_obama_cherry_picked_intelligence

 今ごろオバマ氏はこの情報を漏洩させた人物を血眼になって捜し回っていることでしょう。しかしこれは内部告発者の重要性をあらためて浮き彫りにする記事でした。でなければ、アメリカ国民はずっとだまされ続けていたことでしょう。
 ところが日本の「秘密保護法」は、機密解除を明示する情報公開法もなければ内部告発者を保護する法律もないのです。また調査報道記者は情報源を秘匿する権利をもっていることも法律で明文化されていません。
 アメリカではそのような明文化された法律があるにもかかわらず、マニング氏は牢屋送りになりましたし、スノーデン氏は亡命の受け入れを表明した南米諸国に行くことができずロシアで途中下車せざるをえませんでした。マニング氏の情報をウィキリークスに掲載したアサンジ氏も、ロンドンのエクアドル大使館で缶詰状態のままです。
 だとすると、国民に何の権利も保障していない日本の「秘密保護法」の下では、内部告発者も調査報道記者も、そしてそれに加担したとされる一般市民にも、どんな危害が襲いかかってくるか、そんなことを想像するだけも怖くなります。

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 もっと重要なことは、安倍政権が解釈改憲で追い求めている「集団的自衛権」によって、このようなアメリカの「汚い戦争」「嘘で国民をだましながらおこなう戦争」に、日本が自動的に巻き込まれることになるということです。
 ベトナム戦争の「トンキン湾事件」でも、アメリカは自分が先に攻撃したにもかかわらず時系列をねじまげて北爆開始にふみきりました。日本は憲法9条があったおかげで助かりましたが、この泥沼の戦争に引きづり込まれた韓国軍は多くの戦死者を出しました。
 アメリカが「イラクは大量破壊兵器を所有している」と嘘をついて始めたイラク戦争では、日本も戦後復興の片棒を担がされて自衛隊をイラクに派遣しましたが、あそこで膨大に費やされた私たち国民の税金は、何か価値があったのでしょうか。
 イラクは今も内戦が続いていて、今やイラクは瓦礫と化しつつあるからです。毎日のように自爆テロ事件が起き、大量のひとが殺され続けています。自衛隊が現地でおこなったとされる復興事業は、ほとんど意味をなしませんでした。
 一歩譲ってフセインが独裁者だったとしても、こんなひどい破壊はおこないませんでした。「集団的自衛権」を理由にアメリカがおこなう戦争へと引きずり込まれるということは、このような破壊に手を貸すということなのです。
 それだけでなく、私たちの税金が大量に浪費され、多くの自衛隊員が無駄死にをすることにもなります。
 このたび強行採決された「特定秘密保護法」は、日本版NSCと一体になったものであり、それは日本がアメリカの要求する「集団的自衛権」を行使できるようにするための地均し(じならし)であるというのが、今や常識となりつつあります。
 今度のセイモア・ハーシュ氏の記事は、このような意味でも、極めて重大な問題を投げかけているはずなのに、この衝撃的なスクープを取りあげ、「特定秘密保護法」や「集団的自衛権」と関わらせてきちんと報道する大手メディアが皆無に近かったことは、私には信じがたいことでした。
 私がこのブログで取りあげ、詳しく論じたいと思ったゆえんです。

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 あとひとつだけ書いておきたかったのは、ネルソン・マンデラ氏の追悼式でオバマ大統領がおこなった演説の偽善ぶり、その危険性についてです。が、もう十分に長くなっているので、別の機会に譲りたいと思います。
 しかし、故マンデラ大統領の栄誉をたたえるため集まった数万人の観衆と100人近くの国家元首を前にしたオマバ氏の演説に、次のようなフレーズがあったことだけは、ここに記しておきたいと思います(マディバはマンデラの愛称です)。
「マディバは、囚人だけでなく投獄した側をも解放した」
President Obama: Nelson Mandela "Freed Not Just the Prisoner, But the Jailer As Well"
http://www.democracynow.org/2013/12/10/president_obama_nelson_mandela_freed_not

 拷問で有名なグアンタナモ刑務所に、無実の囚人を大量に収容したまま、こんな演説ができるオバマ氏に私は思わず絶句してしまいました。
 しかもアメリカの情報機関CIAの手引きによって、27年間もの獄中生活をおくることになった人物にたいして、ひと言の謝罪もなく(マンデラ氏は国家反逆罪で「終身刑」を宣告された)、歯の浮くような言辞だけをふりまく大統領がオバマ氏なのです。
 私たちはこんな大統領を頭(かしら)としていただく国家と、「集団的自衛権」というかたちで「無理心中」しようとしていることだけは、忘れたくないものです。


<註> CIAが提供した情報によってマンデラ氏が逮捕され牢獄に送られたことは、Andrew Cockburn (the Washington editor for Harper’s magazine) にたいする下記インタビューで、詳しく述べられています。
"One of Our Greatest Coups": The CIA & the Capture of Nelson Mandela
http://www.democracynow.org/2013/12/13/one_of_our_greatest_coups_the

<参考> 元グアンタナモ被収容者が語る拷問の実態
http://voicejapan2.heteml.jp/janjan/world/0911/0911032649/1.php
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内部告発者が明かす、福島「原発ジプシー」の実態――秘密保護法は、政府・東電とつながる「闇の世界」を、いっそう暗く厚くおおい隠すだろう

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秘密保護法が強行採決された翌日(12月7日)、3000人を超えた「大デモ」参加者

誰も めげて いない。反転攻勢に向けてパワーを爆発させた渋谷(写真:田中龍作)
http://tanakaryusaku.jp/2013/12/0008380
山本太郎氏らと共に三宅洋平氏が「大デモ」開催
「デモは、いてもたってもいられない人たちの行き場所」

http://www.huffingtonpost.jp/2013/12/07/big-demo_n_4405941.html

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 2013年12月6日の深夜、自民党と公明党は参議員本会議で秘密保護法案を強行採決しました。日本の憲法が止まった歴史的瞬間でした。
 この法案が本格実施されれば、今でさえ秘密の多い原発行政が、そして戦争推進政策が、ますます闇に包まれ、下手をすると日本を沈没に追い込むかも知れません。
 というのは、東電が大量の汚染水を海に捨ててきたことを公表したのは、参議院選挙が終わった直後のことだったからです。これを選挙以前に公表していれば自民党があれだけ大勝することはあり得なかったでしょう。
 このように権力をもつものは自分に都合の悪いことはめったに公表しません。だからこそ、そのような秘密を保持できるようにするために、秘密保護法が必要になるわけです。
 以下の翻訳で紹介するように、原発推進政策が裏組織(やくざ)と深い関わりがあったことは、公然の秘密だったはずですが、それを大手メディアがきちんと取りあげて政府を追及したことは、ほとんどありませんでした。それは日本では、一種のタブーだったからです。
 だからこそ、それが暴露されるにはロイターやRT(ラッシア・トゥデイ)の力が必要でした。以下で紹介する記事はRTによる記事ですが、秘密保護法により外国人記者でさえ、今後は、このような事実を調査することが許されないような事態になるかも知れません。
 というのは、自民党幹事長の石破氏は、デモ行為をしている人たちを「テロリスト」と呼んで前言撤回に追い込まれた舌の根も乾かないうちに、今度は「秘密指定」の情報を漏洩した公務員だけでなく、それを報道した記者も罪に問われると恫喝しているからです。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2013121302000115.html
 思わず自民党の本音が露呈させたと言うべきでしょう。そのようなことを念頭におきながら以下の記事を読んでいただきたいと思います。

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<註> ノーベル賞受賞者2名(益川敏英・白川英樹)を含む「特定秘密保護法に反対する学者の会」は強行採決に強い抗議声明を発表しています。
http://anti-secrecy-law.blogspot.jp/2013/12/blog-post_7.html
また同法案の廃止・停止を求めて抗議声明への賛同者を募っています(当面の目標5000名)。学者・研究者でなくても署名できます。
http://anti-secrecy-law.blogspot.jp/

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福島の内部告発者が明かす

「ヤクザ・暴力団とのつながり」

「廃炉・除染労働者へのピンハネ」

Fukushima whistleblower exposes yakuza connections, exploitation of cleanup workers
http://rt.com/news/fukushima-workers-violations-yakuza-730/
RT News, 2013.10.25


20分で致死量に達するところもある現場で働く労働者たち
Record outdoor radiation level that ‘can kill in 20 min’ detected at Fukushima

http://rt.com/news/fukushima-radiation-record-outdoor-912/
Workers check a transport container and a crane in preparation for the removal of spent nuclear fuel from the spent fuel pool inside the No.4 reactor building at the Tokyo Electric Power Corp's (TEPCO) tsunami-crippled Fukushima Daiichi nuclear power plant, in Fukushima (Reuters / Kimimasa Mayama / Pool)

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 福島原発の廃炉・除染作業員が、原発下請け企業の無秩序な体制を内部告発した。いわゆるヤクザとのつながりや、この危険な作業に従事する貧しい労働者のひどいピンハネ状態などの暴露だ。
 ロイターで報道されたこの内部告発は、下請け企業の実態が日本の原発産業全体に深く根ざした問題であることをも明らかにしている。この調査記事は、ロイターが約80人の臨時工と現場監督にインタビューし、破損した原発施設で働く労働者の実態を詳しく述べたものだが、彼らの最も共通した不満の声は、廃炉・除染作業を下請けに丸投げしていることだった。それは労働者の権利を侵しているだけでなく生命をも危険にさらしている、と彼らは主張していた。 
 元建設労働者の林哲哉(41歳)は、福島第一原発が予想以上に深刻な状況にあるのではないかと思って、破損した原発の仕事に応募した。今後数十年にわたって続くと予想される15兆円の廃炉・除染作業は、すでに5万人におよぶ労働者を要したが、そのほとんどが日雇い労働者だった。
 しかし林はその仕事をたった2週間でやめることになった。それは廃炉・除染作業にかかわる下請け業者の巨大な網の目が、彼の権利(または彼の健康)のことをまったく考慮せず、かたや原発運営会社である東京電力(TEPCO)は下請けに軽い注意を与える以外何もしていないことが分かったからだ。
 林は2012年の夏に、仕事現場から引き上げてきた原発労働者の放射線被曝量を検査する仕事に雇われたはずだった。しかし最も危険な部署に配置され、放射線防護服を与えられた。防護服を着ていても、1時間以内で年間放射線許容量を超えてしまった。
 ロイターによれば、林を雇った下請け企業は、IAEA(国際原子力機関)の被爆ガイドラインによる放射線安全基準に従っていなかった。
雇用されて2週間後に被曝量を示す放射線管理手帳を見て、だまされていたのではないかという疑問が林に湧いてきた。自分の雇用はRH工業だったはずなのに、もっと上部の請負業に雇われたことになっていた。放射線管理手帳では、鈴志工業が彼を2012年5月から6月まで雇い、その後、6月に10日間だけ、別の会社テイク・ワンが彼を雇ったことになっていたからだ。しかし彼が1年間の契約を交わしたのはRH工業だった。
 ロイターによれば、「雇用を外部に委託したことを隠すために文書を偽造したのではないか」と林は語っている。
  これが彼の苦難の始まりだった。「だまされた、わなにはめられたと思った。・・・何一つ同意していないからだ」と林はロイターに語っている。
 林は上部の請負会社に文句を言ったら解雇された。そこで労働基準局に訴えたが、1年間も返事がなかった。しかたなく彼は原発の別の仕事についた。それは燃料棒を保管する冷却タンクのコンクリート土台をつくる仕事だった。


http://rt.com/news/fukushima-workers-violations-yakuza-730/

 その仕事に月15万円が支払われるはずだった。しかしロイターによれば、収入の3分の1が下請け業者によってピンハネされていたと彼は言っている。それは何千という廃炉・除染労働者の共通の問題で、東電が正義を回復する見込みはほとんどない。これはアジア最大の電力企業が抱える問題の氷山の一角にすぎないからだ。これが廃炉・除染作業に携わる労働者の最も大きな苦情だった。東電は廃炉・除染作業の全体に責任を負っているが、そこには日本の4大建設業、別名“ビッグ4”として知られた鹿島建設、大林組、清水建設、大成建設も関わっている。これらの企業が東電に代わって福島県一帯の何百という会社に資金や事業を提供している。そして結局は、それらの末端企業は東電から何の監督も受けていないことになる。
 廃炉・除染作業を批判するひとたちは、この下請けによる規制なしの雇用が労働者の権利侵害や組織暴力団のピンハネ・恐喝への道を開いていると言う。しかし、福島県一帯の労働問題を扱っている弁護士のなかには、それでも失業するよりはましと言うものもいる。      
 8つの主要な請負企業も原発の運転責任者も林の件には口を閉ざしているが、東電の原子力立地本部長代理・尾野昌之はロイター通信に次のように語った。「入札に基づいて元請企業と契約し、それらの企業はその契約をもとに労働者を雇う。だから我々が彼らの下請けの契約に介入して監督・点検することは難しい」。
 林は、記者の助言で、自分の話を裏付けるための写真やビデオおよび業務記録のコピーなどを保存しておいたと言う。
 労働者不足の危機が、原発内部も福島県一帯も、同時に深まり続けている。政府の資料では、応募者が求人数より25%も足りない。
 したがって賃金を上げれば雇用は拡大するはずなのに、東電は政府から、2014年3月までに赤字を解消するように圧力をかけられている。それに応じて東電は社員の賃金を20%も下げた。
 この労働者の権利や賃金を悪化させる競争の中で、反社会的集団とつながりをもつとされる多くの請負業者が、貧困化した福島県の廃炉・除染市場を支配した。まさにこれらの請負業者が、廃炉・除染労働者の膨大な不足を利用して、原発関連企業とそれに結びついた日本の組織暴力団(やくざ)が栄えるのを許してきた。福島県だけでも、3つの大きな暴力団の下に、50近くの支部暴力団がある。それらの支部暴力団が2011年3月の震災以前から、この地域の労働力市場ににらみをきかしていた。


http://rt.com/news/fukushima-workers-violations-yakuza-730/

 行政当局は、請負業者の最終損益にしか関心が無いから、彼らの活動はしっかり監視されていない。最悪なのは、下請け業者がしばしば放射能除染活動にほとんど経験がないか、あるいはまったく素人のところが少なくないことだ。
 今年はじめの調査が明らかにしたところでは、廃炉作業の契約がなされた中小企業の7割近くが労働法規に従っていなかった。その事実は7月になってやっと厚労省によって報告された。
 しかし廃炉の責任者である日本の経産大臣・茂木敏充は、東電には今のところ労働条件の改善を命じることしかできないと言う。「廃炉には多くの企業の協力が必要ですからね」
廃炉・除染作業に関わる犯罪を取り締まるために、警察に特別捜査班が設置されたとき、巨額の予算が横領・ピンハネされていることが判明した。しかし東電が政府との直接契約以外の活動について全く監督できていないのと同じく、いわゆる「4大請負企業」の一つである大林組の広報担当は次のように言うだけだった。「下請け企業の一つがヤクザを使って労働者を雇っていることは全く知らなかった」
 それどころか大林組は、下請けとの契約書には「組織暴力団と協力しないという条項がある」と言い張った。


低賃金労働に依存する福島 

 福島を廃炉にすることは特にやっかいで悪夢のような仕事だということを東電も分かってきている。冷却作業だけでも、毎日その操作を続けるのに何千という労働者が必要とされる。また毎日、処理しなければならない汚染水は、オリンピック・スタジアム130個分に相当する。東電の予測でも、2015年までに合計1万2千人の労働者が必要だ。それに比して、今のところ現場で登録されているのは8,000人をわずかに越えているにすぎない。しかも少し前までは、その数は6,000人だった。
 事態を一層複雑にしているのは、福島の労働市場における無法状態の根源が1970年代にまでさかのぼるということだ。
 日本の原子力産業は40年以上にわたって低賃金の労働力に依存してきた。このため、失業した困窮者であふれる東京と大阪の貧民街から労働者をかき集めてきた。林は、このようにして雇われてきた推定5万人の廃炉・除染労働者の1人にすぎない。いわゆる「原発ジプシー」として知られるこれらの生活困窮者は、安い労働力を探す下請業者の格好の餌食だ。
 ロイターによれば、村田三郎(大阪中央病院副院長)は次のように述べている。「原子力産業の労働条件はいつも悪かった。賃金のピンハネ、仕事を下請け孫請けにまわすアウトソーシング、そして病気や怪我をしても保険がないことなど、これらは何10年も続いている問題だ」と。
 そして、2011年3月の福島原発事故による放射能汚染が、これらの長期間にわたる問題を一挙に明るみに出すことになった。
 この大災害の結果、日本の議会は原発の除染と廃炉に向けた予算に同意した。しかし、その法案には建設業者に適用されている規制が盛り込まれなかった。要するに、労働者を供給する請負業者は、廃炉・除染作業の詳細を明らかにする義務がないだけでなく、また原発作業にかかわったという経歴・経験も求められない。その結果、誰でも一夜にして原発の請負業者になれる。東電にも政府にも無断で、気兼ねすることなく。


http://rt.com/news/fukushima-workers-violations-yakuza-730/

 請負業者は契約を確保しようと突進した。そして入札に勝つため斡旋業者を使って労働者を集めた。当然のことながら、その斡旋業者には、面倒な注文は何一つ付けなかった。
 ある場合には、ヤクザに借金がある労働者が、斡旋業者によって雇われ、借金の返済金を給料袋(茶色の封筒)から差し引かれていた。こうして賃金を大幅に減らされた労働者は、借金を払うために休む暇なく働くことになる。約束された賃金は、初めから日本の平均賃金より3分の1低い。東電は、時給を公表しないので、ロイターはやむなく労働者自身にこの問題を提起した。平均の時給1,200円だが実際は600円にまで下がることがある、というのがその答えだった。
 元アメリカ原子力調査官で東電顧問のレイク・バレットは、ロイターの取材にたいして次のように語った。
 「現状を急に変えることは不可能だろう。日本の大企業が請負業者を使うことは100年の伝統がある。そしてそのように日本はやってきた。この福島で新しい仕事があるからといって、それを一晩で変えるのは無理だろう。だから、郷に入っては郷に従えだ。」
 ある業者に雇われたはずなのに、気がついてみたら別の業者の下で仕事をしていたという場合もある。裁判で労働者が訴えたのは、小さい部屋に押し込められ、毎日そまつな食事しか与えられなかっただけでなく、交通事故に遭ったとき[その企業が労災保険に入っていないことを隠すため]作業服を脱がされ、それぞれ別々の病院へ入れられたことだった。こうして、何の監督もなく権利侵害が横行していることにたいして告発が絶えないにもかかわらず、どの会社も罰せられていない。


http://rt.com/news/fukushima-workers-violations-yakuza-730/

 福島の労働者の権利を守るために活動しているグループの弁護士は、この事態を次のように説明している。「彼らは目をつけられるのを恐れている・・・。いったん目をつけられたら、どんな仕事にもありつけなくなる」。林の語ったような事例が、労働者の権利を擁護する団体―それがいま林が加わっている団体―の結成を促した。「仕事を失うのを恐れて労働者は事実を話さないだろうと、この体制で甘い汁を吸っている大手請負業は高をくくっている。だが日本はこの問題を永遠に無視し続けるわけにはいかない」とその弁護士は言った。
 原発事故とその後に起きた一連の不幸な出来事(一部は自然災害として起き、その他は人為的な誤りによって起きたものだが)の余波として、以上のような事実が次々と明らかになってきた。そして11月には、これまでに経験したことのない最も危険な廃炉・除染作業が予定されている。地上18メートルの高さにある冷却プールから、使用済み核燃料1300本を取り出す作業だ。この作業は、原発全作業員の正確で完璧な協同作業が要求される。コンピュータではなく手動で、1つ1つの燃料棒を引き出す作業だからだ。多くの燃料棒が斜めに傾いていたり、以前あった位置にはなかったりするので、いかなる失敗も許されない。燃料棒を動かす際に別の燃料棒にぶつかったりすれば[核の連鎖反応が起きて]チェルノブイリ以上の大惨事になりうる、とクリストファー・バズビー(欧州放射線リスク委員会、放射線による健康被害の専門家)は言っている。1300本の燃料棒から放出される放射性物質の総量は、広島に落とされた原爆をはるかに越える[広島型原爆14000個に相当する]からだ。


<註> なお上記の翻訳をPDF版にしたものは下記にあります。
*福島の内部告発者が明かす、「ヤクザ・暴力団とのつながり」「廃炉・除染労働者へのピンハネ」
http://www42.tok2.com/home/ieas/Fukushima_whistleblower.pdf
また、本文中にしばしば言及されているロイターの記事は、調べて見ると下記のものが見つかりました。
*福島第一原発作業員の現状「違法雇用」と「過酷労働」
http://www.huffingtonpost.jp/2013/10/27/fukushima-nuclear-power-plant-glow-boy_n_4167341.html?view=print
*焦点:福島原発汚染水、漏えいタンクに違法労働の影
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPTYE9B906720131210?sp=true
                                                              

関連記事

秘密保護法の参議院「強行採決」にあたって――「テロ国家アメリカ」(チョムスキーの言)を「国際標準」としたスパイ防止法は、国家の安全に役立たない

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国会前で抗議する1万5千人の大群衆
http://rt.com/news/japan-enacts-state-secrets-law-871/

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集会のようすや今後の活動については下記を御覧ください。
http://www.himituho.com/、http://www.labornetjp.org/、http://www.ourplanet-tv.org/

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 昨日(2013年12月6日)深夜、自民党と公明党は参議委員本会議で秘密保護法案を強行採決しました。日本の憲法が止まった歴史的瞬間でした。
 ヒトラー=ナチスがおこなった全権委任法で、当時、世界で最も民主的憲法と言われていたワイマール憲法が、一挙に死文化し、あっというまに民主国家ドイツが瓦解しました。
 その結果、ドイツ国内は監視国家となり、イタリアのムッソリーニと手を組んだナチスの全体主義が、ヨーロッパを席巻することになりました。アウシュビッツの悲劇もここから生まれたことは周知の事実です。
 スノーデン氏が暴露したように、いまアメリカも監視国家になりつつあります。その監視体制は、アメリカ国内のみならず、世界中の元首・企業・国民にまでおよんでいることも、スノーデン氏によって、日々、暴露されています。
 そして、この監視体制はオバマ氏が無人爆撃機Droneを使って、世界各地に宣戦布告なき戦争を拡大していることと併行しています。それは「無実の市民ひとりをDroneで殺すことによって40人の復讐に燃えたテロリストを生み出す」のですから(チョムスキーの言)、アメリカが監視体制を強化・拡大せざるをえなくなるのは当然とも言えます。
 いま日本は、このようなアメリカからの強い要請により特定秘密保護法を強行採決しました。「集団的自衛権を行使できる国にしろ」「そのためには秘密保護法が欠かせない」という強い要請です。こうして憲法9条をもったままでも、アメリカと一緒に軍事行動ができる国にする計画が出現したのでした。
 しかし、市民運動の旗手ラルフ・ネーダー氏が指摘しているように、今やアメリカは監視国家=アメリカ型ファシズム国家になっています。

American Fascism: Ralph Nader Decries How Big Business Has Taken Control of the U.S. Government
http://www.democracynow.org/2013/6/4/american_fascism_ralph_nader_decries_how

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警察官に囲まれてもひるまない女性たち

http://www.labornetjp.org/news/2013/1206shasin

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 今やアメリカは、元大統領アイゼンハワーが退職時の演説で警告した「軍産複合体」の国家、戦争で金儲けをする国、武器輸出で金儲けをする国になってしまっています。戦争をし続けないと経済を維持できない国になってしまっているのです。
 このようなアメリカと手を組んで、「集団的自衛権」を理由にした「戦争ができる国」にするということは、アメリカのおこなう戦争に、日本が自動的に巻き込まれることを意味します。
 したがって、この秘密保護法が可決されたということは、何度も言うように、9条をもつ平和憲法が死文化したということです。しかし逆にいえば、今後の闘い方によっては、彼らがやったと同じように、私たちが力を蓄えて議会の勢力比を逆転させれば、この秘密保護法を逆に死文化させることも可能だということをも意味します。
 秘密保護法の実質的行使をくい止め、憲法を生き返らせるために、今後は息の長い闘いを強いられるでしょう。しかし、安倍首相の祖父に当たる岸信介は、安保闘争という巨大な民衆運動のなかで辞職せざるを得なくなったわけですから、運動の作り方次第では、次の選挙を待たずとも安倍内閣を倒閣に追い込むことも可能だと言えるわけです。
 そのためには、この法案がどんなに恐ろしい法案であるかを、もっともっと具体的事実で明らかにする必要があるように思います。その一つの例が、南アフリカ共和国の元大統領ネルソン・マンデラ氏ではないでしょうか。
 マンデラ氏は、先日12月5日(木)、日本の国会が秘密保護法案をめぐって激しく揺れ動いている最中に、ヨハネスバーグの自宅で95歳の生涯を閉じました。今では民主化運動の旗手・英雄として世界中で賞賛されているマンデラ氏ですが、2008年6月に米国政府の監視リストから彼の名が削除されるまで、彼は「テロリスト」のままでした。
 これはアメリカの「愛国者法」「スパイ防止法」がいかに恣意的なものであり、いかにバカげたものであるかを示す典型例ではないでしょうか。しかも自分がテロリストのリストに載っているかどうかを知ることもできないし、そのリストから自分の名前を削除する方法もないのが、今のアメリカの実態です。
 下記の報道は、スタンフォード大学の博士課程に在学していた無実の学生が、娘を連れてマレーシアに一時帰国しようと飛行機に乗ろうとしていたところ、「監視リスト」に載っていたという理由で逮捕され、いまだに復学できずに8年間も裁判闘争を闘っていることを検証した論文と、それを報道した記事(New York Times、Democracy Now!)です。

“The Hidden Costs of Terrorist Watch Lists.” (Buffalo Law Review)
http://www.buffalolawreview.org/past_issues/61_3/Bernstein.pdf
"Who Is Watching the Watch Lists?" By Susan Stellin (NY Times)
http://www.nytimes.com/2013/12/01/sunday-review/who-is-watching-the-watch-lists.html?hp&rref=opinion
Watching the Watch List: Landmark Case Goes to Trial over Massive U.S. Terrorism "No-Fly" Database
http://www.democracynow.org/2013/12/2/watching_the_watch_list_landmark_case

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 安倍内閣は、こんなバカげた国のありようを「国際標準」であり、「国際社会」からの要請であるとして、日本版NSC(国家安全保障会議)と日本版スパイ防止法(=秘密保護法)をもうけようとしてきました。こんな国をモデルにした法律は、日本を戦前の「治安維持法」を復活した監視国家に連れ戻すことになるでしょう。
 なぜなら、このようにひどいアメリカでも、まだ情報公開法があり、大統領執務室の会話や電話すら、録音されていて将来は公開されることになっているのに、日本は情報公開法すらアメリカ並みになっていないのに、国民を監視する体制だけはアメリカ並みにしようとしているからです。
 しかし、当のアメリカは、こんな政策を続けようとしているオマバ氏を「羊の皮をかぶった狼」(映画監督オリバー・ストーンの言)として、鋭い批判の声が広がっていることは、前回のブログでも紹介したとおりです。
 何度も言いますが、アメリカの国家安全保障会議(NSC)、スパイ防止法(Espionage Act)、愛国者法(Patiot Act)などがアメリカの安全を保障するどころか、ますますアメリカのおこなっている汚い戦争(Dirty War)が復讐に燃えるテロリストを激増させていることは、有名な記者ジェレミー・スケイヒルの調査報道で見事に実証されています。

The World Is a Battlefield: Jeremy Scahill on "Dirty Wars" and Obama’s Expanding Drone Attacks
http://www.democracynow.org/2013/4/24/the_world_is_a_battlefield_jeremy
Video: Jeremy Scahill & Noam Chomsky on Secret U.S. Dirty Wars From Yemen to Pakistan to Laos
http://www.democracynow.org/blog/2013/5/23/video_jeremy_scahill_noam_chomsky_on_secret_us_dirty_wars_from_laos_to_yemen_to_pakistan


<註> NY Timesは、秘密保護法案が強行採決された12月6日付けで、下記のような論説を載せました。
*「1941年12月7日、あの日の残滓」
Dec. 7, 1941: The Remains of That Day

http://www.nytimes.com/2013/12/07/opinion/dec-7-1941-the-remains-of-that-day.html
 題名の「あの日」とは、日本が真珠湾を爆撃した1941年12月7日(日本時間では12月8日)です。選(よ)りにも選って、日本が敗戦の道を開始した日の前日、12月6日に、しかもA級戦犯・岸信介の孫が、戦前の「治安維持法」を復活させるかのような「特定秘密保護法」を強引に通したのですから、論説者の目からしても、安倍氏はまさに「あの日の残滓」と映ったのでしょう。

────────────────────────────────────────
 私たちは「テロ国家アメリカ」(チョムスキーの言)を模範にするのではなく、「占拠運動」 Occupy Movement が燎原の火の如く広がっていったアメリカを模範にして、一刻も早く、秘密保護法の撤廃を実現させねばなりません。
 その意味では、強行採決された翌日に、若者たちによって早くも次のような提案がされていることを知り、大きな驚きと大きな希望を抱いています。その企画の多彩さ見事さ躍動感に感動しました。
 *「大デモ」代々木公園ケヤキ並木
2013年12月7日(土)、集会 11:00〜12:30/大デモ 12:30〜15:00、
http://bigdemo.jp/#

 また「秘密保護法を廃案へ!実行委員会」の弁護士・海渡雄一氏は、強行採決された直後の7日未明に[連日の活動で疲労困憊しているはずなのに]、次のような、力強く希望に満ちた声明を発表しています。
 *「バーナムの森は動いた、
秘密保護法強行採決は安倍政権の終わりの始まりだ!」

http://www.himituho.com/
 私は大いなる感動を持って「バーナムの森は動いた」(シェークスピア『マクベス』)「終わりの始まり」(イギリス元首相チャーチル)の声明文を読みました。皆さんも是非ご一読ください。                              
 
関連記事

国際社会は法案の「根本的修正」を求めている(2)――国連人権高等弁務官からの訴え、ニューヨークタイムズ「秘密法案は戦後の平和主義から日本を遠ざける」

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秘密保護法反対のキャンドル行動、12月2日午後6時半から参議院議員会館前

http://www.labornetjp.org/news/2013/1202hokoku
開始30分ほど前から、歩道を参加者が埋め始め、開始時には400人を超え、7時には用意したキャンドル50本、ペンライト500本が出払い、最終的には1500人が集まる大行動となった。

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事態は緊迫しています。今後の緊急行動については下記HPを御覧ください。
http://www.himituho.com/
http://www.labornetjp.org/

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前回のブログでは、安倍内閣が「特定秘密保護法は国際社会の要請である」と言っているにもかかわらず、その「国際社会」から聞こえてくるのは、「廃案」また「根本的修正」ばかりだということを、下記のように、幾つもの事例で紹介しました。

*アメリカ政府元高官ハルペリン氏【秘密保護法案、国際基準を逸脱】
http://www.47news.jp/47topics/e/247843.php(2013年11月23日、共同)
*国連人権理事会の特別報告者の二人特定秘密保護法案に強い懸念
http://www.un.org/apps/news/story.asp/html/story.asp?NewsID=46560&Cr=japan&Cr1=#.Upfweycw_P9(2013年11月22日)、以下、省略

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この国際社会からの強い懸念、法案の廃案または根本的見直しを要請する声は、弱まるどころか、ますます強くなっています。たとえば【共同通信】は昨日(2013/12/03)、次のような記事を配信しました。

日本の特定秘密保護法案に懸念 国連人権高等弁務官
http://www.47news.jp/CN/201312/CN2013120201002702.html

【ジュネーブ共同】国連のピレイ人権高等弁務官は2日の記者会見で、日本の特定秘密保護法案について「『秘密』の定義が十分明確ではなく、政府が不都合な情報を秘密扱いする可能性がある」と懸念を表明した。

ピレイ氏は「日本の憲法や国際人権法が定める情報へのアクセス権や表現の自由に対する適切な保護規定を設けずに、法整備を急ぐべきではない」と指摘。「政府と立法府に対し、国内外の懸念に耳を傾けるよう促す」と述べた。


────────────────────────────────────────
先に社説で、この法案に強い疑念を提示していたNew York Timesも、同法案が衆議院で強行採決された翌日(11月28日)、巨大な写真入りで、次のような記事を載せました。

「秘密法案は、戦後の平和主義から日本を遠ざける恐れ」
Secrecy Bill Could Distance Japan From Its Postwar Pacifism
http://www.nytimes.com/2013/11/29/world/asia/secrecy-bill-could-distance-japan-from-its-postwar-pacifism.html?pagewanted=1&ref=asia&_r=0

ところがNHKは、声を上げて強行採決に抗議する傍聴者を強制的に排除するようすが映像に残らないようにするためでしょうか、審議を終えていよいよ強行採決する直前に放送を打ち切ってしまったのです。

NHKは公営放送であり、国民の税金と視聴者から集めた視聴料で運営されているのですから、審議の一部始終を国民に知らせる義務があるはずです。このような放送の仕方は「特定秘密保護法」のあり方を先取りするものと批判されても仕方がないのではないでしょうか。

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強行採決に抗議する傍聴者を排除する警備職員

Toru Hanai/Reuters、A protester was removed by security officers after Japan's lower house of Parliament passed a national secrets act on Tuesday.
http://www.nytimes.com/2013/11/29/world/asia/secrecy-bill-could-distance-japan-from-its-postwar-pacifism.html?pagewanted=1&ref=asia&_r=0

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以下ではNew York Timesの記事で私の目にとまった箇所を訳出しながら、若干のコメントを付けくわえたいと思います。記事は次のような書き出しで始まっています。

多くの人たちが街頭で表明している怒りや、民主主義の死を予言する一流紙の社説を、掃き捨てるかのように無視して、日本の保守的総理大臣安倍晋三氏は、いよいよ立法議案の最重要議題に王手をかけたようだ。戦後の国家をかたちづくってきた日本の平和主義を戦前に巻き戻そうとする国家機密法を、この国会で通そうとしているのだ。

Brushing past angry street protests and apocalyptic editorials in leading newspapers, Japan's conservative prime minister, Shinzo Abe, appears set to achieve one of the first items on his legislative agenda to roll back his nation's postwar pacifism: passing a national secrets law.


上記でNYタイムズ紙は、この法案を、「日本を戦前に巻き戻そうとする」ものだとしていることに注目していただきたいと思います。日本の大手新聞が今まで遠慮して言わなかったことを、NYタイムズ紙が明言しているのです。

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しかし(雷が避雷針を通って地上に落下するように)この国家機密法が国民の頭脳に衝撃波を送ることになったとタイムズ紙は述べています。この法案が強大な権力をもつ官僚に何が秘密かを決める権限を与えるからです。

しかし,この秘密法は反対する人たちにとって避雷針を流れる衝撃波となった。報道関係者や大学の研究者の多くは、この法案が強大な権力をもつ官僚に何が秘密かを決める一切の裁量権を与えることになりかねないと言う。それは同時に、今まででさえ不透明で有名だった政府に、いっそうの情報隠しを許すことになるからだ。

この法案が政府による権力の乱用を招きかねないと彼らは警告している。なかには、この法案を戦前の恐ろしい取締法[治安維持法]になぞらえるひともいる。治安維持法は、言論の自由をきびしく取り締まり、結局は軍部が日本を第2次世界大戦に引きずり込むことを許すことになったからだ。

But the secrecy bill has quickly become a lightning rod for opponents, many in the news media and at universities, who fear that it gives too much discretion to the nation's powerful bureaucrats to decide what is a state secret and allows a famously opaque government to provide even less information to the public.

Many have warned that the bill could lead to abuses of power by the government, and some critics have gone so far as to compare it to much more draconian prewar laws that placed severe restrictions on speech, and ultimately allowed the military to drag Japan into World War II.


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またタイムズ紙は、この秘密法がアメリカからの要請によるものであること、また学者のなかには「この法案により機密保護がアメリカのレベルになった」と言うものもいることを、次のように紹介しています。

今週の議会で安倍氏は、この法案が機密情報の扱いを強化することに役立つだけでなく、アメリカからの要請があったことに答えるものだと述べた。防衛上の秘密をめぐって[毎日新聞の西山記者による]漏洩事件などいろいろな問題が起きたからだ、という。

「これでやっと日本も機密の扱いがアメリカ並みになった」と東京大学(情報法)の長谷部恭男(やすお)教授は述べている。[訳註:タイムズ紙は長谷部氏の専門を「情報法」としているが、専門は「憲法」である。]

In Parliament this week, Mr. Abe said the bill was needed to help Japan strengthen its management of classified information, something he said the United States has asked Japan to do after scandals here over leaked or mishandled security secrets.

“I think this just brings Japan up to the levels of secrecy management of the United States,” said Yasuo Hasebe, a professor of information law at the University of Tokyo.


日本の大手メディアでは、日本がアメリカの属国になって、言われたとおりに行動していることを指摘するのにためらいがみられますが、NYタイムズ紙は意外と簡単にそれを暴露しています。中国包囲網を当然視しているから、その一貫として日本もそれに協力すべきだと考えているからでしょうか。

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それにしても東大教授がまたもや安倍内閣を援護射撃しているのを見ると、原発事故の時と同じく、「東京大学はやはり御用学者の巣窟か!?」という思いが強くなります。これでは東大卒であるひとたちは、恥ずかしくなってその肩書きを返上したくなるのではないでしょうか。

アメリカ政府の悪事を内部告発して告訴・投獄された政府高官がオバマ政権になってから激増していることを知っていて、長谷部氏は、このような発言をしているのでしょうか。知らないで発言しているのであればその無知を恥ずべきだし、知っていて発言しているのであれば悪辣の極みです。

オバマ氏が機密保護法=スパイ防止法を利用して告訴した人数は、それ以前の大統領によるものをすべて合計しても、その2倍を超えるのですから。またオバマ氏が無人爆撃機Droneを使って主権侵害の殺人行為(これは宣戦布告なしの戦争行為に等しい)はパキスタン、アフガニスタンを越えて、イエメンやソマリアまでにおよんでいます。

ですから、「テロ国家アメリカ」(チョムスキーの言)の要請にしたがって日本版NSCとセットで日本版スパイ防止法(=特定秘密保護法)をもうけ、アメリカと一緒になって「集団的自衛権」を行使するということは、アメリカが世界に撒き散らしているテロ行為=戦争に日本も巻き込まれることを意味します。

それどころか、アメリカが世界に撒き散らしているテロ行為の恨みを買って、日本もテロ攻撃の対象になるということです。なぜなら前回のブログでも書きましたが、「Droneで無実の民衆ひとりを殺すたびに、復讐の念に燃えた40人のテロリストが生まれる」(チョムスキーいわく)からです。 

ですから本当にテロ行為から日本を守りたいのであれば、日本をアメリカ並みの「普通の国」にしないことです。日本が憲法9条を掲げて平和外交に徹するかぎり、日本が攻撃される原因・理由は決して湧いてきません。また原発がテロ攻撃の対象になる恐れがあるのであれば、廃炉にするのが最良の国防政策になるでしょう。

(ただしアメリカ並みに武器輸出をしい勢力にとっては、意図的に紛争の種を周辺に撒き散らし、国民の危機感を煽りながら、国内の軍事産業を肥え太らせていくでしょう。そして集団的自衛権を行使できる国にしたいアメリカは、日本のこの動きを裏で支援することは間違いありません。)


ついに日本弁護士連合会まで「街頭宣伝」に立ち上がった!

http://www.labornetjp.org/news/2013/1385884402349staff01

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ところでNew York Timesの記事は次のような文章で終わっています。

しかし[アメリカ並みになりたいと言って]アメリカを模倣することは、まさに問題の上塗りだ、と多くの識者は指摘する。アメリカや他の国々が秘密をもっと減らして国家の透明性を高めたいという動きを押し進めているときに、よりにもよって、こんな法案を通そうとするのだから。

NSA(国家安全保障局)の契約職員だったエドワード・J・スノーデンのことにふれながら、上智大学の田島教授は次のように述べた。「スノーデンによる悪事の暴露はアメリカ国内の成人に自国の政策にたいする再考をうながした」「ところが今この日本ではまったく逆の方向に走り出している」

But imitating the United States is exactly the problem, many critics say, arguing that Japan should not pass such a bill when the United States and other nations are pushing for less secrecy from their own governments.

“The Snowden disclosures caused a major rethink in the United States,” said Mr. Tajima, the Sophia University professor, referring to the former National Security Agency contractor Edward J. Snowden.“And now here comes Japan, running in the wrong direction.”


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アメリカが五つの同盟国(Five Eyes)を道連れにして世界中の元首・市民・企業を盗聴していることが、スノーデンによって暴露され、今やオバマ大統領=アメリカ政府の権威は地に落ちつつあります。

映画『JFK』で有名になった映画監督オリバー・ストーンでさえ、「オバマ氏は羊の皮をかぶった狼だ」と評して話題を呼びましたが、この言い方を借りれば、「安倍氏は鼻の下に髭のないヒトラーだ」とでも言うべきでしょうか。

そう言えば、麻生副総理も「日本だってナチスの手口に学んだら」と発言していましたが、今度は自民党の石破茂幹事長がこの法案に反対する市民の抗議行動を「テロ行為と変わらない」とブログに書きみ、これに対して強い怒りの声が上がっています。
http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/1693

デモや集会における音楽やシュプレヒコールを「テロ行為」だと言うのですから、この法案が通過したらどのような社会になるか、それを石破発言は暗示しているのではないでしょうか。
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Author:狐狸庵居士(田舎の国立大学を2010年に定年退職)

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