「アサンジ氏に今すぐ自由を!」 国連人権理事会の作業部会WGADが声明を発表

国際理解(2016/02/27)、ジュリアン・アサンジ、国連人権理事会「恣意的拘留に関する作業部会」(WGAD)、世界人権宣言UDHR、国際人権規約ICCPR


ロンドンのエクアドル大使館から、支援者に感謝のことばをおくるアサンジ氏
アサンジ、エクアドル大使館


 さる2016年2月5日、国連人権理事会「恣意的拘留に関する作業部会」(WGAD)は、記者会見で、ウィキリークスの創始者であるジュリアン・アサンジ氏が、スウェーデンおよびイギリスの政府によって不当な勾留・監禁状態にあることを糾弾し、即座に行動の自由を与えるよう要請する「意見書 No. 54/2015 」を公表しました。
 この数日前の2月2日には、前回のブログで紹介したとおり、国連人権理事会の「独立専門家」アルフレッド・デ・サヤス氏が、「環太平洋連携協定」TPPについて、署名も批准もしないよう関係各国政府に要請する声明を発表していますから、アメリカにとっては、二重の痛手になったことでしょう。
 というのは、アサンジ氏はスウェーデン政府から国際逮捕状が出され、イギリス政府がアサンジ氏を逮捕・拘留したわけですが、これを裏で画策したのはアメリカ政府であることは公然の秘密だったからです。オバマ大統領にとってはウィキリークスを通じてアメリカ政府の悪事を暴露するアサンジ氏の存在は、何としても許すことのできないものでした。
 米軍がイラクで一般市民を上空から銃撃して殺戮している映像をウィキリークスに手渡したチェルシー・マニング上等兵は「スパイ防止法」を口実に刑務所に収容されたままですが、それをウィキリークスを通じて全世界に知らせたアサンジ氏はジャーナリストであって犯罪者ではありません。
 政府の悪事を暴露したマニング上等兵も「内部告発者」であって「スパイ」ではありません。米軍の悪事を暴いたものが牢屋に送られ、悪事を働いた米兵を殺人者・戦争犯罪人として裁こうとしないアメリカ政府に、正義や民主主義を語り資格があるでしょうか。
 しかも、このアメリカ政府の頂点に立っているのが、シカゴ大学で憲法を講じ、ノーベル平和賞まで受賞したオバマ氏なのですから、今やアメリカの威信は地に落ちてしまっている言うべきでしょう。
 ところがオバマ氏は、米軍の残虐行為やNSA(アメリカ国家安全保障局)によるEU首脳の盗聴行為などを暴露するアサンジ氏を、何としても逮捕し終身刑に処したいと考え、すでにアサンジ氏を対象とする秘密の大陪審を準備し審理をすすめていると伝えられています。その道具として使われたのがスウェーデンとイギリスの政府でした。
 アサンジ氏を逮捕する口実となった「問題ある性行動」なるものも、捜査開始から間もなくして主任検察官は逮捕状を取り下げ、「彼がレイプをはたらいたことを疑う理由があるとは思わない」と語っています。
 にもかかわらずスウェーデン政府は、オバマ氏の意向を受けて新しい検察官を任命し、イギリス政府と協力しながら、アサンジ氏を執拗に追いかけることを続けてきました。
 しかし、このたび国連人権理事会「恣意的拘留に関する作業部会」による判決で、この事件にようやく決着がつけられ、アサンジ氏とウィキリークスの未来に明るい太陽が輝き始めたことを喜びたいと思います。
 以下は、その作業部会による声明を私が翻訳したものです。英語原文は国連人権高等弁務官事務所の下記URLにあります。
http://www.ohchr.org/EN/NewsEvents/Pages/DisplayNews.aspx?NewsID=17012&LangID=E

国連人権理事会の「恣意的拘留に関する作業部会」は、
ジュリアン・アサンジ氏の自由剥奪を、
不当で恣意的なものだと判断した


The Working Group on Arbitrary Detention
Deems the deprivation of liberty of Mr. Julian Assange as arbitrary



国連人権理事会「恣意的拘留に関する作業部会」(WGAD:the Working Group on Arbitrary Detention) は、2015 年 12 月 4 日に、「意見書 No. 54/2015 」を採択し、ジュリアン ・アサンジ氏は、スウェーデン及びイギリス(グレートブリテン&北アイルランド連合王国)の政府によって恣意的に拘留・監禁されているとの判断をくだした。その意見によれば、作業部会(the Working Group)は、アサンジ 氏に行動の自由があることを認め、[これまでの拘束・監禁にたいする]補償を受ける権利があるとした。国連人権理事会への訴状は2014年 9月に作業部会へ提出された。「意見書54/2015」は、作業部会の「評議方法」(Methods of Work)にしたがって、2016 年 1 月 22 日にスウェーデンおよびイギリスの政府に送られた。

アサンジ氏と国籍を同じくする作業部会のひとりは、自分がオーストラリア市民であることを考慮して、評議に参加することを自ら辞退した。もうひとりの作業部会員は、多数派の意見に同意せず、アサンジ 氏の置かれている状況は拘留とは言えず、したがって作業部会の管轄外であるとした。

スウェーデンの検察官は2010年中頃、性的問題を理由に、アサンジ氏にたいする調査を開始した。スウェーデン検察官 の要請で出された国際逮捕令状にしたがって、アサンジ 氏は2010 年 12 月 7 日にウォンズワース監獄に10 日間も拘留・隔離された。その後、氏はさらに550日の自宅監禁という刑を受け、このイギリスにおける自宅監禁の間にアサンジ氏は、エクアドル共和国ロンドン大使館にエクアドルへの亡命申請をおこなった。エクアドル共和国はアサンジ氏に亡命許可を与えた。氏がスウェーデンに引渡されたならば、さらにアメリカ政府に引渡され、氏が自由の権利を平和的に行使したことを理由に重大な刑事罰に直面する恐れがあったからである。こうして、2012年8月以来、アサンジ氏はエクアドル大使館から外に出ることができなくなり、イギリス警察による厳重な監視を受けている。

アサンジ氏はさまざまなかたちで自由を剥奪されてきたと作業部会は判断した。最初はウォンズワース監獄に拘留され、次に自宅監禁を受け、今はエクアドル大使館に閉じ込められて外に出ることができない。作業部会はアサンジ氏がこのように一貫して自由が剥奪されてきたと結論づけると同時に、その拘留が何ら法的根拠のない恣意的なものだということも認識するようになった。というのは、拘留の最初の段階で独房に留置されただけでなく、スウェーデン検察官の取り調べも全く誠実さに欠けるものだったからだ。 その結果、アサンジ氏の拘留は極めて長期にわたるものとなった。作業部会は、この拘留が「世界人権宣言」(UDHR:Universal Declaration of Human Rights)の9条, 10条、および「市民的および政治的権利に関する国際規約(いわゆる国際人権B規約)」(ICCPR:International Covenant on Civil and Political Rights)の7条, 9条(1)項, 9条(3)項, 9条(4)項, 10条, 14 条
に違反するものであり、この拘留が作業部会の「審議方法」で定義されている第3種に該当するものと見なした。

したがって作業部会は、スウェーデンおよびイギリスに次のこと、すなわち(1)アサンジ氏の安全および身体の保全を確保するために氏の状況を評価すること、(2)アサンジ氏が自由に行動する権利を行使できるよう適切な手段を講じること、(3)拘留に関する国際的規範で保証された権利をアサンジ氏が十分に享受できるよう保証すること、を要請した。また作業部会は、アサンジ氏の拘留・監禁状態に一刻も早い終止符が打たれるべきであり、同時に、不当な拘留にたいして補償を受ける権利が与えられるべきであると判決した。

2016 年 2 月 5 日


<註1> 
2015年12月に採択された作業部会の意見書(No.54/2015)は下記を参照

the Working Group's Opinion on Julian Assange's case (No.54/2015), adopted in December
<註2>
国連人権理事会「恣意的拘留に関する作業部会」による記者会見は下記を参照

press release by the Working Group on Arbitrary Detention
<註3>
「世界人権宣言」については下記を参照

UDHR:The Universal Declaration of Human Rights
「世界人権宣言」(日本語版)
<註4>
「市民的および政治的権利に関する国際規約」(いわゆる国際人権B規約)は下記を参照

ICCPR:International Covenant on Civil and Political Rights

<註5> イギリス在住のジョン・ピルジャー氏は、アサンジ氏と同じオーストラリア国籍を有する世界的に著名なジャーナリストですが、国連人権理事会の上記「作業部会」による判決を歓迎して下記の小論をZNetに発表しています。私には非常に興味深い論考でした。
Freeing Julian Assange: The Last Chapter
By John Pilger



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署名も批准もするな! TPP署名式の直前に国連が各国政府にたいして異例の呼びかけ

国際教育(2016/01/24) 国連人権理事会「独立専門家」、アルフレッド・デ・サヤス、ISDS条項、国際人権規約ICCPR、「規制恐怖」‘regulatory chill’

国連人権理事会「独立専門家」アルフレッド・デ・サヤス氏
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 国連人権理事会の「独立専門家(Independent Expert)」であるアルフレッド・デ・サヤス氏(Alfred de Zayas)は、TPPの署名式が直前に迫っている2016年2月2日に、関係各国政府に署名も批准も拒否するよう要請しました。
 国連機関がこのような「署名拒否」「批准拒否」の要請をおこうなうことは極めて異例のことであり、TPP「環太平洋連携協定」と呼ばれている貿易協定が、いかに人権と国家主権を踏みにじるものであるかを如実に示すものとなりました。
 しかも、この協定の正文は英語・スペイン語・フランス語のみで作成され、5000頁をこえるものなのに、日本語で正文が作成されていません。ですから、与党の国会議員どころが日本政府の閣僚も、ほとんど内容を知らないのです。にもかかわらず、彼らはこれに賛成し、署名と批准に狂奔・邁進しています。
 カナダはTPP協定書として英語だけでなく仏語のものも正文として作成するよう要求しました。これはケベック州が英語だけでなく仏語を公用語としているからです。ところが日本はアメリカに次ぐ巨大な経済力をもち、日本が脱退すればTPP協定が成立しないにもかかわらず、日本語による正文作成を要求しませんでした。
 安倍政権は選挙スローガンとして「美しい日本をとりもどす」と叫んでいましたが、日本語による正文なしの交渉では国益を守れるはずはありません。「豊かな日本を売り渡す」ことになるだけです。このような姿勢は、大学院博士課程までも日本語で教育できるにもかかわらず大学を「英語化」しようと狂奔している文教政策と瓜二つです。
 それはともかく、以下は、人権・健康・環境に巨大な悪影響をおよぼす危険性があるとしてTPPの「署名拒否」「批准拒否」を呼びかける、国連人権理事会「独立専門家」アルフレッド・デ・サヤス氏の声明文を、私が翻訳したものです。英語原文は下記URL(国連人権高等弁務官事務所)にあります。
http://www.ohchr.org/EN/NewsEvents/Pages/DisplayNews.aspx?NewsID=17005&LangID=E

国連人権理事会「独立専門家」デ・サヤス氏の
TPP 「環太平洋連携協定」に関する声明


Statement by the Independent Expert
on the promotion of a democratic and equitable international order, Alfred de Zayas,
on the upcoming signing the Trans-Pacific Partnership

貿易はそれ自体が目的ではなく国際的な人権体制の文脈で見られる必要がある。なぜなら、それは各国に拘束的な法的義務を課すものだからだ。貿易協定は、「孤立的な」法制度ではなく、透明性と説明責任を含む国際法の基本原則と合致しなければならない。それらは、人権条約の履行義務を遅らせたり回避したり弱体化させたり実行不能にさせたりするものであってはならない。

私は、世界中の市民社会が圧倒的に反対しているにもかかわらず、TPPに参加予定の12カ国が、条約に署名しようとしていることを憂慮している。なぜなら、それが多様な利害関係者と民主的な協議をすることなしに、秘密裏の交渉でつくりあげられた産物だからだ。したがってTPP(Trans-Pacific Partnership、「環太平洋連携協定」)は根本的な欠陥があり、署名または批准すべきではない。今のところ条項には各国による規制や修正の余地がないからだ。

議会は、 TPP署名の事前と事後に、人権・健康・環境への影響評価が確実におこなわれるようにするうえで重要な役割を担っている。またTPPから脱退しても「国家として生き残る」ことができる条項が条約の中に組み込まれていることを保障させるという点でも議会の役割は極めて重要だ。

国連「人権理事会」にたいする私の2015年報告書(A/HRC/44/30)は、貿易協定のこの時代遅れのモデルの主要な法的問題を説明し、21世紀にふさわしい総合的な貿易協定をつくりだすよう要請した。それは人権と発展を条項のなかに組み込んだ新しい型の貿易協定だ。また報告書には具体的な「行動計画」も含まれており、人権と発展を犠牲にすることなく貿易を発展させる戦略も提起されている。またその「行動計画」は、そのような貿易が持続可能となるような指針も定式化している。

国連総会にたいする私の2015年の報告(A/285/70)では、「投資家ー国家紛争解決(ISDS:Investor-State Dispute Settlement )仲裁条項」は根本的に不均衡かつ不正・不当なものだととして、その廃止を呼びかけた。なぜなら、この条項によれば、この特別法廷では、投資家は政府を訴えることができるのにたいし、政府は投資家を訴えることができないからだ。貿易と投資の紛争は、国家の司法権および国家対国家の司法体制にもとづきながら、法の支配の下で解決することができる。

ISDSをめぐる最近30年間の憂慮すべき経験は、投資家と国家の間に重大な非対称性があったことを示している。これは将来の貿易協定で繰り返されてはならないことだ。いま残されている選択肢は、 市民社会が要求しているように、現状のままではTPPに署名しないか、署名しても批准しないことだ。それが民主的に選出された議会の責任である。

もしTPPが発効すべきものであるならば、それが国際法に合致しているかどうかは国際司法裁判所(ICJ:the International Court of Justice)で争われる必要がある。ICJに要請すれば、ICJは今すぐにでも勧告的意見を出すことができるだろう。というのは、貿易協定と国連憲章との間に矛盾がある場合(これには国家の主権、人権、開発にかかわる条項が含まれている)国連憲章が優先させるべきだとICJは宣言しているからだ。

世界中の監視団はTPPに反対している。なぜなら、それは出発したときから国際人権規約ICCPR(the International Covenant on Civil and Political Rights「市民的および政治的権利に関する国際規約」)の19条および25条にたいする明確な違反であり、それがもたらす「規制恐怖」‘regulatory chill’のゆえに、国家が不当な企業活動を規制できなくなるからだ。にもかかわらず、今や企業のロビー活動家たちはTPPを署名のテーブルにまで持ち込むことに成功している。

もし全ての関係12カ国でTPPの賛否を決める国民投票が実施されれば満場一致で拒否されることは確実だ。

各国の貿易大臣が、2016年2月4日、難問山積のTPPに署名する目的でニュージーランドのオークランドへ集まってきたが、署名式を前にして私は、TPPの当事国政府にたいして、「人権条約を遵守する義務」および「持続可能な開発目標(the Sustainable Development Goals)を達成するという当事国の最近の公約」を再確認しそれを公に表明することを、ここに強く要請するものである。

<註1> 
アルフレッド・デ・サヤス氏(米国)は、国連の「民主的で公正な国際秩序を推進」に関する最初の「独立専門家」として、国連人権理事会によって任命され、2012年5月に仕事を開始した。氏は現在、ジュネーブ外交大学院の国際法教授である。詳しくは下記を参照。
http://www.ohchr.org/EN/Issues/IntOrder/Pages/IEInternationalorderIndex.aspx
<註2>
前述の通りTPPの協定文には日本語による正文がありません。しかも5000頁をこえる大部のものです。そこで山田正彦氏(元農林水産大臣、TPP交渉差止・違憲訴訟の会幹事長)や内田聖子氏(アジア太平洋資料センター事務局長)などが中心となって「TPPテキスト分析チーム」が起ち上げられました。この集団によるTPP協定文の詳しい分析は下記にあります。
アジア太平洋資料センターに掲載されている【TPP協定文分析レポート】



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「続・時代は変わる」 新聞掲載とその反響

国際教育(2016/02/10)、カタロニア独立運動、社会主義者バーニー・サンダース、虐殺の荒野グアテマラ、サルバドル・オプション、拷問/暗殺学校SOA(School of the Americas)


 安倍晋三氏の地元で頑張っている地方紙「長周新聞」が、2015年12月21日号の一面すべてを使って、私の小論「時代は変わる」 "The Times They Are a-Changin"を掲載してくれました。
 編集部からの連絡では、それにたいして、かなり大きな反響があったようです。そこで、その続編を書いたところ、またもや「2016年1月22日号の一面すべてを使って載せるので許可がほしい」との連絡をいただきました。
 以下は、その「続編」と、編集部からいただいた「続編」にたいする反響です。ただし、この「続編」には、「サルバドル・オプション」と呼ばれているアメリカ仕込みの凄惨な殺戮行為について詳述するゆとりがありませんでした。
 そこでブログ(2016/01/27)では、下記のような解説を書き足しましたので、併せて読んでいただければ理解が深まると思います。
チョムスキーが語る「サルバドル・オプション――磔にされたエル・サルバドル」


<註> なお、「続編」のJPEG版が読みにくいという方は下記のPDF版を御覧ください。
「続・時代は変わる」(上)
「続・時代は変わる」(中)
「続・時代は変わる」(下)
 また「時代は変わる」の正編は下記に載せてあります。
http://tacktaka.blog.fc2.com/blog-entry-246.html



今年に入って、引き続き「時代は変わる」の反響が寄せられています。
 宮崎県の読者から掲載紙複数の注文がありました。電話では、「内外の情勢を暗い気持ちでいたが、寺島先生の記事を読んで、明るい気持ちになり元気が出た。暗く見えたのは、マスコミの情報に慣らされきたからだと思った」と語っています。
 また、元鉄道労働者(現在・町内自治会長)は、「世界各地でのアメリカの衰退ぶりがよくわかる。そんなアメリカにつき従う安倍首相の馬鹿さかげんも見えてくる」と感想を語ってきました。
 断片的で申し訳ありませんが、掲載後の余韻の一端を示すものとしてお知らせいたします。(2016/01/14)


 

「続・時代は変わる」の反響が返っています。
 まず、昨年末に続き、先生に間を置かずに執筆いただいたことへの驚きと共感が寄せられます。
 サンダース候補をめぐるその後の状況やグアテマラの民衆の力など、知らなかった情報への新鮮な感動とともに、寺島先生がこれまで提起して来られた問題を、多方面から深める方向で論議が発展しつつあるように感じます。
 ある婦人活動家は、「グアテマラであのように、民衆の粘り強いたたかいが発展していることを知って、改めて民衆が本来持てる力を確信した」と語り、沖縄の婦人が次のようなに話していることを紹介してくれました。
 「昨年の三・八国際婦人デー沖縄の集いで、カナダのハーパー政権についてふれたが、寺島先生の記事で、その後の選挙での敗北の意味がよくわかっ た。先の“時代は変わる”の記事とあわせて勉強して、今年の婦人集会では、改めてカナダの民衆の力をとりあげたい」
 名古屋工業大学名誉教授は、寺島先生の記事には、前回の「時代は変わる」については、あまり語られなかったのですが、今回の続編の紙面を見ながら、次のように語っています。
 「マスコミがアメリカの報道機関のようになっているなかで、寺島先生のような活動が非常に重要になっている。私が日本語の美しさについておおっぴ らに語り出したのは、長周に掲載された一連の寺島先生の文章に励まされたからだ。英語の押しつけは、戦争と結びついているように思えてならない。 私は日本語は和の言語だと思っている。英語は短絡的な自己主張の言語で、争いによく似合う。帝国主義的な意味ではなく、日本語を世界に普及するこ とで平和に貢献できるように思っている。
 私の教え子が東北大学で教えているが、東北大では英語以外の授業でも英語を使って教える部分がかなり増えているようだ。教授会も英語でやるといっている。こんな馬鹿げたことが長続きするわけがない」(2016/01/26)


 

引き続き、「時代は変わる」の反響です。
 本日(1月29日)発行しました長周新聞第3面、「民笛」欄に、京都の**氏が「時代は変わる」に触発されて、「寺島先生の論文『時代は 変わる』に学んで」という一文を寄せられています。ご覧いただければ幸いです。
 **氏は、高齢の薬剤師で、現在、**の理事長を務めておられます。(2016/01/29)


 

(前略)さて、昨日、水産大学の**先生が、「続・時代は変わる」と関わって次のように話してくれました。
 「寺島先生の記事で、米大統領選でのサンダース候補の躍進を知り、非常に斬新な印象を持った。あれを読んでいなかったら、アイオワ州の接戦を、寝耳に水のように感じただろう。大手マスコミがほとんど取り上げてこなかったので、一般の人は突然の現象のように思わされているのではないか」。
 編集局でも、読者の国際情勢への関心が、日本の進路への切実さとかかわってきわめて高いこと、これに応えうる紙面づくりの責務を果たす意義が論議になっています。今後ともよろしくお願いいたします。(2016/02/04)





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<註> 私が上記で紹介した「サルバドル・オプション」「拷問/暗殺学校SOA(School of the Americas)」については、櫻井ジャーナルの記事(2016/01/31)も参考になります。
「中米で民主主義勢力を虐殺していた人脈がシリアで『独裁者を倒す』という名目で虐殺を繰り返す」


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大学ランキング 「格付けに振り回されて学問荒廃」

教育原理(2016年2月7日)、中学英語「全国学力テスト」、世界大学ランキング、タイムズ・ハイヤー・エデュケーション(THE)、日本版大学ランキング


 前回のブログでは、北國新聞の連載記事「知の拠点はいま(9)―金沢大学➄英語狂騒曲」(北國新聞20160113)を紹介しながら、私は次のように述べました。

 金沢大学がスーパーグローバル大学に採択されたことは知っていましたが、「2023年度までに学部講義の50%、大学院講義の100%を英語で行うとの目標を掲げた」ことまでは知りませんでした。
 これでは私が『英語で大学が亡びるとき』で批判した京都大学の計画よりも、もっと「英語化」が極端に進んでいますから、驚くと同時に不安にもなりました。というのは、拙著でも詳しく述べたように、こんなことをしていたら金沢大学の学生の学力低下は5年も経たないうちに顕在化するのではないかと思われたからです。

 
 これに関連するニュースとして、文科省が先日(2月2日)英語の「聞く・話す・読む・書く」の4技能をみるため中学3年生を対象に初めて行った英語力調査の結果を発表したことを知りました。これについて日本経済新聞電子版(2012/02/02)は次のように報じています。

 中学卒業段階で英検3級程度以上の英語力を持つ生徒の割合を2017年度までに50%以上にするという政府目標に対し、4技能とも20~40%にとどまった。意識調査では40%以上が「英語が好きではない」と答えた。
 調査は昨年6~7月、無作為に抽出した全国の国公立約600校の約6万人を対象に行った。結果は英検4級(中学中級)以下、3級(中卒程度)、準2級(高校中級)に分けて示された。
 その結果、英検3級以上の力があるとされた生徒は「聞く」20.2%、「話す」32.6%、「読む」26.1%となった。「書く」は43.2%だったが、無回答も12.6%おり、成績にばらつきが目立った。4技能それぞれの平均点は英検4級以下と低水準だった。


文科省は「中学卒業段階で実用英語技能検定(英検)の英語力を持つ生徒の割合を2017年度までに50%以上にする」という目標をかかげたそうです。
 上記の調査では「3級程度以上を50%」にするどころか「4技能それぞれの平均点は英検4級以下と低水準だった」というのですから、日経新聞の大見出し「中3英語力、国の目標[はるかに]遠く」がまさにぴったりという現実です。
 今の教科書は会話中心で、しかも来年度からは中学校でも「英語の授業は英語で」という方針を強行するようですから、拙著『英語教育が亡びるとき』(明石書店、2009)で論じたように、ますます英語力は低下していくでしょう。
 また文科省はこれと並行して、「グローバル人材の育成に向け、19年度から中3全員を対象に英語の学力テストを新設する」計画だそうですが、こんなことをすれば試験対策のための英語学習が横行し、ますます学力が低下するでしょう。
 幸いなことに、この「中3全員を対象にした英語の学力テスト」は、今のところは学校毎に公表されないようですが、 もし公表されでもしたら、試験対策のための英語学習が横行し、全国の中学校はランキング競争の嵐に巻き込まれ、英語教育どころか公教育全体が荒廃していくことは間違いありません。
 (それはすでにアメリカの学力テストで実証されています。)
 ところが眼を大学教育に向けると、事態はもっと深刻な様相を呈しつつあります。というのは文科省自身が、「世界大学ランキング上位を目指せ」と言って大学に圧力をかけて高等教育に競争と混乱を持ち込み、共通教育どころか学部教育・大学院教育の「質的転落」の拍車をかけようとしているからです。
 その典型例が、前回のブログで紹介した金沢大学であり、拙著『英語で大学が亡びるとき』で批判した京都大学でした。「英語力=グローバル人材」というイデオロギーにふりまわされて、極端な「英語化」をすすめているからです。
 ところが日経新聞(1月12日)によると、「世界大学ランキング」を発表している調査機関THEが、今度は日本に乗りだしてきて、ベネッセグループの協力を得て「日本版大学ランキング」を策定しようとしているというのです。
 こんな風潮がまかり通っていけば、中等教育どころか高等教育までもが、ますます競争の泥沼におとしいれられ、「21世紀に入ってからノーベル賞受賞者の数がアメリカに次いで世界第2位を誇る日本の地位」も、早晩、転落の道をたどることになるでしょう。
 このようなTHE&ベネッセの動きにたいして、長周新聞「文化欄」(2016/01/25)では鋭い批判が展開されていましたので、以下に紹介させていただきます。拙著『英語で大学が亡びるとき』からの引用もありました。感謝感謝です。


<註> 拙著『英語で大学が亡びるとき』でも指摘したことですが、THE(タイムズ・ハイヤー・エデュケーション)の発表する世界大学ランキングは、もともと英語を公用語とする国に有利になるようにつくられています。ベネッセグループの担当者は、このような批判も踏まえて、「日本の大学の現状に即したランキングを目指す」と言っているようですが、そもそも大学ランキングという仕組みそのものが意味をなさないものです。この点についても拙著で詳しく指摘したので、ここでは詳論しません。
 なお次に掲げるJPEG版が読みづらいというかたは下記のPDF版を御覧ください。

http://www42.tok2.com/home/ieas/UniversityRankingTsinbun20160125.pdf


日本版「大学ランキング」長周新聞20160125_convert_20160206173222



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「知の拠点はいま(9)―金沢大学➄英語狂騒曲」北國新聞20160113

教育原理(2016/02/05)、国語力上限の法則、スーパーグローバル大学、英語で大学が亡びるとき、「英語力=グローバル人材」というイデオロギー
 
 私の出身地である石川県の地元紙『北國新聞』からメールが届き、次のようなインタビューの依頼がありました。
 「書店で先生の『英語で大学が亡びるとき』を手に取り、興味深く拝読させていただきました。石川県出身で、金沢大学でも学ばれた先生に、英語化にまつわる課題についてご高見をうかがいたく、ご連絡差し上げた次第です」
 初版はたいした部数を印刷しているわけではないので一般の書店にはあまり並ばないだろうと思っていましたから、書店で拙著を見かけたというメールは驚きでした。
 話をうかがってみると、北國新聞では2016年の新年を迎えて、大学をテーマに「知の拠点はいま」と題した連載を企画しており、第1回目として金沢大学を取り上げる予定だとのことでした。メールでは企画の意図として次のようなことが記されていました。

 現在、社会部の記者数人で取材を進めております。少子化とグローバル化が進行し、国からは運営費交付金の継続的な減額提案や、「人文系廃止」通知が出されるなど、「逆風」の中で、石川・富山県内の大学がどのように変わろうとしているのか、を紹介する計画です。
 その中で[まず最初に]金沢大学のグローバル化について取り上げる予定でおります。金沢大学はスーパーグローバル大学に採択され、2023年度までに学部講義の50%、大学院講義の100%を英語で行うとの目標を掲げました。現在、教職員の英語研修を急ピッチで進めているところです。(後略)


 金沢大学がスーパーグローバル大学に採択されたことは知っていましたが、「2023年度までに学部講義の50%、大学院講義の100%を英語で行うとの目標を掲げた」ことまでは知りませんでした。
 これでは私が『英語で大学が亡びるとき』で批判した京都大学の計画よりも、もっと「英語化」が極端に進んでいますから、驚くと同時に不安にもなりました。というのは、拙著でも詳しく述べたように、こんなことをしていたら金沢大学の学生の学力低下は5年も経たないうちに顕在化するのではないかと思われたからです。
 しかも、拙著の「あとがき」でも書いたように、京都大学では外国人教員を公募したところ応募が少なくて英米人の確保に四苦八苦していて、学部の講義どころか共通教育の講義すら、その50%を英語でおこなうのは難しくなっているというニュースも耳にしているからです。
 下記に北國新聞インタビューの記事を掲載しておきますが、それをお読みいただければお分かりのように、私はインタビューで「3年もたたずに破綻するだろう。進むも地獄、退くも地獄だ」と語ったことになっています。
 しかし、あの場で「3年」と言ったかどうかは記憶にありません。とはいえ、5年も経たないうちに矛盾が顕在化することだけは確実ではないかと思っています。
 というのは、講義内容を日本語で説明してもなかなかうまく学生が理解してくれるわけではないからです。それが大学の授業の実態です。ましてや英語では「推して知るべし」でしょう。
 母国語でうまく説明できないことを、それ以上に英語でうまく説明できるはずがありませんし、また母国語で理解できないことを英語でなら理解できるということも考えられないからです。私の言う「国語力上限の法則」です。
 しかし数値目標を掲げて応募し、文科省から大金の支援を受けているわけですから、今さら退くわけにはいかないでしょう。私が「進むも地獄、退くも地獄」と述べたゆえんです。


<註> 北國新聞の「知の拠点はいま」という連載は、「プロローグ」①~④、「金沢大学」➄~⑩)という10回で、いったん完結しています。私へのインタビューは「金大➄英語狂騒曲」という題名でした。「プロローグ」もなかなか読ませる内容で、次回の連載「富山大学編」が楽しみになりました。
 なお次に掲げるJPEG版が読みづらいというかたは下記のPDF版を御覧ください。
http://www42.tok2.com/home/ieas/InterviewHokkokusinbun20160113.pdf



北國新聞インタビュー「知の拠点はいま」20160113+(2)_convert_20160205134527


<註> また拙著『英語で大学が亡びるとき』については、下記のような書評・紹介が新聞やネットに載っていることを発見し嬉しくなりました。時間があれば覗いてみてください。
『長周新聞』(20151221)
「街の弁護士日記」(20160121)
「マスコミに載らない海外記事」(20160121)
「マスコミに載らない海外記事」(20160122)
「マスコミに載らない海外記事」(20160215)

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