"Big Brother" の面目躍如たるオバマ大統領(下)――「通信の秘密」と「報道の自由」を守るため自主閉鎖"Seppuku"を決意する弱小企業

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泣く泣く「暗号化メールプロバイダーLavabit」の閉鎖を決意したLadar Levison

http://rt.com/usa/lavabit-levison-internet-surveillance-816/

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Key Words: Encrypted Eamil(暗号化されたメール)、エドワード・スノーデン、NSA(国家安全保障局)、Lavabit、ラダー・レビソンLadar Levison、Silent Circle、Groklaw、"We Pay, They Spy"、不安ビジネス、スメドレー・バトラー将軍、上院CIA調査特別委員会(チャーチ委員会)

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私は前回のブログ[緊急情報]で、オバマ大統領の意向を受けてミランダ氏を拘束したイギリス政府が、それだけにとどまらず、新しい攻撃を始めたことを紹介しました。

グリーンワルド氏が寄稿しているガーディアン紙にたいして、イギリス政府が「スノーデンの機密文書を破棄するか、さもなくばそれらをこちらに渡せ」と脅迫してきたことを、ガーディアン紙の編集長が明らかにしました。

UK ordered Guardian to destroy hard drives in effort to stop Snowden revelations
http://rt.com/news/guardian-hard-drives-destroyed-697/(20.08.2013)

結局、ガーディアン紙の編集長アラン・ラスブリッガーAlan Rusbridgerは、機密文書の入ったハードドライブを破壊する道を選びました。これが「報道の自由」を守るための最低限の抵抗であると思われたからです。

イギリスと同じことがアメリカ国内でも起きています。

NSAがアメリカ国民のメールを盗聴しようにも、これに抵抗してメールを暗号化して顧客のプライバシーを守ろうとする弱小会社があったのです。

このLavabitという会社にたいしてオバマ氏は「スノーデンがこの会社を利用していた疑いがある」という理由でイギリス政府と同じ要求を突きつけました。

しかし、Lavabit の経営者であるラダー・レビソン Ladar Levison氏 は、顧客の情報を政府に渡すくらいならと(持っている情報のすべてを破壊して)泣く泣く会社を閉鎖する道を選びました。

情報の引き渡しを拒めば自分も牢屋送りになる危険性があったからです。

Owner of Snowden's Email Service on Why He Closed Lavabit Rather Than Comply With Gov't
http://www.democracynow.org/2013/8/13/exclusive_owner_of_snowdens_email_service

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Lavabitに同調して自主閉鎖を決断したSilent Circle

http://rt.com/usa/silent-circle-shutdown-lavabit-300/

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しかし会社の自主閉鎖に追い込まれたのはLavabitだけにとどまりませんでした。

というのは、Lavabitが閉鎖を宣言した数時間後に、メールのプライバシーを顧客に保証していたSilent Circle(創業者Mike Janke)という弱小会社も、「政府がおこなっている犯罪に加担したくない」と言って、同じように自主閉鎖を宣言したからです。

Another encrypted Internet service shutting down after Lavabit
http://rt.com/usa/silent-circle-shutdown-lavabit-300/

自主閉鎖はさらに続きました。

IT関係の報道でさまざまな賞を受賞してきたGroklawという会社(創業者Pamela Jones女史)も、「情報源の秘匿という原則を守れなくなった、もはや報道の自由はない」と自主閉鎖を宣言したのです。

'No shield from forced exposure': Groklaw website shuts down over NSA spying
http://rt.com/usa/groklaw-shuts-down-privacy-741/(August 20, 2013)


こうして、「報道の自由」と「プライバシーの権利」を守るため、Lavabitなど三つの会社が、政府に情報を提供するくらいならと、相継いで、自ら情報を破棄し会社を閉鎖する道を選びました。何とも痛ましい話です。

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このニュースには、さらにもう一つの挿話が続きます。

というのは、Google, Yahoo, Microsoft, Facebook といった巨大IT企業が、アメリカ国民をスパイするのに協力する見返りとして、総計何百万ドルものお金をもらっていたことが、分かったからです。

NSA paid millions to Internet companies to cover surveillance program costs
http://rt.com/usa/nsa-payed-internet-companies-911/(August 23, 2013)

弱小IT企業が、血のにじむような努力をして積み上げてきた成果を棒に振ってまで国家の犯罪に抵抗し、国民のプライバシーを守るために闘っているときに、これら巨大IT企業の貪欲さを何と表現したらよいのでしょうか。

上記の報道は映像ニュースとしても見ることができますが、その見出しは「我々が支払った金で奴らは俺たちをスパイする」「NSAによって、血税で支援されるシリコンバレー」というものでした。言い得て妙、と思わずうなってしまいました。

We Pay, They Spy: NSA backs Silicon Valley with taxpayers' money
https://www.youtube.com/watch?v=-fc1dUOEWC8(2013/08/24)

日本企業は、しばしば「親方日の丸」と非難されてきましたが、アメリカはその比ではありません。巨大企業が自国民をスパイすればするほどお金が天から降ってくるのですから、こんなに美味しい話はありません。

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実を言うと、スノーデンが勤務していた民間企業も、NSAやCIAの幹部が天下りしてつくった数多い外注会社の一つでした。

これも、アメリカ国民はおろか世界中をスパイして、そのお金は全てNSAすなわち血税から支払われるわけですから、一度始めたら辞められない商売でしょう。

しかし、これを逆に言うと、世界にテロや戦争がなくなり、アメリカが攻撃される心配がなくなれば、彼らは失業する危険性があるわけです。

アメリカがいま力を入れている「民間軍事会社」の拡大についても同じことが言えます。

彼らが失業しないためには、あるいは企業規模を拡大するためには、永遠にテロリストを養成し、永久に戦争を続けなければなりません。まさに小説『1984年』の世界です。しかしなんというおぞましい世界でしょう。

これはアメリカの全土で拡大している「不安ビジネス」「刑務所民営化」についても同じことが言えます。アメリカで犯罪が絶えない理由の一つは、これで説明がつきます(詳しくは拙著『英語教育原論―英語教師、三つの仕事・三つの危険』120-122頁を参照ください)。

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シリアへの干渉戦争に反対して官庁街(White Hall)を埋め尽くすロンドン市民

Protesters block Whitehall during a demonstration against British military involvement in Syria
opposite Downing Street in central London on August 28, 2013.
http://rt.com/news/syria-crisis-live-updates-047/

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ソ連が崩壊したとき、米軍もCIAも国民から規模縮小を命じられ、職を失う恐れがあるペンタゴンもCIAも新しい敵と新しい仕事を探すのに躍起になりました。

私はちょうどその頃カリフォルニア州立大学で1年間、日本語を教えていたのですが、そのとき米軍を退職して軍港のあったオークランドの放送局に仕事を見つけたひとと知り合いになり、その裏事情を知ることができたのでした。

そのころ日本は、アメリカの土地やビルを買いあさる世界第2の経済大国として、アメリカに大きな脅威を与えつつありましたから、これをいかにたたきつぶすかがアメリカの重要な課題になりつつありました。

こうしてCIAも日本企業の行動をスパイするという新しい仕事を見つけたのでした(ティム ワイナー『CIA秘録』文藝春秋舜)。「ジャパン・バッシング」が始まったのもこの頃からです。

ですから、NSAが「テロとの戦争」を口実に、アメリカの「国益」、すなわちアメリカ大企業の利益を守るためにスパイ・監視活動をしていたとしても何の不思議もないわけです。

そもそも元大統領ブッシュ氏によるイラク侵略も「大量破壊兵器」を口実にしていましたが、実は石油獲得のための戦争だった[少なくともそれが最大の理由だった]ことは、その後の経過で赤裸々に暴露されてしまいました。

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いまブラッドリー・マニングやエドワード・スノーデンによって暴露された事実によって、世界最強の帝国(およびそれと共謀する旧大英帝国)の威信は、落下の速度を速めています。

それをくい止めるためには、世界中の耳目を集めるような大事件に皆の関心を向けさせるのが一番です。私には、それが「シリア政府による化学兵器の使用」というニュースではないかと思うのです。

イギリスやアメリカが[そしてイスラエルも]、アラブ諸国の一部と手を握り、虎視眈々と干渉戦争にのりだす準備をしているときに、アサド政権がみずから墓穴を掘るために化学兵器を使用するなどということは、常識では考えられないからです。

私には、「化学兵器」を口実にしたシリアへの攻撃は、「大量破壊兵器」を口実にしたイラク戦争の繰り返しにすぎないと思われるのですが、これが本当かどうかは事件の経過が証明してくれることでしょう。

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<追記> 私が『肉声でつづる民衆のアメリカ史』(明石書店、2012)の翻訳に取り組んでみての、最大の驚きと発見は、大統領はしばしば単なる「巨大企業の番頭」「巨大企業のセールスマン」にすぎないということでした。
 その具体例として、ここでは二つの事例だけを紹介するにとどめます。
(1)スメドレー・バトラー将軍「私は33年と4か月の間、大企業の用心棒として時をすごした」(『肉声でつづる民衆のアメリカ史』上巻、442-448頁)
(2)上院CIA調査特別調査委員会「1973年のチリ・クーデターは、CIAとアメリカ多国籍企業ITTによる共謀だった」(同上『肉声史』下巻、315-319頁)
 つまりオバマ氏と言えば「正義の味方」のようなイメージがありますが、アメリカの歴史を丹念にたどってみると、アメリカ大統領は「巨大企業のセールスマン」にすぎないことがよく分かります。
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