私たちは若者をどのような国に留学させようとしているのか(上)―三つの暴力 [銃暴力、性的暴行、家庭内暴力] が渦巻くアメリカ

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アメリカでは毎日、1時間に1人の割合で、子どもが銃で殺されている

http://rt.com/usa/usa-children-gunshot-incidents-279/(January 28, 2014)

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 安倍内閣は、「英語力=経済力、英語力=研究力、英語力=国際力」と称して、2020年までに海外の大学・大学院で学ぶ日本人留学生を現在の2倍となる12万人に増やす方針を明らかにしました。
 大学入試にTOEFLを!という提案も、この一貫として出されたものでした。というのは、留学生を12万人増やすと言っても、その念頭にあるのはアメリカであり、アメリカ留学に必要なTOEFLを大学入試に使えば一石二鳥だと考えたのです。
 しかし、日本人の大学生全員がアメリカに留学するわけでもありませんし、2万円以上もする高額の受験料を国民の血税でアメリカに支払うのは、まったく無意味としか言いようがありません。
 さらに考えなければならないのは、日本人の大学生を不用意にアメリカに送り込んで大丈夫なのかという問題があります。というのは下記の論文でも明らかなように、いまアメリカでは「 毎日平均87回も殺人が起きている」からです。
Violence: The American Way of Life
翻訳「暴力、それはアメリカの生活様式だ」
http://www42.tok2.com/home/ieas/ViolenceTheAmericanWayOfLife.pdf

 上記論文では、さらに「戦争のためアフガニスタンに行くほうが、シカゴで暮らすより危険ではない」とすら述べています。そこで以下では、アメリカにおける暴力の実態をもう少し詳しく紹介することにします。

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<註> アメリカにおけるもう一つの問題は、学費が高騰しているので授業料を支払うために借金地獄に陥ったり、それを避けるために学費の安いカナダにどんどん学生が逃げ出していることです。
Americans flee to Canada for college education
http://rt.com/usa/american-canada-education-drain-473/(April 26, 2013)

 またアメリカでは大学を出ても学位に見合った仕事がありません。それほど失業率が高く、仕事が見つかったとしても最低賃金に近い仕事だったりパートの仕事しかないのです。
Hundreds of thousands of college graduates work minimum wage jobs
http://rt.com/usa/college-graduates-minimum-wage-174/(April 01, 2013)

 英語力=経済力ならば、なぜ英語の本場であるアメリカの学生の状況は、こんなにも深刻なのでしょうか。
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http://rt.com/usa/usa-children-gunshot-incidents-279/

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 アメリカの国内における暴力は、大きく分けると次の三つに分類できるように思います。すなわち「銃暴力」「性的暴行」「家庭内暴力」の三つです(国外の暴力の最たるものはイラク戦争を典型例とする「侵略戦争」です)。
 まず「家庭内暴力」ですが、Democracy Now!(January 22, 2014)が報じた次の記事では、アメリカで疫病のように全国規模で広がる衝撃的な家庭内暴力を検証し、その暴力からの生存者と彼らの支援者の苦難に焦点を当てています。
Private Violence: Survivors & Advocates Confront Victim Blaming & the Epidemic of Domestic Abuse
http://www.democracynow.org/2014/1/22/private_violence_survivors_advocates_confront_victim

 この記事を読んでいて、まず驚いたのは「人質事件の80%は家庭内暴力だ」という事実でした。
 ふつう人質事件というと銀行強盗を思い浮かべるのですが、実は夫が妻や子どもを虐待していて、警察官が駆けつけてきたとき人質になっている家族を銃で殺して自分も自殺したり、銃撃戦で警官に殺されることが少なくないというのです。
 ユタ州パークシティで毎年1月に開かれるサンダンス映画祭で話題を呼んだドキュメンタリー映画『Private Violence』をつくった監督キット・グルエル氏は、「アメリカでは暴力に対する感覚がとてつもなく鈍くなっている。そのため、女性たちが瀕死の暴行をうけない限り司法制度は動かない」と言います。
 通俗的な見解では「アメリカはレディファーストの国であり、男性は女性に優しい」はずなのですが、実態はまったく異なることがこれで分かりました。アメリカは極端な家父長制社会であり、よほどのことがないかぎり、男性は女性や子どもに何をしても許される――これがアメリカの実態のようです。
 グルエル監督は上記の記事で次のようにも述べています。
 「家庭内暴力の環境で育つと、子どもは学校でもうまくいかず、家出をしたり、女の子だと10代で妊娠、男の子だと暴力的になったりギャングの一員になったりする。家庭内暴力はあらゆる問題の温床だ。」

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 上でグルエル監督は「家庭内暴力はあらゆる問題の温床だ」と述べていますが、このような環境で育った男性が、女性にたいして性的暴行(強姦RAPE)をおこなうようになったとしても、何の不思議もないでしょう。
 最近話題になった事件で、女子高校生が部室でレイプ被害にあったことを学校に通報したら逆に「公然わいせつ罪」に問われて退学させられ、なんと!処罰として矯正施設へ送られました。
Texas Student: After Reporting Rape, I Was Accused of "Public Lewdness," Sent to Disciplinary School
http://www.democracynow.org/2014/1/3/texas_student_after_reporting_rape_i

 レイプした犯人がその学校を代表するスポーツ選手だったこともあり、こんなことが公になると学校の名誉に関わるから、その女子高校生が男子高校生を誘惑したというかたちにしたかったようです。アメリカでは,このような事件は珍しくありません。
 ところでオバマ氏は最近、大学構内における性的暴行を取り締まるための特別委員会を設置すると発表しました。これは、知的環境であるべき大学においてさえ性的暴行が絶えないことを如実に示しています。
 ホワイトハウスの報告書によると、女子学生の5人に1人がキャンパス内で性的暴行に襲われています。しかも、そのうちの12%しか警察に通報されていないというのです。大学の構内でさえこのような環境にあるとすれば、学生が住んでいるアパートやその近辺ではどのような比率になるでしょうか。
 安倍内閣は、アメリカがこのような実態であることを承知の上で、何万人もの学生をアメリカに送り込もうとしているのでしょうか。知っていて送り込むのであれば一種の犯罪者ですし、知らないで送り込むのであれば自らの不明を恥じるべきでしょう。

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<註> アメリカの大学における性的暴行の記事は下記のとおりです。
Obama Launches Task Force on Campus Sexual Assault
http://www.democracynow.org/2014/1/24/headlines#12410
  President Obama has launched a new task force to combat sexual assault on college campuses. A new White House report says one in five women college students have been sexually assaulted at school, but just 12 percent notify police. The task force will be asked to lay out goals for increasing rates of arrests, prosecutions and convictions.

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 さて、アメリカ国内で最も深刻なのは「銃暴力」「銃による殺傷」です。
 すでに冒頭で,アメリカでは「 毎日平均87回も殺人が起きている」と述べている論文を紹介しましたが、つい最近も、アメリカでは毎日、1時間に最低1人の子どもが銃で撃たれているという研究が発表されました。
At least 1 American child is shot every hour - report
http://rt.com/usa/usa-children-gunshot-incidents-279/(Jan.28,2014)

 これはイェール大学医学研究科(the Yale School of Medicine)の医学博士John Leventhal氏らがおこなった調査・研究で、専門誌『小児科学Pediatrics』にその報告が載せられました。
 それによると、18歳未満の子どもが毎日28人(つまり1時間に最低1人)、銃で撃たれているというのです。しかも、その3分の1は死亡しているそうです。
 子どもが銃で撃たれた事件として最近もっとも有名になったのは、2012年12月14日にサンディ・フック小学校(Sandy Hook Elementary, in Newtown, Connecticut)で起きた銃の乱射事件でした。この事件では、20人の子どもと6人の教師が亡くなりました。
 この事件があってからアメリカでは銃規制をめぐる大論争が起きましたが、事態は一向に改善する兆しはみえません。たとえば上記の「アメリカでは毎日1時間に1人の割合で子どもが銃で撃たれている」という記事の最後は次のような文で締めくくられています。
Yet in 2013 there were 28 school shootings in the US. In January 2014 there have already been at least seven school shootings throughout the United States.(それにもかかわらず2013年には28の学校で銃の乱射事件があった。また2014年1月だけでもすでに7つの学校で銃の乱射事件が起きている。)

 アメリカ全土で昨年2013年は28件の銃暴力事件が起きているということは、1か月に2件以上の割合です。しかも1月に入ってからは、すでに少なくとも7件の事件が起きているのですから、このままいけば下手をすると今年2014年は84件(=7件X12か月)の銃乱射事件が起きる可能性があることになります。

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 銃の乱射事件は学校のなかにおいてでさえ起きるのですから、まして学校外で起きる可能性はもっと高くなります。たとえば、DemocracyNow!(2014年1月27日)のヘッドラインニュースでも次のような報道がありました。
3 Dead in Shooting at Maryland Mall
http://www.democracynow.org/2014/1/27/headlines#1278

 このメアリーランド州のショッピングモールで起きた銃の乱射事件では、19歳の男が銃を乱射して自殺し、スケートボードの店員二人(21歳、25歳)が殺されています。この記事の最後は、次の文章で終わっています。
In another incident of gun violence, a student was killed Friday in a campus shooting at South Carolina State University. It was at least the fifth school shooting in the United States this month.(もう一つ銃暴力の事件が起きている。1月24日(金曜日)にサウスカロライナ州立大学で学生が1人、キャンパス内で殺された。アメリカでは、今年になって、これで少なくとも5回目のSchool Shootingが起きたことになる。)

 先に紹介した1月28日の記事では「7回目のSchool Shooting」となっていて、この「5回目のSchool Shooting」の記事の日付は1月27日ですから、ほとんど連日のようにどこかの学校・大学で銃の乱射事件が起きていることになります。
 その証拠に、DemocracyNow! は1月22日の記事でも、インディアナ州のパーデュー大学で少なくとも1人の学生が銃で殺されたことを報じています。アメリカでは、大学でさえ、このような状態なのです。
Purdue University Campus Shooting Kills 1 in Indiana
http://www.democracynow.org/2014/1/22/headlines#12211


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 このように最近のアメリカでは、学外はもちろんのこと大学の構内すら安全ではありません。女性はいつどこでレイプ(強姦)されるか分かりませんし、男性でさえ、いつどこで銃の乱射事件に巻き込まれるか分かりません。
 繰り返しになりますが、安倍内閣は、アメリカがこのような実態であることを承知の上で、何万人もの学生をアメリカに送り込もうとしているのでしょうか。知っていて送り込むのであれば一種の犯罪者ですし、知らないで送り込むのであればその不明を恥じるべきでしょう。
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