書評『チョムスキーの「教育論」』(明石書店、2006)

家畜化教育、チョムスキー教育学、市場民主主義の生贄(いけにえ)、「法人」という死なない個人(2013/09/16)
「チョムスキーの『教育論』」

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 「EH研究会」という英語教育のメーリングリストを通じて、インド在住の作家モハンティ三智江さんと知り合いになりました。
 そして「インドの英語事情」など色々やりとりしているうちに拙訳『チョムスキーの「教育論」』について鋭くかつ暖かい書評をいただきました。
 いま安倍内閣の「教育再生実行会議」による教育破壊(そして生活破壊)が強力に進行しつつあるときだけに、この書評を本ブログで紹介したくなり、許可をお願いしたところ快諾をいただきました。そこで以下に転載させていただくことにしました。
 なお『チョムスキーの「教育論」』の目次は下記のようになっています。
序 章 チョムスキー教育学(ドナルド・マセード)
第1章 「家畜化教育」を超えて——マセードとの対話
第2章 教育にとって「家畜化」とは何か
第3章 教育にとって大学とは何か
終 章 教育にとって市場経済とは何か
補 章 チョムスキー教育学・補遺
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<註> モハンティ三智江さんの公式ブログをインターネットで調べてみたら次のような自己紹介が載っていました。
作家・エッセイスト。 1987年インド・オリッサ州の聖地プリーに移住、現地男性と結婚後ホテルオープン、文筆業の傍ら宿経営に携わる。著書には「お気をつけてよい旅を!」、「車の荒木鬼」などがある。文芸思潮「アジア文化社)主宰の2010年度・銀華文学賞奨励賞
http://michiemohanty.japan-site.net/
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寺島先生
 先生と奥様のご共訳であるご高著「チョムスキーの『教育論』」、デリーまでの二泊三日の夜行列車内で一気に読ませていただきました。翻訳が適切でわかりやすく、大変読み応えがありました。
 チョムスキーについては、言語学者という通り一遍の通念しかもっていなかった私でしたが、社会活動家・思想家としても活躍されていることを今回、先生のご本で初めて知りました。
 自国のことをここまで洞察力鋭く見透かして、内実を包み隠さず暴露するのは大変勇気のいる仕事と思います(ハーバード大学に比べると、在籍中のMITは言論の自由を認める風潮が流れていたとのことでしたが)。そういう意味でも感服いたしました。
 ベトナム戦争時、米軍機を北に見せかけ、南ベトナムを爆撃していた事実や、広島の原子爆弾の現場撮影フィルムが戦後アメリカで娯楽映画としてかかっていたというくだりには、びっくりさせられるとともに、おぞましさを覚えました。
 インドも社会的にはいろいろ問題を抱える国で、昨今のレイプ事件など、かなりあくどく残忍な国民性があらわになっていますが、アメリカの二枚舌は表面的には隠されているだけに、よりやっかいかもしれません。
 聖と魔が渾然一体となったインドの悪は、より剥き出しの原始的なもので、アメリカのそれは仕組まれた文明悪という気がいたしました。
 企業が[法人という]死なない個人、並外れた富と力を持ったパーソンにのし上がったとの説にも納得し、重い真理を見ました。
 肝心の教育論については、門外漢ゆえ稚拙な感想しか申し上げられないのですが、アメリカの教育制度は、自由を重んじ、ディベートなども盛んに行われていると錯覚していたので、飼いならされている生徒の実態が日本とあまり変わらないように思えて、意外でした。最初、「教育の家畜化」とはなんのことかと疑問を感じながら読み進めていき、納得した次第でした。
 中米情報の詳細も、アメリカとの絡みで大変読み応えがありました。ニカラグア、キューバ、メキシコ、ホンジュラス諸国が市場民主主義のいけにえになっている実態や、残忍な拷問が行われながらニューヨークタイムズなどの大手メディアが実態を報道してこなかった情報操作の罪も初めて知りました。
 当初の予定より、一年遅れて刊行された旨が後記(あとがき)に書かれてありましたが、出版を延期してでも、補章として中米政変を詳細にお調べになって付け足されたことは、同書の価値をさらに高めております。
 知人といわれるチョムスキーの書を見事に意訳された寺島先生のご労力にはまこと頭の下がる思いがいたしました。プロジェクトにご協力なさった現場の英語教師の方々、奥様のご支援、チームワークが生きているお仕事ですね。
 はるばる当地プリーをお訪ねいただき同書をご贈呈いただいたT先生にも、改めて御礼を申し述べたいと思います。お気遣い、本当にありがとうございました。
 久々に良書を読ませていただいたとの満悦感があり、読後感はずしりと重いものがありました。重ねて、深謝申し上げます。
 まずはお二方への御礼かたがたつたない感想まで。

モハンティ三智江


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