新年を迎えて、私の昨年の「三大事件」――『肉声でつづる民衆のアメリカ史』出版、「レイバーネット日本」入会と「あおぞら放送」出演、『アジア記者クラブ通信』会員購読とDemocracyNow! からの自立

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Patti Smith. 「われわれ民衆には力がある」People Have The Power
http://www.youtube.com/watch?v=pwLDNkODj0c(約5分)
*動画は賃金・年金・医療・教育の削減政策に抗議する南ヨーロッパの巨大な民衆のうねり

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「あけましておめでとうございます」と言いたいところなのですが、あまりその気分にはなれません。

というのは前回のブログでも書いたことですが、再稼働を容認する民主党に代わって再登場することになった自民党は、憲法9条を投げ捨て核武装も辞さない超タカ派を総裁にいただく政党だからです。

とはいえ、今年は4年ぶりにやっと落ち着いた気分で正月を迎えることが出来ました。というのは、今までは『肉声でつづる民衆のアメリカ史』の翻訳に追われて、正月も返上せざるを得ないくらいに追い詰められた年末年始だったからです。

それでも出版社から要請されていた2月出版という期日は大幅に遅れてしまい、結局は6月末日の出版ということになってしまいました。しかしこの『肉声でつづる民衆のアメリカ史』出版が、私にとっては昨年の最大事件でした。

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<註> この私の思いについては『肉声史』「あとがき」で詳しく書きましたが、下記HPにも転載してあります。時間がある方は覗いていただけると有り難いと思います。
http://www42.tok2.com/home/ieas/voices-postscript.pdf

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http://www.labornetjp.org/news/2012/1005shasin (出典)

私にとって昨年最大の事件が『肉声でつづる民衆のアメリカ史』の出版だったとすれば、第二の大きな事件は、「経産省前テントひろば」で毎週金曜日におこなわれている「あおぞら放送」に出演し、それをきっかけに「レイバーネット日本」の会員になったことでした。

この「経産省前テントひろば」は、アメリカのオキュパイ・ムーブメント発祥の地「ズコッティ・パーク」にあたるところだと思っていましたので、『肉声でつづる民衆のアメリカ史』を「経産省前テントひろば」に届けることは、故ハワード・ジンの遺志を「テントひろば」を支えている人たちに届けることだと思っていました。

また「レーバーネット日本」は、労働組合の全国組織「連合」が経営者とのなれ合い組織に堕落してしまった現在、それと対抗する新しい組織のひとつとして(とくに「レーバーネット日本」のHPとインターネットTVの活動に)注目していたので、その共同代表者のひとりから声をかけられたことを光栄に思い、入会することにしました。

この詳しい経過は、『レイバーネット日本Newsletter』50号(2012年11月20日)に載せられた下記「新入会員紹介」を御覧ください。(文字が小さくて読みにくい場合は、[Ctrlキー]と[+キー]を押してください。文字が拡大します)。
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<註> 私が「あおぞら放送」に出演した写真は上記Newsletterにも載っていますが、以下のサイトから実際のようすを見ることができます。時間のある方は御笑覧ください。

ユースト放送録画(最初から62分のところから70分までの8分間)
http://www.ustream.tv/recorded/25933245

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ところで、上記Newsletterで、川柳作家=鶴彬(つる・あきら)に少しふれてありますが、私の生まれ育った町からそう遠く離れていないところ[かほく市高松]で、反戦運動に命をかけ壮絶な最期を遂げた若者がいたことを、私は最近まで知りませんでした。

私が本格的に鶴彬に関心を持ち始めたのは「鶴彬-こころの軌跡-」という映画をつくる運動が石川県でおこり、その映画監督が岐阜出身の神山征二郎だということを知ってからでした。

神山監督の映画『ふるさと』(1983年)は、痴呆症の老人と少年の親交を描きながら、ダムの底に消え行く徳山村の美しい自然を表現していて、私の心の奥底にずっと深く沈殿していたからです。

鶴彬については、一叩人編『鶴彬全集』(初版:たいまつ社 1977)が作家・澤地久枝によって増補改訂・復刻版というかたちで紹介されて以来、最近ようやく研究が進み、いろいろな本が出始めました。私が読んだのは下記のとおりです。

吉橋通夫『小説 鶴彬―暁を抱いて』(新日本出版社)
深井一郎『反戦川柳作家・鶴彬』(日本機関紙出版センター)
木村哲也編『手と足をもいだ丸太にしてかえし―現代仮名遣い版・鶴彬全川柳』(邑書林)

反戦運動に命をかけ、同じように警察の拷問で壮絶な最期を遂げた作家に小林多喜二がいますが、これらを読んでみて、鶴彬は「川柳界の小林多喜二」だと思いました。

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私の心に強く残っている鶴彬の川柳は数多くあるのですが、以下ではそのうち五句だけあげておきます。

手と足をもいだ丸太にしてかへし
胎内の動きを知るころ骨(コツ)がつき
地下へもぐって春へ春への導火線
暁をいだいて闇にゐる蕾(つぼみ)
枯れ芝よ!団結して春を待つ


澤地久枝さんは鶴彬について次のように語っています。
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik3/2004-09-09/12_01faq.html

「一番最後の句が『胎内の動き知るころ骨がつき』というのもすごいことです。身ごもった赤ちゃんの胎動がわかって生まれてくる日を予告しているというのに、父親は戦死しその遺骨が届く。子は父を失い母は夫を失う。戦争をみごとに突いた句です。…警察は謝れば出すのに、鶴彬は、結局志を曲げなかった。日中戦争が激しくなった38年9月14日に息を引き取った青年は、最後まで反戦の筋を通し死んでいった。ずいぶん痛ましい、しかしみごとな人生だと思います。」


アメリカはアフガニスタンに兵士を送ってから10年以上も経ちますが、同じ風景がアメリカでも展開されていることでしょう。

日本も、安倍内閣によって9条が改悪され自衛隊がアメリカの手下として海外に出かけるようになれば、ふたたび同じ風景が展開されることになるでしょう。

また「手と足をもいだ丸太にしてかえし」については、楜沢健『だから鶴彬―抵抗する17文字』 (春陽堂書店、2011)の書評として、アマゾンコムには次のような感想が寄せられていました(「現在への問いかけ」2011/6/16)。

先週、福島県相馬市の酪農家が「原発さえなければ」と自殺をした。牛舎の黒板には辞世の句が残っていたという、「原発で手足ちぎられ酪農家」。この句を聞いて、鶴彬の「手と足をもいだ丸太にしてかえし」を連想したのは私だけではないでしょう。優れた批評は、過去の作品を扱おうとも常に現在を問いかけている。

私は「手と足をもいだ丸太にしてかえし」を読んだとき、ドルトン・トランボが1939年に発表した反戦小説『ジョニーは戦場へ行った』(原題"Johnny Got His Gun")を思い出したのですが、戦争で手足をちぎられ丸太になった兵士ではなく、「原発で手足をちぎられた酪農家」を連想したひともいたのだと、深く心をゆさぶられました。
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<註> 実は、反戦小説『ジョニーは戦場へ行った』の主人公は、手足どころか眼も見えず口もきけなくなっています。この彼の訴えは『肉声でつづる民衆のアメリカ史』で上巻548-554頁に載っています。
 なお映画『鶴彬-こころの軌跡』の公式サイトは下記のとおりです。これを見ると待望されていたDVD版も完成したことが分かりますし、申し込み方法も載っています。
http://tsuruakira.jp/
また今でも映画の上映運動が続いていることも、このサイトで知ることができました。

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話がかなり横にそれてしまいましたが、昨年おきたことで私にとって三つ目の大きな出来事は「アジア記者クラブ」の会員となり、『アジア記者クラブ通信』を読み始めたことです。

これを読みたいと思ったきっかけは、この通信にチョムスキーの翻訳が載っていることをインターネット検索で知ったことでした。

私のHPでも「チョムスキー翻訳」のコーナーをつくり、時間が許すかぎり翻訳を載せてきた関係で、その詳しい内容を知りたくなったのです。
http://www42.tok2.com/home/ieas/

この『通信』を読みたいと思ったもう一つの理由は、DemocracyNow! のリビア報道でした。

アメリカやフランスなどNATO諸国は、リビアに民衆蜂起が起きたとき、これをチュニジアやエジプトと同じく独裁体制に抗議する民衆蜂起として位置づけ、カダフィ大佐の打倒をめざす反政府勢力に武器を供給し始めたのです。

それどころかNATO軍は、カダフィ政権が民衆を殺しているとして空からの爆撃も始めました。これは明らかに民衆を守るためにカダフィ政権から「制空権だけを奪う」という口実すらも投げ捨てるものでした。

ところがDemocracyNow! はこのような事実をほとんど報道しませんでした。またカダフィ政権が民衆にアフリカで最も高い生活水準を保障してきたこと、教育や医療も無料だったことも、全く報道されませんでした。

つまりDemocracyNow! の報道は、カダイフィ大佐はエジプトのムバラク大統領と全く同じ類(たぐい)の独裁者だと言わんばかりの報道ぶりでした。これはシリアのアサド政権にたいしても全く同じ調子です。

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私がこのような疑問を持ち始めた頃、『アジア記者クラブ通信』がAmy Goodmanに正面から疑問を突きつけていることを知りました。

『通信』は2012年8月号で、「戦争プロパガンダに取り込まれたデモクラシーナウ、オルタナティブメディアの変節」と題する、フィニアン・カニンハム(ジャーナリスト)の記事=翻訳を載せました。それには冒頭に次のような解説が付けられていました。

7月18日にダマスカスで発生した爆破事件で、国防相を含むシリアのアサド大統領側近3人が死亡した。米欧諸国の主流メディアは概ね次のように論評した。
 
つまり反政府勢力がシリア政権の中枢に侵入し、要人を殺害できたことは、アサド支持者に甚大な衝撃を与え、政権からの離反者を加速させることになり、シリアの体制転換までそんなに時間はかからないはずとの見通しを示した。

また米国とその同盟国による国連安保理で対シリア制裁への動きに反対するロシアを一丸となって非難した。

このように米欧諸国の反アサド体制プロパガンダに協調する西側メディアが流布してきた偽情報は幾つかのオルタナティブメディアに反論されてきた。

本通信もシリアで相次いだ大量虐殺や破壊工作の大半は西側諸国や親米アラブ諸国に支援された“反体制勢力”が企ててきたとの報道を一貫して続けてきた。 

こんな中、この記事の筆者は有力で信頼できるとされてきたオルタナティブメディア「デモクラシーナウ」までが米欧諸国の戦争プロパガンダに取り込まれてしまった今日の危機的状況を明らかにしている。(編集部)

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確かにDemocracyNow! は、ノーム・チョムスキーやハワード・ジンなどもゲストに招きながら、アメリカ政府に批判的な姿勢を取り続けてきました。司会者であるAmy Goodman も,もう一つのノーベル賞と言われる「ライト・ライブリフッド賞」を受賞しています。

しかし国内情勢の扱いはともかく国外事件については、DemocracyNow! の報道内容をそのまま鵜呑みにするわけにはいかないと、このときから思い始めたのです。

それからは、DemocracyNow! だけに偏るのではなく、Russia Today(RT)などと比較してみたり、中東記者として高名なRobert Fiskの記事と読み比べるといった工夫もするようになりました。もちろん『アジア記者クラブ通信』も重要な情報源となりました。

これは私にとっては画期的なことでした。それまではZNetに載っているチョムスキーの論考以外は、原則としてすべてDemocracyNow! の情報に依拠するというのが私の姿勢だったからです。

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以上が『アジア記者クラブ通信』と私の出会いの経過なのですが、そうこうしているうちに『通信』の編集者である森広泰平さんから『肉声でつづる民衆のアメリカ史』について次のような依頼がありました。

個人的には落ち着いて読んでみたい気はありますが、それを許さない状況なのと、この大作を読む人間が周囲にいないので、自薦という形で執筆していただけないでしょうか。1月号に掲載できないか考えたいと思います。


そこで書いたのが次の解説記事です。これを読み、興味をもっていただけたら(なにしろ大部かつ高価な本ですから)ぜひ公共の図書館等に購入依頼をして読んでいただければと思います。

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福島で原発事故が起きてから、日本の民衆運動は、「怒れる福島の女たち」「経産省前テントひろば」「官邸前金曜行動」など、安保闘争あるいはビキニ水爆実験を契機にした巨大な原水爆禁止運動に次ぐ、大きなうねりをつくり出しました。

しかし総選挙の自民党「圧勝」で一時的な後退を強いられるかも知れません。ニューヨーク「ズコッティ・パーク」のテント村が警察の暴力的な介入で破壊されたように、「経産省前テントひろば」も撤退に追い込まれる恐れもあります。

しかし、ここで改めて思い出されるのが鶴彬の次の川柳です。

地下へもぐって春へ春への導火線
暁をいだいて闇にゐる蕾(つぼみ)
枯れ芝よ!団結して春を待つ


というのは、ニューヨークのオキュパイ・ムーブメントが「ズコッティ・パーク」のテント村を破壊されても、いったん地下にもぐって「春への導火線」を引き、いまやアメリカ全土に広がって行ったと同じように、日本の民衆運動も「枯れ芝よ!団結して春を待つ」という状態を経て、必ずや再起するものと私は信じています。

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橋下市政下の大阪では、汚染瓦礫の受け入れに抗議しただけで逮捕者が出ています。いまだに拘留中のひともいます。そのひとたちの心境はまさに「暁をいだいて闇にゐる蕾(つぼみ)」ではないでしょうか。

しかし『肉声でつづる民衆のアメリカ史』に登場する人物のひとりひとりが同じような苦境を乗り越えて今のアメリカをつくってきました。

先日、本書を読んだ読者から、次のようなメールが届きました。

やっと『肉声史』の上巻を読み始めました。第15章「ジャズ・エイジと1930年代の民衆蜂起」のところから飛び飛びに読んでいますが、この時代の闘いのすさまじさには圧倒されます。

どれを読んでも命がけのたたかいのなかで、かくも情熱的に、まっすぐに、しかし賢くまわりを組織しながらたたかってゆく姿は驚きです。

若い頃読んだコールドウェルやフォークナーの小説に貧しい農民たちが描かれていて、その絶望的な暗さが忘れられませんが、1930年代のそうした背景のなか、一方でこのように道を切り開いてきた人々がいたわけですね。

このメールを読んで、本書を編集した意図がそのままずっしりと受け止められていることにハワード・ジンもさぞかし天上で喜んでいるだろう、と思いました。

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新しい年を迎えたことでもありますから、気力体力が回復する度合いに合わせて、本来の仕事である「英語教育」に、少しずつブログの重点を移していきたいと思っています。今後ともよろしく御指導御鞭撻ください。
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狐狸庵居士(田舎の国立大学を2010年に定年退職)

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