愛犬タックの死とチョムスキー論文「ウィキリークスと戦争」(下)

先日10月2日(土)、私が高校教師だった頃の生徒が、学年全体で「卒業35周年記念」の同窓会でを開き、私にも招待状を送ってきたので能登半島まで出かけてきました。「30周年記念の同窓会」は、どの年度の卒業生も必ず開くのが伝統ですが、「35周年」を開くのは稀なことだそうです。

私は、この年度の学生は1年生のときに学級担任をしただけだったのに、前回の「35周年記念」の同窓会では、多数の元生徒が私の周りに集まってくれて、さらに帰り際には「5年後にぜひ再会したい」と言われて大いに感激しました。

(この学校で学級担任をしたのは「それが最初で,かつ最後だった」のですが、その間の事情は「できない英語教師の歩み」[拙著『英語にとって教師とは何か』あすなろ社/三友社出版の第3部]に書きました。)

そんなわけで「5年後」の同窓会にも参加することになったのですが、2次会を終えて部屋に帰ったとき、この同窓会のために色々連絡の労をとってくれた幹事の一人にお礼を兼ねて拙著『国際理解の歩き方』あすなろ社/三友社出版を謹呈しようと思っていたことを思い出しました。

そこで3次会の部屋を訪れて、その幹事と少し話しをしていたら、K製鋼という大企業に勤めているという卒業生も話しに割り込んできて、ひょんなことから英語教育の話しになりました。

彼は「外国の企業とやりあうためには英語が必要だが、今の英語教育はまったく役に立たない」という(耳にたこができるほど聞かされている)例の議論を聞かされることになってしまいました。

この議論の顛末と私の考えについては下記の京都大学で開かれるシンポジウムで語るつもりでいますので、お手すきの方は御参加ください。

国際研究集会「大学のグローバル化と複言語主義」
場所:京都大学吉田南キャンパス人間・環境学研究科地下大講義室
日時:2010年11月5日(金)午後2時~6時30分
主催:京都大学外国語教育論講座、参加費:500円




ところで能登半島から帰ってきた翌日10月4日に,新聞各紙は「名古屋市の河村たかし市長が主導する市議会の解散請求(リコール)で、市長の支援団体は4日午前、46万5385人分の署名簿を市内16区の選管に提出した」と報じ、「名古屋市民のエネルギーが民主主義の奇跡を起こした。感謝に堪えない」「議会不信という民意が底流にあることを示した」という河村市長のコメントも紹介していました。

確かに、この署名には政治に不信を感じている市民の声が反映されていることは間違いありませんが、同時にNHKなど大手のメディアが、「現在の署名数は○○です。署名が有効になるためには、あと△△の数が必要!」と、署名の様子を連日のように実況中継したことも大いに力を発揮したことは疑いないように思います。メディアは河村応援団かと思われるほどでした。

このような動きに関して前回のブログで私は次のように書きました。くどいようですが、下記に再録させていただきます。

<大手メディアでは名古屋市河村市長の運動が大々的に取りあげられて、それに抵抗する勢力は「守旧派」であるかのような報道ぶりです。かっての小泉内閣時代を思い出します。
 しかし実は、「一律減税を!」(実は「金持ち減税」)「赤字だから定数削減を!」「赤字だから議員報酬の削減を!」という動きは、米国全土に広まり、いたるところで福祉や教育を破壊しつつあります。
 このアメリカにおける "Tea Party Movement" の問題点・危険性については、既に「アリゾナ州の惨状とチョムスキー講演、そして日本」「議員定数削減、チョムスキー講演、そしてマイケル・ムーア」で書きましたので、未読の方はご一読願えれば幸いです。>

*「アリゾナ州の惨状とチョムスキー講演、そして日本」
http://pub.ne.jp/tacktaka/?entry_id=3065751
*「議員定数削減、チョムスキー講演、そしてマイケル・ムーア」
http://pub.ne.jp/tacktaka/?entry_id=3091859

ところが最近、不思議なことが続いています。というのは、私のブログの「トラックバック」に卑猥な落書きが毎回のように書き込まれるようになりました。何回削除しても、また書き込まれてくるのです。

しかも、その書き込みは必ず決まって「議員定数削減、チョムスキー講演、そしてマイケル・ムーア」の(上)から(補遺2)なのです。そのIPアドレスを見ると、同一人物が名前を変えて、(上)から(補遺2)に下品な言辞を書き込んでいるのです。削除すると,新しいIPアドレスで,また書き込んできます。

これは名古屋市を典型とする「日本版Tea Party Movement」の推進者にとって、この私の小論「議員定数削減、チョムスキー講演、そしてマイケル・ムーア」が、かなりの痛手になっていることを示すものかなと、嬉しいような悲しいような複雑な思いに駆られました。

ここでは詳しく書くゆとりはありませんが、消費税のような「一律増税」は、貧者にとっては大きな痛手ですが金持ちにとって蚊が止まった程度にしか感じられないでしょう。他方、河村市長が提案しているような「一律減税」(たとえば10%)は年収の少ない貧者にとってはさほどの額にはなりませんが、金持ちにとっては巨大な額になります。

政府や自治体の財政が「火の車」だから「消費税増税を!」と言っている人たちが、同時に「一律減税を!」と言っていることの奇妙さを、どこの大手メディアも指摘していません。アメリカでも「Tea Party Movement」は政治の現状に怒りを感じている庶民の運動として出発していますが、それを裏で資金援助しているのが実は大金持ち・大企業のCEOであることが最近、判明しました。下記の記事を御覧ください。

Tea Party Backer David Koch Becomes Wealthiest New Yorker
http://www.democracynow.org/2010/9/24/headlines

大金持ちや大企業の減税を止めさせ、従来通りの「累進課税」に戻せば、大きな財源が生まれることは既に下記論文でも書きましたので、時間があるときに覗いていただければ幸いです。

*「税金制度の変遷:消費税の増税は必要か」
[月刊『楽しい授業』2008年10月号の「グラフで見る世界244」をめぐって]
http://www42.tok2.com/home/ieas/article090205shohizei.pdf




“愛犬タックの死、そしてチョムスキー論文「ウィキリークスと戦争」”の(下)を書き終えようと思ってパソコンに向かったのですが、前置きばかり長くなって先に進みません。

タックの遺骸を庭で土葬したことは既にお伝えしたのですが、心臓の手術をして以来、毎日毎食、薬を飲むと1時間くらいは眠らないと体が動かないので、いまだにタックの墓をきちんと作ってやることもできません。

なにしろ病気をしている間は庭の手入れもできず雑草が伸び放題だった庭の一部を、タックの墓用に綺麗にするだけで精一杯だったものですから、庭の片隅に転がっていた大きめの石を集めて、土葬の土留めにしてあるのみです。

ハイチで大地震があったときも、イラクやアフガニスタンでも、そして大洪水と無人爆撃機で大被害を出しているパキスタンでも、さらにはイスラエルによる3週間の爆撃で瓦礫にされたガザ地区でも、手厚く葬ってもらえない死者が続出しました。タックの墓の前を通るたびにそのことを思い出します。

イラクでは「嘘で始められた戦争」で百万人以上もの人が死んだと言われています。ワールド・トレード・センターを攻撃したひとのほとんど全てがサウジアラビア人だったのに、最初に攻撃されたのは、サウジアラビアではなくアフガニスタンでした。

そしてワールド・トレード・センターでの死者は「3000人」程度だと言われているのに、イラクで殺された民間人は「百万人」を超えているのです。たとえサダム・フセインがワールドセンターを攻撃したのだったとしても、これでは余りにも不釣り合いではないでしょうか。

ましてサダム・フセインが911事件と何の関係もなかったのであれば、この殺された「百万人」の責任を、「誰が」「どのように」取るつもりなのでしょうか。余りにも理不尽だとしか言いようがありません。余りにも理不尽すぎて言葉が出ないほどです。

もっと理不尽なのは、生き延びた人たちの中に癌・白血病が広がり乳幼児の死亡率が激増していることです。ロンドン・インディペンデント紙の中東通信員パトリック・コウバーンによる報道として、DemocracyNow!は次のように報じています。
http://www.democracynow.org/2010/7/29/patrick_cockburn_on_missing_billions_in

Meanwhile, a new medical study has found dramatic increases in infant mortality, cancer and leukemia in the Iraqi city of Fallujah, which was bombarded by US Marines in 2004. We speak with Patrick Cockburn, Middle East correspondent for the London Independent.

アメリカ軍がイラク戦争で「劣化ウラン弾」を使っていることは以前から指摘されてきたことですが、癌や白血病の激増は改めてこのことを示しているように思われます。

(国連の「国際刑事裁判所」は何をしているのでしょうか)

上記の記事では更に「イラク再建に向けた米特別調査員がイラク現地でおこなった公式監査により、米国防総省は2004年から2007年の間に再建のために取り分けたイラクの石油収益金90億ドル近くの行方を説明できないことが明らかになった」とも述べています。

遙か以前の記事で、イラク再建の費用としてイラク暫定政権にわたった費用のほとんどが使途不明になっていることが報じられていましたが、このように世界中から集められた再建費用が「復興ビジネス」を業としているアメリカの大企業=ハリバートンなどの懐に消えて行っているとしたら、日本の援助は何の役に立ったのかと思わされます。




イラクへの援助金が復興に使われていない証拠に、いまだにバクダッドでは水も電気もまともに使えず、石油王国であるはずなのに車を走らせるガソリンもまともに手に入らない毎日です。そのようすを、やはりDemocracyNowJapan! は次のように伝えています。
http://www.democracynow.org/2010/8/20/obama_admin_claims_end_to_combat

YANAR MOHAMMED: In my home, which is central Baghdad, I get almost three hours of electricity a day, and I have to pay somewhere between $150 and $250 for the guy who sells electricity next door. It means that the government finds herself not responsible of providing me with electricity. In the time when the temperature is 55 Celsius, you cannot stand in the street, you cannot sit in a room. You're sweating. And the levels of deaths that happen with this high temperature is no concern of, who is busy oppressing the workers who work in his ministry. (中略) And we find out that we have to buy the oil that comes out of our own ground in a very high price that is not our—that isn't proportional with the level of pay that we have. Unemployment is so high.

上記の記事によれば、イラクの人たちは55℃という高温の中をエアコンも無しに毎日を耐えなければならないのです。当然ながら熱中症になって死ぬ人が続出しますが、担当大臣は労働者の弾圧に忙しくて、そんなことにかまってはいられません(And the levels of deaths that happen with this high temperature is no concern of, who is busy oppressing the workers .)

サダム・フセインの頃は,女性はスカーフで顔を隠す必要もなく、大学にも行くことができました。「イラクに民主主義を!」「イラクの再建・復興を!」と叫んでいたアメリカが結局、イラクにもたらしたものは荒廃のみでした。つまりアメリカはイラク民衆を救うつもりは初めから無かったのです。

それはイラク大使館の巨大さ・豪華さを見れば分かります。DemocracyNow!の司会者であるAMY GOODMAN は、それを前記のインタビューで、YANAR MOHAMMED さんに対して、次のように質問しています。
http://www.democracynow.org/2010/8/20/obama_admin_claims_end_to_combat

AMY GOODMAN: The presence of the US, the embassy—eighty (80) football fields—the private security, the private companies. (中略) Can you talk about what the presence of the private security firms mean—they're going to be doubling—and what this massive, the largest US embassy in the world means still in Iraq?

つまりイラクの大使館は世界最大規模で、その広さはサッカー場が80個も入る広さを誇り、その中には大使館だけでなく残留する兵士や民間軍事会社の兵士の宿舎もあり、プールやテニスコートや売店や床屋などあらゆるものが完備されています。一面に敷き詰められた芝生には常に水を絶やさず、まさに「グリーンゾーン」です。<註1>

一般のイラク市民は一日時間しか電気が来ず、摂氏55度の灼熱地獄に喘いでいるのに(もちろん水も十分にありません)、他方、アメリカ大使館は御覧のとおり天国のような生活です。これはイラクだけのことではなく、沖縄など日本における米軍基地も同じ状況です。

沖縄でも米軍は島の一等地を基地として確保し、その敷地には緑も鮮やかな芝生が広大に広がっています。つまり「グリーンゾーン」は単に「安全地帯」という意味だけでなく、名実ともに「グリーンゾーン」だったわけです。

しかも、「1ヶ月後、沖縄に戻ってきたとき、部屋が暑いと嫌だから」と休暇で米国に帰るとき、エアコンも付けっぱなしで帰国する米軍兵士もいると、沖縄県民は怒っています。これらは全て日本国民の税金から支払われているからです。

「こんなバカなことを世界中で繰り返していたら必ず報復を受けるに違いない」と予言したのが、911事件の前に出版された『アメリカ帝国への報復』(チャルマーズ・ジョンソン、集英社、2000)でした。<註2>

自民党や一部の民主党の中には、憲法9条を廃棄し軍隊を持つ「普通の国」に日本を変えたいと言っていますが、「普通の国」にしたいのであれば、まず基地の費用をアメリカに支払わせたらどうでしょうか。

米軍は地球上のあちこちに800以上もの基地を持っていますが、「借りている側」に「貸している側」が費用を払っている国は、世界中のどこを探しても存在しないのですから。

そうすれば、消費税を上げなくても巨大な財源が生まれるでしょうし、議員定数を削減する必要もないでしょう。

ところが不思議なことに、民主党の「仕分け作業」のどこを探しても、米軍基地の費用は「仕分け」の対象になっていないのでした。あれだけ「財源探し」に血眼になったのですから、これは驚くべきことではないでしょうか。




<註1>
 著名な言語学者チョムスキーは、サッカー場が80個も入る巨大な大使館をつくるということは、イラクから撤退する気が全くないからだと言っています。言われてみれば確かにそのとおりで、イラクを「民主化」したらすぐに撤退するつもりであれば、そんなに巨大な大使館を造る必要は全くないわけです。
 オバマ大統領は先日、「イラクからの完全撤退」を宣言しましたが、実はイラクには5万人もの米軍がいまだに残留していますし、それをはるかに超える民間軍事会社の兵士が米軍の肩代わりを勤めていることは、ほとんど知られていません。「イラクからの完全撤退」だけがメディアを通じて大々的に宣伝されたからです。
 米軍が日本に基地を置くようになってから既に65年も経過しているのに、米軍基地が日本から無くなる気配は全く見えません。考えてみれば、イギリスが中国から香港を奪い、それを返却するのに100年を要しましたから、米国もイラクの基地や日本の基地を、100年単位で考えているのかも知れません。

<註2>
 『アメリカ帝国への報復』の著者チャルマーズ・ジョンソンは、元CIA顧問で、カリフォルニア大学教授を経て、現在は民間シンクタンク「日本政策研究所」所長を務めています。ちなみに上記の原書名は、BLOW BACKでした。
 ところで、普天間基地代替施設移設問題に関して、チャルマーズ・ジョンソンは、ロサンゼルス・タイムズ紙(2010年5月6日)に、「沖縄、もう一つの闘い」 (Another battle of Okinawa)と題する投稿を寄せて話題になりました。
 ここでジョンソン氏は、「米国は傲慢ぶりをやめて普天間(の海兵隊部隊)を米本土に戻すべきだ」「私は憶病な鳩山由紀夫首相よりも傲慢な米政府を非難する。基地を維持することに取り憑かれ受け入れ国のことを顧みないからだ」「米国は普天間を返還するだけでなく沖縄の人々に対して65年間もの辛抱に感謝すべきだ」と述べています。
 以下に拙訳を載せてありますから(そんなに長くないものですから)全文をぜひ読んでいただきたいと思います。
http://www42.tok2.com/home/ieas/chalmersjohnson20100506okinawa.pdf
 ちなみに、氏が題名で「もう一つの闘い」(Another battle)と言ったのは、沖縄がアジア太平洋戦争の末期に最後の激戦地となり多大な犠牲者を出したにもかかわらず、今また「もう一つの闘い」を強いられていることを指しています。英語原文は以下を御覧ください。
http://freedomsyndicate.com/fair0000/latimes00184.html
http://articles.latimes.com/2010/may/06/opinion/la-oe-johnson-20100506


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