電脳技術の天才Aaron Swartz の死を考える(5)――ツツ大司教「アメリカ人以外は人間ではないのか」、元CIA職員「拷問は間違った情報を手に入れる最良の方法だ」

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必見:Waterboarding
これがいかにひどい拷問であるかを自分の眼で確かめてください。

http://www.youtube.com/watch?v=4LPubUCJv58(動画5分強)

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実は「電脳技術の天才Aaron Swartz の死を考える(5)」の最終回を書いて、今回の連載を終わりにして、いよいよ英語教育の話題に移行するつもりでした。
しかし北朝鮮問題が日本の政情を大きく右旋回させそうな勢いなので、これに目をつぶるわけにもいかず、書いているうちにズルズルと長くなってしまいました。
ところが、これを今回のブログに入れたところ、「肝心の本論に行くつくまでの前置きが長すぎて息切れがするだけでなく焦点がぼけてしまう」というお叱りを受けました。
そこで、「北朝鮮問題」だけを切り取って別のブログ原稿にすることにしました。ご了解ください。
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ジェレミー・スケイヒル Jeremy Scahill



────────────────────────────────────────実は「電脳技術の天才Aaron Swartz の死を考える(5)」の最終回を書いて、今回のテーマを終わりにして、いよいよ英語教育の話題に移行するつもりでしたが、北朝鮮問題が日本の政情を大きく右旋回させそうな勢いなので、これに目をつぶるわけにもいかず、書いているうちにズルズルと長くなってしまいました。


さてアメリカ情勢ですが、オバマ大統領はブッシュ氏の時代から「暗殺の帝王」と呼ばれていた人物を、大統領になってすぐCIAの長官に任命しようとしたのですが、あまりにも反対が強かったので、当時は諦めました。

しかし大統領2期目を迎えたオバマ氏は、そのような今までの遠慮はかなぐり捨てて、自分の側近として「無人殺人機Droneの暗殺リスト」作成の先頭にたっていた人物ブレナンを、改めてCIA長官に指名しました。

この人事をめぐって上院情報委員会では公聴会がおこなわれましたが、委員長は初めから無人殺人機による暗殺を認める方向でブレナンに質問しているので、まったく追求の体(てい)をなしていませんでした。

ジャーナリスト、ジェレミー・スケイヒルJeremy Scahillは、この公聴会を傍聴して次のように述べています。戦争「民営化」の一貫としてアメリカ政府が雇った「悪名高い傭兵集団」 Blackwater の存在を暴いたことで一躍有名になったジャーナリストです。
ブレナンに対して核心を突くような質問をするものは誰もいなかった。Angus Kingや Ron Wydenのようになかなか良い質問をした議員もいたが、たとえば「CIAはアメリカ市民をアメリカ国内でも暗殺する権利があるか」といった質問をしたが、ブレナンはそれにノーアンサーで押し通した。そしてそれ以上の追及はついになかった。

ブレナンは暗殺の帝王assassination czarとして4年間もオバマに仕えたのに、議会での追及はまるで中古車の品定めをしている程度の議論でしかなかった。まるで歌舞伎芝居を見ているかのようだった。戦場では恐ろしい様相が展開しているのに、議会での質疑応答は目も覆わんばかりの惨状だった。


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<註> 英語原文は次のとおりです。
Jeremy Scahill: Assassinations of U.S. Citizens Largely Ignored at Brennan CIA Hearing
http://www.democracynow.org/2013/2/8/jeremy_scahill_assassinations_of_us_citizens
  Jeremy Scahill: Assassinations of U.S. Citizens Largely Ignored at Brennan CIA Hearing
"None of the central questions that should have been asked of John Brennan were asked in an effective way," says Jeremy Scahill, author of the forthcoming book, "Dirty Wars."
  "In the cases where people like Sen. Angus King or Sen. Ron Wyden would ask a real question, for instance, about whether or not the CIA has the right to kill U.S. citizens on U.S. soil, the questions were very good. Brennan would then offer up a non-answer. And then there'd be almost no follow-up."
  Scahill went on to say, "[Brennan] has served for more than four years as the assassination czar, and it basically looked like they were discussing purchasing a used car on Capitol Hill. I mean, it was total kabuki oversight. And that's a devastating commentary on where things stand."

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Barack Obama, 無人殺人機Drone


ジェレミー・スケイヒルにたいするインタビューでは言及されていませんが、上記の公聴会でもう一つ不思議なことがあります。

それは「アメリカ市民なのに正しい法的手続きなしで暗殺してよいのか」「イエメンのような外国ではなくアメリカ国内でも暗殺してよいのか」ということだけが問題とされていることです。

ジェレミー・スケイヒルは、上記のインタビューで、2011年に2週間も経たないうちに暗殺されたアメリカ市民のことを取りあげています。

公聴会では大統領が署名さえすれば誰でも無人機で暗殺できること(the so-called signature strikes)にたいする質問や議論は一切なかった。国籍がどうか、その人がどんな罪を犯したかが不明であっても、標的にしてよいという考えにたいする議論はなかった。

暗殺されたのは、起訴もされてないし裁判もないのにイエメンで暗殺されたアメリカ人=イスラム教説教師アンワル・アラキAnwar Awlaki、その息子で従兄弟と食事とをしていた16歳の少年、アラキと一緒に殺されたパキスタン系アメリカ人サミル・カーンSamir Khan――の3人だ。

Khanの家族がアメリカでFBIと接触したとき、何の犯罪も犯していないし起訴もされていない、とFBIが言っていたにもかかわらず、暗殺されたのだ。

しかし、アメリカ市民だから問題であって、イエメン人なら無人機で自由に殺してよいのでしょうか。

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<註> 原文は次のとおりです。
Jeremy Scahill: Assassinations of U.S. Citizens Largely Ignored at Brennan CIA Hearing
http://www.democracynow.org/2013/2/8/jeremy_scahill_assassinations_of_us_citizens
  There was no discussion at all of the so-called signature strikes—the idea that the U.S. is targeting people whose identities it doesn't know, whose actual involvement in terror plots is actually unknown.
  There was no discussion of the fact that the Obama administration authorized operations that killed three U.S. citizens in a two-week period in 2011, one of whom was a 16-year-old boy who was sitting and having dinner with his cousins in Yemen.
  No discussion of the case of Samir Khan, a Pakistani American who was killed alongside Anwar Awlaki. His family had met with the FBI prior to his death. The FBI told his family that Samir Khan was not indicted, that Samir Khan was not accused of a crime, and yet you have three U.S. citizens being killed.

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デズモンド・ツツ大司教


ジェレミー・スケイヒルが提起した問題を無視するわけにもいかず、議会はアメリカ市民の暗殺問題に関する特別法廷を設けるという案を出してきました。

しかしノーベル平和賞を受けた南アフリカ共和国のデズモンド・ツツ大司教は、この案に異を唱えて、ニューヨークタイムズ紙に手紙を送りました。

アメリカ合州国以外の地で暮らしているがゆえに、私たちの命はあなた方の命と同じ価値をもたないと言いたいのですか。

オバマ大統領は、標的がアメリカ人以外なら、法的手続きなど大して考慮せずとも、私たちを殺してもよいとする決定に署名できると考えているのでしょうか。

アメリカの最高裁は19世紀の黒人奴隷ドレッド・スコットと同じように私たちは人間として価値がないと、人類全体にたいして宣言したいのでしょうか。

全く信じがたいことです。

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<註> 原文は次のとおりです。
Desmond Tutu Blasts Idea of Special Court to Review Targeting of U.S. Citizens, Not Others
http://www.democracynow.org/2013/2/14/headlines#2145
  U.S. lawmakers have also floated the idea of creating a special court to review strikes on U.S. citizens.
  South African Nobel Peace Prize laureate Archbishop Desmond Tutu weighed in on that plan in a letter to The New York Times.
  He wrote: "Do the United States and its people really want to tell those of us who live in the rest of the world that our lives are not of the same value as yours?
  That President Obama can sign off on a decision to kill us with less worry about judicial scrutiny than if the target is an American?
  Would your Supreme Court really want to tell humankind that we, like the slave Dred Scott in the 19th century, are not as human as you are?
  I cannot believe it."

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水攻めWaterboardingで拷問される囚人


前回のブログでは、アメリカ政府による拷問を内部告発した元CIA職員ジョン・キリアクーJohn Kiriakouが、「スパイ防止法」違反という理由で有罪判決を受けたこと、その彼がCIA長官に指名されたブレナンについて次のように述べていることを紹介しました。

'US a police state, Obama consciously allows torture' – CIA veteran John Kiriakou
http://rt.com/usa/news/kiriakou-torture-whistleblower-prison-term-211/

拷問を命令したり拷問した人物を逮捕するのではなく、それを告発した人物を「スパイ罪」で逮捕するとは何ごとか。

「スパイ防止法」が1917年につくられてから「スパイ罪」で逮捕されたのはたった3人なのに、オバマ氏は大統領になってから私を含めて7人も「スパイ罪」で逮捕している。

おまけにブッシュ大統領の時代に「暗殺の帝王」"assassination czar"と呼ばれ、拷問や無人爆撃機による暗殺の立役者だった人物[ジョン・ブレナン]を、次のCIA長官に指名するとは信じがたいことだ。

今やアメリカは警察国家・監視国家になりさがってしまった。

翻訳「オバマは意図的に拷問を許可している」
元CIA職員ジョン・キリアクーが警察国家アメリカを語る

http://www42.tok2.com/home/ieas/kiriakou.html

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また前回のブログでは、アメリカの拷問にかかわった国が世界で54カ国にもわたっていることを紹介しましたが、この中には容疑者を拷問刑務所に移送する乗り継ぎ空港を提供したドイツなど、聞けばびっくりするような大国も含まれています。

またこの中には、「テロ国家」という汚名を返上してアメリカの拷問の下請け役を引き受けたにもかかわらず、政権転覆という攻撃を受けた、リビアのような国もあります(シリアも全く同類でしょう)。

エジプトのムバラク政権も多くの拷問を引き受けたにもかかわらず、「アラブの春」では、オバマ氏によって最後には見捨てられました。しかも拷問で得られた情報は、「イラクに
大量破壊兵器がある」という情報を見れば分かるように、ほとんど全てが間違っていました。

それをやはり元CIA職員レイ・マクガバンは「拷問は間違った情報を手に入れる最良の方法」と述べています。以下、Russian Todayによるインタビューを紹介して今回のブログを終わりにしたいと思います。

オバマ氏がハーバード大学の法科大学院を出て、シカゴ大学で12年間も憲法を講じてきたこと、また法務長官エリック・ホルダー氏もコロンビア大学法科大学院で博士号を取得した黒人であることに注目して読んでいただきたいと思います。

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            「拷問は間違った情報を手に入れる最良の方法」
                元CIA職員レイ・マクガバンは語る
           http://www42.tok2.com/home/ieas/McGovern.html

               



RTによる解説&前書き

元CIA職員レイ・マクガバンRay McGovernは、「拷問は不確実な情報と偽の自供をもたらす根源だ。それが国際的な協定のすべてを踏みにじる重大な犯罪行為であるということは当然だがね」とRTに語った。

「拷問からは信頼できる情報は得られないね。しかし、不確実な情報がほしければ拷問ほどみごとにその役目を果たすものはないだろう」と、マクガバン氏は言う。

この評言は、ジョン・キリアクーJohn Kiriakouの裁判がおこなわれているさなかに出てきた。キリアクーは、CIAを退職したあと、ワシントンの拷問プログラムについて機密情報を漏洩(ろうえい)させたとして、2年[実は2年半:訳註]の禁固刑を宣告された。

アメリカの拷問プログラムを内部告発したキリアクーは、アルカイダ・ナンバースリーの逮捕を指揮・監督した人物だが、グアンタナモ刑務所の囚人を拷問したCIA職員の名前を暴露したとして告訴されていた。

マクガバン氏によれば、「キリアクーは、拷問は違法であるという信念にもとづいて、ワシントンの拷問プログラムを告発に踏み切ったんだ」という。したがってキリアクーへの起訴は政治的なものであり、彼が罰せられようとしているのは偽善の極致だ、とマクガバン氏は付け加えた。

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RT: ジョン・キリアクーは、自分がやったことで罰せられるのではなく、自分が何者かということで罰せられるのだ、と言っています。これについて、あなたはどうお考えですか?

レイ・マクガバン: ほとんど彼の言ったとおりだ。彼は偽善の極致で罰せられようとしている。ここにある年表を見てみたまえ。2007年に彼は拷問に大きな反対の声を上げた。アメリカに相応(ふさわ)しいものではないし、情報を得るためにも効果的ではない―それは情報を得るための方法ではない、と言ったのだ。

 1年もしないうちに、二人の法律専門家がそれを裏づける発言をした。つまり、ひとりは憲法の専門家オバマであり、もうひとつの名前はホルダー。オバマは大統領になり、もう一人の法律家エリック・ホルダーは司法長官になった。その当時、彼らが言っていたのは、「水責め」water boarding は拷問であり、拷問は違法だ、というものだ。

 それでいったい何が起きたか?拷問をした者たちには何も起きなかった。誰も罰せられなかった。いま起きているのは、ホルダーとオバマとは偶然にも同じ意見だったが前大統領ブッシュとは意見が異なった人物にたいする罰だ。

 ではブッシュは何を言ったのか?マッタ・ラウアMatt Lauer [NBCテレビ]とのインタビューで、ブッシュは言った、私は「水責め」の認可を誇りに思っているよ、法律の専門家が私にそれは合法だと言ったからね、と。

RT: あなたは「政府にとって悪い知らせを持っいるものはここでは生贄(いけにえ、スケープゴート)として利用されることになっている」とおっしゃっていますね。みな知っているように、9・11後のアメリカは治安取り締まりが極端になってきています。そのうち「元CIA職員は機密情報をもったまま巷(ちまた)を自由に闊歩(かっぽ)できるんか?」と言い出すひとが出てくるかも知れませんね。

レイ・マクガバン: 上からの指示は「自供」をさせることだった。何を自供させるか? イラクに大量破壊兵器があると自供させるのか?アルカイダとサダム・フセインとのあいだに作戦上の関係があることを自供させるのか?それはすべてワニの涙(偽善)だった。だから捏造(ねつぞう)しなければならなかった。

 拷問からは信頼できる情報は得られない。しかし不確実な情報がほしいならば、拷問はみごとに役目を果たすのだ、だから大量破壊兵器との関係だけでなく、イラクとアルカイダとの関係も捏造(ねつぞう)したのだ。

 イギリスとアメリカがイラクを侵略したとき、アメリカ人の69%は、サダム・フセインは9・11と関係があった、アルカイダとイラクのあいだには作戦上の関係があったと信じていた。それは、イギリスとアメリカの側からすれば、巧みな煽動(プロパガンダ)の成果だった。

 どうやったらそんなことができたのか?その方法のひとつが囚人アリビAlibiを拷問することだった。彼をエジプトに送り、エジプトで彼が自供したのは、アルカイダからイラクのフセインにひとを送って、そして爆発物の教育を受けて…、というものだった。

RT: それは全く奇々怪々のたぐいですね。9・11を理由にイラクを侵略するのはアラバマ州カホーバの爆破を理由にメキシコ侵略にのりだしたのに似ていると言った人たちがいましたが、まさにそれですね。
 ジョン・キリアクーが「水責め」の拷問にかんする情報を内部告発したわけですが、内部告発と機密漏洩の違いはどこにあるのでしょうか。その本質的な区別が曖昧で分かりにくいのですが・・・

レイ・マクガバン: ジョン・キリアクーは機密情報を漏洩(リーク)したわけではない。ジョージ・ブッシュはやったし、エリック・ホルダーもオバマも意図的なリークをやった。

 「水責め」は拷問だ。拷問は国際法のどれをとってみても重大な違法行為だ。だから、キリアクーの犯罪というのは、拷問は違法だったとする彼の考えそのものなのだ。

 彼は拷問に関わった人物を新聞社に特定したとか漏洩したとかの罪で告訴されているようだが、その人物はもう以前に新聞に載ってしまっている。だから秘密でも何でもなかった。

 彼は私と同じくバージニア北部に住んでいる。家に訪ねていって、言ってやりたい。「君が拷問プログラムを指揮・監督し、他方で拷問に反対したジョン・キリアクーが刑務所に行く。これが公正だと思うか?」俺は本当にそう言ってやりたい。じっさい、家に帰ったら、そうするかもしれない。

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<註> イタリアの法廷は先日、CIAの誘拐にかかわったイタリアの情報局長官にたいして禁固10年の有罪判決を下しました。アメリカの意向に逆らってでも有罪判決を下した、その勇気には敬意を表したいと思います。詳しくは下記を御覧ください。

Ex-Italian Intel Chief Sentenced for CIA Kidnapping
http://www.democracynow.org/2013/2/13/headlines#2139
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