愛犬タックの死とチョムスキー論文「ウィキリークスと戦争」 (中)

既にお話ししたように、私たちには他界した愛犬タックの他にも、大学の動物病院からもらってきたミックという愛犬がもう一匹います。

そのミックを連れて散歩に出て、タックが晩年に散歩の途中に座り込んで動けなくなってしまった公園の砂場や、路上の草むらのそばを通るたびに、タックの姿が瞼に浮かんできてしまいます。

前回のブログでは、このタックの死について報告し、次のように書きました。

<タックが死んだとき書斎で一晩お通夜をして、翌朝4時に起きて庭に大きな穴を掘り土葬にしました。死んだ直後も土葬にする時も涙が出て止まりませんでした。そして同時に思ったのは、イラクやアフガンで、米軍に自分の子どもを殺された母親や父親の悲しみや怒りはどれほど大きかっただろうかということでした。>

アメリカはオバマ大統領になってから、アフガニスタンへの増派を図っただけではなく、戦争をパキスタンにまで拡大し、毎日のように無人爆撃機で多数の民間人を巻き添えにした戦争を継続しています。

それどころか実はアメリカ人すらも巻き添えにしていたことを元CIA長官Michael Haydenが暴露しています。9月24日(金)付けの Democracy Now! の Headline News では、それを次のように報道しています。(下線は寺島)

CIA Drone Strikes in Pakistan Have Killed Americans
http://www.democracynow.org/2010/9/24/headlines#1

Bob Woodward's new book is reporting CIA drone strikes in Pakistan have killed many Westerners, including some US citizens, as part of the US secret war inside Pakistan. Former CIA director General Michael Hayden disclosed the killings of Americans to Pakistani president Asif Ali Zardari in November 2008, days after a deadly attack in the tribal area of North Warziristan. The names of the Americans killed in the drone strikes have never been released. (中略) Woodward's new book, Obama's Wars, also reveals the CIA has created, controls and pays for a clandestine 3,000-man paramilitary army of local Afghans that conducts highly sensitive covert operations into Pakistan.

ここで注意していただきたいのは、CIA Drone Strikes とあるとおり、この無人爆撃機による攻撃がCIAによるものだということです。

戦争はふつう国防総省や防衛省など軍人がおこなうべきものですが、ご覧のとおりパキスタンでおこなわれている戦争は諜報機関CIAがおこなっている秘密戦争(the US secret war)なのです。

正規軍による戦争ではありませんから国際法に定められた戦争法規に従う必要もないわけです。したがって拉致・拷問・暗殺は日常茶飯事です。

しかも上記では、CIAは更にアフガンの民間人を雇って「秘密の民兵組織」(a clandestine 3,000-man paramilitary army)をつくり、アフガン人同士を戦わせる「高度の秘密工作」(highly sensitive covert operations)を展開しているとも書かれています。

ベトナム戦争の末期に、アメリカが戦争をラオスやカンボジアに拡大し、ベトナム国境のラオス少数民族を民兵組織に仕立て上げていった過程とよく似ています。

(そういえばベトナム戦争で、殺した兵士の耳や指を切り取って勲章にした米軍兵士の話も、アフガンの米軍兵士の話しとそっくりです。問題は、ベトナム戦争時には、これらのことは写真や映像でも紹介されましたが、今は皆無に近いことです。)

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ところで私は前回のブログで「ご覧のとおり米軍は1日24時間のうちに3回も無人爆撃機Droneによる攻撃を繰り返し、この攻撃は2004年以来もっとも激しい攻撃でした。AP通信によれば9月に入って10回も爆撃をおこない死者は50人以上にもなります」という事実を紹介しつつ、次のように書きました。

<一方でパキスタンは史上始まって以来の大洪水で、本来なら休戦して洪水被害者の救援に向かうべきなのに、それを一顧だにしない攻撃ぶりです。>

しかし、前回のブログでは私に精神的ゆとりがなかったので、もう一つ重要なことを書き落としていました。

それは無人爆撃機Droneの発着基地を守るため、米軍とアフガン政府は決壊するはずもない堤防をわざと破壊して、パキスタン史上始まって以来の大洪水に喘ぐアフガン人を一層の苦境に陥れたという、信じがたい事実でした。その様子を Democracy Now ! は次のように報じています。

Relief Agencies Blocked from Using Pakistani Air Base Tied to US
http://www.democracynow.org/2010/8/24/headlines

There are reports that relief agencies have been blocked from using a large Pakistani air base in Sindh province that has been tied to the secret US drone program. Last week Pakistan's health secretary said the base is essentially now run by the United States military. In 2008, the Washington Post reported the US was secretly using the Shahbaz base to house Predator hunter-killer drones used to carry out strikes inside Pakistan. In an attempt to save the air base, flood waters were diverted from the area, but the diverted water has reportedly inundated hundreds of nearby homes and displaced as many as 800,000 people.

下線部を御覧いただければお分かりのとおり、洪水の被害者を救おうと、救援関係者がパキスタン空軍基地を使いたいと米軍に申し入れたにもかかわらず、米軍の秘密基地と一体であることを理由に、それを拒否されたのです(relief agencies have been blocked from using a large Pakistani air base)。

それどころか、その基地を洪水から救うために、住民が密集している地域の側の堤防をわざと決壊させて、インダス川の流れを迂回させたのでした(In an attempt to save the air base, flood waters were diverted from the area)。

つまりインダス川の左岸には米軍基地と富裕層が住み、放置しておくと決壊するので、決壊しそうにない右岸をわざと破壊したのでした。ところが右岸は170万人にもの一般市民が住んでいる地域だったのです。<註1>

そのため、何百という家が水没し、80万人もの人が強制退去せざるを得なくなったのでした(the diverted water has reportedly inundated hundreds of nearby homes and displaced as many as 800,000 people)。

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アフガン戦争はブッシュ大統領が始めた戦争ですが、その本来の目的は「911事件を起こしたとされるビンラディンを捕まえる(あるいは殺す)」ことが目的だったはずですが、いつの間にか「タリバン打倒」が目標になり、今では(不思議なことに)ビンラディンの名前すらメディアには登場しません。

前回のブログで紹介したチョムスキー論文では下記のように述べられています。
http://www42.tok2.com/home/ieas/chomsky100813Wikileaks.pdf

<CIA の推測によれば、今アフガニスタンに存在するアルカイダ活動家は50 ないし100 人に過ぎない。かつてタリバンがアルカイダに隠れ場所を提供しアフガン攻撃の口実を与えたが、新たに再建されたタリバンはそのような失敗を繰り返す兆候もない。>

つまり現在のタリバンは昔のタリバンと違った組織ですし、そのタリバンはアルカイダとも関係がありません。しかも、そのアルカイダも実態に乏しいものです。にもかかわらずオバマ大統領はアフガン戦争をパキスタンにまで拡大し、パキスタン国民は戦争と洪水の二重苦に苦しめられています。<註2>

(チョムスキーが911直後に言っているように、そもそもアフガンを攻撃・爆撃する理由もありませんでした。ノーム チョムスキー『9・11―アメリカに報復する資格はない! 』文春文庫、2002/9)

洪水がパキスタン最大の穀倉地帯を襲ったにもかかわらず、パキスタンのザルダリ大統領は外遊して国民の苦しみに無関心です。この洪水が「ザルダリのカトリーナ」と呼ばれる所以です。
http://www.democracynow.org/2010/9/24/fatima_bhutto_on_the_floods_in

JUAN GONZALEZ: And you've called this flood "Zardari's Katrina." Could you explain?
FATIMA BHUTTO: Well, you know, that—I said that really a week into the floods. It's much larger than Zardari's Katrina now. At the time that the floods were raging, President Zardari embarked on a publicity tour, really. He went to Dubai. He went to France, where he visited a personal chateau in his family's name. They went to England.

いま洪水を生き延びた人たちは、今度は餓えと伝染病の危険に晒されていると聞きます。この被害を真っ先に被るのは老人と子どもです。

そのための援助として日本政府は自衛隊を派遣しましたが、タリバンが警戒したりするような自衛隊派遣ではなく、いま最も求められているのはキューバのように民間医療団を派遣することではないでしょうか。

というのは、理由のない戦争のために、罪のない民衆(とりわけ老人と子ども)が苦しむことを防ぐためには、チョムスキーがいつも言っているように「参加しないこと」が最も大切ではないかと思うからです。

(ノーム・チョムスキー『チョムスキー 9.11、Power and Terror』 DVD - 2002。またアメリカの同盟軍だと思われている自衛隊の派遣はタリバンに反撃の口実を与えるだけではないかと考えます)。

また沖縄を初めとして日本にある米軍基地が[ベトナム戦争の時と同じように]イラクやアフガンやパキスタンの戦争に使われているのであれば、そのようなことを拒否する(そのようなことに「参加しない」)ことが、痛ましい死を少しでも減らすことに貢献するのではないでしょうか。

愛犬タックの死で涙しながら、私の頭にはそんなことが浮かびました。本当はイラク戦争の結果、イラクの子どもたちに白血病が多発していますから、そのことも書きたかったのですが、今日はここで力尽きました。


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