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クリス・ヘッジズとPCR(ポール・グレイグ・ロバーツ)が語る、アメリカの教育と大学

アメリカ理解(2017/12/14) エルサレム、イスラエルロビー、大学教師「終身在職権tenure」、ノーマン・フィンケルスタイン、ホロコースト産業

フィンケルスタイン1 フィンケルスタイン2

 トランプ大統領が「エルサレムをイスラエルの首都だ」とし、アメリカ大使館をエルサレムに移すと宣言したことで、世界中が騒然としています。
 今までアメリカと一緒になってISISを裏で支援しシリア政府転覆に力を注いできたサウジアラビア政府も、これには流石に賛成するわけにはいかず反対意見を表明せざるを得なくなりました。
 さもないと、パレスチナどころか、湾岸諸国=イスラム王制独裁国家の「一般民衆の怒り」を抑えることができなくなり、自分の政権すら維持できなくなる恐れがあるからです。
 こうしてトランプ氏は自分の首をつなぎ止めるためにDeep State「裏国家、闇の政府」の言いなりになって、「エルサレムをイスラエルの首都だ」と宣言したのですが、そのことがアメリカをますます世界から孤立させることになったようです。
 EUはもちろん、アメリカの「プードル犬」と言われるイギリスでさえ、トランプ氏に異を唱えざるを得なくなっているからです。
 しかし実は、「1999年5月31日までにそこへ大使館を建設するべきだ」とする法律を、今から22年前の1995年に、アメリカ議会がつくりあげていたのですから、トランプ氏の宣言は、単にそれを追認したにすぎませんでした。
*トランプ米大統領の演説はイスラム世界で封印されていた米国のイスラエル政策に対する怒りを噴出
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/20171211/(櫻井ジャーナル20171211)
 しかも、上院は今年(2017年)6月5日、その法律を再確認する決議を賛成90、棄権10で採択しているのですから、この宣言を口実として、ヒラリー女史を先頭とする民主党が、大手メディアと一緒になってトランプ叩きのために奔走することになれば、アメリカ政治は、まさに末期的症状になっていると言わざるを得ません。
 とはいえ、この「トランプ宣言」の功績は、アメリカの政治がいかにイスラエルロビーによって動かされてきたかを、闇の世界から昼の世界へと、公然化したことにあるとも言えます。これまでもトランプ氏は、「大統領はDeep Stateの単なる御飾り・御神輿にすぎない」ということを、みごとに体現して見せてくれていますから、氏の言動は大いに褒めてあげるべきではないでしょうか。


 それはともかく、今回のブログは、いろいろ読んで新しく発見したことをもとに、すでに書いたブログ「日本人の真の学力を知らない文科省、アメリカンドリームが終わったことを知らない研究者」(2017/11/15)の続編を書くことにあります。
 というのは、私自身がアメリカの大学で教えた経験や、世界的に著名な平和学者ガルトゥングおよび苅谷剛彦氏(元東大教授、現オックスフォード大学教授)の言説をもとに、「アメリカの大学は留学するに値するか」を詳説したのですが(拙著『英語で大学が亡びるとき』第3章第2節)、その後いろいろ読んでみて、ますます拙著で書いたことに確信をもつようになったからです。
 その一端を、先のブログの<註2>で、私は次のように紹介しました。ここで取りあげたPCR(ポール・グレイグ・ロバーツ)は、スタンフォード大学やジョージタウン大学などで教鞭を執ったこともある、研究者でもありました。

アメリカの元経済政策担当財務次官補で、ウオールストリート・ジャーナルの元共同編集者だったPaul Craig Robertsが、ブログ(2017/11/08)で、自分の国アメリカを次のように描いているのを見つけました。
*From Superpower to Incompetence(超大国から無能へ)
https://www.paulcraigroberts.org/2017/11/08/from-superpower-to-incompetence/
 ・・・ 大学は無能だ。大学は、学生を教えるための(十分な)教授を雇う代わりに、教授たちを管理する管理者を雇っている。こうして、今や教授の代わりに、学長、副学長、総長、副総長、学部長、副学部長等々ばかりが居並んでいる。教科教育の代わりに、言論統制と感受性訓練がある。大学は予算の75%も管理者に使い、彼らの多くが途方もない収入を得ている。
 公立学校は標準全国テストによって無能化されている。現在の教育の目標は試験に受からせることだ。学校の評価と教師の給与は、能力ある生徒たちの創造性や自立思考を発達させることではなく、標準化されたテストのため生徒を丸暗記においやることにかかっている。こういう話はきりなく続けられる。・・・

(和訳は「マスコミに載らない海外記事」(2017/11/12)に載っていたものに、私が一部、加筆修正を加えました。全文を読みたい方は下記を参照ください。)
http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/paul_craig_roberts/index.html)


 日本の英語教育は、指導要領の改悪で「英語で授業」が基本的な柱となり、文科省が先頭になって英検受験やTOEIC・TOEFL受験の旗を振ることによって、ますます会話中心暗記中心になっていますから、学力の劣化は避けられません。
 それに輪をかけて文科省は大学入試までも民営化すなわち民間企業に「外注」することを前面に打ち出すようになっているのですから、早晩、日本の英語教育はテストのための教育となり、無能化していくことは目に見えています。私が『英語教育が亡びるとき』(明石書店)を書かざるを得なくなった所以です。
 また日本の大学の劣化ぶりも歴然としています。私が勤務していた国立大学の経験からしても、研究する時間よりも文科省や大学本部への報告書づくりに追われているのが現状です。しかも上で決まられたことを追認するだけの会議に時間を奪われ、ますます研究に費やす時間がなくなります。
 もっと悲劇的なのは、教授会を含めて、このような意味のない会議への出席点検が最近とみに厳しくなってきていて、その出席率が昇進昇格や給料にまで影響を及ぼしかねない勢いになってきている実状です。
 これは単に地方の国立大学や弱小私立大学だけのことかと思っていたら、京都大学や九州大学などの旧制帝国大学もあまり変わらないことを知って愕然としました。しかも、これを告発しているのがイギリス人やアメリカ人の准教授だったことは、二重の驚きでした。これでは優秀な研究者が国外流出したくなるのも当然ではないでしょうか。(拙著『英語で大学が亡びるとき』281-282頁)。

 もうひとり、ここで紹介したいのは元ニューヨークタイムズの記者だったクリス・ヘッジズのアメリカ大学論です。氏はプリンストン大学やコロンビア大学のような超一流大学で客員教授をしていたこともあります。
 その彼が、自分の勤めていたニューヨークタイムズ、そして客員教授として教鞭をとったことのあるアメリカの大学について、次のように語っていることは、私にとって極めて興味深いものでした。

 ・・・ニューヨークタイムズは常にエリート向け刊行物ですが、エイブ・ローゼンタールが編集長だった財政難時代、ネオコンと新自由主義イデオロギーを全面的に奉じていました。エリートに応える特別欄を設けたのは彼です。
 彼は、ノーム・チョムスキーやハワード・ジンのように、規制のない資本主義と帝国主義を批判する人々を締め出す事実上の検閲を課し、彼は、ニューヨークの不動産開発業者に挑戦したシドニー・シャンバーグや、エル・モゾテの虐殺(エル・サルバドル)を報じたレイモンド・ボナーのような記者を、追い出しました。(中略)
 大企業が支配する国家で、そのれにたいする根源的批判に固執すれば、生活は極めて困難になります。終身在職権は決して得られません。役職にはつけません。賞は取れません。補助金は得られません。ニューヨークタイムズは、著書を書評する場合でも、ジョージ・パッカーのような従順な保守人間に任せ、私の最新著作でそうしたように、中傷させるのです。
 私は、プリンストンやコロンビアのような幾つかの大学で客員教授として教えたことがありますが、エリート大学は、大企業の構造と目標の複製です。博士学位審査委員会や、まして「終身在職権」を得るための審査委員会を切り抜けたいと思ったなら、徹底的に安全第一で行かねばなりません。
 大学組織の中に浸透し、大企業からの寄付や同窓会富裕層の命令を通じて押しつけられている、大企業寄りの姿勢に異議申し立てをしてはならないのです。実を言うと、こうした理事会メンバーの大半は監獄に入るべき経歴の持ち主だからです。
 17世紀のイギリスでは、投機は犯罪でした。投機家は絞首刑にされました。ところが現在、そのような連中が経済と国家を運営しているのです。連中は、略奪した富を、アメリカの知的・文化的・芸術的生活を破壊し、アメリカ民主主義を消滅させるのに使っているのです。連中のためのピッタリの言葉があります。国賊です。

(和訳は「マスコミに載らない海外記事」(2017/10/14)に載っていたものに、私が一部、加筆修正を加えました。全文を読みたい方は下記を参照ください。
*The elites “have no credibility left:”An interview with journalist Chris Hedges
「エリートには何の『信頼性』も残されていない」、クリス・ヘッジズへのインタビュー

http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/paul_craig_roberts/index.html)


 
 クリス・ヘッジズは、「自由と民主主義」すなわち「言論の自由」「教育研究の自由」を高々と掲げているアメリカの実態を、このインタビューで赤裸々に暴露しています。
 上記のインタビューでは、体制に逆らうテーマで博士論文を書こうとすれば、先ず学位を得られる見込みはないとクリス・ヘッジズは述べています(チョムスキーも同じことを、『チョムスキーの教育論』明石書店2006で述べています)。
 また万一、学位を得られたとしても、今度は大学教授としての昇進昇格も危うくなります。ましてや「終身在職権」を得る見通しは、ほぼゼロになります。その典型例がノーマン・フィンケルスタインでしょう。
 フィンケルスタインの父親はアウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所収監の、母親はマイダネク強制収容所収監のユダヤ人生存者でしたが、イスラエルの姿勢に批判的だったにもかかわらず、幸運にも1988年にプリンストン大学より博士号を取得していますが、大学で職を見つけようとすると、ことごとく妨害されました。
 というのは、フィンケルスタインは著書『ホロコースト産業――同胞の苦しみを「売り物」にするユダヤ人エリートたち』(三交社, 2004年)で見られるとおり、アメリカのユダヤ人エリートが自らの政治的・経済的利益にそぐわないものに対して反ユダヤ主義のレッテルを貼りつけ、ユダヤ人=ホロコースト被害者の立場を濫用し金儲けをしていると強く批判していたからです。
 そして苦労して手に入れ准教授を務めていたシカゴのデポール大学では、間近に迫っていた終身在職権(テニュア)の取得も、大学上層部によって否決されてしまいました。こうして結局フィンケルスタインはデポール大学を退職する結果となりましたが、この裏で外部から執拗に妨害工作をしていたのがアラン・ダーショウィッツ教授(ハーバード大学)だったことも分かっています。
 ユダヤ人以外がイスラエルの政策を批判すると「反ユダヤ主義」のレッテルを貼られることは珍しくありませんが、ホロコーストの生き残りを両親とするフィンケルスタインが、ユダヤ人エリートやイスラエルロビーから攻撃され、生活の糧を失うというのは、何ともやりきれません。しかし何度も言いますが、これがアメリカの実態なのです。

 ちなみに、ジャーナリストとして真実を述べる姿勢を貫くためにニューヨークタイムズに居られなくなったクリス・ヘッジズは、いまRT(RsussiaToday)で氏独自の番組『ON CONTACT』を持つことができるようになっています。
 チョムスキーの新著『アメリカンドリームの終わり』の原著を片手に、ヘッジズがチョムスキーに2回連続のインタビューをする姿を見たときは、正直言って驚きました。RTは広がりは、これほどの厚みも増しているのです。
* Noam Chomsky interview - Part I (On Contact, Chris Hedges)
https://www.rt.com/shows/on-contact/394964-noam-chomsky-neoliberalism-interview/
 しかしクリス・ヘッジズだけでなく、ラリー・キングやエド・シュルツといった著名ジャーナリストが、アメリカの大手メディアに居場所が得られず、RTで番組を持つようになったことは、RTの評判がますます高くなっていくわけですから、RTにとっては喜ばしいことかも知れませんが、アメリカの言論界にとっては実に不幸なことです。アメリカが全体主義国家になっていく兆しにならないことを願うのみです。

<註> 
 いま大手メディアで話題になっていることのひとつに「ロシアが国家ぐるみでドーピングをしている」という話があります。しかし、これも「ロシアによるアメリカ大統領選挙への干渉」という話題と同じく、1年近くも調査を続けているのに、何一つ確たる証拠が出てきません。
 これは、「ウクライナ上空を飛んでいたマレーシア民間機をロシアが撃ち落とした」とする宣伝についても同じでした。調査団を現地に派遣して残骸を調べるようにロシアが要請しても、調査団が来ないうちに「報告書」が作成されて、ロシアによる疑いが極めて強いとする結論のみが、大手メディアを通じて大々的に流されたのでした。
 このような状況を考えると、かつてソ連とアメリカが対峙していた「冷戦」の頃よりも事態は深刻で、それがいつ「熱戦」に転化するか分からない情勢です。
 戦争をしたい勢力は、イラクの「大量破壊兵器」のときと同じく、次から次へと「偽旗事件」を引き起こしたり、FakeNews「偽旗報道」を流したりするのですから、今ほど「真実を見抜く眼」が求められているときはないと思います。


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「言論の自由」の崩壊――アメリカ民主党・リベラル派の腐敗・堕落

アメリカ理解(2017/12/02) ロシアゲイト、RT(Russa Today)、外国エージェント登録法(FARA)、「裏国家、闇の政府」(Deep State)


書評チョムスキー『アメリカンドリームの終わり』東京新聞2017/11/19
東京新聞チョムスキー書評20171119071

 現在(2017年2月)のアメリカは機能不全に陥っています。
 というのは、アメリカ議会が、「ロシアが裏でアメリカ大統領選挙に干渉し、そのおかげでトランプは選挙に勝利した」とする、いわゆる「ロシアゲート」を一貫して取りあげ、その他のことはまともに議論されていない観があるからです。
 しかも、この「ロシアゲート」を大々的に取りあげ、トランプ大統領の公約「アメリカファースト」すなわち「軍隊を海外に送って他国の政治に干渉したり政権転覆したりすることをやめる」という政策の実行を一貫して妨害してきたのは、ヒラリー・クリントンを先頭とする民主党幹部でした。
 こうしてトランプ氏は今では「裏国家」「闇の政府」(いわゆるDeep State)の言いなりになって「CIAの解体」「NATO解体」という公約を取り下げるどころか、今ではロシア国境近くにNATO軍を終結させ、一触即発の近況が続いています。いつ核戦争になってもおかしくない状況です。
*「戦争が差し迫っているのが見えないのだろうか」
Paul Craig Roberts (元アメリカ財務次官) 20171127
http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2017/11/post-412f.html

 これはアジアについても同様で、トランプ氏はアフガニスタンからの撤兵を取りやめ、さらに北朝鮮との対話を始めるどころか「北朝鮮を破壊してやる」とわめき出す始末です。他国を侵略し破壊することは、ナチスドイツを裁いたニュルンベルク裁判で「人道に対する罪」として指導者は絞首刑にされたはずなのに、今はそれをアメリカ大統領が堂々と公言するまでになっているのです。
 トランプ氏が「Deep State」の言いなりになって、このような言動を繰りかえしていても、その先頭に立っている民主党幹部の姿勢は変わることはありませんでした。
 それどころか、「ロシアが裏で民主党本部にハッカー攻撃をした」という口実が通用しなくなったので、「ロシア国営放送RTが番組を通じてヒラリー女史に不利なニュースを流したからだ」として、アメリカ議会は「報道機関としてRTが自由な取材活動をする自由を制限する法案」を通過させ、司法省もこれを許可しました。
 この根拠になった法律「外国エージェント登録法(FARA)」は1938年に制定されたもので、当時のナチスドイツを対象にしたものでした。それをよりにもよって巨大な犠牲を払ってナチスドイツを敗退させたロシア(旧ソ連)にたいして適用するというのですから、アメリカの知性(進歩派リベラルと言われている人たち)の荒廃ぶりは目を覆わんばかりです。
 その動きは大手メディアどころか、グーグル、ツイッター、フェイスブックなどに及んできています。つい先日もグーグルは「グーグルで検索してもRTの流す記事が読者の目になるべく触れないように、記事のランキングを低くする」ことを考えると発表しました。今まで大手メディアでは得られない情報をインターネットその他で手にれていた一般民衆は、今度は何を頼りにすればよいのでしょうか。
*Google’s de-ranking of RT in search results is a form of censorship and blatant propaganda
「グーグルによるRT情報の格下げは検閲であり、あからさまなプロパガンダ」

https://www.rt.com/op-edge/410981-google-rt-censorship-propaganda/

 そもそもアメリカ国内で活動する国営放送は、イギリスのBBCを先頭として、ドイツ、フランス、カナダなど、数多くあります。それでもRTだけが狙い撃ちにされたのは、それだけRTの報道が、権力層の都合が悪いことを報道し続けたからでしょう。
 それを象徴的に示すのが、真実を報道したがためにニューヨークタイムズを初めとする大手メディアから放逐された人物(たとえばクリス・ヘッジズなど)を、RTは数多く採用しているという事実でしょう。
 そもそもRTの報道が間違っているというのであれば、自分たちが手にしている多くのメディア、とりわけ大手メディアを通じて反論すればよいのであって、それを権力を使って押さえつけるというのは、アメリカが標榜する「自由の国」「民主主義」を自ら踏みにじる行為ではないでしょうか。
*「アメリカの基本的価値観を踏みにじるRTへの弾圧」
http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2017/10/rt-3947.html
 RTは世界各国に特派員を派遣し、RTが放映するドキュメンタリーは数々の国際賞を受賞するまでになっています。こうしてRTの視聴者は増えるばかりです。今ではBBCを越える存在になろうとしています。ですから、戦争をしたい勢力にとっては、これほど都合の悪い存在はないでしょう。
 ところが先述したように、今ではグーグルまでもが権力に荷担するようになってきています。もっとも、グーグルのCEO=エド・シュルツは大統領選挙のときにヒラリー候補を裏で強力に支援した人物でしたから、当然と言えば当然のことかも知れません。これが何度も言うように、アメリカの民主党=左派・リベラルと言われているひとたちの実態なのです。
 チョムスキーは『アメリカンドリームの終わり』で民主党について次のように述べています。

 同じことは二〇一六年の予備選の、民主党バーニー・サンダースの選挙運動でアメリカ全土で見られたことでした。かれの見解や姿勢は非常に具体的なもので、圧倒的な多数とは言い難いにしても、多くの民衆からの支持を得ていました。しかし大手メディアがそれを取り上げるようになったのは、予備選の終盤になってからにすぎませんでした。サンダース氏が呼びかけた「政治革命」は正しいものでしたが、じつを言うと、それほど驚くべきものではありませんでした。というのは、共和党のドワイト・アイゼンハワー大統領ですら、同じ内容のことをすでに言っていたからです。
 そのことは同時に、現在のアメリカの政治地図が、全体として、いかに右寄りのものになっているかを示すものです。つまり民衆の求めているもの、そしてそれがかつては政治の中心だったものが、いまでは非常に過激で、非常に急進的で、過激派だ、と見えるくらいに変わってしまっているのです。
 だから、このように大きく右旋回してしまっている政治の流れを、元の流れに押し戻すのは、まさにわたしたち自身の肩に掛かっているわけです。現在の民主党は、かつては共和の党穏健派と呼ばれていた人たちがとっていた政治姿勢とそっくりなのです。それがいまの民主党の基本姿勢なのです。
 では共和党はどうかというと、あまりにも右に行きすぎてしまって、政治地図から、はみ出てしまっています。かれらはもはや政党とは言えない存在になってしまっているのです。


 このチョムスキーの言を読んでいると、私の眼には現在の日本とあまりに似ていることに驚きと恐怖を感じざるを得ません。日本の民主党(→民進党→?)の姿はあまりにもアメリカ民主党の軌跡に似ているからです。私が『アメリカンドリームの終わり』の「あとがき」で、次のように書いた所以(ゆえん)です。

先述のとおり、私は一〇年以上もアメリカに通い続けているうちに(そのうちの一年はカリフォルニア州立大学で教えたこともあります)、アメリカの暗部をますます深く知るようになりました。そして、「現在のアメリカは一〇年後の日本だ」と学生に言い続けてきましたが、今の日本を見ていると「今日のアメリカは明日の日本だ」と思うようになりました。本書が明日の日本に対する警告の書になることを願ってやみません。


 そういうわけで、チョムスキーの拙訳を多くの方にぜひ読んでいただけたらと思っていたところ、その書評が東京新聞だけでなく中日新聞(2017/11/19)でも掲載されたことを知人が教えてくれました。その喜びを読者の皆さんにもお裾分けしたくなり、改めて下記に掲載させていただく次第です。(東京新聞ではカラーでしたが、中日新聞では白黒でした。)

中日新聞20171119『終わり』書評 サイズ小063

<註> 
 戦争をしたいと思っている政府は、いつでも報道を統制し、国民を監視したいと願望するものです。今のアメリカは、本書でチョムスキーが述べているとおり、国内は崩壊状態ですから、戦争でも起こさないかぎり立て直しは不可能だと思っている可能性があります。財界・金融街・軍産複合体が次の大統領候補として民主党の好戦派ヒラリー女史を選んだは、それが理由でしょう。
 ましてロシア・中国を中心としたBRICS諸国がドル離れを急速に強めている現在、ロシアや中国を相手とする戦争への願望は、もっと強くなっているに違いありません。まさに彼らにとっては、「戦争は国家の健康法」なのです。しかも、このような流れにピッタリと寄り添っているのが安倍政権ですから、いつ何時、アメリカの先兵として戦争に引き込まれるか分からないのが日本の現状です。
*「戦争は国家の健康法である」その3
*「戦争は国家の健康法である」その2
*「戦争は国家の健康法である」その1

 日本の株価は喧噪を極めていても国民の心と財布は冷え切っていますから、景気が回復するはずはありません。だからこそ安倍政権にとっても、まさに「戦争は国家の健康法」ではないでしょうか。しかし今度は核戦争になる可能性がありますから、日本が生き残れる可能性は大きくありません。
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狐狸庵居士(田舎の国立大学を2010年に定年退職)

Author:狐狸庵居士(田舎の国立大学を2010年に定年退職)

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