続・世界に恥ずべき、アメリカの選挙制度――これでどうして、民主主義を世界に押し売りすることが出来るのか?

アメリカ理解(2016/04/29)、緑の党 Jill Stein、キラリー大統領 President Killary、ヒラリー言語録「来た、見た、死んだ」、カダフィー大佐の惨殺、ゼラヤ大統領の追放

大統領候補 Jill Stein(緑の党)     大統領候補 Bernie Sanders(民主党)
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 アメリカ大統領選挙の予備選が激しく闘われています。しかし通信社ロイター(Reuters)と調査会社イプソ(Ipsos)の調査によると、アメリカ人の半分以上は特定の候補者にたいして不正がおこなわれていると感じているようです。
 そして約71%が、大統領候補の指名を代議員にまかせるのではなく直接に選びたいと思っていることも、この調査で分かってきました。代議員を選んで彼らに大統領の指名を任せる間接選挙ではなく、直接選挙で選びたいというのです。
 また何ヶ月にもわたる予備選ではなく、全ての州が同日に選挙すれば一日で済むと思っているひとたちも半数近くにのぼっています。しかも、これらの結果については共和党も民主党も変わらなかったことを、調査結果は示していました。

「有権者の50%が大統領候補者の選挙制度は『不正操作されている』―世論調査」
50% of US voters say presidential candidate system 'rigged' – poll
https://www.rt.com/usa/341153-rigged-presidential-voting-system/


 この予備選が不正に満ちていたことは、以前のブログ(2016/03/30)でも紹介しましたが、とりわけアメリカの選挙制度に大きな歪みがあることを世界にさらすことになったのはニューヨークの選挙でした。
 この選挙で勝ちを制したものが大統領候補の指名を確実にするだろうと予想されていましたし、民主党ではサンダース氏が各州予備選のたびに票を伸ばしてきていましたから、ひょっとすると、ニューヨーク州でもサンダース氏がヒラリー女史をおさえて一挙に指名への階段を駆け上るのではないか、という声すら出始めていました。
 ところが4月19日(火)、ふたを開けてみたら、ヒラリー女史が得票率 58 %対42%でサンダース氏を制して勝利宣言をすることになりました。サンダース氏は大多数の郡で勝利しましたが、ニューヨーク都市圏ではクリントン女史が大勝したのです。ところが同時に、ニューヨーク市の選挙制度の腐敗ぶりも暴露されることになりました。
 というのは、数百万人のニューヨーカーたちが、ニューヨーク州の制限的な投票法のおかげで投票できなかったからです。
 同州では期日前投票ができませんし、予備選当日の投票も許されません。
 不在者投票をする場合も正当な理由を認められた場合に限られます。当日は町にいないことを証明しなければなりませんし、障害者の場合は当日どうしても投票所に行くことができないことを示す証明書が必要です。
 また選挙日に登録して投票しようとしても、それはできません。投票者登録の締め切りは投票日の25日前だからです。
 これは、候補者たちがニューヨークでキャンペーンを始めるはるか以前ですから、自分の意見を決める材料がありませんから、これでは全く無意味です。

「数百万人のニューヨーカーたちがニューヨーク州の制限的な投票法のおかげで選挙権を奪われる」
Millions of New Yorkers Disenfranchised from Primaries Thanks to State's Restrictive Voting Laws
http://www.democracynow.org/2016/4/19/millions_of_new_yorkers_disenfranchised_from(April 19, 2016)


 一方、独立または無党派の有権者たちが2016年4月19日の民主党と共和党の「非公開予備選」で投票するためには、190日以上前の2015年の10月に彼らの党員登録を変えなければなりませんでした。
 「非公開予備選」というのは、あらかじめ党員として登録しているひと以外は、立候補者に投票できない仕組みです。
 トランプ氏の子どもたちも、父親に投票するために無党派から共和党へと登録変更しようとしましたが、「190日以上前の2015年の10月に党員登録をしなければならない」仕組みの中で、やむをえず涙をのむことになりました。
 こうして、『ネイション』誌の記者アリ・バーマンによれば、このような仕組みの中で30%ちかくのニューヨーカーが、公民権を奪われたそうです。

 しかし、どの候補者がどのような意見をもっているかは、各政党候補者の論戦を聞いてからでなくては判断しようがありません。サンダース氏の意見を聞いて民主党の党員に登録し、サンダース氏に票を投じたくなっても、すでに手遅れになっているのです。
 特にサンダース氏が生まれ育ったブルックリンでは不正が目立ちました。有権者の名前が選挙人名簿から削除されていることが投票所で判明したり、自分の投票所で投票できなかった有権者の数が何万人にもおよびました。
 WNYCラジオは、ブルックリンの登録民主党員が6万人も減っていて、そのはっきりした理由はわからないと報じています。
 それどころか、ニューヨーク市選挙管理委員会は、2015 年 11 月以降、ブルックリンの 12 万 5000人以上の有権者の名前が選挙人名簿から削除されたと認めました。
 ところが、この同じ期間にニューヨークの他の地区では、民主党の党員登録数は増えているのです。
 ニューヨーク市のビル・デ・ブラシオ市長でさえ、「有権者と投票権監視人たちから、ブルックリンの選挙人名簿者には多数の誤りがみられ、中には建物ごと、あるいは 区画ごと、まるまる有権者の名が排除されていた例もあったという報告が入っている」と発表しました。

「ニューヨーク予備選:投票所が混乱、スキャナーの故障、選挙人名簿から1区画分の登録者名がごっそり消滅」
New York Primary: Chaos at Polling Sites, Broken Scanners & Whole Blocks Purged from Voter Rolls
http://www.democracynow.org/2016/4/20/new_york_primary_chaos_at_polling(April 20, 2016)


 また、自分の政党所属が理由不明のまま変更されていることに気づいたニューヨーク州民も少なくありませんでした。
 たとえば、『ニューヨーク・デイリーニュース』紙は、ジョアンナという19歳の女子学生の例を紹介しています。彼女は2014年に大学のオリエンテーション時に民主党員として登録したのですが、先週になってから無党派として登録されていることに気づいたというのです。
 そこで慌てて選挙管理委員会に電話をしたところ、「昨年の9月に所属変更手続きをして、それを書類を10月に送付してきている」という返事だったそうです。
 彼女は、「今度初めて投票権を行使するのだから、そんなバカなことはあり得ないと抗議したが、全く取り合ってくれなかった」「私はとつぜん選挙権を奪われた」と怒りの声を記者に語っています。
 このような声はニューヨークの各地から聞こえてきて、政党所属が理由不明のまま変更されていることに気づいたニューヨーク州民は集団訴訟を起こし、自分たちが投票できるように同州の「非公開」予備選を「公開」のものに変更するよう要求しました。
 彼らは、予備選当日の投票を「公開」とし、選挙人登録をしている有権者は共和党であろうが民主党であろうが、どの候補者に投票してもよいようにする訴訟を起こしたのでした。そして裁判官の緊急判決を求めたのでした。
 しかし選挙当日までに間に合うはずがありません。
 このように日本では常識となっているようなことが、「民主主義のモデル国」と称されるアメリカで実現していないことは、まさに驚きとしか言いようがありません。

 このような事例は、次にみるように、まだまだ続きます。
 たとえば、「投票所に行ったら職員が遅れてきて、投票時間に会場が開いていなかった」あるいは「投票所のスタッフが投票機を操作できなかった」なとといった苦情が900件以上もあったそうです。 
 それだけでなく、「機械が故障しているが、いつ回復するか分からないと言われた」「機械が故障しているから別の投票所に行くよう指示された」などといった苦情が、州の各地で絶えなかったようです。
 それどころか、当日になってから「別の投票所に行くよう言われた」「別の投票所に行くよう誤った指示を出され、その投票所に行っても受け付けてもらえなかった」など、つじつまの合わない情報を伝えたという事例もあります。
 もっとひどい事例は、選挙管理委員会が予備選の期日を有権者に正しく伝えず、その通知を出しなおしをしたり、予備選の期日と秋におこなわれる本選の期日と混同させるような通知を出して、通知を3回も出し直しをするというところもあったようです。
 このようにアメリカでは、まるで発展途上国の選挙と見間違えられるような光景が展開されています。とりわけニューヨーク州は選挙制度の不備が指摘されてきたところですが、似たような光景はアメリカ全土で見られると『ネイション』誌は指摘しています。
 ただしニューヨーク市は、サンダース氏が生まれ育ったところであるだけに、ここでヒラリー女史が敗北するようなことがあれば、アメリカの政界財界に激震が走るわけですから、裏で不正操作がおこなわれるよう工作された可能性も否定できません。
 だからこそ、先にも述べたように、通信社ロイター(Reuters)と調査会社イプソ(Ipsos)による世論調査で、アメリカ人の半数近くが「予備選で特定の候補者にたいして不正がおこなわれている」と感じているのでしょう。

 日本では成人に達すれば自動的に選挙権が与えられますし、投票所で混乱することもありません。ところがアメリカでは発達した資本主義国では当然とされているような民主的選挙制度が、いまだに実現していません。
 なぜこのような仕組みが維持されているのか、それは財界・支配階級が権力者として政界を牛耳るためには、なるべく選挙権を制限する必要があるためです。
 長い間、黒人に選挙権が与えられなかったのも、2大政党以外から立候補し大統領に当選することが事実上、不可能であることも、同じ理由からです。
 (現在でも、新しい選挙法で黒人は投票権を行使するのがさらに困難になったことは以前のブログ(2016/03/30)でも紹介したとおりです。)
 アメリカでは大統領候補として「緑の党」からも内科医のジル・スタイン女史が立候補しているのですが、大手メディアはそれを報道しませんから、日本人はもちろんのことアメリカ人でさえ、このことを知らないひとも少なくないのです。
 共和党ではトランプ氏に、民主党ではサンダース氏に、若者や貧困層の支持が集まる理由が、ここにあります。アメリカでは1%の富裕層に富と権力が集中し、99%の民衆は貧困層に転落して、日々の生活をしのいでいくことに苦しんでいるからです。
 民衆は不満と怒りを誰に向けて発散してよいか分かりませんから、共和党や民主党の旧支配層から離反して、その票が一方ではトランプ氏に、他方ではサンダース氏に向かうことになりました。
 トランプ氏の支持者は主として白人の貧困層ですし、サンダース氏の支持者は主として有色人種の貧困層です。

 ふつうアメリカ民主党と言えば労働組合がその支持者で、財界寄りではなく労働者寄りと見られていますが、実態はまったく違います。ヒラリー女史は、むしろウォール街のお気に入りです。
 それはCNNが「クリントン夫妻は、2001年2月から2015年5月までの間に、729回の講演で、1億5300ドルの講演料を受け取っており、平均謝礼210,000ドルだ」と報じていることからも明らかでしょう。
 上記の事実は元財務省高官のポール・グレイグ・ロバーツ氏の言によるものですが、さらに氏は次のように述べています。

ヒラリー・クリントンが民主党大統領候補となる可能性が高いことが明らかになるにつれ、彼女は更に金をもらうようになっている。ドイチェ・バンクは、一回の講演で、485,000ドル支払い、ゴールドマン・サックスは、三回の講演で、675,000ドル支払った。バンク・オブ・アメリカ、モルガン・スタンレー、UBSとフィデルティ投資は、それぞれ225,000ドル支払った。
http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2016/04/post-7ce5.html


 ヒラリー女史は同時に「戦争屋」「殺人好き」でもあります。
 アメリカとNATOが主導して、アフリカで最も生活水準が高く自由だったリビアを侵略し、その結果、カダフィー大佐が惨殺されたとき、ヒラリー女史が嬉しげに「来た、見た、死んだ」と叫んだ映像は、あまりにも有名です。

"We Came, We Saw, He Died"
https://www.youtube.com/watch?v=Fgcd1ghag5Y(動画11秒)


 先に紹介した元財務相高官のロバーツ氏は、「戦争屋ヒラリー」を 「殺し屋キラリー」「殺し屋大統領 President Killary」とも呼び、次のように述べています。

 ヒラリーは戦争屋だ。中国を東リビアの石油投資から追い払うため、CIAが支援した聖戦士集団を利用した“アラブの春”で、安定して、基本的には協力的だったリビア政府を破壊するよう、オバマ政権を押しやった。
 彼女は夫に、ユーゴスラビア爆撃を促した。彼女は、シリアでの“政権転覆”を推進した。
 彼女は、ホンジュラスの民主的に選ばれた大統領を打倒したクーデターを監督した。民主的に選ばれたウクライナ大統領を打倒するクーデターを画策したネオコンのビクトリア・ヌーランドを、国務省に引き入れたのは彼女だ。
 ヒラリーは、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領を“新ヒトラー”と呼んだ。大統領ヒラリーは、ますます多くの戦争を保障する。

「大統領キラリー、世界はヒラリー大統領を生き延びることができるか」
President Killary: Would the World Survive President Hillary?
http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2016/04/post-7ce5.html


 よりにもよって、「ヒトラーと戦って大量の犠牲者を出しながらも第2次世界大戦の流れを逆転させる原動力となったソ連」の後継者プーチン氏を、“新ヒトラー”と呼ぶのですから、ヒラリー女史の倒錯ぶりはここに極まれり!と言うべきかも知れません。
 それに比べてトランプ氏の方はどうでしょうか。
 氏は、民主党からはもちろんのこと、共和党幹部からも、大手メディアからも攻撃され続けていますが、4月27日(水)にワシントンDCのメイフラワー・ホテルで演説した外交政策を見るかぎり、ヒラリー女史よりはるかにハト派なのです。
 トランプ氏は、アメリカが今までやってきた「政権転覆」「クーデター」外交を否定し、ロシアや中国を敵視する政策をやめると明言しています。「NATOを解体する」とまで言っているのですから、旧支配層が動転したのも無理はないでしょう。これでは、ますますトランプ叩きが激しくなること請け合いです。

『国内政策を優先』:ワシントンDCで、トランプが語る外交政策」
‘America First’: Trump lays out foreign policy vision in Washington speech
https://www.rt.com/search/?q=Trump(27 Apr 2016)


 トランプ氏はイスラム教徒の移民を禁止すると言っていますが、イギリス在住の有名なジャーナリストであるジョン・ピルジャーの意見では、イギリス首相キャメロン氏の意見と本質的には何も変わらないものです。
 キャメロン氏の言う「EU脱退」も、その裏の理由は「EUによる移民の割り当て」に反対だからです。オバマ氏やヒラリー女史も、やっていることは何も変わりません。EUに大量の難民が流れ込んでいるのは、リビアやシリアの内戦をつくり出したのは、当のアメリカだからです。
 またオバマ氏は、クリントン女史と一緒になって、中米ホンジュラスでクーデターを起こし、民主的に選ばれたゼラヤ大統領を放逐しました。貧困と闘い、成果を上げつつあった大統領です。しかし、いまホンジュラスは中南米で最も貧困で危険な国になっています。
 先日もホンジュラスの世界的に著名な先住民女性活動家が暗殺されましたが、それを黙認しているのもヒラリー女史ですし、このような貧困と危険が蔓延する国を逃れてアメリカにやってきた大量の移民を百万人単位で危険極まりない本国に強制送還してきたのも、オバマ大統領や元国務長官ヒラリーでした。

 ところが安倍政権は、このようなオバマ大統領やヒラリー女史と一緒になって戦争政策を推進しようとしています。日本の大手メディアも「アメリカ初の女性大統領」が誕生するかも知れないと持ち上げています。
 しかしニューヨークにおけるアメリカ大統領の予備選とその混乱ぶりをみれば、「アメリカ民主主義」なるものがいかに内実の乏しいものかがよく分かるはずです。
 トランプ氏やサンダース氏の功績は、この予備選を通じてアメリカ民主主義の空洞化ぶりが世界中にさらけ出されたことだと、『ネイション』誌の記者は述べていましたが、まさにそのとおりだと言うべきでしょう。
 と同時に、ヒラリー大統領が誕生すれば、最悪の場合、第3次政界大戦になるかも知れませんし、核戦争になるかも知れません。そして日本の戦争法案はいよいよ本格的に始動することになるでしょう。
 私たちは「英会話学習」「英語で授業」にうつつを抜かしている場合ではないのです。


<註> 上記小論の出典・根拠については明記してありませんが下記の記事を参照して書きました。ゆとりがある方は覗いてみてください。

‘America First’: Trump lays out foreign policy vision in Washington speech
https://www.rt.com/usa/341156-trump-foreign-policy-speech/(27 Apr 2016)

Millions of New Yorkers Disenfranchised from Primaries Thanks to State's Restrictive Voting Laws
http://www.democracynow.org/2016/4/19/millions_of_new_yorkers_disenfranchised_from(April 19, 2016)

New York Primary: Chaos at Polling Sites, Broken Scanners & Whole Blocks Purged from Voter Rolls
http://www.democracynow.org/2016/4/20/new_york_primary_chaos_at_polling(April 20, 2016)

Sanders' campaign condemns NY voter irregularities that leave 125k Democrats disenfranchised
https://www.rt.com/usa/340293-ny-primary-voting-problems/(19 Apr 2016)

New York cares: Primaries marred by allegations of voter fraud, suppression
https://www.rt.com/usa/340310-voter-suppression-ny-bernie-complaints/(20 Apr 2016)

27 Percent of New York’s Registered Voters Won’t Be Able to Vote in the State’s Primary
http://www.thenation.com/article/three-million-registered-voters-wont-be-able-to-vote-in-new-yorks-primary/ New York is the fourth-bluest state in the country, but has some of the worst voting laws. By Ari Berman(April 18, 2016)

Hundreds of New York state voters to file suit calling the closed primary 'a threat to our democratic system' after claiming their party affiliation mysteriously changed
http://www.nydailynews.com/news/politics/hundreds-ny-voters-file-lawsuit-alleged-voter-fraud-article-1.2603876 BY Laura Bult、NEW YORK DAILY NEWS(April 16, 2016)


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 「パナマ文書」と「情報を読むちから」

国際教育(2016/04/21)、パナマ文書、アメリカ国際開発庁(USAID)、ジョージ・ソロス、Open Society基金、カラー革命(Color Revolutions)、レイ・マクガバン、アニー・マカン

Annie Machon、元イギリスMI5情報部員      Ray MacGovern、元CIA高官              
Annie_Machon_3079.jpg ray_mcgovern.jpg
 
いま私たちは容易ならぬ時代に生きています。
 というのは、この記事を書いている現在でも九州では、熊本、阿蘇、大分で3つ別々の地震が同時に発生し、多数の死者を含む甚大な被害が出ているにもかかわらず、すぐ近くの鹿児島県川内原発を停止せよという声が大手メディアから一向に聞こえてこないからです。
 どうもNHKを初めとする大手メディアは人命よりも財界・権力者の利益を最優先に考えて報道しているように思われます。
 この九州の大地震とほぼ軌を一にして南米エクアドルでも大地震が起きて大被害を出しているのですから、環太平洋のどこで次の地震が起きても不思議はありません。活断層が日本全土を覆い尽くしているのですから、このまま原発を再稼働し続ければ次のFUKUSHIMAが日本のどこかで起きるのは、ほぼ確実でしょう。
 にもかかわらず大手メディアは、そのような警告を発していません。4月16日の毎日新聞は、「東日本大震災後、地震活動は活発化している。耐震化、防火対策など各自が減災を心がけたい」ということばで、「社説」をしめくくっているだけなのです。
 このような暢気(のんき)さは、何度も言うように、人命よりも財界・権力者の利益を最優先に考えているからとしか、考えられません。ですから私たちがNHKなど大手メディアの情報を読んだり聞いたりするとき、よほど注意しないと、権力者の願っているとおりの考え方に誘導されかねません。

 しかし今日わたしがブログを書きたいと思ったのは、もう一つの理由があります。それは「パナマ文書」というものが世界を席巻しているからです。
 大手メディアを見聞きしていると、あたかも中国の習主席やロシアのプーチン大統領がTax Haven「租税回避地」を利用して私腹を肥やしていることが、この文書によって暴露されたかのように思えてきます。
 たとえば日経新聞(2016/4/13)の「『パナマ文書』考、租税回避地の闇が動かす中国の権力闘争」という論説記事で、執筆者の中沢克二氏(同紙、編集委員)は次のように述べています。

「非西側勢力を狙った撹乱(かくらん)戦術で、プーチン大統領や、習主席も標的にされた」。パナマ文書に関して共産党内部ではこんな見方が目立つ。党機関紙、人民日報系の国際情報紙である環球時報も大筋、似た論陣を張った。だが、いわゆる西側でもアイスランドの首相が辞任。英首相のキャメロンまで窮地に立つ。中国の認識は的を射ていない。


 しかしこの「パナマ文書」によって暴露された大物は、アイスランドの首相や英首相キャメロンの亡父だけで、世界の経済大国アメリカや日本の財界人政界人は誰も暴露されていないのです。
 私が「パナマ文書」の報道を知ったとき、まず第一に浮かんだ疑問は、「なぜ世界の経済大国アメリカや日本の財界人政界人は誰も暴露されていないのか」でした。
 このような奇怪な事実を中沢氏はまったく取り上げていません。「西側でもアイスランドの首相が辞任、英首相のキャメロンまで窮地に立っている」からといって、「中国の認識は的を射ていない」というのは、必ずしも正しい認識とは言えないでしょう。
 西側の人物を誰も入れなければ、この情報は初めから怪しまれてしまいます。だからこそアイスランドの首相と英首相キャメロンの亡父を入れたのだろう―これが私の頭にすぐ浮かんで来た仮説でした。

 すると、私の仮説を裏付けるかのように、次の二つのニュースがRTを通じて流れてきました。

US government, Soros funded Panama Papers to attack Putin – WikiLeaks
「アメリカ政府と投資家ソロスがプーチン大統領攻撃のため『パナマ文書』に資金提供」
https://www.rt.com/news/338683-wikileaks-usaid-putin-attack/

Who’s funding this?’ CIA & MI5 whistleblowers question credibility of Panama Papers coverage
「これに資金を提供しているのは『誰』か?アメリカのCIAとイギリスのMI5の内部告発者が『パナマ文書』の信頼性に疑問を投げかけている」
https://www.rt.com/op-edge/338709-funding-cia-panama-papers/


 ウィキリークス(2016/04/06)は、次のような理由で、その情報の信頼性に疑問が残ると警告しました。
 この文書はICIJ「調査報道国際コンソーシアム」とOCCRP「組織犯罪・汚職報告プロジェクト」によって作成されたものだが、このICIJおよびOCCRPという組織そのものが、CIAの表の組織「アメリカ国際開発庁」(USAID:United States Agency for International Development)および億万長者の投資家ジョージ・ソロスが運営する「Open Society基金」によって資金援助されているから、というわけです。
 CIAは世界中で武力による政権転覆をはかってきたことは周知の事実ですし、最近は武力だけに頼ることなく「民衆蜂起」という体裁でクーデターを起こすことも多くなりました。2003年グルジアのバラ革命、2004年ウクライナのオレンジ革命、そして暴力が多く用いられたが、2005年キルギスのチューリップ革命などが、これに当たります。
 そして、これらのいわゆる「色の革命」(Color Revolutions)または「花の革命」(Flower Revolutions)に、「Open Society基金」を通じて資金提供してきたのがジョージ・ソロスでした。ですから、ウィキリークスがパナマ文書の信頼性に注意しろといいたのには、それなりの根拠があったわけです。

 もうひとつ、ウィキリークスが「この文書はプーチン大統領を標的にしたものだ」と述べた背景には、この文書にプーチン大統領の名前が載っていないにもかかわらず欧米の大手メディアが新聞やテレビのトップ記事としてプーチンの大きな顔写真を連日のように載せ続けたことにあります。
 EUの幹部およびNATO軍は、ウクライナの政変およびクリミアの独立(=ロシアへの編入)がロシアによる欧州侵略であるとして、プーチン大統領を強く非難してきましたし、EU各国の大手メディアも一貫してプーチン非難を繰りかえしてきましたから、パナマ文書の暴露を利用して、プーチン攻撃をするのは当然のことでした。
 しかしウクライナの政変はアメリカが裏で画策したクーデターであったことは今では歴然としています。このクーデターが、武装したネオ・ナチを使って、選挙で選ばれた大統領を追放したことも、さまざまな証拠が出てきていて今では公然の秘密になっているのですが、EUの幹部は大手メディアを利用して、いまだに「ロシアによる欧州侵略」という宣伝扇動を続けています。
 そこにパナマ文書が登場したのですから利用しない手はないでしょう。
 しかし、このパナマ文書に疑問を投げかけたのは、ウィキリークスだけではありませんでした。もとCIAの高官だったレイ・マクガバン氏(Ray McGovern)も「なぜ文書の一部だけを公開するのか、ウィキリークスのように、入手した文書はインターネットのアーカイブで全文書を公開し、すべてのひとが検証できるようすべきだ」「これではプーチンの悪魔化に手を貸すだけだ」と述べています。
 またイギリスの諜報機関MI5の元情報部員アニー・マコン女史(Annie Machon)も、「企業メデイアは事件を大げさに書きたてて衝撃力を強くし、儲けを大きくしたいと思っている。だから、このような情報が出てきたとき、まず資金源はどこか。それによって利益を得るのは誰かを考えるべきだ」と述べています。彼女はまた、いま最も求められているのが “crowdsourcing journalism, crowdsourcing democracy” だと言っています。
 ここで言う “crowdsourcing” とは、『英辞郎』によれば、「無償または低額報酬を条件として(インターネットを介して)不特定多数の人々に分析などを依頼すること」であり、これはマクガバン氏の「ジャーナリストが得た情報は全文公開するのが原則」という主張と符合するものです。

 ところが、冒頭で紹介した日経新聞の中沢氏は「今回の情報で出てきたのは親族の休眠会社で、習本人ではない」ということは認めつつも、この記事を次のように締めくくっています。

中国では来年、5年に1度の共産党大会が開催される。「ポスト習」が絡む最高指導部人事が焦点になる。このルールなき闘いを前に、虎視眈々(たんたん)とパナマ文書の政局への利用をうかがう勢力が内部にいる可能性がある。習の一枚看板である「反腐敗」に逆風が強まっている。


 しかし、このような分析では、CIAの「USAID」やソロス氏の「Open Society基金」がICIJやOCCRPに資金援助をした理由が、このような情報を大手メディアによって流布させることによってロシアや中国の内部に矛盾対立を激化させ(いわゆる「不安定化工作」)、あわよくば政権転覆にまでつなげたいというアメリカの政策は、永遠に視野から消えてしまいます。
 これではアメリカ政府の意図にまんまと乗せられた論評だと言わざるを得ません。

 しかし、「大手メディア・企業メデイアは、財界・政界が国民に信じさせたいこと・見せたいと思っていることを、報道するのが任務だ」とマクガバン氏もマコン女史も言っているのですから、日経新聞が上記のような分析・論評になるのも当然と言うべきかも知れません。
 だとすれば、私たちはもっともっと賢くならねばなりません。なぜなら私が冒頭でも述べたように、クーデターですら「民衆蜂起」というかたちで遂行されるという「容易ならぬ時代」にいま私たちは生きているからです。いまブラジルで起きている「女性大統領ルセフ氏を追い落とそうとする動き」も、その典型例ではないでしょうか。 
 金持ちや大企業に手厚い減税策が施され、一般庶民は消費税増税や福祉・医療・教育への予算が削られる一方でも (そして多くの若者が結婚も出来ない低賃金、「派遣社員」としての生活に喘いでいても)、それを「1億総活躍社会」と呼び、それに疑問をほとんど投げかけることのない大手メデイアに囲まれて、私たちは毎日を生きています。
 でから、何度も言うように、いま私たちは容易ならぬ時代に生きているのです。


<註1> 最近のブラジル情勢については下記を御覧ください。

* ブラジル大統領の弾劾は不正疑惑の議員を使い、米国政府が指揮して行われている可能性が大きい
http://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201604210000/ (櫻井ジャーナル、2016.04.21)
* 元アメリカ財務省高官ロバーツ氏は語る 「ワシントンは、ブラジルを初めとするBRICSへの攻撃を開始」

http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2016/04/brics-63ec.html (マスコミに載らない海外記事20160424)


<註2> 金持ちや大企業がTax Haven「租税回避地」に逃げ出すのを防ぎ、1986年以前の累進課税に戻すだけで、充分に福祉・医療・教育への財源は出てくるのです。消費税を増税しなくても、財源は出てくるのです。

消費税の増税は必要か―月刊『楽しい授業』編集部への手紙
http://www42.tok2.com/home/ieas/consumption_tax.pdf
資料1: 法人税率の推移・税収増減額 公開081113_
http://www42.tok2.com/home/ieas/syotokuzeiritsu_image.pdf
資料2: 所得税・個人住民税所得割の税率構造の推移_ 公開081113
http://www42.tok2.com/home/ieas/syotokuzeiritsu_image.pdf
資料3: 所得税(国税)、社会保険料、消費税の平均実効負担率 公開081204
http://www42.tok2.com/home/ieas/Jinno-siryop.162.pdf


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日本の高齢者、生活費軽減のため犯罪人生へと転落――アベノミクスがつくりだしたもの

総合文化(2016/04/06)、アベノミクス、民営化・規制緩和、市場原理主義、新自由主義経済、新保守主義(Neoconservatism、ネオ・コンサバティズム, 略称:ネオコン)


日本の高齢の囚人たち 万引きの35%が60歳以上の高齢者によるものだ
高齢者の囚人グラフ
http://www.ft.com/intl/cms/s/0/fbd435a6-f3d7-11e5-803c-d27c7117d132.html#axzz44im6fXy6


 東京に拠点をおく研究所カスタム・プロダクツ・リサーチ(Custom Products Research)のマイケル・ニューマン氏がおこなった「高齢者犯罪の経済学」による調査・研究によれば、日本の刑務所における高齢者の収容者数がこのところ激増しつつあります。
 この研究が示すところによると、万引きの約35%が60歳で、そのうち、再犯者の40%が同じ犯罪を6回以上も犯しています。これを単に法律にたいする軽蔑と説明するのは、その裏にひそむ真の原因を覆い隠すことになってしまうことになります。
 というのは、いま日本では生活保護を受給する人の割合が戦後で最大になっていて、しかも高齢者の約4割が独りで暮らしていますから、刑務所を出ても、所持金や家族がないため、すぐに犯罪に手を出して、刑務所に戻ることになるからです。
 これについてニューマン氏は「刑務所では1日3食のちゃんとした食事、無料の医療、宿泊施設が保証される。これでは悪循環だ」と述べています。
 これは安倍政権を初めとする歴代自民党政権が進めてきた「規制緩和と民営化」「庶民への増税と福祉や医療費の削減」というアメリカ流の経済政策が何をもたらすかを如実に示しています(しかもこれはアメリカから強制された政策でもある)。
 とりわけ安倍政権がすすめている経済政策は、アメリカから強制された日本の軍備拡張と一体になっていますから、「庶民増税」「金持ち企業大減税」「介護医療費・生活保護削減」そして「防衛省軍事費の激増」が手を携えて驀進(ばくしん)することになっていますから、ますます庶民の購買力が減少し、景気が回復する兆しは全く見られません。
 これを称して大手メディアは「アベノミクス」ともてはやしていますが、同志社大学の浜矩子氏は「アホノミクス」と言っています。まさにさもありなんと言うべきでしょう。
 このまま事態が進行すると、2060年までには、高齢者の犯罪者数は65歳以上人口の40%になるだろうと予想されています。
 この調査が発表されると、テレグラフ紙やフィナンシャル・タイムズ紙など世界の大手メディアがこれを取り上げて紹介しましたから、安倍政権は世界中にその恥をさらすことになりました。
 そこで、フィナンシャル・タイムズ紙のレオ・ルイス記者による配信記事を、以下に訳出して紹介させていただきます。


日本の高齢者、生活費軽減のため犯罪人生へと転落
Japan’s elderly turn to life of crime to ease cost of living
レオ・ルイス(Leo Lewis、東京) March 27, 2016

講習を受ける高齢の囚人たち
高齢者の囚人
http://www.ft.com/intl/cms/s/0/fbd435a6-f3d7-11e5-803c-d27c7117d132.html#axzz44im6fXy6

日本の刑務所制度は財政危機に追い込まれつつある―人口動態、福祉費不足、そして新しく致命的な犯罪者つまり定年退職者の常習犯によって。銀髪の窃盗犯たちが刑務所に入ることを切望している、と専門家は言う。

犯罪総計が示すところによると、万引きの約35%が60歳以上だ。そのうち、再犯者の40%が同じ犯罪を6回以上も犯している。

ある研究報告書(後述)の結論によれば、とくに万引き犯の急増は、有罪判決を受けて刑務所に入れられることをねらった行為ではないかと推測できる充分な理由がある。刑務所は無料の食事、宿泊施設、医療を提供してくれるところだからだ。

常習犯的犯行の数字は、有罪判決を願っている老人の暗く切迫した願いを示している。食費を削り、安くて汚らしい部屋に住んだところで、最小限の貯えしか持っていない独り身の定年退職者は、貧弱な国民基礎年金の年額78万円(6900ドル)では生活できない。彼らの生活費は、それよりさらに25%以上も必要だからだ。以上の数値は、東京を拠点とする研究所カスタム・プロダクツ・リサーチ(Custom Products Research)のマイケル・ニューマンがおこなった「高齢者犯罪の経済学」によるものだ。
http://www.custprd.com/rsch/Crime%20in%20Japan%20-%20Geriatric%20Jailbirds.pdf

上記の報告書によれば、200円のサンドイッチを盗むだけで2年の禁固刑になりうる、そして国にとっては840万円の出費だ。

高齢者犯罪の数は加速している。そして専門家によれば、日本の刑務所は今後数十年間の増加に備えて拡張されたので最近の収容率は約70%だ。しかし法務省公表の最新統計(1991年から2013年)によれば、同じ犯罪を6回以上も犯して刑務所に収容されている高齢者の数字は460%も急増した。

高齢者の犯罪率上昇を単に法にたいする軽蔑と説明するのは、その裏にひそむ暗い傾向を覆い隠すものだ、と経済学者や犯罪学者たちは語る。定年退職者の犯罪は高齢者人口動態の一般的な上昇以上に急増しており、2060年までには、その犯罪者数は65歳以上人口の40%になるだろうと。

東京にある日本生命基礎研究所(NLI Research Institute)の土堤内昭雄(どてうち、あきお)主任研究員は、再犯者の比率は上昇し続けるだろうと予測している。
http://www.ft.com/intl/world/asia-pacific/japan
「日本の社会情勢は高齢者が犯罪を犯さざるを得なくさせている」と彼は述べる。
「生活保護を受給する人の割合が戦後で最大になっている。高齢者の約4割が独り暮らしだ。悪循環だ。刑務所を出ても、所持金や家族がないため、すぐに犯罪に頼る」

「高齢者の犯罪数は、政府による福祉への引き締め政策とその結末を示すものだ。世界第2位の経済大国が老化・劣化しつつあるのだ」と彼は付け加えて言う。
「刑務所予算をどのように操作しようが、最も必要としている人にたいする福祉支出を政府が削減対象にするのは、悲しく非能率的な方法である」。

「刑務所が満杯になるのを防ぐために単に高齢者の囚人を早期に釈放しようとするだけの政策は、すでに再犯率の増加という克服しがたい法的問題に直面している」と土堤内昭雄主任研究員は言う。
「現状の政策を続ければ、刑務所は、いずれ高齢者であふれかえることになるだろう」。

<註> 
 この記事を読みながら私は、市民の哀歓を描いて右に出るものがいないと言われる短編の名手オー・ヘンリーの、「警官と讃美歌」 (The Cop and The Anthem)という珠玉の作品を思い出していました。
 「あるホームレスが越冬策として、わざわざ刑務所に行こうと街でいろいろな悪事を試みるのだが……。」
 まだ未読の方はぜひ読んでいただきたいと思いますし、英語教師なら、いちどは教材として使っていただきたいと思います。
 そうすれば、ひたすら会話の文句を丸暗記し会話ごっこをするだけの英語授業、英検やTOEIC・TOEFLなどの受験勉強ばかりに追われる英語学習ではなく、豊かな内容にふれて人間性を回復する英語授業・英語学習の世界が開けてくるのではないでしょうか。
 今の文科省は、「文系排除、実用一点張りの教育」を声高に叫んでいますが、人間にとってやはり文学は必要なのです。




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