電脳技術の天才Aaron Swartz の死を考える(4)――世界54カ国にCIA秘密拷問所!! アメリカ市民すら標的にする「暗殺リスト」、内部告発者をひとりたりとも逃そうとしないオバマ

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世界54カ国に広がるCIAの拷問


http://www.democracynow.org/2013/2/7/globalizing_torture_ahead_of_brennan_hearing

[出典] Globalizing Torture: CIA Secret Detention and Extraordinary Rendition
http://www.opensocietyfoundations.org/projects/globalizing-torture
[動画2分] The Story the CIA Doesn’t Want You to Talk About
http://www.youtube.com/watch?feature=player_embedded&v=PkSCYFyN8hg

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私は前回のブログ「電脳技術の天才Aaron Swartz の死を考える(3)」を次のように結びました。
 実は、アーロンの自殺事件は単に「知的所有権」の問題だけでなく、背後にもっと大きな問題がひそんでいたのではないかと私は思っています。
 さもなければ、「オープンキャンパス」「オープンアクセス」を売り物し、アーロンの願う方向へとその先頭を走っている大学で、このような事件が起きるはずがなかったのです。
 JSTORが告訴を取り下げ、アーロンの理念に沿った改革を進めていたにもかかわらず、MITが告訴をとりさげなかったのは何故なのか。そこにこの事件の謎・本質を解く鍵がひそんでいる、と私は考えています。
 しかし、もう十分に長くなりすぎていますので、次回に回したいと思います。そのときには、それが原発事故と英語教育にどう関わってくるのかも(気力・体力が許せば)、言及できればと思っています。


そこで今回は上記の点についてさらに私見を述べてみたいと思います。

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* 一般読者の皆さんへ: 以下では英文をたくさん引用してあります。しかし半分は自分のメモを兼ねています。時間のない方は飛ばして読んでください。
* 英語教師の皆さんへ: 授業における会話ブーム(しかも覚えてもすぐ忘れる)のおかげで、生徒どころか英語教師の「読む力」も大きな落ち込みを見せています。この英文記事が「読む力」の回復に少しでも役立てば幸いです。
* 教育研究者の皆さんへ: 最近わたしは、英語を学ぶ目的の一つは、アメリカの実像を知り日本を「第二のアメリカ」にしないことにある、と考えるようになりました。以下は、今まであまりにも「虚像のアメリカ」を教えてきた私の反省が込められています。
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CC(Creative Commons)の創立者ローレンス・レッシグ

www.openeducational.net

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私は前回のブログで、ハーバード大学法科大学院(Law School)の教授であり、同大学倫理委員会(the Edmond J. Safra Center for Ethics at Harvard)委員長でもあったレッシグ教授(Lawrence Lessig)が、アーロンの死について次のように述べていることを紹介しました。
彼は「いわば政府によるいじめ」(a kind of bullying by our government)によって崖っぷちに追い詰められたのだ。

レッシグ氏は、知的財産をなるべく公有化して世界を自由で豊かなものにしようとする団体「クリエイティブ・コモンズ」(CC:Creative Commons) の創立者であり、10代のアーロンがその構築に協力したことも、以前のブログで既に紹介したとおりです。

そのレッシグ氏が、アーロンが自殺した直後のインタビュー(DemocracyNow!)で次のように語っています。
http://www.democracynow.org/2013/1/14/an_incredible_soul_lawrence_lessig_remembers

JSTORは「我々は起訴を望まない。アーロンを起訴するつもりはない。犯罪者として起訴することは望んでいない」と言った。しかしMITマサチューセッツ工科大学は態度を明確にしなかった。

連邦政府はどうかというと、知ってのとおり当時、米軍によるイラク市民の虐殺をウィキリークスに暴露したとされるブラッドリー・マニング上等兵の問題をかかえていた。だから政府はアーロンの事件を非常に重視した。これがインターネットを使って情報を盗み出す典型例になりかねないと考えたのだ。

だから彼らはアーロンにたいして信じがたいほど馬鹿げた起訴をおこない、12項目以上の訴追項目を並べ立てて重罪にすると脅迫した。知ってのとおり、それは何十年にもわたる禁固刑に処するというものだった。
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<註> 原文は次のとおりです。
http://www.democracynow.org/2013/1/14/an_incredible_soul_lawrence_lessig_remembers
  JSTOR said, "We don't want to prosecute. We don't want to civilly prosecute. We don't want you to criminally prosecute." But MIT was not as clear.
  And the federal government—remember, at the time, there was the Bradley Manning and the WikiLeaks issue going on. The federal government thought it was really important to make — make an example.
  And so, they brought this incredibly ridiculous prosecution that had multiple—you know, I think it was something like more than—more than a dozen counts claiming felony violations against Aaron, threatening, you know, scores of years in prison.
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つまり、アーロンの罪は何十年にもわたる投獄に価するものではなく、むしろオバマ政権による政治弾圧だったというのが、レッシグ氏の意見です。これは単に氏の見解ではなく、アーロンの葬儀に参加したひとたちの共通した思いであったことは、RTの報道記事でも明らかでしょう。

「アーロンは政府に殺されたのだ」
アーロン・スウォーツ Aaron Swartz の感動的な葬儀集会

http://www42.tok2.com/home/ieas/AaronSwartz.pdf

また政府自身が400万ドルの罰金と35年にもわたる禁固刑が馬鹿げていると思ったからこそ「禁固6か月」という司法取引を持ち出したのでしょうか。しかし、そもそもアーロンがおこなった行為は犯罪ではなかったのですから、彼らの主張する「微罪」を認めて服役することすら、たとえ短期間であっても、アーロンにとって耐えがたいことでした。

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アーロンの行為が、現行のコンピュータ犯罪取締法CFAA(Computer Fraud and Abuse Act)に照らしても犯罪に該当しないことは、アレックス・ステイモスAlex Stamos氏が、次のように語っていることを知れば、いっそう明らかでしょう。

アーロンがやったことは何千人ものひとが毎年MITでやっていたことをやっただけだ。MITに行き、そこで文書を見るという行為だ。確かに彼がやったことは普通のひとよりかなり広範囲だった。彼は当局が思っていた以上のことをしたのだろう。

しかし問題はどの地点で「認められた "authorized" 」範囲を超えたか、である。

現行法の信じがたいほど曖昧な "authorized"の定義では法的には何の意味もない。検察官が相手の人物や相手の行為を気に入らなければ、いつでも「コンピュータへの不正侵入」やシステムの乱用として告訴できるからだ。

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<註> 原文は次のとおりです。
Exclusive: Aaron Swartz's Partner, Expert Witness Say Prosecutors Unfairly Targeted Dead Activist
http://www.democracynow.org/2013/1/17/exclusive_aaron_swartzs_partner_expert_witness
  What Aaron was doing was exactly the same activity that thousands of people do at MIT every year: He was going and looking at documents. Now, he was doing it at a much wider scale. He did it more than they seemed to want. But at what point does he exceed authorization?
  And by having these incredibly broad definitions and a word that doesn't really mean anything, like "authorized," we end up in a situation where if a prosecutor doesn't like you or doesn't like what you did, if it happened to use a computer, they can find a way to call it "hacking" and an abuse of that system.

ステイモス氏は、インターネット・セキュリテイ会社Artemis Internetの主任技術員であり、日ごろはゴールドマン・サックスGoldman Sachsのような巨大金融企業を守る仕事をしてきたひとです。

ですから主義・主張からすれば、アーロンの考え方や生き方はとは正反対の側にいる人物です。

その彼が、友人から頼まれてアーロンの事件を調べているうちに、アーロンの弁護をするための最も重要な証人として法廷に立つ決意を固めるようになりました。

その矢先にアーロン自殺の報が飛び込んできたのでした。そこで上記DemocracyNow!のインタビューとなったわけです。

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巨大「電脳倉庫」Megauploadの創立者Kim Dotcom

http://rt.com/usa/news/kim-dotcom-interview-mega-673/print/
Megaupload founder Kim Dotcom speaks during the launch of his new website at a press conference at his mansion in Auckland on January 20, 2013. (AFP Photo/Michael Bradley)

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要するに、スティモス氏の言によれば、現行の「コンピュータ犯罪取締法」は、ねらいをつけた人物を司法当局がいつでも逮捕できるように、わざと曖昧な文章にしてあるとも考えられるわけです。

さらに、これと同趣旨の発言をしている人物がキム・ドットコムKim Dotcom氏です。

私はアーロンの事件を通じて初めてドットコム氏を知りましたが、ドイツ生まれの彼も、ジュリアン・アサンジやアーロン・スウォーツと同じように、少年時代から電脳技術に長けていたようです。

十代の頃に、NASA、ペンタゴン、シティバンクなどのインターネット・セキュリテイを出し抜いて有名になったそうですが、その後はインターネットを駆使して巨万の富を築きました。

しかし、氏の会社の一つメガアップロードMegauploadが不正をはたらいているとして、居住地ニュージーランドの警察から家宅捜査を受けました。

このメガアップロードは、様々なファイルや動画を保存する一種の「電脳倉庫」で、その利用者は世界で1億5千万人の利用者がいたそうです。ところが、この「倉庫」にハリウッド映画やアメリカ音楽の海賊版が大量に含まれているという容疑で家宅捜査がおこなわれ、閉鎖に追い込まれたのです。

しかしニュージーランドの永住権を得ているにもかかわらずニュージーランドの法律に反して氏に対する盗聴がおこなわれていたことや、アメリカFBIの強引な要請を受けて家宅捜索や物件押収おこなわれたことが暴露されるにつれて、次々と有罪判決が覆されるに至っています。

新聞社の中には「何時からニュージーランドはアメリカの "友人" ではなく "奴隷" になったのか。何時でもアメリカの言うことに協力することは独立国ニュージーランドの名を汚すものだ」という社説をかかげたところすらありました。

"Political round-up: Growing anger over Dotcom fiasco"
http://www.nzherald.co.nz/opinion/news/article.cfm?c_id=466&objectid=10836888

どこかの国の総理大臣にも聞かせてやりたいことばではないでしょうか。

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新しい「電脳倉庫」MEGAの立ち上げを披露する舞台上のKim Dotcom

http://rt.com/usa/news/kim-dotcom-interview-mega-673/
Megaupload founder Kim Dotcom (C) launches his new file sharing site "Mega", with dancers, in Auckland January 20, 2013. (Reuters/Nigel Marple)

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それはともかく、このような経歴をもつドットコム氏が、アーロンの事件を受けて、RussiaTodayのインタビューで次のように次のように語っています。
http://rt.com/usa/news/kim-dotcom-interview-mega-673/print/

ハリウッドはオバマの選挙運動にとって重要な献金元だ。それは単にお金だけではなくメディアから支持を得る点でも重要だからだ。ハリウッドはメディアに登場する有名人をたくさんかかえているからね。

彼ら著名人からの推薦を得るためにもオバマ氏は映画業界の言うことを聞かねばならないってわけだ。

はっきりさせておきたいのは俺はビジネスマンだってことだ。俺は金儲けのために電脳倉庫Megauploadを始めた。債券市場に上場できる会社が欲しかった。俺は企業人であってアーロン・スウォーツとはまったく違う。

アーロン・スウォーツは俺のヒーローだが、俺と違ってまったく無私無欲の人間だ。アーロンは俺とは対局の場にいる人物だ。

知ってのとおり、ホワイトハウスは「インターネット監視法案」SOPAを支持してきた。それを阻止できたのは民衆の力であり、その先頭にたって頑張ったのがアーロン・スウォーツだった。

彼の力でSOPAは阻止できた。SOPAを阻止したのはアーロンだった。だから彼が狙われたんだ。彼は政治的な標的になった。それで諸々のことが彼に襲いかかった。

あのような若い天才を、あのようなやり方で追い詰める正当な理由は何もない。あるとすれば政治的な理由だけだ。なぜならホワイトハウスはSOPAを欲しかったからだ。

オバマはハリウッドにSOPAを約束したけれど結局、失敗した。無理にSOPAを強行すると自分の再選にひびくと思ったんだ。SOPAに反対する多くの人たちがオバマに票を投じなくなるからね。それで強行できなくなった。

いずれにしても彼らにとってはすべてがゲームだ。彼らにとって俺たちは「缶蹴り遊び」で蹴りまくられる缶みたいなものさ。

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<註> 原文は下記のとおりです。ただしこれは20分以上にわたるインタビューの一部です。インタビューの全てについては該当URLを参照してください。
1) 'Hollywood is a very important contributor to Obama'
http://rt.com/usa/news/kim-dotcom-interview-mega-673/print/
  Hollywood is a very important contributor to Obama's campaign. Not just with money, but also with media support. They control a lot of media: celebrity endorsements and all that.
2) 'I’m not Aaron Swartz. Aaron Swartz is my hero. He was selfless'
http://rt.com/usa/news/kim-dotcom-interview-mega-673/print/
  Let me be clear: I am a businessman, okay? I started Megaupload as a business to make money. I wanted to list the company. I am an entrepreneur, alright? I'm not Aaron Swartz. Aaron Swartz is my hero. He was selfless. He is completely the opposite of me, but I'm a businessman.
3) "We are all the little puppets that they think they can kick around"
http://rt.com/usa/news/kim-dotcom-interview-mega-673/print/
  And you know the White House was supporting SOPA, and only when the masses came together — and Aaron Swartz: he stopped SOPA. With his efforts, he stopped SOPA. And he became a target. A political target, okay? And that's why all these things happened to him.
  There is no reasonable cause behind going after a young genius like that in the fashion they did. It's political.
  Because the White House wanted SOPA. They promised it to Hollywood and they failed and they couldn't go ahead because the White House was afraid if they keep pushing hard and they keep pushing it forward, that the people who oppose it are not going to vote for Obama in the reelection campaign.
  So it's all a game to them really and we are all the little puppets that they think they can kick around.

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秘密の拷問刑務所として使われたとされるリトアニア政府情報部訓練センター

http://rt.com/news/countries-helped-cia-render-472/
The training centre of the Lithuanian State Security Department, the country's domestic intelligence agency, in Antavilis near Vilnius November 17, 2009. Lithuanian lawmakers investigated allegations that the site housed a secret CIA prison for al Qaeda suspects in 2004-2005 (Reuters / Ints Kalnins)

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要するにドットコム氏は、「アーロンの奮闘でインターネット監視法案SOPAは廃案に追い込まれ、それが映画業界や音楽業界の利益を損ねた。それで彼はオバマ政権から狙われることになった」と述べているわけです。

ハリウッド映画業界の圧力でFBIが動き、その結果GCSB(ニュージーランド政府・通信保安局)から家宅捜査を受けて財産をすべて奪われたドットコム氏にしてみれば、アーロンが狙われた理由が透き通るように見えたのでしょう。

しかも、彼にたいする有罪判決が次々と覆されているとはいえ、アサンジと同じように、いまだにアメリカに移送されて裁判を受けることになるかも知れない可能性を残しているドットコム氏にしてみれば、オバマ氏とその裏で暗躍する業界に我慢がならなかったのでしょう。

しかし私は、ここでドットコム氏があげている理由(映画業界や音楽業界からの圧力)だけでなく、もっと深い理由があったのだと思っています。

というのは、無人爆撃機ドローンDroneを使って世界中に暗殺や秘密の戦争を拡大しているオバマ氏にしてみれば、政府がやっている悪事を外部にもらすことに手を貸す人物は、誰ひとりとして許しておけないはずですから。

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秘密CIA拷問刑務所(ポーランド)の近くにある小さな空港&見張り台

http://rt.com/news/countries-helped-cia-render-472/
The European Union, human watchdogs identified the airport as a potential site which the CIA used to transfer al Qaeda suspects to a nearby prison. (Reuters / Kacper Pempel)

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私がこのブログを書いている最中にも次々と恐ろしい情報が飛び込んできます。その最たるものが「世界54カ国が拷問Torture に協力し、世界で136人ものひとが囚人になっていたという報告でしょう。

Report Tallies 54 Countries, 136 Prisoners in CIA Torture Program
http://www.democracynow.org/2013/2/5/headlines#251

その他にも恐ろしい記事が次々と届いています。たとえば「サウジアラビアに無人爆撃機の秘密基地があった」「オバマ氏はサイバー攻撃をする権利を認めた」「漏洩したメモには "暗殺者名簿 Kill List" を合理化する理由が書かれてあった」といった記事です。

Report: U.S. Has Secret Drone Base in Saudi Arabia
http://www.democracynow.org/2013/2/6/headlines#260
Obama Admin Enacts Right for Preemptive Cyberattacks
http://www.democracynow.org/2013/2/4/headlines#240
Leaked Memo Shows Expansive Rationale for U.S. "Kill List"
http://www.democracynow.org/2013/2/5/headlines#250

ですから、オバマ氏としては政府の暗い秘密を暴露することに少しでも関わった(あるいは関わる恐れがある)人物は誰ひとりとして許せないのです。

その標的として一番有名になったのが既に何度も紹介しているブラッドリー・マニング上等兵とウィキリークスの創始者ジュリアン・アサンジでしょう。

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<註> 前回のブログ「電脳技術の天才Aaron Swartz の死を考える(3)」の冒頭で、アーロンを自殺に追い込んだ政府にたいして、「アノニマスAnonymous」と呼ばれるハッカー集団が、政府の「量刑委員会」ホームページに抗議の動画を送りつけたことを紹介しました。
 オバマ氏は国家としてのサイバーテロを許可したようですが、個人がやると犯罪視され国家がやると無罪というのは、いかにも奇妙な話です。チャップリンの映画『殺人狂時代』に出てくる台詞「ひとりを殺せば殺人だが[戦争で]たくさん殺せば英雄だ」を思い出してしまいました。
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マニング上等兵と軍用ヘリから爆撃される直前のイラク市民


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ブラッドリー・マニング上等兵は、アメリカ兵が軍事ヘリコプターからイラク市民を爆撃し、子どもも含めて何人も殺したことを暴露したために逮捕され、「スパイ防止法」(Espionage Act)違反の疑いで軍事法廷にかけられています。

ではアーロン・スウォーツは何を理由に追い詰められたのでしょうか。

もちろんアバマ氏が成立させたいと思っていたインターネット監視法案SOPAを、アーロンが阻止したことも、ドットコム氏が言うように、大きな理由であったに違いありません。

しかし私にはそれ以上の大きな理由があったに違いないと思ってきました。私の仮説は次のようなものです。

1)電脳技術の天才だったアーロンは、単に学術論文が企業による儲けの対象になるべきではなく無料で学生・市民・研究者に公開されるべきであるというだけではなく、本来は国民のものであるべき情報が国家機密として密室に閉じこめられていることに我慢できなかった。

2)したがってアーロンは、戦争犯罪を告発したマニング上等兵やCIA職員による内部告発を援助したいと思っていただろうし、その内部告発を公表する組織ウィキリークスの創始者ジュリアン・アサンジの活動も高く評価していただろう。さらに言えば、できればアサンジの活動を電脳技術の側面から援助したいと思っていたかも知れない。

3)オバマ氏の戦略によってウィキリークスは、今はインターネットを通じた献金が止められ資金難に陥っているだけでなく、アサンジ自身もロンドンのエクアドル大使館に閉じこめられて半身不随の状態である。しかしアーロンは電脳技術の天才だから、このような能力がアサンジの天才的能力と合体すれば、ウィキリークスにどのような新しい戦略が生まれるか予想できない状態になりかねない。

5)したがってオバマ政権としては、アサンジの能力とアーロンの能力が合体しないうちに、あらゆる口実をつくりだしてアーロンも活動不能の状態に追い込みたかった。その絶好の口実となったのが、JSTOR=MIT文献のダウンロード事件だった。

6)JSTORが訴追を取り下げたにもかかわらずMITはなぜ取り下げなかったのか。「MITの研究資金のほとんどはペンタゴンから来ているにもかかわらず、ハーバード大学よりもはるかに自由度が高い大学だった」とは、チョムスキーがよく述べていることだが、オバマ氏が大統領になってからそれが一変した。「言うことを聞かなければ資金をストップするぞ」というわけである。

7)ドットコム氏が逮捕され、巨大な「電脳倉庫」メガアップロードが破壊されたのも、ウィキリークスへ送られてきた巨大な情報がその「電脳倉庫」に保管されている可能性があると疑われたからではないか。だからこそ資財のすべてが没収されたのであり、彼の身柄をアメリカに移すようアメリカ政府は執拗に画策しているのだ。

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<註> MITに関する私の仮説については、「ブッシュ時代よりもオバマ氏になってからの方が悪くなった」という多くの事例を例証として、さらなる説明が必要なのですが、ここでは割愛させていただきます。しかし「“金は出すが口は出さない”という政策がMITから数々の素晴らしい研究成果が産まれる土台になっていた」というチョムスキー(MIT終身教授)の指摘は極めて興味あるものです。日本の文科省や大学経営者に聴かせてやりたい言葉ではありませんか。

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アーロン・スウォーツとジュリアン・アサンジ

http://rt.com/usa/news/wikileaks-aaron-swartz-organization-448/print/


以上が私の仮説ですが、私がこのようなことを漠然と思っていたところ、私の仮説を裏づけるような報道が飛び込んできました(Russian Today、21 January, 2013)。

WikiLeaks reveals association with Aaron Swartz
http://rt.com/usa/news/wikileaks-aaron-swartz-organization-448/

この報道によると、ウィキリークスはCNETの記者に、「情報源が誰か分からないようにウィキリークスには厳しい設定がされているので証明はできないが、アーロンがアメリカ政府の悪事を暴く情報源のひとつだった可能性がある」と語っています。

要するに、オバマ政権はアーロンがアサンジ=ウィキリークスが何らかの接触をしていたのではないかと疑っていて、それがアーロンへの追求をいっそう厳しいものにした可能性があるというのです。

この報道で私の仮説「アーロンは電脳技術の側面でウィキリークスを援助したいと思っていた」がほぼ正しかったことが明らかになったわけですが、そうなると「俺が狙われているのはオバマに映画産業から圧力がかかっているからだ」とドットコム氏が言っているのも、半分だけ正しいことになります。

もちろんアバマ氏はハリウッドからの巨大な政治献金が欲しいでしょうし、メディア・コントロールの一環として映画界と太く強いパイプを維持することは極めて大切なことですが、あれだけ頭のよいオバマ氏のことですから、それ以上の深淵謀慮がはたらいていたと見る方が正しいのではないでしょうか。

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元CIA職員ジョン・キリアクーJohn Kiriakou

http://rt.com/usa/news/kiriakou-torture-whistleblower-prison-term-211/print/

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オバマ氏が政府批判をする人物をいっさい許さないことは、内部告発者(wistleblower)をことごとく「スパイ防止法」の容疑で逮捕していることでも明らかです。その典型例が元CIA職員ジョン・キリアクーJohn Kiriakouの逮捕でしょう。

彼はCIAの拷問を内部告発して逮捕され、2013年1月25日に「30か月(2年半)の禁固刑」の判決を受けたのですが、彼は上記のインタビューで次のように語っています。

拷問を命令したり拷問した人物を逮捕するのではなく、それを告発した人物を「スパイ罪」で逮捕するとは何ごとか。

「スパイ防止法」が1917年につくられてから「スパイ罪」で逮捕されたのはたった3人なのに、オバマ氏は大統領になってから私を含めて7人も「スパイ罪」で逮捕している。

おまけにブッシュ大統領の時代に「暗殺の帝王」"assassination czar")と呼ばれ、拷問や無人爆撃機による暗殺の立役者だった人物[ジョン・ブレナン]を、次のCIA長官に指名するとは信じがたいことだ。

今やアメリカは警察国家・監視国家になりさがってしまった。

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<註> 上記インタビューの全文およびその全訳は次のとおりです。私の要約では伝えきれなかったことが多く盛り込まれています。時間があるときにぜひ覗いていただければと思います。

'US a police state, Obama consciously allows torture' – CIA veteran John Kiriakou
http://rt.com/usa/news/kiriakou-torture-whistleblower-prison-term-211/
「オバマは意図的に拷問を許可している」
元CIA職員ジョン・キリアクーが警察国家アメリカを語る

http://www42.tok2.com/home/ieas/kiriakou.html

しかし日本政府も、情報隠しをして国民を危険に晒すことにかけてはアメリカ政府に劣らないことは、福島原発事故で一挙に明らかになりました。日本版ウィキリークスが今ほど求められているときはないのかもしれません。
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狐狸庵居士(田舎の国立大学を2010年に定年退職)

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