北朝鮮問題を考える(3)―「挑発行動」をしているのはどちらか、北朝鮮を踊らせて利用しているのは誰か、日本人の知らない朝鮮戦争、日本人の知らない北朝鮮

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北朝鮮情勢が相変わらず緊迫しているので、この問題についてあと一回だけ書くことにしました。英語教育についても書きたいことは山積しているのですが、もう少しお待ちください。
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B-2 ステルス爆撃機Stealth bomber
http://rt.com/op-edge/north-korea-reasons-us-barbarism-725/

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私は前回のブログで「窮鼠(きゅうそ)猫を噛む」「追い詰められたネズミはネコを噛むこともある!」と書きました。そして「急に狼狽し、慌て始めたオバマ政権」と付けくわえました。

それを示すのが「ホワイトハウスは、北朝鮮にたいする戦略を再考」「アメリカがミサイルテストを延期、北朝鮮の新しい対応を踏まえて」と題する次の記事です。

Report: White House Reconsiders North Korea Strategy
http://www.democracynow.org/2013/4/4/headlines#441
U.S. Delays Missile Test, Citing North Korea
http://www.democracynow.org/2013/4/8/headlines#482

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アメリカがこれまで何度も韓国と一緒に、北朝鮮沿岸で合同軍事演習を繰り返してきたのですから、北朝鮮が脅威を感じて当然でしょう。

かつてアメリカは、本土から遠く離れたキューバ島にソ連製の核ミサイルが配備されたと知っただけで[自分がキューバに攻撃をかけたことは忘れて] 恐怖感に襲われ、あわや核戦争になるかと思われるほどの大騒ぎをしたのです(キューバ危機、1962年10月)。

これは、中国や北朝鮮から遠く離れた沖縄の米軍基地に、核兵器を搭載した爆撃機が常に待機しているのと同じ状況です。もしキューバ危機でアメリカが大騒ぎしたことが正しいとすれば、これだけでも中国や北朝鮮が恐怖を感じて当然のことでしょう。

ところが現在アメリカがやっていることは、北朝鮮の沿岸で "OPLAN 5098" という「侵略と占領を前提とした軍事演習」だったり、北朝鮮と地続きの韓国に「核装備」のB-52爆撃機を配備するという挑発行為です。

同じことを中国や北朝鮮が、フロリダ沿岸で「侵略と占領を前提とした軍事演習」をおこなったり、アメリカと地続きのメキシコに「核装備」の爆撃機を配備したら、アメリカはどんな対応をとるのでしょうか。

ところがアメリカのメディアはもちろんのこと日本の大手メディアも、連日のように、北朝鮮の行為を一方的に「挑発行為」と書き立てて、北朝鮮への恐怖感を煽り立てています。

憲法9条を改悪し日本を核兵器の持てる国にしたい勢力にとって、これほど都合の良い状況はないでしょう。沖縄を米軍基地として半永久的に利用したいアメリカにとっても、北朝鮮が「挑発行為」をしてくれたほうが好都合です。

また製造業のほとんどを、メキシコ、カナダ、中国、東南アジアなど国外に移転させてしまって、国内に残る製造業と言えば軍事産業・武器製造業くらいしかないアメリカにとっては、高価な兵器を韓国や日本に売りつけるのに、これほど良い機会はありません。

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イラク、リビア、シリアなど中東や北アフリカで戦争が絶えない理由もこれでよく分かります。シリアでは反政府軍に武器を与え軍事訓練を施し、アサド政権が反乱軍をいくらつぶしても、外部から補充部隊が入り込んでくるのですから、永遠に戦いは終わりません。

しかし終わらない方がよいのです。売っても売っても武器の需要は終わらないのですから、軍事産業にとってこれほど美味しい話はないでしょう、

彼らにとっては、シリアでどれだけ多くの民衆が難民になろうが、どれだけ多くの死者が出ようが関係ないことなのです。「死の商人」と言われる所以(ゆえん)です。

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防衛省前に配備されたミサイル発射台Patriot Advanced Capability-3 (PAC-3) missile launchers
http://rt.com/news/japan-nkorea-false-alarm-808/



話は少し横に逸れましたが、私は先に、「アメリカのメディアはもちろんのこと日本の大手メディアも、連日のように、北朝鮮の行為を一方的に『挑発行為』と書き立てて、北朝鮮への恐怖感を煽り立てている」と書きました。

しかし実は先にも述べたように、「挑発行為」をしているほうがアメリカなのです。それはアメリカの方も自覚していて、あまりにも挑発の度が過ぎると、それを真に受けた北朝鮮が暴発して核戦争になりかねないと心配になり始めました。

というのは、国連の査察によって大量破壊兵器のすべてを奪われ丸裸にされたイラクは、アメリカの侵略によってあっけなく崩壊し、サダム・フセインは絞首刑になりました。そして民主主義という恩恵をもらったはずのイラクは、この10年で100万人の人が殺され、内戦が続く国土は壊滅の危機に瀕しています。

アメリカによって「テロ国家」の指定を外(はず)された代わりに、大量破壊兵器を放棄し拷問の下請けまで引き受けていたにもかかわらず [NTAOと一緒になったアメリカの攻撃で] リビアのカダフィ大佐も、最後は惨殺されるという酷(むご)い最期を遂げました。女性でも無料で大学に行けたリビアは、もはや存在しません。

そして、今はシリアです。たぶん、シリアのアサド大統領も同じ運命をたどるのでしょう。

このように考えれば、北朝鮮がアメリカの「挑発行為」をいかに深刻に受けとめているかがよく分かるのではないでしょうか。イラクやリビアやシリアと同じ運命をたどるくらいなら核戦争も辞さないと考えたとしても、何の不思議もありません。

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今までは話し合いを求める北朝鮮からの要請をにべもなく拒否してきたのがオバマ氏でしたが、先述のように、ここにきてやっと態度に変化が見られ始めました。

ところが、あまり変化が見られないのが日本の大手メディアと安倍政権です。

あいかわらず北朝鮮の脅威を煽り立てているので、淡路島で大地震が起きて大変な被害が出ているにもかかわらず、政府が発信したのは地震の警報ではなく北朝鮮がミサイルを発射したという警報でした。

All nerves: Japan issues false N. Korea missile alarm instead of quake alert
http://rt.com/news/japan-nkorea-false-alarm-808/ (April 13, 2013)

上記のRT報道にもあるとおり、実はこれは誤報だったことが後で分かりました。あらかじめセットしてあった「北朝鮮ミサイル発射」の警報ボタンを政府職員が間違って押してしまったというのです。

この事件からも何故アメリカ政府が北朝鮮にたいする態度を急に変えたかの理由が分かります。

北朝鮮軍の高官が、アメリカや韓国の軍事行動にそなえて、あらかじめセットしてあった核ミサイルのボタンを(米軍の行動を誤解して)押してしまったらどうなるか。こう考えて急にアメリカ政府は狼狽し始めたというわけです。

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私は前回のブログの最後で次のように書きましたが、今回の一連の事件で、ますます自分の言が正しかったのだと思えるようになりました。

平和憲法9条をもつ国として、日本がこのような情勢づくりの先頭に立つべきなのに、今の安倍政権は、「非核3原則」を投げ捨てて、北朝鮮の行動を口実に核兵器保有すら口にし始めています。

それどころか「原発の輸出」「兵器の輸出」までも公言しています。安倍政権が原発の再稼働をめざしている理由も、このように考えると非常によく分かるのではないでしょうか。

いずれにしても[日本が挑発しないかぎり]北朝鮮が日本を核攻撃する可能性はゼロに近いのに比して、「地震が多発し、第2のフクシマがいつ訪れても不思議はない日本」で原発を再稼働させるというのは、正気の沙汰とは思えません。

要するに、北朝鮮の「核」を心配するくらいなら、日本の「核」を心配すべきなのです。腹帯に54個の原爆を巻きつけて毎日を生きているのが、現在の日本列島だと思って間違いないのですから。

ですから、原発反対運動は、世界情勢や平和運動と結びつけた運動をしないかぎり、単に「脱ゲンパツ」を叫んでいるだけでは、成功は難しいでしょう。

<追記> 同じことは沖縄についても言えます。「北朝鮮と平和条約を結ぶ運動」と「米軍基地撤去の運動」を結びつけないかぎり、沖縄に米軍基地は必要だという口実に北朝鮮が使われ続けるからです。

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淡路島の大地震で崩壊したコンクリート壁
http://rt.com/news/earthquake-japan-dozens-injured-803/



北朝鮮が、休戦状態になっている朝鮮戦争を一刻も早く終わらせ、アメリカと平和条約を結んだうえで朝鮮半島を非核地帯にしたいと望んでいることは、チョムスキー論文などを引用しつつ、これまでのブログで何度も書いてきました。

イラクやリビアにたいするアメリカの攻撃から最も深い教訓[核兵器をもたないかぎりやられる]を学んだのがイランと北朝鮮だったというチョムスキーの意見も、既に私のブログで何度も紹介してきました。

http://www42.tok2.com/home/ieas/chomsky_interview060124korea060710.htm

ところが上記で述べたように、原発反対運動や米軍基地撤去運動にたずさわっているひとでさえ、大手メディアの煽動にのせられて、北朝鮮を悪魔呼ばわりしたり、北朝鮮の「挑発行動」を口にするひとが少なくないのです。

これでは、兵器を売りつけ中国封じ込めに日本を利用したいと思っているオバマ政権や、原発を海外に輸出したいと思っている日本の経済界や核兵器を所有する国にしたいと思っている日本の一部勢力に、まんまと利用されるだけでしょう。

そこで最後に、カリフォルニア州立大学サンタクルーズ校のクリスティン・ホン助教授 [Christine Hong、コリア政策研究所(The Korea Policy Institute)理事も務める] の北朝鮮観を以下に紹介しておきます。

というのは、すぐ近くに存在しているにもかかわらず、隣国の北朝鮮や朝鮮戦争の実際をほとんど知らない日本人があまりにも多いように思えるからです。

太平洋を隔てた遠くのアメリカに住むひとでも、北朝鮮をこのようにとらえているひとがいることを知っておくことは、今後の日本を考えるうえで非常に重要だと考えからです。

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<註> 原文は次のとおりです。
New Era of Nuclear-Armed North Korea Forces U.S. to Reconsider War Games at Regime's Door
http://www.democracynow.org/2013/4/4/new_era_of_nuclear_armed_north

これは、ホン助教授がDemocracyNow! (2013/04/04)のインタビューに答えたものですが、司会者による質問部分は省略し、彼女が質問に答えた部分(しかも後半部分)だけを訳出しました。全文を知りたい方は上記URLを御覧ください。

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「北朝鮮の核保有」という新しい事態に至り、
アメリカは軍事作戦の再考を迫られている


クリスティン・ホン(Christine Hong)
カリフォルニア大学バークリー校、助教授


<あるアメリカの高官は言った。「心配なのは我々が北朝鮮にまちがった判断材料を与えて、それが彼らを暴走させるかも知れない、ということだ。」>

上記の発言で私が非常に興味ぶかく思ったのは、自分たちの行動を北朝鮮が誤解するかも知れないとアメリカ政府が恐れ始めたことです。チャック・ヘーゲル国防長官は最近まで「自分たちの行動は挑発的なものではない」と言ってきたのですから。

これは、北朝鮮と同じような状況にアメリカが置かれたことを考えればすぐ分かることです。アメリカにいる私たちがそのことに思い至らないというのは信じがたいことです。
 たとえばメキシコが、ロシアのような歴史的旧敵と一緒になって、アメリカの南側国境やその沿岸で大規模な軍事演習をしたと想像すれば、そのことはすぐ分かるはずです。
 まして、その軍事演習がアメリカ本土に侵略するための模擬演習であり、メキシコとロシアが一緒になってアメリカ本土を占領するという作戦であり、その作戦には核兵器による先制攻撃も含まれていたとしたら、どうしますか。
 このような行動を敵対的かつ攻撃的でないとアメリカ政府が考えるというのは、まず想像できません。だから北朝鮮だって韓国とアメリカの合同軍事演習をそう受けとめたのです。

もう一つ、この軍事演習について知っておくべきことは、昨年のキム・ジョンイル死去を受けて、アメリカが同盟国である韓国と一緒になってOPLAN 5029という作戦をおこなったことです。
 このOPLAN 5029という作戦は、上記の軍事演習をおこなっている最中に実行されたのです。しかも、この作戦は北朝鮮政府の崩壊を想定した模擬演習でした。
 この作戦について質問された韓国の高官は、キム・ジョンイルが死んで北朝鮮は弱体化したのだから、このような作戦を計画するのに絶好の時だと述べていたのです。

御存知のように、朝鮮戦争は公式的には終了していません。休戦したままです。アメリカが関わった戦争で、いまも続いている史上最長の紛争です。
 今年は休戦協定が署名されてから60年目にあたります。1953年の朝鮮戦争休戦協定は次のことを義務づけていました。
 すなわち、署名した当事国 [中国、北朝鮮(DPRK朝鮮民主主義人民共和国)、アメリカ合州国] は3か月以内に平和交渉の場で恒久的な平和条約を結ぶべし、と定められていたのです。

この休戦協定には他の取り決めもありました。これは勧告とも言うべきものでしたが、すべての外国軍は朝鮮半島から撤退すべしというものです。それ以来、私たちは北朝鮮と戦争状態のまま閉じこめられて今に至っています。
 中国は1950年末までにほとんど全ての軍隊を引き上げましたが、アメリカは現在に至るまで、韓半島に28,500人の兵士を駐留させ、そこに40以上もの軍事基地を置いて活動しているのです。

また、朝鮮戦争の歴史的経過、朝鮮戦争の本質をみれば分かることですが、朝鮮戦争研究の第一人者である歴史家ブルース・カミングス(Bruce Cumings、シカゴ大学)は次のように述べています。
 「この戦争はアメリカが制空権をにぎった戦争だった。それは非対称的な戦争で、その結果、約400万人も人命が奪われ、その大半が民間人だった。しかも北朝鮮だけで350万人が命を失い、その70%が民間人だった。」

したがって、B-2ステルス爆撃機をともなった出撃や核攻撃の可能性について論じる場合(実際アメリカはそのような選択肢を捨てていませんし、過去9回にもわたって核攻撃をちらつかせて北朝鮮を脅迫してきました)、北朝鮮の側からも事態を見なければ、正しい理解には至りません。
 アメリカの手によって廃墟にされた国土という、歴史的人間的な深い理解を土台にして初めて、事態を正しくとらえることができるのです。実際、アメリカが朝鮮戦争で北朝鮮にたいしておこなった爆撃作戦は、ブルース・カミングスの言う "bombing holocaust"「爆撃ホロコースト(大虐殺)」でした。カミング教授はその空爆を本質的にはジエノサイド(大量殺戮)だとも言っています。

どうれば朝鮮半島に平和をもたらすことができるか。それは今や核兵器をもつに至った北朝鮮とアメリカが真面目に交渉する以外にありません。アメリカが、どの点から見ても北朝鮮が核保有国であることを既成事実として認めて、歴史的な敵国と平和調停をおこなうことです。御存知のように、オバマ氏は握り拳を広げアメリカの敵だった国に手を差しのべると言って大統領に当選したのですから。

NBAスーパースターだったロッドマン


大手メディアは、全ての挑発が一方的に北朝鮮の側から出てきているかのように言っています。
 しかし元韓国大使ドナルド・グレッグや福音派宣教師フランクリン・グレイアムが言ったことを思い起こすことが重要だと思います。それは非常に真面目なメッセージでした。
 またプロ・バスケットボールNBAのスーパースターだったデニス・ロッドマンは北朝鮮を訪れ、キム・ジョンウンからバラク・オバマ宛てのメッセージを託されたのですが、ホワイトハウスは受け取るのを拒否しました。
 そのメッセージの内容は、「私は戦争を望まない。望んでいるのはオバマ氏からの電話だ。」というものでした。
 実際、アメリカがしなければならないこと、オバマ氏がする必要があるのは、そして未だに着手されていないのは、北朝鮮と正しく向き合うことなのです。

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<註> 元韓国大使ドナルド・グレッグ[Donald Gregg、1951-1982の31年間、元CIA職員でもあった]、 福音派宣教師フランクリン・グレイアム [Franklin Graham、ビリー・グライアム福音伝道協会を設立したBilly Grahamの息子]
 なお、「アジア記者クラブ通信」3月号・4月号にも朝鮮半島の核戦争危機を読み解く有益な特集が載っています。下記を参照してみてください。
http://apc.cup.com

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