英語力は貧困力(番外編) 消費税の増税は必要か―月刊『楽しい授業』編集部への手紙(その4)

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目次
0 はじめに
1 なぜ月刊『楽しい授業』を?
2 グラフ「日本の税金の変遷」
3 消費税がこれからの税の中心?
4 社会保障制度は本当に「危機」なのか
5 法人税の引き上げを、そして所得税を累進課税に
6 税収 - 倍増した消費税、半減した法人税・所得税(以上、前号)
7 日本の法人税は高すぎるのか
8 金持ち減税の実態 - 最高税率75%が今では37%
9 金持ち特権階級「ただ乗り」税制
10 金融資産への課税強化を(以下、次号に続く)

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7 日本の法人税は高すぎるのか
 ところで、「欧米と比べて日本の法人税は高すぎる」という点については既に見たとおり森永氏が明快な反論をしていますが、神野・宮本編の前掲書でも次のように述べています。

大沢: 同じOECDのデータで所得税を見ると、先進国の中で日本がいかに所得税負担が軽いか、よくわかります。しかも所得税負担はこの間に、さらに下げられた。その一方で、年金保険料は、現行の一四%程度が二〇二二年までに一八・三%へと引き上げられ、介護保険料にしても低下する可能性はありません。(前掲書23頁)

神野: 企業の利潤そのものが、欧州は日本よりも小さい。たとえばフランスの場合、事業主の社会保険料負担は日本の三倍以上、ドイツでも二倍弱です。利潤はそれだけ圧縮される。そうすると、対GDP比に占める法人利潤も当然小さくなるわけですから、それに対する税負担で比較すれば、日本の企業の負担は圧倒的に小さいことになります。(前掲書26頁)


このように、法人税を引き下げていることが日本の社会保障財政を大きく苦しめていることが分かりますが、もう一つ財源を減らしている理由は企業が正規雇用を大幅に削減していることにあります。それを前掲書では次のように述べています。

大沢: 要するに正規雇用を非正規雇用へ、フルタイムをパートタイムへ置き換えることで、厚生年金適用を外し、労働費用をカットしたわけです。その結果、厚生年金制度は、被保険者数でも適用事業所数でも九七年をピークに収縮しています。脱法的な未適用、つまり適用されるべきなのに未加入の人は、最大で九二六万人、未加入率は一割ないし二割にも達すると見られます。(23頁)


つまり企業は法人税を払わなくなっただけでなく、正規雇用を非正規雇用へと転換することによって厚生年金の費用を払わなくなったので、ますます社会保障の財源が減ったわけです。


8 金持ち減税の実態 - 最高税率75%が今では37%
 いま日本では非正規雇用=ワーキングプアが大きな問題になっていますが、こうして貧困者を激増させていますから、所得税による財源も減っていきます。それに追い打ちをかけているのが金持ちに対する減税です。それは次の図によく表れています。



ご覧のとおり、所得税も、かつては最高税率が七五%でしたが、いまでは三七%にまで引き下げられました。相続税も最高七五%あった税率が、現在は五〇%です。その上、〇三年からは相続時精算課税まで導入されました。つまり高額所得層の税率を大幅に下げてきたわけです。これに関して前掲書(22頁)では次のように説明しています。

 その上、〇三年からは相続時精算課税まで導入されました。親が子どもに対して、生前に資産を贈与しやすいような制度をつくったのです。これは実質的に、民法上は認められていないはずの生前遺産分割です。相続税の税率が高いと資産家は自分で使ってしまい、低ければ貯蓄に回すといわれています。資産活動への税の優遇は景気回復にはむしろ逆効果なのではないでしょうか。

 (中略) いずれにせよ、この一〇年余りの間に、「持てる者」に手厚くし、そうでない者は置き去りにするような税制改革が一貫して行われてきました。その典型例が所得税の基礎控除で、いまだに年間三八万円に据え置かれたままです。課税最低限を諸外国と比較するなら、この数字で比べないといけません。



9 金持ち特権階級「ただ乗り」税制
 要するに、貧困層にたいしては底辺層まで課税し、超富裕層には減税どころか全体として税の負担が低くなっているのです。チョムスキーが先に「金持ちの特権階級はただ乗り」と言っていたものです。これを如実に示すのが次のグラフです。(前掲書228頁)



 ご覧のとおり、所得税・社会保険料・消費税を合計したもので調べてみると、年収二千万円を境にして、それ以上の富裕層は税金負担率が激減していきます。これは上図で明らかなように「税額控除による課税漏れ」「分離課税による課税漏れ」「除外項目による課税漏れ」が重なった結果です。このような逆累進課税になっているものを是正するだけで大きな財源が生まれることは、もはや明らかではないでしょうか。
なぜなら、この近年、一般の勤労者と違って、富裕層の収入は増えることはあっても減ることはなかったからです。それを森永氏は前掲書『教育格差の真実』で次のように述べています。

 次に、雇用者報酬です。雇用者報酬とは、サラリーマン全体に支払われた給与やボーナスの合計額、つまり、働く人への分配金のことです。二〇〇二年から〇七年までの五年間で、これは小泉構造改革の期間とほぼ一致しますが、日本の名目GDP(国内総生産)は二二兆円増えた。ところが、その五年間に、働く人への分配金は五兆円も減ったんですね。二六八兆円から二六三兆円へと雇用者報酬は五兆円も減少した。そればかりか資本金一〇億円以上の大企業の役員報酬は二倍になり、株主配当は三倍になった。(前掲書46-47頁)

 こうして一億総中流といわれた日本はあっという間に階層化されて、所得格差が出現しました。二〇〇七年の国税庁の統計では、サラリーマンの平均年収は九年連続して減少しているんです。毎年のように実施される増税や社会保険料の上昇のせいで、手取り収入の平均は大幅に下がった。しかも、所得の二極化が起こっているんです。これも国税庁の統計ですが、年収二〇〇万円台の人が一〇二三万人に達する一方で、年収一〇〇〇万円や二〇〇〇万円以上の人も大きく増えている。

 つまり、中間層が消えて、階層分化が起きていることは明らかなんですね。それにしても、年収二〇〇万円台の人が一〇〇〇万人を超えたのは二一年ぶりですよ。その一方で、働かずに暮らせる人が、どんどん増えているんですよ。(前掲書48頁)


10 金融資産への課税強化を
 このように、働かずに株の配当だけで左団扇の人々は、所得が三倍に増えているということです。ところが日本の税制は、このような人たちにはほとんど課税していないのです。前掲書『脱「格差社会」への戦略』第五章「金融資産への課税強化を」で、森永卓郎氏は次のように語っています。(以下、次号)
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