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英語で日本が亡びるとき――英語民間試験は何をもたらすか(2)

英語教育(2020/01/29) 教育の民営化、「ザルみず効果」、萩生田氏に功労賞を、日本語力の劣化、学習到達度調査(PISA)、15歳の読解力15位に、四技能は螺旋状に発展する

PISA2019 「上位になった国・地域」
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO52905290T01C19A2CC1000/?n_cid=NMAIL007_20191203_Y

 
私は前回のブログの末尾で、次のように述べました。

 ただし今回ひとつだけ言っておきたいのは、安倍内閣・文科省が今のような英語教育政策を続けているかぎり、日本人の英語力は向上しないだけでなく、日本の子どもや若者の国語力も限りなく劣化していくということです。文科省の指導要領は私の言う「ザルみず効果」しか産まない英語教育政策だからです。
 これは、拙著『英語教育原論:英語教師三つの仕事三つの危険』2007→『英語教育が亡びるとき:「英語で授業」のイデオロギー』2009→『英語で大学が亡びるとき:「英語力=グローバル人材」というイデオロギー』2015、という三部作のなかで繰り返し述べてきたことです。
 ところが、この私の主張を裏付けるかのように、昨年12月3日、経済協力開発機構(OECD)は、世界79か国・地域の15歳約60万人の生徒を対象に、2018年におこなった学習到達度調査(PISA)の結果を公表しました。そこでは、日本は「読解力」が15位となり、前回15年調査の8位からさらに後退しているのです。
 私に言わせれば、この結果はなるべくしてなったというべきでしょう。


 前回のブログでは、日本は「読解力」が15位となり、前回15年調査の8位からさらに後退していることをグラフで紹介しました。このグラフを載せた日経新聞(2019/12/3)には、もうひとつの図表も載っていました。それが冒頭で紹介した「上位になった国・地域」という図表です。
 これを見ると、中国、シンガポール、マカオが上位3位を占め、香港、韓国が含めれば上位10位をアジア勢が占めていることが分かります。マカオや香港は本来は中国の領土ですから、中国、韓国がトップ層に進出し始めていることが分かります。
 つまり、日本がアメリカの言いなりになって、中国や韓国に経済制裁をおこなったり、大手メディアを使って反中国・反韓国の感情を煽り立てているうちに、いつのまにか経済的にも学力的にも、これらの国に追い越されつつあるわけです。
 私は前掲書で繰り返し、「日本のノーベル賞受賞者で英語に血道を上げてきた人はひとりもいない」「こんなバカな英語教育政策を続けていると将来、日本からはノーベル賞受賞者は出てこないだろう」と述べましたが、不幸なことに、その予感が当たってしまいました。
 つい思わず愚痴になってしまいましたが、以下では、私へのインタビューが載った週刊『I・B TOKYO』を送ったところ帰ってきた反響の一部を紹介し、今回の末尾とさせていただきます。「グーグル翻訳を使えば、フランス人との会話もできた」というエピソードは、何のために英語教育をするのかを改めて考えさせてくれるのではないでしょうか。

寺島先生
 ご多忙の中、先生のインタビュー記事をわざわざご送付頂き、本当にありがとうございました。
 先生の民間英語試験に対する鋭いご指摘、核心をついたご意見に読んでいて私も胸がすく思いでした。(「ザルみず効果」はまさに的を得た表現で、いつも激しく頷いております)
 と同時に、バタバタしていてなかなかメーリングリストもチェックできていない私のことを先生が覚えていて下さり、わざわざこの情報誌を送って下さったことが何よりも嬉しく、感激しております。
 私の方は、年末のCT検査でも今回も「ガン再発、所見無し」との結果を県病院から頂き、ほっと安堵しながら、また教壇に立っております。しかしながら、大切な友人である**中学校の**先生を12月に大腸ガンで亡くし、悲しい思いも致しました。
 私たちは、健康に平凡な日々が過ごせる幸せ、当たり前に生きられる幸せを噛み締めなければなりませんね。
 寺島先生・美紀子先生もどうかくれぐれもお体ご自愛頂いて、これからももっともっと日本の英語教育のために、大切な警鐘をご発信頂きたいです。
 先生のようなはっきりとした事実、貴重なご意見を言って下さる方こそ、混迷を極める英語教育の世界に今まさに必要です。
 記事を拝読しながら、しみじみ先生の存在の大きさを感じ入っておりました。本当にありがとうございました。


寺島先生
 お礼の連絡が遅くなりました。先日まで**の準備・入試・採点でした。今度は高校の入試準備が始まります。
 萩生田大臣に功労賞はまさにその通りですね。あんなに穴だらけの制度のまま本当に押し切るのかと冷や冷やしていました。
 河合塾の本校担当者には春先から「こんなの無理だから絶対なくなるよね」と言っていたのですが、担当者曰く「こんなにお金動いているのに今更絶対なくならない」。そう言われて、ケンブリッジ英検を受けさせるように勧められていたので、校内で英検にするか、ケンブリッジにするか、GTECにするか何度も英語科で検討会を開いてきました。
 結局、今年は全員「英検」を受験させるということで、本校では予約金3000円で申し込みも完了していたのですが、受験日が部活大会などとの絡みでどうなることやらずっと悩んでいたところでした。
 IBの記事の中の先生の「4技能は均等に発展しないらせん状に上達していく」というのは、まさにその通り!だと思いました。「しかも今後は、日常会話レベルの「話す」はポケトークなどの翻訳機で間に合う時代がくる」というのまさに同感です。
 年末年始、息子のホストファミリーがフランスから来日してていたのですが、グーグル翻訳はかなり役立ちました。英語でしゃべれば、ほとんど通じるフランス語になったようです。
 息子がお世話になったお礼を英語でスピーチすると、それをグーグルが仏語で音声化し絵くれて、向こうのお母さんとお父さんが泣いてくれてました。数年後、日本語でも、もっとすごい安い翻訳機ができたら「先生、なんで英語学ぶしかないの」の質問にどう答えようかと考えさせられます。
 取り急ぎ、お礼とご報告まで。今年もよろしくお願いします。

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英語で日本が亡びるとき――英語民間試験は何をもたらすか(1)

英語教育(2020/01/29) 教育の民営化、「ザルみず効果」、萩生田氏に功労賞を、日本語力の劣化、学習到達度調査(PISA)、15歳の読解力15位に、四技能は螺旋状に発展する

PISA2019 「日本人の読解力15位」
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO52905290T01C19A2CC1000/?n_cid=NMAIL007_20191203_Y


 新年の御挨拶を前回のブログに載せてから、あっという間に3週間が経ってしまいました。前回のブログで私は次のように書きました。

 この英語民間試験については上記の年賀状でも述べましたが、中日新聞や週刊『I・B TOKYO』からインタビューを受けました。この中日新聞インタビューについては、下記のブログでも紹介しました。 
http://tacktaka.blog.fc2.com/blog-entry-349.html (2019/08/15)
 しかし、週刊『I・B TOKYO』から受けたインタビューについては紹介する機会がないまま新年を迎えてしまいました。
 というのは、このインタビューが週刊『I・B TOKYO』に載る前に、下記のWEBにそのインタビューが3回にわたって紹介されてしまったからです。
 そのうちに週刊『I・B TOKYO』でも載るだろうから、そのときに併せて紹介すればよいと考えているうちに、新年になってしまったというわけです。


 ところが1月の中旬になってから週刊『I・B TOKYO』の新年第1号に(正確には1月14日号、1月7日号は正月休刊)、何と驚いたことに、私へのインタビューが載っているではありませんか。
 しかも、その巻頭には週刊『I・B TOKYO』の発行者であるマックスデーター社の社長論文が載っていて、かつ私へのインタビューには冒頭に「令和のキーパーソン」という文字が躍っていましたから、こちらのほうが度肝を抜かれてしまいました。
 それはともかく、せっかく私へのインタビューが届いたのですから、さっそく本ブログで紹介したいと思いました。ですが、私の主宰する研究所の活動の一環として2017年から始めたサイト『寺島メソッド翻訳NEWS』http://tmmethod.blog.fc2.com/の責任者が、昨年末に癌の手術を受け、その後の対応に追われて今に至ってしまいました。
 このサイトは『マスコミに載らない海外記事』に刺激を受け、その応援をできないかと思って始めたものです。というのは大手メディアを視聴している限り世界の真実は見えてこないと思ったからです。その意味で『櫻井ジャーナル』や『マスコミに載らない海外記事』などは非常に貴重な存在なのですが、いかんせん多勢に無勢で、ともすれば大手メディアにかき消されてしまいます。
 そこで独立メディアが少しでも多く誕生すれば、少しは『マスコミに載らない海外記事』などにたいする側面援助になるのではないかと、研究所の活動の一環として始めたのが先述の『寺島メソッド翻訳NEWS』でした。このサイトの冒頭には責任者によって、その趣旨が次のように書かれていました。

元岐阜大学教授寺島隆吉先生による記号づけ英語教育法に則って開発された翻訳技術。大手メディアに載らない海外記事を翻訳し、紹介します。


 しかし残念なことに、その責任者が胃癌と診断され、胃腸のかなりの部分を切除されてしまい、このサイトの運営をどうしようかという大問題にぶつかってしまったのです。研究所の「翻訳グループ」が、下訳→相互の校正→最終の改訂訳→サイトに掲載、という手順でやってきたのですが、その大黒柱が倒れてしまったのでした。
 そういうわけで今後の対応に追われているうちに現在に立ってしまったというわけです。しかし何とか上記のサイクルを維持できる見通しが出てきたので、私もやっと、このブログに復帰できることになりました。
 そこで手始めとして、まず週刊『I・B TOKYO』の私へのインタビューを一挙に載せ、それへの反響や私の解説は次回に回したいと思います。
 ただし今回ひとつだけ言っておきたいのは、安倍内閣・文科省が今のような英語教育政策を続けているかぎり、日本人の英語力は向上しないだけでなく、日本の子どもや若者の国語力も限りなく劣化していくということです。文科省の指導要領は私の言う「ザルみず効果」しか産まない英語教育政策だからです。
 これは、拙著『英語教育原論:英語教師三つの仕事三つの危険』2007→『英語教育が亡びるとき:「英語で授業」のイデオロギー』2009→『英語で大学が亡びるとき:「英語力=グローバル人材」というイデオロギー』2015、という三部作のなかで繰り返し述べてきたことです。
 ところが、この私の主張を裏付けるかのように、昨年12月3日、経済協力開発機構(OECD)は、世界79か国・地域の15歳約60万人の生徒を対象に、2018年におこなった学習到達度調査(PISA)の結果を公表しました。そこでは、日本は「読解力」が15位となり、前回15年調査の8位から後退しているのです。
 私に言わせれば、この結果はなるべくしてなったというべきでしょう。


IB TOKYO 20200113 1

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IB TOKYO 20200113 4
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新年(2020)の御挨拶――週刊『I・B TOKYO』から受けたインタビューについて

英語教育(2020/01/07) 教育の民営化、英語民間試験、元文科大臣=前学習塾経営者・下村博文、大山(たいざん)鳴動して鼠(ねずみ)一匹、放射能で「おもてなし」、山本太郎と「れいわ新撰組」

年賀状2020 taka改訂jpg


 遅ればせながら新年のご挨拶を申し上げます。学校も冬休みが終わり、教員にとってはいよいよ忙しい新学期が始まります。
 昨年は大学入試改革で大揺れしましたが、「大山鳴動して鼠(ねずみ)一匹」で終わりました。
 しかし教師や生徒にとってはホッと安心できた年末ではなかったでしょうか。もともと本気で教育のことを考えた入試改革ではなく、初めから教育産業のことを念頭においた改革でしたから当然の結末ではあったのですが。
 この英語民間試験の強力な旗振り役をした下村博文・元文科大臣が議員になる前の前職は、学習塾経営者でしたから、さもありなんと納得させられます。
 
 この英語民間試験については上記の年賀状でも述べましたが、中日新聞や週刊『I・B TOKYO』からインタビューを受けました。この中日新聞インタビューについては、下記のブログでも紹介しました。 
http://tacktaka.blog.fc2.com/blog-entry-349.html (2019/08/15)
 しかし、週刊『I・B TOKYO』から受けたインタビューについては紹介する機会がないまま新年を迎えてしまいました。
 というのは、このインタビューが週刊『I・B TOKYO』に載る前に、下記のWEBにそのインタビューが3回にわたって紹介されてしまったからです。
 そのうちに週刊『I・B TOKYO』でも載るだろうから、そのときに併せて紹介すればよいと考えているうちに、新年になってしまったというわけです。

*間違いだらけの大学英語入試~経済政策にひた走る文科省!
https://www.data-max.co.jp/article/33025(2019年12月09日)
https://www.data-max.co.jp/article/33026(2019年12月10日)
https://www.data-max.co.jp/article/33027(2019年12月11日)


 このインタビューを受ける前に、私が主宰する研究所の準研究員O君から多大な資料提供を受け、それを元にしてインタビューのための準備原稿を書いていたら、かなり膨大な量になってしまいました。
 そこでインタビューが終わったあと、家人が「これだけ書きためたのだから勿体ない」と言って長周新聞への投稿を勧めるものですから、さっそく原稿を送ったところ、驚いたことに、この膨大な原稿を丸々すべて、3回にわたって掲載してくれました。
 これについては、前回および前々回のブログで紹介しましたが、準研究員O君が集めてくれた大量の資料のおかげで、何とか週刊『I・B TOKYO』によるインタビューを乗り越えることができたにもかかわらず、それを紹介する機会が昨年中にはありませんでした。
 そういうわけで、O君には本当に申し訳なく思ってきました。さてどうしようかと悩んだ結果、新年の挨拶を兼ねて、週刊『I・B TOKYO』のWEB版に載ったものを紹介することによって、O君に対する感謝の念を表したいと思うようになりました。読者諸氏の御理解をいただければ幸いです。

週刊『I・B TOKYO』インタビュー

<追記>
 ちなみに週刊『I・B TOKYO』に載ったインタビューは、上記の写真を載せた上で、次のような出だしで始まっています。


 大学入学共通テストに導入予定だった英語の民間試験は10月の萩生田光一文部科学大臣の「身の丈」発言(BS討論番組)であっけなく延期となった。
 しかし、火の粉は高校・大学関係者はもちろん、受験生を抱える両親にまで飛び火して、燃え上がる一方である。それは、英語の民間試験導入が、受験生50万人という巨大市場を教育産業に提供する「経済政策」であり、教育政策ではないことが暴露されたからに他ならない。
 小学校から始まる一連の英語教育改革、そして大学英語入試への民間試験導入に関して終始一貫警鐘を鳴らし続ける寺島隆吉・国際教育総合文化研究所所長・元岐阜大学教育学部教授に聞いた。同席は夫人の寺島美紀子・朝日大学名誉教授である。

<逆説的ですが、萩生田光一氏に、最高の功労賞を差し上げたい>

 ――本日は大学英語入試への民間試験導入に関して、いろいろとお聞きしたいと思います。まず、10月の萩生田文科大臣発言に関する先生のご感想をお聞かせください。

寺島隆吉氏(以下、寺島)
 私は大学英語入試への民間試験の導入に関して、さまざまな新聞・雑誌のインタビューや自分のブログ「百々峰だより」を通じて繰り返し、その中止・廃止を訴えてきました。しかし、大手メディアはこの問題を一向に取りあげようとしませんでした。
 ところが・・・(以下、省略)


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狐狸庵居士(田舎の国立大学を2010年に定年退職)

Author:狐狸庵居士(田舎の国立大学を2010年に定年退職)

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