電脳技術の天才Aaron Swartz の死を考える(2)――オバマはアーロンの何を恐れたのか?WWWの創設者は語る 「アーロンの訴追は法と正義をねじまげる全くの茶番劇だ」

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ニューヨークでの追悼集会で挨拶するタレン(アーロンのパートナー)

http://www.ktvu.com/ap/ap/technology/hundreds-honor-information-activist-swartz-in-nyc/pnPCL/


歌 "Shapeshifter" - Gallop
(まるでタレンの気持ちを代弁しているようなメロディと歌詞です)
http://www.youtube.com/watch?v=zRZ5B5uLs8Q(約5分)
http://gallop.bandcamp.com/track/shapeshifters(歌詞)
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前回のブログ「電脳技術の天才 アーロン・スウォーツ Aaron Swartz の死を考える(1)」で私は次のように書きました。

いずれにしても、仏教徒の焼身自殺による抗議がベトナム戦争の終結を早め、チュニジアやエジプトでは若者の焼身自殺が「アラブの春」をもたらしたように、アーロンの自殺がアメリカに真の自由と民主主義をもたらすことに貢献するだろう、と私は信じています。

私がこのブログをなかば徹夜状態で載せたあと、その日のDemocracyNow!を視聴してみたら「コンピューター犯罪を罰する法律を改正するための新しい法律『アーロン法』が提案された」というニュースが飛びこんできました。

"Aaron’s Law" Introduced to Alter Computer Fraud Penalties
http://www.democracynow.org/2013/1/16/headlines#11613

私が願ったとおりのことがアメリカで起き始めていることを知り、本当に嬉しくなりました。以下にそのニュースを紹介しておきます。

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「コンピューター犯罪の罰則を改正するために新しい『アーロン法』が提案された」
"Aaron’s Law" Introduced to Alter Computer Fraud Penalties
http://www.democracynow.org/2013/1/16/headlines#11613

ワシントンでは、カリフォルニア選出の民主党下院議員ゾウイー・ロフグレン(Zoe Lofgren)がスウォーツ氏をたたえるために新しい法律の導入を提案した。

このロフグレン女史の法案は別名を「アーロン法」と言い、「コンピューター不正行為防止法」(the Computer Fraud and Abuse Act)を修正し、「インターネットなどのサービス違反」の条項を削除しようとするものである。声明のなかでロフグレン女史は次のように述べた。

「死者を生き返らせることはできないのですからアーロン氏の悲劇を元にもどす道はありません。しかし私たちはアーロン氏が味わった苦難=権力の乱用を二度と繰り返させないように奮闘・努力することはできるのです」

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さらに翌日のDemocracyNow! は、大略つぎのように報じました。
http://www.democracynow.org/2013/1/17/exclusive_aaron_swartzs_partner_expert_witness

アーロンの死はアメリカ全土で政府検察官にたいする不満と怒りを噴出させた。

その不満と怒りを背景に、民主党下院議員ゾウイー・ロフマンは現行法の修正案「アーロン法」を提出した。

それだけでなく、共和党下院議員であり「下院(政府改革)監視委員会」(the House Oversight Committee)の委員長であるダレル・アイサ(Darrell Issa)は、検察当局による権力乱用がなかったのかどうかの調査を開始した。

このようにアーロンの自殺はアメリカの政治に新しい動きをもたらし始めています。
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<註> どうも政府検察官による権力乱用は日本の小沢事件だけではないようです。なお上記の記事全文は下記にあります。
Aaron Swartz’s Partner, Expert Witness Say Prosecutors Unfairly Targeted Dead Activist
http://www.democracynow.org/2013/1/17/exclusive_aaron_swartzs_partner_expert_witness

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しかし、オバマ大統領はこれに対してすばやく反撃を開始しました。というのはオバマ氏は、話題になっている銃規制法案の発表予定を急遽くり上げて、アーロンの葬儀がおこなわれた翌日におこなったからです。

こうすれば、、銃規制法案が新聞やテレビのトップ記事になり、アーロンの葬儀のようす、そこで誰がどのような発言をしたかは、まったく大手メディアから姿を消すか片隅に追いやられてしまうことは、ほぼ間違いないからです。

とはいえ民衆の側もアーロンの死を無駄にしないために新しい活動を開始し始めました。アーロンの業績を讃え、彼の「社会変革」を求める願いを引き継ぐための、さまざまな追悼集会が、いま全国各地で企画されているからです。

その皮切りが1月19日(土曜日)にニューヨークのクーパー・ユニオン(Cooper Union)で開かれ、新たな感動を呼び起こしました。そのライブ映像は下記サイトで視聴することができます。
Aaron Swartz Public Memorial Service at Cooper Union 
http://www.democracynow.org/live/democracy_now_livestream_of_aaron_swartz

この追悼集会の最後に,Taren Stinebrickner-Kauffman(アーロンの連れ合い=パートナー)がおこなった挨拶が特に感動的でした。

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しかし実はニューヨークの感動的な追悼集会よりもさらに感動的だったのは、1月16日にシカゴ郊外で開かれた葬儀集会でした。ここにはインターネットWWWの創設者であるTim Berners-Leeも駆けつけ、はるか年下のアーロンを電脳界の「長老」と呼び、弔辞で次のように語ったのでした。

「初めて出会ったとき天才少年はなんと14歳でした!」「彼ほど倫理的に潔癖な人物には出会ったことがありません」

「彼は新しい 電脳コードを書くことによって・・・世界の変革が可能だということを知っていたのです」「最後の最後まで彼は正しいことのために闘っていました」


そして葬儀が終わったあとの記者会見で、「アーロンにたいする政府の訴追は『法と正義をねじ曲げる全くの茶番劇』だ」とすら述べていました。

Berners-Lee Calls Aaron Swartz’s Prosecution ‘Travesty of Justice’
http://go.bloomberg.com/tech-blog/author/asapountzis/

しかし、直接に葬儀の模様を報じたRTの記事を読んでもらった方が、私の下手な説明よりもずっとその場の雰囲気が分かってもらえると思いますので、以下に記事の翻訳を載せておきます。

そうすれば、アーロンがマイクロソフト社のビル・ゲイツやアップル社のスティーブ・ジョブズとは違って、いかに金銭欲や出世欲とは無縁な人物であったかもお分かりいただけるのではないかと思うのです。

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http://demandprogress.org/

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アーロンは政府に殺されたのだ
アーロン・スウォーツ(Aaron Swartz)の感動的な葬儀

'Aaron was killed by the government' -
Robert Swartz on his son's death
16 January 2013
http://rt.com/usa/news/aaron-swartz-funeral-chicago-059/


IT活動家アーロン・スウォーツAaron Swartzの父親が、息子の死の責任はアメリカ検察官にあると非難している。以下は、シカゴ郊外での感動的な火曜朝の葬儀のようすを、RTのアンドリュー・ブレイクが報じたものである。

アーロン・スウォーツ(26歳)は金曜日11日、死亡しているのが発見され、自殺と報じられた。スウォーツは、インターネットを誰にでも使いやすくオープンなものにすることをめざすソフトウェアの開発に貢献し、またReddit.comとDemand Progressの両方の共同開発者でもあった。これらはウェブ上でもっとも訪問者の多いサイトであり、どちらも高く評価されている活動団体でもある。

しかし火曜日(16日)の葬儀では、スウォーツのIT技術への情熱や彼のまったくの無私無欲さを、友人、家族、愛する人たちは思い出している。その一方で、参列者たちは近年この活動家を悩ましていた恐るべき法的苦難を認めざるをえなかった。

2011年、コンピュータ不正行為防止法(Computer Fraud and Abuse Act)という名目で、数件で、連邦検察官はスウォーツを告訴した。もし有罪となれば彼を35年以上刑務所に送ることが可能になる犯罪である。政府によれば、スウォーツはマサチューセッツ工科大学の建物に侵入し、JSTORから数百万件の学術研究論文をダウンロードし、おそらくそれを無料で配信する意図であった、という。

イリノイ州ハイランドパークにあるセントラルアベニュー・ユダヤ教会堂での、火曜日の葬儀で、「アーロンは自殺したのではない、政府に殺されたのだ」と、父親ロバート・スウォーツRobert Swartzは語った。「世界をよりよき場所にした人間が政府によって死へと追いやられたのだ」

90分以上もつづいた葬儀のあいだ、「グーグル検索」「アノニマス」「ハッカー」「コンピュータ不正行為防止法」といった言葉が何の違和感もなく語られ、そういった言葉が葬儀に出てくるのは当然であるかのようだった。

スウォーツのパートナー、Taren Stinebrickner-Kauffmanタレン・スタインブリックナー=カウフマンは、泣き笑いながら語った、

最近のアーロンの懐かしい思い出のひとつは、ほんの数週間前の早朝の出来事だった。「絶対に解いてみたい高等代数学の方程式があるから1~2時間ほど僕につきあってくれ」と言ってきかなかった、というのだ。

他のひとたちも一様に語ったことだが、彼女の弔辞のなかでも取り上げられたのは、電脳技術の天才に最も近しいひとたちにとって、スウォーツは、社会変革を強く主張して止まない人物だった、ということだった。

「アーロンは私たち一般民にとって私たちが知っていると思っている誰よりも大きな存在でした」とタレン・スタインブリックナー=カウフマンは語った。ニューイングランド出身の活動家たちの、強い結束で結ばれたサークルをとおして、彼女はスウォーツと知り合った、という。

「アーロンは本当に世界を変革したいと望んでいました」と彼女は語った。富や名声を得ることはアーロンにとって二の次だった。

彼に近しいひとが一様に語ったのは、このような彼の善意にもかかわらず2011年に起訴されて以来忌まわしくもかれに襲いかかろうとしていた重罪判決の可能性のことだった。

この数週間は「彼はとても疲れ切っていました」、とタレンは思い起こす。「彼は私に言っていました、“僕はずっとこんな不快な気分で生き続けなければならないのだろうか”と」

しかしスウォーツが亡くなった今、彼が信じられないほど情熱をかたむけていた理念を推進する事業は、アーロンの同志であり仲間である私たちの肩にかかっている、と彼のパートナーは言う。

「私たちが今すぐ行動を起こし世界を変えること以外に、アーロンが望むことは何もないのです」と彼女は言った。そしてスウォーツはもうその中にいないにしても「正義のために結集しつづけてほしい」と彼もその一員であった社会に呼びかけた。

もし社会が力を結集し、彼の主張を推進させることができるなら、アーロンのような「無実の若者を、検察官が追跡しつづけることを止めさせることができるのです」と彼女は語った。

弔辞の他の部分で、タレン・スタインブリックナー=カウフマンは、スウォーツに告訴状を提出したマサチューセッツ地区担当の連邦検事[Carmen Ortiz]とマサチューセッツ工科大学[MIT]を厳しく批判した。

というのは、MITにその気さえあれば、そのハッキング事件を連邦政府が追い続けるのを止めさせることができたはずだとも言われているからだ。


http://www.netrootsnation.org/profile/taren-stinebricknerkauffman/
http://showbizdaily.net/celebrity-bio/taren-stinebrickner-kauffman-is-aaron-swartzs-girlfriend-who-found-him/

マサチューセッツ地区担当の連邦検事の事務所が音頭をとってすすめた「間違った人物描写」が、息子の死を招く大きな要因になった、とスウォーツの父親が語った。

なぜなら、マイクロソフト社のビル・ゲイツBill Gatesやアップル社のスティーブ・ジョブズSteve Jobsは世間からコンピュータ界の理想像だとして偶像視され拍手喝采を受けているが、連邦政府の観点ではなく世界を全体的観点から見ると、息子のほうが彼らよりもはるかに精錬潔白だったとロバート・スウォーツRobert Swartzは語った。

スウォーツ氏が思い起こしていたのは、かつて彼がアップルと一緒に仕事をしていたころ、ジョブズ氏と彼の共同経営者スティーブ・ウォズニアック氏Steve Wozniakが、小さな「ブルーボックス」[長距離電話料金をごまかす装置]を売ることで、「電話会社に詐欺を働いていたことがあった」という事実だった。

というのは、実をいうと電子装置は、国中の誰でもが長距離電話を無料で使うことができるものだったからだ。また、マイクロソフトのBASICをゲイツ氏が開発したといっても、それは全くの「未完製品」だった、とスウォーツ氏は語った。

「こういう人物が、我々の文化のなかでは、もてはやされ英雄視されているのです」と彼は語った。

「それにたしてアーロンがやったことはどうでしょう。法的には全く問題ではなかったのに彼はそれによって破滅させられました」と彼は参列者に問いかけた。

スウォーツ氏はまた、MITに対しても厳しい言葉を浴びせた。MITはJSTORと違って犯罪的ハッカーだとして無情にもアーロンへの訴追を取り下げなかったからだ。

「私たちはMITにたいして思いやりを示してくれと何度も何度も頼みました」が、「思いやりより組織的懸念のほうを重要視したのです」と彼は語った。

アーロンが死んだあと、ハッカー集団のアノニマスは無許可アクセスをおこなって、MITのサーバーに「アーロンへの献辞」を掲示した。それは火曜日の葬儀のあいだけ見ることができたもので、電脳文化のなかで最も尊敬されている人物たちからの賛辞も含まれていた。

World Wide Webの産みの親 Tim Berners-Lee

             Reddit.com を創設した頃のAaron Swartz(19歳)

たとえばイギリス人科学者でWWW(World Widw Web)を開発したティム・バーナーズ=リーTim Berners-Lee [現在、MIT教授]は、葬儀のあいだアーロン・スウォーツのことを電脳情報社会の「長老an elder」と呼んだ。バーナーズ=リー氏が最初にスウォーツに出会ったとき、若き天才はわずか14歳!だったという。

「彼ほど倫理的に潔癖な人物には出会ったことがありません」とバーナーズ=リーは語った。「彼は電脳コードを書くことによって・・・世界変革が可能だということを知っていたのです」

「最後の最後まで彼は正しいことのために闘っていました」とバーナーズ=リーは言う。

学者であり同時に政治活動家であるローレンス・レッシグ [Lawrence Lessig、ハーバード大学教授]は、葬儀の席上で、アーロン・スウォーツと知り合って10年以上にもなると述べ、政府がアーロンを訴追しようとするのは全く的外れで「白痴の見本」だと非難した。

またJSTORの件でアーロンの弁護士を務めるエリオット・ピーターズElliot Peters は、アーロンの友人たちは今や、「自由と公正を求める情熱」と「権力への不信」にかけては比類のない人物を失ってしまった、と語った。ピーターズ氏もまた弔辞のなかで権力への不信をくりかえし語り、そのなかでアーロンの死には連邦検察官にも責任があると強く非難した。

「悲しいことだがアーロンは彼らに事件をでっちあげる機会を与えてしまった」と彼は語った。「“してやったり!”と自慢できることを」

「彼らにはアーロンが実際どんな人物なのか、あるいは彼が何をやっていたのかなど、どうでもよかった」とピーターズ氏は語った。と同時に、アーロンに会ったとき「若くて小柄で、ああ何て素晴らしい人物!」と思ったと述べ、政府に立ち向かった彼の理念を、独立革命期の愛国者の主張に喩(たと)えた。

葬儀の終わりの挨拶で「アーロンは今でもずっと生きている、善を求める声として」と父親は語った。「息子は私心を捨て、世界をすべてのひとにより良き場所にしようとして、短い人生を捧げました」

「無私無欲の…」というのが葬儀の間ずっと多くの人の口から何度となく出てきた形容詞だった。参列者によれば、他者のことを一貫して第一に考えることがアーロンの飛び抜けた特質だったという。

シェークスピアのマクベスを引用して、ピーターズ氏は「ここに参列された皆さんの悲痛さはアーロンが成し遂げた仕事の大きさと等しいはずはありません。もしそうなら皆さんの悲しみは永遠に終わることがないことになってしまいますから」とも語った。

葬儀の締めくくりで父親のスウォーツ氏は、「絶望が深ければ深いほど(そして実際みな絶望しているのですが)私たちはみな世界の変革に参画しているのだということを心にとめておかねばなりません。バーナード・ショウが言っていたように“希望をいだいたことのない人は絶望することもない”のですから。だから私たちは決して歩みを止めません」と語った。

アーロン・スウォーツの追悼式は全米各地で開かれる予定で、今その計画が進行中である。今週末にはニューヨーク市で計画されていて、タイムズスクウェアでおこなわれる追悼式には、数百人をこえる人びとが集まるものとみなされている。

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<註1> 以上で翻訳を終わりますが、この翻訳は下記サイトに単独でも載せてあります。
http://www42.tok2.com/home/ieas/ (なお訳文は連れ合いの下訳に私が手を入れたものです。)
<註2> 日本でも「情報処理の高度化等に対処するための刑法等の一部を改正する法律」いわゆる「コンピュータ監視法」が、2011年3月11日に閣議決定、同年4月1日に国会に上程、5月31日衆議院本会議にて可決、6月17日に参議院本会議にて可決しました。
しかし、この法案は、アーロン・スウォーツのような優れたサイバーネット活動家が日本にいなかったため、アメリカの法律と同じような危険な条項があったにもかかわらず、原発事故のドサクサに紛れて可決成立してしまいました。
 その危険性は下記の日本弁護士会「会長声明」(2011年[平成23年]5月23日)にみられるとおりです。したがって、この法案でアーロンのような犠牲者が日本でも出ないように、厳重に監視していく必要があります。

「情報処理の高度化等に対処するための刑法等の一部を改正する法律案」について慎重審議を求める会長声明
http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/statement/year/2011/110523.html
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