「ヒラリー・クリントンとは誰か」その後、読者からの反響(3)

アメリカ理解(2016/11/21)、元ホンジュラス大統領ゼラヤ、ホンジュラス先住民活動家カセレス、リビアのカダフィ大佐、アフリカ統一通貨、世界最大の灌漑事業

2009年6月28日の軍によるクーデターで
国外追放されたホンジュラス大統領マヌエル・ゼラヤ(左)

ゼラヤ大統領2 ホンジュラス、ベルタ・カセレス2
2016年3月3日に自宅で銃殺された、
ホンジュラスの先住民・環境保護運動家ベルタ・カセレス(右)


 以下では、前回のブログで紹介したFさんからいただいたメールに、簡単なコメントだけを付記させていただきます。

(1)「先生は2009年ホンジュラスのクーデタに触れておられますが、ヒラリーの関わりを告発していた人権活動家Berta Caceresも今年3月、ホンジュラスの自宅で殺されています。ご存知かもしれませんが、Clinton Body Count というサイトを見ますと、ビルの州知事時代、ビルの大統領選挙前後、 ヒラリーの大統領選挙前に死者が集中しています。」


 上記の「Clinton Body Count というサイト」は、いただいたメールで初めて知りました。衝撃的でした。リビアの体制転覆から11か月後の2012年9月11日、アメリカの領事館と「別館」が攻撃され、クリストファー・スティーブンス大使を含むアメリカ人4名が殺されました。でも私は、そのようなサイトの存在を知りませんでした。
 ヒラリー国務長官による黙認の下で、ホンジュラスでもゼラヤ大統領がクーデタで国外追放されたあと、新しい政権は抗議し抵抗するひとたちを大量に殺害しています。Fさんの指摘されている先住民の女性活動家ベルタ・カセレスもそのひとりでした。
Before Her Assassination, Berta Cáceres Singled Out Hillary Clinton for Backing Honduran Coup 「暗殺される前に、ベルタ・カセレスは、ホンジュラスのクーデターを理由に、ヒラリーを指弾」
https://www.democracynow.org/2016/3/11/before_her_assassination_berta_caceres_singled
 このように中南米では暴力・殺害が荒れ狂っていますが、しかしクリントン夫妻で、さらに問題なのはハイチの扱いです。これについてもふれたいことは多々あるのですが、どんどん伸びていきそうですので、断念します。以下を御覧ください。
Haiti: How Bill and Hillary Clinton Wrecked an Entire Country
「クリントン夫妻はどのようにしてハイチを破壊したか」

http://www.globalresearch.ca/haiti-how-bill-and-hillary-clinton-wrecked-an-entire-country/5556817

(2)「空港や街角には、カダフィの巨大な肖像画しか掲げられておらず、独裁者であることは疑いの余地がありませんが、町の人の表情に、思ったことを言えない恐怖感はなく、リビア人ガイドはよくカダフィをからかう冗談を言っていました。」「また、イスラム原理主義を危険視したカダフィは、原理主義者を山に追い詰め、一網打尽に殺戮した、とガイドが説明してくれました。絨毯爆撃された山は数十年経っても禿山のままでした。」


 最近ますます明らかになっていることは、アメリカやNATO軍はイスラム原理主義者を傭兵として使い、カダイフィ大佐を惨殺したことです。そして、その原理主義者が今ではシリアで破壊と殺戮を繰りかえしているのですが、アメリカもフランスもNATO軍も、表ではISISと戦うと言いながら、実態は密かに支援しているという事実です。
 カダフィ大佐はイスラム原理主義者を放置すると、こういう事態になることをじゅうぶん承知していたから徹底的に殲滅しようとしたのですが、アメリカとNATO軍が設定する「飛行禁止区域」のため、目的をはたすことが出来ませんでした。
 ですから、リビア国内でFさんを案内してくれたリビア人ガイドが「町の人の表情に、思ったことを言えない恐怖感はなく」「よくカダフィをからかう冗談を言っていました」の姿からは、カダフィ=独裁者というイメージは想像しがたいものがあります。
 いまEU諸国では「プーチン=独裁者=ヒトラーの再来」というイメージがばらまかれているようです。また今度のアメリカ大統領選挙でも、「トランプ=独裁者プーチンの回し者」というイメージが、ヒラリー女史や大手メディアによって大宣伝されましたが、カダフィ=独裁者というイメージも、似たり寄ったりだったのではないかと思います。
 ですから、「イスラム原理主義を危険視したカダフィは原理主義者を山に追い詰め、一網打尽に殺戮した」と説明してくれたガイドも、カダフィがイスラム原理主義者を殲滅してくれたことを自慢したくて、「数十年経っても禿山のまま」になっている「絨毯爆撃された山」を案内したのではないかと推測しました。
 (これもあくまで推測ですが、ガイドが案内時に使ったのは、「殺戮」ということばではなく、恐らく「殲滅」といったことばだったのではないでしょうか。)
 さもなければ、「公開で鞭打ちの刑や斬首の刑を実行して恥じない」サウジアラビアなど王制独裁国家のように、リビアもずっと以前にイスラム原理主義の国になっていたでしょうし、現に、現在のリビアは混乱の極致です。

(3)「水パイプラインはまだ部分的でしたが、あちこちにパイプが置かれ、工事が進んでいました。砂漠のガソリンスタンドでも水洗トイレがあり、水が出ました。水パイプライン網がカダフィのライフワークだった、なんて、西側メディアが取り上げたことがあるでしょうか。今、遺跡や水パイプライン、あれだけ豊かに暮らしていた人々はどんな状態になっているのか、考えると胸が痛みます。」


 私は外国旅行をするとき、その国の民度・生活水準の高さを、公園などにある公共のトイレで測ることにしています。
 一般的に民度・生活水準の低い国は、水洗ではなく、しかも悪臭が立ちこめていました。このような汚いトイレであるにもかかわらず入り口では番人がいてお金を取るのです。
 私は5~6年前にギリシャのアテネとトルコのイスタンブールを訪れましたが、国会議事堂の目の前にある有名なシンタグマ広場のトイレは、やはり水洗ではなく、しかも悪臭が立ちこめていて、入り口では番人がいてお金を取っていました。このような状態はイスタンブールでも同じでした。
 世界的な観光都市であるアテネやイスタンブールでさえ、このような状態だったのに、Fさんが訪れたリビアでは、「砂漠のガソリンスタンドでも水洗トイレがあり水が出た」というのですから、いかにリビアが進んだ国だったがよくわかるはずです。
 このブログの最後尾に「カダフィ大佐が遂行しつつあった世界最大の灌漑事業」の地図を載せてありますが、このような壮大な事業が進展しつつあったのに、それをアメリカとNATO軍は無残にも破壊してしまったのです。
 次のサイトを見ていただければ、灌漑地図だけでなく、カダフィ大佐の著書『緑の書』の説明もあります。カダフィの目指した人権や民主主義がどのようなものだったかの片鱗を知ることができるように思います。
Ten Things You Didn't Know About Libya Under Gaddafi's So-called Dictatorship
「みんなに知ってほしくない、いわゆる『独裁者』カダフィとリビアの、10の事実」

https://urbantimes.co/2014/05/libya-under-gaddafi/
 また上記のサイトには、カダフィ打倒の隠された真の理由「金本位制を土台としたアフリカ統一通貨」についても詳しい説明があります。これを許せば、ドルを基軸とした世界支配が揺らいでしまいますから、これはアメリカとしてはどうしても許せない事態だったのでしょう。
 一般的には進歩的と目されていたフランス社会党のオランド政権も、リビアを猛爆する先頭に立っていたことは本当に悲しいことでした。もっともイギリスの労働党政権も、ブレア首相がアメリカと一緒になってイラク侵略の先頭に立っていたのですから、「いずこも同じ秋の風」と言うべきかも知れません。それにしてもイラク戦争に反対していたフランスはどこへ行ったのでしょうか。当時のフランスは保守政権だったはずなのに、アメリカの言いなりになりませんでした。

 簡単なコメントで終わるつもりだったのに書き出したら止まらなくなってしまいました。まだまだ書きたいことが残っているのですが、12月2日に和歌山で予定されている講演準備も、そろそろ始めなければならないので、Fさんには申し訳ないのですが、ここで一端、筆をおかせていただきたいと思います。


リビアのカダフィ大佐が遂行した世界最大の灌漑事業
https://urbantimes.co/2014/05/libya-under-gaddafi/
リビア、カダフィ、灌漑計画



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「ヒラリー・クリントンとは誰か」その後、読者からの反響(2)

 前回のブログで、2回にわたって長周新聞に載せられた拙論「ヒラリー・クリントンとは誰か」にたいする新聞読者からの反響を、紙面と共に紹介しました。
 先にも述べたように、アメリカ大統領選の投票日(11月8日)が目前でしたし、山田昇司(編)『寺島メソッド 英語アクティブラーニング』(明石書店)の監修者として、その最終校正に追われている最中でしたから、文章の推敲が足りず荒削りのまま残されてしまい、かなり読みにくいものになってしまいました。
 それで新聞読者だけでなくブログ読者のかたに申し訳なく思っていたのですが、先日、フランス在住(Fさん)の方から「ブログを読ませていただきました」とのメールがあり、驚愕してしまいました。まさか海外在住で私のブログを読んでおられる方がみえるということは、私の想像を超えていたからです。
 そこで、さっそく連絡をとり、いただいたメールを紹介させていただく許可を得ました。Clinton Body Count というサイトの存在が私には衝撃だったからです。そこで以下では、Fさんのメールと長周新聞の拙稿(下)を紹介することにします。次回は、このFさんのメールについて簡単なコメントを書く予定です。

寺島先生、
 「ヒラリー・クリントンとは誰か」上下を興味ふかく読ませていただきました。私が話すより遥かに説得力がありますので、友人にもリンクを送りました。
 この夏、NYに滞在していた間に、クリントンに関わる人がバタバタと不審な死を遂げたり、殺されたりしているのを知り、戦慄を覚えました。先生は2009年ホンジュラスのクーデタに触れておられますが、ヒラリーの関わりを告発していた人権活動家Berta Caceresも今年3月、ホンジュラスの自宅で殺されています。
 ご存知かもしれませんが、Clinton Body Count というサイトを見ますと、ビルの州知事時代、ビルの大統領選挙前後、 ヒラリーの大統領選挙前に死者が集中しています。州知事時代の死者の大多数は、アーカンソーの空港を拠点にしたメデジンカルテルによる麻薬密輸関係なので、必ずしもビル・クリントンがらみとは言えないでしょうが、これほど大掛かりで長期的な麻薬密輸が、知事の黙認あるいは援助なしにできるはずがない、という考えから、サイト主はこのボディカウントに含めたのだと思います。
 私は2004年、ギリシャ、ローマ遺跡を見るため、リビアに行きました。そこで、私たちがいかに真実を知らされていなかったか、を思い知らされました。空港や街角には、カダフィの巨大な肖像画しか掲げられておらず、独裁者であることは疑いの余地がありませんが、町の人の表情に、思ったことを言えない恐怖感はなく、リビア人ガイドはよくカダフィをからかう冗談を言っていました。美術館ではスカーフなど被っていない女子大生が英語で話しかけてきて、女性の教育水準が高いように思われました。ギリシャ、ローマ遺跡には小学生がたくさん遠足に来ていて、自らの歴史遺産として学校教育でも大切にしていることが分かりました。
 ショックだったのは、カダフィがいると思われた場所が米軍に爆撃され、多くの村人がが殺されたこと、それを西側メディアは報道しなかったため、私は何も知らなかったことでした。また、イスラム原理主義を危険視したカダフィは、原理主義者を山に追い詰め、一網打尽に殺戮した、とガイドが説明してくれました。絨毯爆撃された山は数十年経っても禿山のままでした。
 水パイプラインはまだ部分的でしたが、あちこちにパイプが置かれ、工事が進んでいました。砂漠のガソリンスタンドでも水洗トイレがあり、水が出ました。水パイプライン網がカダフィのライフワークだった、なんて、西側メデイアが取り上げたことがあるでしょうか。今、遺跡や水パイプライン、あれだけ豊かに暮らしていた人々はどんな状態になっているのか、考えると胸が痛みます。
 友人にはよく、私が見たことや感じたことを話していたのですが、とんでもないテロリスト独裁者、というカダフィに関する固定観念はなかなか拭えませんでした。私たちみんな、大メディアに「洗脳」されているのですね。
 私はフランスに住んでいますが、サルコジが大統領になった最初の国賓がカダフィでした。変だな、と思いました。かなりの額の選挙資金がカダフィから流れたのではないか、と思います。土管に隠れていたカダフィにトドメを刺したのはフランス兵だと言われていますが、それならつじつまが合います。
 それにしても、今回の選挙結果は、アメリカ民主党DNCの失策ではないでしょうか。サンダースなら絶対、トランプに勝てたでしょう。多くの人は、トランプを選んだのでなく、ヒラリーを選びたくなかったのです。本当に残念です。
 これからも先生の鋭い分析を読ませていただきます。ありがとうございます。


<註> 前回と同じく、長周新聞「ヒラリー・クリントンとは誰か」(下)の第2面の紹介については割愛させていただきます。また写真や私の主張の典拠を示すURLを除いた、テキストだけのものは下記で読むことが出来ます。
http://www.h5.dion.ne.jp/~chosyu/hirarikurintontohadarekage.html(上)
http://www.h5.dion.ne.jp/~chosyu/hirarikurintontohadarekage.html(下)



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「ヒラリー・クリントンとは誰か」その後、読者からの反響(1)

 拙論「ヒラリー・クリントンとは誰か」は、実は10月下旬に、長周新聞から電話で突然の執筆依頼があり、時間的ゆとりがないまま執筆したものでした。
 新聞掲載は11月2日(水)と11月4日(金)でした。連載の両方とも、1面のすべてだけでなく、2面の半ばまで紙面を占領していて、こちらのほうが驚かされました。
 まだまだ書きたいことがあったのですが、投票日が目前でしたから断念しました。その関係で文章の推敲が足りず荒削りのまま残されてしまい、かなり読みにくいものになってしまい読者のかたに申し訳なく思っています。
 それでも、新聞編集者のかたから下記のような反響があったと聞き、なかば徹夜状態で書きつづけた甲斐があったと胸をなで下ろしています。
 トランプ当選をどのように見るかについては後日あらためて私見を述べたいと思いますが、今回と次回は長周新聞の紙面と読者からの反響を紹介するにとどめます。

<註> 長周新聞2面の紹介については割愛させていただきます。また写真や私の主張の典拠URLを除いたテキストだけのものは下記で読むことが出来ます。
http://www.h5.dion.ne.jp/~chosyu/hirarikurintontohadarekage.html


On 2016/11/08 23:32:
 寺島先生、「ヒラリー・クリントンとは誰か」の反響の一部です。
 下関市豊北町のはぐるま座公演実行委員会の開始前に、本紙が配布されたところ、参加者がいっせいに紙面を広げ、記事を食いるようにみつめ、「格差がひどくなっているのが問題だ。日本も他人ごとではない」などと、論議が発展しました。
 **大学でも、数学の先生が、「クリントンは悪いやつですね。トランプを勝たせたくなった。カダフィについても、ああいう人だとは知らなかった。アメリカは自分の目的のためには ムチャクチャな宣伝をして誘導していく」j怒りをあらわにしています。
 フランス語の先生も、「アメリカの産軍官複合体は、戦争で消費するしかもうけ口がなくなっていることがよくわかる」とこたえています。
 また、ドイツ語の先生が、「寺島先生にあそこまで、書いてもらってうれしくなる。このような知識人が日本にもいることをもっと宣伝する必要がある」と感激して訴えてきました。
 今から選挙結果をめぐって、さらに先生の記事の反響が広がり発展する趨勢にあります。追ってお伝えするつもりです。よろしくお願いいたします。


On 2016/11/09 21:09:
寺島先生
 トランプ勝利の結果を受けて、「ヒラリー・クリントンとは誰か」に熱を帯びた反響が返っています。
 下関の50代女性がつぎのように語っています。
 「寺島先生の論文はクリントンのシリアでの飛行禁止区域を主張するなど、自分の知らないことを詳しく書かれていて、大統領選がどのような背景でやられてきたのかがよくわかった。トランプがなぜこれほどの支持を得て勝ったのか、寺島先生の記事を読んでなかったら、わからないままでいただろう」
 下関市内の中学校の職員室で、トランプ勝利をどう見るのかをめぐって論議になっているところに、 「ヒラリーとは誰か」を持ち込んだら、 「しっかり読ませていただきます」と歓迎されました。
 マスコミによる「トランプ=過激派、女性蔑視、排外主義者」の宣伝の影響もあり、「怖い人」「嫌らしい人」「日本は大変なことになる」と拒絶反応も出されます。
 その一方で、なぜ「アウトサイダー」とされたトランプが勝ったのかについて理性化したいとの思いも強いことから、 「ヒラリーとは誰か」が染みいるように受け入れられているように思われます。


On 2016/11/14 0:48,
寺島先生
  「ヒラリー・クリントンとは誰か」のその後の反響の一部です。大統領選の結果を受けて、「オバマとは誰か」への反響を思い起こすような熱っぽさを感じます。
 広島の被爆者が、子どもたちに体験を語った後、「自分はトランプ勝利の結果に驚かなかった。寺島先生の記事を読んでいたから」と、本紙記者に話しかけてきました。
 とくに「マスコミは本当のことを書かないから、あわてている。安倍さんは、アメリカにすり寄っていこうとしているが、国民にとっては、日本がアメリカから離れて独自の方向をとるきっかけになると思う」と語っています。
 読者に共通しているのは、「トランプはひどい人だと思っていたが、クリントンの方ががあんなに悪い人だということについては知らなかった。選挙でなぜクリントンが負けたのかが、あの記事を読んでよくわかった」(下関・中学校女性教師)と、感謝の気持ちをこめた意見に代表されます。
 トランプに幻想も持たず、有利な状況を利用して、さまざまな運動を発展させようという機運が高まりつつあります。あらためて、時宜に適った企画にこたえていただいたことにお礼申し上げます。


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ヒラリー・クリントンとは誰か(下) ―アメリカ大統領選挙を目前にして

アメリカ理解(2016/11/07) 戦争省(Department of War)=和訳「陸軍省」、国務省(Department of State)、バトラー将軍『戦争はペテンだ』、リビア、カダフィ大佐、ジン『肉声でつづる民衆のアメリカ史』

写真ヒラリー「来た、見亜、死んだ」
http://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201504130000/
 

私は前回の論考「ヒラリー・クリントンとは誰か」(一一月二日号)を次のように結びました。
「このように、今まさに世界はアメリカ大統領選挙を前にして『伸るか反るか』の曲がり角に来ているのです。にもかかわらず、アメリカや日本の、リベラルを自称する知識人も大手メディアも、『アメリカ史上、初の女性大統領』という殺し文句に惑わされて、現在の深刻な事態が見えなくなっているように思われます。
 しかし現在の事態の深刻さを理解してもらうためには、ヒラリー女史が国務長官だったときだけでなく、それ以前に外交政策で彼女が何を主張し、どのような行動をとってきたかを、もっと詳しく説明する必要があります。とはいえ、すでに長くなりすぎていますので、これについては、次回の論考に譲りたいと思います。」
 そこで今回は、ヒラリー・クリントンなる人物が、アメリカの国務長官として何をしてきたかを、まず調べてみることにします。

 さて「国務長官」というと、まるでアメリカの国内行政における最高責任者のように聞こえてきますが、実は日本の「外務大臣」にあたる外交政策の責任者です。
 アメリカの「防衛省」は、今は「防衛総省」(別名ペンタゴン)と言っていますが、かつては「戦争省」と言っていました。
 日本では「陸軍省」と誤訳(意図的?)されていますが、第二次大戦が終わる前までの正式名称は、「United States Department of War」すなわち「アメリカ戦争省」でした。
 まるで外国にたいして侵略戦争をし続けてきたアメリカの歴史を象徴するような名称ですが、アメリカにとって軍事力による外交=戦争は、内政よりも重要な「国務」であったからこそ、「外務省」を「国務省」(United States Department of State)と名付けたのかも知れません。
 アメリカ軍人として伝説的な英雄スメドレー・バトラー将軍は、退職したあと自分が軍人として果たしてきた役割を振り返って『戦争はペテンだ』という著書を著し、そのなかで、右のような事情を、次のように述べています。

 私は、大企業、ウォール街、銀行、お偉方の用心棒として時を過ごした。要するに私は資本主義に奉仕する恐喝者でありギャングの一員だった」「私はウォール街の利益のために中米の六つの共和国の略奪を手伝った。恐喝の記録は長い」「ギャングの親玉アル・カポネがやれたのは、せいぜい三つの地区のボロ儲けの口を操っただけのことだ。私なんか三大陸を操ったんだ(『肉声でつづる民衆のアメリカ史』上巻四四二頁)


 このスメドレー将軍のことばは、アメリカ外交の本質を赤裸々に暴露しているのではないでしょうか。
それはともかく、ブッシュ氏が大統領になったとき、「九・一一事件」を口実にアフガニスタンを爆撃し、それをイラクへの侵略戦争に拡大したのですが、それでもアメリカによる戦争は中東の小さな範囲にとどまっていました。ところがオバマ大統領とヒラリー国務長官のもとで、戦火は一気に地中海沿岸の北アフリカ(リビアの内戦)や東ヨーロッパ近辺(ウクライナやシリアの内戦)にまで拡大しました。
 それどころか、今まではブッシュ大統領が表立って手出しをしなかった中南米にまで手を出してクーデター工作をおこなうようになりました。このような戦争やクーデターの拡大に深く関わってきたのが、ヒラリー国務長官でした。
 いま深刻な人道危機をもたらしているシリアの内戦について、ヒラリー女史が「リビアと同じような飛行禁止区域をもうけるべき」だと強く主張していることは、前回の拙稿で紹介したとおりです。
 アサド政権の要請でロシアが本格的にイスラム原理主義集団の掃討作戦に乗りだし、彼らの拠点を空爆し始めてからは、ダーイッシュ(今まではISISとかイスラム国と呼ばれていた)などのイスラム原理主義集団諸派は、負け戦です。
 サウジを中心とする湾岸諸国が資金と人員を供給し、アメリカやNATO諸国が(さらにイスラエルも)裏で武器や特殊部隊を派遣して軍事訓練をしてきたにもかかわらず、この状態なのです。
 アメリカの基本戦略は、あくまでアサド政権の転覆です。そのためにはロシア軍の空爆をやめさせる必要があります。ロシア軍の空爆はアサド政権の正式な要請によるものですから、国際法に則った行為ですが、イスラエルやNATO諸国(トルコも含む)のシリア領内における空爆は、領空侵犯になりますから、どうしてもリビアの時と同じような「飛行禁止区域」の設定が必要になります。
 これを強く主張しているのが、先述のとおり、ヒラリー女史です。
 しかし、ロシアは安全保障理事国ですから、今のままでは国連の許可を得ることができません。残された道は、偽の人道危機をつくりだして、「ロシア軍やアサド軍は民間人を無差別に殺傷している」とか、「彼らは化学兵器を使っている」とかの口実で、世論を喚起して彼らを押さえ込む以外にありません。
 他方、ロシアの主張は次のとおりです。
 「リビアでは『独裁者カダフィが自国の民衆を無差別に爆撃して大量の死傷者を出している。だから非行禁止区域を』という口実で、カダフィはイスラム原理主義集団と戦う手段を奪われてしまった。その結果、何が生まれたか。国土の荒廃と大量の難民だった。同じことをシリアでも繰りかえすつもりか」

 シリアになだれ込んでいるイスラム原理主義集団は、サウジを中心とした湾岸諸国からだけでなく、ロシアのチェチェンや中国の新疆ウイグル地区といったイスラム教徒が多い地域からも流入してきています。彼らはロシアや中国を不安定化させる勢力としてCIAが以前から訓練してきた勢力だと言われています。
 ですから、シリアが内戦で崩壊した場合、そこで勝利したイスラム原理主義集団は、次の攻撃目標として、ロシアや中国に還流し、ロシアや中国を不安定化させることに最大の精力を注ぎ込むことになるでしょう。
 今やEUとアメリカに対抗する勢力として経済的にも軍事的にも対抗する大国になりつつある動きを、アメリカとしては何としても阻止しなければなりません。
 BRICSという興隆しつつある経済共同体の中心がロシアと中国だから、これはなおさら、アメリカにとっては放置できない事態です。
 だからこそ、ロシアと中国を不安定化させることが必要なのです。
 かつて中東一円からイスラム原理主義集団(ビンラディンもその中の一人でした)をかき集めてソ連をアフガニスタンに引きずり込み不安定化し崩壊させた方法を、シリアでもやろうというわけでしょう。

しかし、これはロシアや中国にとっても座視できない重大事です。
 ロシアと違って、中国は表立ってシリアに味方しては来ませんでしたが、最近、中国も、アサド政権を支えるために、裏で大きく動きはじめていると言われるのも、このような情勢から見ると当然のこととも言えます。
 ですから、ヒラリー女史が「シリアに飛行禁止区域を!」と大声で叫び、「ロシアやシリアが言うことをきかないのであれば軍事力の行使もいとわない」と主張することは、世界大戦になることを意味します。
 この戦いは、NATO諸国やサウジなどの湾岸諸国と一緒になって、アメリカが、ロシア=シリア=イラン=中国といった勢力と、軍事力で戦うことになるからです。
 前回の論考で述べたことですが、イギリスの高級紙インデペンデントだけでなく、ヒラリー女史の自叙伝を書いたディアナ・ジョンストンなどが、イタリアの新聞イタビューで「クリントン氏の大統領選の勝利は、第三次世界大戦の勃発も含め予想外の結果をもたらす可能性がある」と語っているのも、このような背景をふまえてのことだと、私は理解しています。

 ここで、もうひとつ考えておかねばならないことは、ロシアの軍事力はシリアにおける原理主義集団との戦いで明らかになったように、通常兵器ではアメリカ軍をはるかに凌駕しているということです。
 ですから、アメリカ軍がロシア軍や中国軍と戦って本気で勝つつもりならば、残されている手段は核兵器による先制攻撃しかありません。
 しかも集団的自衛権でアメリカに縛られることになった日本も、否応なしに、この核戦争に巻き込まれるかも知れません。
 しかし、いったん核戦争が起きれば、生き残れる国はほとんどないでしょう。今は、それほど深刻な事態なのです。

 話が少し横道にそれたので、クリントン女史に話を戻します。
 ロシアはヒラリーの主張する「飛行禁止区域の設定」について、「シリアをリビアのように破壊して、再び大量の死傷者を出し、EU全土を更なる難民であふれさせようとするのか」と怒っているわけですが、このリビア内戦にヒラリーは、どのようにかかわっていたのでしょうか。
 二〇一六年一〇月二〇日は、リビアの元首だったカダフィ大佐が、アルカイダの一派に惨殺されて五周年になる日でした。
 カダイフィが殺されたとき、ヒラリー女史は国務長官として、NATO軍のリビア攻撃を指揮・監督する立場にいたのですが、カダフィ惨殺の報が届いたとき、CBSのインタビューの中で「来た・見た・死んだ」"We came, We saw, He died" と、身振り手振りをまじえて、嬉しげに言っています。
 この言葉は、共和制ローマの将軍カエサル(日本ではシーザーとして知られている)が言ったとされることば「来た・見た・勝った」をもじったものですが、その嬉しげに語っている映像がユーチューブに流れ、ヒラリー女史の冷酷さ・好戦性を浮き彫りにするものとなりました。

 では、リビアとはどのような国で、カダフィとはどのような人物だったのでしょうか。
 元財務省省高官(財務次官補)で、かつウオール・ストリート・ジャーナルの元共同編集者だったポール・グレイグ・ロバーツ氏は、このカダフィ惨殺五周年の日に、自分のブログで、それを次のように書いています。

ムアマル・カダフィは、世界で最も進歩的な指導者だった。カダフィはリビアの石油の富をリビア国民のために使っていた。
 彼は宮殿ではなく、立派なテントではあるが、テントで暮らしており、アメリカ政府の中東同盟国であるサウジアラビアや産油首長国支配者一族につきものの、ヨーロッパ高級車や他のあらゆる身の回り品のコレクションを持っていなかった。
 リビアでは、教育・医療・電力は無料だった。ガソリンは事実上無料で、一リットル一四セントで売られていた。子どもを産んだ女性は現金の助成金を貰い、カップルが結婚すると現金の助成金が貰えた。リビアの国営銀行は無利子で融資し、農民には無償で開業資金を供与した。
*Hillary's War Crime「ヒラリーの戦争犯罪」October 20, 2016
http://www.paulcraigroberts.org/2016/10/20/hillarys-war-crime-paul-craig-roberts/


 ロバーツ氏は、これらの事実を、グローバル・リサーチという独立メディアに載せられた「リビア:知られては困る、カダフィに関する一〇の事実」という小論に依拠しながら書いているのですが、日本では全く紹介されていない事実ばかりです。
 このロバーツ氏が依拠した小論には、カダフィが計画していた世界最大の灌漑施設の地図も載せられていて、驚かされました。カダフィの言う「緑の革命」は単なる夢想ではなかったのです。
 しかし日本で紹介されているカダフィ像は、アメリカ政府から流れてきた情報にもとづいた「自分の国民を冷酷に支配する独裁者」という悪魔化されたものばかりでした。
* 「リビア。知られては困るカダフィ一〇の事実」
"Ten Things You Didn’t Know About Libya Under Gaddafi’s So-called Dictatorship":

 では、上記のような理想国家をつくろうとしていたカダフィ政権を、なぜアメリカとNATOは倒そうとしたのでしょうか。それをロバーツ氏は、先の引用に続けて次のように書いています。

 カダフィがアメリカ政府から自立していたことが彼の没落をもたらしたのだ。若い頃のカダフィの目標は、アラブを欧米の略奪に抵抗できる一つの連合に組織することだった。
 それが思うように進展しないことにいらだった彼は、汎アフリカ主義に向かい、アメリカのアフリカ軍に参加するのを拒否した。また彼は、ドルではなく金をもとにしたアフリカ統一通貨を導入ようとした。そうすればアフリカをアメリカの金融覇権から解放できるからだ。
 カダフィは、中国のエネルギー企業にリビアのエネルギー資源を開発させた。以前から地中海におけるロシアの存在に腹を立てていたアメリカ政府は、今や中国の存在にも向き合わねばならなくなった。だからアメリカ政府は結論を出した。カダフィは悪い連中と付き合っているので退陣させるべきだと。


 私は今まで、アメリカとNATO軍によるカダフィの追放は、リビアの石油が目当てだとばかり思ってきたのですが、実はもっと深い理由があったのです。「ドルによる世界支配」を維持し、「中国のアフリカ進出」を阻止することが、カダフィ追放の真の理由だったのです。
 では、何を口実に、どのような手段で、カダフィを追放するか。それがアメリカにとって次の問題になります。米軍が直接、アフリカに乗りだしてリビアを破壊するのでは、世界の世論はもちろんのこと、アフガン戦争やイラク戦争に嫌悪感が強くなっているアメリカの世論も賛成しないでしょう。ではどうするか。それをロバーツ氏は先のブログで次のように説明しています。

 アメリカ政府はイスラム原理主義者を使って傭兵を編成し、シリアでと同様、連中を『反政府派』と名付け、リビア政府にけしかけた。
 カダフィ軍が勝っていることが明らかになると、アメリカ政府は、初心(うぶ)で騙(だま)されやすいロシアと中国の政府を罠(わな)にかけ、国連でリビア領空に飛行禁止空域を設定することを認めさせた。それを実行するのはNATO軍だ。
 飛行禁止空域の口実は、カダフィによる民間人攻撃を防ぐためということだった。しかしそれは嘘だった。本当の理由は、主権国家のリビアが自分の領空を使えないようにして、傭兵と戦っている地上軍をリビア空軍が支援できないようにするためだった。
ロシアと中国がこれに騙されて、安全保障理事会の議決で拒否権を行使しそこねると、今度はアメリカとNATO自身が、決議に違反してNATOの空軍力を用いてカダフィ軍を攻撃した。こうして戦局はCIAが組織した傭兵に有利になった。
カダフィは捕らわれ惨殺された。それ以来、かつて繁栄し成功していた国家リビアは混乱・混沌の極みだ。それは、オバマ政権が望んでいたものだ。


 ところが今やイギリスでは議会による調査報告書が、「カダフィが欧米の覇権にとっての障害と見なされていたがゆえにリビアは破壊された」と明白に結論づけているのです。だからこそ、ロバーツ氏は上記のブログを次のように締めくくっているのでしょう。

 注目すべきなのは、ニュルンベルク裁判をもとにした国際法では、彼女が有罪であることは明らかなのに、この戦争犯罪について、この「殺人婆(ばばあ)」(killer bitch)に質問したマスコミは皆無だということだ。
 なぜなら、この戦争はヒラリーが国務長官の職に就いているときに、彼女の監督下で準備されたものだからだ。
 もうひとつ注目すべきなのは、この「殺人婆」を所有している巨大な政治力を持ったひと握りの集団オリガーキーと、連中の手先である「売(ばい)女(た)マスコミ」(presstitute=press+prostitute)は、この戦犯を次期アメリカ大統領にするつもりだということだ。


 この「殺人婆(ばばあ)」や「売女(ばいた)マスコミ」という言葉づかいのなかに、元アメリカ財務省高官だったロバーツ氏の憤りが伝わってくるような気がします。
 ヒラリー女史にたいする怒りもさることながら、ロバーツ氏の大きな怒りは、トランプ叩きに終始しているアメリカの大手マスコミにも向けられているのです。
 それにしても、実名で公けにしているブログなのに、よくぞここまで大胆に言い切れるものだと、その勇気に感心・感動しました。日本の元政府高官に、このようなひとはいるのでしょうか。私は寡聞にして知りません。  *
 以上で「シリアに飛行禁止区域を!」と主張するヒラリー女史の冷酷さ・好戦性が少しは分かっていただけたかと思いますが、これだけでは、リビア空爆の残酷さや戦犯性が今少し伝わりにくいように思いますので、そのようすを物理化学者・藤永茂氏のブログ「私の闇の奥」から引用して紹介したいと思います。
 このブログの日付は「二〇一一年八月三一日」となっています。カダフィが惨殺されたのは一〇月二〇日ですから、そのことを念頭において読んでいただければと思います。
 

 いま、リビアについての我々の関心は(好奇心は)、カダフィが何処でどのようにして捕まり、どのように処分されるかに釘付けにされているようですが、我々の本当の関心は、今回のリビア内戦でNATOが何をしたか、何をしているかに集中されるべきだと私は考えます。
 カダフィの政府軍による大虐殺からリビア国民を守るという名目の下に開始されたNATOによるリビア空爆は、想像を絶する物凄さで行なわれました。八月二三日のNATOの公式発表によると、過去五ヶ月間にNATO空軍機の出撃回数は二万回を超えました。一日あたり一三〇回の物凄さです。
 対地攻撃を行なった戦闘爆撃機が一機に複数の爆弾や誘導ミサイルを搭載しているとすると、正確激烈な破壊力を持った数万の爆弾やミサイルがリビアの人々の上に降り注いだことになります。
 リビアの人口約六五〇万人、人口的には福岡県と佐賀県を合わせた位の小国です。ミサイルの標的が戦車であれ、輸送車両、船舶であれ、カダフィの住宅であれ、放送局、大学であれ、無人ではない場合が普通でしょうから、多数の人間が殺傷されたに違いありません。八月上旬に、NATO空爆による死者二万という報道がちらりと流れたことがありましたが、あり得ない数字ではありません。
 しかも、NATOの反政府軍支援は空爆に限られたわけではありません。大型ヘリコプターなどによる兵器、弾薬、物資の補給も行なわれ、地上でも多数のNATOやCIAの要員が間接的に参戦した模様です。しかし、こうしたNATOの活動の具体的報道は殆ど完全な管制下にあります。
 これだけの規模の軍事暴力が、国際法的には全く合法性のないままで(UNの決議内容をはるかに超えて)、人口数百万の小独立国に襲いかかったのです。まことに言語道断の恐るべき前例が確立されました。カダフィと息子たちの今後の命運など、この暴虐行為の歴史的意義に較べれば、三面記事の値打ちしかありません。


 これを読んでいただければ、ロバーツ氏が先に、「注目すべきなのは、ニュルンベルク裁判をもとにした国際法では彼女が有罪であることは明らかなのに、この戦争犯罪について殺人婆(killer bitch)に質問したマスコミは皆無だということだ」と言っていたことの意味が、改めてよく理解できるのではないでしょうか。
 そして、満面に笑みを浮かべて「来た・見た・死んだ」と言ったヒラリー女史にたいして、ロバーツ氏が悪罵を投げつけたくなった理由も。

 それにしても、藤永氏は一九二六年生まれですから、二〇一六年一一月の現在で、氏は九〇歳前後のはずです。
 九州大学やカナダのアルバータ大学で教鞭を執っていた一流の物理化学者でありながら、老体にむち打ちつつ、NHKや朝日新聞などの大手メディアが目をつむって通り過ぎている事実を掘り起こし、上記ブログを通じてそれを私たちに伝える仕事を続けておられます。
 唯々(ただただ)、頭が下がります。

 ところでリビアの事態は、単にカダフィの惨殺に終わったわけではありませんでした。
 前述のとおり、この戦争は全土を瓦礫に変え、「リビアの民主化」どころか大量の死者と難民をうみだしただけでした。そしてリビアはいまだに混沌の極致にあります。
 そのうえ今度は、このような惨劇をシリアに輸出しようとしているのがヒラリー女史なのです。
 それは単に彼女が「シリアにも飛行禁止区域を!」と叫んでいるからだけではありません。リビアで使ったイスラム原理主義集団を、実際にシリアに輸出しようとしてきたのが、ヒラリー女史を外交政策の責任者とするアメリカだったからです。
 この間の事情を櫻井ジャーナル(二〇一六年八月二〇日)は次のように伝えています。

  カダフィ体制が倒された直後、リビアのベンガジでは裁判所の建物にアル・カイダの旗が掲げられ、その映像がユーチューブにアップロードされた。その事実をイギリスのデイリー・メイル紙でさえ、伝えている。リビアを侵略した軍隊は空がNATO軍、地上はアル・カイダ系のLIFG(リビア・イスラム戦闘団)だった。
リビアを破壊した後、侵略軍はリビア軍の倉庫から武器/兵器を持ち出してトルコへ運んでいる。勿論、戦闘員も同じように移動した。調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュによると、輸送の拠点になったのはベンガジにあるCIAの施設。輸送にはマークを消したNATOの輸送機が使われたとも伝えられている。
運び出された武器/兵器の中に化学兵器も含まれ、これをシリアで使い、政府軍に責任をなすりつけてNATO軍が直接、シリアへ軍事介入する口実にしようとしたと言われている。
http://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/20160820/


 これを読むと、リビアから傭兵集団が兵器もろともトルコを経由してシリアに輸送されていることが分かります。
 しかも輸送の拠点になったのはベンガジにあるCIAの施設で、輸送にはマークを消したNATOの輸送機が使われたというのですから、二重の驚きです。というよりも二重の犯罪と言うべきかも知れません。
 それはともかく、櫻井ジャーナルの説明は次のように続いています。

 そうした武器や戦闘員の輸送をアメリカ国務省は黙認した。二〇〇九年一月から一三年二月まで国務長官を務めたヒラリー・クリントンもこの工作を知っていたはず。
 しかも、クリントンの部下にあたるクリストファー・スティーブンス大使は二〇一二年九月一〇日、CIAの武器輸送担当者と会談、その翌日には武器を輸送する海運会社の人間と会っている。勿論、武器はトルコ経由でシリアの侵略軍へ渡される手はずになっていた。
 その九月一一日にベンガジのアメリカ領事館が襲撃されてスティーブンス大使が殺されている。リビア議会が首相を指名する前日だ。その二カ月後にCIA長官を辞めたデイビッド・ペトレイアスはヒラリーと緊密な関係にあることで知られ、このルートからもシリアでの工作を知らされていたはずだ。


 これを読むと、アメリカ大使館や領事館はCIAの拠点になっていることがよく分かります。日本のアメリカ大使館や領事館も同じ機能を果たしているのでしょうか。
 しかし、ここでもっと重大なのは、その領事館が襲撃されてスティーブンス大使が殺されていることです。ヒラリー国務長官が公的なメールサーバーを使わずハッカー攻撃に弱い私的メールを使ったことが、大使殺害につながったかもしれないのです。
 あるいは、うがった見方をすれば、このような極秘事項を手配した人物だけに、それを外部に知られては困るから、密かにテロリスト=傭兵集団に頼んで大使を消してもらったのでしょうか。
 櫻井ジャーナルは、これについては何も述べていないのですが、この私の仮説が正しければ、これほど身の毛のよだつ話はないでしょう。櫻井氏は、これに続けて次のように述べているだけです。

 クリントンは戦争犯罪人と言われても仕方のないようなことをしてきたわけだが、欧米の支配層はクリントンを支持してきた。投機家で体制転覆に多額の資金を提供してきたジョージ・ソロスも支援者のひとり。
この支配層は軍事的に世界制覇を進めるだけでなく、巨大資本が国や国際機関を支配する仕組みを作り上げようとしている。それがTPP(環太平洋連携協定)、TPIP(環大西洋貿易投資協定)、そしてTiSA(新サービス貿易協定)の三点セットだ。


ヒラリー女史の好戦性、あるいはヒラリー女史が大統領になると、なぜ第三次世界大戦になる危険性があるかは、以上の説明で、かなり分かっていただけたのではないかと思います。
 しかし彼女の好戦的履歴は、このリビア爆撃にとどまるものではありません。
 とはいえ、本稿もすでにかなり長くなってきていますので、以下ではその略歴だけを紹介して、この論考を閉じたいと思います。以下の引用は先の櫻井ジャーナル(同日付け)からのものです。

 ウィキリークスによる電子メールのハッキング情報が続いている。今回は投機家で体制転覆に多額の資金を提供してきたジョージ・ソロスだ。
 彼がターゲット国の体制を転覆させるために使っているオープン・ソサエティ基金もハッキングされたという。そうした電子メールの中には、ソロスがヒラリー・クリントンに対してユーゴスラビア=アルバニア情勢に対する対処の仕方をアドバイスするものがある。そのメールが書かれたのは二〇一一年一月二四日で、国務長官だったクリントンはソロスのアドバイスに従って動いたようだ。
ヒラリー・クリントンは夫が大統領だった一九九〇年代、マデリーン・オルブライト(国連大使から国務長官)やビクトリア・ヌランド(国務副長官の首席補佐官)と連携して政権をユーゴスラビアに対する先制攻撃へと導いているが、その背後にソロスがいたということだろう。国務長官に就任したオルブライトが主導する形で一九九九年三月にNATO軍は偽情報で環境作りをしながらユーゴスラビアを先制攻撃、ひとつの国を破壊した。


 上記に登場するマデリーン・オルブライトとビクトリア・ヌランドという二人の女性は好戦的人物として有名ですが、この二人を、戦争にあまり乗り気ではなかった夫のビル・クリントンに紹介し強引に新しい国務長官や国務副長官の首席補佐官に据え付けたのも、ファーストレディだったヒラリー女史だったと言われています。
 オルブライト国務長官は、ビル・クリントンに焚きつけて、ユーゴスラビアを爆撃・解体した張本人ですし、湾岸戦争のあとのイラクにたいする経済制裁で五〇万人の子どもたちを死に追いやった(しかもインタビューで「その価値はあった」と答えた)人物としても有名です。
 またヌーランドは国次官補になってあと、最近のウクライナにおけるクーデターを裏で指揮し、内紛を平和的に解決しようとしたEUを「FU*K、EU」と罵ったことでもよく知られた人物です。新しい内閣も彼女が指名した人物が首相になっています。
 ですから、ヒラリー女史のタカ派ぶりは、ここでみごとに発揮されていると言えます。
 櫻井ジャーナルの叙述は、さらに次のように続いています。

 二〇〇三年一一月にはジョージア(グルジア)で「バラ革命」、〇四年から〇五年にかけてはウクライナで「オレンジ革命」があり、新自由主義体制になった。当然、一部のグループが不正な手段で国民の財産を奪って莫大な富を築き、その後ろ盾になっていた西側の巨大資本も利益や利権を手にした。こうした「革命」でもソロスはスポンサーとしての役割を果たしていた。
言うまでもなく両国の庶民は貧困化、そうした状況への怒りからソロスたち西側の富豪や巨大資本にとって好ましくない方向へ動いた。そこで仕掛けられたのがウクライナ首都キエフのクーデター。二〇一四年二月二二日、ネオ・ナチ(ステファン・バンデラ派)を主力とするグループがビクトル・ヤヌコビッチ大統領を暴力的に排除している。そのクーデターを現場で指揮していたのがヌランド国務次官補だった。クリントンは二〇一三年二月に国務長官を辞めているが、ヌランドは彼女の同志だ。


 私は「バラ革命」や「オレンジ革命」のニュースを聞いたとき、旧ソ連圏の東ヨーロッパで、新しい民衆運動が起きているものと信じていました。
 しかし今から考えると、実に巧妙に仕組まれた「偽の民衆革命」だったのです。これは一種のクーデターでした。
 しかも、このクーデターは東欧だけにとどまりませんでした。ヒラリー国務長官のもとで、クーデターは中米にまで飛び火していました。あの悪名高いブッシュ大統領ですら、やらなかったことです。以下の櫻井氏による説明は次のようになっています。

 クリントンが長官に就任したのはバラク・オバマが大統領に就任した二〇〇九年一月のことだが、その年の六月にホンジュラスで実行されたクーデターでクリントンは黒幕的な役割を果たしたと言われている。約一〇〇名の兵士が大統領官邸を襲い、マヌエル・セラヤ大統領を拉致し、コスタ・リカへ連れ去っている。
現地のアメリカ大使館は国務省に対し、クーデターは軍、最高裁、そして国会が仕組んだ陰謀であり、違法で憲法にも違反していると報告している。つまり、クーデター政権には正当性がないと明言した。
 このクーデター政権は翌二〇一〇年、最初の半年だけで約三〇〇〇名を殺害したとも報告されている。そのクーデターの背後にクリントン長官がいたということだ。


 以上で櫻井ジャーナルからの引用を終えます。まだまだヒラリー女史の好戦性・冷酷さを示す事例に事欠かないのですが、長くなりすぎていますので、ひとまずここで筆をおきます。今のアメリカ情勢を理解する一助にしていただければ幸いです。
 ただ一つだけ付け加えておきたいことがあります。それはアメリカの民衆が、知れば知るほどヒラリー女史に嫌気がさしているのに、他方の大手メディアがトランプ叩きに終始しているという事実です。
 これでは、アメリカ民衆は「どちらがワルとして我慢できるか」という選択肢しか残されていないことになります。これはアメリカ史上。最悪の大統領選挙と言えるでしょう。
 ただ私たち日本人に一つだけメリットがあるとすれば、今までアメリカは理想の国、民主主義のモデル国だと思われていたのに、それは虚像に過ぎなかったことが、この選挙戦を通じて見えてきたことではないでしょうか。

<註1> ヒラリー女史が「来た・見た・死んだ」と嬉しげに言っている映像は、次のURLで見ることが出来ます。
https://www.youtube.com/watch?v=Fgcd1ghag5Y
<註2> 物理化学者・藤永茂氏の著書には、『分子軌道法』(岩波書店)などといった専門書の他に、『アメリカ・インディアン悲史』(朝日選書)、『アメリカン・ドリームという悪夢、建国神話の偽善と二つの原罪』(三交社)やジョゼフ・コンラッド『闇の奥』(藤永・訳、三交社)といった専門外の本も少なくありません。
 私が藤永氏を初めて知ったのは、二〇年近くも前に、『アメリカ・インディアン悲史』を読んだときでした。なぜ物理化学者がアメリカ先住民の歴史を書くのか、そのときは理解できませんでしたが、これを書かざるを得なかった氏の気持ちがヒシヒシと伝わってくる名著でした。
 それ以来、インディアン研究者の専門書を機会があれば目を通すのですが、藤永氏の本を超えるものに出会ったことがありません。
<註3> ポール・グレイグ・ロバーツのブログについては、「マスコミに載らない海外記事」に載っていた翻訳を参考にさせていただきました。しかし、原文をもとに私が大幅に手を加えてあります。



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アメリカ理解(2016/11/06)、ヒラリー・クリントンの講演料、ドナルド・トランプ、シリア内戦、飛行禁止区域、マイケル・ムーアのスピーチ

ハリウッド、トランプ、WalkOfFame
ハリウッドの有名な大通りに刻まれたトランプ氏の名前を、破壊から守ろうとしてヒラリー支持者からカートごと倒されたホームレスの老齢黒人女性
https://www.rt.com/usa/364631-crowd-attacks-homeless-trump/

 アメリカの選挙情勢は一一月八日の投票日を目前にしながら混沌としています。
 というのは、オバマ大統領や民主党幹部・特権階級だけでなく金融街や大手メディアからも圧倒的な支援を得ながらも、世論調査ではヒラリー・クリントン氏とドナルド・トランプ氏の支持率は拮抗しているからです。
 トランプ氏は共和党幹部からもアメリカの財界・支配層からも支持や援助を得ていないにもかかわらず、そして大手メディアから袋叩きにあいながらも、拮抗状態なのです。
 たとえば、民主党のヒラリー女史は、一九日に行われた最後のテレビ討論に出演しましたが、直後におこなわれたCNNテレビおよび世論調査機関ORCの調べでは、クリントン女史が勝ったと答えた回答者は五二%、反対にトランプ氏が上まわったと答えたのは三九%に留まっていました。
https://jp.sputniknews.com/us/201610202923228/
 ところがワシントン・タイムズ紙は、最後のテレビ討論に関する緊急調査で、同討論会で共和党の大統領候補ドナルド・トランプ氏がライバルのヒラリー・クリントン氏に圧勝したと報じているのです。
 同紙はサイト上で討論後に「最後の討論会、勝ったのはどっち?」という質問をおこなったのですが、討論の終了直後、トランプ氏には七七%または一万八二九〇票だったのに反し、ヒラリー女史には四一〇〇票または一七%しか集まりませんでした。
 その後しばらく経つと状況はさらに変わり、一〇月二〇日の日本時間一四時三五分にはトランプ氏三万二〇〇〇票(七四%)クリントン氏九〇〇〇票(二一%)となりました。
 ワシントン・タイムズは米国で最も著名かつ保守的な編集方針で知られていますから、新聞社のバイアスがかかっているのかも知れませんが、それにしても、トランプ氏は圧倒的な支持を得ているのです。
https://jp.sputniknews.com/us/201610202923228/
 さらに、米国大統領選挙まであと一六日という時点(一〇月二三日)でのロサンゼルス・タイムズの世論調査では、トランプ支持四四・四%、ヒラリーン支持四四・一%」という結果でした。
https://jp.sputniknews.com/us/201610242935467/
 ご覧のとおり、共和党トランプ氏と民主党ヒラリー女史の支持率は、ほぼ拮抗しているのです。


 さらに、もうひとつ面白い情報があります。「Sputnik日本」(一〇月二八日)は、イギリス高級紙インデペンデントからの情報として次のような記事を載せているのです。

 ニューヨーク大学のヘルムト・ノーポース教授は、自分の作った米大統領選結果予測モデルによると勝利するのは共和党のドナルド・トランプ候補であることを明らかにした。インディペンデント紙が報じている。
 ノーポース教授の開発した選挙結果予測モデルは一九九二年から今までの米大統領選挙の予測を二〇〇〇年の一度を除いて全て当てている。モデルは二〇〇〇年は民主党の勝利を予測したが、実際はフロリダ州の浮遊票を集め、共和党のジョージ・ブッシュ氏が当選した。
 さて今回だが、このモデルの予測ではプライマリーでより見事な演説を行なった候補者が勝利する。ノースポース氏の見解では、プライマリー(予備選)で勝利を収めたのはトランプ氏で、このことから選挙で勝利する確率は高い。
https://jp.sputniknews.com/us/201610282953757/


 トランプ氏は共和党幹部からもアメリカの財界・支配層からも支持や援助を得ていません。にもかかわらず、そして大手メディアから袋叩きにあいながらも、なぜこのように選挙で勝利する確率が高くなっているのでしょうか。
 それはヒラリー女史とトランプ氏の論争が進めば進むほど、ヒラリー女史の本性が民衆に分かり始めてきたことです。
 すでに民主党内の予備選でさえ、社会主義者を自称するバーニー・サンダース氏に追い上げられて、一時はサンダース氏が勝利するかも知れないと言われていたことすらあったのですが、民主党幹部の裏工作、大手メディアの加勢で何とか乗り切ることができました。この間の事情を櫻井ジャーナル(二〇一六年六月一七日)は次のように書いています。

 ところで、民主党幹部たちが昨年五月二六日の時点でヒラリー・クリントンを候補者にすると決めていたことを示唆する電子メールが公表されている。本ブログでは何度か取り上げたように、昨年六月一一日から一四日にかけてオーストリアで開かれたビルダーバーグ・グループの会合にヒラリーの旧友であるジム・メッシナが参加、欧米の支配層は彼女を大統領にする方向で動き出したと言われていたわけで、この電子メールの内容は驚きでない。
この内定を揺るがしたのがサンダース。急速に人気を集め、支持率はヒラリーと拮抗するまでになった。ただ、そうした動きが現れる前に選挙人登録は終わっていたため、支持率が投票に反映されたとは言い難い。例えば、四月に投票があったニューヨーク州の場合は昨年一〇月九日までに民主党と共和党のどちらを支持しているかを登録しておかないと予備選で投票できず、投票できなかった人が少なくない。
http://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/20160617/ 


 このニューヨーク州の事態については長周新聞二〇一六年五月四日で、私は「続・世界に恥ずべきアメリカの選挙制度」と題して既に拙論を載せてあったのですが、サンダース氏の進出を阻止する動きがもっと露骨になったのはカリフォルニア州の予備選でした。
 それを櫻井ジャーナルは上記に続けて次のように書いています。

 支持政党を登録していなくても投票できるカリフォルニアで予備選が行われる直前の世論調査ではサンダースがクリントンをリード、幹部たちを慌てさせたようだ。民主党支持者ではサンダースが五七%、クリントンが四〇%、無所属の人ではそれぞれ六八%と二六%だとされている。
 そうした状況の中、予備選の前夜にAP通信は「クリントン勝利」を宣告した。「スーパー代議員(上位代議員、あるいは特別代議員と訳されている)」の投票予測でクリントンが圧倒し、勝利は確定しているというのだ。この「報道」がカリフォルニアにおける予備選でサンダースへの投票を減らしたことは間違いないだろう。
 カリフォルニア州の場合、本ブログではすでに紹介したように、投票妨害とも言えそうなことが行われていたという。政党の登録をしなかった人びとはサンダースを支持する人が多く、民主党の登録をしている人はヒラリー支持者が多いが、登録しているかしていないかで投票用紙が違う。
 投票所によっては投票用紙を受け取ろうとすると、政党無登録の人には予備選に投票できない用紙を自動的に渡す投票所があったという。投票するためには民主党支持変更用紙を要求しなければならない。予備選に投票するにはどうすべきかと尋ねられた係員は、政党無登録の人には民主党用の用紙は渡せないと答え、民主党支持変更用紙のことには触れないよう指示されていたケースもあったようだ。
http://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/20160617/


 こうした動きのなかで、突如、サンダース氏は選挙戦から降りると宣言し、勢いを増しつつあった支持者の運動や願いを裏切り、あろうことか「ヒラリー女史こそ大統領としてベストの候補者だ」という演説までもするようになりました。
 ではサンダース氏が今まで言ってきたこと、「ヒラリー女史はウォール街と一心同体であり富裕層の代弁者だ」という言はどこへ行ったのかと、支持者たちはやりきれない思いをしたに違いありません。
 ヒラリー女史および民主党幹部とサンダース氏の間に、裏でどんな取引があったのか分かりませんが、とにかくヒラリー女史はこうして無事に予備選をくぐり抜け、本選に挑むことができるようになりました。
 しかし相手は共和党のなかでさえ評判の悪いトランプ氏ですから、ヒラリー女史は本選では楽勝となり、「アメリカ史で初めての女性大統領」という栄冠を難なく手にすることができると思われていました。
 ところがウィキリークスがヒラリー女史や民主党幹部の裏舞台を暴露し始めた頃から雲行きが怪しくなってきました。
 元共和党政権の経済政策担当の財務次官補のポール・グレイグ・ロバーツは自分のブログ(二〇一六年一〇月五日)で、それを次のように書いています。

・・・。彼女は、ウオール街・巨大銀行・軍-安保複合体の巨大な政治力を有するひと握りの連中、および外国利益の集団によって買収されている。その証拠は、クリントンの12,000万ドルという個人資産と、二人の財団の160,000万ドルだ。ゴールドマン・サックスは、講演で語られた智恵に対して、ヒラリーの三回の20分講演に、675,000ドルを払ったわけではあるまい。・・・
*Washington Leads The World To War「世界を戦争へと導くワシントン」
http://www.paulcraigroberts.org/2016/10/05/washington-leads-the-world-to-war-paul-craig-roberts/


 上記で登場するゴールドマン・サックスは、二〇〇八年の世界金融危機の震源地のひとつとなった世界最大級の投資銀行です。そのように世界経済を破壊した機関で講演すること自体が問題ですが、その謝礼も私たち凡人の想像を絶する金額です。
 かつて私が大学教授として六〇~九〇分の講演をしても、その謝礼は三~五万円でしたから(ときには全く無料のものもあります)。ところがヒラリー女史は、そこで二〇分の講演を三回しただけで、六七万五〇〇〇ドル(約七〇〇〇万円)の謝礼です。つまり、一回二〇分で約二三〇〇万円もの大金がもらえるのですから、いかに破格の謝礼であるかがよくわかるはずです。
 だからこそ、世界金融危機につながった住宅ローン担保証券の不正販売を巡る事件は、ゴールドマン・サックスから誰一人として刑務所に送られたものはなく、二〇一六年一月に制裁金等三三億ドルと借り手救済金一八億ドルの和解金で決着してしまったのでしょう。世界最大級の投資銀行としては、おそらく、全くの端金(はしたがね)だったに違いありません。
 かつて民主党の支持基盤のひとつは労働組合だったのに、夫のビル・クリントンが大統領だったときにNAFTA(米国、カナダ・メキシコ三カ国による域内貿易自由化取り決め)によって、大企業がメキシコなどの国外へと移転して、労働者の多くは仕事を失いました。その結果、多くの労働組合が縮小・解体され、民主党は新しい財政基盤を必要とするようになりました。
 民主党が、労働者や一般民衆ではなく、財界や金融街に頼らざるを得なくなった物質的基盤は、このようなところにあります。自ら墓穴を掘ったと言うべきかも知れません。
 NAFTAを通じてビル・クリントンが追求した新自由主義政策は、貧富の格差を広げましたから、勤労者や貧困者から見れば、民主党というのは共和党と何も変わらない政党になったわけです。(日本の民進党と自民党も、全く同じ流れです。)


 このような貧困化しつつあるアメリカ民衆の不満を代弁したかたちで登場したのが、民主党ではバーニー・サンダース氏であり、共和党ではドナルド・トランプ氏でした。しかし先述のとおり、サンダース氏は支持者を裏切るかたちで選挙戦から身を引きました。しかしトランプ氏の場合、共和党の幹部・特権階級からの妨害をものともせず進撃しつつあります。
 そして、かつては黒人票は民主党のものと思われていたのに、トランプ氏は着実に黒人票をも獲得しつつあるようです。とくに貧困層の黒人は、ヒラリー女史に見切りをつけ、トランプ氏に流れているようです。最近それを象徴する事件がありました。
 映画産業で有名なハリウッドの大通りには、有名スターの名前が入った星形メダルが埋め込まれた街路「ウォーク・オブ・フェイム」があるのですが、そのひとつにトランプ氏の名前が刻み込まれています。
 ところがヒラリー女史の支持者が、この刻み込まれたトランプ氏の名前をツルハシで破壊する事件が起きました。それにたいして今度は、この刻み込まれたトランプ氏の名前を守ろうとして座り込む女性が現れました。
 しかし、ここにもうひとつの事件が起きます。この座り込んでいた一人の黒人女性(しかもホームレスの老いた黒人女性だった)にたいして、なんとヒラリー女史支持者たちが罵詈雑言(ばりぞうごん)を浴びせかけ、彼女の衣類などが入っていたカートを彼女もろとも引っくり返して足蹴にする事件が起きたのです。
 そのうえ、なぜトランプを支持するかを書いた彼女のビラやポスターをずたずたに引き裂くようすがユーチューブに載せられたのでした。
 RT(二〇一六年一〇月二九日)の記事によれば、そのポスターのひとつには「オバマはクリントン一家に恩義を感じて我々黒人どもをバスの下に投げ込んでいる」といった文句が書かれていたそうです。
*Violent crowd attacks, insults homeless woman guarding Trump's Hollywood star
*「暴力的群衆が、ハリウッド大通りに刻まれたトランプ氏の名前を守る女性を、襲ったり辱めたりした」
https://www.rt.com/usa/364631-crowd-attacks-homeless-trump/


 ロサンゼルス・タイムズは、今やカリフォルニア州立大学[全部で二三校から成るが全体でひとつの大学機構]の学生の、一〇人に一人がホームレスだと報じ(二〇一六年六月二十日)驚かされましたが、このような事態を生み出した民主党の特権階級にたいする怒りが、ホームレスの老いた黒人女性を上記のような行動に駆り立てたのではないでしょうか。
*1 in 10 Cal State students is homeless, study finds
「カリフォルニア州立大学の10人に1人がホームレス」

http://www.latimes.com/local/lanow/la-me-cal-state-homelessness-20160620-snap-story.html
 オバマという、「アメリカ史上、初の黒人大統領」と持てはやされる人物を頭(かしら)にいだく民主党政権が、貧富の差を拡大させ、黒人どころか白人のホームレスまでもアメリカ全土に広がりつつあるのですから、実に皮肉と言えば皮肉です。


 このような事態を考えると、社会主義者を自称するサンダース氏が選挙戦から落馬した現在、共和党から出馬したトランプ氏がアメリカ民衆の怒りを一身に背負うことになってきたことは、ある意味で当然のこととも言えます。
 これを裏書きするような象徴的な爆弾が、映画監督マイケル・ムーアによって投げつけられました。ムーアと言えば、映画『華氏九一一』やアメリカ医療を鋭く告発した映画『シッコ』などで有名ですが、そのムーア監督が、今度はトランプ氏を題材とした映画『トランプ・ランド』をつくりました。その映画上演会のため訪れたオハイオで彼は次のようなスピーチをして聴衆を驚かせました。

 「トランプ氏に投票する人たちは、必ずしもそんなに彼が好きなわけではありませんし、必ずしも彼の意見に同意しているというわけでもありません。彼らは必ずしも人種差別主義者ではありませんし、白人の肉体労働者でもありません。じっさい彼らはかなり礼儀正しい人たちです」
 「ドナルド・トランプ氏はデトロイト経済同友会にやって来て、フォード社の経営陣の前に立ってこう言ったのです。『あなた方がデトロイトでやろうと計画しているように、これらの工場を閉鎖してメキシコで建て直すつもりなら、そしてそこで生産した車をアメリカに送り返すなら、私はそれらの車に三五パーセントの関税率をつけるつもりだ。そうすれば誰もそれらを買わないだろう』」
 「それは、驚くべきことでした。政治家の誰も、共和党員であれ民主党員であれ、これまでに誰もそんなことを、これらの経営陣に言ったものはいません。それは、ミシガン州、オハイオ州、ペンシルバニア州、ウィスコンシン州の民衆の耳には実に心地よい調べだったでしょう。Brexitの諸州、つまりアメリカから脱出しようとする大企業の存在する州では、民衆は同じ思いで聴くでしょう」
 「トランプ氏の言っていることが本気かどうかは、ここではあまり関係がありません。なぜなら、それは傷ついている人々が聴きたいと思っていたことだからです。だからこそ、あらゆる打ちのめされて役立たずになり忘れさられた一般労働者、いわゆる中流階級の一部を成す人々のすべてが、トランプ氏を好きになるのです」
 「トランプ氏は、そのような人たちの待ち望んでいた人間火焔瓶・人間手榴弾なのです。彼らは、自分たちから生活を盗み奪った組織や機構に、それを投げ込むことができるからです」
 「そして一一月八日は選挙の投票日です。民衆・勤労者は仕事を失い、銀行によって家を差し押さえされ、次にやってきたのが離婚。今や妻と子供は去って自分のところにはいない。そして車も回収・没収。彼らは何年ものあいだ本当の休暇をとったことがない。くそにもならないオバマケア(医療保険改革法)ブロンズプランは、お先真っ暗。この保険では解熱剤すら手に入らない。要するに彼らは持てるもの全てを失ったのです。民衆の手に残されたものがひとつだけあります。それをもつには一セントのお金すら必要ありません。それは合州国憲法によって所有が保証されているからです。それが投票権です」
*Michael Moore just gave the most convincing speech for Trump
*「マイケル・ムーアが、今までのなかで最も説得力のある演説を、トランプ氏のためにおこなった」

http://redalertpolitics.com/2016/10/26/michael-moore-just-gave-convincing-speech-trump-video/#dJRVoxe3kmvHf6MJ.99


 ムーア監督のスピーチは、まだ続いているのですが長くなるので、翻訳はここで止めます。今までサンダースを支援していたムーア監督が、ことここに至って、このようなスピーチをせざるを得なくなった悔しさがにじみ出ているようなスピーチではありませんか。
 ゼネラルモーターズの生産拠点の一つであったミシガン州フリントで生まれたムーア監督が、故郷フリントの自動車工場が閉鎖され失業者が増大したことを題材にしたドキュメンタリーの名作『ロジャー&ミー』をつくっているだけに、この無念さはひとしおだったことでしょう。


 さて、このようなトランプ氏の動きに対してヒラリー女史はどのように対応したでしょうか。
 最初は財界寄りの政策でしたがサンダースの打ち出す政策が民主党の若者や貧困層の支持を得て自分が劣勢になりそうなのに気づいて、TPPなど民衆の生活を破壊する政策に反対を表明するように変わってきました。
 しかし最近のウィキリークスが暴露したところによると、「政治家は表の顔と裏の顔があるのは当然だ」とする意見を彼女は身内のものに漏らしています。さらに予備選では「左寄りの政策を掲げても本選では右に戻せばよい」とも語っています。
 もっと恐ろしいことには、RT(二〇一六年一〇月二九日)の記事によれば、彼女は『Jewish Press』というユダヤ人のための週刊紙のインタビューで、「パレスチナの選挙に裏工作をしてファタハを勝たせるべきだった、そうすればハマスの一派が勝利することはなかった」とすら述べています。
*Clinton bemoans US not rigging 2006 Palestinian election in newly-released tape
*「クリントンは、新しく公開されたテープ録音のなかで、二〇〇六年のパレスチナにおける選挙で不正操作しなかったことを、悔いている」

https://www.rt.com/usa/364628-clinton-rigging-palestine-tape/


 このようにヒラリー女史は、他国の選挙に干渉して傀儡(かいらい)政権をつくることを何ら悪いことだと思っていないのです。
 二〇一四年年のウクライナ政変では、彼女の盟友であるヌーランド国務次官補が、米国ウクライナ大使と一緒になって反政府デモに加わり、デモ参加者にお菓子を配って歩いている光景が堂々とテレビ画面に登場していますが、これほど露骨な内政干渉はないでしょう。
 (ロシアの外務省高官や在米大使館員が、ニューヨークその他のデモや集会、座り込みテントに参加して、差し入れなどすれば、アメリカがどんな態度をとるか。想像してみればすぐ分かることです。)
 ところがトランプ氏との論争になると、ヒラリー女史は、政策をめぐる論争はほとんどやめてしまい、「トランプ氏はプーチンの操り人形だ」とか「ウィキリークスによるヒラリー関係のメール暴露は、プーチンがアメリカのコンピュータに侵入してウィキリークスに渡したものだ」といった主張を繰りかえすだけになってしまいました。政策論争ではトランプ氏と争っても勝ち目がないということを自ら認めたに等しいでしょう。
 それどころか、自分が国務長官として公的なメールサーバーを使うべきだったのに、私的サーバーを使って外部から侵入しやすくなったことにたいする反省もありませんし、その漏れた国家的重要機密情報が、リビアのアメリカ大使館に勤務する大使その他の職員を死に至らしめる結果になったかも知れないのに、そのことにたいする反省もありません。
 もっと奇妙なのは、このように私的サーバーを使って最高機密情報を漏らした当人は、FBIから訴追されることもなく堂々と選挙に出馬できているという事態です。イラクにおける米軍の悪事を暴いたマニング上等兵が牢獄につながれ元情報機関職員だったスノーデンが亡命に追い込まれたのとは、天と地の違いです。「悪いやつほどよく眠る」の典型例と言うべきかも知れません。


 ここまでは、ドナルド・トランプ氏と比較しながらながら、アメリカの国内政策を中心にして「ヒラリー・クリントンとは誰か」を論じてきたのですが、以下では外交政策をとりあげてヒラリー女史の問題点を探ってみたいと思います。
 しかし、これを論じていると長大なものになる予感がするので、今回は幹の部分だけを紹介して詳しくは次回に譲りたいと思います。
 それはともかく、ヒラリー女史とトランプ氏の外交政策における最大の違いは、ロシアとどう対峙するかという問題です。いまアメリカはシリアにおける内戦をどう解決するかという点で、ロシアと鋭く対立しているからです。
 いまヒラリー女史がシリア情勢で強く主張しているのは「リビア内戦時と同じようにシリアにおいても飛行禁止区域をもうけるべきだ」ということです。その理由としてあげられているのが、「ロシア軍とシリア政府軍がシリア第二の大都市アレッポを無差別に爆撃し一般市民からたくさんの犠牲者が出ているから」という口実です。
 これにたいしてトランプ氏は次のように主張しています。
 「アメリカは他国に内政干渉したり政権転覆に手を出すべきではない。国内には問題が山積していて他国に手を出す余裕などないはずだ」
 「今はロシアと手をつないで、『アルカイダ』『イスラム国』といったテロリスト=イスラム原理主義者集団をシリアから追い出すべきだ」
 これに関してロシアもシリア政府も、「リビア内戦時と同じようにシリアにおいても飛行禁止区域をもうけるべきだという主張は、シリアをリビアと同じような混乱に陥れ、シリアを破壊・解体して、さらに死傷者と難民を激増させるだけだ。休戦地帯をもうけろと言う主張は、テロと戦うという名目でアサド政権をつぶそうとする隠れ蓑にすぎない」と反論しています。
 この飛行禁止区域の設定については、ロシアもシリア政府も次のように主張し、アメリカの要求をきっぱりと退ける姿勢を示しています。
 「アレッポの東部地区を占拠して一般市民を『人間の盾』としながら休戦協定を無視してアレッポの西部地区の一般市民を無差別に攻撃しているのは、むしろ反政府勢力のほうだ。しかも彼らはアメリカの主張する『穏健派』どころか、『アルカイダ』『イスラム国』の一派であり、シリアには『穏健派』など存在しない」


 ですから、このまま緊張状態が続けば、アメリカ軍とロシア軍との直接的な戦闘になり、いつ世界大戦になるか、いつ核戦争になるか分からない情勢です。トランプ氏は『アルカイダ』『イスラム国』といった過激なイスラム原理集団をつくり出したのは、アメリカなのだから、そのような政策から手を引くべきだ」と言っているのですから、今までの感覚でアメリカを見ていたひとたちは頭が混乱するかも知れません。
 というのは、従来の図式からすれば、民主党=リベラル=ハト派であり、共和党=保守派=タカ派なのに、ヒラリー女史の方がトランプ氏よりはるかに好戦的だからです。 トランプ氏は、ロイター通信(二〇一六年一〇月二五日)によれば、「ヒラリー氏が大統領になれば第三次世界大戦になりかねない」とすら主張しているのです。
 これはトランプ氏の単なる選挙戦術のようにもみえますが、同じ警告はあちこちから聞こえてきます。
 すでに前半で紹介したように、元共和党政権の経済政策担当の財務次官補だったポール・グレイグ・ロバーツは自分のブログ(二〇一六年一〇月五日)で、下記のような「戦争に導くワシントン」という記事を書いてています。
*Washington Leads The World To War「世界を戦争へと導くワシントン」
http://www.paulcraigroberts.org/2016/10/05/washington-leads-the-world-to-war-paul-craig-roberts/
 またイギリスの保守的高級紙と言われるインデペンデント紙(二〇一六年一〇月二五日)も次のような論文を載せています。
*Could Hillary Clinton start a world war? Sure as hell she could ? and here's how
*「ヒラリー・クリントンは世界大戦を始める可能性があるか?確かにそうだ。それはこうして始まる」

http://www.independent.co.uk/voices/could-hillary-start-a-world-war-sure-as-hell-she-could-and-here-s-how-a7379051.html
 どちらかというと今まではトランプに批判的だったインデペンデント紙がこのような論説を載せるようになったこと自体が、現在の情勢がいかに緊迫しているかをしめすものではないでしょうか


 もっと驚いたことには、調べてみると既に四月の時点で、クリントン氏の自叙伝の著者ディアナ・ジョンストン氏は、イタリアのイオ・ジョルナーレ紙のインタビューで、「クリントン氏の大統領選の勝利は、第三次世界大戦の勃発も含め予想外の結果をもたらす可能性がある」と語っているのです。
 RTの記事(二〇一六年四月二九日)によると、ジョンストン氏は次のように語っています。

クリントン氏がまだ国務長官に在任していた頃、押しの強い外交政策を掲げていた。クリントン氏はアメリカのイラク侵攻及びリビアでの戦争参加を支持し、そして現在はシリアのバッシャール・アサド大統領に反対する姿勢を支持している。これに加え、クリントン氏は反ロシア的見解に固執している。世界は不安を呼び起こすような選挙公約を掲げるクリントン氏の「積極的な活動」に対して用心するべきだ。クリントン氏は外交の代わりに軍事力を用い、あらゆる事件が第三次世界大戦を引き起こしかねないほどにNATOを強化するつもりである。
https://jp.sputniknews.com/us/201604292050173/


 このように、今まさに世界はアメリカ大統領選挙を前にして「伸るか反るか」の曲がり角に来ているのです。にもかかわらず、アメリカや日本の、リベラルを自称する知識人も大手メディアも、「アメリカ史上、初の女性大統領」という殺し文句に惑わされて、現在の深刻な事態が見えなくなっているように思われます。
 しかし現在の事態の深刻さを理解してもらうためには、ヒラリー女史が国務長官だったときだけでなく、それ以前に外交政策で彼女が何を主張し、どのような行動をとってきたかを、もっと詳しく説明する必要があります。
 とはいえ、すでに長くなりすぎていますので、これについては、次回の論考に譲りたいと思います。



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