私たちは、どのような国と「集団的自衛権」の条約を結ぼうとしているのか(上)―アフガンおよびイラク戦争が私たちに教えてくれたこと

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戦争反対!9条こわすな!~日比谷野音 5千人の怒りと熱気

http://www.labornetjp.org/news/2014/0617shasin2
https://www.youtube.com/watch?v=ZurTb9h2hWw(動画3分)

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 いま私たちは非常に奇妙な時代に生きています。
 民主主義の旗手・世界の指導者を自認する強大国の大統領が平気で嘘をついて戦争を始め、有名な大手メディアもそれに追随する時代だからです。世界的な人権擁護団体Human Rights Watchですらアメリカの別働隊になっている時代です。
“The Hypocrisy of Human Rights Watch.”
https://nacla.org/news/2014/2/4/hypocrisy-human-rights-watch


 たとえばノーベル平和賞を受けたオバマ氏がアメリカ大統領に就任してから、戦争はブッシュ氏のときから比べても、さらに拡大する一方です。
 ブッシュ氏は911事件をきっかけにアフガンの爆撃を開始し、さらにそれを「存在しない」「大量破壊兵器」を口実にイラク戦争へと拡大しました。しかしブッシュ氏は、戦火をこれ以上の地域に広げることはしませんでした。
 ところがオバマ氏になると、戦火はイラクを越えてイエメン(アラビア半島)、リビア、南スーダン(アフリカ)、さらにシリア、そして今度はウクライナです。アメリカが戦争する地域は拡大する一方なのです。

 しかもアメリカが「人道的介入」「民主主義の擁護」を口実にして戦火を拡大した地域は、どこも介入する以前よりも事態は悪くなっています。極悪人であるかのように扱われた元イラク大統領フセインでさえ、イラクを瓦礫の地にすることはしませんでした。
 それどころかフセイン時代は女性でさえ大学にいくことができましたが、今のイラクは内戦が荒れ狂い、大学どころか日々の生活さえままならない状態が続いています。この10年間で何十万というひとが殺され、何百万ものひとが難民となりました。
 そもそも今は極悪人として扱われ死刑にされたフセインを一貫して支援し、イラン・イラク戦争を戦わせ、そのなかで化学兵器の使用も許してきたのがアメリカでしたから、その偽善ぶり、ダブルスタンダードぶりは、目に余るものもがあります。
 いまイラクは分裂の危機にあります。元大統領フセインの時代はスンナ派もシーア派も同じ地域に居住し、宗派を越えた結婚も珍しくありませんでした。しかしブッシュ氏がイラクに侵攻し、マリキ傀儡政権をつくりあげてから全てが一変しました。
 たとえマリキ氏がアメリカの傀儡(操り人形)であったとしても、彼はシーア派であり、イラク人口の6割はシーア派(スンナ派は2割、クルド人は2割)ですから、このままではシーア派の隣国イランに牛耳られてしまう恐れがあります。そこでアメリカがとったのは「分裂させて支配する」「シーア派とスンナ派を抗争させる」という権力者の常套手段でした。
 ですからイラクの現在の惨状は、嘘をついて「他国を侵略する」(これはニュルンベルグ裁判で明確に宣言された「戦争犯罪」です)だけでなく、侵略した国をさらに内戦によってバラバラに分裂させ、砲弾によって国土を瓦礫状態にして、膨大な難民を産みだしたという点で、二重三重の戦争犯罪というべきです。
 また侵略した当初は、抵抗するフセイン軍に劣化ウラン弾(これは核兵器の一種です)を使用し、またファルージャでは抵抗する市民に白燐弾(これは化学兵器の一種です)を使用したという点でも、ブッシュ氏を初めとするアメリカ政府の指導者は「戦争犯罪人」として裁かれるべきでしょう。
 これは私だけの意見ではありません。同じことを、ビル・クリントン、ジョージ・W・ブッシュ両大統領の下で元テロ対策最高責任者をつとめたリチャード・クラーク氏も述べています。
 「ブッシュ政権がやったことが戦争犯罪だということは、──少なくとも私の考えでは──はっきりしています」とクラークは話しています。氏は「我々は、国の現職の大統領や首相の行動を訴追し裁判するハーグの国際刑事裁判所に手続きを済ませました」とすら述べているのです。
Ex-Counterterrorism Czar Richard Clarke: Bush, Cheney and Rumsfeld Committed War Crimes
http://www.democracynow.org/2014/6/2/ex_counterterrorism_czar_richard_clarke_bush


 同じことはアフガニスタンについても言えます。そもそも911事件の実行者はアフガニスタンとは何の関係もなく、そのほとんどがサウジアラビア人でした。ですから911事件を理由に爆撃するのであれば、アフガンではなくサウジであるべきでした。その当時アフガンを支配していたタリバン政権は911事件とは何の関係もありません。
 それどころかマイケル・ムーア監督の映画『華氏911』でも明らかにされているとおり、タリバン政権はアメリカ企業によるガス・パイプライン敷設事業の関係で、当時のアメリカ政府とは蜜月の関係だったときもあるくらいです。
 また、911事件がおきたときオサマ・ビンラディンがタリバン政権によって匿われていたことがアフガン爆撃の口実にされていますが、チョムスキー『9.11 アメリカに報復する資格はない!』(文春文庫)でも明らかにされているとおり、タリバン政権が「ビンラディンが911事件に直接かかわっていたことを示す証拠を出してくれれば、いつでもアメリカに引き渡す」と言っていたのに、その証拠を示さずに爆撃を始めたのでした。
 その結果、アフガニスタンはどうなったでしょうか。爆撃されたアフガンを復興させると称して、アメリカによって傀儡大統領に据え付けられたカルザイの政権と、放逐されたタリバンとの内戦はいまだに続いています。この戦乱のなかでどれだけ多くのひとが殺され、どれだけ多くの国土が荒廃させられてしまったことでしょう。
 私はタリバンが放逐された直後の一時期、平和が訪れたとき、日本国際理解教育学会の企画した「アフガン訪問」でカブールを訪れたことがありますが、その当時アフガンの各地で日本のNGOが復興に尽力した教育施設も、今は内戦で見るかげもないでしょう。壮大な税金の無駄づかいです。
<註> 私のアフガン訪問記(1~3)は下記にあります。
http://www42.tok2.com/home/ieas/afghan3.pdf
http://www42.tok2.com/home/ieas/afghan2international3education031025.pdf
http://www42.tok2.com/home/ieas/afghan1.pdf

 というのは、カルザイ政権が支配している地域は首都カブールの近辺に限られ、アフガンを実効支配しているのはタリバンだと言われているからです。しかもすでに述べたように911事件とタリバンとは何の関係もないのですから、そもそもアメリカやNATO軍がアフガンに残ってタリバンと戦う理由は何もありません。迷惑するのはアフガン民衆だけです。
 またアフガン爆撃の口実とされたビンラディンも、またビンラディンがつくりあげたとされるアル=カイダ(the Base「基地」)という組織も、そもそもアメリカが裏で育て上げた人物であり、アメリカが裏で育て上げた組織でした(当時はムジャヒディーンと呼ばれていました)。
 当時のソ連邦政府は、当時のアフガン政権から要請されて、しぶしぶ軍隊を派遣し、結局10年間の泥沼戦争に引き込まれ、結局これがソ連崩壊の一因になりました。というのは、当時のアフガン政権は、パキスタンで訓練されアフガンに送り込まれたイスラム聖戦士の反乱に悩まされていたからです。
 これは当時のカーター政権で国家安全保障問題担当大統領補佐官を務めたズビグネフ・ブレジンスキーが欧州メディアで堂々と語っていることです(ブルム『アメリカ国家犯罪全書』作品社)。彼は「ソ連を崩壊させたのは俺だ」と豪語しているのです。「アフガン民衆に迷惑をかけたことにたいしてどう思っているか」との質問にたいしては「ソ連を崩壊させた価値の方が大きい」と開き直っていました。
 ソ連はアフガン侵攻を10年で止め、きっぱりと全軍隊をアフガンから引き揚げましたが、オバマ政権は「アフガンから手を引く」と言いながら他方で軍隊を残す方策を探っています。
 何度も言いますがタリバンは911事件とは何の関係もありません。アメリカ軍を駐留させればさせるほどアフガンの荒廃は進行します。にもかかわらず米軍を残そうそうとしているのは、別の理由があるとしか考えられません。


 話が少し横にそれてしまいましたが、イエメンへの侵略についてはどうでしょう。イラクと違って、オバマ氏はイエメンには軍隊を出しませんでした。それに代わって彼がとった手段は、アルカイーダと言われるひとたちを無人殺人機Droneを使って空から暗殺することでした。
 その結果、何が生まれたでしょうか。多くの無実のひとたちが惨殺されることになりました。村人が結婚式のため集まっていたのに、その集まりを丸ごと殺戮するような事件が相継ぎました。チョムスキーは「ひとりの無実のひとを暗殺することによって10人のテロリストが生まれる」と述べたことがありますが、オバマ氏のやっていることは、まさにこのような行為なのです。
 もしたとえ暗殺されたひとが本当にアルカイーダの一員だったとしても、それを裁判にかけずに暗殺=死刑にする権利は誰にもありませんし、そのような権利をもつ政府も存在しません。ところがオマバ氏は「無人機による暗殺リスト」をつくり、それにしたがって次々と暗殺行為を続けています。しかも、この暗殺リストはどのような基準で作成されているのか一切が秘密です。議員が要求しても公開されていません。
 イギリスの非営利団体「調査報道局(Bureau for Investigative Journalism)」によると、無人機はイエメンだけでなく、ソマリア、イラク、パキスタン、アフガニスタンで少なくとも2600人を殺害しました。先に紹介したクラーク氏も「無人機のプログラムは手に負えなくなった。過度の秘密主義は一部の無人機攻撃がそうであったように逆効果になっている」と語っています。
Former Counterterrorism Czar Richard Clarke: U.S. Drone Program Under Obama "Got Out of Hand"
http://www.democracynow.org/2014/6/2/former_counterterrorism_czar_richard_clarke_us

 そもそもアルカイーダの前身であるムジャヒディーンなるものを育て上げたのはアメリカでしたし、アバマ氏が特殊部隊を使って、ビンラディンをパキスタンで暗殺させたときにアルカイーダという組織は基本的に壊滅したと言われています。
 またビンラディンが911事件の首謀者だとされていますが、彼をとらえて裁判にかけたわけではありませんから、事件を企画し指導したという具体的な証拠は何も明らかになっていません。
 「アメリカがやっていることはひどい」と言った主張に共鳴したひとたちが、あの911事件をおこしたのだとすれば、これでは、アメリカに反感をもち何かを発言したひとたちも、ビンラディンと同じ運命をたどっても不思議はないことになります。
 しかも、このビンラディンの暗殺は、パキスタン政府の主権を侵害し政府が全く知らないうちにおこなわれ、また丸腰のビンラディンを妻や息子たちが見ているまえで銃で殺し、死体はアラビア海に投棄されたと言われていますから、醜悪きわまりない作戦行為でした。
 アメリカ側は海洋投棄を「水葬」だと言っていますが、イスラム教の正式な埋葬は「土葬」ですから、これも言い訳としては全く通用しないものです。死刑にされたひとでさえ遺体は家族に返すわけですから、せめて遺体は家族・親族に返すのが当然でしょう。
 このようなことを考えると、アメリカにとってはビンラディンをとらえて正式な裁判にかけると、世界に知られては困るような都合の悪い事実がたくさん出てきて、やむなく暗殺する方法をとったのではないか、という疑いも出てきます。
 マイケル・ムーア監督の映画『華氏911』でも、全ての飛行機が禁足令で飛び立てない状況だったのに、アメリカにいたビンラディン一族だけは、特例扱いで、911直後にアメリカを脱出するようすが映し出されています。これも私の疑いを強める一つの理由になっています。

 オバマ氏は最近、ニューヨーク州ウエストポイントの米陸軍士官学校でおこなわれた卒業式で、「アメリカは世界の指導者であり、例外的な国である。したがって国際法を遵守する必要はない」と言わんばかりの演説をしました。それは以上に述べてきたアフガン、イラク、イエメンでアメリカがおこなってきたことで十分に実証されているのではないかと思います。
 アメリカが世界中でおこなっている他のおぞましい軍事作戦について、まだリビア、シリア、ウクライナなど、紹介したいことは山積しているのですが、それらについては次回に回すことにします。

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戦争反対!9条こわすな!~日比谷野音 5千人の怒りと熱気

http://www.labornetjp.org/news/2014/0617shasin2

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 ところで我が国の安倍政権は、上記のような「Rouge State:ならず者国家」(チョムスキー)と軍事同盟「集団的自衛権」の条約を結び、アメリカに要請されるがまま世界中に自衛隊を派遣しようとしています。「憲法9条があるから安心」と思って入隊した自衛隊員も、これでは契約違反だとしてやめるひとが出てくるかも知れません
 被害は自衛隊員だけに及びません。いま日本は自衛隊員を他国に派遣している余裕がないほど国家財政は逼迫しているのではなかったでしょうか。だからこそ、それを口実に消費税を値上げしたのではなかったでしょうか。
 そんなお金があるくらいなら、そのお金を福祉や年金に回すべきでしょう。大学教授をしていたひとの年金でさえ、月額20万円程度です。それすら減額される一方です。そのなかから市民税、県民税、介護保険、その他がどんどん差し引かれていきます。
 だとすれば、一般の年金生活者はどうやって生活していけば良いのでしょうか。まして、このように国民の購買力を奪っていったら、どうして景気回復が可能でしょうか。それとも国民を貧困にしておいて「だから給料が安定している自衛隊へどうぞ」と言いたいのでしょうか。

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 今後のブログは、私の本来の専門分野である「英語教育」に重点を移したいと思っていたのですが、新聞報道などを見ていると「集団的自衛権」の問題が風雲急を告げているので、やむなく、「私たちはどのような国と集団的自衛権の条約を結ぼうとしているのか」を書くことにしました。
 創価学会の創始者である牧口常三郎・戸田城聖の両氏が、戦前の治安維持法で逮捕されたことを出発点にして(牧口氏は獄死)、結党以来ずっと平和を標榜してきたはずの公明党が、安倍政権の手助けをするようでは、もう公明党の未来はないものと思わざるをえません。もう少し腰の据わった主張をしてくれれば、違った展開もありうるでしょうが。
 しかし、『肉声でつづる民衆のアメリカ史』(明石書店)をみても分かるとおり、歴史は民衆がつくるものです。創価学会や公明党に見切りをつけて、民衆による集会・街頭行動だけが、いま残されている唯一の方法なのかもしれません。大手メディアを励まし紙面を変えさせるのも、民衆による直接行動の熱気・大きさなのですから。

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しっかりしてよ!公明党 ~「閣議決定に反対して」のヒューマンチェーン
http://www.labornetjp.org/news/2014/0617shasin
http://youtu.be/oVGkvrIFYaE(動画4分半)

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狐狸庵居士(田舎の国立大学を2010年に定年退職)

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