『鈴木孝夫の世界』第4集(書評その3)――いわゆる「文盲」のいない文明国というのは日本だけです。アメリカもフランスも40%がちゃんとした文字の読み書きができません。緊急情報:アフガン大統領カルザイがCIAから給料を!!

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前々回のブログ『鈴木孝夫の世界』第4集(書評その2)で、鈴木先生が次のように次のように述べておられることを紹介しました。

そんな日本が、何で悪い日本語、とりわけタチの悪い漢字を使って世界一になれるのか。悪いどころか、むしろ他の言語にはない長所、不思議なまでの効能があったから日本大活躍の動力源になったのではないか、その秘密と構造を明らかにしようというふうに、言語学は行くべきだったのに、依然としてそういう気運はない。

それが日本の言語学界、国語学界の現状です。情けないかぎりですが、私は、漢字が悪いと言っているのは、言っている人間の頭が悪いと断言できます。だって遅れた資源もろくにないアジアの小国日本が、百年足らずのうち世界のトップクラスの国になってしまったという事実と、日本語が悪い言語だという命題はどう見ても両立しないでしよう。(pp.44-45)

以上は進歩的学者とみなされてきた 田中克彦氏の『漢字が日本語をほろぼす』(角川SSC新書、2011)にたいする反論でもありました。

また韓国も最近、漢字にたいする見直しを始めましたが、このことも注目すべき事実ではないでしょうか。

そこで以下では、『鈴木孝夫の世界』第4集の第1章第3節「タタミカゼ文化が日本を救う―『日本人はなぜ日本を愛せないか』(新潮選書、2005)をめぐって」を紹介しつつ私見を述べたいと思います。

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さて、「漢字が日本語をほろぼす」という攻撃だけでなく、日本語にたいするもう一つの攻撃は、「日本語には主語がないから非論理的な言語」だとする意見です。これにたいしても鈴木先生は次のように反論されています。

このように考えると、今までヨーロッパの言語に比べて劣っていると言われてきた日本語の特質が全部美点になるといってもいい。

日本語には主語がないと言われて、多くの偉い日本語学者たちががんばって「日本語にも主語がある」とすごく難しい本を書いたりしてきました。その内容は部分的には正しいのですが、しかしいわゆる主語がなくても言語として人間として上等なことがちゃんとやれているのだという本質問題があるのです。

主語がないから日本語が劣等で、日本語でのコミュニケーションがめちゃくちゃだとか、日本の科学や工業がだめになったということがありますか? 結果は、かえって主語のある言語をもつ国よりもうまくいっているんですよ。そういう結果からものごとを見るべきなのです。

日本語はヨーロッパの言語とは多くの点で確かに違うが、それはいい、悪いの問題ではない、むしろヨーロッパ語と同じでないからよかったんだ、というふうに見方を逆転するときが来ているのです。


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これまでのブログで何度も指摘してきたことですが、現在のEUは混乱の極致に至っていますし、世界一豊かな国だと言われてきたアメリカも今や「貧困大国」に転落したことは衆知の事実です。

豊かなのは一握りの上位層にすぎません。貧富の格差は拡大し一般庶民の生活は転落する一方です。(堤未果『ルポ 貧困大国アメリカ』、Chomsky『Failed State』)。

次の報道も、OECDに加盟する30の国のなかでアメリカは、「健康」「安全」「教育」など、あらゆる指標をとってみても最下位に近いことを、統計資料や映像資料を駆使しながら、まざまざと示してくれています。

The Truthseeker: US worst place to live?
http://www.youtube.com/watch?v=GFSEW4M1onA&list=SPPszygYHA9K1yU3SXHOoC7JhT2O7No-3D&index=9(10分30秒)

たとえば上記の報道では、アメリカは「健康」では28位で、その下に位置するのはトルコとメキシコだけですし、「安全」面では最低の30位で、その上にメキシコが位置しています。

もっと驚くべき事実は、「自由」という指標でもアメリカは28位で、その下にいたのは韓国(29位)、メキシコ(30位)でした。これが「自由の国」を標榜するアメリカの実態です。

それにたいして日本は多くの指標で上位を占めています。ちなみに「健康」「安全」では1位です。しかし、「自由」という指標では25位ですから、日本もこのままであれば、ますますアメリカに似た国になっていく恐れがあります。

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<註> 日本語に主語はないということを主張したのは『象は鼻が長い』という著書で有名になった三上章氏ですが(なんと驚いたことに、そのとき氏は高校の数学教師でした)、これにたいして多くの学者が「日本語にも主語がある」と反論しました。しかし、日本語に西洋文法で言うような主語はないということは動かしようのない事実でしょう(金谷武洋『日本語に主語はいらない』『英語にも主語はなかった』いずれも講談社)。

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アメリカが「貧困大国」であることの他に、ここでもう一つだけ指摘しておきたいことがあります。それはアメリカの非識字率です。これについて鈴木先生の次のような極めて興味深い指摘をされています。

日本語はどちらかというとインドネシアとかメラネシア、ミクロネシアなどネシア(島嶼とうしょ)型の言語で、日本の基層文明は完全に南洋型なのです。それに北方型の文明がかぶさっています。ここも二重構造になっているわけですね。

(琉球弧を含む日本列島のことを奄美大島とゆかりの深かった作家、島尾敏雄が「ヤポネシア」と命名しているのは慧眼(けいがん)です)

その日本語が、もしも古い日本語そのままだったとしたら近代の文明、つまり我々が享受しているような文明を受け止めることはできなかったでしょう。私はむしろ漢字こそ日本語を救ったのだと考えています。

そもそもの日本語は、受け皿としては力の足りない点があるのです。ところがそれを補ったのが漢字なのです。漢字というのは実に、日本語の理性的・理論的要素の不足という欠点を補って、庶民にまで難しいことをわからせる力をもたらした、大変にありがたい文字だったのです。

対して英語というのは、いまだに庶民に難しいことをわからせる手段を持っていません。イェール大学で教えていたときの講演の際のpithecanthropusの工ビソード(第1章第2節を参照)ひとつとっても、それははっきりしているのです。

日本語ではこのように難しい抽象的な概念が、庶民の生活にまでするりと入ってくるんです。日本の知的中間層はすごく広いのです。「文盲」もいないのです。これらはすべて漢字のおかげだと言ってもいいくらいなのです。

ついでに言えば、文盲がいない文明国というのは日本だけです。アメリカもフランスも四十パーセントがちゃんとした文字の読み書きができません。これは functional illiteracy(機能的文盲)と言って、アルファベットが読めても自分の名前すら書けない人が大勢いるのです。このことも実は私が発見したことなのです。(81-82頁)


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鈴木先生は上記の引用で「文盲がいない文明国というのは日本だけです。アメリカもフランスも四十パーセントがちゃんとした文字の読み書きができません」と指摘されています。

ここで思い出されるのが、かつて2004年8月21日にNHK教育テレビで放映された「読み書きの苦手をのりこえて」という番組です。

この番組では、知的能力及び一般的な理解能力などに特に異常がないにもかかわらず、文字の読み書き学習に著しい困難を抱える児童がとりあげられていて、しかもこのような識字障害(ディスレクシア:Dyslexcia)を一種の病気として紹介していました。

しかし番組を注意深く見ていると、私にはそれが病気だとは思えませんでした。というのは取りあげられている事例のほとんどはイギリスの児童のもので、読めない字というのが綴り字と発音があまりにも乖離(かいり)しているものばかりだったからです。

さらに調べて見ると、ディスレクシアがとくに問題とされているのが特に英語圏だということも分かってきました。スペイン語やイタリア語など文字がほぼ発音通りに綴られる言語では、ディスレクシアがそれほど大きな問題になっていないからです。

だとすれば漢字をもつ日本語が悪い言語であり、それが日本の経済発展を妨げてきたという説はますます怪しいことになります。

むしろ漢字こそが日本人の知的発展をうながした大きな要因だったという、先に引用した鈴木先生の説のほうがはるかに説得力をもってきます。

日本語ではこのように難しい抽象的な概念が、庶民の生活にまでするりと入ってくるんです。日本の知的中間層はすごく広いのです。「文盲」もいないのです。これらはすべて漢字のおかげだと言ってもいいくらいなのです。(82頁)


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かつて『ビッグ・ファット・キャットの世界一簡単な英語の本』という本が書店を賑わせました。

この本には「英語がこれだけ広まったのは世界一簡単な言語だから」という一文があり、これがこの本をベストセラーにした殺し文句だったのですが、これが真っ赤な嘘だったことは、英米における非識字率、ディスレクシアの深刻さを見れば分かるはずです。

ところが昨今の日本は、価値の高い漢字を捨ててカタカナ語を重用するようになりました。とくにNHKがその先頭に立っています。最近NHKが多用している「コンプライアンス」という用語がその典型例でしょう。

この場合も、「順法(遵法じゅんぽう)」という用語を使えば、普通の日本人であれば誰でも理解できるはずなのに、それをわざわざ理解不能なカタカナ語にする意味がどこにあるのでしょうか。

「公用語を英語にしたかったのに失敗した」と思っている一部の人たちが、せめて日本語の語彙だけでも「中国語=漢字」から「英語=カタカナ語」へ秘かに移行させようとしているのではないか、と疑ってしまいます。

(しかも日本の漢字はもう中国語ではなく日本語になっていることは前々回のブログで既に説明しました。)

カタカナ語で日本人の知的レベルが上がり経済発展すればよいのですが、おそらく逆の道をたどるでしょう。それは現在の「貧困大国」アメリカを見れば分かります。

恐るべし!日本を愛せない日本人、恐るべし!英語&アメリカ「大好き」人間、ではないでしょうか。

まだまだ紹介したいことが残っているのですが、もう十分に長くなりすぎていますので次回にまわしたいと思います。

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アフガニスタン大統領カルザイ
http://rt.com/usa/afghanistan-cash-corruption-karzai-547/


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緊急情報:アフガニスタン大統領のカルザイ氏がCIAから給料をもらっていた!!

 RT(2013/04/29)はニューヨークタイムズの記事として、カルザイ大統領がCIAから大量の給料を毎月もらっていたと報じました。カルザイ氏自身もこれを認めていますが「大した金額ではない」と開き直っているようです。
Karzai admits to being on secret US payroll
http://rt.com/usa/afghanistan-cash-corruption-karzai-547/

 もともとカルザイ氏はアメリカの大手石油会社ユノカルで取締役をしていたこともある人物で、911事件以後、アフガニスタンにおけるアメリカ合衆国の協力者としてターリバーン政権打倒に活躍し、アメリカの後押しで大統領になったわけですから、CIA要員だったとしてもおかしくはありません。

 しかしオバマ大統領による無人爆撃機Dorneによって無実のアフガン人が大量に殺されるという事件が続いていたため、アフガン民衆の怒りから自分の身を守るためでしょうが、アメリカにたいする批判を急速に強めていました。

 その矢先に、このNY Timesによる暴露記事が出たわけですが、これはオバマ政権による意図的なリークかもしれません。

 というのは、元パナマ大統領ノリエガ氏もCIAの要員でしたが、だんだんと自立してアメリカ批判を強めていた矢先に、麻薬取引その他の理由でジョージ・H・W・ブッシュ大統領による米軍のパナマ侵攻を受け、なんと!アメリカに連行されて、アメリカの刑務所に入れられてしまいました。

 実を言うと,条約によって1990年にパナマ運河がアメリカからパナマに引き渡されることになっていたのです。これはその1年前の出来事でした。ですから、カルザイ氏もノリエガ氏と同じ運命をたどる可能性もあります。

(ブッシュ一世によるアフガン侵攻については『肉声でつづる民衆のアメリカ史』下巻、412-9頁に詳しい記録が載っています。またこれについてはアカデミー賞を受けた有名なドキュメンタリーがあることも、413頁の註で紹介しておきました。)
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