英語力は貧困力(番外編)、消費税の増税は必要か―月刊『楽しい授業』編集部への手紙(その5)

────────────────────────────────────────
目次
0 はじめに
1 なぜ月刊『楽しい授業』を?
2 グラフ「日本の税金の変遷」
3 消費税がこれからの税の中心?
4 社会保障制度は本当に「危機」なのか
5 法人税の引き上げを、そして所得税を累進課税に
6 税収 - 倍増した消費税、半減した法人税・所得税
7 日本の法人税は高すぎるのか
8 金持ち減税の実態 - 最高税率75%が今では37%
9 金持ち特権階級「ただ乗り」税制 (以上、前号)
10 金融資産への課税強化を
<追伸> 法人税を高くすると経済成長率が止まる?

────────────────────────────────────────
10 金融資産への課税強化を
 このように、働かずに株の配当だけで左団扇の人々は、所得が三倍に増えているということです。ところが日本の税制は、このような人たちにはほとんど課税していないのです。前掲書『脱「格差社会」への戦略』第五章「金融資産への課税強化を」で、森永卓郎氏は次のように語っています。
たとえば株式の売却益への課税が一〇%というのは、どう考えてもおかしくないか。ホリエモンが、もともと大きな価値を持たなかった自社株を一四〇億円で売却しても、一〇%しか税金を取られない。他方、普通のサラリーマンはといえば、限界税率は所得税一〇%、地方税が五%、それに健康保険・雇用保険・厚生年金等を合わせると、三〇%も持っていかれるのだ。

なぜ年収五〇〇万のサラリーマンが三割も税金を取られて、紙くずを一四〇億円に変えたホリエモンがたったの一割しか持っていかれないのか。これはとんでもない不平等である。税率が同じだとしてもまだ不平等だ。一生懸命、額に汗して働いたお金には高率の課税をして、濡れ手に粟で右から左にもうけたカネにはあまり課税しない。これはもう、税制の基本原則に反する。

私は「金融資産課税」を行うのが一番だと考えている。これは、世帯あたり一五〇〇万円を超える部分にだけ、一律、一一%の税率をかけるというものだ。すると課税べ-スで一〇〇〇兆円ぐらいになるので、三〇兆円も入る。劇的に税収が増えるのだ。もう国債を発行しなくてもよくなる。しかも四分の三の世帯は、一銭も払わなくてすむ。(前掲書57頁)


以上で見てきたように、消費税を値上げしなくても社会保障の財源を確保する道はいくらでもあるのです。ところが本論の冒頭でも述べたとおり、池田毅司さんは「消費税がこれからの税の中心になるのではないでしょうか」と、当然のごとく述べています。

 しかし、これでは、俗説・通説に鋭い疑問を突きつけることが仮説実験授業研究会や『楽しい授業』「グラフで見る世界」の一貫した姿勢であったはずなのに、その評判・名声を傷つけることになっているのではないかと恐れています。

  とりわけ、『楽しい授業』「グラフで見る世界」は現場教師だけでなく多くの一般市民に広い読者を持つだけに、その影響力は計り知れません。私の勤務する大学でも図書館職員に『楽しい授業』の読者がいることを知って驚いたことがあります。

 だからこそ、今回の池田さんのグラフについてはどうしても一言コメントを申し上げたいという思いが強くなり、こうして筆を執った次第です。よろしく御検討いただければ幸いです。




<追伸> 法人税を高くすると経済成長率が止まる?
 社会保障の財源については、米軍グアム島移転費やミサイル防衛計画など、直すべき財源は他にも多くありますが、既にスペースを取りすぎていますので、ここでは割愛させていただきます。
 また企業への税金を高くすると経済成長率が止まるのではないかとの疑問・批判があるでしょうが、前掲書『脱「格差社会」への戦略』がこれに対しても明快に反論する次のようなグラフを載せています(125頁)。



 税金を高くすると経済成長率が下がると言う人たちの理論どおりであれば、縦軸が「租税負担率」,横軸が「平均実質成長率」ですから、上記図表の平均値は右肩下がりの直線を描くはずです。しかし、これを見ていただければお分かりのとおり、一九九一年から二〇〇〇年までの直線はほぼ水平です。
 
 この図表で最も経済成長率の高いノルウェーは日本の租税負担率三〇%を遙かに超えて四〇%強です。またこの図表で租税負担率が最も高いスウェーデン(五〇%以上)ですら経済成長率は日本よりも高いのです。また、学力世界一で有名になったフィンランドも、租税負担率が日本よりも高いにもかかわらず、経済成長率が高いことにも注目していただきたいと思います。

 よく知られているように、ノルウェーもスウェーデンもフィンランドも社会福祉が充実している国です。つまり国民が安心して消費にお金を回せる国が結果として経済成長率が高くなっていることを、この図表は示しているのではないでしょうか。前掲書『脱「格差社会」への戦略』でも神野直彦氏は次のように解説しています。

育児や養老など、生活に密着した対人社会サービスを充実させることが、いま必要になってきているのではないか。これはOECDの統計の分類でいえば、「年金」や「医療」以外の、「家族現物」や「高齢者現物」「その他」などに含まれます。

かつてのような金銭給付的な社会保障をそのまま復活させるのではないにせよ、生活を保障する新たなシステムをきちんと構築した国が経済も伸びている。ところが日本はこの部分が弱く、社会保障のなかでも、依然として年金と医療のウェイトだけが突出しています。(125頁)

その一方で、必要な生活保障サービスが現にないことが、医療や年金にはね返っている面もありますよね。たとえば欧州ではケアハウスが提供されているために、年金の給付水準はそれほど高くなくても大丈夫だったりする。(126頁)


 つまり、既に何度も言ってきたことですが、今のところ消費税率を緊急に引き上げなければならない根拠は何もないのです。むしろ経済成長にとっては逆効果でしょう。それを傍証するものとして下記論文をぜひ読んでいただきたいと思います。

Stucker and Basu 「医療・福祉への1ドルは、3ドルの経済成長をもたらす」
http://www42.tok2.com/home/ieas/HowAusterityKills.html

関連記事
スポンサーサイト
検索フォーム
プロフィール

狐狸庵居士(田舎の国立大学を2010年に定年退職)

Author:狐狸庵居士(田舎の国立大学を2010年に定年退職)

リンク
最新記事
全記事表示リンク

全ての記事を表示する

カテゴリ
月別アーカイブ
最新コメント
RSSリンクの表示
QRコード
QR