TPP問題を考える――国家主権の剥奪そして沈没する日本、貿易協定の衣を着たアメリカ巨大企業による世界支配!、トマス・ペイン『コモンセンス』は訴える 「要するに、日本は大国から自立して、日本自身に属すべきなのだ」

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首都ワシントンで、「安い医薬品(後発医薬品 Generic drug)などが手に入らなくなる」と、TPPに抗議するアメリカ市民

AIDS activists sing and chant during a rally across from the White House in Washington July 24, 2012. (Reuters/Kevin Lamarque)
http://rt.com/usa/white-house-aids-march-981/

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安倍内閣が誕生してから急に世情が慌ただしくなってきました。というよりもアメリカにたいする日本の属国ぶりがより顕著になったというべきかも知れません。

その典型例が「原発の再稼働」「普天間基地移転問題」「TPPへの加盟宣言」の三つではないでしょうか。

北朝鮮問題を利用して、「原発を廃炉にすると、いざというときに核兵器をもてなくなる」ということすら公然とささやかれるようになりました。

しかし一触即発の状態になっている北朝鮮問題を解決する一番簡単な方法は、休戦状態になっている朝鮮戦争を終わらせるため、アメリカが北朝鮮と平和条約を結び、朝鮮半島を非核地帯にすることです。

これは北朝鮮自身が強く望んでいることですから、アメリカにその意志さえあれば簡単に実現できることです(詳しくは2月24日の本ブログを参照してください)。

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さて一向に解決の方向が見えない原発問題ですが、3月18日には福島第1原発で大規模停電が発生し、燃料貯蔵プールの冷却装置など9つの設備が停止するという深刻事故もおきています。

地震が多発しているなか、このような深刻事故がおきているいるにもかかわらず、安倍内閣は、原発をさらに6基も再稼働すると言い始めています(「経産省前テントひろば」を撤去する動きも、その一貫でしょう)。

また、普天間基地移設問題でも、自民党政権は、地元沖縄県民の意向よりもアメリカの意向を重視する方針を、民主党政権よりもさらに強く打ち出しています。

もっと問題なのは、いわゆるTPP(環太平洋戦略的経済連携協定:Trans-Pacific Strategic Economic Partnership Agreement または単に Trans-Pacific Partnership)への参加をはっきりと明言したことでしょう。

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<註> 原子力の平和利用という戦略が、日本の「原水爆禁止運動」を押さえ込むためにアメリカによって持ち込まれたものであることは、中日新聞の下記連載「日米同盟と原発」第5回で詳しく解明されています。
http://www.chunichi.co.jp/article/feature/arrandnuc/index.html

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Fish with radiation over 2,500 times safe levels found near Fukushima plant
http://rt.com/news/japan-fish-radiation-fukushima-321/ (January 19, 2013)

Fish market in Kitaibaraki, Ibaraki prefecture, south of the stricken Fukushima daiichi nuclear power plant number 1 on April 6, 2011 (AFP Photo / Toru Yamanaka)
http://rt.com/news/radioactive-cesium-japan-fish-seawater-895/

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肝心のTPP問題ですが、これがいかに有害無益なものであるかは、次のビデオを見ていただければよく分かるはずです。

TPPは貿易協定の衣を着た企業による世界支配の道具
http://democracynow.jp/video/20120614-2

このビデオはDemocracyNow!が市民団体パブリック・シチズン「グローバル・トレード・ウォッチ部門」代表ロリ・ウォラック女史にインタビューしたものに日本語字幕をつけたものです。

これは2012年6月14日に放映されたものですが、内容的には全く古くなっていません。それどころか、日本が加盟を表明した今こそ視聴すべきものではないかと考えます。

15分程度のもですから、時間を見つけて、ぜひ御覧いただきたいと思います。

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<註> 英語原版は下記のとおりです。
Breaking '08 Pledge, Leaked Trade Doc Shows Obama Wants to Help Corporations Avoid Regulations
(2008年大統領選挙での公約違反!、リークされた文書によれば、大企業による規制逃れをオバマが幇助したいと願っている)
http://www.democracynow.org/2012/6/14/breaking_08_pledge_leaked_trade_doc

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これを見て驚くのは、アメリカの一般市民にすらTPPの内容が公開されていないことです。アメリカ政府通商代表部が企業側と連携しながら秘密裏に進めてきたもので、国会議員でさえ内容を知ることができない始末です。

このような進め方そのものが、この協定の本質をよく示していますが、このビデオで分かることは、市民団体パブリック・シチズンのロリ・ウォラック女史が指摘する次の2点に要約できます。

「これは貿易協定ではない、企業による世界支配の道具だ」「1%の富裕層が私たちの生存権を破壊する道具だ」

つまりアメリカの大企業にとっては、自国の中産階級が消滅しつつありますし、貧困化したアメリカの一般庶民は、搾取の対象としてはもう魅力ある存在ではなくなりました。

そこで目を付けたのが、貧困化しつつあるとは言え、まだまだ豊かさを残している日本だいうわけです。

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<註> アメリカの貧困ぶりは、堤未果『貧困大国アメリカ』(岩波新書)でも知ることができますが、マイケル・ムーアの映画『Roger&Me』『Sicko』を見れば、さらによく分かります。この映画を通じて、TPPがもたらす結果を自分の目で確認できるでしょう。
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以前のブログでも書いたことですが、私は日本の戦後史について次のような仮説をずっと胸にいだき続けてきました。私がTESOLの学会に参加するため渡米し、毎年1か月くらい滞在する生活を10年くらい続けている間に、この仮説をますます確信するようになりました。

1)日本がアジアに侵略戦争にたいする謝罪をせずに済んできたのは、ドイツと違って日本はアジアの隣国と貿易せずとも、アメリカの庇護の下で、基本的にアメリカと貿易するだけで復興してきたからだ。

2)それどころか朝鮮戦争やベトナム戦争などアメリカがおこなってきた戦争の後方部隊をつとめることによって(いわばアジア人の血によって)莫大な経済的利益を得て戦後の復興をなしとげた。こうして、アメリカはアジアにたいする謝罪の機会を日本から奪うことになった。

3)ソ連や中国などの社会主義国が存在し、医療や教育の無償化など国民の生活を安定させる実績をあげている国があるかぎり、その対抗上、資本主義国でも同じことが可能であることを実証せざるを得なかった。アメリカが日本の経済復興を援助したのは、上記のことを証明するためのモデル国家として日本を世界に陳列するためであった。

4)しかしソ連が崩壊し、その結果、社会主義の東欧も姿を消した。こうして社会主義の良さを実践する国は存在しなくなった。中国も名前は「社会主義国」だが、実態はアメリカで学んだ経済エリートが新自由主義的経済運営をおこなう国家独占資本主義国となってしまい、国内では極端な貧富の格差が生まれている。

5)したがってアメリカにとって、社会主義国に対抗するための「モデル国家」として日本を庇護しなければならない理由は消滅した。むしろいま必要なのはアメリカに対抗するまでの経済力を持つにいたった日本を徹底的に叩きのめし、日本がもつ豊かな資産をアメリカに移し替えることである。これがアメリカから毎年のように日本に突きつけられてきた「規制緩和」「年次改革要望書」だった。

元外交官・元防衛大学教授の孫崎享『戦後史の正体』(創元社、2012)を読んで、ますます私の仮説が正しかったのだという確信をもつようになりました。
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<註> チョムスキーを読んでいる私からすると、細かなところで孫崎氏の叙述に疑問な点がないわけではないのですが、それはここでは取りあげません。むしろ私はこのような書籍を公(おおやけ)にした氏の身辺を心配しています。

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トマス・ペインと『コモンセンス』
  
http://shisly.cocolog-nifty.com/blog/2012/07/post-83d6.html

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ところで『肉声でつづる民衆のアメリカ史』(明石書店、2012)の第4章にトマス・ペイン『常識=コモンセンス』が出てきます。

これを翻訳していたら、アメリカ人トマス・ペインが呼びかけるイギリスからの独立が、ほとんどそのまま「日本人が呼びかけるアメリカからの独立」の文書として通用するのではないかと思うようになりました。

そこで、トマス・ペインの文書で、「イギリス」とあるところを「アメリカ」に、「アメリカ」とあるところを「日本」に書き換えた、狐狸庵居士版『コモンセンス』を以下に紹介します。

これは2012年11月8日のブログ「米兵によるレイプ事件(3)」に乗せたものですが、今回、再録するにあたって若干の改訂を加えました。

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<註> ただし、『肉声でつづる民衆のアメリカ史』に載せられている「コモンセンス」は長すぎるので、分かりやすくするため番号を打ちながら幾つかの箇所を省いてあります。それを.....で示しました。また、「ヨーロッパ」も「世界」に書き換えました。当時のアメリカ人にとってはイギリスを含むヨーロッパが「世界」でしたから。(ドヴォルザーク がアメリカを「新世界」としたゆえんです)
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1 私がこの小冊子で述べることは、単純な事実、率直な主張、常識ばかりである。このことをまず読者にお話ししておきたい。読者は偏見や先入観を捨て去り、もっぱら自身の理性と感情に従って、真の人間的品性を獲得するのか、あるいは今もっている品性を捨て去らずに保持するのかを自身で決断いただきたい。そして、自身の視野を明日へと大きく広げていただきたい。
 アメリカと日本との軋轢(あつれき)について、多くの書物が書かれている。あらゆる階層のひとが異なる動機とさまざまな意図でこの論争に加わった。しかしすべてが無駄だった。論争の時期は終わった。……

2 当時この問題について双方の代弁者が提案したのは、どれも同一目標、すなわちアメリカとの結合をめざすことだった。双方の唯一の違いは実現方法にあった。……

3 [アメリカとの] 関係修復の利益についてはいろいろと言われてきたが、甘い夢のごとく消え去り、元の木阿弥となった。したがって関係修復論とは正反対の議論を検討すべきであり、また日本がアメリカと結合し従属することで、現在および将来こうむる多くの物的損失を検討しなければならない。それは自然原理と常識にもとづいてアメリカとの結合と従属を検討することであり、離脱すれば何が期待できるか、従属すれば何が予期できるかを検討することである。
 日本はこれまでアメリカとの結合のもとで繁栄してきたのだから、将来の幸福のためにも同じ結合が必要であり、そうすれば常に同じ結果が得られると主張するものもいた。この種の議論ほど馬鹿げたものはない。それなら子供はミルクで育ったのだから決して肉を食べさせてはならないとか、人生の最初の二〇年間は次の二〇年間の先例になると主張してもよいことになる。
 しかし、これは前述の議論をもっと認めることになる。というのは率直にいえば、世界の大国が日本を無視したとしても、日本はこれまでどおり、いやはるかに繁栄していたと言えるからだ。日本をここまで豊かにしたのは生活必需品の貿易だった。衣食住というものが世界の習慣であるかぎり、他の買い手はいつでも見つかるからである。
 しかし、アメリカが日本を守ってくれたと主張するものもいる。アメリカが日本を独占してきたことは確かであるし、この国土を日本の費用だけでなくアメリカの費用で守ってきたことも否定はしない。だがアメリカは同じ動機があれば、つまり貿易と領土のためならトルコでも守っただろう。……

4 しかし、アメリカは保護者だと言うものもいる。それならアメリカの行為は一層恥ずべきだ。野獣でさえわが子を貪(むさぼ)り食おうとはしない。野蛮人でさえ自分の家族に戦いをしかけない。したがってこの主張が本当なら、なおさらアメリカを非難することになろう。……

5 最も熱狂的な関係修復論者に私は問う。この国土がアメリカと結合していることで得られる利益があるなら、一つでも示してみよ。くりかえし問う。何の利益も引きだせないではないか。我々の生産物は世界のどの市場でも売れ、輸入品は代金を払えば何処からでも買えるのだ。
 しかしアメリカとの結合から受ける被害と損失は計り知れない。自らのみならず人類一般への我々の義務感は、この結合を廃棄せよと命じている。なぜなら、少しでもアメリカに従属し依存していると、日本はすぐに世界の戦争や紛争に巻きこまれるからだ。
 そればかりではない。アメリカと結合していなければ関係修復を求めてくるはずの国々や、我々が怒りも不満も抱いていない国々と、我々は不和になってしまうからだ。
 世界は貿易の市場だから、どの国とも偏った関係を結ぶべきではない。世界の紛争に巻きこまれないようにするのが日本の真の利益だ。しかしアメリカに依存し、アメリカ政治の天秤の錘(おもり)にされているかぎり、そうはいかない。……

6 アメリカがどこかの国と戦争をはじめると、日本の貿易はいつでも壊滅的打撃をうける。日本がアメリカと結びついているからだ。次に戦争がおこれば、この前の戦争のようにはいかないかもしれない。うまくいかなくなれば、今は関係修復を主張しているひとも分離・独立を望むだろう。中立こそが戦艦よりも安全な護衛艦になるからだ。
 正義や道理にかなったものすべてが離脱を主張している。殺された者の血が、自然の泣き声が、「いまこそ独立すべきときだ」と叫んでいる。全能の神がアメリカと日本とのあいだに設けた距離でさえ、アメリカ権力の日本支配が天の計らいでないことを示す有力な自然の証拠である。……

7 アメリカによる日本国土の支配は、遅かれ早かれ終わりを告げる統治形態だ。しかし、いわゆる「現体制」が一時的なものにすぎず未来は変わるのだという痛みを伴うが否定しがたい信念は、保守的なひとには心から喜べないのである。統治が永続しないと、子孫に遺してやれるものがなくなることを、親としては喜べないからである。
 率直にいえば、いま我々は次の世代に借金を負わせつつあるのだから、だかこそ独立という仕事をしなければならないのだ。さもないと子孫を卑劣に浅ましく利用することになる。我々の歩むべき進路を見出すには、子供の手をとり数年先の立ち位置を決めることである。そうすれば、今わずかばかりの恐怖や偏見で視野から外されている展望が、高見から開けてくるだろう。……

8 おとなしいの性格のひとはアメリカ人の攻撃を軽く考え、相変らず前途を楽観して「さあさあ、あんなことはあったけれど、また仲よく」と呼びかけそうだ。しかし人間としての怒りや感情を考えてみるがいい。また関係修復論を自然の基準に照らして検討してみるがいい。その後で、諸君の郷土に砲火や剣をもちこんだ国を、今後もまた愛し尊敬し忠実に尽くすことができるか、聞かせてもらいたいものだ。
 そのどちらもできないというなら、諸君は自らを欺(あざむ)き、子孫に破滅をもたすだけだ。愛することも尊敬することもできないアメリカとの結合をこれからも続けるとすれば、その関係は強制的で不自然なものになる。また、それは便宜的につくられた一時しのぎの関係にすぎないので、すぐにこれまでより悲惨な状態に陥るだろう。
 それでも諸君が暴行を見逃せると言うなら、お尋ねしたい。家が焼かれたことがあるか。財産が目の前で破壊されたことがあるか。妻子が身を休めるベッドや命をつなぐパンに困ったことがあるか。親や子が彼らの手で殺害されたことがあるか。自身が落ちぶれた無惨な生き残りになったことがあるか。
 そうでないなら、このような体験をしたひとについて、とやかく言う資格はない。しかし、諸君がこのようなことを体験していながら殺害者と握手できるなら、諸君は夫や父、友人や恋人の名に値しない。地位や肩書が何であろうと、諸君は、心情は臆病者で、精神は密告者なのだ。……

9 日本国土がいつまでも外部権力に服従しつづけると考えるのは、理に反し、世の条理に反し、前時代からのあらゆる実例に反している。最も楽天的なアメリカ人でさえそうは考えない。知恵の限りを尽してどんな計画を立ててみても、いまとなっては分離する以外、この国土にわずか一年の安全・安寧(あんねい)さえ保証できない。
 関係修復はいまでは誤った夢である。自然はこの結合を見捨てた。人為が自然の代りをすることはできない。ミルトンが賢明にも言うように「極度の憎悪という傷が、甚だしく深かったならば、真の和解は生じない」からだ。……

10 [要するに] アメリカは世界の一つの国に、日本は日本自身に属すべきなのだ。

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上記の文章を、東京大空襲などで焦土と化した県都・首都、原爆で瓦礫と化した広島・長崎を思う浮かべながら読み直してみてください。そうすれば当時の日本人がアメリカにたいしてどのような思いをいだいていたかを、逆に想像できるはずです。

しかしアメリカの占領政策は日本人を親米へと洗脳することに見事に成功しました。私もその一人でした。

他方、アメリカが日本にプレゼントしてくれた素晴らしい贈り物は「日本国憲法」でしたが、この画期的試みに意欲を燃やした(アメリカですら実現しなかった理想の憲法をつくろうとした)若きアメリカ人の多くは、帰国してから社会主義者として迫害されました。

いずれにしても、トマス・ペインがイギリスからの独立を勝ちとるために「常識とすべし」とした見解(それが書名『コモンセンス』の主旨だったはずです)が、日本人にとっても常識になる日が近いことを祈っています。

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<註1>  上記の日本版『コモンセンス』に頻出する“関係修復”を、「民主党鳩山内閣によって破壊されたアメリカとの関係を修復する」と言ってアメリカ詣でに出かけた自民党安倍内閣を思い浮かべながら読んでいただければ、いっそう味わいが増すのではないかと考えます。
<註2> なお、このパロディ『コモンセンス』は下記HPの「国際教育資料」にも載せてあります。
パロディ『コモンセンス』ー―トマス・ペインの主張を日本に当てはめると
http://www42.tok2.com/home/ieas/CommonsenseJapan.pdf
http://www42.tok2.com/home/ieas/international_education.html
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狐狸庵居士(田舎の国立大学を2010年に定年退職)

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