ウクライナ情勢の読み方(7)-ショック・ドクトリン&エコノミック・ヒットマン: EUとの提携でウクライナの未来は開けるか

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 最近のウクライナ情勢は、ますます緊迫の度合いを強めています。キエフの暫定政権から極右の武装集団を含めた政府軍が東ウクライナに派遣され、すでに死者まで出る事態になっているからです。
 そこで今回のブログでは、そもそもこの紛争は何が発端だったのを調べてきたいと思います。それはNさんが提起した次の問題(それにたいして私が投げかけた次の質問)に答えることにもなると思います。
>そのような厳しい状況の中でウクライナの変革に起ち上がった進歩的民衆の動向がきになるところですが、ロシアによるクリミア併合は、そのような 対立をクリミアでもそしてウクライナでも煽ることになるだけだと思います。
Q: 「ウクライナの変革に起ち上がった進歩的民衆」とありますが、かれらが「進歩的民衆」だという根拠はどこにあるのでしょうか。

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 大手メディアの報道を読んでいる限りでは、今回の問題は「前大統領ヤヌコービッチが、EUとの協定を撤回してロシアとの提携を深めようとした」「そのことにたいする民衆の反乱が起きた」といった論調が主流を占めているように見えます。
 しかし果たしてそうなのでしょうか。このことを検証するためには、ウクライナの経済状態や「民衆反乱」の経過を調べて見る必要があります。というのは、EUと提携すればウクライナ民衆の生活は豊かになれる可能性があったのかという大きな疑問が残っているからです。
 この点でも前回のブログでも紹介した小手川大助氏の論考「ウクライナ問題について、その2」が極めて興味ある論点を提示していますので、それを以下に紹介しつつ私見を述べることにします。

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 さて、ウクライナは1991年にソ連邦が崩壊したあと独立国になったのですが、経済危機をのりこえるためIMFから借金せざるをえず、その交換条件として「規制緩和」「民営化」「社会福祉の水準の引き下げ」「住宅や公共料金に対する補助金の廃止」という要求を呑まざるを得ませんでした。
 それから20年以上も経ったのですが、ウクライナ経済はよくなったのでしょうか。この点について、独立当時と約20年後を比較して小手川氏は次のような数値をあげています。ご覧のとおり結果は惨憺たるものです。
人口12%600万人減 (5,200万→4,600万)、国内居住人口25%減(5,200万→3,900万)
GDP 32%減 (GDPの世界シェア2% → 0.2%)
ひとり当たりGDP 51%減 (世界平均の+11% → 世界平均の-40%)
電力生産35%減 (トラクター95%減、金属工作機械99%減)
国立科学アカデミーの従業員数50%減(科学者総数70%減、産業関連研究所総数90%減)
雇用者総数1,200万人減
対外借入れ245億ドル増(GDP比率80%)
平均寿命71歳 → 68.8歳(男性は62歳)
年金受給年齢55歳 → 60歳
http://www.canon-igs.org/column/network/20140410_2494.html

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 ソ連邦が崩壊してロシアが資本主義経済に移行したとき、やはり深刻な経済危機に陥り、それを立て直すと称して、やはりIMF資金を導入して極端な「規制緩和」「民営化」を強行しました。
 その結果、深刻な生活難がロシア全土に浸透し、大量の路上生活者と自殺者を産みだしました。これはポーランドでも同じでした。このことは、ナオミ・クライン『ショックドクトリン:惨事便乗型資本主義の正体を暴く』で詳しく述べられています。
 つまり元シカゴ大学教授ミルトン・フリードマンの主張する「新自由主義」「市場原理主義」を取り入れた結果、かつての社会主義経済よりもはるかに民衆の生活は悪くなったのです。むき出しの「弱肉強食」経済に入ったのですから当然のことでした。同じことがウクライナでも起きたのでした。
 ウクライナでは2004年にいわゆる「オレンジ革命」が起きたのですが、これは親露派だと目されていたヤヌコーヴィチ大統領を追い落とすための、「アメリカ民主主義基金」が資金を提供し、NGOを隠れ蓑にした一種の政権転覆工作だったことは、以前のブログで紹介しました。
 しかし、この「オレンジ革命」はウクライナ経済を立て直すのに何の効果もありませんでした。そもそも「市場原理主義」で庶民の生活はよくなるはずもなく、その結果として、一度は「革命」によって大統領になり損なったヤヌコーヴィチが、2010年の大統領選挙では大統領に返り咲くという、皮肉な結果になりました。
 ウクライナといえばチェルノブイリ原発事故(1986)が起きたところですから、平均寿命が60歳代に落ち込んだことは、放射能の影響もあるでしょうが、経済危機・生活難が寿命を縮めていることも確かでしょう。
 雇用者総数1,200万人減、対外借入れ245億ドル増、ひとり当たりGDP 51%減、電力生産35%減 (トラクター95%減、金属工作機械99%減)など、上記の統計数値が示すもの。それが「オレンジ革命」「ショック・ドクトリン」の成果だったのです。

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<註> NED(アメリカ民主主義基金)については、詳しくは下記を参照ください。
http://pub.ne.jp/tacktaka/?entry_id=5247034
また次のような記事があることも発見しました。
「アメリカとEUが反乱者に金を与えている」
US and EU Are Paying Ukrainian Rioters and Protesters

http://www.activistpost.com/2014/02/us-and-eu-are-paying-ukrainian-rioters.html#bPqusuc4lqOwlO61.03


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 さて以上のような悲惨な経済状況のもとでヤヌコーヴィチ大統領に提案されたのがEUとの提携協定でした。小手川氏は、「しかしながら、この協定は以下の通り、経済的には悲惨なものとなることが予想されていた」として次の三つを事実を列挙しています。
(1)第1に注意しておくべきことは、ウクライナはEUの正式なメンバーになることを一度も提案されていないということである。将来を考えてもそのような提案がされることは考えにくい。

(2)第2に、提携協定の署名に伴い、ウクライナの製品の72%について、即座に輸入関税が廃止されるということである。この結果、競争力の乏しいウクライナの産業は、最後に残った東ウクライナの国営企業を含め、壊滅的な打撃を受けることが確実である。ウクライナ科学アカデミーはEUの基準に合致するために、ウクライナは1600億ユーロのコストをかける必要があると試算しているが、この額はウクライナの年間予算の4年分に相当する数字である。

(3)第3に、ウクライナの貿易の60%以上はロシアなどの旧ソ連邦諸国であり、特にロシアはウクライナの輸出の26%、輸入の32%(相当部分が天然ガスの輸入)を占める。ウクライナが提携協定に署名すれば、ロシアはウクライナ経由でEUの製品が自国に流れ込んでくることを防ぐため、ウクライナからの輸入に対し関税をかけることが予想され、結果的にウクライナの工業製品は主要な輸出先を失う一方、競争力がないためにEUには輸出できないという事態が予想された。

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 元大蔵官僚、元IMF理事だった小手川氏が、「ウクライナはEUと手をつないでも未来は悲惨だ」と述べつつ、上記のような事実を述べていることに注目してください。いわば体制側の人物でさえ、このようなことをはっ利明言しているのです。
 かつて世界銀行(World Bank)の副総裁でノーベル経済学賞を受けたジョセフ・スティグリッツは、『世界を不幸にしたグローバリズムの正体』(徳間書店、2002年)のなかでIMFを痛烈に批判しましたが、小手川氏も、自分の体験からIMFの政策に疑問を持ち始めたのでしょうか。
 それはともかく、EUと提携してもウクライナ経済が好転するどころか悪化する恐れさえあることに、ヤヌコービッチは気づいたのでしょう。その結果やはりロシアとの提携も必要ではないかと思い始めたようです。
 その結果、ロシア大統領プーチンとヤヌコービッチ大統領の会見になったわけですが、このかんの経過を小手川氏は、上記「ウクライナについて、その2」で、次のようにまとめています。
昨年秋にプーチン大統領がヤヌコーヴィチ大統領に会った際に、ウクライナがEUとの提携協定を諦めれば、ロシアは年間150億ドルの資金援助と天然ガスの2割引きという恩恵を与えると約束した。これを聞いたヤヌコーヴィチはEUに対し、EUが毎年150億ドルの資金援助を毎年続けてくれれば提携協定に署名するが、そうでなければ提携協定を諦めて、ロシアとの関税同盟を継続すると提案した。経済状況がひっ迫しているEUは資金援助を行えなかった。その結果、ヤヌコーヴィチは提携協定署名の見送りを11月に発表したわけである。

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 大手メディアでは、ヤヌコービッチ大統領が親ロシア派の人物だからEUを裏切ってプーチンの下へ走り、それにたいして民衆が怒りをもって立ち上がったのが今度の政変であったかのように報道されています。
 しかし、元財務相官僚・元IMF理事であった小手川氏が上記のように述べているのですから、いかに大手メディアが嘘をバラ捲いているかがよく分かるのではないでしょうか。
 ヤヌコービッチ大統領はウクライナ経済の壊滅的状況を前にして、最初はEUと手を握ったりEUに加盟できさえすれば経済は好転すると考えたのかも知れません。しかし調べれば調べるほど、それほど事態は甘くないことを知ったはずです。それはEU加盟国の現状を見れば歴然としているからです。
 ギリシャを筆頭に、イタリア、スペイン、ポルトガルなどは、EU加盟国であるにもかかわらず経済危機から一向に脱却できず、高い失業率が続いています。EUやIMFから資金援助があっても「緊縮政策」を押しつけられ、賃金・年金・医療など社会福祉をすべて削ることが前提になっていますから、庶民の暮らしは悪くなる一方です。
 しかし、EUの現状を知らない一般民衆は、ヤヌコービッチ大統領の裏切りで自分たちの明るい未来が破壊されたと思ったのでしょう。
 というよりも、以前のブログでも紹介したように、元CIA高官マクガバン氏によれば、ウクライナではNED(アメリカ民主主義基金)による莫大な資金でNGOを装った62のプロジェクトが進行していたそうですから、それによって民衆が扇動されたと考えた方が正しいでしょう。

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<註> チョムスキーは「IMFはアメリカ政府の別動部隊である」と述べ、このIMFやEUが各国に押しつけている「緊縮財政」の本当の狙いは、「各国財政の立直し」ではなく別のところにあると鋭く指摘しています。下記論考を参照ください。
チョムスキー「ヨーロッパ福祉国家の解体」
http://www42.tok2.com/home/ieas/Chomsky20121223UnravelingWelfareState.PDF

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 こうして、小手川氏の「ウクライナについて、その1」によれば、事態は大略つぎのように推移しました。
2013年
11月21日 ヤヌコーヴィチ大統領がEUとの提携協定への署名を撤回することを表明。これに対する反対運動が開始(当初は平和的)。
11月30日 反対運動が暴力化。キエフ市長官邸が占拠される。
2014年
2月21日 ウクライナ政府と野党、EUの代表(独、仏、ポーランドの外相)が危機解決に関する協定に調印。
2月22日 デモの最中に警官とデモ隊29名が射殺される。その後群衆が国会を占拠。国会がヤヌコーヴィチ大統領の解任を決議。

 上記の記録を見ると、2013年11月30日に時点で、すでに反対運動が暴力化していることが分かります。ニュース映像を見ていても火焔瓶を警官隊に投げ込んでいるようすや警官が滅多打ちにされている映像もあります。

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 リビアのカダフィ政権、シリアのアサド政権にたいする反対運動のときもそうでしたが、最初は平和的なデモだったものが、いつのまにか抗議運動の一角を占めていた過激派グループ(アルカイダやイスラム原理主義)によって主導権を奪われ、ついには武装したグループによる内戦になってしまいました。
 しかも、これらの過激派グループをアメリカやNATOが支援しましたから、カダフィ大佐は惨殺され政権は崩壊しましたし、シリアはいまだに内戦が終わりません。それと同じことが今ウクライナでも起きつつあるわけです。
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 ウクライナの場合は、イスラム過激派ではなく、極右勢力とネオナチ勢力が暴力行為の戦闘に立っています。この勢力については以前のブログで私は次のように註記しました。
ウクライナにおけるファシストたちへの支持は激増している。2006年の選挙では、ファシスト党であるスボボダ(Svoboda)は0.36%の得票だったが、2012年には10.45%の支持を得て、議会450議席のうち37議席を占める、第4政党に成長した。2月の始めにおこなわれた世論調査では、現大統領(Yanukovych)の対抗してチャーニボク(Tyahnybok)が立候補すれば彼に投票すると54%が答えている(この世論調査は、ヤヌコービッチが引きずり下ろされる3週間前におこなわれた)。このウクライナの右傾化をアメリカが裏で促進しているのだ。貧困化が右傾化をさらに促進させる。日本の右傾化も同じだ。

 ヨーロッパでは「緊縮政策」の結果、貧困が蔓延し、それが右派勢力・ネオナチを伸張させる大きな要因になっています。その典型例がフランスです。せんだっての地方選挙でも極右政党「国民戦線」が各地で大きく躍進し、右派勢力の合計は、およそ46%の得票となりました。

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<註> ウクライナの右傾化については下記を参照ください。
翻訳:Dr. Roberts「オバマ政権の偽善は、史上空前の記録をつくる」
http://www42.tok2.com/home/ieas/Obama%27sHypocricy.pdf

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ドキュメント「チャベス政権, クーデターの裏側」

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 さて、こうしてウクライナでは、時間が経てば経つほど、ヤヌコービッチ政権にたいする反対運動は非常に危険な様相を呈してきました。
 そこでウクライナ政府と野党、EUの代表(独、仏、ポーランドの外相)は、2014年2月21日に、危機解決に関する協定に調印しました。これにはロシアの代表も参加しています。
 この調印について小手川氏は、先に紹介した「ウクライナについて、その1」で、次のように簡潔にまとめています。
(1) 2月21日から22日にかけて何が起こったのか。
 2月21日の合意は、上記のようなメンバーで行われたのである(ロシア代表も出席)が、米国の代表は招かれていないことから、この合意が欧州とロシアの間で行われたことが見て取れる。合意の主要な内容は以下の通りであり外交的解決を図ったものであった。
 ① 2015年に予定されていた大統領選挙を前倒しして2014年12月に行う。
 ② 2004年憲法に復帰し、大統領制から議院内閣制にシフトするべく、憲法改正を行う。
 ③ 入獄していたティモシェンコ前首相の釈放。
 ④ 暴力行為の禁止(警官側も、反対デモ側も)。

(2) この合意は12時間と持たなかった。翌朝、独立広場に集まっていた反対派に対して狙撃が始まり数多くの人が殺害された。デモ隊は銃器も含めた暴力を行使したが、警官隊は21日の合意を守って暴力行為を控えたために、議会が反対派に占拠され、上記合意を行った反対派の一人であったクリチコは同意から身を引き、ヤヌコーヴィチは逃亡した。このような議会の群衆による占拠は狙撃に端を発したものであり、そこで、狙撃を誰が行ったかが重要になるのであるが、この点についての情報を与えてくれているのが上記のエストニア外相とアシュトン外相との会話である。

(3) 混乱の中で議会はヤヌコーヴィチ大統領を罷免し、大統領代理を任命するとともに、数日後にはヌーランド局長が電話の中で一番押していたヤチェヌーク氏が選ばれた。これは、国会を大統領制の上に位置付けるものであり、大統領制を規定したウクライナの憲法に反するものである。本来ならば、憲法に規定されている詳細な手続きをとって国の根幹に関する制度の変更が行われるべきものであったが、今回はそのような手続きを経ずに行われた。憲法には大統領弾劾の手続きが決められていたが、今回の罷免の手続きはこれに反したものであった。このほかにも暴力活動や政府の建物の破壊を行ったデモ隊メンバーへの恩赦や、内務省、安全保障省、検察庁の監督者を任命するなどの越権行為を行っている。

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 以下、順番に上記(1)~(3)について私見を述べていきたいと思います。
 まず(1)ですが、これを読んでいると,アメリカがこの交渉に参加していないことが分かります。またもう一つ大切なことは大統領選挙を前倒しして「2014年12月に行う」としていることです。
 恐らくアメリカはこれに激怒したことでしょう。というのはウクライナを「改革」するために50億ドルという大金をはたいて工作してきたにもかかわらず(これは国務副長官ヌーランド女史がナショナル・プレス・クラブでみずから公言している)、選挙がおこなわれれば再び親露派大統領が当選する可能性が十分にあるからです。
 しかしEUにしてみれば、もともと紛争の原因はウクライナがEUと経済協定するかどうかにあったわけですから、いちいちアメリカに相談するいわれはないはずです。
 ましてドイツ首相メルケルを初めてとしてEU首脳がアメリカNSA(国家安全保障局)によって盗聴されていることが暴露されているのですから、アメリカにたいする反発もあったでしょう。
 とはいえ、このままではウクライナを不安定化させて政権転覆にもっていくことはできません。そこへ具合のいことに2月22日の事件がおきました。そして,この狙撃事件のおかげでヤヌコービッチ大統領を放逐することができました。
 
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 そこで問題になるのが、誰がこの狙撃行為をおこなったかということです。
 これについて小手川氏は上記(2)で、「この点についての情報を与えてくれているのが上記のエストニア外相とアシュトン外相との会話である」と述べているのですが、氏のいう「エストニア外相とアシュトン外相との会話」とは次のような事実を指しています。
 盗聴されて3月5日にユーチューブにリークされたキャサリン・アシュトンEU外務大臣とウルマス・パエト エストニア外務大臣の電話でのやりとりである。
 (これは2014年3月17日現在、視聴可能である。エストニア外務省は、本件の漏洩された会話が正確なものであることを確認している。)
 この会話はエストニアの外務大臣がキエフ訪問から帰還した2月26日に行われたものであるが、エストニア外務大臣は22日の射撃について、市民と警官を狙撃したのはヤヌコーヴィチ政権の関係者ではなく、反対運動の側が挑発行動として起こしたものである、ということをアシュトン大臣に告げている。
 パエト大臣は全ての証拠がこれを証明しており、特にキエフの女性の医師は大臣に対し、狙撃に使われた弾丸が同じタイプのものであるということを写真で示したということである。大臣は新政権が、何が本当に起こったのかということについて調査をしようとしていないことは極めて問題であるとしている。
 

(以上は、同じく氏の「ウクライナについて、その1」からの引用です)

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 上記で小手川氏は、狙撃事件は「ヤヌコーヴィチ政権の関係者ではなく、反対運動の側が挑発行動として起こしたものである」としか述べていません。
 しかし、かつて2002年4月11日に、ベネズエラでチャベス大統領を追放するクーデターが起きたときも狙撃事件がきっかけでした。
 今では、この事件は当時のアメリカおよびエル・サルバドールの右翼政権が陰謀を支援したことが、明らかにされています。
 というのは、このチャベス政権クーデターについては、偶然その場に居合わせたアイルランドの映像記者がその一部始終を記録し、数々のドキュメンタリー賞を受けたものがあるからです。
 (これは2003年11月22日のNHK・BSプライムタイム「チャベス政権 クーデターの裏側」で放映されました。今や国営放送と化したNHKではなかなか考えられないことです)。
 そのことを考えると、今回の狙撃事件も同じことが起きた可能性が十分にあります。

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 というのは、『エコノミック・ヒットマン: 途上国を食い物にするアメリカ』(東洋経済新報社、2007)を著したジョン・パーキンスによれば、外交的手段が失敗したら次はジャッカル[狙撃手、スナイパー]の出番だ」とはっきり述べているからです。
 彼は「エコノミック・ヒットマン」を生涯の仕事にしてきた人物です。
 すなわち一流コンサルティング会社のチーフエコノミストとして、「石油をはじめ豊富な資源を持つ途上国の指導者に対して、IMFやWB世界銀行の融資を受けて国家を近代化すれば飛躍的な経済成長を達成できると言葉巧みにもちかけ、その国に巨額の債務を負わせる」ことが彼の仕事でした。
 その彼が、「エコノミック・ヒットマン」として政府指導者の説得・だましに失敗したら「次はジャッカルの出番だ」と言っているのです。
 ウクライナにはアメリカの傭兵集団Blackwater(現在名はGreystone)が入り込んでいるという報道もありますから、彼らがジャッカルの役割を担った可能性もあります。
http://rt.com/news/ukraine-military-mercenaries-buildup-013/

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<註> アメリカの傭兵集団Blackwaterについては、ジェレミー・スケイヒル(Jeremy Schahill)の有名な著書『Blackwater: The Rise of the World's Most Powerful Mercenary Army』があります。残念ながら邦訳はまだ出ていないようです。

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 その真否はともかく、アメリカはヌーランドの描いた筋書きどおりヤチェーヌクをウクライナ暫定政権トップの座にすわらせることに成功しました。では、新政権の誕生で、ウクライナ経済はうまくいくのでしょうか。
 上記『エコノミック・ヒットマン』の「訳者あとがき」には次のようなことが述べられています。
じつのところ[WBやIMFによって] 融資された金は巨大なインフラ建設を受注するベクテルやハリバートンなどの米企業と、現地の利権を握っているほんの一部の富裕なエリート層の懐へと流れる。庶民の暮らしはまったく良くならない。それどころか、債務はとうてい返済できず、貧しい者はさらに貧しくなる。さらに、債務国の政府は負債の罠に絡めとられて、天然資源や国連の議決権を奪われたり、米軍基地の設置を強いられたりすることになる。グローバル化が進む現代では、エコノミック・ヒットマンの活動は質量ともに驚くべき次元に到達しているという。まったく恐ろしいからくりだ。

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 いまヨーロッパでも同じことが起きています。ギリシャではパンテオン神殿があることで有名な国立公園でさえ外国資本に売り渡される可能性がある、という話さえ耳にしました。
 だとすればウクライナがEUやIMFから資金援助を受けたとしても未来が好転する可能性は極めて少ないでしょう。事実、小手川氏も「ウクライナについて、その2」で次のように書いているのです。
 新政権の誕生により、ロシアがウクライナに約束した150億ドルについては、1回目の支払いである30億ドルが行われただけで停止した。
 また天然ガスの2割引きも反故となり、逆に2割増しの価格をロシアはウクライナ新政権に提示している。
 これに対し、EUが新政権に提示した援助額は5億ドルに過ぎない。また米国は10億ドルの支援を下院が決定したが、これは政府保証だけで現金ではない。
 IMFが150億ドルの支援を準備しているが、当然これには、給与や年金削減といった厳しい条件が付いてくるものと思われる。
 このような厳しい状況でウクライナ経済が持つかどうか、また新政権が一般の支持を継続できるかどうか、極めて疑問である。


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 今回のブログ冒頭で私は、「"ウクライナの変革に起ち上がった進歩的民衆" とありますが、かれらが "進歩的民衆" だという根拠はどこにあるのでしょうか」という問を投げかけました。
 しかし、今まで述べてきたことを読んでいただければ、この問いにたいする答えは明らかでしょう。
 その証拠に、新政府の大臣ポストにいわゆる「ネオナチ」として知られていた「スボボダ」などの極右の党の幹部が次々に任命されています。たとえば副首相、農業大臣、環境大臣、教育大臣、スポーツ大臣、国家安全保障及び国防会議議長が極右の人物で占められているのです。
 そのうえ新政府の代表者たちは、2月23日に、「ウクライナ民族社会」の設立を発表し、「ロシア語を使用する者は全て、ウクライナ民族社会の正当な権利を有するメンバーという地位を剥奪され、市民権及び政治上の権利が差別されるべきである」としました。
 これは一種の「民族浄化」政策です。ですから、ウクライナ東部のひとたちが抵抗に立ち上がったのは、ある意味で当然のことだったと私には思えます。
 オバマ政権は、それがロシアの陰謀、プーチンの差し金によるものだと主張していますが、アメリカ民衆はいずれ真実を知ることになるでしょう。
 問題はそのまえに今後どれだけ多くの血が流されることになるのかということです。私にはそのことだけが心配です。
 
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<註> ドキュメンタリー「チャベス政権クーデターの内幕」はYouTubeでもアップされています。また木村奈保子氏による詳しい解説が下記(キャッシュ)にあります。
http://webcache.googleusercontent.com/search?q=cache:b6lllUYM_B8J:www.jca.apc.org/stopUSwar/Bushwar/venezuela_coup.htm+&cd=6&hl=ja&ct=clnk&gl=jp

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 私の「ウクライナ情勢の読み方」は、一旦ここで打ち止めにさせていただきたいと思います。
 情勢はますます緊迫していますし、ウクライナが経済的に大きくロシアの援助に依存してきた事実など、まだまだ書き残したことは多いのですが、これを書いているといつまでも腰痛が完治しませんので、どうかお許しください。
 しかし今後のウクライナ情勢を判断するための基礎的事実、基本的視点だけは提示できたのではないかと思っています。ますます激動して行くであろう状況を分析するさいの、参考にしていただければ幸いです。
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ウクライナ情勢の読み方(6)-何がクリミアをして住民投票に走らせたか: その歴史、そしてキエフ新政府の民族浄化政策

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 相変わらず腰痛が完治せず、パソコンに向かうのが苦痛なのですが、ウクライナ情勢が緊迫していて座視しているわけにはいかず、今やっとベッドから起き上がってきたところです。
 というのは、自治を求めて立ち上がった東ウクライナの住民が、キエフから派遣された軍団によって(これにはアメリカの有名な傭兵部隊ブラックウォーターも密かに参加していると言われています)蹂躙・殺戮される危険性も出てきたからです。

 前回のブログで私は次のように書きました。
次回のブログでは、Nさんとの次のやり取りについて考察するつもりです。
>「オバマ政権の偽善は、史上空前の記録をつくる」を拝見しても、ロシアがクリミア併合をしていい理由についてはまったく分かりませんでした。
Q: クリミヤにはウクライナから独立する権利はないということでしょうか。自分たちの帰属を自分たちで決める権利はないということでしょうか。沖縄も 同じでしょうか。また「ロシアによる軍事制圧下による選挙」という根拠はどこにありますか。国際監視団は単なるお飾りだったと言いたいのですか。

 そこで今回は「何がクリミアをして住民投票に走らせたか: その歴史、そしてキエフ新政府の民族浄化政策」について詳しく調べてみたいと思います。

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 Nさんは私が「大手メディアの報道をそのまま受けいれてはいませんか」と言ったことに対して、「 "オバマ政権の偽善は史上空前の記録をつくる" を拝見しても、ロシアがクリミア併合をしていい理由についてはまったく分かりませんでした」と述べています。
 しかし、そもそも、「ロシアが軍事力にものを言わせてクリミアを併合した」という見方そのものが、アメリカや大手メディアの言い分をそのまま受け入れていることを示しています。
 結論から先に言うと、ロシア人が多数を占めるクリミア自治共和国は、ソ連邦崩壊以来、一貫してロシアへの帰属を求めて運動を続けてきたのですから、「クリミア併合」のため、いま改めてロシアが軍事力を行使する必要はまったくありませんでした。
 むしろ逆に、キエフで武装集団によるクーデターが起きて、暫定政府が「ウクライナではロシア語を公用語として認めない」とする法律をつくったことが、クリミアの独立=ロシア編入の運動を再燃させてしまった、というのが事態の真相に近いと思います。
 今回の事件を受けてクリミアの歴史を調べてみたのですが、調べれば調べるほど、私の判断が正しいと思うようになりました。

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 ロシアが帝政時代だったときもロシア革命後のソ連邦時代も,クリミアに住む人たちの大部分はロシア語を話す人々であり、自分たちはロシア人だと思っていました(それ以前に、実は帝政ロシアのルーツはキエフ大公国にあるのですが、ウクライナの歴史を述べだすと長くなるので省略します)。
 フルシチョフがソ連書記長になった翌年(1954)に、ロシアのひとつの州だったクリミアは、住民の相談なしに、ソビエト連邦最高会議幹部会の決定で、ウクライナに移管されました。フルシチョフがウクライナ出身だったから、ウクライナへのお土産だったのだと言われていますが、それでもソ連邦の一員でしたから大きな問題にはなりませんでした。
 しかしソ連邦が崩壊してウクライナが独立した国になってからは、クリミアの多数を占めるロシア人たちは再びロシアへの帰属を求めるようになりました。そして1992年5月5日、ウクライナ共和国クリミア州議会はウクライナからの独立を決議し、クリミア共和国を宣言したのも、このような運動の一環でした。
 詳しい経過は省きますが、ロシアがクリミア独立運動への支援を取りやめた結果、クリミア内での独立運動も後ろ盾を失って急速に沈静化し、またウクライナ側でもロシアに敵対的な民族主義政党の活動が和らいだため、クリミア議会もウクライナ共和国内の「自治共和国」であることで妥協するようになりました。
 ところが今度のクーデターで成立した暫定政権は、極右民族主義者やヒトラー信奉者が武装して議会を占拠し、選挙で選ばれていたヤヌコーヴィチ大統領を放逐しました。そしてウクライナ全土でウクライナ語を公用語とし、ロシア語の使用を禁止するなど、過激な民族主義的政策をとることを発表しました。

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 この間の事情を、小手川大助氏(キヤノングローバル戦略研究所 研究主幹)は自社研究所のホームページで「ウクライナ問題について」という論考を発表し、次のように述べています。
 以上にもましてロシア当局を震撼させたのは、新政府の大臣ポストにいわゆる「ネオナチ」として知られていた「スボボダ」などの極右の党の幹部が次々に任命されたことである。副首相、農業大臣、環境大臣、教育大臣、スポーツ大臣、国家安全保障及び国防会議議長がそれである。
 更に2月23日に新政府の代表者たちは「ウクライナ民族社会」の設立を発表した。その内容は、ロシア語を使用する者は全て、ウクライナ民族社会の正当な権利を有するメンバーという地位を剥奪され、市民権及び政治上の権利が差別されるべきであるとするものである。(中略)
 今回、政権の一角についた政党のスローガンのうち、特に目を引くものとして以下のものがある。 「ウクライナは至高の存在」、「ウクライナ人のためのウクライナ」、「ウクライナに栄光あれ、敵には死を」、「モスクワの連中を刺し殺せ、ロシア人を削減せよ、共産主義者を絞首刑に」
http://www.canon-igs.org/column/network/20140320_2453.html

 小手川氏は元大蔵官僚であり元IMF日本代表理事も務めたことのある人物です。このような一般的には保守的とみなされるような人物でさえ、事態を正しく認識しているのに、日本の大手メディアは、EUやNATO、特にアメリカ政府の主張をそのまま垂れ流しているだけです。
 上記で小手川氏は「以上にもましてロシア当局を震撼させたのは」と述べていますが、新政府の政策で真っ先に大きく心を震撼させられ強い恐怖心をいだいたのは、実を言うとロシア当局よりも、ロシア語を日常語としているクリミヤやウクライナ東部のひとたちでした。

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ウクライナ&クリミアにおけるロシア語話者の分布図

http://www.globalresearch.ca/crimea-putins-triumph-now-the-confrontation-moves-east-to-new-russia/5374710

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 それはともかく、上記のような事態が、クリミアだけでなくウクライナ東部など、ロシア語話者が多数を占める地域のひとたちの危機意識を急速に高めることになりました。その結果、クリミアではウクライナから独立したいという運動を再燃させることになり、ウクライナ東部ではキエフ新政府から自立した強力な自治政府をつくらなくてはならないという意識と運動をかきたてることになりました。
 ですから、ロシアが軍隊を出動させ銃剣の下で住民投票などを強制する必要もなく、クリミアで住民の自由意志による住民投票が実施さえすれば、その結果は初めから分かっていたとも言えます。実際その投票結果は、独立賛成が96.77%、反対が2.51%、無効票は0.72%となり、投票率は83.1%でした。
 クリミアは住民投票をおこなう際、国際監視団の参加を要請しました。監視団のなかには、オーストリア、ブルガリア、フランス、ドイツ、ハンガリー、イタリア、ラトビア、ポーランドなどが含まれています。こうして23カ国135人の監視団が監視するなかでおこなわれた投票で、不正行為は報告されていません。
「国際監視団:クリミアの "銃剣下でおこなわれた住民投票" というのは作り話」
Crimean ‘referendum at gunpoint’ is a myth – intl observers
http://rt.com/news/international-observers-crimea-referendum-190/

 少数民族であるタタール人が大挙して投票ボイコットするという予想もありましたが、その予想も外れました。
 もしこの投票結果を認めないというのであれば、「住民投票」を盾にとってセルビアからコソボを分離させた行為、スーダンから南スーダンを分離させた行為、イギリスがアルゼンチンからフォークランド諸島をもぎ取った行為なども同じように非難されるべきです。
 しかし、NATO諸国は、一向に自分たちの二重基準(ダブルスタンダード)を認めようとはしていません。

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 ところがアメリカでは面白い現象が起きています。ソ連邦が崩壊するまでの数年間(1987―1991)をソ連大使として務めたジャック・マトロック氏が、DemocracyNow![2014/03/20]で次のように述べているからです。
 「現在のロシアの動きは、アメリカがソ連邦との約束を破って旧ソ連圏に手を伸ばし、それらの国々に次々と米軍基地を拡大して、ロシア包囲網を強化していることにたいする当然の反応だ。」
 「中国やロシアが、カリブ海やメキシコにミサイル基地をつくったり、アメリカ国境に向けて軍隊を移動し始めたら、アメリカはどう反応するか。それはキューバ危機を見れば明らかだ。ところがそれと同じことを、いまアメリカはロシアにたいしておこなっている。」

出典「前ソ連大使:クリミア危機の背景にはアメリカのロシアにたいする永年の敵対政策がある」
Former U.S. Ambassador: Behind Crimea Crisis, Russia Responding to Years of "Hostile" U.S. Policy
http://www.democracynow.org/2014/3/20/fmr_us_ambassador_behind_crimea_crisis

 しかし、もっと驚いたのは、マトロック氏が「歴史的事情から、ロシアによるクリミア併合は認めざるを得ない」と断言しつつ、「むしろ心配なのはウクライナ本土が分裂することだ」「いま緊急に必要なのは内戦になるのをくいとめることだ」と述べていることでした。
 いまウクライナではマトロック氏が心配していたとおりの事態になりつつあります。
 ロシア語話者が多数派を占めるウクライナ東部では、ウクライナから分離独立しようとする動き(あるいは自治共和国をつくり連邦制国家に移行する要求)が強まりつつあり、それが阻止しようとするキエフ新政府との間で、流血の惨事、内戦へと発展しかねない状況が生まれているからです。
 それはともかく、アメリカでは超右派だと思われていた共和党大統領レーガン、ブッシュ両氏のもとでソ連大使を務めていたひとから、このような発言を飛び出してきたのですから、驚かざるをえません。

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 同じことは、共和党から有名になったロン・ポール氏についても言えます。チョムスキーは「今のアメリカに2大政党は存在しない。共和党左派(=民主党)と共和党右派だけだ」と言っていますが、好戦的であるはずの共和党からロン・ポールのような人物が大統領候補に出馬して、反戦論をぶっているのですから驚きです。
 ポール氏は、「ウクライナ&クリミア危機はウクライナ国内の問題であり、内政干渉すべきではない」「アメリカにとって何の脅威も与えていないロシアに経済制裁を課すのは、一種の戦争行為だ」と述べているのです。ところが,こういう事実も大手メディアはいっさい報道しません。
「ロン・ポール:経済制裁は戦争行為だ」
Economic sanctions are an act of war – Ron Paul
http://rt.com/shows/sophieco/sanctions-war-ron-paul-769/

 一般的に民主党はハト派、共和党はタカ派だと思われているのですが、先のチョムスキーの言にもあるとおり、今は両党ともにタカ派です。そのなかでの発言だっただけに、マトロック氏やロン・ポール氏の発言は、オバマ大統領の好戦ぶりが浮き彫りにすることになりました。

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 もう一つだけ、私の興味を引いた事実を紹介しておきたいと思います。それは1990年にソ連で最初で最後となる大統領に就任し、同年に「マルタ会談で冷戦を終結させた」としてノーベル平和賞を受賞したゴルバチョフが、今回のクリミヤ独立を明確に認める発言をしていることです。
「クリミアは、以前にソビエトの法律で、ウクライナに併合された。もっと正確に言えば、
当時の共産党最高幹部会の決定だった。これは住民の意向をまったく無視しておこなわれた決定だった。いまクリミアの住民は、住民投票を通じて、その過去の過ちをただす決定をした。」「これはクリミア住民の熱望を現れだ。」「これは歓迎されるべきことであって制裁されるべきことではない。」
http://rt.com/news/mistake-fixed-crimea-gorbachev-422/(March 17, 2014)

 ゴルバチョフといえば、日本を含む西側諸国では絶大な人気を誇り、ゴルビーの愛称で親しまれたものの、ロシア国内ではアメリカと並ぶ二強国であったソ連を崩壊させたことから評価が分かれている人物です。その彼がインターファックスを通じてこのような声明を発表したことは、注目に値する事実です。
 氏が冷戦を終結させた際アメリカとの間に「NATOは旧ソ連圏、東欧諸国に勢力を拡大しない」という約束を取りつけたものの、見事にその約束を裏切られた怒りが、このような声明を発表させたのでしょうか。あるいはアメリカと並ぶ二強国であったソ連を崩壊させロシアを弱体化させた責任感がこのような声明を発表させたのでしょうか。

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<註> ゴルバチョフの発言の原文は次のとおりです。
The people of Crimea fixed a Soviet-era mistake with the Sunday’s referendum and the will of the people should not be punished by sanctions, said former Soviet leader Mikhail Gorbachev.
“Earlier Crimea was merged with Ukraine under Soviet laws, to be more exact by the [Communist] party's laws, without asking the people, and now the people have decided to correct that mistake. This should be welcomed instead of declaring sanctions," he told Interfax on Monday. Gorbachev praised the referendum, stating that it “reflects the aspirations of Crimea's residents."

出典>「クリミアの住民投票はソビエト時代の過ちをただした」
Crimea’s referendum corrected Soviet-era mistake - Gorbachev
http://rt.com/news/mistake-fixed-crimea-gorbachev-422/(March 17, 2014)

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 いずれにしても、アメリカおよびNATOがウクライナでゴリ押している戦争挑発政策に、このようなかたちでもの申す動きが出てきていることは嬉しいことです。
 さもなければ、今のままではウクライナは内戦になるからです。それがNATO軍とロシア軍との戦闘に拡大していけば、世界的惨事になることは間違いありません。
 NATO(北大西洋条約機構)は元々、ソ連邦を中心とする東側諸国を仮想敵国とする欧米諸国の軍事同盟でした。ですから、チョムスキーが『現代世界で起こったこと』(日経BP社 2008)その他の著書でたびたび述べているように、ソ連邦が崩壊した時点でNATOは解散すべきだったのです。
 しかし次々と新しい敵をつくりだしたり、「人道的介入」などという口実をもうけたりしながら、NATOは生きのびてきました。そうしないとアメリカの軍事産業・軍産複合体は生き残れないからです。
 それがアフガンを荒廃させ、リビアを壊滅させました。さらにNATOはシリアの内戦に手を貸し、そして今やウクライナにまで戦火を拡大しようとしています。あわよくば、ロシアをウクライナ内戦に引きずり込み、プーチン政権の弱体化・政権転覆につなげたいのかもしれません。


<追記> 今日のDemocracyNow! を見ていて非常に気になることに気づきました。それは、キエフでのクーデター政権に抵抗して、ウクライナ東部で新しい自治政府を求める運動をしているひとたちを、「分離主義者」Separatistsと呼称し、アメリカ政府の言い分を大きく報道していることです。
 しかし、ウクライナ東部で活動しているひとたちの主張は、キエフ暫定政権が主張する過激な民族主義的主張(ウクライナ語を話す人たちだけの「ウクライナ民族社会」の設立)に抵抗し、強力な自治国家をつくってウクライナを一種の連邦国家にすることです。
 彼らは、キエフ暫定政権による一種の「民族浄化政策」に抵抗しているのであって、今のところ、ウクライナから分離することを求めているわけではありません。
 ですから、名づけるのであれば「連邦主義者」FederalistsまたはPro-federalization Activistsとすべきであって、「分離主義者」とすべきではありません。その点、RTは彼らを正しく「連邦主義者」と呼称しています。
 詳細は省きますが、DemocracyNow!は、アメリカの外交政策については、しばしばアメリカサイドから見た記事を中心にした報道を続けています。これはリビア爆撃の時も同じでしたし、現在のシリアの内戦についても同じです。これではアメリカの大手メディアとあまり変わらなくなってしまいます。
 クーデターに手を貸したNGOと同じ運命を、DemocracyNow! も辿るのでしょうか。とすれば非常に悲しいことです。(2014/04/23)
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ウクライナ情勢の読み方(5)- クーデターの主役NGO: CIAに取って代わった、USAID「アメリカ国際開発庁」&NED「アメリカ民主主義基金」

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前回のブログでは、「Nさんにたいする下記の疑問についても私見を述べる予定でしたが、ここまで書いたら腰痛がまたぶり返してきたので次回にします」と述べました。そこで今回は、この点について私見を述べることにします。
>チョムスキーの論考は大変参考になりますが、ウクライナもクリミアも登場しませんし、現在彼がウクライナについてアメリカの陰謀だと言っているのかどうかも定かではありません。というかそんなことを言っていたらあきれてしまうのですが。
Q: アメリカが中南米その他でクーデター(政権転覆)を起こし続けてきたことは、チョムスキーにとっては自明のことです。ウクライナ情勢は単にその応用問題にすぎないのではないでしょうか。


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 まず第一にアメリカが中南米その他でクーデター(政権転覆)を起こし続けてきたことは、チョムスキーどころか多くの識者には自明のことです。チョムスキーはそれを『アメリカが本当に望んでいること』という小冊子で簡潔明快に説明していますが、さらにそれを事典規模で明らかにしたのが、ウィリアム・ブルム『アメリカの国家犯罪全書』(作品社、2003)でした。著者ブルムについては、訳書の「著者解説」で次のように説明されています。
アメリカの国家犯罪、CIAの謀略を暴きつづけているアメリカ人ジャーナリスト。国務省の外務担当だったが、1967年、ベトナム戦争に反対して辞職。以降、秘密のベールに包まれていたCIAの内部を暴露し、200名以上のCIA職員の名前を明らかにするなど、まさに命がけの告発をつづけている。本書は、米国・ヨーロッパ・南米・中東・アジアなどを股にかけ、長年にわたる調査・取材をもとにアメリカの真実の姿をまとめた一冊である。

 要するにブルムは単なる著作家ではなくアメリカ国務省で働いてきた人物でした。その彼が祖国に幻滅し、その国家犯罪を全面的に研究し暴露しようとしたのが本書でした。本書は三部に分かれていますが、その第三部は次のような章立てになっています。
第三部 「無法国家」対世界
第17章 米国の世界介入小史 一九四五年~現在
第18章 選挙操作
第19章 トロイの木馬:「米国民主主義基金」(NED)
第20章 米国対世界:国連を舞台に
第21章 盗聴:地球上のあらゆる場所で
第22章 拉致と略奪
第23章 CIAがネルソン・マンデラを二八年間の牢獄生活に送りこんだ経緯
第24章 CIAと麻薬:「何が悪い?」

 この第17章が「米国の世界介入小史 一九四五年~現在」となっていることに注目してください。ここにはアメリカが世界を股にかけて政権転覆(クーデター、レジーム・チェンジ)をおこなってきた歴史が簡潔に網羅されています。
 CIAの悪行については既にアメリカ上院「チャーチ委員会」(1975年12月18日)が詳細な報告書をまとめていますが、ブルムはそれをさらに拡大して「1945年~現在(1999」までを調べたのでした。
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<註> チャーチ委員会については下記も参照していただければ幸いです。これは『肉声でつづる民衆のアメリカ史』の一節を翻訳&解説したものです。
特別報告「チリでの秘密工作1963~73」
http://www42.tok2.com/home/ieas/church_committee.pdf


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 チャーチ委員会でCIAの悪行が暴露されてからは、アメリカの海外における政権転覆活動は議会によって抑制されたはずでした。しかし議会監視の目を盗んで活動は秘かに続いていました。
 その典型例が「イラン・コントラ事件」でした。これは、1979年のニカラグア革命により、40年以上続いた親米のソモサ王朝独裁政権が崩壊し、そのあと誕生した左派政権を転覆させようとした謀略事件です。
 なにしろイラクをけしかけてイランと戦争させながら、もう一方ではイランに対しても武器を輸出し、それで儲けたお金をニカラグアの反政府勢力(コントラ)に提供していたのですから、常人では考えられない戦略です。
 しかも議会の監視を逃れるため、武器売買はイスラエルにさせていたのですから、壮大かつ巧妙きわまりない謀略ぶりです。
 しかし、裏で秘かに続いていた政権転覆を、なりふり構わず公然化したのは、ジョージ・H・W・ブッシュ大統領による米軍のパナマ侵攻(1989)でした。さらに、それを上回る露骨な政権転覆が、その息子ブッシュ氏によるアフガン侵攻とイラク侵略であったことは、周知の事実です。
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 オバマ大統領は黒人でもあり民主党がたてた大統領ですから政権転覆とは無縁のように見えますが、やっていることはブッシュ氏よりも巧妙で悪辣(あくらつ)です。
 たとえば、2009年にはホンジュラスで軍部がクーデターを起こし、中道左派のセラヤ大統領は官邸で拘束のうえコスタリカへ移送されました。これは明らかにクーデターだったにもかかわらず、この結果できた政権をオバマ氏は承認することにしたからです(クーデターで国外追放されたセラヤ大統領を復帰させないまま選挙は強行された)。
 エジプトで民衆革命が起きイスラム同胞団が政権をとりましたが、ここでも軍事クーデターが起きました。しかしオバマ氏はクーデターと認めることを拒否したままエジプトへの援助を続けています。それどころか暫定軍事政権に抗議する民衆を大量に投獄し500人以上もに死刑判決が出されても、オバマ氏は援助を止める気がありません。
 バーレーンでも独裁王制に抗議する運動が起きていて、民主化を要求する多くのひとが投獄され、終身刑をうけているひとも少なくありません。しかし民衆による「民主化運動」を世界中で支援しているはずのオバマ氏は、ここでも沈黙を決め込んでいます。サウジアラビアの独裁王制にたいする民主化運動についても同じです。
 ですからいまアメリカはウクライナの民主化運動を支援していると言われても、ほとんど誰も信用しないのは当然でしょう。これがアメリカによる工作でないと考えるのは、大手メディアの言い分をそのまま信じている日本やアメリカの一般民衆以外は誰もいないと思います。
 最近、CIAどころか、「アメリカ国際開発庁」(USAID: the U.S. Agency for International Development)という、一見すると「人道支援団体」であるかのような政府機関が、裏でキューバ政府の転覆工作をしていたことが、AP通信社によって暴露され、話題を呼んでいます。この一事を見ただけでも、アメリカが本当に望んできたことは歴然としているのではないでしょうか。

「USAIDは新しいCIAか?、反カストロ運動を煽り立てるために密かにツイッターのプログラムをキューバで構築」
Is USAID the New CIA? Agency Secretly Built Cuban Twitter Program to Fuel Anti-Castro Protests
http://www.democracynow.org/2014/4/4/is_usaid_the_new_cia_agency


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<註> アメリカ第5艦隊の基地があるバーレーンについては、ほとんど日本では報道されていませんが、これも探せばいくらでも情報はあります。
米支援のバーレーン軍、人権団体監視員の米国人平和活動家2人を逮捕・送還
http://democracynow.jp/dailynews/12/02/13/4
「殺戮と勾留の2年間」:バーレーンの民主化運動  蜂起を記念
http://democracynow.jp/dailynews/13/02/14/3
バーレーンの民衆蜂起鎮圧のために侵攻して2年、シリア衝突の激化に加担するサウジアラビア
http://democracynow.jp/dailynews/13/03/15/2


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 チョムスキーの論考「世界を『アメリカという脅威』から救う」を翻訳して紹介する際、私はすでにその解説で次のように書きました。
 日本の大手メディアを見ていると、まるでプーチンが現在の危機をつくりだしたかのような論調に満ちています。しかし次の記事では、アメリカが裏で工作をして実質的なクーデターを起こしていることを、元CIA高官のレイ・マクガバン(Ray McGovern)が暴露しています。
「ウクライナの政情不安を引きおこしているのは誰か」
Who Is Provoking the Unrest in Ukraine? A Debate on Role of Russia, United States in Regional Crisis
(March 03, 2014))
http://www.democracynow.org/2014/3/3/who_is_provoking_the_unrest_in

 このインタビューでマクガバン氏は、キエフでの「民衆蜂起」なるものは、CIAがかつておこなっていたことを「疑似NGO」にやらせたことだと述べています。氏によれば、ウクライナではCIAの代わりにNED(アメリカ民主主義基金)による莫大な資金でNGOを装った62のプロジェクトが進行していたそうです。
 しかもこれは過去に東欧その他でおこなわれてきたことであってロシア人の被害妄想ではない、とすら言っています。過去に東欧では多くのいわゆる「カラー革命」なるものが展開されたのですが、その正体はこのようなものだったのです。元CIA高官の発言だけに、この主張には非常な重みがあります。

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<註> マクガバンの発言原文は次のとおりです。
RAY McGOVERN: Well, a couple of things. You know, it really depends more on who seizes control of these uprisings. If you look at Bahrain, you know, if you look at Syria—even Egypt, to an extent—these were initially popular uprisings. The question is: Who took them over? Who spurred them? Who provoked them even more for their own particular strategic interests? And it's very clear what's happened to the Ukraine. It used to be the CIA doing these things. I know that for a fact. OK, now it's the National Endowment for Democracy, a hundred million bucks, 62 projects in the Ukraine. So, again, you don't have to be a paranoid Russian to suggest that, you know, they're really trying to do what they—do in the Ukraine what they've done in the rest of Eastern Europe and elsewhere.

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 上記の番組で、マクガバン氏の論争相手として登場したティモシー・スナイダー氏は高名なイエール大学の歴史学教授です。自称「レベラル左派」の彼がウクライナの現状を「独裁者に抗して立ち上がった民衆」という単純な図式でしか見れないのは驚くばかりだと、マクガバン氏は軽蔑的口調で反論していました。
 要するに、議会監視の下でCIAが活動がしにくいところでは、CIAの別働隊が活動し、いまや「疑似NGO」までもがその謀略に参加しているのです。キューバではNED(アメリカ民主主義基金)ではなくUSAID(アメリカ国際開発庁)が暗躍していたことは既に紹介したとおりですが、ベネズエラでも同じです。たとえば下記インタビューを御覧ください。
「元CIA協力者が語る:ベネズエラにおけるCIAの計画は予想をはるかに越えるものだった」
Interview with Ex-CIA Collaborator: “The CIA's Plans in Venezuela Are Far Advanced”
http://venezuelanalysis.com/analysis/10533
 
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 もう一つここで註記しておきたいことは、NED(アメリカ民主主義基金)とは何かということです。
 先にウィリアム・ブルム『アメリカの国家犯罪全書』第三部の目次を紹介しましたが、その第19章に "トロイの木馬:「米国民主主義基金」(NED)" がありました。その書き出しは次のように始まっています。
 米国民主主義基金(National Endowment for Democracy: NED)について 知っているアメリカ人がどれだけいるだろう?
 この組織は、しばしば、その名とちょうど反対のことを行う組織である。
 NEDは、1980年代初頭、レーガン大統領により設立された。 1970年代後半に、CIAに関するまずいことが色々とあばかれたあとのことであった。
 1970年代後半というのは、注目すべき時期だった。 ウォーターゲートに刺激されて、米国上院のチャーチ委員会、下院のパイク委員会、そして大統領により創られたロックフェラー委員会が、CIAの調査に忙しかった。
 ほとんど一日おきに、CIAが長年にわたって行ってきたひどいことや犯罪的行為が発見されたとメディアをにぎわせた。 CIAは悪名を馳せ、権力者たちは困惑した。
 何らかの処置をしなくてはならなかった。ひどいことをやめる、というわけではむろん、ない。 そこで、ひどいことを、新しい、素敵な響きを持った名前の組織にやらせることとなった。 これが米国民主主義基金(NED)である。[以下略]

 本章の詳細は前掲書を御覧ください。またフランスの『ル・モンド・ディプロマティーク』日本語・電子版2007年7月号に下記の論考が載っているので参考になるはずです。
「米国民主基金という名の工作機関」
http://www.diplo.jp/articles07/0707-3.html


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 ところで、アメリカが裏でウクライナの政権転覆を援助・画策してきたことは、もっと露骨なかたちで暴露されています。政府のトップ担当官二人の会話が録音されていて、オバマ政権が秘密理に反政府側と何かを画策していたことが明らかになったからです。
「新たな冷戦? ウクライナで衝突が激化するなか 米による政変計画を示唆する録音漏洩」
A New Cold War? Ukraine Violence Escalates, Leaked Tape Suggests U.S. Was Plotting Coup
http://www.democracynow.org/2014/2/20/a_new_cold_war_ukraine_violence

 この、ユーチューブに掲載されたヴィクトリア・ヌーランド国務省副長官(欧州およびユーラシア担当)とジェフリー・ピアット駐ウクライナ米国大使の1月28日の電話連絡で、ヌーランド女史は反対勢力のリーダーシップに触れて、大略つぎのように述べています。
 「元ボクシング世界ヘビー級チャンピオンのクリチコ氏やスボボダ(「自由」を意味する名前の極右政党)の党首チャフヌーボック氏は問題があるので、(ティモシェンコに近い)氏にスポットが当たるようにした方がいい、クリチコ氏は政府部内に入らない方がいい」
 そして、このヌーランド女史の指示どおり、ウクライナ暫定首相の座にはヤチェヌークが座りました。これほど露骨な内政干渉・政権転覆はないでしょう。
 また、2013年11月のデモの開始以降、EU各国の政府関係者がキエフを訪れて、デモ隊の中に入り彼らを激励していますし、上記のヌーランド女史は恥ずかしげもなく公然とクッキーをデモ隊に配っています。
 オバマ政権の政策にたいする抗議としてアメリカではさまざまなOccupy Movement(占拠運動)が全米に広がりましたが、もしニューヨークのズコッティ広場にロシアや中国の大使や高官が現れ、占拠している民衆に対して激励の演説をしたり援助物資を配ったりしたら、アメリカはどんな行動をとったでしょうか。
 この一事を見ただけでも、アメリカの傲慢さ・非常識ぶりがよく分かるのではないでしょうか。

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次回のブログでは、Nさんとの次のやり取りについて考察するつもりです。
>「オバマ政権の偽善は、史上空前の記録をつくる」を拝見しても、ロシアがクリミア併合をしていい理由についてはまったく分かりませんでした。
Q: クリミヤにはウクライナから独立する権利はないということでしょうか。自分たちの帰属を自分たちで決める権利はないということでしょうか。沖縄も 同じでしょうか。また「ロシアによる軍事制圧下による選挙」という根拠はどこにありますか。国際監視団は単なるお飾りだったと言いたいのですか。

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ウクライナ情勢の読み方(4)―どこで、どのように情報を手に入れるか: 真実の情報から国民を遠ざける英語教育

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 前回のブログでは、「レイバーネット日本」のメーリングリストに「ロシアによるウクライナへの軍事介入に抗議する!」という投稿があったので、それにたいして「大手メディアの報道をそのまま受けいれてはいませんか」と題した疑問を送ったところ、色々な反響があったことを紹介しました。

 しかし私に時間がなかったので、Nさんが提起した問題には疑問を呈するだけで、私の意見をきちんと提示できませんでした。そこで次のブログでそれを詳しく展開する予定だったのですが、疲労が溜まっていたためか仕事を再開しようと思った矢先に腰痛が再発して動けなくなりました。
 今やっとパソコンに向かえるくらいに回復したので、体力が許すかぎり少しずつ私見を述べていきたいと思います。

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 まずNさんは冒頭で、「ウクライナの激変やクリミア情勢について、大変な事態なのでいろいろと情報を探しています」と書いています。それにたいして私は次のような問いを投げかけました。
 情報は、私の翻訳の解説にその一端を載せました。このほかにも下記をはじめ、その気になれば情報は有り余るほどあります。
http://www.globalresearch.ca/
 ちなみに、安倍内閣は、「日本人は英語を読めるけれど話せない」と言って、「だから小学校から英語教育だ」「だから英語で授業をしなければならない」いうバカげた教育政策を発表しました。しかし「日本人は英語を読めるけれど話せない」というのは本当でしょうか?


 私が上記のように書いたのは、福島原発事故のときでもそうでしたが、日本では大手メディアがきちんとした情報を出しませんでした。それと同じことがウクライナ情勢でも起きていると思ったからです。
 大手新聞社には英語の読める優れた記者がたくさんいるのですから、私のような素人がウクライナについて書かなくても、少し調べる気があれば、情報源はいくらでもあるはずです。
 その一つとして私が紹介したのが、カナダを拠点として活動しているグローバルリサーチという団体のサイトでした。
http://www.globalresearch.ca/(Global Research)

 このほかにも情報源として利用できるサイトは次のようにいくらでもあります。
http://www.democracynow.org/(DemocracyNow!)
http://rt.com/news/(RussiaToday)
http://zcomm.org/znet/(ZNet)
http://fair.org/(FAIR: Farness & Accuracy In Reporting)
http://www.answercoalition.org/(:Act Now to Stop War and End Racism)

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 私が日常的に視聴しているのは、DemocracyNow!とRussiaTodayのふたつです。前者はAmy Goodmanという女性が報道とインタビューの司会を務めている独立系の報道機関です。最近、上智大学が主宰するシンポジウムのため来日して話題を呼びました。
 アメリカの大手メディアが伝えないことを報道する機関として有名になりましたが、リビアやシリアの報道を見ていたら、やはりアメリカという視点からの報道臭が強くて、アメリカ国内の情勢を知るには良い番組だが、外国情勢を知るには問題があると思うようになりました。
 その毒消しとして役立つのがRussiaTodayです。これは日本のNHKと似ていてロシア政府から大半のお金が出ているようですが、国営放送と化したNHKと比べてはるかに中立性・独立性が強く、ウィキペディアによればアメリカで2番目の視聴者を持つ外国語ニュースチャンネルで、BBCニュースに次ぐ規模を誇っています。
 以上の二つは毎日、動く映像でニュースを見れる番組ですが、何か事件が起きて、もっと詳しく情報を知りたいと思ったとき、私がまず検索するのがGlobal Researchです。今回のウクライナ情勢でも、このサイトから多くを学ばせてもらいました。Global Research TVという映像コーナーもあります。
 ZNetはチョムスキーの教え子であるマイケル・アルバートが起ち上げたサイトで、多くの著名人がこのサイトにホームページをもっています。私のチョムスキー情報は、ほとんどがこのサイトから来ています。FAIRは大手メディアの報道のどこが間違っているかを知らせてくれる団体です。チョムスキー推薦の団体です。
 ANSWERは幾つもの反戦平和団体が合同してつくり上げている団体で、メーリングリストに登録しておくと、ときどき面白いニュースを届けてくれます。最近とくに面白かったのはウクライナ&クリミア情勢に関する下記の記事でした。

「オバマの演説―デマゴギーの演習」
Obama's speech on Ukraine and Crimea: An exercise in demagogy

http://www.answercoalition.org/
http://www.answercoalition.org/national/news/rt-interview-Ukraine.html

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 しかし、ここに一つの問題が起きます。というのは、以上みてきたように情報は探せばいくらでもあるのですが肝心の日本語の情報がほとんどないからです。
 日本人の誰もが上記のような英語情報を読む力があれば、大手メディアが嘘の報道をしていても簡単にそれを見破ることができますが、残念ながら私たちの誰もにそれを読む時間的ゆとりがあるわけでもありませんし、そのような力を持っているわけでもありません。
 私が皮肉混じりに次のような質問をNさんに投げかけたのは、このような事情を念頭においていたからです。
 ちなみに、安倍内閣は、「日本人は英語を読めるけれど話せない」と言って、「だから小学校から英語教育だ」「だから英語で授業をしなければならない」いうバカげた教育政策を発表しました。しかし「日本人は英語を読めるけれど話せない」というのは本当でしょうか?

 自民党政権は「役に立つ英語教育」を政策に掲げ、「小学校から英語教育をすれば、あるいは英語で授業をすれば、英語を話せるようになる」と主張して、学習指導要領を「英会話中心」になるように改変し、日本人の英語読解力を大幅に低下させてきました。
 日本に住んでいるかぎり大多数の日本人にとって必要な英語力は「話す力」ではなく「読む力」です。というのは現在のように大手メディアが嘘をバラ捲いているとき、それに対抗するには、今のところDemocracyNow!、RussiaToday、Global Researchなどを読んで、その嘘を見破る力をつける以外にないからです。
 私のように英語教師を育てることを生業としてきたものですら、日本に住んでいるかぎり英語を話す機会はほとんどありませんし、その必要もありません。にもかかわらず、自民党が「話す力」を誇大に宣伝し、「読む力」を衰弱させてきたのは、国民に真実を知られたくないからではないか、と私は邪推すらしています。
 ところが「日本人は英語を読めるけれど話せないというのは本当でしょうか?」という私の問いに対して、Nさんからは「本当かどうか、ちょっとわかりませんが、ウィッキーさんのワンポイント英会話を思い出しました」という意味不明な答えが返ってきただけでした。これでは権力に対して真の闘いにならないのではないでしょうか。

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 ところで、実は,ウクライナ情勢については日本語でも情報はないわけではありません。たとえば、『アジア記者クラブ通信』2014年2~3月号(http://apc.cup.com/)に次のような記事が載っているからです。
■「ウクライナの反政府運動はファシストの手に落ちた」、“黙認”する米国とEU
エリック・ドレイツァー(地政学アナリスト)
■キエフはモスクワ突破とユーラシア支配の要衝だ、ウクライナ動乱の真相
マハディ・ダリウス・ナゼムロアヤ(ジャーナリスト)
■ポーランド民族主義者は軍事介入唱える、バルカン化の危機孕むウクライナ
ニコライ・マリセブスキー(ジャーナリスト)
■ウクライナ“新政権”はネオナチが主導する、黙殺を装い支援する西側諸国
ミシェル・チョスドフスキー(CRG編集長)

 この『アジア記者クラブ通信』は大手メディアには載っていない貴重な情報がたくさん載っています。特に海外情報は他では得がたい情報が満載されています。
 しかし、この『通信』に載せられている海外情報は、そのほとんどを、ひとりの独立ジャーナリストが翻訳しています(恐らく無給で)。
 これは、森広泰平さん(『アジア記者クラブ通信』編集長)の周辺に英語を読める人材がいかに少ないかを示すものではないでしょうか。そのような人材が多ければひとりのひとだけに頼らなくてもすんでいたはずだからです。
 これはDemocracyNow! についても言えます。実は DemocracyNow! には日本語版も開設されているのですが(http://democracynow.jp/)、翻訳されているのはその日の特集番組の「要約」部分だけで、新鮮な情報を毎日とどけてくれるヘッドラインニュースが翻訳されていないのです。
 この10分程度のヘッドラインニュースだけでも、アメリカと世界について驚くべき情報をたくさん手に入れることができるのですが、その肝心の情報が翻訳されていません。これも中野真紀子さん(DemocracyNow!Japanの責任者)の周辺に英語を読める人材がいかに不足しているかを示すものではないでしょうか。
 私が間違った教育政策を改めるべきだと強く主張するゆえんです。「英語で授業」という指導要領、「会話中心の英語教育」は、ともすれば「ざるみず効果」に終わるだけでなく、操作された情報に抵抗する力を育てないからです。<註>

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今回のブログではNさんにたいする下記の疑問についても私見を述べる予定でしたが、ここまで書いたら腰痛がまたぶり返してきたので次回にします。

>チョムスキーの論考は大変参考になりますが、ウクライナもクリミアも登場しませんし、現在彼がウクライナについてアメリカの陰謀だと言っている のかどうかも定かではありません。というかそんなことを言っていたらあきれてしまうのですが。
Q: アメリカが中南米その他でクーデター(政権転覆)を起こし続けてきたことは、チョムスキーにとっては自明のことです。ウクライナ情勢は単にその応用問題にすぎないのではないでしょうか。

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<註> 上記で言う「ざるみず効果」という用語は私の造語です。ザルに水を入れても水は溜まりません。現在の「会話を中心」とした英語教育は、この「ざるみず効果」の典型例ではないかと思っています。その理由については『英語教育原論:英語教師、三つの仕事、三つの危険』『英語教育が亡びるとき:「英語で授業」のイデオロギー』(いずれも明石書店)および下記を御覧ください
http://www.kyoto-up.org/archives/1905
http://www.kyoto-up.org/archives/1972
http://www42.tok2.com/home/ieas/interview130531english_teaching.pdf
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ウクライナ情勢の読み方(3)― 「ロシアによるウクライナへの軍事介入に抗議する!」は世界平和に貢献するか

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 前回のブログを掲載してからずいぶん時間が経ちました。このかん金沢に行かねばならない用事があり、戻ってきたら疲れが出て寝込んでしまいました。今やっと体調が戻りつつあるので、このブログを書き始めています。
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 私が会員になっている「レイバーネット」のメーリングリスト(2014/03/22)に、3月22日づけで、Tさんの投稿で下記のような案内がありました。
ロシアによるウクライナへの軍事介入に抗議し、クリミア併合を行わないよう要請します
WORLD PEACE NOW、2014年3月18日
ロシア連邦大統領 ウラジーミル・ウラジーミロヴィッチ・プーチン様

 私はこれを見てあわてて、「大手メディアの報道をそのまま受けいれてはいませんか」と題した下記のような投稿を送りました。
大手メディアの報道をそのまま受けいれてはいませんか。下記を参照願えれば幸いです。
翻訳 チョムスキー「世界を "アメリカという脅威" から救う」
http://pub.ne.jp/tacktaka/?entry_id=5224447>
翻訳 ロバート「オバマ政権の偽善は史上空前の記録をつくる」
http://pub.ne.jp/tacktaka/?entry_id=5228921>

 というのは、今回のウクライナをめぐる問題は、明らかにアメリカが裏で工作したクーデターが引き金になっていると思ったからです。この問題を抜きにしてロシアだけに抗議しても何の解決にもならない、まず抗議するのであればアメリカのオバマ氏が先ではないかと思ったのです。

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 今回のウクライナにおける政変が単なる民主主義を求める民衆運動ではないと判断した理由を、私は翻訳「チョムスキー:世界を "アメリカという脅威" から救う」を紹介しつつ、その解説で次のように述べました。
 いまウクライナ・クリミア情勢は、少しでも道を踏み間違うと第3次世界大戦になりかねない危険な状態になっています。
 日本の大手メディアを見ていると、まるでプーチンが現在の危機をつくりだしたかのような論調に満ちています。
 しかし次の記事では、アメリカが裏で工作をして実質的なクーデターを起こしていることを、元CIA高官のレイ・マクガバン(Ray McGovern)が暴露しています。
「ウクライナの政情不安を引きおこしているのは誰か」
Who Is Provoking the Unrest in Ukraine? A Debate on Role of Russia, United States in Regional Crisis((March 03, 2014))
http://www.democracynow.org/2014/3/3/who_is_provoking_the_unrest_in
 もっと恐ろしいのは、単にウクライナをアメリカ寄りの政権にするためにクーデターを起こしただけでなく、ヒトラーの信奉者や極右の人物を新政権の中枢にすえたことです。
「アメリカはネオナチの政府をウクライナに送り込んだ」
The U.S. has Installed a Neo-Nazi Government in Ukraine(March 02, 2014)
http://www.globalresearch.ca/the-u-s-has-installed-a-neo-nazi-government-in-ukraine/5371554
 このように、アメリカは、「911」以後、アフガニスタン、イラク、シリアを内戦状態に追い込み、国土を瓦礫の状態にしつつあるだけでなく、今やウクライナにまで政情不安をかき立てて親米政権をつくろうとしています。
 (実は同時並行的に、ベネズエラまでも「不安定化工作」の標的にして、混乱の火種を中東どころか南米にまでバラ捲いています。)
 ところで、今からちょうど1か月ほど前に、チョムスキーは「アメリカこそが平和にたいする世界最大の脅威である」という小論を発表しました。今のウクライナ情勢を見ていると、このチョムスキーのことばが改めて胸に響いてきます。 そこで、ぜひ皆さんに読んでもらおうと思い、急遽この論文を翻訳しました。御一読いただければ幸いです。


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 またクリミア併合についても翻訳「ロバート:オバマ政権の偽善は史上空前の記録をつくる」の解説で次のように書きました。
 ウクライナ&クリミア情勢は緊迫の度合いを強めています。クリミヤではウクライナから分離してロシアに加盟するかどうかをめぐる住民投票が3月16日(日)におこなわれました。
 アメリカやEUは、これを「ウクライナ国民全員が投票に参加していないから国際法では認められていない違法行為だ」と非難していますが、自分たちがコソボや南スーダンを、セルビアやスーダンから引き離すときには、住民投票をおこなわせて独立させています。
 スペインではカタロニアの独立運動が盛んですし、イギリスでもスコットランドが独立のための住民投票をしようとしていますが、「国民全員が投票に参加していないから違法行為だ」という非難はありません。
 アルゼンチンの対岸にあるフォークランド諸島のイギリス帰属も、1913年の島民による住民投票で決めました。地理的に見るかぎりフォークランド諸島はアルゼンチンに帰属していてもよいようにみえます。が、イギリスはフォークランド紛争のあと強引に住民投票でイギリス帰属を決めたのですから、ロシアに文句を言う筋合いはないはずです。
 カナダのフランス語圏であるケベック州も、何度か独立のための住民投票をしていますが、ここでも「国民全員が投票に参加していないから違法行為だ」という非難はありませんでした。そもそも、ケベックの独立をカナダ全員の国民投票で決めることは、初めから独立を認めないと言っているに等しいからです。
 アメリカが、こんな子どもでも分かるような論理を持ち出していることは、二重基準(ダブルスタンダード)の極致と言うべきでしょう。しかも、それを主張しているのがハーバード大学ロースクールを出て、シカゴ大学で憲法を教えていたオバマ大統領なのですから、こちらの頭の方がおかしくなりそうです。
 話はいきなり飛びますが、このクリミア情勢の報道を見ていたら、「いっそのこと沖縄も日本から独立するための住民投票をしたらどうか」「沖縄が独立を言いだしたら日本政府はどういう口実でそれを阻止するのだろうか」という考えが急に浮かんできました。
 そもそも沖縄は、かつては琉球王国という独立国だったわけですし、戦前はアメリカ軍上陸の激戦地にされ戦後も米軍基地として使われてきました。ですから、沖縄の人たちにとっては、アメリカ軍による占領終結後、苦労して日本に復帰しても良いことはほとんどなかったように見えるからです。
 それはともかく、このような疑問をもっていたとき、"Obama Regime's Hypocrisy Sets New World Record" 「オバマ政権の偽善は、史上空前の記録をつくる」という面白い論考を見つけました。そこで以下に訳出しました。参考になれば幸いです。

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 ところが、肝心のTさんからの反論はなく、同じメーリングリストにNさんという会員のかたから、3月23日づけで次のような投稿がありました。

会員のNです。
 ウクライナの激変やクリミア情勢について、大変な事態なのでいろいろと情報を探しています。
 アメリカのダブルスタンダードに関するチョムスキーの論考は大変参考になりますが、ウクライナもクリミアも登場しませんし、現在彼がウクライナについてアメリカの陰謀だと言っているのかどうかも定かではありません。というかそんなことを言っていたらあきれてしまうのですが。
 「オバマ政権の偽善は、史上空前の記録をつくる」を拝見しても、ロシアがクリミア併合をしていい理由についてはまったく分かりませんでした。ウクライナおよびクリミアにおけるアメリカのダブルスタンダードよりも、ロシアにとっての軍事的意味を冷静に分析して開設するような論考があるといいのですが。
 今後はウクライナでも民族主義が強まるとおもいますが、そのような厳しい状況の中でウクライナの変革に起ち上がった進歩的民衆の動向がきになるところですが、ロシアによるクリミア併合は、そのような対立をクリミアでもそしてウクライナでも煽ることになるだけだと思います。
 その意味でもワールド・ピース・ナウの要請は意味のあることだと思います。

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 しかし先述のとおり、私には金沢に行かねばならない用事があり、上記のNさんにきちんと反論を書いているゆとりがありませんでした。
 そう思っている矢先に『アジア記者クラブ通信』を編集している森広泰平さんから「Nさんにたいする反論を書く予定はないのですか」という問い合わせがあったので、「よければ代わりに反論していただけませんか」と返事をしました。
 ところが、森広泰平さんの反論が載った直後に同じ会員のSさんから、Tさんへの反論と併せて私あてに、(2014/03/25 21:02) の日付で次のような投稿がありました。

 Sです。
 寺島さんの翻訳文:
http://www42.tok2.com/home/ieas/Obama%27sHypocricy.pdf
 上記[の研究室掲載の]翻訳文は、下記の寺島さん[ブログ投稿]の「ウクライナ&クリミア情勢 『オバマ政権の偽善は史上空前の記録をつくる』」と冒頭部分は別にして同じものですね。私のTさんへの批判的「返信」も、あなたの翻訳情報を読ませてもらったことが大きいです。
 あなたが力を入れられた翻訳であることを忘れて、先ほどTさん宛てに「ウクライナのネオナチがアメリカの大統領候補だったマケインと親しい」と書きました。じつは、そのURLを書いたつもりでしたが、漏らしておりました。
 でも、あなたご自身に再度投稿して頂き良かったです。今後とも、貴重な情報を翻訳して頂き、提供して頂きたく思います。ありがとうございます。


 私がブログで少しずつ翻訳を発表したり、その解説を書いてきたことが、こんなかたちで生きているんだと知って、本当に嬉しく思いました。

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 それはともかく、いまSさんの投稿を読み直してみると、上記でSさんは「でも、あなたご自身に再度投稿して頂き良かったです」と書いています。
 しかし私はこの時点では、森広泰平さんに「代打」を頼んだのであって、自分では反論を書いていません。
 それで、「投稿して頂き良かったです」を、あなたご自身に再度「投稿して頂きたかったです」と読み間違えて、あわてて次のように投稿しました(それともこれはSさんのタイプミスであって、やはり私の誤解の方が正しかったのでしょうか)。

Nさま、みなさま
 私は事情でゆっくり反論を書いている時間がありませんので質問するだけにとどめます。

>ウクライナの激変やクリミア情勢について、大変な事態なのでいろいろと情報を探しています。
Q: 情報は、私の翻訳の解説にその一端を載せました。このほかにも下記を初め、その気になれば情報は有り余るほどあります。
http://www.globalresearch.ca/
 ちなみに、安倍内閣は、「日本人は英語を読めるけれど話せない」と言って、「だから小学校から英語教育だ」「だから英語で授業をしなければならない」いうバカげた教育政策を発表しました。しかし「日本人は英語を読めるけれど話せない」というのは本当でしょうか?

>チョムスキーの論考は大変参考になりますが、ウクライナもクリミアも登場しませんし、現在彼がウクライナについてアメリカの陰謀だと言っている のかどうかも定かではありません。というかそんなことを言っていたらあきれてしまうのですが。
Q: アメリカが中南米その他でクーデター(政権転覆)を起こし続けてきたことは、チョムスキーにとっては自明のことです。ウクライナ情勢は単にその応用問題にすぎないのではないでしょうか。

>「オバマ政権の偽善は、史上空前の記録をつくる」を拝見しても、ロシアがクリミア併合をしていい理由についてはまったく分かりませんでした。
Q: クリミヤにはウクライナから独立する権利はないということでしょうか。自分たちの帰属を自分たちで決める権利はないということでしょうか。沖縄も 同じでしょうか。また「ロシアによる軍事制圧下による選挙」という根拠はどこにありますか。国際監視団は単なるお飾りだったと言いたいのですか。

>そのような厳しい状況の中でウクライナの変革に起ち上がった進歩的民衆の動向がきになるところですが、ロシアによるクリミア併合は、そのような 対立をクリミアでもそしてウクライナでも煽ることになるだけだと思います。
Q: 「ウクライナの変革に起ち上がった進歩的民衆」とありますが、かれらが「進歩的民衆」だという根拠はどこにあるのでしょうか。

金沢から帰ってきてからゆっくり詳論するつもりですが、念のために私の翻訳と
解説を下記に再掲します。再読していただければ幸いです。(2014/03/26 4:50)

http://pub.ne.jp/tacktaka/?entry_id=5224447
http://pub.ne.jp/tacktaka/?entry_id=5228921

 
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 この質問に対してNさんからは、(2014/03/26 9:46)の日付で次のような回答がありました。直接の回答ではないのですが、私のブログも何度か見ていただいているようで、有り難く思いました。

 Nです。
 お忙しい中、お返事をいただいてありがとうございます。
 「日本人は英語を読めるけれど話せない」というのは本当かどうか、ちょっとわかりませんが、ウィッキーさんのワンポイント英会話を思い出しました。
 寺島さんのブログの解説も何度か拝見しています。ウクライナの政変をめぐっては、違う認識をされる方もたくさんいるんだな、とあたりまえ体操(?ママ)ですが、実感したしだいです。
 クリミアの独立→即ロシア編入は、寺島さんが挙げておられる沖縄独立や他の地域の独立運動とはかなり様相が異なるとは思いますが、今回の事態では、あらためて暴力装置の重要性が浮き彫りになったと思っています。
 ウクライナやロシア、そしてなによりもクリミアで活動する左翼の情報の重要性とその欠如を痛感しました。
 以上、直接の回答になっていませんが、こんな感じです。ありがとうございました。


しかしこれまでの回答を読む限り、Nさんの発想の仕方はが非常に気になりますし、事実とも合っていないように思いました。その理由については、今回は割愛させていただきます。

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 以上が、これまでの経過です。この論争の出発点になったTさんからは何の回答もありませんが、しかしこれらのやり取りを通じて、いろいろ考えさせられることが多かったので、次回からはその点について述べたいと思います。

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Author:狐狸庵居士(田舎の国立大学を2010年に定年退職)

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