愛犬タックの死とチョムスキー論文「ウィキリークスと戦争」 (上)

既にお知らせしたように、8月31日(火)の昼頃、『魔法の英語』あすなろ社の表紙&裏表紙を飾っていた愛犬タックが他界しました。

二階で昼食を済ませて書斎に降りてきたら、いま死んだばかりといった状態で横たわっていました。体を触るとまだ暖かく、ひょっとして生き返るのではないかと思い、何度も頭や眼や体を触ってみましたが、ついに蘇生することはありませんでした。

死ぬ1週間前から、歩けなくなっただけでなく一日に1回くらいしか食べなくなり、最後の1日は水も余り飲まなくなっていました。私たち夫婦は2階の寝室から書斎に布団を持ってきて、夜は一緒に寝ながら2~3時間おきに水を飲ませるという生活をしてきただけに、死に目に会えなかったことが残念で堪りませんでした。

大学の動物病院で実習用の犬として生まれてきたもの(2匹)を貰い受けてきて13年間、私たちの生活はタックとミックと共にありましたから(取りわけタックは『魔法の英語』を飾るほど愛らしく賢い犬でしたから)、タックを失った悲しみは非常に大きく、今でも寝ているときに寝室の片隅にタックの幻影が見えたりします。

このような体験を通して思ったこと発見したことは色々ありますが、ここでは平和の問題にしぼって少しだけ書きたいと思います。教育の問題についても書きたいことは色々あるのですが次の機会にします。

タックが死んだとき先ず思い浮かんだのは、アフガニスタンやパキスタンで次々と殺されていく民間人のことでした。しかもその多くが子どもだったり女性だったり老人だったりしています。このブログを書いている今日(2010/09/16)の Democracy Now! はパキスタンの状況を Headline News で次のように伝えています。

12 Killed Amidst Record Month for US Drone Strikes in Pakistan
http://www.democracynow.org/2010/9/15/headlines
At least twelve people have been killed in the latest US drone bombings in the Pakistani region of North Waziristan. It was the third US strike to hit the area in under twenty-four hours. The attacks make September the most intense period for US strikes inside Pakistan since they began in 2004. According to the Associated Press, more than fifty people have been killed in at least ten strikes this month.

御覧のとおり米軍は1日24時間のうちに3回も無人爆撃機Droneによる攻撃を繰り返し、この攻撃は2004年以来もっとも激しい攻撃でした。AP通信によれば9月に入って10回も爆撃をおこない死者は50人以上にもなります。一方でパキスタンは史上始まって以来の大洪水で、本来なら休戦して洪水被害者の救援に向かうべきなのに、それを一顧だにしない攻撃ぶりです。

タックが死んだとき書斎で一晩お通夜をして、翌朝4時に起きて庭に大きな穴を掘り土葬にしました。死んだ直後も土葬にする時も涙が出て止まりませんでした。そして同時に思ったのは米軍に自分の子どもを殺された母親や父親の悲しみや怒りはどれほど大きかっただろうかということでした。

タックが癌であることを知ったのは10月初め、動物病院で診てもらったとき「あと半年もつかどうか分かりません」と言われていましたから、死が近いことへの覚悟はできていたつもりでした。それでも死を迎えた悲しみは言葉にできないものがありました。だとすれば、無人爆撃機が襲って来て,何の罪もない自分の子どもが突然に殺されたときの,親の愕き・怒り・悲しみは想像するに余りあります。

日本で阪神淡路大地震のとき多くの人が亡くなりましたが、生き延びた人も当時の恐怖がよみがえり、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の症状が出て治療が必要だったと言われています。大阪教育大学付属池田小学校で児童殺傷事件がありましたが、当時の子どもたちで今もPTSDを抱えている高校生がいるとも聞いています。

だとすれば、次々と砲撃や爆撃を受けてきたアフガンやパキスタン(そしてイラクやパレスチナ)の子どもたちは毎日をどのような気持ちで生きているのでしょうか。

このような胸が張り裂けるような悲しみを抱えて苦しんでいる親がいるにもかかわらず、他方で殺人を「ゲーム」として楽しんでいる兵士もいます。Democracy Now!の Headline News では英紙ガーディアンによる報道として、アフガン市民を鹿狩りのように楽しみながら射殺し、その指を勲章として集めている(それだけでなく、このような残虐行為を内部告発した新兵を襲ったり殺したりしている)兵士の様子を、次のように伝えています。

US Troops Accused of Killing Afghans for Fun, Collecting Fingers as Trophies
http://www.democracynow.org/2010/9/10/headlines
The Guardian newspaper reports twelve US soldiers face charges over forming a secret "kill team" that allegedly blew up and shot Afghan civilians at random and collected their fingers as trophies. Five of the soldiers are charged with murdering three Afghan men who were allegedly killed for fun in separate attacks this year. Seven others are accused of covering up the killings and assaulting a recruit who exposed the murders when he reported other abuses. All of the soldiers are members of a Stryker infantry brigade based in Kandahar province in southern Afghanistan. Meanwhile, the father of one of the men charged has told the Associated Press he tried nearly a half dozen times to pass an urgent message from his son to the Army that troops in his unit had murdered an Afghan civilian and planned more killings.

国家や大企業の不正を内部告発を受理し、その情報をインターネットで公開しているものとして有名な WikiLeaks は、2010年7月26日にロンドンで記者会見し、9万点以上もの米軍機密文書を公開したこと(ただし一部は未検討のため保留)、またこれは英国ガーディアン紙、独国シュピーゲル紙、米国ニューヨークタイムズ紙を通じて同時に報道されたことを発表しました。

ところが国防総省は、この行為を「米国軍および同盟国の兵士とアフガン市民を危険にさらすものだ」として次のように非難しました(DemocracyNow!2010/08/13)。しかし無実の一般市民を無差別に殺害して、怒りと絶望感に駆られてタリバンに志願するアフガン市民を増大させているのは、むしろ米軍だと言うべきでしょう。

Pentagon Warns WikiLeaks on New Document Release
http://www.democracynow.org/2010/8/13/headlines#10
The Pentagon is continuing to warn WikiLeaks about releasing more classified Afghan war records on top of the initial 76,000 it published last month. On Thursday, WikiLeaks said it's about halfway through preparing the remaining 15,000 documents for release. In response, Pentagon spokesperson Geoff Morrell said publishing the new documents would be the "height of irresponsibility" and would harm US forces, US allies and Afghan civilians.

また「アフガン市民を危険にさらすものだ」という言い方も非常に奇妙なものです。というのは,この言い方は、「中国に侵略して蛮行を働いている情報」を暴露された日本軍が、それを暴露した報道機関を指して、「中国市民を危険にさらすもの」と言っているに等しいからです。この場合の「中国市民」とは誰を指すのでしょうか。常識的に考えれば「日本軍のスパイとして働いた中国市民」としか考えられません。

しかし、それでも、この情報を公開する際、WikiLeaks は New York Times を仲介役に通じて国防総省の了解を得ています。そのことは WikiLeaks の創設者の一人であるジュリアン・アサンジュが記者会見で明らかにしているとおりです。つまり、WikiLeaks も「米軍のスパイ」として働いたアフガン市民の安全を考慮に入れた上で発表したのでした。
http://democracynow.jp/dailynews/100728

ところで、私はチョムスキーがこの件に関してどのような意見を持っているのか気になっていました。しかし、やっと彼の見解が2010 年8 月13 日の ZNet に載りましたので、以下に翻訳して紹介します。これに関しても述べたいことは山のようにあるのですが、今は心と体にゆとりがないので、ここでは割愛させていただきます。
http://www42.tok2.com/home/ieas/chomsky100813Wikileaks.pdf

以上、愛犬タックの死で思ったことの一端を紹介しました。心が落ち着いたら、この続編もぜひ書きたいと思っています。

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