W教研を終えて思ったこと反省したこと(下)

前回のブログで『魔法の英語』あすなろ社/三友社出版の表紙を飾っている愛犬が癌の末期であることをお伝えしましたが、あの原稿を書いた直後にとうとう他界してしまいました。

最後の1週間は夜も2時間おきに起きて水を飲ますなどの介護をしてきただけに、精神的打撃が大きく、このブログもなかなか書く意欲が湧かなかったのですが、ここで大きな空白をつくるわけにもいかず、なんとか心に鞭打ちながら以下のブログを書こうと思っています。

愛犬の病気と死についても教育問題や平和研究と深い関わりがあることに気づきましたので書きたいことがあるのですが、少し心が落ち着いてからにしたいと思います。
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さて前回のブログでは、「構造読みのワークショップ」についてK先生が、「8つのパラグラから成る文章を,前文・序論・本論・結論・後文に分けていく作業ですが,その前段階の『記号づけ』に悪戦苦闘している私たちがいました」と書いていることを紹介しました(下記引用の下線部)。

<文章の構造について,資料を輪読しながら,寺島先生の説明を受けました。その後,ワークショップ形式で英文と格闘することになります。8つのパラグラから成る文章を,前文,序論,本論,結論,後文に分けていく作業ですが,その前段階の「記号づけ」に悪戦苦闘している私たちがいました
 読み終えた人からホワイトボードに自分なりの解答を書いて,ディスカッションです。5,6の異なる意見を寺島先生にうまくまとめていただいて全員が納得できる答にたどり着くことができました。これまでの自分の「読み」の浅さに気づかされました。>

そして私は次のように前回のブログを終えています。
<この「前段階の記号づけ」は英文に三つの記号を書き込みながら直読直解して行く作業ですが、後で振り返ってみると、私はこの段階で「構造読みワークショップ」の組立てに完全に失敗していたのでした。それについては(疲れが出てきたので)次号で述べることにしたいと思います。>

なぜ失敗だったかというと、午後の中心はワークショップ「構造読み・要約読み・要旨読み」「批判読み(意地悪読み)」だったにもかかわらず、この「記号づけ」による直読直解に時間を取りすぎてしまったからです。

この講座の参加者は高校の英語教師ですから、わざわざ「記号づけ」をしながら読まなくても、ワークショップの課題として取りあげた英文は10~15分程度の短時間で読めるはずなので、「記号づけ」による直読直解は最初から省略して、いきなり「構造読み」「要旨読み」に挑戦してもらえばよかったのです。

ちなみに、ここで取りあげた英文は、今年の全国英語教育学会ワークショップ「要約指導法定式化への挑戦」で課題英文として取りあげられたものです。しかも私の主催する研究会会員がワークショップ講師の一人として登場するというので、その課題文を使って私も講座で同じ作業を参加者にしてもらったら、どんな結果になるだろうと思ったのです。

更に言えば、慶應大学の大津由紀雄先生が7月に実施された言語教育シンポジウムのテーマが「英文解釈法再考---日本人にふさわしい英語学習法を考える」だったので、この講座でもワークショップというかたちで「英語の読み」を再考する機会をつくってみたいとも思ったのでした。

しかし私の方では、「構造読み」だけでなく、「この機会に『記号づけ』による直読直解も実際に体験してもらおう」という欲張った課題を参加者に押しつけてしまったのでした。というのは「この『記号づけ』による直読直解を知って、初めて英語教師として自信を持てるようになった」という声を(不思議なことに津田塾やICUなど英語で有名な大学を卒業した教師から)少なからず聞いていたからです。

いわゆる「記号づけ」は、「丸」「四角」「カギ括弧」の三つの記号(しかも三つだけ)をつけるのですが、このときは時間の関係で「丸」と「四角」だけに限定しました。しかしK先生が次のように書いているとおり、この作業に意外と時間がかかってしまったのです。

<(「構造読み」とは)8つのパラグラから成る文章を,前文・序論・本論・結論・後文に分けていく作業ですが、その前段階の「記号づけ」に悪戦苦闘している私たちがいました。>

私は拙著『英語教育が亡びるとき』で、「英語教師自身が必ずしも英語を読む力を備えているわけではない」、つまり「直読直解しながら大量の英文を読む訓練をしているわけではない」し、ましてや「構造読み・要約読み・要旨読み」の訓練を受けている教師は稀である、したがって「批判読み(意地悪読み)」などは意識にすらのぼっていないと書きました。

ところが皮肉なことに,このワークショップで、上記で私が述べたことが、そのまま証明されるかたちになってしまいました。前述の通り、「8つのパラグラから成る文章を,前文,序論,本論,結論,後文に分けていく作業」に入る以前に、その前段階の「記号づけ」に悪戦苦闘している教師たちがいたからです。

教師たちがその前段階の「記号づけ」に悪戦苦闘することになったのは、私が「一通り『記号づけ』が終わったらペアで交換して正しく記号が付けられているかどうか確認してもらいます」「この『記号づけ』さえ見れば(心臓のカテーテル検査と同じように)英文が正しく読めているか簡単に分かります」と言ったので、何度も読み返すことになり、かえって読みに時間がかかったのかもしれません。

だとすれば、私はこのワークショップでは次の二つのどちらかを指示すべきだったのです。
(1)単文と単文をつないで複文をつくる連結詞に「四角」を付けて一気に読み下してください。絶対に返り読みしてはいけません。そして読了時間を計りますので記号を付け終わったら手をあげてください。
(2)今から「構造読み」をします。理論学習で学んだとおり、この文章を「前文,序論,本論,結論,後文」に分けてください。この作業が終わった人から、前の黒板に「前文は1~3」などというように、「前文・序論・本論・結論・後文」の区別を段落番号で書き込んでください。

(1)のように指示すれば、記号は四角だけですから時間を短縮できますし、「絶対に返り読みしてはいけません」「記号を付け終わったら手をあげてください」という指示で、さらに読みの速度を速めることができたのではないかと思うからです。

しかし今から思うと、この(1)の指示すら間違いであり、最初から(2)の指示で行くべきだったと思うのです。というのは、この講座の終了予定は4時でしたが、遠方からの参加者で一人だけ3時に会場を去らなければならない先生がいました。

だとすれば、その先生が参加している間に課題英文の「腑分け作業」と「前文・序論・本論・結論・後文」をめぐる討論を終え、「構造読み」の深さ・面白さをその先生にも体験してから帰ってもらう必要があったのです。
(そして「前文・序論・本論・結論・後文」の腑分けさえ出来れば「要約読み」「要旨読み」は終わったも同然であることも、その先生に体験してもらいたかったのです。)

事実、このワークショップを終えて帰るとき、一人の先生から「こんなに読むという作業が面白いとは思わなかった。構造をめぐる論争も面白かったし、最後の『批判読み(意地悪読み)』も非常に刺激的だった」というお褒めのことばをいただいたからです。

このような感想をいただいたときは「今日のワークショップは成功だったのか」とホッと一安心したのですが、飛行機で自宅に帰ってから冷静に振り返ってみると、「記号づけ」による直読直解に1時間近くも時間をかけるのではなく、理論学習を終えてすぐ「構造読み」の作業に移るべきだったという思いが、日毎に強くなってきたのです。

そうすれば3時に帰られた先生にも満足のいく講座になったでしょうし、最初に予定していた映像資料も見せることが出来たのに!! まさに「後悔先に立たず」でした。授業の組み立てというものは本当に難しいものです。

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