ウクライナ情勢の読み方(3)― 「ロシアによるウクライナへの軍事介入に抗議する!」は世界平和に貢献するか

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 前回のブログを掲載してからずいぶん時間が経ちました。このかん金沢に行かねばならない用事があり、戻ってきたら疲れが出て寝込んでしまいました。今やっと体調が戻りつつあるので、このブログを書き始めています。
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 私が会員になっている「レイバーネット」のメーリングリスト(2014/03/22)に、3月22日づけで、Tさんの投稿で下記のような案内がありました。
ロシアによるウクライナへの軍事介入に抗議し、クリミア併合を行わないよう要請します
WORLD PEACE NOW、2014年3月18日
ロシア連邦大統領 ウラジーミル・ウラジーミロヴィッチ・プーチン様

 私はこれを見てあわてて、「大手メディアの報道をそのまま受けいれてはいませんか」と題した下記のような投稿を送りました。
大手メディアの報道をそのまま受けいれてはいませんか。下記を参照願えれば幸いです。
翻訳 チョムスキー「世界を "アメリカという脅威" から救う」
http://pub.ne.jp/tacktaka/?entry_id=5224447>
翻訳 ロバート「オバマ政権の偽善は史上空前の記録をつくる」
http://pub.ne.jp/tacktaka/?entry_id=5228921>

 というのは、今回のウクライナをめぐる問題は、明らかにアメリカが裏で工作したクーデターが引き金になっていると思ったからです。この問題を抜きにしてロシアだけに抗議しても何の解決にもならない、まず抗議するのであればアメリカのオバマ氏が先ではないかと思ったのです。

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 今回のウクライナにおける政変が単なる民主主義を求める民衆運動ではないと判断した理由を、私は翻訳「チョムスキー:世界を "アメリカという脅威" から救う」を紹介しつつ、その解説で次のように述べました。
 いまウクライナ・クリミア情勢は、少しでも道を踏み間違うと第3次世界大戦になりかねない危険な状態になっています。
 日本の大手メディアを見ていると、まるでプーチンが現在の危機をつくりだしたかのような論調に満ちています。
 しかし次の記事では、アメリカが裏で工作をして実質的なクーデターを起こしていることを、元CIA高官のレイ・マクガバン(Ray McGovern)が暴露しています。
「ウクライナの政情不安を引きおこしているのは誰か」
Who Is Provoking the Unrest in Ukraine? A Debate on Role of Russia, United States in Regional Crisis((March 03, 2014))
http://www.democracynow.org/2014/3/3/who_is_provoking_the_unrest_in
 もっと恐ろしいのは、単にウクライナをアメリカ寄りの政権にするためにクーデターを起こしただけでなく、ヒトラーの信奉者や極右の人物を新政権の中枢にすえたことです。
「アメリカはネオナチの政府をウクライナに送り込んだ」
The U.S. has Installed a Neo-Nazi Government in Ukraine(March 02, 2014)
http://www.globalresearch.ca/the-u-s-has-installed-a-neo-nazi-government-in-ukraine/5371554
 このように、アメリカは、「911」以後、アフガニスタン、イラク、シリアを内戦状態に追い込み、国土を瓦礫の状態にしつつあるだけでなく、今やウクライナにまで政情不安をかき立てて親米政権をつくろうとしています。
 (実は同時並行的に、ベネズエラまでも「不安定化工作」の標的にして、混乱の火種を中東どころか南米にまでバラ捲いています。)
 ところで、今からちょうど1か月ほど前に、チョムスキーは「アメリカこそが平和にたいする世界最大の脅威である」という小論を発表しました。今のウクライナ情勢を見ていると、このチョムスキーのことばが改めて胸に響いてきます。 そこで、ぜひ皆さんに読んでもらおうと思い、急遽この論文を翻訳しました。御一読いただければ幸いです。


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 またクリミア併合についても翻訳「ロバート:オバマ政権の偽善は史上空前の記録をつくる」の解説で次のように書きました。
 ウクライナ&クリミア情勢は緊迫の度合いを強めています。クリミヤではウクライナから分離してロシアに加盟するかどうかをめぐる住民投票が3月16日(日)におこなわれました。
 アメリカやEUは、これを「ウクライナ国民全員が投票に参加していないから国際法では認められていない違法行為だ」と非難していますが、自分たちがコソボや南スーダンを、セルビアやスーダンから引き離すときには、住民投票をおこなわせて独立させています。
 スペインではカタロニアの独立運動が盛んですし、イギリスでもスコットランドが独立のための住民投票をしようとしていますが、「国民全員が投票に参加していないから違法行為だ」という非難はありません。
 アルゼンチンの対岸にあるフォークランド諸島のイギリス帰属も、1913年の島民による住民投票で決めました。地理的に見るかぎりフォークランド諸島はアルゼンチンに帰属していてもよいようにみえます。が、イギリスはフォークランド紛争のあと強引に住民投票でイギリス帰属を決めたのですから、ロシアに文句を言う筋合いはないはずです。
 カナダのフランス語圏であるケベック州も、何度か独立のための住民投票をしていますが、ここでも「国民全員が投票に参加していないから違法行為だ」という非難はありませんでした。そもそも、ケベックの独立をカナダ全員の国民投票で決めることは、初めから独立を認めないと言っているに等しいからです。
 アメリカが、こんな子どもでも分かるような論理を持ち出していることは、二重基準(ダブルスタンダード)の極致と言うべきでしょう。しかも、それを主張しているのがハーバード大学ロースクールを出て、シカゴ大学で憲法を教えていたオバマ大統領なのですから、こちらの頭の方がおかしくなりそうです。
 話はいきなり飛びますが、このクリミア情勢の報道を見ていたら、「いっそのこと沖縄も日本から独立するための住民投票をしたらどうか」「沖縄が独立を言いだしたら日本政府はどういう口実でそれを阻止するのだろうか」という考えが急に浮かんできました。
 そもそも沖縄は、かつては琉球王国という独立国だったわけですし、戦前はアメリカ軍上陸の激戦地にされ戦後も米軍基地として使われてきました。ですから、沖縄の人たちにとっては、アメリカ軍による占領終結後、苦労して日本に復帰しても良いことはほとんどなかったように見えるからです。
 それはともかく、このような疑問をもっていたとき、"Obama Regime's Hypocrisy Sets New World Record" 「オバマ政権の偽善は、史上空前の記録をつくる」という面白い論考を見つけました。そこで以下に訳出しました。参考になれば幸いです。

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 ところが、肝心のTさんからの反論はなく、同じメーリングリストにNさんという会員のかたから、3月23日づけで次のような投稿がありました。

会員のNです。
 ウクライナの激変やクリミア情勢について、大変な事態なのでいろいろと情報を探しています。
 アメリカのダブルスタンダードに関するチョムスキーの論考は大変参考になりますが、ウクライナもクリミアも登場しませんし、現在彼がウクライナについてアメリカの陰謀だと言っているのかどうかも定かではありません。というかそんなことを言っていたらあきれてしまうのですが。
 「オバマ政権の偽善は、史上空前の記録をつくる」を拝見しても、ロシアがクリミア併合をしていい理由についてはまったく分かりませんでした。ウクライナおよびクリミアにおけるアメリカのダブルスタンダードよりも、ロシアにとっての軍事的意味を冷静に分析して開設するような論考があるといいのですが。
 今後はウクライナでも民族主義が強まるとおもいますが、そのような厳しい状況の中でウクライナの変革に起ち上がった進歩的民衆の動向がきになるところですが、ロシアによるクリミア併合は、そのような対立をクリミアでもそしてウクライナでも煽ることになるだけだと思います。
 その意味でもワールド・ピース・ナウの要請は意味のあることだと思います。

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 しかし先述のとおり、私には金沢に行かねばならない用事があり、上記のNさんにきちんと反論を書いているゆとりがありませんでした。
 そう思っている矢先に『アジア記者クラブ通信』を編集している森広泰平さんから「Nさんにたいする反論を書く予定はないのですか」という問い合わせがあったので、「よければ代わりに反論していただけませんか」と返事をしました。
 ところが、森広泰平さんの反論が載った直後に同じ会員のSさんから、Tさんへの反論と併せて私あてに、(2014/03/25 21:02) の日付で次のような投稿がありました。

 Sです。
 寺島さんの翻訳文:
http://www42.tok2.com/home/ieas/Obama%27sHypocricy.pdf
 上記[の研究室掲載の]翻訳文は、下記の寺島さん[ブログ投稿]の「ウクライナ&クリミア情勢 『オバマ政権の偽善は史上空前の記録をつくる』」と冒頭部分は別にして同じものですね。私のTさんへの批判的「返信」も、あなたの翻訳情報を読ませてもらったことが大きいです。
 あなたが力を入れられた翻訳であることを忘れて、先ほどTさん宛てに「ウクライナのネオナチがアメリカの大統領候補だったマケインと親しい」と書きました。じつは、そのURLを書いたつもりでしたが、漏らしておりました。
 でも、あなたご自身に再度投稿して頂き良かったです。今後とも、貴重な情報を翻訳して頂き、提供して頂きたく思います。ありがとうございます。


 私がブログで少しずつ翻訳を発表したり、その解説を書いてきたことが、こんなかたちで生きているんだと知って、本当に嬉しく思いました。

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 それはともかく、いまSさんの投稿を読み直してみると、上記でSさんは「でも、あなたご自身に再度投稿して頂き良かったです」と書いています。
 しかし私はこの時点では、森広泰平さんに「代打」を頼んだのであって、自分では反論を書いていません。
 それで、「投稿して頂き良かったです」を、あなたご自身に再度「投稿して頂きたかったです」と読み間違えて、あわてて次のように投稿しました(それともこれはSさんのタイプミスであって、やはり私の誤解の方が正しかったのでしょうか)。

Nさま、みなさま
 私は事情でゆっくり反論を書いている時間がありませんので質問するだけにとどめます。

>ウクライナの激変やクリミア情勢について、大変な事態なのでいろいろと情報を探しています。
Q: 情報は、私の翻訳の解説にその一端を載せました。このほかにも下記を初め、その気になれば情報は有り余るほどあります。
http://www.globalresearch.ca/
 ちなみに、安倍内閣は、「日本人は英語を読めるけれど話せない」と言って、「だから小学校から英語教育だ」「だから英語で授業をしなければならない」いうバカげた教育政策を発表しました。しかし「日本人は英語を読めるけれど話せない」というのは本当でしょうか?

>チョムスキーの論考は大変参考になりますが、ウクライナもクリミアも登場しませんし、現在彼がウクライナについてアメリカの陰謀だと言っている のかどうかも定かではありません。というかそんなことを言っていたらあきれてしまうのですが。
Q: アメリカが中南米その他でクーデター(政権転覆)を起こし続けてきたことは、チョムスキーにとっては自明のことです。ウクライナ情勢は単にその応用問題にすぎないのではないでしょうか。

>「オバマ政権の偽善は、史上空前の記録をつくる」を拝見しても、ロシアがクリミア併合をしていい理由についてはまったく分かりませんでした。
Q: クリミヤにはウクライナから独立する権利はないということでしょうか。自分たちの帰属を自分たちで決める権利はないということでしょうか。沖縄も 同じでしょうか。また「ロシアによる軍事制圧下による選挙」という根拠はどこにありますか。国際監視団は単なるお飾りだったと言いたいのですか。

>そのような厳しい状況の中でウクライナの変革に起ち上がった進歩的民衆の動向がきになるところですが、ロシアによるクリミア併合は、そのような 対立をクリミアでもそしてウクライナでも煽ることになるだけだと思います。
Q: 「ウクライナの変革に起ち上がった進歩的民衆」とありますが、かれらが「進歩的民衆」だという根拠はどこにあるのでしょうか。

金沢から帰ってきてからゆっくり詳論するつもりですが、念のために私の翻訳と
解説を下記に再掲します。再読していただければ幸いです。(2014/03/26 4:50)

http://pub.ne.jp/tacktaka/?entry_id=5224447
http://pub.ne.jp/tacktaka/?entry_id=5228921

 
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 この質問に対してNさんからは、(2014/03/26 9:46)の日付で次のような回答がありました。直接の回答ではないのですが、私のブログも何度か見ていただいているようで、有り難く思いました。

 Nです。
 お忙しい中、お返事をいただいてありがとうございます。
 「日本人は英語を読めるけれど話せない」というのは本当かどうか、ちょっとわかりませんが、ウィッキーさんのワンポイント英会話を思い出しました。
 寺島さんのブログの解説も何度か拝見しています。ウクライナの政変をめぐっては、違う認識をされる方もたくさんいるんだな、とあたりまえ体操(?ママ)ですが、実感したしだいです。
 クリミアの独立→即ロシア編入は、寺島さんが挙げておられる沖縄独立や他の地域の独立運動とはかなり様相が異なるとは思いますが、今回の事態では、あらためて暴力装置の重要性が浮き彫りになったと思っています。
 ウクライナやロシア、そしてなによりもクリミアで活動する左翼の情報の重要性とその欠如を痛感しました。
 以上、直接の回答になっていませんが、こんな感じです。ありがとうございました。


しかしこれまでの回答を読む限り、Nさんの発想の仕方はが非常に気になりますし、事実とも合っていないように思いました。その理由については、今回は割愛させていただきます。

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 以上が、これまでの経過です。この論争の出発点になったTさんからは何の回答もありませんが、しかしこれらのやり取りを通じて、いろいろ考えさせられることが多かったので、次回からはその点について述べたいと思います。

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