ウクライナ情勢の読み方(4)―どこで、どのように情報を手に入れるか: 真実の情報から国民を遠ざける英語教育

────────────────────────────────────────
 前回のブログでは、「レイバーネット日本」のメーリングリストに「ロシアによるウクライナへの軍事介入に抗議する!」という投稿があったので、それにたいして「大手メディアの報道をそのまま受けいれてはいませんか」と題した疑問を送ったところ、色々な反響があったことを紹介しました。

 しかし私に時間がなかったので、Nさんが提起した問題には疑問を呈するだけで、私の意見をきちんと提示できませんでした。そこで次のブログでそれを詳しく展開する予定だったのですが、疲労が溜まっていたためか仕事を再開しようと思った矢先に腰痛が再発して動けなくなりました。
 今やっとパソコンに向かえるくらいに回復したので、体力が許すかぎり少しずつ私見を述べていきたいと思います。

────────────────────────────────────────
 まずNさんは冒頭で、「ウクライナの激変やクリミア情勢について、大変な事態なのでいろいろと情報を探しています」と書いています。それにたいして私は次のような問いを投げかけました。
 情報は、私の翻訳の解説にその一端を載せました。このほかにも下記をはじめ、その気になれば情報は有り余るほどあります。
http://www.globalresearch.ca/
 ちなみに、安倍内閣は、「日本人は英語を読めるけれど話せない」と言って、「だから小学校から英語教育だ」「だから英語で授業をしなければならない」いうバカげた教育政策を発表しました。しかし「日本人は英語を読めるけれど話せない」というのは本当でしょうか?


 私が上記のように書いたのは、福島原発事故のときでもそうでしたが、日本では大手メディアがきちんとした情報を出しませんでした。それと同じことがウクライナ情勢でも起きていると思ったからです。
 大手新聞社には英語の読める優れた記者がたくさんいるのですから、私のような素人がウクライナについて書かなくても、少し調べる気があれば、情報源はいくらでもあるはずです。
 その一つとして私が紹介したのが、カナダを拠点として活動しているグローバルリサーチという団体のサイトでした。
http://www.globalresearch.ca/(Global Research)

 このほかにも情報源として利用できるサイトは次のようにいくらでもあります。
http://www.democracynow.org/(DemocracyNow!)
http://rt.com/news/(RussiaToday)
http://zcomm.org/znet/(ZNet)
http://fair.org/(FAIR: Farness & Accuracy In Reporting)
http://www.answercoalition.org/(:Act Now to Stop War and End Racism)

────────────────────────────────────────
 私が日常的に視聴しているのは、DemocracyNow!とRussiaTodayのふたつです。前者はAmy Goodmanという女性が報道とインタビューの司会を務めている独立系の報道機関です。最近、上智大学が主宰するシンポジウムのため来日して話題を呼びました。
 アメリカの大手メディアが伝えないことを報道する機関として有名になりましたが、リビアやシリアの報道を見ていたら、やはりアメリカという視点からの報道臭が強くて、アメリカ国内の情勢を知るには良い番組だが、外国情勢を知るには問題があると思うようになりました。
 その毒消しとして役立つのがRussiaTodayです。これは日本のNHKと似ていてロシア政府から大半のお金が出ているようですが、国営放送と化したNHKと比べてはるかに中立性・独立性が強く、ウィキペディアによればアメリカで2番目の視聴者を持つ外国語ニュースチャンネルで、BBCニュースに次ぐ規模を誇っています。
 以上の二つは毎日、動く映像でニュースを見れる番組ですが、何か事件が起きて、もっと詳しく情報を知りたいと思ったとき、私がまず検索するのがGlobal Researchです。今回のウクライナ情勢でも、このサイトから多くを学ばせてもらいました。Global Research TVという映像コーナーもあります。
 ZNetはチョムスキーの教え子であるマイケル・アルバートが起ち上げたサイトで、多くの著名人がこのサイトにホームページをもっています。私のチョムスキー情報は、ほとんどがこのサイトから来ています。FAIRは大手メディアの報道のどこが間違っているかを知らせてくれる団体です。チョムスキー推薦の団体です。
 ANSWERは幾つもの反戦平和団体が合同してつくり上げている団体で、メーリングリストに登録しておくと、ときどき面白いニュースを届けてくれます。最近とくに面白かったのはウクライナ&クリミア情勢に関する下記の記事でした。

「オバマの演説―デマゴギーの演習」
Obama's speech on Ukraine and Crimea: An exercise in demagogy

http://www.answercoalition.org/
http://www.answercoalition.org/national/news/rt-interview-Ukraine.html

────────────────────────────────────────
 しかし、ここに一つの問題が起きます。というのは、以上みてきたように情報は探せばいくらでもあるのですが肝心の日本語の情報がほとんどないからです。
 日本人の誰もが上記のような英語情報を読む力があれば、大手メディアが嘘の報道をしていても簡単にそれを見破ることができますが、残念ながら私たちの誰もにそれを読む時間的ゆとりがあるわけでもありませんし、そのような力を持っているわけでもありません。
 私が皮肉混じりに次のような質問をNさんに投げかけたのは、このような事情を念頭においていたからです。
 ちなみに、安倍内閣は、「日本人は英語を読めるけれど話せない」と言って、「だから小学校から英語教育だ」「だから英語で授業をしなければならない」いうバカげた教育政策を発表しました。しかし「日本人は英語を読めるけれど話せない」というのは本当でしょうか?

 自民党政権は「役に立つ英語教育」を政策に掲げ、「小学校から英語教育をすれば、あるいは英語で授業をすれば、英語を話せるようになる」と主張して、学習指導要領を「英会話中心」になるように改変し、日本人の英語読解力を大幅に低下させてきました。
 日本に住んでいるかぎり大多数の日本人にとって必要な英語力は「話す力」ではなく「読む力」です。というのは現在のように大手メディアが嘘をバラ捲いているとき、それに対抗するには、今のところDemocracyNow!、RussiaToday、Global Researchなどを読んで、その嘘を見破る力をつける以外にないからです。
 私のように英語教師を育てることを生業としてきたものですら、日本に住んでいるかぎり英語を話す機会はほとんどありませんし、その必要もありません。にもかかわらず、自民党が「話す力」を誇大に宣伝し、「読む力」を衰弱させてきたのは、国民に真実を知られたくないからではないか、と私は邪推すらしています。
 ところが「日本人は英語を読めるけれど話せないというのは本当でしょうか?」という私の問いに対して、Nさんからは「本当かどうか、ちょっとわかりませんが、ウィッキーさんのワンポイント英会話を思い出しました」という意味不明な答えが返ってきただけでした。これでは権力に対して真の闘いにならないのではないでしょうか。

────────────────────────────────────────
 ところで、実は,ウクライナ情勢については日本語でも情報はないわけではありません。たとえば、『アジア記者クラブ通信』2014年2~3月号(http://apc.cup.com/)に次のような記事が載っているからです。
■「ウクライナの反政府運動はファシストの手に落ちた」、“黙認”する米国とEU
エリック・ドレイツァー(地政学アナリスト)
■キエフはモスクワ突破とユーラシア支配の要衝だ、ウクライナ動乱の真相
マハディ・ダリウス・ナゼムロアヤ(ジャーナリスト)
■ポーランド民族主義者は軍事介入唱える、バルカン化の危機孕むウクライナ
ニコライ・マリセブスキー(ジャーナリスト)
■ウクライナ“新政権”はネオナチが主導する、黙殺を装い支援する西側諸国
ミシェル・チョスドフスキー(CRG編集長)

 この『アジア記者クラブ通信』は大手メディアには載っていない貴重な情報がたくさん載っています。特に海外情報は他では得がたい情報が満載されています。
 しかし、この『通信』に載せられている海外情報は、そのほとんどを、ひとりの独立ジャーナリストが翻訳しています(恐らく無給で)。
 これは、森広泰平さん(『アジア記者クラブ通信』編集長)の周辺に英語を読める人材がいかに少ないかを示すものではないでしょうか。そのような人材が多ければひとりのひとだけに頼らなくてもすんでいたはずだからです。
 これはDemocracyNow! についても言えます。実は DemocracyNow! には日本語版も開設されているのですが(http://democracynow.jp/)、翻訳されているのはその日の特集番組の「要約」部分だけで、新鮮な情報を毎日とどけてくれるヘッドラインニュースが翻訳されていないのです。
 この10分程度のヘッドラインニュースだけでも、アメリカと世界について驚くべき情報をたくさん手に入れることができるのですが、その肝心の情報が翻訳されていません。これも中野真紀子さん(DemocracyNow!Japanの責任者)の周辺に英語を読める人材がいかに不足しているかを示すものではないでしょうか。
 私が間違った教育政策を改めるべきだと強く主張するゆえんです。「英語で授業」という指導要領、「会話中心の英語教育」は、ともすれば「ざるみず効果」に終わるだけでなく、操作された情報に抵抗する力を育てないからです。<註>

────────────────────────────────────────
今回のブログではNさんにたいする下記の疑問についても私見を述べる予定でしたが、ここまで書いたら腰痛がまたぶり返してきたので次回にします。

>チョムスキーの論考は大変参考になりますが、ウクライナもクリミアも登場しませんし、現在彼がウクライナについてアメリカの陰謀だと言っている のかどうかも定かではありません。というかそんなことを言っていたらあきれてしまうのですが。
Q: アメリカが中南米その他でクーデター(政権転覆)を起こし続けてきたことは、チョムスキーにとっては自明のことです。ウクライナ情勢は単にその応用問題にすぎないのではないでしょうか。

────────────────────────────────────────
<註> 上記で言う「ざるみず効果」という用語は私の造語です。ザルに水を入れても水は溜まりません。現在の「会話を中心」とした英語教育は、この「ざるみず効果」の典型例ではないかと思っています。その理由については『英語教育原論:英語教師、三つの仕事、三つの危険』『英語教育が亡びるとき:「英語で授業」のイデオロギー』(いずれも明石書店)および下記を御覧ください
http://www.kyoto-up.org/archives/1905
http://www.kyoto-up.org/archives/1972
http://www42.tok2.com/home/ieas/interview130531english_teaching.pdf
関連記事
スポンサーサイト
検索フォーム
プロフィール

狐狸庵居士(田舎の国立大学を2010年に定年退職)

Author:狐狸庵居士(田舎の国立大学を2010年に定年退職)

リンク
最新記事
全記事表示リンク

全ての記事を表示する

カテゴリ
月別アーカイブ
最新コメント
RSSリンクの表示
QRコード
QR