米兵によるレイプ事件(3)――「大国から自立して、日本は日本自身に属すべきなのだ」、トマス・ペイン『コモンセンス』は訴える  [沖縄から日本とアメリカを見る]

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演説する緑の党の大統領候補 Jill Stein

http://www.wbur.org/2012/08/09/green-candidate-obama

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いまアメリカでは大統領選挙がおこなわれ、オバマ氏が引き続き大統領を続けることが確実になりました。

しかし民主主義のモデル国であるはずのアメリカは、オバマ氏以外にも大統領に立候補している人物(たとえば、Green Party、Justice Party、Libertarian Partyなどからの立候補者)がいるにもかかわらず、彼らに公開討論の機会を与えませんでした。

それどころか、緑の党の大統領候補ジル・スタインと副大統領候補のシェリ・ホンカラが16日、大統領選討論会が行われているホフストラ大学の会場に入ろうとしたところを逮捕され、椅子に手錠でつながれて8時間拘束されるという事件すら起きています。

Green Party Candidates Arrested, Shackled to Chairs For 8 Hours After Trying to Enter Hofstra Debate
http://www.democracynow.org/2012/10/17/green_partys_jill_stein_cheri_honkala

あたかも立候補者が二人しかいないような報道ぶりに業を煮やした独立放送局が、独自に討論会を企画してきましたが、大手メディアは全く無視したまま投票日を迎えることになりました。

As Obama and Romney Agree on Afghan War, Israel and Syria, Third Parties Give Alternative
http://www.democracynow.org/2012/10/23/exclusive_as_obama_and_romney_agree
Third Party debates: Ending the foreign policy monologue (Op-Ed)
http://rt.com/usa/news/us-election-third-party-770/

上記のDemocracyNow! が企画した討論会もタイトル "As Obama and Romney Agree on Afghan War, Israel and Syria,..." でも明らかなように、オバマ氏もロムニー氏も外交政策については、全く変わりがありません(実は内政についても大きな違いはないのです)。

とりわけオバマ氏は、悪名高いブッシュ氏すらやらなかった「無人爆撃機を使った暗殺・殺人」を、アフガン、パキスタン、イエメンなど世界各地で繰り広げるようになってきていますから、オバマ氏が再び大統領に選ばれたからといって沖縄や日本の未来は決して明るいとは言えません。
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<註> アメリカの選挙でおかしいのは、投票権を得るためにわざわざ選挙人登録をしなければならないとか、白人は投票所でほとんど並ぶ必要がないのに、黒人やヒスパニックなど貧困者が多いところでは長蛇の列をなして6時間以上も並ばないと投票できないとか、投票日を週末ではなく平日にし、さらに不在者投票までも平日にして、働いている者を投票しにくくするとか――数え上げれば切りがないくらいの反民主主義的仕打ちが目立つことです。しかし、ここでは詳しく説明するゆとりがないので別の機会にしたいと思います。

逮捕される緑の党の大統領候補と副大統領候補

http://tinycomb.com/2012/10/20/green-party-candidate-jill-stein-arrested-before-second-presidential-debate/

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ところで私は前回のブログで、孫崎享『戦後史の正体』を引用しつつ、昭和天皇がGHQ側に「沖縄を半永久的に占領してほしい」と伝えていることを紹介して、次のように書きました。

 島ぐるみで「本土復帰運動」をして、1972年(昭和47年)5月15日にやっと実現した復帰運動でしたが、本土の反応は、沖縄の苦しみにはほとんど無関心という冷たいものでした。
 また、これは日本政府がアジア太平洋戦争の末期に「集団自決」など沖縄住民に多大なる犠牲を強いたにもかかわらずいまだにそれを正式に認めようとしないことにも通じるものです。これでは沖縄の人たちが憤(いきどお)るのも無理はないと言うべきでしょう。
 ではなぜ日本が沖縄にたいしてこんなにも無関心だったのでしょうか。それは戦後の日本がアメリカにたいして従属的であり続けてきたことと深く結びついています。そこで次回はアメリカ独立宣言の基礎を築いたと言われるトマス・ペイン『常識=コモンセンス』を取りあげながら、もういちど日米関係を考えてみたいと思います。


このブログの後すぐに、「米兵によるレイプ事件(3)」を書くつもりだったのですが、相変わらず体調がすぐれず、すぐには仕事にとりかかれませんでした。今か今かと待っておられた皆さんには本当に申し訳なく思っています。

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前回のブログで取りあげた孫崎享『戦後史の正体』(創元社、2012)は、戦後史に登場する首相・外相をアメリカにたいする「自主路線」と「追随路線」とに大きく二つに分け、日本の戦後史をこの二つの路線の相克・せめぎ合いとして描いた点に大きな特徴がありました。

日本がアメリカに支配されている属国であることは、共産党などが古くから主張していることですし、戦後の大きな事件がアメリカの謀略によるものではないかということも春名幹男『秘密のファイル、CIAの対日工作』上下2巻(新潮文庫、2000)などで既に紹介されていることですから、それ自体に新味はありません。

この本が非常に新鮮だったのは、その著者がかつてイラン大使などを務めたエリート外交官であり、退職する前には防衛大学教授も務めた防衛問題の専門家だったことでした。自分の体験してきたことを踏まえて、「そこまで語っていいのか」と思われるほど、日本外交史の裏面を赤裸々に語っています。

そのなかには、自分がイラン大使として赴任したとき資源小国日本のために大変な苦労をしてイラン油田の開発権を手に入れたのに、それがアメリカの圧力によっていとも簡単に放棄させられてしまった、しかも首相も外務大臣もそれに強く抵抗しなかった、という事実なども含まれています。

このような事実をふまえて研究してみると、日本の戦後はアメリカによる収奪の歴史であり、それに異を唱える政治家はことごとく政界から放逐・抹殺されてきた歴史であったことを知るにいたった、それがこの本を書く大きな動機になった――と孫崎氏は語っています(政界から放逐された後すぐ亡くなっているひとも少なくない)。

日本がいま不況の只中にあるのは、世界第二位の経済大国になったあとアメリカによる猛烈なジャパン・バッシング(日本たたき)が始まり、その後、郵政民営化などを初めとする強力な経済介入をアメリカから受けた結果である。ソ連崩壊のあとCIAの仕事は他国にたいする経済スパイになってしまった。――こういう事実も本書では紹介されています。

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以前から私は日本の戦後史について次のような仮説をずっと胸にいだき続けてきました。私がTESOLの学会に参加するため渡米し、毎年1か月くらい滞在する生活を10年くらい続けている間に、この仮説をますます確信するようになりました。

1)日本がアジアに侵略戦争にたいする謝罪をせずに済んできたのは、ドイツと違って日本はアジアの隣国と貿易せずとも、アメリカの庇護の下で、基本的にアメリカと貿易するだけで復興してきたからだ。

2)それどころか朝鮮戦争やベトナム戦争などアメリカがおこなってきた戦争の後方部隊をつとめることによって(いわばアジア人の血によって)莫大な経済的利益を得て戦後の復興をなしとげた。こうして、アメリカはアジアにたいする謝罪の機会を日本から奪うことになった。

3)ソ連や中国などの社会主義国が存在し、医療や教育の無償化など国民の生活を安定させる実績をあげている国があるかぎり、その対抗上、資本主義国でも同じことが可能であることを実証せざるを得なかった。アメリカが日本の経済復興を援助したのは、上記のことを証明するためのモデル国家として日本を世界に陳列するためであった。

4)しかしソ連が崩壊し、その結果、社会主義の東欧も姿を消した。こうして社会主義の良さを実践する国は存在しなくなった。中国も名前は「社会主義国」だが、実態はアメリカで学んだ経済エリートが新自由主義的経済運営をおこなう国家独占資本主義国となってしまい、国内では極端な貧富の格差が生まれている。

5)したがってアメリカにとって、社会主義国に対抗するための「モデル国家」として日本を庇護しなければならない理由は消滅した。むしろいま必要なのはアメリカに対抗するまでの経済力を持つにいたった日本を徹底的に叩きのめし、日本がもつ豊かな資産をアメリカに移し替えることである。これがアメリカから毎年のように日本に突きつけられてきた「規制緩和」「年次改革要望書」だった。


孫崎氏の前掲書を読んで、ますます私の仮説が正しかったのだという確信をもつようになりました。そして孫崎氏が外交における「自主独立路線」を貫くことの大切を主張されている点にも、強く共感するところがありました

<註> チョムスキーを読んでいる私からすると、細かなところで孫崎氏の叙述に疑問な点がないわけではないのですが、それはここでは取りあげません。むしろ私はこのような書籍を公(おおやけ)にした氏の身辺を心配しています。

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トマス・ペインと『コモンセンス』
  
http://shisly.cocolog-nifty.com/blog/2012/07/post-83d6.html

ところで『肉声でつづる民衆のアメリカ史』(明石書店、2012)の第4章にトマス・ペイン『常識=コモンセンス』が出てきます。

これを翻訳していたら、アメリカ人トマス・ペインが呼びかけるイギリスからの独立が、ほとんどそのまま「日本人が呼びかけるアメリカからの独立」の文書として通用するのではないかと思うようになりました。

そこで、トマス・ペインの文書で、「イギリス」とあるところを「アメリカ」に、「アメリカ」とあるところを「日本」に書き換えた、新版『コモンセンス』を以下に紹介します。

なお、『肉声でつづる民衆のアメリカ史』に載せられている「コモンセンス」は長すぎるので、分かりやすくするため番号を打ちながら幾つかの箇所を省いてあります。それを...........で示しました。
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1 この小冊子で私が述べることは、単純な事実、率直な主張、常識ばかりである。このことをまず読者にお話ししておきたい。読者は偏見や先入観を捨て去り、もっぱら自身の理性と感情に従って、真の人間的品性を獲得するのか、あるいは今もっている品性を捨て去らずに保持するのかを自身で決断いただきたい。そして、自身の視野を明日へと大きく広げていただきたい。
 アメリカと日本との軋轢(あつれき)について、多くの書物が書かれている。あらゆる階層のひとが異なる動機とさまざまな意図でこの論争に加わった。しかしすべてが無駄だった。論争の時期は終わった。……

2 当時この問題について双方の代弁者が提案したのは、どれも同一目標、すなわちアメリカとの結合をめざすことだった。双方の唯一の違いは実現方法にあった。……

3 [アメリカとの] 関係修復の利益についてはいろいろと言われてきたが、甘い夢のごとく消え去り、元の木阿弥となった。したがって関係修復論とは正反対の議論を検討すべきであり、また日本がアメリカと結合し従属することで、現在および将来こうむる多くの物的損失を検討しなければならない。それは自然原理と常識にもとづいてアメリカとの結合と従属を検討することであり、離脱すれば何が期待できるか、従属すれば何が予期できるかを検討することである。
 日本はこれまでアメリカとの結合のもとで繁栄してきたのだから、将来の幸福のためにも同じ結合が必要であり、そうすれば常に同じ結果が得られると主張するものもいた。この種の議論ほど馬鹿げたものはない。それなら子供はミルクで育ったのだから決して肉を食べさせてはならないとか、人生の最初の二〇年間は次の二〇年間の先例になると主張してもよいことになる。
 しかし、これは前述の議論をもっと認めることになる。というのは率直にいえば、世界の大国が日本を無視したとしても、日本はこれまでどおり、いやはるかに繁栄していたと言えるからだ。日本をここまで豊かにしたのは生活必需品の貿易だった。衣食住というものが世界の習慣であるかぎり、他の買い手はいつでも見つかるからである。
 しかし、アメリカが日本を守ってくれたと主張するものもいる。アメリカが日本を独占してきたことは確かであるし、この国土を日本の費用だけでなくアメリカの費用で守ってきたことも否定はしない。だがアメリカは同じ動機があれば、つまり貿易と領土のためならトルコでも守っただろう。……

4 しかし、アメリカは保護者だと言うものもいる。それならアメリカの行為は一層恥ずべきだ。野獣でさえわが子を貪(むさぼ)り食おうとはしない。野蛮人でさえ自分の家族に戦いをしかけない。したがってこの主張が本当なら、なおさらアメリカを非難することになろう。……

5 最も熱狂的な関係修復論者に私は問う。この国土がアメリカと結合していることで得られる利益があるなら、一つでも示してみよ。くりかえし問う。何の利益も引きだせないではないか。我々の生産物は世界のどの市場でも売れ、輸入品は代金を払えば何処からでも買えるのだ。
 しかしアメリカとの結合から受ける被害と損失は計り知れない。自らのみならず人類一般への我々の義務感は、この結合を廃棄せよと命じている。なぜなら、少しでもアメリカに従属し依存していると、日本はすぐに世界の戦争や紛争に巻きこまれるからだ。
 そればかりではない。アメリカと結合していなければ関係修復を求めてくるはずの国々や、我々が怒りも不満も抱いていない国々と、我々は不和になってしまうからだ。
 世界は貿易の市場だから、どの国とも偏った関係を結ぶべきではない。世界の紛争に巻きこまれないようにするのが日本の真の利益だ。しかしアメリカに依存し、アメリカ政治の天秤の錘(おもり)にされているかぎり、そうはいかない。……

6 アメリカがどこかの国と戦争をはじめると、日本の貿易はいつでも壊滅的打撃をうける。日本がアメリカと結びついているからだ。次に戦争がおこれば、この前の戦争のようにはいかないかもしれない。うまくいかなくなれば、今は関係修復を主張しているひとも分離・独立を望むだろう。中立こそが戦艦よりも安全な護衛艦になるからだ。
 正義や道理にかなったものすべてが離脱を主張している。殺された者の血が、自然の泣き声が、「いまこそ独立すべきときだ」と叫んでいる。全能の神がアメリカと日本とのあいだに設けた距離でさえ、アメリカ権力の日本支配が天の計らいでないことを示す有力な自然の証拠である。……

7 アメリカによる日本国土の支配は、遅かれ早かれ終わりを告げる統治形態だ。しかし、いわゆる「現体制」が一時的なものにすぎず未来は変わるのだという痛みを伴うが否定しがたい信念は、保守的なひとには心から喜べないのである。統治が永続しないと、子孫に遺してやれるものがなくなることを、親としては喜べないからである。
 率直にいえば、いま我々は次の世代に借金を負わせつつあるのだから、だかこそ独立という仕事をしなければならないのだ。さもないと子孫を卑劣に浅ましく利用することになる。我々の歩むべき進路を見出すには、子供の手をとり数年先の立ち位置を決めることである。そうすれば、今わずかばかりの恐怖や偏見で視野から外されている展望が、高見から開けてくるだろう。……

8 おとなしいの性格のひとはアメリカ人の攻撃を軽く考え、相変らず前途を楽観して「さあさあ、あんなことはあったけれど、また仲よく」と呼びかけそうだ。しかし人間としての怒りや感情を考えてみるがいい。また関係修復論を自然の基準に照らして検討してみるがいい。その後で、諸君の郷土に砲火や剣をもちこんだ国を、今後もまた愛し尊敬し忠実に尽くすことができるか、聞かせてもらいたいものだ。
 そのどちらもできないというなら、諸君は自らを欺(あざむ)き、子孫に破滅をもたすだけだ。愛することも尊敬することもできないアメリカとの結合をこれからも続けるとすれば、その関係は強制的で不自然なものになる。また、それは便宜的につくられた一時しのぎの関係にすぎないので、すぐにこれまでより悲惨な状態に陥るだろう。
 それでも諸君が暴行を見逃せると言うなら、お尋ねしたい。家が焼かれたことがあるか。財産が目の前で破壊されたことがあるか。妻子が身を休めるベッドや命をつなぐパンに困ったことがあるか。親や子が彼らの手で殺害されたことがあるか。自身が落ちぶれた無惨な生き残りになったことがあるか。
 そうでないなら、このような体験をしたひとについて、とやかく言う資格はない。しかし、諸君がこのようなことを体験していながら殺害者と握手できるなら、諸君は夫や父、友人や恋人の名に値しない。地位や肩書が何であろうと、諸君は、心情は臆病者で、精神は密告者なのだ。……

9 日本国土がいつまでも外部権力に服従しつづけると考えるのは、理に反し、世の条理に反し、前時代からのあらゆる実例に反している。最も楽天的なアメリカ人でさえそうは考えない。知恵の限りを尽してどんな計画を立ててみても、いまとなっては分離する以外、この国土にわずか一年の安全・安(あん)寧(ねい)さえ保証できない。
 関係修復はいまでは誤った夢である。自然はこの結合を見捨てた。人為が自然の代りをすることはできない。ミルトンが賢明にも言うように「極度の憎悪という傷が、甚だしく深かったならば、真の和解は生じない」からだ。……


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読者の皆さんは、上記の文章を東京大空襲などで焦土と化した首都や県都、原爆で瓦礫と化した広島や長崎を思う浮かべながら読み直してみてください。そうすれば当時の日本人がアメリカにたいしてどのような思いをいだいていたかを、逆に想像できるはずです。

しかしアメリカの占領政策は日本人を親米へと洗脳することに見事に成功しました。私もその一人でした。アメリカが日本にプレゼントしてくれた素晴らしい贈り物は「日本国憲法」でしたが、この画期的試みに意欲を燃やした若きアメリカ人の多くは、帰国してから社会主義者として迫害されました。

いずれにしても、トマス・ペインが「常識とすべし」とした見解(それが書名『コモンセンス』の主旨だったはずです)が、日本人にとっても常識になる日が近いことを祈っています。


<註1> 『肉声でつづる民衆のアメリカ史』に載せられている「コモンセンス」も、実は全文ではなく抜粋です。詳しくは『肉声史』上巻、133-141頁を御覧ください。
<註2> 上記の日本版「コモンセンス」では、「ヨーロッパ」という字句もも「世界」に書き換えました。当時のアメリカ人にとってはイギリスを含むヨーロッパが「世界」でしたから。(ドヴォルザーク がアメリカを「新世界」としたゆえんです。)
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