「死の商人」 EUが世界の武器輸出の1/3(アメリカに次いで世界第2位).、しかもヨーロッパ南部を暴力と混乱の極地に追い込んでいるEUに、ノーベル平和賞!?

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国内では選挙一色ですが、国外では混乱と暴力が渦巻いています。しばらく休息するつもりだったのですが、そんなわけで体を休めることもできず、なかなか英語教育にも復帰できません。

アメリカはイラク戦争の時と同じように「大量破壊兵器サリン」を口実にシリアに干渉する機会を狙っているようですし、エジプトでは新しい混乱が始まっています。しかし今回はそれらに目をつぶって、EUのノーベル平和賞受賞を考察してみたいと思います。

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オスロで、松明(torch)を手にノーベル平和賞の授賞式に抗議する人びと

A protester carrying a lit torch raises his arms during a protest in central Oslo on December 9, 2012.
http://rt.com/news/nobel-peace-prize-incakolanews-735/ (以下の写真も全てRT)

東京都知事候補者・宇都宮健児氏にたいする勝手連の応援歌「東京なのに宇都宮」
http://www.youtube.com/watch?v=fUZai67sMYs
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* 一般読者の皆さんへ: 以下では英文をたくさん引用してあります。しかし半分は自分のメモを兼ねています。時間のない方は飛ばして読んでください。
* 英語教師の皆さんへ: 授業における会話ブーム(しかも覚えてもすぐ忘れる)のおかげで、生徒どころか英語教師の「読む力」も大きな落ち込みを見せています。この英文記事が「読む力」の回復に少しでも役立てば幸いです。
* 教育研究者の皆さんへ: 最近わたしは、英語を学ぶ目的の一つは、アメリカの実像を知り日本を「第二のアメリカ」にしないことにある、と考えるようになりました。以下は、今まであまりにも「虚像のアメリカ」を教えてきた私の反省が込められています。

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ノーベル賞の創始者アルフレッド・ノーベルが死んだ12月10日に、ノルウェーの首都オスロではノーベル平和賞の授賞式がおこなわれました。

アルフレッド・ノーベルはスウェーデン人ですが、不思議なことにノーベル平和賞だけは、ノルウェーの議会によって任命された5人の委員によって選考されます。

このノーベル平和賞のいかがわしさについては、既にオバマ氏および劉暁氏が選ばれたときに露呈しましたが、これについては既にこのブログでも言及しました。
  劉暁波とジュリアン・アサンジ(上)2010.12.13
  劉暁波とジュリアン・アサンジ(下)2010.12.24

しかし今回の欧州連合(EU)受賞でそのいかがわしさがいっそう明らかになったように思われます。そのことは、3人のノーベル平和賞受賞者がノーベル委員会に異例の抗議文書を送ったことによっても、明らかでしょう。

デズモンド・ツツ元大主教(Archbishop Desmond Tutu),
北アイルランドのマイリード・マグワイア(Mairead Maguire of Northern Ireland)
アルゼンチンのアドルフォ・ペレス・エスキベル(Adolfo Pérez Esquivel from Argentina)

上記3人のノーベル平和賞受賞者は、「27か国のブロックは武装解除された世界和平というアルフレッド・ノーベルの考えと矛盾している」として、ノーベル委員会に異例の抗議文書を送りました。

こうした中、世界中で、人権擁護や平和を訴える数十の団体が、EUのノーベル平和賞受賞に抗議しました。

授賞式の前日9日、首都オスロでも、世界中から集まった人たちがノルウェーの平和団体と共に、この授賞式に抗議をするため、松明(たいまつ)を手にデモ行進を行いました。

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緊縮政策に抗議する民衆と彼らに発射された催涙弾(アテネ)

http://rt.com/news/greece-austerity-bill-protests-144/

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この受賞式に先立って、ギリシアの最大野党シリザSyrizaの議員ディミトリス・コデラスDimitris Kodelasは9日、オスロ市内の記者会見で次のように語っています。

最初にEUがノーベル平和賞を受賞したと聞いた時、私たちは冗談かと思いました。

ヨーロッパ南部の国々では、金融戦争の結果、多くの国が負債のため植民地状態にされています。市民は身ぐるみ剥がれ、国の財産は略奪されています。

たとえば私の国ギリシャでは、失業率は平均26%で、若者の失業率は58%にも達し、国民の1/3が貧困ライン以下の生活を強いられています。このような状況をつくりだした連中が受賞するなんて考えられますか?

ドイツの首相メルケル女史Mrs. Merkelも受賞するようですが、彼女にふさわしいのは平和賞ではなく、「市場原理主義」賞(the prize of neoliberal fundamentalism)でしょう。

またギリシャの首相サマラス氏Mr. Samarasが受け取るべきなのは、「メルケルの最優秀生徒」賞(the prize of the best student of Mrs. Merkel)だと思います。」

その賞が実際、誰かに与えられるべきだというのであれば、それは南ヨーロッパや北アフリカや中東で、平和・尊厳・正義・民主主義・独立のために闘っている人たちに与えられるべきでしょう。
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<註> 原文は次のとおりです。
Does the EU Deserve the Nobel Peace Prize?
Critics Condemn Role in Brutal Greek Austerity

http://www.democracynow.org/2012/12/10/does_the_eu_deserve_the_nobel
DIMITRIS KODELAS: When we heard that the Nobel Prize for peace will be given to the European Union, we first thought it was a joke, especially because this comes in days when mainly the peoples of South Europe are living with the results of a financial war, and their countries are turning to colonies of debt with deprived citizens and looted national wealth.
  For example, in my country, the decision of the last three years will be over 30 percent in 2013. The unemployment rate is now 26 percent, reaching 58 percent for the youth. One-third of the society in Greece is below or at the edge of poverty. Is it ever possible that the initiators of this situation are given awards?
  Mrs. Merkel is going to receive the prize. Instead of peace prize, she should be awarded the prize of neoliberal fundamentalism. Mr. Samaras, the prime minister of Greece, should take the prize of the best student of Mrs. Merkel.
  And in reality, if a prize should be given to someone, these are the struggling peoples in South Europe, in North Africa and in the Middle East, who are fighting for peace, dignity, justice, democracy and independence.

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大手メディアではギリシャの財政難は「公務員が優遇されている」「社会保障が充実しているから国民が贅沢しすぎている」などといった論調が見られます。

しかし、ギリシャの政府や大銀行がアメリカのサブプライムローンに手を出して金融危機に陥ったことや、金持ちや大企業が脱税したり租税回避地(tax haven)に資産を移していることは、ほとんど取りあげられていません。

また、不良債権になることは最初から分かっていたにもかかわらず、それをギリシャその他に売りまくったアメリカの巨大金融業は、自分たちが引きおこした金融危機にたいして何の責任も取っていません。

それに手を出したギリシャの巨大銀行も、庶民にたいして責任を取るどころか税金で救ってもらっています。

株の売買で巨大な利益を稼いでいるひとたちの税金は、汗水垂らして働いているひとたちの税率よりもはるかに低いことも、ほとんど報道されません。

ところが庶民は、赤字財政だからという理由で賃金も福祉も教育も削られるのです。それどころかギリシャは、EUから資金援助を受ける条件として、武器の購入まで義務づけられています。

庶民が生活苦にあえいでいるとき何のために武器を買わねばならないのでしょうか。庶民が抗議に立ち上がったとき、それを弾圧するためなのでしょうか。

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生活苦を再生産する緊縮財政に抗議して、デモ行進するスペイン警官


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EUは世界の武器輸出の3分の1(アメリカに次いで世界第2位の地位)を占めています。

EUが「死の商人」でありながらノーベル平和賞の受賞者である――今回のノーベル平和賞のいかがわしさこは、この一事だけでも明らかでしょう。

この間の事情をノルウェー平和評議会事務局長のヘッダ・ランゲミヤーHedda Langemyrは次のように語っています。

 EU加盟諸国は兵器産業を激増させました。これはトルコも同じです。特に著しいのがドイツです。
 またEU諸国は[全体として]世界の武器輸出の1/3を占め、核兵器もEU5カ国に配備しています。

 このことを促進するためにEUが組織としてやっているのが、ICT Directiveという決議・指示の利用です。
 彼らは、よりにもよってノーベル平和賞の授賞年に、兵器産業と兵器輸出を促進する指示を加盟各国に出し始めました。兵器産業をEU内の市場に組み込むことによって兵器輸出を促進しようとしているのです。

 こうすることによってEU加盟諸国は各国議会の反対を回避できるからです。つまり議会による縛りを緩和して加盟国が兵器の製造と輸出をやりやすくしようとしているのです。
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<註> 原文は次のとおりです(下線は筆者)。
Norwegian Peace Activist:
Top Role in Global Arms Trade Makes EU Unworthy of Nobel Prize

http://www.democracynow.org/2012/12/10/norwegian_peace_activist_top_role_in

HEDDA LANGEMYR: Well, the member states of the EU, they have had an enormous increase in the weapon industry. This goes for Turkey. It goes for—well, particularly, it goes for Germany.
  The EU member countries also represent about one-third of the global arms export in the world. And there are nuclear weapons placed in five different EU countries.
  What the EU as an institution does to facilitate this is through something called the ICT Directive that was introduced this year.
  So the year they're receiving the Nobel Peace Prize, they are launching a directive that facilitates weapon industry and export through making the industry a part of the internal market, which means that it's much easier for the EU member countries to avoid their national legislators on this.
  So, it's liberalizing the conditions for weapon production and export.

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緊縮財政案(austerity measures)に抗議してデモ行進するスペイン警官


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また、ノルウェー平和評議会事務局長のヘッダ・ランゲミヤーHedda Langemyr は、次のようにも語っています。

ギリシャにたいする総合的政策について言えば、EUはギリシャの国家予算の特定分野[福祉や教育など]の大幅削減を命令するだけでなく、同時にひとつの条件をつけました。

「ただし兵器輸入の予算だけは削減してはならない」という条件です。これはギリシャに軍事化を推し進めろと命令しているのと同じことになります。EUは、ギリシャが財政難でもがき苦しんでいる状況、立ち向かわなければならない難題が山積している状況にもかかわらず、こんなことを押しつけているのです。

その意味で、兵器の輸入は国家の安全と何の関係もありませんし、政治的にすら必要ないものです。それはお金の無駄遣いです。それはギリシャを再武装に導くものであり、誰の役にも立ちません。

これはEUが「いかにして兵器の流れを円滑にして兵器経済を活性化し、兵器産業の利益をあげようとしてるか」の一例にすぎません。

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<註> 原文は次のとおりです(下線は筆者)。
Norwegian Peace Activist:
Top Role in Global Arms Trade Makes EU Unworthy of Nobel Prize

http://www.democracynow.org/2012/12/10/norwegian_peace_activist_top_role_in

HEDDA LANGEMYR: Well, when it comes to the packages to Greece, for instance, the EU is dictating major cuts in certain parts of their national budget, but at the same time they're delivering a premise.
  That is, that Greece is not to reduce their weapon import, which means that, relatively, EU is dictating an armament process in Greece in a situation where they are severely suffering and there are extremely many different obstacles and dilemmas to be handled.
  And in that sense, the weapon import, it's not reflecting security, political need even. But it's a waste of money, and it's leading to a rearmament process in Greece that nobody is really served with.
  And this is also, yeah, just one of many examples of how the EU, through this, is facilitating the weapon flow and arms economy and arms profit

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緊縮財政(austerity)に抗議してデモ行進するスペイン警官

Spanish police officers hold banners of the Unified Police Union (SUP) and a giant banner reading "Against the cuts, all the policemen together."

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ノーベル平和賞の選考委員会は、EUは「戦争の大陸」であったヨーロッパを「平和の大陸」に変えたとして、EUにノーベル平和賞を与えたわけですが、いまヨーロッパは緊縮財政に抗議する民衆とそれを弾圧する警官の間で内戦状態になっています。

ギリシャはもちろんのこと、つい最近、ポルトガルでも巨大デモがありましたし、スペインでも全く同じでした。
Thousands Protest Massive Tax Hikes in Portugal's Austerity Budget
http://www.democracynow.org/2012/11/28/headlines#11289

このように、一種の「内戦」状態であるにもかかわらず、ヨーロッパを「平和の大陸」に変えたとして、EUにノーベル平和賞が与えられたのでした。

しかし前述のとおり、いまヨーロッパの民衆は貧困にあえいでいます。つい先日もスペインで、家賃が払えず「立ち退き」を迫られた59歳の男性が自殺しました。これは連続して起きた同種の事件の、3人目の犠牲者でした。

Man's Death Marks Spain's Third Eviction-Related Suicide
http://www.democracynow.org/2012/11/29/headlines#112912
In Spain, a third person facing eviction from a foreclosed home has killed himself. The 59-year-old man reportedly committed suicide on the same day an eviction order against him was due to be served.

これは「自殺」Suicideではなく「殺人」HomicideだとRussia Todayは報じましたが、まさにそのとおりでしょう。今度の金融危機は庶民の責任ではありません。ところが税金で救ってもらえたのは、危機の張本人である投資銀行であり、庶民ではなかったからです。

‘Homicide not suicide': Spain facing‘humanitarian' crisis over evictions
http://rt.com/news/spain-evictions-debt-crisis-302/

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緊縮財政(austerity)に抗議してデモ行進するスペイン警官

Spanish police officers march past police vehicles as they take part in a demonstration.

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いまスペインでは連日のように巨大な抗議デモがおこなわれていますが、11月17日には警察官組合the Unified Police Union (SUP)の警察官が何千人も、この抗議行動に参加しました。

このとき警官たちがもっていた横断幕には次のように書かれていました。
Thousands of Spanish police officers march against austerity
http://rt.com/news/spain-protests-police-austerity-953/

「市民諸君!我々が逮捕しないでいることを許してくれ、この危機をつくりだした真の責任者を、銀行家と政治家の奴らを。」
("Citizens! Forgive us for not arresting those truly responsible for this crisis: bankers and politicians," read one banner.)


その行進に参加した警官の一人、33歳のアントニオ・ペレズAntonio Perezは取材していたAP通信社の記者に次のように語っています。

「問題の根源は、彼らが我々から略奪し、奪ったものを他の奴らに投げ与えたことだ、EUという勝手気ままな組織と銀行家の連中に。」
("The problem is they take from us to give to others, like the autonomous regions and the banks," 33-year-old police officer Antonio Perez told AP. )


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いま日本でも、能登半島(私の故郷に近い羽咋郡志賀町)で自殺者=凍死者が出ました。

志賀町といえば真下に活断層の疑いがあるにもかかわらず北陸電力が「原発再稼働」を諦めていないことで有名なところです。

その志賀町で北陸電力が冷酷にも、障害者をかかえ電気代も払えない貧困家庭の電気を、切断して親子二人を死に追いやったのです。

しかも80歳の老母が、障害者で54歳の娘の世話をしていたというのですから、その悲惨さがいっそう際立つ事件でした(共同通信2012/11/30)。

日本の凍死者も、スペインの自殺者と同じく、政府が住民に手厚い保護を与えていれば死なずにすんだ人たちでした。東電や北電に回さす金を、生活保護などに回せばよいのです。

その意味では、これはやはり「自殺」ではなく「他殺」(殺人Homicide)なのです。今度の総選挙の争点はまさにそこにあるのだと思います。

というのは原発の即時撤廃をためらっているひとたちの裏に見え隠れするのは、日本を軍事大国にすること、核兵器を持ちたいがために原発を捨てきれない本音だからです。

しかし「日の丸・君が代」では飯は食えません。それは沖縄の歴史が見事に証明しています。

また地震大国の日本では、次のフクシマが起きるのは明日かも知れません。そのときには放射能汚染で住む場所も食べるものもなくなっているでしょう。

原発=核兵器では国を守れないのです。

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