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世界はいま「大転換」のとき2 ― 「神によって選ばれた国」「神によって選ばれた民」その3:アメリカの「国連人権理事会」離脱宣言

国際教育(2018/07/23) 国連人権理事会(UNHRC:United Nations Human Rights Council)
ノーマン・フィンケルシュタイン、『ホロコースト産業』、ウィリアム・ブルム、『アメリカの国家犯罪全書』、ホワイトヘルメット、イスラエル「国家自決」法

 次回は、アメリカの国連人権理事会(UNHRC)脱退を取りあげると予告してあったのに、前回のブログから早くも1ヶ月が経ってしまいました。
 『魔法の英会話 不思議なくらいに英語が話せる練習帖』および『英語教師のための作文技術① レポートおよび研究論文の書き方考え方』の出版準備のため思わぬ時間を取られ、またもや1ヶ月後になってしまいました。
 以下は、「『神によって選ばれた国』『神によって選ばれた民』その3」と題して、私がこれから述べたいと思っていることの目次です。

1 アメリカの、国連人権理事会からの離脱
2 「民族浄化作戦」-人権侵害国として突出するイスラエル
3 自らを暴露するイスラエルの、「国家自決」法と「白ヘル部隊」救出作戦
4 ブルム『アメリカの国家犯罪全書』
5 フィンケルスタイン『ホロコースト産業』
おわりに-「明けない夜はない」

アメリカ国連大使ヘイリー女史
国連大使ヘイリー ブルム『アメリカの国家犯罪全書』

1 アメリカの、国連人権理事会からの離脱
 それはともかく、アメリカ国連大使ヘイリー女史は去る2018年6月19日、国連人権理事会からアメリカは離脱すると表明しました。
 トランプ政権は、すでに2017年6月1日、地球温暖化防止の国際枠組み「パリ協定」からの離脱を決め、NATO同盟国のフランスからも強い批判を浴びました。
 またトランプ政権は、2017年10月、反イスラエルの姿勢が目立つとして、国連教育科学文化機関(ユネスコ)からの脱退も表明しました。
 アメリカが「反イスラエルの姿勢が目立つ」とした理由は、ユネスコが2011年10月31日に総会を開き、賛成107、反対14、棄権52で、最も新しい加盟国として、パレスチナ国の正式加盟を承認したことでした。
 この決議案採択にたいして、アメリカ、イスラエルなどは反対し(日本は棄権でした)、アメリカ国務省は、この採択への対抗措置として、ユネスコ分担金の停止を実行し、さらに2017年10月にはユネスコを再脱退すると表明したのでした。
 パレスチナ国は元々、国連に加盟したかったのですが、常任理事国として拒否権を持つアメリカが、イスラエルも意向をくんで反対し、いまだに国連加盟を果たしていません。しかし国連の下部団体であるユネスコが、パレスチナ国の加盟を認めたことが、アメリカとイスラエルの怒りを買ったのです。
 しかし2016年3月の時点で、国際連合加盟国(193ヶ国)中、136ヶ国がパレスチナを国家承認しています。常任理事国ではロシアと中国が承認している他、南米ではコロンビア以外、アフリカではカメルーンとエリトリア以外のすべての国が承認しています。
 またアジアでは、日本、韓国、中華民国、シンガポール、ミャンマー以外の全ての国がパレスチナ国を承認しています。つまりアメリカの息のかかったNATO諸国およびアジアにおけるアメリカの属国・同盟国以外はすべて、パレスチナという国を承認しているのです。
 そういう意味では、アメリカのユネスコ脱退は、ユネスコ(教育科学文化機関)が世界の知性を代表する国際機関と認められているだけに、「神によって選ばれた国」イスラエル、「神によって選ばれた民」アメリカの、孤立化を象徴する事件でもありました。
 この孤立化をさらに後押しをしたのが、2018年6月19日に表明された国連人権理事会からの離脱でした。地球温暖化防止の国際枠組み「パリ協定」からの離脱、アメリカ大使館の「エルサレムへの移転」と併せて、アメリカの世界的威信を、これほど低下させた事件はなかったでしょう。
 言い換えれば、これらの国際機関からの離脱・脱退は、アメリカやイスラエルの強さの現れではなく、むしろ弱さの現れだとみるべきでしょう。
 以下、この点について、項を改めて検証してみたいと思います。ユネスコについても人権理事会についても、「反イスラエルの姿勢が目立つ」ことが脱退理由としてあげられているからです。

フィンケルスタイン ホロコースト産業

2 「民族浄化作戦」-人権侵害国として突出するイスラエル

 さて、アメリカ国連大使ヘイリー女史が、6月19日に「国連人権理事会からアメリカは離脱すると表明」したとき、その理由として挙げたのが、「人権理事会の最近の決議数はイスラエルを非難するものが突出して多い」「人権理事会が人権ではなく政治的な偏見によって動いている明確な証拠だ」という点でした。
 しかしイスラエルのパレスチナにたいする蛮行、とりわけガザ地区に対する蛮行は目を覆わんばかりの残虐行為に満ちていて、それにたいする非難決議が何度も国連安保理事会で提出されましたが、いつもアメリカによる拒否権の発動で実効あるものになりませんでした。
 イスラエルの残虐ぶりは、最近の下記ブログ (2018/05/22)でも、毎日新聞(2018年5月15日)の記事を引用しつつ、私は次のように書きました。

 アメリカが大使館をテルアビブからエルサレムに移転させた2018年5月14日は、イスラエルの建国記念日だった一方、15日はパレスチナ人にとっての「ナクバ(大惨事)の日」でした。
 「ナクバ」とはアラビア語で「大惨事」を意味することばです。ユダヤ人が1948年5月14日、パレスチナにイスラエルを建国した際、70万人ものパレスチナ人が故郷を追われ難民となりました。
 トランプ大統領は、よりによって、このような日を大使館移転の日に選んだのですから、火に油を注ぐようなものです。
 予想どおりパレスチナ人の怒りは頂点に達し、6週間に及ぶ抗議行動の間、イスラエルによる銃撃で100人以上の抗議参加者が死亡し、数千人の負傷者が出ています。
 5月14日と15日の二日間だけでも「衝突の死者は62人に達した。催涙ガスの吸引により死亡した生後8カ月の女児も含まれる」そうです。
http://tacktaka.blog.fc2.com/blog-entry-318.html

 
 しかし、このような蛮行は、もうすでに何十年も続いているものです。チョムスキーはすでに『チョムスキーの教育論』(明石書店、2006)の補章第1節「『歴史捏造』の技術を検証する」で、わざわざ「2 沈黙の義務」という項をもうけ、そこでイスラエルの残虐行為を詳しく論じているのです。
 この補章そのものは、中米ニカラグアでアメリカがいかに政権転覆活動をおこなったか、その過程でアメリカが特殊部隊を使いながらどのようにしてニカラグアやエルサルバドルで、どんな残虐行為を展開したかを詳細に説明したものですから、本来イスラエルとは関係ないはずです。
 にもかかわらず、チョムスキーは、この節この項で、次のように更なる小項目をたてて、過剰とも思われるほどの頁数をついやして、イスラエルの蛮行を、怒りを込めて糾弾しているのです。

2 沈黙の義務
*米国ではタブーとされるイスラエル問題
*イスラエルでは何が起きていたのか
*無罪になった兵士達の蛮行
*米国で当然視されてきた民族浄化


 ユダヤ人であるチョムスキーの、ユダヤ人国家とされるイスラエルにたいする怒りが、いかに激しかったか、これだけでも分かっていただけるのではないでしょうか。この原書ペーパーバック版が出版されたのは2000年ですから、それから既に18年間も、イスラエルによる似たような蛮行が続いてきたことになります。
 しかしこの原書Chomsky on Miseducationに収録された、この補章第1節「『歴史捏造』の技術を検証する」は、実を言うと、元々はNecessary Illusions(1989)という書籍に入っていたものを、編集者のDonaldo Macedo氏が、チョムスキーの許可を得て、この原書に再録したものでした。
 この原書の出版年は1989年でしたから、チョムスキーの怒りは18年前どころか、29年前から続いてきていることになります。というのは、最近のチョムスキーはガザの惨状を「青天井の牢獄」"open-air prison" と名付けて、その怒りを表現しているからです。
 ガザの惨状は地区そのものが牢獄であり、そのような牢獄のなかで地区住民が毎日を生きていると、チョムスキーは言いたかったのです。詳しくは下記ブログ(2012/11/21)を御覧ください。
*血に染まった「青天井の牢獄」ガザ、「民族浄化」としてのパレスチナ
http://tacktaka.blog.fc2.com/blog-entry-105.html
 私がこのブログを書いたのは2012年ですが、それから2年も経たないうちに、次の大惨事が起きました。それをAFP通信(2014年7月24日)は、「パレスチナ側の死者、700人超に イスラエルがガザ攻撃続行」という見出しで次のように伝えています。

「パレスチナ側の死者、700人超に イスラエルがガザ攻撃続行」
 パレスチナ自治区ガザ地区(Gaza Strip)でイスラエル軍が続ける軍事作戦は24日、17日目に突入し、医療関係者によるとパレスチナ側の死者数は718人に上った。同地区で活動する人権団体は、死者の8割以上が一般市民だと指摘している。ガザ地区では同日だけでも、イスラエル軍の空爆で21人が死亡。犠牲者の中には、5歳の女児と3歳の男児を含む6人家族もいた。


 これを受けて、国連人権理事会は、2014年7月23日、パレスチナ自治政府とアラブ諸国などが共同で提出した「イスラエルのガザ侵攻を非難する決議」を、29ヶ国の賛成多数で可決し、理事会議長が派遣する調査委員会が国際人道法・国際人権法違反を調べることになりましたが、これにたいして、いつものとおり、理事国ではアメリカ合衆国だけが反対でした。そしてEU諸国と日本など、アメリカの属国である17ヶ国が棄権しました。イスラエルは「衡平を欠く」と猛反発し、調査に協力することを拒否しました。
 これが、アメリカの国連大使ヘイリー女史の「人権理事会は、人権ではなく政治的な偏見によって動いている明確な証拠だ」という実態なのです。
 ヘイリー女史は、その場でさらに、中国、ベネズエラ、コンゴ民主共和国を名指しして「最も基本的な権利を明らかに軽視している」と指摘し、こうした国が理事会の参加国になっていることも批判したそうですが、これもまさに天に唾する行為でした。
 というのは、アメリカ自らが、「最も基本的な権利を明らかに軽視している」国々、たとえばイスラム教原理主義国家サウジアラビアなどの王制独裁国家を支援し、選挙で選ばれた政権の転覆を謀ってきたことは、今では誰の眼にも明らかになってきていることだからです。
 その典型例が、イラクのサダム・フセインやリビアのカダフィ大佐にたいする政権転覆と彼らの死刑または惨殺でした。初めは、「独裁者が民衆を弾圧している」「大量破壊兵器をもっている」という口実で、この政権転覆を国連が支持したかのように思われましたが、これらが全て嘘であったことは今では誰でも知っている事実となりました。
 アメリカやNATO諸国は、イラクやリビアの成功に味をしめて、今度はシリアのアサド政権転覆に乗りだしたのですが、イラクやリビアの件で騙されたことに気づいたロシアと中国は、今度は国連決議によるシリア侵略にGOサインを出しませんでした。
 「アサド政権が化学兵器を使っている」という嘘も繰り返し出されましたが、そのたびにロシアや現地を自分の眼で確かめたジャーナリストによって、その嘘が暴露されています。アメリカが「オオカミ少年」であることがこれほど明らかになったことは、いまだかつてなかったことです。
 たとえば、ノーベル平和賞の候補になり映画化までされた「ホワイトヘルメットと言われる集団」も、アメリカやNATO諸国によってつくりあげられ、支援されたプロパンガンダ部隊であったことも、調査報道記者として有名なセイモア・ハーシュによって暴き出されています。
*'Propaganda organization': White Helmets 'engage in anti-Assad activities' – author Sy Hersh to RT
セイモア・ハーシュは語る「プロパンガンダ組織:ホワイトヘルメットがアサド政権転覆に従事」

https://www.rt.com/news/431379-white-helmets-propaganda-syria/


3 自らを暴露するイスラエルの、「国家自決」法と「白ヘル部隊」救出作戦
 こうして、イスラム原理主義勢力を裏で支えながらシリア侵略をすすめてきたのが、アメリカとNATO諸国、イスラエルとサウジアラビア(そして途中まではトルコも)であったことも、時間が経つにつれた、ますます明らかになってきました。
 とりわけ自らの立場を、自らの行為で暴露してしまったのがイスラエルの「ホワイトヘルメット救出作戦」でした。シリア侵略勢力は、ロシア軍とアサド軍の目覚ましい働きによってますます追い詰められ、今やどうやってシリアから脱出したらよいかを深刻に考えなければならない状況でした。そこへ登場したのがイスラエルだったというわけです。

*Israel evacuates White Helmets from Syria to Jordan
「イスラエルが『白ヘル部隊』をシリアからヨルダンへ避難させる」

https://www.rt.com/news/433924-white-helmets-evacuation-israel/
*White Helmets rescue op clearly showed who pay-rolled them – Russian Foreign Ministry
「『白ヘル部隊』の救出作戦は、誰が彼らを雇っていたのかを明確に示すことになった」

https://www.rt.com/news/434052-white-helmets-rescue-hypocrisy/ 

 このように世界平和にとって誰が脅威かをイスラエルは自らの行動によって示したわけですが、このイスラエルを強力に擁護しているのがアメリカです。それを劇的なかたちで世界に見せつけたのが、「反イスラエルの姿勢が目立つ」という理由による、国連人権委員会からの脱退宣言でした。、
 ヘイリー氏は、その場でさらに、中国、ベネズエラ、コンゴ民主共和国を名指しして「最も基本的な権利を明らかに軽視している」と指摘し、こうした国が理事会の参加国になっていることも批判したそうですが、彼女が強力に擁護するイスラエルが、つい最近(2018年6月18日)、ユダヤ人だけの『国家自決』法を、議会で可決しました。

*Israel passes Jewish-only 'national self-determination' law despite outcry
「イスラエルが、ユダヤ人だけの『国家自決』法を、議会で可決」

https://www.rt.com/news/433655-israel-nation-state-law-passsed/

 イスラエルには、約180万人のアラブ系イスラエル人がいて、今までは公用語として認められてきたアラビア語を話してきました。しかし今後は、正式な公用語はユダヤ人が話すヘブライ語だけとなります。
 イスラエルには約180万人のアラブ人がいて、イスラエルの人口の約4分の1を占めていますが、彼らを「2級市民」として扱うことを、法律で正式に宣言したことになります。
 これでは、かつて人種差別国家として有名であった南アメリカ共和国の「アパルトヘイト」とどこが違うのでしょうか。ヘイリー女史は、このようなイスラエルを、どのように擁護するのでしょうか。
 これでは、「神によって選ばれた国」イスラエルと「神によって選ばれた民」アメリカの、世界からの孤立は、ますます深刻になることはあっても緩和することはないでしょうか。(しかし残念なことに、このようなアメリカとイスラエルの行動に、ほとんどいつも歩調を合わせてきたのが我が国の政府です。)


4 ブルム『アメリカの国家犯罪全書』
 ちなみに、「最も基本的な権利を明らかに軽視している」とヘイリー女史によって名指しで非難された中国、ベネズエラ、コンゴ民主共和国についても、ここで言及しておきたいと思います。
 まず中国ですが、アメリカと違って現在の中国は、他国に軍隊を出して侵略したり特殊部隊を密かに派遣して住民を虐殺してきたという過去を持っていません。それに比して、アメリカ人自身による著作『アメリカの国家犯罪全書』(ウィリアム・ブルム、作品社、2003)を見れば分かるように、その過去は実におぞましいものです。
 ベネズエラについてもアメリカはチャベス大統領を「独裁者」だとして口汚く非難してきましたが、チャベスが大統領になってからはベネズエラの貧困層は激減し、教育水準も驚くほどの高まりを見せました。
 ところが、2002年4月11日にはCIAの支援を受けて軍部によるクーデターが発生し、チャベスは軍に監禁され、代わりに元ベネズエラ商工会議所連合会(Fedecámaras)議長のペドロ・カルモナが暫定大統領に就任した。
 最初クーデターは成功したかに思われましたが、暫定政権が強権的な支配を強めたため、大統領の支持基盤である貧困層のデモが激化。情勢を見た軍や国家警備隊が寝返り、カルモナは逃亡。クーデターはわずか2日間で失敗に終わりました。
 これを見れば分かるように、チャベスの政策はベネズエラの富裕層・特権階級にとっては非常に不愉快なものでした。これはベネズエラの石油資源などに以前から目をつけているアメリカにとっても許せない政策でした。
 だからこそCIAはベネズエラにおけるアメリカ大使館を拠点に、何度も不安定化工作を実施しましたが、それが成功しなかったので、ベネズエラの軍部を利用したクーデターを企てたのです。ウィキペディアですら、このクーデターについて次のように記述しています。

このクーデター時、RCTVを含む民間テレビ4局は、チャベス派の狙撃兵による反チャベス派への銃撃事件を捏造し、繰り返し報道した。RCTVのグラニエル最高責任者はクーデター派のこの陰謀に直接、加担していたことが判明している。この報道機関として著しく中立性を欠いた行為が、のちのRCTV放送免許の更新問題を引き起こす原因となった。

 
 まるで最近のアメリカによるウクライナ政変劇を思わせるような狙撃事件です。
 ベネズエラでは、チャベス大統領が癌で死去したあと(毒物による暗殺だとの説もある)を引き継いだニコラス・マドゥロ大統領も、相変わらず「独裁者」だと罵られ、今でもアメリカによる不安定化工作が続けられています。
 最後は、ヘイリー女史が名指ししたコンゴについてです。これについては、ずいぶん長くなってきたので、櫻井ジャーナル(2017.10.15)の次のような説明を引用するにとどめておきます。

資源の宝庫、コンゴは1960年2月に独立し、6月の選挙でパトリス・ルムンバが初代首相に選ばれる。それを受け、コンゴ駐在アメリカ大使のクレアー・ティムバーレークはクーデターでルムンバを排除するように進言するが、同大使の下には後に国防長官となるフランク・カールッチがいた。ドワイト・アイゼンハワー大統領は同年8月にルムンバ排除の許可を出している。(David Talbot, “The Devil’s Chessboard,” HarperCollins, 2015)
 アメリカ支配層に選ばれたモブツ・セセ・セコが9月にクーデターを成功させ、12月にルムンバは拘束された。1961年1月17日、ジョン・F・ケネディが大統領に就任する3日前に、ルムンバは刑務所から引き出されてベルギーのチャーター機に乗せられ、ルムンバの敵が支配する地域へ運ばれた。そして、そこで死刑を言い渡され、アメリカやベルギーの情報機関とつながっている集団によって殴り殺された。
 1961年1月26日にアレン・ダレスCIA長官はコンゴ情勢についてケネディ新大統領に説明しているが、ルムンバ殺害について触れていない。(前掲書)


 つまり、ケネディ大統領は、民主的に選ばれたルムンバがCIAの暗躍によって殺されたことを知らなかったわけですが、アメリカが犯した国家犯罪であったことは間違いありません。
 そして今度はケネディ自身が、1963年11月22日に暗殺され、その2年後にキューバ革命の英雄ゲバラは独裁者モブツが支配するコンゴへ入って活動を始めます。しかし、そのゲバラも、CIAの手引きで、1967年10月9日にボリビアで殺されました。

 このように、調べれば調べるほど、アメリカやイスラエルの言う「人権」「民主主義」がいかに偽善に満ちたものであるかが見えてきます。
 その意味で、何度も言いますが、アメリカによる国連人権理事会の脱退は、アメリカとイスラエルの世界的孤立を示す記念碑的事件になるかも知れません。


ノーマン・フィンケルスタイン
フィンケルスタイン2 ホロコースト産業

5 フィンケルスタイン『ホロコースト産業-民族の苦しみを売り物にするユダヤ人エリート』
 それにしても、なぜアメリカは、これほどにまでイスラエルに肩入れしなければならないのでしょうか。
 先述のとおり、チョムスキーは『チョムスキーの教育論』の補章で「米国ではタブーとされるイスラエル問題」と述べていましたが、言論の自由を最も声高に叫び、「人権」や「民主主義」を口実に他国に干渉し、クーデターまで企ててきたアメリカが、なぜイスラエルの政策を非難できないのでしょうか。
 その理由のひとつとして考えられるのは、「イスラエル批判=ユダヤ人差別」と受けとられるのではないかという恐れでしょう。
 もちろんアメリカには通称「エイパック」と呼ばれるロビー団体(AIPAC:The American Israel Public Affairs Committee「アメリカ・イスラエル公共問題委員会」)があり、全米ライフル協会をも上回ると言われる強力な組織です。
 この団体は全米50州に10万人の会員を数えており、また英経済誌『エコノミスト』によれば、その年間予算は5000万ドルに上るそうです。そこからの莫大な政治献金を考えれば、この団体の影響力も無視できないことは間違いないでしょう。彼らの意向に逆らうと絶対に議員や大統領になれないと言われているほどですから。
 しかし私がここでも問題にしたいのは、そのような政界の話ではなく、「言論の自由」を誇っているはずの学会・言論界の世界でさえ、その例外ではないという事実です。
 確かに、ユダヤ人以外のひとがイスラエルの政策や行動を批判すれば、「それはユダヤ人に対する差別・偏見だ」と言われかねないので、なかなかイスラエル批判に踏み切れないのも分からないでもありません。
 しかし、いまアメリカで深刻なのは、ユダヤ人でさえイスラエル批判ができないという現実です。チョムスキーはユダヤ人ですが、彼のように堂々とイスラエル批判ができるのは、彼が全く例外的存在だからです。
 とはいえ、そのように著名な例外的人物でさえ、大手メディアで発言したり執筆したりすることは、ほとんど許されていません。彼が『Play Boy』という通俗雑誌で発言しているのを見ると異様な感じがしますが、そのような場しかアメリカの一般市民に語りかける場が、彼に許されていないからです。
 ですから、博士課程にいる学生がイスラエル問題を取りあげて論文を書くことは不可能に近いと言えます。その不可能に挑戦したのがノーマン・フィンケルスタインでした。
 彼の父親はアウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所収監の、母親はマイダネク強制収容所収監のユダヤ人生存者でした。
 このようにアフシュビッツの生き残り、ホロコーストを身をもって体験した人物を両親にもつフィンケルスタインでさえ、イスラエル批判をやりとげることは容易なことではありませんでした。
 彼が、プリンストン大学の博士課程で、パレスチナ人はもともと存在しなかったとするジョーン・ピーターズの著書『From Time Immemorial(邦題:ユダヤ人は有史以来)』を取りあげて、それを批判する博士論文を書こうとしたとき、助言を求められたチョムスキーが再考するよう求めたという話は、あまりにも有名です。
 チョムスキーが再考を求めた理由は、「そのような課題に挑戦すると研究者としての人生を送れなくなる恐れがある」「そもそもその論文を審査員として引きうける教授がいるかどうか」というものでした。
 しかしフィンケルスタインは、その助言を重く受け止めつつも、敢然と自分の目標に挑戦したのでした。そしてチョムスキーの援助も得ながら、名門プリンストン大学から博士号を取得し、なんとかシカゴのデポール大学に職を得ることが出来ました。
 この研究のなかで誕生したのが、世界的話題となった『ホロコースト産業――同胞の苦しみを「売り物」にするユダヤ人エリートたち』(三交社、2004)、『ホロコースト産業――同胞の苦しみを「売り物」にするユダヤ人エリートたち』(三交社、2004)という2冊の本でした。
 彼は前著『ホロコースト産業』では、AIPACなどを中心するアメリカのユダヤ人エリートが、自らの政治的・経済的利益にそぐわないものに対して反ユダヤ主義のレッテルを貼りつけることで、ホロコースト被害者としての立場を濫用し暴利をむさぼっていると強く批判しました。
 また後著『イスラエル擁護論批判』では、ハーバード大学ロー・スクール教授として著名であったアラン・ダーショウィッツの『ケース・フォー・イスラエル―中東紛争の誤解と真実』に対して、虚偽に満ちているとして徹底した批判を展開しています。
 しかし、このイスラエルの擁護書を批判したことで、彼自身もユダヤ人であるダーショウィッツから、フィンケルスタインは「ユダヤ人の裏切り者」と目されるようになり、その後の人生は、まさにチョムスキーの予言したとおりのものになりました。
 というのは、この本が出版された後に、准教授を務めていたデポール大学で間近に迫っていた終身在職権の取得が、大学上層部によって急遽否決されるという事件がおきたからです。こうして彼はデポール大学で教授になる道を閉ざされただけでなく、大学そのものから去るよう追い込まれたからです。
 この間、ダーショウィッツは、『イスラエル擁護論批判』の出版差し止めをカリフォルニア州知事(当時)のアーノルド・シュワルツェネッガーに依頼したり、出版元のカリフォルニア大学出版局に高額訴訟をほのめかす等の行動をとっていました。
 ですから、デポール大学で間近に迫っていた終身在職権を、大学上層部によって急に否決されることになったのも、ダーショウィッツによる裏工作の結果ではなかったのかと、強く疑われている所以です。


おわりに-「明けない夜はない」
 いずれにしても、このフィンケルスタインをめぐる事件は、アメリカの誇る「知的自由」なるものがどの程度のものか、それを示す好事例ではなかったでしょうか。
 と同時にそれは、巨視的に見れば、「神に選ばれた民」と「神に選ばれた国」の共謀事件だったとも言えそうです。
 だとすれば、ユダヤ人であるチョムスキー、そしてユダヤ人であるフィンケルスタインの、正義を求める苦難に満ちた闘いは、まだまだ続きそうですが、「明けない夜はない」の諺どおり、それが永遠に続くとは思えません。
 というのは、トランプ氏の言動が、アメリの真の姿を、ますます世界中のひとたちに露呈させることになっているからです。「神に選ばれた民」と「神に選ばれた国」の孤立化は進む一方ですから、むしろ「夜明けは近い」とさえ思えてきます。トランプ大統領に感謝です。


<註> コンゴとパトリス・ルムンバの暗殺については、櫻井ジャーナルおよび藤永茂市の下記ブロウが参考になります。
*アメリカ、イギリス、ベルギーは利益のためならクーデターを起こし、国連事務総長も殺した過去
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201404060000/(櫻井ジャーナル2014.04.06 )
*50年前10月9日にボリビアでゲバラを殺したCIAはゲバラが66年までいたコンゴでもクーデター
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201710150000/(櫻井ジャーナル2017.10.15)

*藤永茂「パトリス・ルムンバの暗殺」(1~7、2011-11-16~  )
https://blog.goo.ne.jp/goo1818sigeru/e/eb3c1e1a71c5ad23166e2751c2aa852c(1)
https://blog.goo.ne.jp/goo1818sigeru/e/32c51dca3b87cdf23920e6dbaf23f8fb(2)
https://blog.goo.ne.jp/goo1818sigeru/e/3331cb3f12846cccdccaa2d78cf37ffc(3)
https://blog.goo.ne.jp/goo1818sigeru/e/c955f3e3b99590520a566f65e6ac482b(4)
https://blog.goo.ne.jp/goo1818sigeru/e/4cc8de01674d87a002bf0f614616094a(5)
https://blog.goo.ne.jp/goo1818sigeru/e/9653330068a638e1b82bd048ee75c88a(6)
https://blog.goo.ne.jp/goo1818sigeru/e/12790a127ffcc1a7cc5e800b2a4e5033(7)

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狐狸庵居士(田舎の国立大学を2010年に定年退職)

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