英語力は貧困力(番外編) 消費税の増税は必要か―月刊『楽しい授業』編集部への手紙(その2)
目次
0 はじめに(前号)
1 なぜ月刊『楽しい授業』を?
2 グラフ「日本の税金の変遷」
3 消費税がこれからの税の中心?
4 社会保障制度は本当に「危機」なのか(以下、次号に続く)
1 はじめに
突然の便りをお許しください。岐阜大学教育学部英語教育講座で「未来の英語教師」を育てていますが[当時、担当「英語科教育法」「異文化理解」]、大学で教師をしながらも日頃から『楽しい授業』を愛読してきました。板倉先生をはじめ皆さんの論考からいつも新鮮な刺激を受けています。
私は1944年生まれで、大学時代の専攻は教養学科「科学史科学哲学」でしたから板倉先生の後輩に当たります。浪人中に武谷三男の『科学入門』、入学してエンゲスルスの『自然の弁証法』や三浦つとむの『弁証法・いかに学ぶべきか』などを読み、専門学科を決めようとしていた頃、教養学部教養学科に「科学史科学哲学」というコースがあることを知り、迷わず科学史を選択することに決めました。
そんな私がなぜ大学で英語を教えているかについては機会があればお話ししたいと思いますが、いつも私の頭の中には仮説実験授業研究会の考え方を英語教育に応用するとどうなるのかという視点がありました。英語教師をしながらも日頃から『楽しい授業』を愛読してきたのは、そのような理由からです。
毎号の裏表紙に載せられている「グラフで見る世界」も、世界を違った視点で見るための貴重なデータがグラフ化されていますが、この図表が時間と共に埋もれて行ってしまうのが残念でたまりませんでした。ですから、これを単行本にしていただけないものかと、いつも密かに願っていました(カラー刷りですから、これを出版すると費用がかさむので難しいとは思いますが)。
2 グラフ「日本の税金の変遷」
そんな思いで毎号の「グラフで見る世界」を眺めていたところ、2008年10月号にグラフ「日本の税金の変遷」が載り、次のような説明が付けられていました。
「消費税がはじまって今年で20年、消費税が政府の税収入に占める比率はすでに20%ほどになっています。もしも税率が上がることになれば、「消費税」の占める比率が今後さらに増えることは明らかです。税金の主流が所得・法人税から消費税へと移り変わっていくのでしょうか」

この説明を読んでいる限りでは「税金の主流が所得・法人税から消費税へと移り変わっていくのでしょうか」という疑問文で終わっていますから、「税金の主流が所得・法人税から消費税へと移り変わっていく」ことに対して賛成なのか反対なのかよく分かりませんでした。
従来から「グラフで見る世界」は、俗説にたいして異論をぶつけ、それによって読者の思考をゆさぶる刺激的なデータに満ちていたように思います。考えてみれば、授業書もそのような刺激的な問いを生徒にぶつけ論争させ最後に実験で決着をつけるものであったからこそ、生徒に人気があったのではないでしょうか。
ですから、この図表も「消費税増税は当然だ」とする俗説にたいする批判的意味を込めて提出されたものだと思い込んで解説を読みました。というのは現在の政府は社会保障その他の財源不足を消費税増税によって乗り切ろうとしていることは、マスコミ報道から明らかでしたし、それにたいして異を唱えるマスコミも皆無に近かったからです。
3 消費税がこれからの税の中心?
しかし、「解説」(116頁)を読んで驚きました。というのはグラフ作成者の池田毅司さんは「これからの税の中心」という小見出しで次のように書いていたからです。
自民党の中には「政府の収入を増やすために<消費税>の税率をあげよ」という声があったのですが、「いま税率を上げると国民の生活を圧迫するところが大きい」「次の選挙に勝てなくなる」というので、「消費税」の税率についてはあまり触れなくなったようです。
では今後の税の中心は、今までどおり「所得税・法人税」ということになるのでしょうか。
現在、日本の人口は1億3000万人で65歳以上の老年人口比率は20%です。これが2025年には人口1億2000万人で65歳以上が30%、2055年には人口9000万人で65歳以上が40%と推計されています(国立社会保障・人口問題研究所の2006年推計、中位推計値)。
今後、所得税を納める人の比率がへり、年金を受け取る人の比率が増えるのはまちがいありません。
このようにみてくると、物やサービスを買うときにすべての人が納める税、つまり消費税がこれからの税の中心になるのではないでしょうか。(下線部は寺島)
では今後の税の中心は、今までどおり「所得税・法人税」ということになるのでしょうか。
現在、日本の人口は1億3000万人で65歳以上の老年人口比率は20%です。これが2025年には人口1億2000万人で65歳以上が30%、2055年には人口9000万人で65歳以上が40%と推計されています(国立社会保障・人口問題研究所の2006年推計、中位推計値)。
今後、所得税を納める人の比率がへり、年金を受け取る人の比率が増えるのはまちがいありません。
このようにみてくると、物やサービスを買うときにすべての人が納める税、つまり消費税がこれからの税の中心になるのではないでしょうか。(下線部は寺島)
上の下線部でお分かりのように、池田さんは裏表紙の「説明」では「税金の主流が所得・法人税から消費税へと移り変わっていくのでしょうか」という疑問文にしていたのが、本文の詳しい解説では明らかに論調が変わり、「消費税がこれからの税の中心になるのではないでしょうか」としているのです。
確かに解説文の最後も疑問文になっていますが、この解説を読む限り、池田さんには「消費税が税の中心になっても仕方がない」という考えがあるとしか読めません。彼はその論拠として次のような事実をあげています。
現在、日本の人口は1億3000万人で65歳以上の老年人口比率は20%です。これが2025年には人口1億2000万人で65歳以上が30%、2055年には人口9000万人で65歳以上が40%と推計されています。今後、所得税を納める人の比率がへり、年金を受け取る人の比率が増えるのはまちがいありません。
4 社会保障制度は本当に「危機」なのか
しかし、言語学者としてだけでなく米国外交政策の厳しい批判者としても世界的に有名なチョムスキーは、米国の社会保障費について次のように述べています。以下は、邦訳『すばらしきアメリカ帝国』( 集英社、2008)を元に、氏の著書『IMPERIAL AMBITIONS』の該当箇所を寺島が改訂翻訳したものです。(以下、次号に続く)
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