米兵によるレイプ事件(1)――傀儡政権だったはずのイラクから、なぜオバマ大統領は米軍撤退に追い込まれたのか [沖縄から日本とアメリカを見る]

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NO RAPE, NO BASE
(見事に韻を踏んでいる素晴らしい抗議ポスター)

http://rt.com/news/japan-us-rape-okinawa-763/ (出典:RT)

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前回のブログを書いてから早くも2週間がたってしまいました。次のブログで書きたいことは山積しているのですが、体が動きません。

翻訳『肉声でつづる民衆のアメリカ史』で4年間も酷使した体の疲れが、まだまだ回復していないようです。今も半日はベッドで寝る生活が続いています。

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それはともかく、いよいよ英語教育やアメリカ理解に焦点を移すことができるかと思っていたら、10月16日(火)沖縄のアメリカ兵による強姦(レイプ)事件が起きました。

私は以前からこのブログで、原発を推進する勢力には大きく分けて次の三つがあるという仮説を提示してきました。

第1勢力:平和憲法を改悪し(仮想敵国として中国・北朝鮮の脅威を煽り立てながら)日本を核大国=軍事大国にしたいと思っている政治家その他

第2勢力:原発を輸出することによって巨大な利益を得ようとしている巨大企業(これは同時に日本を兵器輸出ができる国にしたいと思っている勢力です)

第3勢力:「原子力ルネサンス」というスローガンを掲げながら、ブッシュ氏ですらやらなかった原子力産業に乗り出したアメリカ=オバマ政権


日本がアメリカの属国であるがゆえに自分の意志だけでは「脱原発」の決断をくだすことができない――これが私の「第3勢力」についての仮説なのですが、米兵によるレイプ事件は、改めてこの仮説を裏付ける事件だったように思います。

そこで以下では、このレイプ事件をめぐって私が調べたことをお知らせして、皆さんの参考に供したいと思います。
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<註> 国外のニュースで一番に気がかりなのは中東の戦火がシリアだけでなくレバノンにまで広がり始めたことです。アメリカやイスラエルの言いなりにならない国を殲滅し瓦礫の地にする作戦としては非常に効果的かも知れませんが、これに巻き込まれる民衆の苦難を考えると、なんともやりきれない思いです。

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http://rt.com/news/japan-us-rape-okinawa-763/(出典:RT)

ところで沖縄のレイプ事件について、DemocracyNow! および RussiaToday は次のように報じていました。

U.S. Imposes Troop Curfew in Japan Following Alleged Rape
http://www.democracynow.org/2012/10/19/headlines#101910
Okinawa slams US rape case, calls for treaty review
http://rt.com/news/japan-us-rape-okinawa-763/ (19 October, 2012)

日本のことが外国のメディアであまり取りあげられることがないのですから、この事件が世界的視点から見ても、いかに重大な事件だったかが分かります。

詳しい内容は省略しますが、見出しを見ていただいただけでも内容の違いは歴然としています。

というのは、Democracy Now! の記事は米軍兵士に「夜間禁止令」Curfew が出されたことが中心で、あとはアンジェレラ司令官の談話を載せた短いものでした。

しかし、RussiaTodayの記事は、レイプ事件を糾弾し「日米地位協定」SOFAの見直しを求める沖縄県知事の談話と沖縄県民の巨大な抗議運動を、4枚の大きな写真つきで載せていたからです。

戦争を糾弾し平和を求める独立メディアとして、大手メディアに抗して独自の報道を続けてきたDemocracyNow! を、私は高く評価してきただけに、上記の報道内容には大いに落胆させられました。

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沖縄県知事・仲井眞弘多(なかいま ひろかず)氏は、自民党・公明党・みんなの党の支持・推薦を受けて知事に当選しているのですが、その仲井眞氏ですら、米兵の暴行にたいして強く抗議し、「日米地位協定」SOFAの見直しを要求しているのですから、沖縄の雰囲気がよく分かるのではないでしょうか。

沖縄で『琉球新報』とともに「沖縄2大紙」と呼ばれる『沖縄タイムス』は、「[夜間外出禁止令]政府の姿勢は弱すぎる」と題する社説(10月21日)をかかげ、次のように論じています。

・・・。県民に大きな衝撃を与えた、1995年の暴行事件の後、米軍は再発防止を約束し、日本の文化や習慣について集中討議するなど規律教育を徹底したはずだった。
 2008年に中学生が暴行された事件では、沖縄に駐留する軍人と軍属の外出を禁止する措置が講じられた。
 だが、その後も米兵による事件は続いた。禁止令を破って、フェンスを乗り越え、酒を飲み…。
 いくらトップが神妙な面持ちで綱紀粛正を説いたところで、空疎な演説にしか聞こえない。
 半年ほどのローテーションで次々と入れ替わる海兵隊の若い兵士たちに、きちんとした教育がなされるのか、疑問である。・・・
http://article.okinawatimes.co.jp/article/2012-10-21_40451


この事件を受け、19日に沖縄タイムスは、神奈川県で米空母所属兵士に暴行され(2002年)、米本国に逃げ帰った加害米兵を相手に裁判を起こし闘うキャサリン・ジェーン・フィッシャーさん(東京都在住)らを那覇市の本社に招き、緊急座談会を開いています。

この席上でフィッシャーさんは、「いろんな事件が当時あり、私が被害に遭った時も外出禁止令が出されていた。禁止令だけでは、事件防止の効果は期待できない」と指摘しています。
http://article.okinawatimes.co.jp/article/2012-10-22_40519

この事件は相手が日本人ではなく白人女性でした。白人ですらこのような被害にあうのですから、「夜間外出禁止措置」は実効性をほとんど期待できないのです。

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<註> 米兵による暴行事件は沖縄では日常茶飯事です。調べて見ると次のような調査・研究があることを知りました。この調査は1995年の暴行事件までをまとめたものですが、これを見ると、暴行の頻度と非道さが生々しく伝わってきます。
「米兵による戦後沖縄の女性犯罪」
www.jttk.zaq.ne.jp/baags702/beiheiokinawahannzai.htm

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http://rt.com/news/japan-us-rape-okinawa-763/(出典:RT)

上記の座談会や社説でも指摘されていることですが、このような事件が後を絶たないのは米兵が犯罪を犯しても日本政府が逮捕して裁判にかける権利をもっていないからです。

今の日本がもっている法律「日米地位協定」SOFAは、まるで明治時代の治外法権そのままです。これほど日本の属国ぶりを示す法律はないでしょう。

したがって米軍による暴行・レイプ・殺人事件などを根絶するには、米軍基地を日本から追放するのが一番よいのですが、そのためには日米安保条約の改正という面倒な仕事があります。

しかし日米地位協定の見直しは「自国で起きた犯罪は自国の司法に則って裁く」という主権国家として当然の権利を要求するだけのことですから、日本政府にその気がありさえすれば、いつでも実現できることです。

事実、イラク戦争後に米軍によって占領され、その後にできたマリキ首相という「あやつり人形」=傀儡(かいらい)政権ですら、米兵がイラクで犯した犯罪はイラク政府が裁くという権利を強く主張して譲りませんでした。

その結果、実現したのが、アメリカ軍のイラク撤退でした。下記のDemocracyNow! の記事がそれをはっきり示しています。

U.S. Hands Over Largest Military Base in Iraq
http://www.democracynow.org/2011/12/2/headlines#1225
  The United States has officially handed formal control of its largest military base in Iraq to the Iraqi government. The transfer of Camp Victory marks the latest step in the U.S. withdrawal from Iraq by the end of the month. The Obama administration announced the pullout earlier this year after the Iraqi government refused to grant U.S. troops immunity for a longer stay.

とくに「イラク政府が今後の駐留米兵には刑事免責(immunity)の認可を拒否した」という最後のフレーズ[下線部]に注目してください。

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元大統領ブッシュ氏はイラク戦争を開始するとき、「日本でアメリカによる占領政策が成功したのだから、イラクで成功しないはずがない」と言いました。

しかし残念ながら、同じ傀儡政権でも、日本の場合とイラクの場合とでは、政権担当者の誇りの持ち方がまったく違っていたようです。

イラクの場合、石油の利権など多くの経済的権利をアメリカに奪われてしまいましたが、「自国で起きた犯罪は自国の司法に則って裁く」という主権国家として当然の権利だけは断固として守り抜きました。その結果が米軍の撤退だったのです。

だとすれば日本も当然の権利として、「日米地位協定」を主権国家にふさわしいものに変えさえすれば、「米軍撤退」などと声高に叫ばなくても、米軍は撤退するでしょう。

そうすれば莫大な金(=日本国民の税金)をかけて米軍基地を維持する必要がなくなり、財政問題も簡単に解決します。問題は、アメリカの圧力に屈しないで毅然とした態度を貫く政府を、私たちがどうやってつくり出すかです。

というのは、先に私は「イラク傀儡政権ですら、"米兵がイラクで犯した犯罪はイラク政府が裁く" という権利を強く主張して譲らなかった」と書きましたが、正しくは次のように書くべきだったからです。

「イラク民衆が傀儡政権にたいして、 "アメリカに主権を売り渡すな" と強く要求し、マリキ首相もその要求の強さに屈せざるをえなかった。」

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<註> 時間がある方は下記ブログ「マスコミに載らない海外記事」も参照ください。この間の詳しいイラク事情が分かります。
http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2011/11/post-05a3.html

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ところで、米軍が起こす犯罪のほとんどすべてが沖縄で起きています。それが本土の私たちに沖縄問題から目をそらさせる大きな要因になっています。

実は、沖縄を軍事占領するようアメリカに提案したのは昭和天皇自身でした。1947年(昭和22年)のことです。これはまだ日本人にはよく知られていない事実でしょう。そこで次回のブログは、そのことに焦点を当て書いてみたいと思います。

なお刑事裁判手続に係る「日米地位協定」、とくに第17条5(c)については原文がどのような文章になっているかも、私たち日本人が十分に知っているとは言いがたいと思います。そこで、その和文と英文を以下に載せておきます。

「日米地位協定第17条5(c)」
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/sfa/rem_keiji_01.html
(和文)
日本国が裁判権を行使すべき合衆国軍隊の構成員又は軍属たる被疑者の拘禁は、その者の身柄が合衆国の手中にあるときは、日本国により公訴が提起されるまでの間、合衆国が引き続き行うものとする。
(英文)
The custody of an accused member of the United States armed forces or the civilian component over whom Japan is to exercise jurisdiction shall, if he is in the hands of the United States, remain with the United States until he is charged by Japan.

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<註> 米軍が日本から撤退したあと日本をどう守るつもりか、との反論がとうぜん予想されますが、それについては全く別稿が必要になりますので、ここではふれません。

なお以下は単なる私の資料メモです。
日米地位協定第17条5(c)及び、刑事裁判手続に係る日米合同委員会合意
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/sfa/rem_keiji_01.html
日米地位協定、U.S.-Japan Status of Forces Agreement (SOFA)
正式名称「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定」
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/sfa/kyoutei/index.html
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