鈴木孝夫研究会(編)『鈴木孝夫の世界』第4集(書評その1)――フクシマ3・11後「下山の時代の現在こそ日本の出番だ」、 緊急速報:ベネズエラの新大統領を認めようとせず,世界で孤立するオバマ政権

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1 昨年末に鈴木孝夫先生から『鈴木孝夫の世界、第4集』(冨山房インターナショナル、2012)が贈られてきました。「鈴木孝夫研究会」(略称「タカの会」)が編集したものですが、私にとっては雲の上の存在である鈴木先生から本を謹呈されるということは、夢のような話です。

 しかも、この『鈴木孝夫の世界』は第4集どころか第1集からいただいていますし、同じく冨山房インターナショナルから出ている『あなたは英語で戦えますか』なども謹呈をいただいているので、私のような無名人にとって、その嬉しさはなかなか言葉には表しがたいものがあります。

 しかし、毎回、鈴木先生から謹呈をいただくたびに葉書でお礼状を書くのが私の習わしになっていたにもかかわらず(葉書1枚では書き足りなくなって多いときには3~4枚になったことあります)今回は、すぐにはいつもの御礼を体力・気力がありませんでした。

 というのは、心臓病手術の予後があまりよくないのに、無理して『肉声でつづる民衆のアメリカ史』(明石書店,2012)翻訳を突貫工事で出した疲れが残っていて、お礼状をすぐに書く気力・体力がなかったからです。

 また、お礼状を書くからにはきちんと読んでからでないと失礼にあたると思ったことも重なって、ついに今に至ってしまいました。しかし、このままでは鈴木先生に申し訳ないと考え、いま意を決してパソコンに向かっているところです。

<註> この『あなたは英語で戦えますか』(冨山房インターナショナル、2011)は、旧著『英語はいらない!?』(PHP新書、2001)の増補改訂版で、「小学校で英語を教えること」の是非を論じる場合も、「英語でおこなう、英語の授業」の是非を論じる場合も、必読の書だと思います。
 ですから私も拙著『英語教育原論』『英語教育が亡びるとき』(いずれも明石書店、2007、2009)を出したときに、「日本人が英語が下手なのは日常生活で必要ないからだ」「国際英語とは英米人話す英語ではない」など、この旧著『英語はいらない!?』からおおいに引用させていただきました。

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2 この『鈴木孝夫の世界』第1~4集は「タカの会」が主催する「鈴木孝夫研究会」で鈴木先生がおこなわれた講演を第1章におき、そのあとは研究会の会員の論考が第2章以下に並ぶというのが、基本的な構成です。第4章には鈴木先生の生い立ちから始まって恩師・井筒俊彦氏との出会いと決別など、鈴木先生の伝記が毎回、連載されていて読者の興味をそそります。

 研究会は当初の予定どおり第12回で終わり、この第4集は第10-12回の講演録と第2回軽井沢合宿での講話の四つを第1章「鈴木孝夫の記念講演」として収録しています。目次は下記のとおりです。

第10回研究会「3・11後の今、下山の時代の現在こそ日本の出番だ」
―『人にはどれだけの物が必要か』(中公文庫、1999)をめぐって
第11回研究会「日本の漢字は世界の誇れる偉大な文化である」
―『日本語と外国語』(岩波新書、1990)第4、5章をめぐって
第12回研究会「タタミカゼ文化が日本を救う」
―『日本人はなぜ日本を愛せないか』(新潮選書、2005)をめぐって
第2回軽井沢合宿「私が目標としてきた『人間学としての言語学』の諸相」
―参考テキスト『ことばの人間学』(新潮社、1978)をめぐって


 鈴木先生と言えば、まず第一に私の頭に浮かぶのは『ことばと文化』(岩波新書、1973)と『武器としてのことば』 (新潮社、1985) ですが、この後者は『新・武器としてのことば―日本の「言語戦略」を考える』(アートデイズ、2008)として全面改訂版が出ています。

 今でも『ことばと文化』を読んだときの新鮮な感動は忘れられません。太陽の色が言語によって異なるという事例が特に衝撃的でした。また憲法9条を有する非武装国・日本がとるべき道は、「ことば」と「情報」への新しい戦略だという主張も、当時の私には「そうなんだ!」と本当に納得できるものでした。

 (どこだったか記憶にないのですが、鈴木先生は冗談のように「自分は右翼だ」と言われたことがありますが、その先生が、上記のような主張をされていることに,私はいたく感動しました。)

 いま北朝鮮の核開発問題を口実に、憲法9条を破棄し核武装のできる日本を!という主張すらも公然と叫ばれるようになってきていますが、このような危険な時代だからこそ、この本をもう一度読み直す必要があるように思います。

 イラク戦争の時と同じように、政府や大手メディアがふりまくプロパガンダに抗するためには、私たちに「ことば」「情報」を正しく読み解く新しい力が必要になってきているからです。原発事故の時も、どれだけ多くの嘘がふりまかれたでしょうか。

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3 上述のように、第4集は『人にはどれだけの物が必要か』『日本語と外国語』『日本人はなぜ日本を愛せないか』、そして『ことばの人間学』が講演・講話の材料として取りあげられています。

 最初に『人にはどれだけの物が必要か』を手にしたとき、これが言語学者鈴木孝夫の書いた本かと思い、大きな違和感を覚えました。しかし読んでみると私が実践している庭づくりや生活スタイルと一致するところが多く、納得できることばかりでした。

 たとえば生ゴミはすべて市役所のゴミ収集には出さないで、庭の肥料としてリサイクル使用するように私はしています。冬の暖房も庭から出てきた倒木や枯れ木を薪(まき)にしています。

 鈴木先生も、一年の半分以上をすごされる軽井沢での別荘生活は、わたしがやっていることと全く同じ生活スタイルで本当に親近感をおぼえました。しかし鈴木先生の場合は、道ばたに捨てられていた廃品までも回収してきて再利用するという徹底ぶりですから、とても私は真似ができません。

 さて、『人にはどれだけの物が必要か』を題材にした講演は「3・11後の今、下山の時代の現在こそ日本の出番だ」という題名になっています。鈴木先生にとっては、現在は「下山の時代」なのです。

 核兵器や原子力発電をつくるようになった人類は、もう上り詰めるところまで上り詰めたのであって、今はその頂上から下山することを考えるべきだ、日本も福島原発事故を教訓にして、これ以上の電力を使ったり、ものを浪費する生活から撤退すべきだと主張されているのです。

 日本が現在のような危機を迎えるに至ったのは、明治以来、西洋文化・アメリカ流の生活を至上の価値として受け入れてきたからに他ならないというのです。そして封建時代と蔑(さげす)まれてきた江戸時代を見直し、その良さを現代に甦らせろと主張されています。

 西洋列強が他国を侵略し、先住民を全滅させるなど、残虐のかぎりを尽くしているとき、日本は他国を一度も侵略せず「鎖国政策」を続けながら、ロンドンをもしのぐ江戸という巨大文化都市を創り上げてきました。

 ですから、今度の原発事故を契機に「原発セロ」「非武装日本」を世界のモデルとして売り出すべきだ、と主張されているのです。「自然を破壊し、他国を侵略し破壊してきた欧米」をモデルとする考え方から脱却し、「自然と調和しながら生きてきた江戸時代の日本」を新しいモデルとして提起する先頭に立つべきだというわけです。

 しかし今の安倍政権は「原発再稼働」「原発輸出」「兵器輸出の解禁」を主張し、イラクを初めとして中東に戦火と殺戮を拡大するばかりのアメリカに付き従うばかりですから、鈴木先生の主張と全く逆です。先生は「アメリカ主導のTPPは日本の自然と農業を破壊する」と主張されていることも、ここで特筆しておきたいと思います。

 この鈴木先生は日本語についても次のように主張されています。これを引用して第1章第1節「3・11後の今、下山の時代の現在こそ日本の出番だ」の書評を終えたいと思います。

時代は下山、そういう難しい時に日本は、ある意味ですばらしい出番の時を迎えているのです。(中略)

 で、そういうすばらしい日本をもっと世界の人に知ってもらうためには、日本語を知ってもらわな!いけない。英会話なんてどうでもいいということなのです。

 そして、世界中の人たちが日本の文学哲学・宗教・科学の本を日本語で読んで、日本のよさを学ぶことが肝心だ。日本語会話などできなくてもいい。

 ちょうど我々日本人が中国語の会話ができなくても漢文を一千年勉強して中国の先進的な文物や技術・制度等をとりいれてきた[のと同じです]。

 さらに明治以後は英独仏語は読めても会話ができる人間はほとんどいなかったが、我々の先輩たちは日本の中でヨーロッパの先進文化を学んで、ソクラテスからカント、ショーペンハウエルまで輸入し、必要なものをとりいれてきました。
 [だから今度は日本がお返しすべき時なのです。](pp.29-30)


要するに、この下山の時代は、アメリカの奴隷状態から脱却して日本の良さを世界に知らせることが大切だし、世界の人びとが「非核」「非武装」の日本文化を学ぶ時代を迎えているのです。日本をそのような国に変えなければならないのです。
(以下、次回に続く)

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選挙管理員会の証書を手に勝利宣言するベネズエラの新大統領マドゥロ氏
http://rt.com/news/maduro-venezuela-president-elect-918/


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緊急速報:ベネズエラの新大統領を認めようとせず,世界で孤立するオバマ政権

先日(2013年4月14日)、ベネズエラで大統領選挙が終わり、チャベスの後継者マドゥロ氏が当選しましたが、アメリカは投票の数え直しを主張し、新大統領を承認しようとせず、内乱を煽っています。

 かって2002年にチャベス大統領がアメリカの後押しするクーデタで拉致誘拐され、危うく命を奪われそうになった状況とそっくりになってきています。

 国外から多くの選挙監視団が訪れ、元大統領のカーター氏でさえ「世界で最も公平で開かれた選挙」と評価されているベネズエラの選挙を、オバマ氏は認めようとせず、日本の大手のメディアも、このアメリカ政府の主張を垂れ流すのみです。

 他方、DemocracyNow!(2013/04/17)で司会者のAmy Goodmanは「アメリカの大統領選挙でゴア氏とブッシュ氏が接戦を演じ、票数ではゴア氏が勝っていたのに結果としてブッシュ当選となった。このとき誰も全面的な数え直しを要求しなかったのに、今なぜベネズエラに全面的な数え直しを要求するのか」と疑問を呈しています。

Venezuela Accuses U.S. of Plotting Coup After Deadly Post-Election Protests
http://www.democracynow.org/2013/4/17/venezuela_accuses_us_of_plotting_coup

ベネズエラの新大統領を認めていないのは、アメリカと右翼政権のスペイン政府だけです。ところが、2010年6月. 民主的な選挙で選ばれたホンジュラス大統領マヌエル・セラヤを追放した軍事クーデタを、逆にオバマ政権は正式な政府と認めています。選挙なしのクーデタ政府をオバマ氏は拒否せず、そのまま認めたのです!!アメリカの言う民主主義とは、このようなものなのです。

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