偽旗報道(Fake News)を考える、その3――ドナルド・トランプの宣戦布告

アメリカ理解(2017/02/04)、裏国家DeepState、カラー革命ColorRevolution、 軍産複合体 Military-Industry Complex、 軍事安保複合体 Military-Security Complex、投機家・億万長者ジョージ・ソロス George Soros

PCR(ポール・クレイグ・ロバーツ)氏、     スメドレー・バトラー将軍
PCR.jpg Butler.png


 いまアメリカでは、トランプ新政権が誕生した後も、反トランプの嵐が吹き荒れています。大手メディアも、その論調を見るかぎり、これを応援しています。しかし、これは実に奇妙な現象です。
 というのは、ヒラリー女史とトランプ氏が、大統領選の公開討論会で、司会者から「選挙の結果が出たら、それを受け入れるか」と尋ねられて、ヒラリー女史は即座に「受け入れる。しかしトランプ氏は受け入れないだろう。トランプ支持者も受け入れを拒否して街頭にくりだすだろう」と答えていたからです。
 これに反して、トランプ氏は「結果次第だ。選挙に不正がなかったことが分かれば受け入れる」と答えていました。
 ところが選挙でトランプ勝利が分かったとたん、街頭に繰り出したのはヒラリー陣営の側でした。選挙でトランプ側に何か不正行為があったことが明らかになったのであれば、このような抗議行動が起きても不思議はないのですが、そのような不正行為はなかったにもかかわらず、「結果は受け入れる」としていたヒラリー陣営が抗議行動を始めたのですから、まったく理解に苦しみます。
 選挙で負けたら次の選挙で取り返す、それが民主主義の原則のはずです。にもかかわらず、敗北が分かったとたん、民主主義を標榜していたはずのクリントン陣営が、「あれはロシアによる選挙干渉の結果であり、トランプを正当な大統領として認められない」と言い出したのですから、これでは「いったい何のための選挙だったのか」「トランプに投票した有権者の意思を何だと考えているのか」と憤るひとが出てきても不思議はありません。

 実は、トランプ氏が就任式を迎える以前から、反トランプのデモや集会が開かれていました。民主党の黒人下院議員ジョン・ルイスも、ロシアがサイバー攻撃で大統領選に干渉したとして「トランプ氏を正当な大統領とみなさない」と発言し、20日の就任式欠席を表明していました。
 ジョン・ルイスは、キング牧師が1960年8月28日に首都ワシントンDCで黒人の公民権を要求して世界的に有名になった演説「I Have A Dream」をしたとき、彼もSNICC(学生非暴力調整委員会)の指導者として演説をし、一躍その名を全米に知らしめることになりました。
 その演説は拙訳『肉声でつづる民衆のアメリカ史』(下巻107-111頁、明石書店)に載せてありますが、そこで得た名声を土台にして、今は民主党下院議員という地位についています。)
 しかし、その彼でさえ、民主党の予備選挙では、金融街によるアメリカ支配を攻撃していたサンダース氏ではなく、金融街から支援され、あくまでシリアの政権転覆を主張しロシアとの戦いも辞さない好戦的なヒラリー女史を支持していたのですから、ロシアとの融和を主張するトランプ氏に異を唱えるのも、当然かも知れません。
 それにしても、ジョン・ルイスが下院議員になっても、バラク・オバマが初の黒人大統領になっても、初の黒人司法長官エリック・ホルダー(後任は初の黒人女性司法長官ロレッタ・リンチ)が誕生しても、アメリカ黒人の生活は良くなるどころか失業者は相変わらず多く、警察による黒人射殺事件が相継ぎ、刑務所の人口比率は圧倒的に黒人が多い現実は、何一つ変わりませんでした。
 つまり、黒人の富裕層や知識層は今や特権階級の一員となり、自らの利益を保持することにしか目を向けなくなってきているということです。アメリカの社会は、すでに人種闘争の時代ではなく、階級闘争の時代に入ったと言うべきでしょう。その象徴的事件が、司法長官を辞めたホルダー氏が金融街に戻った人事でした。これほど見事な「回転ドア」人事はないでしょう。
* 元司法長官エリック・ホルダー、ウォール街と政界との「回転ドア」人事
http://tacktaka.blog.fc2.com/blog-entry-223.html
 私は上記のブログ(2015/07/09、アメリカ理解)で次のように書きました。

 共同通信(7月6日)によれば、このたび司法長官を辞任したエリック・ホルダー氏は、司法省長官となる前の8年間に勤務していた法律事務所(コビントン&バーリングCovington & Burling)に復帰します。
 コビントン法律事務所の顧客リストには、バンク・オブ・アメリカ、JPモルガン・チェース、ウェルズ・ファーゴ、シティグループなど、金融危機における役割に対しホルダーが司法長官として訴追を怠った大手銀行の多くが含まれています。
 つまり、あれだけ世界を大混乱におとしれた金融危機の張本人は、誰一人として牢屋に入っていません。それどころか政府から手厚い資金援助を受け、経営者は倒産どころか巨額のボーナスを手にしています。
 いま世界中の話題になっているギリシャの金融危機も、もとをただせばアメリカの巨大金融会社ゴールドマンサックスが当時のギリシャ政府に不正な会計帳簿のしかたを伝授してギリシャ国債を食いものにしたことに端を発しています。ギリシャ国民は、そのつけをいま払わされているわけです。
 ちなみに、コビントン法律事務所に勤務中のホルダーの顧客は、超富裕層への脱税指南で有名になったスイスの巨大銀行UBS、バナナなどの果物産業で有名なチキータ(元のユナイテッド・フルーツ)を含んでいます。このチキータはCIAと手を組んで中米のクーデターを画策したことでも有名です。


 だからこそ、私が前回のブログで紹介した元政府高官PCR(ポール・グレイグ・ロバーツ)は、氏のブログ「トランプの宣戦布告」(2017/01/20)で次のように書いたのでしょう。

 トランプは、就任演説で、全てのアメリカ人、すなわち黒人、黄色人種、白人のために戦うことを明らかにしたのだ。    
 疑うべくもなく、彼の「Inclusiveness国民の一体化」という宣言は、左翼の憎悪者によって無視されるだろう。彼ら左翼はトランプを人種差別主義者と呼び続けている。時給50ドルで雇われて抗議行動に参加している連中も、まったく同じことを叫びつづけている。私がこれを書いている間にも。
 実際、例えば黒人指導者たちは「黒人=被害者」という役割を演じることに慣れきっているのだ。彼らがそこから脱出することは困難だろう。一体どうやってそういう人々をまとめればいいのだろうか。彼らは、白人は人種差別主義者であり、自分たちは人種差別主義者の犠牲者だと、生まれてからずっと教え込まれてきたのだから。
 それは実現可能だろうか? いま私はPress TVという番組に短時間、出演してきたばかりだ。私たちは、トランプ就任演説を論評することになっていた。もう一人の論評者はワシントンD.C.在住の黒人だった。「国民の共生・一体化」を呼びかけるトランプの演説は、彼に全く感銘を与えていなかった。そして番組の司会者も、金で雇われた抗議行動の参加者をテレビに映すことに興味があっただけだった。アメリカの評判を傷つけるひとつの方法として。
 少なからぬ人間が、「犠牲者=黒人」の代表して話すことに経済的利益をもっている。だから「トランプの『国民の共生・一体化』は、雇用も福祉も奪う」と演説するのだ。
*Trump’s Declaration of War
Paul Craig Roberts,、January 20, 2017
http://www.paulcraigroberts.org/2017/01/20/


 私がPCRのこの文言を読んですぐ思い浮かべたのは、日本における部落解放運動のありかたでした。部落解放同盟が「被差別部落」を売り物にして補助金などの不正受給をしているという事実です。ウィキペディアでは「部落解放同盟」という項目で次のように書かれています。

部落解放同盟は、同和行政執行に関わる不法行為に明らかになった事例だけでも多数関与している。補助金の不正受給などの犯罪行為を行っているとの指摘があったが、2006年あたりから一気にその実態が暴かれるようになっている。同和立法の期限が切れた後、以前より指摘されていた関係者の不祥事が相次いで発覚(たとえば2006年には奈良市役所および京都市役所での不祥事が発覚している)。


 部落解放同盟といえば、被差別部落を中心として、あらゆる差別の撤廃を目指して活動している団体だったはずなのに、非常に残念な事態です。黒人社会の腐敗・階級分裂と似ているのではないかと思ったゆえんです。

 上記で引用したPCRの文言に「彼ら左翼はトランプを人種差別主義者と呼び続けている。時給50ドルで雇われて抗議行動に参加している連中も、まったく同じことを叫びつづけている。私がこれを書いている間にも」というくだりがあります。これについても少し解説しないと、PCRの意図していることが正しく伝わらないのではないかと思われました。
 アメリカでも日本でも、一般的には、「アメリカ民主党=左翼またはリベラル=進歩派、共和党=右翼または金融街=保守派」という図式ができあがっているように思います。しかし、ヒラリー女史やオバマ大統領は民主党でありながら、財界・金融界が裏で押しているTPPの強力な推進者でした。
 それに異を唱えたのが民主党から出馬したサンダースでした。サンダースはTPP=グローバル化を激しく非難し、それが民主党の若者や勤労者の共感を呼び、一時は予備選でのヒラリー勝利も危ぶまれるほどでした。ヒラリーが勝利できたのは大手メディアが偽旗報道(Fake News)を流しながら彼女を支え続けてきたからです。
 それに反してトランプは初めから、雇用を奪い貧富の格差を拡大するTPPに、強い反対を叫んでいましたから、民主党=進歩派、共和党=保守派という図式が、ここで既に崩れてしまっています。
 実は、雇用を奪い貧富の格差を拡大してきたのは、TPPではなく、NAFTA(北米自由貿易協定)でした。このNAFTAを批准・署名したがビル・クリントン大統領だったのですが、その結果、大企業が安い労働力を求めて次々と国外に出て行きました。それにさらなる毒を盛ろうとするのがTPPでした。
 このようにアメリカ国内の空洞化をくい止めるためにはNAFTA、その拡大版であるTPP(環太平洋経済連携協定)を取りやめ、同時に外国の政権転覆に狂奔してきた外交政策もやめると主張してきたのがトランプ氏でした。国外で無駄なお金を使うのではなく、荒廃しつつある国内の立て直しに精力と金力を使うべきだとするのが、トランプ氏の基本的主張でした。
 この「アメリカ第一」という主張が、黒人どころか白人すら貧困層に転落しつつある多くの中間層の心をとらえたからこそ、トランプ氏の逆転的大勝利があったというべきでしょう。
 (ニューヨークタイムズは投票日直前に、ヒラリーの勝率は98%と報じていました。これこそ、まさに偽旗報道Fake Newsというべきであり、トランプに投票しようとしている有権者をあきらめさせるための、最悪の世論操作と言うべきでしょう。私が過去のブログでも書いたように、トランプが勝利する確率も充分にあったのですから。)
*ヒラリー・クリントンとは誰か(上) ―アメリカ大統領選挙を目前にして (11/06)
http://tacktaka.blog.fc2.com/blog-entry-275.html
*ヒラリー・クリントンとは誰か(下) ―アメリカ大統領選挙を目前にして (11/07)
http://tacktaka.blog.fc2.com/blog-entry-276.html

 それはともかく、国外における無駄な戦費を減らすためには、中東の破壊と殺戮を広げ難民の激増を招いているイスラム過激派ISISを一刻も早く一掃しなければならないし、ロシアとの協力なしにはISIS一掃は困難と主張してきたトランプ氏でしたが、皮肉にも、このような進歩的政策に異を唱えたのが、ヒラリー女史であり、いわゆる「左翼・文化人」と言われる人たちでした。
 そして今、このような「左翼・文化人」が、「トランプは我々の大統領ではない」と演説する集会やデモに参加し、そこには驚いたことに、映画監督のマイケル・ムーアやマドンナといった有名歌手までいました。彼女は、女性の権利を訴える「ウイメンズ・マーチ」の集会で「そう、私は怒っている。ホワイトハウスを吹き飛ばしたいって、心の底から思ってる」とまで言っていました。
 過激派のテロが世界中で荒れ狂っているとき、たとえ冗談にしろ、テロを助長しかねない発言は、大きな問題を含んでいると言うべきでしょう。ところがCNNは、ホワイトハウスを吹き飛ばすどころか、トランプ暗殺をほのめかすシナリオすら、作成・放映したのです。「Sputnik日本」(2017/10/20)によれば、そのシナリオは次のようなものでした。

CNN、「トランプ氏が就任式で殺害されたら後釜は誰?」のシナリオを放映
https://jp.sputniknews.com/us/201701203258126/
 ジャーナリストのブライアン・トッド氏が検討したシナリオでは、暗殺される対象は新大統領だけではない。副大統領も議会のトップも皆殺される。
CNNの指摘では大統領も副大統領も職務執行不可能状態に陥るか、または死亡した場合、大統領を代行するのはまず米議会下院議長で、それが不可能な場合の代行ナンバー2は、上院議長。トッド氏の説明ではその次の代行ナンバー3は、閣僚でその筆頭は米国務長官だという。
CNNはトランプ氏が2017年1月20日の大統領就任式で不慮の死を遂げた場合のシナリオも別途検討した。
 現段階ではレックス・ティラーソン氏は、まだ米国務長官候補として承認を受けていない。他方、トランプ氏が大統領に就任しようとする瞬間、退任一歩手前のケリー長官の方はすでに全権を返すことになる。
 このため、1月20日正午の時点で国務長官臨時代行はオバマ・チームの一員の国務次官政治問題担当のトム・シャノン氏ということになる。
https://youtu.be/qxIG4dduqy0【CNN動画3分半】


 要するに、これは「こうすれば民主党に政権がもどってくる」というシナリオなのです。トランプ嫌いの狂信者が大統領の就任式に現れ、雛壇に並んでいる閣僚を軒並みに大量殺戮した場合、大統領代行ナンバー3は、米国務長官となり、国務長官が空席の場合、そのポストは、オバマ・チームの一員で国務次官政治問題担当のトム・シャノン氏になるというわけです。
 大手メディアがトランプ氏に対するあくどい人格攻撃を繰り広げているわけですから、このような世論の流れで、いつ誰がトランプ氏やその閣僚を銃による乱射で殺戮するか分かりません。事実、アメリカ全土で銃の乱射事件が絶えないのですから、その可能性は充分にあると言うべきでしょう。
 スナイパーを雇えば、トランプ氏だけを殺すというシナリオもあります。そうすれば、必ずしもトランプ氏の政策に全面的な賛同を寄せているわけはない副大統領に、次のポストがまわってきます。これはCIAやウォール街にとっては悪くないシナリオです。
 CNNは、他の大手メディアと同じく「トランプは、プーチン大統領の傀儡」という攻撃を続けてきたのですが、このようなテロ幇助罪にあたるような番組もつくっているのです。記者会見の席上でトランプ氏から「You are Fake News」と言われても、仕方がないレベルの報道機関ではないでしょうか。

 話がかなり横にそれてきたので元に戻します。先に紹介したブログで、PCR(ポール・グレイグ・ロバーツ)は次のように書いていました。

「左翼はトランプを人種差別主義者と呼び続けている。時給50ドルで雇われて抗議行動に参加している連中も、まったく同じことを叫びつづけている」「そして番組の司会者も、金で雇われた抗議行動の参加者をテレビに映すことに興味があっただけだった」


 上記では「金で雇われた抗議運動参加者」という言葉が出てきています。これはどういうことでしょうか。そう思って調べていたら「Sputnik日本」(2017/01/18)に次のような記事が出ていたのです。

NOトランプ! 抗議の参加手当て額をマスコミがすっぱ抜き
https://jp.sputniknews.com/us/201701183249603/
トランプ次期米大統領に反対する抗議行動への参加者には毎月2500ドル(およそ28万4千円)の手当てが支給されている。
 ワシントン・タイムズ紙がこの情報をすっぱ抜いた。
トランプ氏に反対する抗議キャンペーン「抗議要求(Demand Protest)」は参加者に対して月額2500ドルを提供。
 このほかイベントに参加する度に時給50ドルが追加支給される。こうした支給を受けるには年間最低でも6回は抗議行動に足を運ばねばならない。
トランプ氏の大統領就任式は1月20日、ワシントンで行なわれる


 では誰がこのようなお金を出しているのでしょうか。そこで疑われているのが、億万長者ジョージ・ソロスです。というのは、旧東欧では「カラー革命」と呼ばれるクーデターが頻発し、その背後にジョージ・ソロスの「ソロス基金」「オープン・ソサエティ基金」が動いてきたことは今では周知の事実だからです。
 櫻井ジャーナル(2017/01/18)は、このジョージ・ソロスとカラー革命について、次のように述べています。

 政治闘争がアメリカ支配層の内部で続き、ワシントンでドナルド・トランプの大統領就任を阻止するための「マイダン」、つまりウクライナで実行されたようなクーデターがあるかもしれないとウラジミル・プーチン露大統領は語ったという。
 2013年11月、ウクライナではオレグ・ツァロフ議員が議会で同国を内戦状態にするプロジェクトについて演説している。プロジェクトの中心はジェオフリー・パイアット米大使で、計画は11月14日と15日に話し合われ、NGOがその手先として動くことになっていたという。
 ソーシャル・ネットワーキングを使って世論を誘導し、組織的な政権打倒運動を展開しようと目論んでいると同議員は主張していた。ツァロフ議員が議会で演説した翌日にユーロマイダン(ユーロ広場、元の独立広場)で抗議活動は始まる。
 (中略)ネオ・ナチが暴力をエスカレートする中、EUとビクトル・ヤヌコビッチ大統領は話し合いでの解決を模索、2016年2月21日に平和協定の調印にこぎ着けたが、ネオ・ナチを主力とする勢力は2月22日に大統領の排除に成功する。
 ヤヌコビッチ大統領が[警察や軍隊を使って]最後まで戦わなかったことを非難する人もいるが、アメリカ側はイラクのサダム・フセイン、あるいはリビアのムアンマル・アル・カダフィと同じような目に遭わせるつもりだったのではないかと推測する人もいる。ともかく、そうした展開にはならなかった [ヤヌコビッチはロシアに亡命し、だから殺されなかった]。
 西側支配層の手でヤヌコビッチが大統領の座から引きずり下ろされたのは、これで2度目である。最初は2004年から05年にかけての「オレンジ革命」だ。その前年、2003年にはジョージア(グルジア)で同じような政権転覆プロジェクトが実行され、「バラ革命」と呼ばれている。
 こうしたプロジェクトは「カラー革命」と呼ばれ、その背後では投機家のジョージ・ソロスが蠢いていた。そのソロスが推していた大統領候補がヒラリー・クリントン。国防長官時代にヒラリーがソロスの指示で動いていたことは本ブログでも紹介した。そして、新たなカラー革命がアメリカで仕掛けられている。「パープル革命」だ。
 昨年11月、大統領選挙でトランプの勝利が決まった直後、民主党の候補者だったヒラリー・クリントンは夫のビルと紫をあしらった衣装で集会に登場、民主党の青と共和党の赤を混ぜた色だと説明した。ソロスが目論む「パープル革命」を宣伝することが目的だったのだろう。


 このカラー革命については、かつてNHKが「BSドキュメンタリー」という番組で紹介していたので知ってはいたのですが、その当時は「東欧でも民衆運動が発展しているのか」と単に驚きの目で見ていたのですが、今にして思えば、この裏で資金を出し扇動していたのはソロスだったのです。私はなんという無知だったのでしょう。
<註> このカラー革命についてはカナダのオタワ大学教授ミシェル・チョスドフスキーも、Global Researchというサイトで「ドナルド・トランプにたいする『カラー革命』」という長大な論文を掲載しているのを発見しました。時間と余裕のある方はぜひ読んでみてください。
*“Color Revolution” against Donald Trump
http://www.globalresearch.ca/color-revolution-against-donald-trump/5569300
By Prof Michel Chossudovsky、Global Research, January 18, 2017

 しかし旧東欧でカラー革命が成功したことは、共産圏=自由のない社会というイメージがありますから納得できるのですが、自由と民主主義を標榜するアメリカでカラー革命を画策しなければならない事態になっているということは、それほどアメリカの支配層・特権階級が追い詰められている証拠ではないでしょうか。
 その証拠に、民主党ではサンダースが財界・金融界を激しく攻撃し、予備選でヒラリー女史を追い落としかねない勢いでしたし、共和党では同じく全くの泡沫候補だと思われていたトランプ氏が、大手メディアの集団砲撃をものともせず、ついに予備選を勝ち抜いてしまったからです。
 しかもトランプ氏は、国内政策では「TPPやNAFTAを取りやめる」「基盤整備に力を入れ、疲弊しつつある国民に仕事と活力を取り戻す」と述べ、国外政策では「これまでのような海外における政権転覆活動をやめる」「NATOは冷戦の産物で時代遅れ」「ロシアと協力してイスラム原理主義勢力ISISを一掃する」といった政策を次々と打ち出したのです。
 社会主義者を自称するサンダース氏でさえ、このような大胆な政策的提起をおこないませんでした。彼は国際政策では金融街を攻撃しTPP反対を訴えましたが、NAFTAを廃止し、国外に移転している企業を国内に取り戻すといった大胆な主張をしていませんでした。まして「NATOは冷戦の産物で時代遅れ」「ロシアと協力してイスラム原理主義勢力を一掃する」というようなことは一言も言いませんでした。
 サンダース氏が国外政策で言ったのは、「シリアのアサド大統領を放逐するのはISISを放逐してからだ」ということだけでした。つまり、サンダース氏は「アメリカが海外でこれまでやってきたようなクーデター=政権転覆活動をやめる」とは言わずに、「アサド追放」と「ISIS一掃」の順序を問題にしただけでした。戦争をすることによって潤ってきたアメリカの経済界・金融街にとってはたいして大きな脅威にはならなかったでしょう。
 また、だからこそサンダース氏は途中で選挙戦を放棄し、「ヒラリー女史こそ民主党で最良の候補者だ」と支援演説をすることができたのでしょう。しかし、これはそれまでサンダース氏を支持し精力的に運動を展開してきた若者や勤労者を大きく失望させ、その支持票の少なからぬ部分はトランプ氏に流れることになりました。
 このことを考えると、トランプ氏が言ってきたことは、共和党の支配層・特権階級にとっても我慢ならない点が極めて多く、どうすれば、彼の政策を押しとどめることができるかということになります。とりわけトランプ氏が主張してきた「ロシアとの融和」という政策は、アメリカの真の支配者である軍事/安保複合体にとっては、絶対に許せないことでした。
 これについては、プリンストン大学名誉教授のステファン・コーエン氏は、すでに2016年11月の時点で、「アメリカの特権階級はトランプ氏がロシアとの融和に動き出すことを絶対に許さないだろう」と、RTのSophieCo というインタビュー番組で述べていましたが、今まさに事態はそのように動いているのです。
*If Trump moves to heal ties with Russia, establishment will oppose him fiercely
https://www.rt.com/shows/sophieco/366442-trump-promises-foreign-policy/
Stephen Cohen、RT, SophieCo, 11 Nov 2016
 そこで登場するのがジョージ・ソロスの「カラー革命」や「裏国家Deep State」ということになります。この間の事情をPCR氏は先に紹介したブログ「トランプの宣戦布告」の冒頭を次のように始めています。

 トランプ大統領の短い就任演説はアメリカの支配者層全体に対する宣戦布告だった。支配者層の全員に宣戦布告したのだ。
 トランプは呵責ないまでに明確にした。アメリカ人の敵がまさにここ国内にいることを。すなわちグローバル主義者、新自由主義経済学者、ネオコン(新保守主義者)や他の単独行動主義者だ。彼らはアメリカを世界に押しつけ、果てしのない金のかかる戦争に我々を引き込むことに慣れきっていている。
 さらなる国内の敵は次のような政治家たちだ。アメリカ国民よりはむしろ既存支配層に仕える政治家だ。実際、彼らは私的な既得権益の全体集団に仕える政治家だ。彼らはアメリカという車を乗りつぶすまで走らせ、その過程で金を儲けてきた。
 真実を語ることが許されるなら、トランプ大統領は宣戦を布告したのだ。彼自身にとって、はるかに危険な宣戦布告を。それはロシアや中国に対して宣戦を布告するよりも、はるかに危険な宣戦布告だ。


 では、この就任演説は、なぜロシアや中国に対して宣戦を布告するよりも、はるかに危険な宣戦布告だったのでしょうか。それをPCR氏は、ブログを次のように締めくくることによって明確にしています。

 トランプが自らを暗殺の標的にしたのは確実だ。CIAは諦めることはないし、立ち去ることもないだろう。
 なぜ70歳にもなるひとりの人物が、「アメリカの偉大な復活」に挑戦するのだろうか。そんなことをせずに、残る人生をたっぷり楽しんで全うすることができるのに。にもかかわらず、トランプはそれを宣言したのだ。
 だから理由が何であれ、我々はこれを有り難く思うべきなのだ、そしてもし彼が本気なら、我々は彼を支持すべきなのだ。
 もし彼が暗殺されたなら、我々は武器を取って、CIA本部があるラングレーを丸焼けにし、彼ら全員を殺害する必要がある。もし彼が成功するなら、彼は「Tramp The Great!」という称号に値する。
 CIAの攻撃対象リストに上がっているロシア、中国、イラン、ベネズエラ、エクアドル、ボリビアや他のあらゆる国々は、理解すべきだ。トランプが大統領になっても、十分な保護にならないことを。
 CIAは世界的組織だ。CIAの儲かる事業がアメリカ国家予算から自立できる収入をもたらしている。この組織は大統領からあるいはCIA長官自身からさえ独立して作戦を遂行することが可能だ。CIAは約70年かけて自らを強固してきた。CIAは立ち去ってはいないのだ。


 私たちは、就任演説が終わって仕事始めの日にトランプ氏が真っ先に訪れたのがCIA本部だったことを思い出す必要があります。CIAを敵に回したケネディ大統領がたどった道を、彼も選びたくなかったからでしょう。
 いまトランプ氏は、アメリカ国内を二分する「第二の南北戦争」を戦いつつあるように私には見えます。だとすればリンカーンがたどった運命を彼も選びたくなかったのかもしれません。
 南北戦争は、後の歴史家が解明しているように、奴隷解放の戦いではありませんでした。北部の工業資本家と南部の産業資本家との戦いでした。「奴隷解放宣言」は北部の戦いを有利にするための戦略に過ぎませんでした。にもかかわらずリンカーンは暗殺されたのです。
 金融街を取り締まろうとしたFDR(ルーズベルト大統領)も暗殺の対象になったりクーデターの対象になりました。そして最後は大統領執務室で[不思議な]急死を遂げました。だとすればトランプ氏も、社会主義革命をめざしていなくても、暗殺されたりクーデターを仕組まれたりする可能性があります。
 しかし、現在のトランプ氏が取りつつある政策を見ていると、暗殺はかなり遠のいたようにも見えます。というのは、次のRTに載った論文にあるとおり、トランプ氏は DeepState「裏国家」「闇の政府」からの圧力や脅迫に屈して(そしておまけに「リベラル左翼」からも攻撃を受けて)、就任演説で宣言したことから大きく後退し始めているからです。
*'Deep State' wins… Trump is being tamed to toe the line
「『裏国家』は勝利した―トランプは飼育され家畜化されつつある」
https://www.rt.com/op-edge/373493-trump-deep-state-russia-tillerson/
Finian Cunningham、12 Jan, 2017
 このような撤退は、トランプ氏を死から救うことになっても地球を死から救うことにつながりません。というのは、オバマ氏が大統領職を辞する直前までNATO軍をロシア国境に増強し、今はロシアと一触即発の状況になっているからです。他方でオバマ氏は中国との緊張も高めつつ、ホワイトハウスを去りました。こうしてトランプ大統領はオバマ氏の悪しき遺産を背負い込んでの船出となったわけです。
 トランプ氏がCIAや軍事安保複合体というDeepState「裏国家」の指示どおり動けば確かに暗殺やクーデターから逃れることはできます。しかしロシアや中国との戦争は確実に核戦争になり第3次世界大戦につながります。これは地球の死を意味しますし、その戦争で真っ先にアメリカ軍の先兵(Canon Fodder砲弾の餌食)として使われるのは自衛隊であり、真っ先に破壊されるのは日本という国土でしょう。

<註1> 戦争がいかに儲かる商売であるかをみごとに暴露したのは、スメドレー・バトラー将軍です。彼は経済界・金融界の用心棒として3大陸を股にかけて荒らし回った経験をまとめた本『戦争はペテンだ』を退職後に刊行しました。その一部は、拙訳『肉声でつづる民衆のアメリカ史』上巻(442-448頁、明石書店)に収められています。

<註2> ローズベルト大統領への暗殺計画、およびクーデターの試みは、櫻井ジャーナル(2012.12.07)では、次のように説明されています。

 アメリカの場合、JPモルガンをはじめとする金融界がヒトラーを支援していた。1932年の大統領選挙でハーバート・フーバー大統領が再選されていたなら、ナチスとアメリカ金融界の蜜月は続き、アメリカもファシズム化していた可能性が高い。強者総取りの経済を推進すれば、庶民の反発を力で抑え込むしかないからだ。
 このシナリオを狂わせたのがフランクリン・ルーズベルトの大統領就任だった。金融界にとってルーズベルトの掲げる政策が脅威だったようで、ルーズベルトは就任式の前に銃撃され、1933年になるとJPモルガンを中心とする勢力がファシズム体制の樹立を目指すクーデターを計画している。
 この反ルーズベルト・クーデターの計画はスメドリー・バトラー少将の議会での証言で明らかにされて失敗に終わるのだが、大戦の末期、ドイツが降伏する前の月にルーズベルトが急死すると親ファシスト派は復活し、ナチス残党の逃亡を助け、保護し、雇い入れている。日本で民主化が止まり、「右旋回」が起こった背景はここにある。
http://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201212070000/

関連記事
スポンサーサイト
検索フォーム
プロフィール

狐狸庵居士(田舎の国立大学を2010年に定年退職)

Author:狐狸庵居士(田舎の国立大学を2010年に定年退職)

リンク
最新記事
全記事表示リンク

全ての記事を表示する

カテゴリ
月別アーカイブ
最新コメント
RSSリンクの表示
QRコード
QR