オバマの偽善・アメリカの犯罪(2) 「イランの核実験問題を考える」――シリアを壊滅させイラン攻撃へ、チョムスキー論文 「世界平和へのゆゆしき脅威:アラブの民衆が最も恐れているのは誰か」

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Manning上等兵を支援する人たち(ミード基地のゲート前)
http://rt.com/usa/army-releases-manning-docs-556/


有名なロック歌手Nashによるマニング支援の歌
"Almost Gone" by Graham Nash and James Raymond
http://www.youtube.com/watch?v=dAYG7yJpBbQ(3分50秒、背景の動画も必見!)

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現在の中東情勢を見ていると本当に胸が痛みます。アメリカが「イラクに大量破壊兵器がある」と嘘をつき、その嘘がばれると今度は「イラクに民主主義をもたらす」という触れ込みで侵略を続けました。

その結果はどうだったのでしょうか。かつては宗派間の争いがなかったイラクで、今は連日のように爆弾が爆発し(とりわけシーア派の寺院や居住区が狙われています)、国土は日に日に瓦礫状態になっていきっています。

私が勤務していた大学で修士号を取ってイラクに帰国したハッサン君からときどき思い出したように国際電話がかかってきますが、まず第一に私が無事にする言葉は「ハッサン、無事か?」です。それほど今イラクは荒廃の極に達しています。独裁者と言われたフセインでさえ、こんな酷い仕打ちを国民にたいしておこないませんでした。

ところが、これほど国内を荒廃させ,大量の難民と無数の拷問と死者を産みだした張本人であるアメリカから、誰ひとりとして「戦争犯罪」として告発されたものはいないのです。

それなのに、イラクにおける戦争犯罪を告発したブラッドリー・マニングは、死刑または終身刑の危機に直面しています

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<註> ブラッドリー・マニングBradleyManningは、死刑または終身刑への恐怖をのりこえ、2月28日(木)の軍事法廷で35頁にも及ぶ声明を読み上げ、法廷を拍手と感動の渦に巻き込みました。
WikiLeaks Whistleblower Bradley Manning Says He Wanted to Show the Public the "True Costs of War"
http://www.democracynow.org/2013/3/1/wikileaks_whistleblower_bradley_manning_says_he

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その一方で、国民を虐殺しているとして、シリアのアサド大統領をICC(国際刑事裁判所)にかけて「戦争犯罪人」として裁こうという動きが出てきています。

私は以前からシリアにおける反乱軍をNATOやアメリカが支援し続ける限り、国土が瓦礫になるまで、永遠に「内戦」は終わらない。それどころかシリアから大量の難民がうまれ、深刻な人道危機が訪れつつあります。

ですから私はこのブログでも、「今は朝鮮戦争やベトナム戦争の時と同じように、国民に平和な市民生活を与えるため一時休戦する以外にない」と述べてきました。

ところがオバマ政権は、一時休戦するどころか「シリア民衆のより良き未来のため、反乱軍への援助を増強する」と言明するようになりました。「ロシアがアサド政権を裏で支援している疑いがある」と非難しつつ、自分は裏でこっそり援助していたのに、今度は堂々と援助を公言するようになったのです。

さらに下記のDemocracyNow! の記事では、次のような3点を確認することができます(ただし「反乱軍」と言っても、アルカイダを含む雑多な集団から成っているといわれています)。
(1)新しい国務長官メリーが訪問先のローマで6000億ドルの援助をすると発表した、
(2)防弾チョッキや戦車を含むさまざまな軍需物資を援助している可能性があるとワシントンポスト紙が述べている
(3)場所は不明だが、アメリカがどこか近隣の国で秘かに反乱軍を軍事訓練しているとニューヨークタイムズ紙が報じた

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<註> 詳しくは下記の記事を御覧ください。
U.S. Increases Aid to Syrian Rebels; Training Underway in Regional Country
http://www.democracynow.org/2013/2/28/headlines#2286
  The Obama administration is increasing aid to rebels fighting Syrian President Bashar al-Assad. The Washington Post reports the United States may provide military supplies, including body armor and armed vehicles.
  Without revealing details, White House Press Secretary Jay Carney confirmed plans to assist the rebels.
  Jay Carney: "We will continue to provide assistance to the Syrian people, to the Syrian opposition. We will continue to increase our assistance in the effort to bring about a post-Assad Syria and a better path forward for the Syrian people."
  The New York Times reports U.S. training of Syrian rebels is underway at a military base in an unspecified regional country.
  At a summit today in Rome, Secretary of State John Kerry announced $60 million in new aid for the Syrian opposition.

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http://www.globalresearch.ca/us-nato-israel-agenda-syria-to-be-subdivided-into-three-weaker-states/5317128

オバマ政権がシリア民衆に明るい未来を与えようと反乱軍に武器援助をしているのでないことは、全く同じ時期にバーレーン民衆が独裁王制に抗議して大きな運動を展開し血なまぐさい弾圧を受けているにもかかわらず、アメリが武器援助をしているのは独裁王制であることを見れば一目瞭然でしょう。

それどころかシリアの解体はもっと大きな見通しを持って進められているようです。

つまり、かつて第一次大戦後、広大なオスマントルコ帝国が解体されて現在のサウジアラビアなど中東諸国がつくりだされたのと同じことが画策されているようなのです。そして最終目標がイラン転覆というわけです。

次の記事はそれをよく示しています。

Bahrain Protests Continue After Uprising's 2nd Anniversary
http://www.democracynow.org/2013/2/18/headlines#2186
Protests continued in Bahrain over the weekend after activists marked the second anniversary of their uprising against the U.S.-backed monarchy.(後略)

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<註> 関連記事として次のような興味深い論文がGlobalResearchに載っています。
Hidden US-Israeli Military Agenda: “Break Syria into Pieces”
http://www.globalresearch.ca/hidden-us-israeli-military-agenda-break-syria-into-pieces/31454
US-NATO-Israeli Agenda: Syria to be Subdivided into “Three Weaker States”
http://www.globalresearch.ca/us-nato-israel-agenda-syria-to-be-subdivided-into-three-weaker-states/5317128

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もしロシアや中国がアメリカの "Tea Party Movement" あるいは "Occupy Movement" にお金や武器を与えてオバマ政権の転覆を謀ったとしたら、アメリカ人はどんなに激怒するでしょうか。

しかし、実質的にはそれと同じことを、いまアメリカはシリアやイランにたいしておこなっているのですが、それを認識しているアメリカ人はほとんどいないようです。

オバマ氏は大統領2期目の就任演説で、「世界平和への脅威」だとして「ロシア、中国、イラン」を名指しで攻撃しましたが、かつてブッシュ大統領が「テロ国家」として「イラン、イラク、北朝鮮」を名指しで攻撃したことを思い出してしまいます。

しかしアメリカの良心的知識人の中には、アメリカこそ「世界平和へのゆゆしき脅威」をつくりだしている張本人であると厳しく追及しているひともいます。そのひとりが私の敬愛するノーム・チョムスキーです。

以下のチョムスキー論文を読んでいただければ、そのことがよく分かってもらえると思います(氏自身がユダヤ人であることを念頭において読んでください)。

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世界平和へのゆゆしき脅威

アラブの民衆が最も恐れているのは誰か

ノーム・チョムスキー  [Jan.4, 2013]


The Gravest Threat to World Peace
http://www.zcommunications.org/the-gravest-threat-to-world-peace-by-noam-chomsky


アメリカ大統領選の対外政策にかんする最終討論についての記事で、ウォールストリートジャーナル(WSJ)紙は次のように述べた。

「イスラエルよりも話題になった唯一の国はイランであった。中東のほとんどの国から、イランは当地域の安全保障にとって最もゆゆしき脅威としてみなされている」

二人の大統領候補者が共に同意したのは、核武装したイランが(たとえ世界最大の脅威ではないにしても)中東での最大の脅威だということであった。とりわけロムニーは皆が聞き飽きている旧来の主張を声高に繰り返した。

イスラエルにかんして二人の大統領候補者は、自分こそイスラエルに貢献していると公言するのを競い合ったが、イスラエル当局はそれでもまだ満足しなかった。

WSJ 紙によれば、イスラエル当局は「ロムニー氏からはもっと“攻撃的な”言葉を望んでいた」。ロムニーが、「イランは核武装の地点に到達することは許されない」と要求しただけでは、十分ではなかったのだ。

アラブの人たちも不満を抱いた。なぜならイランにたいするアラブの恐怖は「中東地域の安全保障ではなく、イスラエルの安全保障というレンズからしか、議論されてこなかった」からだ。このアラブの懸念はほとんど無視された。これまた従来どおりの報道姿勢だった。

WSJの記事は、多くの他紙と同じく、イランにかんする重大な問題に何ら答えていない。たとえば次のような問いである。

「イランを最もゆゆしき安全保障上の脅威だと思っているのはいったい誰なのか?また、それが本当だと考えたとしても、その脅威にたいして何をなすべきだとアラブ人(と世界のほとんどの人)は考えているのか?」

最初の問いにたいする答えは簡単だ。「イランの脅威」というのは欧米人の完全なる妄想であり、アラブ諸国の独裁者たちも同じ妄想をいだいている。しかしアラブの民衆はまったく違う。

多数の世論調査で明らかになっているように、アラブ諸国の民衆はイランを好んではいないが非常にゆゆしい脅威だとは見なしていない。むしろイスラエルと米国に脅威を感じているし、多くは、ときにかなり大多数が、イランの核兵器をこうした脅威にたいする対抗措置だと見なしている。

General George Lee Butler バトラー将軍


米国の高官のなかにはアラブ民衆の認識に同意しているものもいる。そのひとりがアメリカ戦略軍の前司令官リー・バトラー将軍(General George Lee Butler)である。1998年に彼は次のように言っている。

「“敵意が煮えたぎる大釜”と我々が呼ぶ中東で、ある国だけが(すなわちイスラエルだけが)強力な核兵器を保有するのは極めて危険だ」、それは「おまえたちも核兵器を持てと他国を鼓舞するに等しいからだ」

さらにもっと危険なのは、核抑止力戦略[the nuclear-deterrent strategy]、すなわち「核兵器を相手にたいする抑止力として使う戦略」である。長年その旗振り役だったのがバトラー将軍だが、その彼が2002年に次のように書いている。

そのような戦略は、「正真正銘の大惨事に導く方程式」であり、アメリカと他の核保有諸国はNPT(核不拡散条約)条約を受け入れ、核兵器による大惨事を避けるための「誠実な」努力をすべきだ。

国際司法裁判所は1996年に、国家というものはそうした努力を真剣に追求する法的義務がある、すなわち「核軍縮が厳密で効果的な国際管理の下でおこなわれるようにするため、あらゆる角度から交渉を誠実に追求する義務がある」という判決を下した。2002年、ジョージ・W・ブッシュ政権は、米国はそういった義務には一切縛られない、と宣言した。

イランの脅威にたいして世界の大部分はアラブ民衆と見解を共有している。非同盟諸国運動(NAM:The Non-Aligned Movement )はイランのウラン濃縮をする権利にたいして強力な支持を表明してきた。ごく最近では昨年8月にテヘランでおこなわれた首脳会議でもそうだった。

インドは、NAM加盟国のなかでは最も人口の多い国だが、米国の厄介な対イラン金融制裁を回避するいくつかの方策を見つけ出した。その計画は、イランのチャバハール港[Chabahar port]をインドの支援で改造し、それをアフガニスタン経由で中央アジにつなごうとするものだ。イランとの取引は増加傾向にあるとの報告もされている。アメリカからの強い圧力がなければ、これらの自然な関係は着実に前進していくだろう。

中国はNAMのオブザーバー国であるが、ほとんど同じことをおこなっている。中国は西方へ開発計画を拡張している。その中には、かつてのシルクロードを中国からヨーロッパにまで再構築する意欲的計画も含まれている。高速鉄道路線は中国とカザフスタンやそれより向こうまでをつなぐ。路線はおそらくトルクメニスタンまで届くであろう。豊かなエネルギー資源がそこにはあり、おそらくイランとも連結するであろうし、トルコとヨーロッパにまで及ぶであろう。

中国はパキスタンの巨大なグォーダー港[Gwadar port] を接収し、中国がホルムズ海峡とマラッカ海峡を経ないで中東から石油を獲得できるようにした。両海峡は非常に混み合っているだけでなくアメリカの支配下にある。パキスタンの新聞は、「イランやアラブ湾岸諸国およびアフリカから輸入された原油は、グォーダー港から陸路で中国北西部へ輸送することが可能になるだろう」と報じている。

8月のテヘラン・サミットで、NAMは、大量破壊兵器禁止地域を確立することによって中東における核兵器の脅威を緩和し、終了させるという長年の提案をくりかえした。その方向に向かって努力することは、核兵器の脅威を克服するための、もっとも簡単で、難題を避ける最も容易な道である。それは全世界のほとんどが支持している方策でもある。

そのような方策を前進させる良い機会が先月もちあがった。それを話題にした国際会議がヘルシンキで計画されたのである。

会議はおこなわれたが、計画どおりのものではなかった。開かれたのは、各国政府が参加するものではなく、フィンランド平和連合[the Peace Union of Finland] が主催する、非政府組織だけが参加するものだった。計画されていた国際会議は、11月にワシントン政府が参加しないと表明したことで、中止となった。イランがその会議に出席すると発表した直後のことだった。

AP通信によれば、オバマ政権の公式弁明は「中東地域での政治的混乱とイランの核不拡散にたいする挑戦的態度」だった。また同時に「会議の開き方」にたいする合意の欠如だった。その理由としてワシントン政府は次のような事実に言及した。すなわち地域の唯一の核大国イスラエルが出席を拒否しており、参加要請は「強制」になるというのである。

      

明らかにオバマ政権は「中東地域の全加盟国が参加しないかぎり会議開催の条件は整わない」という従来の立場に従っている。イスラエルの核施設を国際査察の下に置くという方針・法案を認めないだろう。またアメリカは「イスラエルの核施設と活動の範囲や内容」にかんする情報を出さないであろう。

クウェートの報道機関は即座に次のように報じた。「アラブ諸国と非同盟諸国運動NAMの加盟国は、中東の核兵器および他のあらゆる大量破壊兵器の禁止地域を確立する会議を開催するために、引き続き活動しつづけることに同意した」

先月、国連総会はイスラエルにNPT(核不拡散条約)への参加を要求するという決議を174対6で採択した。「否」に投票した6カ国はいつもどおりのメンバーで、イスラエル、米国、カナダ、マーシャル諸島共和国、ミクロネシア、パラオだった。

数日後、米国は核実験を実行した。またもやネバダ実験場から国際査察官を閉め出しておこなった実験だった。イランは抗議した。広島市長といくつかの日本の平和団体も同様の抗議をした。

核兵器禁止地域の確立に必要なのは、核保有国の協力である。中東では、アメリカとイスラエルがそれにあたるが、両者はそれを拒否している。他の地域でも同様である。アフリカと太平洋でも非核地域の実現を心待ちにしているが、アメリカは自らが支配する諸島における核兵器基地の維持・増強を主張して譲らないからである。

NGOの会合がヘルシンキで開催されたとき、国際会議を中止させた「祝賀会」がニューヨークで開かれた。それは、イスラエル・ロビーのひとつである、「ワシントン近東政策研究所」[the Washington Institute for Near East Policy] の後援によるものだった。

イスラエルの新聞に載った、その「ガラ(祝宴)」の興奮ぶりを伝える記事によれば、デニス・ロス[Dennis Ross]、エリオット・アブラムズ[Elliott Abrams] などの「オバマとブッシュの元最高顧問たち」は、聴衆に次のように太鼓判を押した。「もし外交が上手くいかなければ、オバマ大統領は来年には(イランを)空爆する」。なんと魅惑的な休日の贈り物であろうか。

外交がまたもや失敗したことにアメリカ人たちはほとんど気づいていない。その理由は単純だ。このアメリカでは、「ゆゆしき脅威」を取り除く最も簡単明白な方策、すなわち「中東における核兵器禁止地域の確立」の結末について、ほとんど何も報道されていないからだ。

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<註> なお上記の論文は単独の翻訳として下記のサイトにも掲載されています。
http://www42.tok2.com/home/ieas/translation_index.html

また、ブログ冒頭の「ブラッドリー・マニング支援歌」には次のバージョンもあります。
ナッシュによる語り&生演奏
Graham Nash plays for Bradley Manning
http://www.youtube.com/watch?v=XkzYmpGWzzc(6分40秒、)
歌詞 Almost Gone (The Ballad of Bradley Manning)
http://www.bradleymanning.org/activism/graham-nash-and-james-raymond-release-song-video-in-support-of-bradley


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狐狸庵居士(田舎の国立大学を2010年に定年退職)

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