書評『英語で大学が亡びるとき』に寄せて(その3)――米国は共同研究に日本よりも中国を選ぶ!

英語教育(2017/08/23) Nature Index Japan、科学技術・学術政策研究所、科学技術指標2017、科学研究ベンチマーキング2017、エドワード・ヴィッカーズ(九州大学准教授)、ジェルミー・ラプリー(京都大学准教授)


日本の科学力、米国は中国と共同研究
出典:日経(2017/8/13)

 
 前回のブログで私は 江利川春雄先生(和歌山大学)の書評とNature Indexの衝撃的な記事「失速する日本の科学力」を紹介しつつ、末尾を次のように結びました。

 私が拙著『英語教育が亡びるとき』「あとがき」で次のように述べたことが、このNature Index Japanで見事に証明されている、と言ったら言い過ぎでしょうか。
 「ですから、何度も言うように、このまま事態が進行すれば、OECDにおける日本の地位も、ノーベル賞受賞者数も、確実に転落・減少するでしょう。そんな不安を私はどうしても拭い去ることができません。私が本書を緊急に出版したいと思ったゆえんです。」

 ところが、このブログを載せたあと、私の予言を再び裏書きするかのように、日本経済新聞(2017/8/13)は、「科学研究で米中接近、日本は存在感薄く。文科省調査」と題する記事を載せました。
http://mx4.nikkei.com/?4_--_74306_--_1422094_--_70
 すぐにでも、この記事を次のブログで紹介したいと思ったのですが、相変わらずチョムスキーの新著『富と権力を超富裕層に一極集中させる10の原理:アメリカンドリーム葬送曲』(仮題)の訳注や索引づくりに追われたりしているうちに、またもや10日以上がすぎてしまいました。
 昨日やっと、「21日までに」という出版社の要求に沿って、初校原稿と併せて訳注・索引を送付することができ、ようやくブログに復帰することができるようになりました。
 そこで以下では、この日経報道を詳しく紹介しながら、私のコメントを書き加えることにしたいと思います。
 (相変わらずアメリカの政情は混沌としていて北朝鮮情勢も一触即発の状況ですが、残念ながら今回もこれに言及するゆとりがありません。)

 
 日経新聞は上記の記事を次のような書き出しで始めています。

科学研究で米国と中国が世界をけん引し、互いの結びつきを強めている実態が、文部科学省「科学技術・学術政策研究所」がこのほど公表した国内外の研究動向調査から明らかになった。


 そこで、さっそく文科省「科学技術・学術政策研究所」のホームページを検索し、「科学技術指標2017」「科学研究のベンチマーキング2017」を調べてみました。
 すると、そのホームページの冒頭では、“「科学技術指標2017」及び「科学研究のベンチマーキング2017」の公表について”と題して、自分たちの調査について次のように説明していました。

科学技術・学術政策研究所(NISTEP)では、日本及び主要国の科学技術活動を客観的・定量的データに基づき体系的に分析した「科学技術指標2017」を取りまとめました。論文部分については、日本及び主要国の科学研究のベンチマーキングを多角的な視点で行った「科学研究のベンチマーキング2017」において、より詳細な分析を実施しています。
http://www.nistep.go.jp/archives/33898


 ではNISTEP(National Institute of Science and Technology)が「日本及び主要国の科学技術活動を客観的・定量的データに基づき体系的に分析した」とする「科学技術指標2017」で、どんなことが明らかになったのでしょうか。
 日建新聞は、“同研究所がまとめたのは、「科学技術指標2017」と「科学研究のベンチマーキング2017」。2015年までの主要国の研究動向をまとめている”と述べつつ、それを次のようにまとめています。

 日本は研究費や研究者数は世界3位につけるものの、世界に影響を与える注目論文の数で米中に遠く及ばない。英国やドイツなど欧州勢にも後れを取っている。日本は抜本的な対策を取る時期に来ている。
 化学や物理学など主要8分野で、他の研究者から多く引用され、質が高いとされる上位10%の論文(TOP10%論文)の数(13~15年の平均)を主要国で比較した。
 研究大国の米国は物理学(シェアは43%)、臨床医学(49.3%)など4分野でトップになる一方、中国も化学(33%)や工学(29.2%)など4分野でトップに立つ。日本は化学(5.6%)の5位が目立つだけだ。


 他方、同じ項目についてNISTEPは、上記ホームページの冒頭部で、次のように自己分析しています(下線は寺島による)。

「科学技術指標2017」から最新の日本の状況を見ると、日本の研究開発費、研究者数は共に主要国中第3位の規模ですが、人口100万人当たりの博士号取得者は主要国で第6位です。
 論文や特許に注目すると、日本の論文数(分数カウント)は世界第4位、注目度の高い論文では第9位であり、10年前と比較すると順位は低下傾向です
 他方で、パテントファミリー数では継続して世界第1位です。日本のハイテクノロジー産業貿易収支比は継続して低下し、2011年以降は入超となり、主要国中第6位です。
 一方、ミディアムハイテクノロジー産業貿易収支比は継続して出超であり、主要国中第1位を保っています。


 これを見ると、NISTEP自身が、「注目度の高い論文では第9位であり、10年前と比較すると順位は低下傾向です」「日本のハイテクノロジー産業貿易収支比は継続して低下し」と言っているのですから、Nature Index Japanによる発表と同じく、日本の科学力の低下歴然としています。
 この、「日本及び主要国の科学技術活動を客観的・定量的データに基づき体系的に分析した」とする「科学技術指標2017」について、日経新聞は、さらに次のような解説を付けていました。

 米中の接近を裏づける分析結果も出ている。
 米国が13~15年に他国とまとめた論文の共同研究相手国を調べたところ、主要8分野のうち6分野で中国が1位だった。ほかは物理学でドイツ、臨床医学で英国だった。
 日本は材料科学で5位に入ったのが最高だった。03~05年では化学と材料科学で3位の位置につけるなど米国との協力関係がみられたが、中国が躍進するなかで米国にとって日本の存在感は薄れている。


 アメリカは、シリアでは裏でISISを支援する政策を続けてきていたのですが、ロシアがシリアからの要請にしたがって本格的に参戦するようになってから負け戦が濃厚になり、ISISの兵力を東アジアに向けて移動させ、中国包囲網を強める政策をとるように変わってきています。
 その典型例がフィリピンにおけるISIS勢力の台頭でしょう。ドゥテルテ大統領がプーチン大統領と会談するためにモスクワを訪れたちょうど同じ時期に、ISIS勢力によるマラウイ選挙という事件が起きました。これは明らかにドゥテルテ大統領に対する脅迫でした。
 アメリカが、フィリピン・ベトナム・台湾・韓国・日本をアメリカの同盟国に仕立て上げて中国包囲網を着々と築き上げてきたつもりだったのに、ドゥテルテ大統領がアメリカを裏切って中国やロシアに急接近し始めたからです。
 中国包囲網を強化しようとする政策にとって、ドゥテルテ大統領は、それを邪魔する邪悪な人物になったのです。
*「欧米に支援された‘聖戦’の冷酷な力が、反抗的なフィリピンに届く」
http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2017/07/post-863d.html

 このように、アメリカにとって中国は明らかな仮想敵国なのに、上記の文科省の指標によると、アメリカは強力な同盟国であるはずの日本ではなく、ほとんどの分野で中国を共同研究の相手に選んでいるのです。
 これは、アメリカが「日本の科学力が低下する一方だから共同研究するに値しない」と判断したからだ、と考えざるを得ません。アメリカにとって日本は、中国と戦争するときの「基地と兵員(自衛隊)を提供してくれる存在」だけでよいのです。
 これをみごとに証明してくれたのが、冒頭に掲げた図表ではなかったでしょうか。煩をいとわず、その図表を再度、以下に掲げておくことにします。

日本の科学力、米国は中国と共同研究


 では第2の指標である「科学研究のベンチマーキング2017」については、どうでしょうか。これについてNISTEPは、上記ホームページの冒頭部で、次のように自己分析しています(下線は寺島による)。

「科学研究のベンチマーキング」から明らかになった日本の状況を見ると、過去10年間で日本の論文数の伸び悩みが見られるとともに、注目度の高い論文(Top10%・Top1%補正論文数)で世界ランクが低下傾向にあります
 日本国内の論文産出構造を見ると、日本の論文数シェアの5割を占める国立大学の論文数が2000年代半ばから伸び悩んでいます。また、企業の論文数は1990年代から継続して減少しています
 分野別の状況を詳細に分析すると、臨床医学の論文数が増加する一方で物理学、化学、材料科学の論文数が減少しています。また、分野内においても研究内容に変化が起きていることが明らかになりました。


 このNISTEPによる自己分析をみれば、「日本の科学力の低下」は、この指標からも明らかです。
 「過去10年間で日本の論文数の伸び悩みが見られるとともに、注目度の高い論文(Top10%・Top1%補正論文数)で世界ランクが低下傾向にあります」と言っているのですから、Nature Index Japanによる発表と同じく、日本の科学力の低下歴然としています。
 次々とノーベル賞受賞者を出し、日本のお家芸であるはずの「物理学、化学、材料科学」の分野ですら、論文数が減少しているのです。
 ところが日経新聞は、この第2の指標については、ほとんどふれず、次のような文面で記事を締めくくっているのみでした。

世界が注目する質の高い論文は、国際協力によって生まれやすいとされる。現状を打破するには、米国をはじめとする海外との連携強化や日本の大学に優秀な海外人材を呼び込む施策の充実が必要になっている。


 つまり現状を打破するには、「米国をはじめとする海外との連携強化や日本の大学に優秀な海外人材を呼び込む施策」の充実が必要になっている、というのが日経新聞の主張なのですが、大学の授業を英語化しても日本の大学に優秀な海外人材が来るはずもないことは明らかです。
 その理由を詳述したのが拙著『英語教育が亡びるとき:「英語で授業」のイデオロギー』だったのですが、日経新聞は拙著の存在など一顧だにしなかったようです。
 というのは、「米国をはじめとする海外との連携強化や日本の大学に優秀な海外人材を呼び込む施策」に頭を悩ますよりも、日本からの頭脳流出を心配すべきだからです。この間の事情を私は、本書281-282頁(第3章第2節「註2」)で、次のように述べました。

 この頭脳流出にかんして『中央公論』2015年7月号に「外国人教員から見た、日本の大学の奇妙なグローバル化」と題する興味深い論文が載せられている。
 エドワード・ヴィッカーズ(九州大学准教授)、ジェルミー・ラプリー(京都大学准教授)両氏の共著によるもので、
 特に私の目を惹いたのは、「スーパーグローバル大学」と称して「グローバル人材」を海外から引き寄せることもさることながら、「日本のトップレベルの大学が抱える難題は、すでに学内に存在している彼らを引き留めることだ」と彼らが言っていることだ。
 つまり外から外国人教員を雇うことより、すでに日本にいる有能な教員を国内に引き留めることが先決だと言っているのである。京大や九大など旧制帝大でさえ、それほど研究環境が悪化しているということである。悪化している例として彼が指摘している事例を次にいくつか列挙しておく。
(1)むしろ問題となるのは、日本の大学教員の給与と条件が過去一五年にわたって一貫して下降傾向にあることだろう(一八一頁)。教員たちはどのような改革がなされるべきか議論する場をほとんど与えられず、彼らの状況の改善も施されない中、トップダウンの方針に対して不満が募ったのは無理もない。
(2)さらに言えば「国際化」のスローガンを掲げることは「日本の」高等教育を暗に過小評価することにつながり、彼らの反感や抵抗を煽るばかりである(一八三頁)。
(3)会議の多くはすでにどこかで決定された事項の報告及び追認を行っているに過ぎないが、出席は義務であり、出欠は事務職員に逐一記録される。会議に費やす[莫大な]時間は研究や授業ができないということでもある(一八四頁)。
(4)事務職員が教員の行動をチェックし、教員が事務的な仕事や儀礼的業務への参加で評価されるようでは、授業や研究は格下げされてしまっていると言わざるをえないだろう(一八五頁)。


 要するに、文科省・安倍政権は「英語力=科学力」「英語力=グローバル人材力」というイデオロギーを振り回して、日本の大学を「英語化」することに血道をあげていますが、それに反比例して、日本の科学力は低下する一方なのです。
 それどころか、もう一方で文科省は、小学校まで「英語化」することに邁進し始めているのですから、日本の将来は暗澹たるものです。
 さらに言えば、大学の研究費も削られる一方で、他方では軍事研究には多額の研究費を出す体制を着々と整備しつつあります。これでどうして自由で独創的な研究が生まれるのでしょうか。
 次回は、この点について、大隅良典氏(2016度のノーベル賞生理医学賞受賞者)の軌跡・発言をたどることによって、検証してみたいと考えています。


<註>
*「米支配層の予定通りにトランプ政権は中国と戦争を開始、その手先になったインド首相と安倍首相」
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/ (2017.08.22)
*Why Siding with Washington on Korea May Be Dangerous
「朝鮮問題で、ワシントン側につくのは何故危うい可能性があるのか」

https://www.strategic-culture.org/news/2017/08/10/why-siding-with-washington-korea-may-be-dangerous.html


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書評『英語で大学が亡びるとき』に寄せて(その2)――科学誌『Nature』の5つのグラフの衝撃

英語教育(2017/08/07) Nature Index Japan、中学校「英語による授業」、小学校英語「早期化・教科化」、大学入試の「外注」「民営化」、OECD国際成人力調査「国語力」「数学力」

    急速に落下する「世界での地位」、失速・停滞する「日本の論文数」日本の科学力1、TotaloutputScopus_high

  前回のブログでは、私が鹿児島講演に行かねばならないため、拙著『英語で大学が亡びるとき』にたいする江利川春雄先生(和歌山大学)による書評のみを掲載し、次のように書きました。
 「いまは鹿児島への出立までに時間もありませんので、今回は江利川先生の書評のみを掲載し、それにたいする私の想いは帰郷してからにしたいと思います」
 ところが岐阜に戻ってきたら、今度は、チョムスキーの新著Requiem for the American Dream の翻訳初校に追われる毎日でした。
 そして気がついたら、もう明日からの、国際教育総合文化研究所が主宰する「『寺島メソッド 英語アクティブラーニング』のワークショップ」と「宿泊セミナー」が、目の前に迫ってきています。
 そこで慌てて、「急速に失速・劣化しつつある日本の科学力(その1)」の続編を、いま書き始めています。
 
 さて江利川先生の書評は次のような衝撃的事実の提示で始まっています。

 「日本の科学研究,この10 年で失速」。2017年3 月発売の英国科学誌『ネイチャ-』は,衝撃の特集を組んだ。主要科学誌への投稿論文数は,日本が得意とした理工系でも10年間で10%以上減少。
 要因は,2004 年の国立大法人化による予算削減と研究条件の劣化である。 大学の危機をさらに加速させるのが,「英語による授業」の強要である。そう本書は警告する。


 上記で江利川先生は、「大学の危機をさらに加速させるのが,『英語による授業』の強要である。そう本書は警告する」と書いておられましたが、事実、私は、『英語で大学が亡びるとき―「英語力=グローバル人材」というイデオロギー』の「あとがき」を、次のように結んでいます。

 英国のタイムズ紙の高等教育情報誌THE(Times Higher Education)が一〇月一日に発表した世界大学ランキング二〇一四~二〇一五で、日本の大学がランクを下げて話題になりましたが、調べてみると、低下した一番の理由は在籍する外国人学生の数の少なさによるものであって、研究者の実力とは、ほとんど何の関係もありませんでした。
 現在の日本は、本書第3章でも詳述したように、OECD国際成人力調査の「国語力」でも「数学力」でもトップの位置を占めていますし、ノーベル科学賞の受賞者数も二一世紀以降はアメリカに次いで世界第二位です。
 しかしこれは、これまで積み重ねられてきた現場教員・研究者の血のにじむような努力に支えられて生み出された成果でした。
 いま極めて深刻なのは、文科省が教育改革という名の「改悪」をすればするほど、教員が置かれている教育・研究環境が悪くなり、生徒・学生の学力は低下しているという事実です。文科省自身による最近の調査でも、「高校三年生の英語力は中卒程度」でした(一〇月一日発表)。
 ですから、何度も言うように、このまま事態が進行すれば、OECDにおける日本の地位も、ノーベル賞受賞者数も、確実に転落・減少するでしょう。そんな不安を私はどうしても拭い去ることができません。私が本書を緊急に出版したいと思ったゆえんです。


 この私の予言を裏付けるかのような衝撃的事実が、英国科学誌『ネイチャ-』(2017年3 月発売)の「日本の科学研究,この10 年で失速」という特集記事でした。この特集記事によれば。主要科学誌への投稿論文数は,日本が得意とした理工系でも10年間で10%以上も減少しているというのです。
 そこで早速この衝撃的事実を、英国科学誌『ネイチャ-』(2017年3 月発売)で、確認しようと、書店を訪れたのですが、残念ながら手に入りませんでした。そこで、やむを得ずインターネットで調べてみたところ、Nature Indexは、そのホームページで、次のような記事を公開していることが分かりました。
*The slow decline of Japanese research in 5 charts
http://www.natureindex.com/news-blog/the-slow-decline-of-japanese-research-in-five-charts

 この記事では、上記で示されているとおり、五つの図表(5 charts)を使って「日本の科学力」の「失速・劣化」ぶりを説明しているのですが、しかし今は時間もありませんので、ここでは、その五つの図表のうち、日本の「失速・劣化」ぶりを最も分かりやすく示す二つの図表だけを取りあげることにします。
 その第一番目が、ブログ冒頭に掲げた「論文総数の時間的・年代的変化」です。このグラフは、日本・中国・韓国・イギリス・アメリカという科学先進国5カ国における、2005年から2015年までの論文発表数を示したものです。
 ブログ冒頭で紹介した図表を、もう一度、再掲すると次のようになります。
日本の科学力1、TotaloutputScopus_high
  左のグラフが「科学分野で発表された各国の論文の数の変化」、右のグラフは「全世界の論文発表数のなかで各国の論文発表数がどのくらいの割合を占めているのか」を示しています。
 日本の論文発表数は紫色の線で表されており、2005年から2015年にかけての発表は、数の上では横ばいです。しかし世界全体の発表数は年を追うごとに増加しているので、全体における割合は急激に低下していいます。それを歴然と示しているのが、右側のグラフです。
 なお、このグラフにつけられた解説では、引用文献データベース「Scopus」を元に作成されており、Scopus上の論文総計は2005年から2015年で80%増加しているにも関わらず、日本の論文数は14%の増加にとどまっている」と述べられています。

 (Japan is one of the world’s top research-producing nations. But, over the past decade its scholarly output has not kept pace with the average growth in publications around the world. While the total number of articles in Scopus increased by about 80% between 2005 and 2015, Japan’s output grew by a mere 14%.)
*Five Charts
https://www.natureindex.com/news-blog/the-slow-decline-of-japanese-research-in-five-charts
*Scopus
http://jp.elsevier.com/online-tools/scopus

 さて「日本の科学力」の「劣化・衰退」ぶりを示す、もうひとつのグラフが次のものです。
日本の科学力5、japnvsworld_high
 上記のグラフは、2015年に発表された日本の論文を、学問分野別(14分野)に分類し、縦軸で各分野における「世界の研究と日本の研究の相対的変動」を示したものです。
 グラフの横軸では、左から学問分野別に、薬学・物理学・化学・材料科学・エンジニアリング・生化学&分子生物学・神経科学・薬理学・コンピューター科学・数学・免疫学・植物科学・農学・天文学の順に、科目名が並べられています。
 これを見ると、14分野中11分野で日本は、世界平均のペースから遅れをとっていることが、よく分かります。論文発表数で日本が2005年よりも増加しているのは、薬学・数学・天文学の三つだけなのです。(ただし天文学だけは世界平均よりも良い結果となっています)。
 だとすれば、私が拙著「あとがき」で次のように述べたことが、このNature Index Japanで見事に証明されている、と言ったら言い過ぎでしょうか。

 ですから、何度も言うように、このまま事態が進行すれば、OECDにおける日本の地位も、ノーベル賞受賞者数も、確実に転落・減少するでしょう。そんな不安を私はどうしても拭い去ることができません。私が本書を緊急に出版したいと思ったゆえんです。


 江利川先生は、拙著の書評を、第1章を次のように要約し、また、書評の末尾を次のように結んでおられます。

 高度で創造的な思考を支えるのは母語である。日本では明治以来の努力で大学院教育まで日本語で行える。そのおかげで,多くのノーベル賞受賞者を輩出してきた。ところが,政府は「グローパル人材育成」策として大学の授業を英語で行えば補助金を出す「亡国の教育政策」を行っている。背景には「英語力= 研究力=経済力=国際力」という無知と幻想がある(第1章)。
 ・・・氏はすでに,主として小学校英語教育の問題点を論じた『英語教育原論』(2007)、高校の「英語で授業」の危険性を指摘した『英語教育が亡びるとき:「英語で授業」のイデオロギ-』(2009)を世に問うてきた。
 次期学習指導要領で小学校外国語が早期化・教科化され,中学校でも「英語で授業」 が強要されるいま、本書に加えて、前掲書を「寺島三部作」として読み直すならば,氏が日本の英語教育政策の病巣を名医の的確さで診断し処方姿を書いていることに。
 「今の文教政策がこのまま進行すれば,日本の大学教育だけでなく,日本の公教育全学体が確実に亡びる」(あとがき)。
 子どもたちのために,そうさせてはならない。病気を根治させ,「母語を耕し、自分を耕し,自国を耕すための英語教育」を実現するのは.私たちの仕事である。そのための知恵と希望を本書は与えてくれる。必読書である。


 江利川先生の、「氏が日本の英語教育政策の病巣を名医の的確さで診断し処方姿を書いている」という表現は、私にとっては褒めすぎで、何とも面映(おもは)ゆいものがあります。
 しかし、文科省が小学校英語を早期化・教科化し、中学校でも「英語で授業」を強要しているときだけに、全国の教育現場だけでなく父母や市民の間で、英語教育が議論される際に、拙著が「たたき台」になるのであれば、こんなに嬉しいことはありません。
 まして、いま政府・文科省が、英語の大学入試を民間業者に「外注」し、英語教育を利潤追求の場、教育産業の草刈場にしようとしているのですから、事態は深刻さを増すばかりではないか――私にはそう思えてならないのです。


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