"Big Brother" の面目躍如たるオバマ大統領(上)――英国政府を通じてガーディアン紙のハードディスクを破壊、グリーワルド氏のパートナーを空港で拘束、そしてついに国連までも盗聴!

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威容を誇るNSA(国家安全保障局)本部

NSA(the National Security Agency) at Fort Meade, Maryland
http://rt.com/usa/nsa-payed-internet-companies-911/

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Key Words国家安全保障局 NSA、盗聴プログラム "XKeyscore"、米州機構OAS(Organization of American States)、ボリビア大統領エボ・モラレス、エドワード・スノーデン、グレン・グリーンワルドGlenn Greenwald、デビッド・ミランダDavid Miranda、ガーディアン紙の編集長アラン・ラスブリッガーAlan Rusbridger、ジョージ・オーウェル『1984年』、ビッグ・ブラザー Big Brother

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前回のブログを書いてから10日がすぎようとしているのですが相変わらず腰痛がひどく、なかなかパソコンに向かう気力が沸いてきません。

しかし世の中の情勢を見ていると神経を逆なでされるような事件が次々と起きて、このまま座視するわけにはいかないという気持ちも強くなってきます。

特にアメリカが、国内だけでなくEUなどの国外にまで盗聴の手を広げ、遂には国連本部に盗聴マイクを仕掛けるまで至っていることを示す次のニュースを見て、これは放置しておけないと思うようになりました。

NSA bugged UN headquarters
http://rt.com/news/nsa-us-un-germany-snowden-964/(August 23, 2013)

そこで「英語力は貧困力」という連載を一時中断して、今回は「このアメリカの動きをどう見るべきか、それが日本とどう関わるか」について私見を述べることにしたいと思います。
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<註> bug【他動】盗聴する、~に盗聴用マイクをつける〔盗聴用のマイクロフォンは虫(bug)のように小さくて、さりげなく机の脚や引き出しの中、あるいは天井に取り付けられることから。〕●tapも同意語。彼の電話には盗聴装置が仕掛けられている(His telephone has been tapped. )出典『英辞郎』
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アメリカが「War on Terror」を口実に、国内だけでなく国外にまで盗聴・監視網を広げていることはすでに下記ブログで紹介しました。

[緊急情報] エドワード・スノーデンとは誰か?――米国NSAによる世界監視網、EUでは、ドイツが監視対象ナンバーワン!!
http://pub.ne.jp/tacktaka/?entry_id=4941737

アメリカが、EUの牽引車となっている経済大国ドイツを、とりわけ厳しい監視・盗聴の対象として選んでいることは、「War on Terror」という口実が、まさに「口実」にすぎないことを如実に示しています。

かつて日本が「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と言われていた頃、アメリカ=CIAが日本を大きな攻撃目標の一つにしていた(ティム・ワイナー『CIA秘録』文藝春秋、2008)のと似ています。

さらに今度は、国連がスパイ行為の対象になっていたことが暴露されたのですから、アメリカの言う「テロ行為をおこなう危険性のある人物や団体を監視する」ための盗聴行為だというのは、まったくの嘘だったとしか言いようがありません。

なぜなら国連やEU(とくにドイツ)が監視対象になるということは、これらの組織や国家が「テロ組織」「テロ国家」だとみなされていることを意味するからです。ドイツ国民がアメリカに対して激しい抗議行動を展開したのは、ですから当然のことでした。

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世界中に広がる監視・盗聴プログラム "XKeyscore"のサーバー分布図

The map of XKeyscore servers from a 2008 presentation
NSA's XKeyscore gives one-click real-time access to almost any internet activity
http://rt.com/news/xkeyscore-nsa-snowden-prism-858/(July 31, 2013)

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このようなアメリカの盗聴・監視活動にたいする怒りは、ドイツだけでなく世界中に広まりつつあります。その怒りがとりわけ激しかったのが中南米でした。

というのはボリビアの大統領エボ・モラレスがロシアでの国際会議から帰国する途中、大統領専用機が「亡命を希望しているエドワード・スノーデンが乗っている可能性がある」という理由でオーストラリアのウイーンで強制着陸させられたからです。

国際法では、正当な理由があれば誰にでも亡命する権利があり、どの国であろうと正当な理由があればそれを受け入れる権利があります。

しかしアメリカが自分の意向に従わないという理由だけで小国ボリビアの大統領機をオーストリアに命じて強制着陸させて機内を捜索させたのですから、その傍若無人ぶりに中南米の怒りが頂点に達したのも当然でした。

もしロシアが旧ソ連の小国に命じて同じような行為をしたらアメリカはどう反応したでしょうか。

そこで、米州機構OAS(Organization of American States)の緊急会議が招集され、このような国際法をふみにじる行為にたいする糾弾決議が採択されました。この決議に反対を表明したのはアメリカとカナダだけで、オバマ政権の権威はアメリカ大陸では完全に失墜してしまいました。

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<註>> この間の事情をチョムスキーは下記の論文で詳述していますので、時間的にゆとりのあるかたは参照してください。
Noam Chomsky: Imperial Power on the Decline
http://www.zcommunications.org/america-s-imperial-power-is-on-the-decline-by-noam-chomsky(Aug 03, 2013)

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ガーディアン紙の記者グリーンワルド(左)と英国ヒースロー空港で拘束されたミランダ(右)

http://rt.com/news/uk-detain-greenwald-partner-terrorism-645/

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心あるひとたちの神経を逆なでし、世界の怒りをかきたてたもう一つの事件がありました。

それは、イギリスUKがアメリカUSの意向を受けて、ドイツからブラジルに帰国しようとしていたデビッド・ミランダDavid Mirandaを、乗り継ぎ空港であるヒースロー空港で拘束した事件です。

ミランダ氏は8月18日、英国テロリズム法第7条に基づいて、罪状なしで拘束できる最大時間である9時間も、ヒースロー空港で拘束され、パソコンや携帯電話などのすべてを没収されてしまったのです。

UK Media Crackdown: Greenwald’s Partner Detained, Guardian Forced to Destroy Snowden Files
http://www.democracynow.org/2013/8/20/uk_media_crackdown_greenwalds_partner_detained

しかもオバマ政権は、イギリス当局者から「ミランダを拘束するという事前通告」を受けていたことを認めています。

ミランダ氏はは、NSAの大規模なスパイ活動をスノーデンからの情報をもとに暴露したガーディアン紙のジャナーリスト=グレン・グリーンワルドGlenn Greenwaldのパートナーであるという理由だけで拘束されたのです。

不正行為を暴露しようとしたジャーナリストを弾圧するだけでなく、その友人、恋人、パートナーまで執拗に追いかけ回し、物理的にも拘束して脅迫するのですから、アメリカの誇る「報道の自由」とはいったい何でしょうか。

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情報の入ったハードドライブを泣く泣く破棄した、と語るガーディアン紙の編集長

http://rt.com/news/guardian-hard-drives-destroyed-697/

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この話にはもう一つの挿話を欠かすことができません。それは世界最強の帝国が犯している犯罪に、旧大英帝国が加担・共謀しているというニュースです。

オバマ大統領の意向を受けてミランダ氏を拘束したイギリス政府が、それだけにとどまらず、新しい攻撃を始めたのです。

グリーンワルド氏が寄稿しているガーディアン紙にたいして、イギリス政府が「スノーデンの機密文書を破棄するか、さもなくばそれらをこちらに渡せ」と脅迫してきたことを、ガーディアン紙の編集長が明らかにしました。

UK ordered Guardian to destroy hard drives in effort to stop Snowden revelations
http://rt.com/news/guardian-hard-drives-destroyed-697/(20.08.2013)

結局、ガーディアン紙の編集長アラン・ラスブリッガーAlan Rusbridgerは、機密文書の入ったハードドライブを破壊する道を選びました。これが「報道の自由」を守るための最低限の抵抗であると思われたからです。

憲法学者であったオバマ大統領には「テロリスト」と「ジャーナリスト」の区別がつかないようです。これでは世界最強の帝国(および旧大英帝国)の威信は、落下の速度を速めるだけでしょう。

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それはともかく、ジョージ・オーウェルの小説『1984年』で描かれた世界が、フィクションではなく今まさにイギリスやアメリカで現実のものになろうとしていることは、本当に恐ろしいことです。

あの小説に登場するビッグ・ブラザー Big Brotherの像が、オバマ氏の姿と二重写しになって見えるのは、私だけなのでしょうか。

かつてチョムスキーは、「権力者の知られたくないことを暴露するひとは、しばしばテロリストとして扱われる」と述べたことがありますが、いま改めてこのことばの重さをかみしめています。
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